説明

製パン機及び製パン機の運転方法

【課題】加熱室内に存在する水蒸気による確認窓の曇りを、簡易且つ確実に防止できる製パン機及びその製パン機の運転方法を提供する。
【解決手段】蓋体3とケーシングCとにより形成される加熱室5内を加熱する電熱ヒータ8と、少なくとも可視光を透過する板状透過体10からなり蓋体3に配設される確認窓Bとを備え、制御部15が、製パン材料の混練工程、発酵工程、焼成工程を実行し、加熱室5内に配設される電熱ヒータ8は加熱室5内の温度が製パン材料加熱用目標温度となるよう通電駆動され、電熱ヒータ8とは別の確認窓Bにおける結露を防止する結露防止用電熱ヒータ9が蓋体3に配設され、蓋体3の加熱室5に隣接する箇所の温度が結露防止用目標温度となるよう通電駆動され、混練工程にて結露防止用目標温度を製パン材料加熱用目標温度より高い温度に設定し、結露防止用電熱ヒータ9、電熱ヒータ8を加熱作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を介して内部にパンケースを収容するケーシングと、ケーシングの開口部を閉塞する蓋体と、ケーシングと蓋体とにより形成される加熱室内を加熱する電熱ヒータと、少なくとも可視光を透過する板状透過体からなり蓋体に配設される確認窓と、電熱ヒータの運転を制御する制御部とを備えた製パン機、及びその製パン機の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような製パン機として、例えば、特許文献1には、上方開口部を介して内部にパン容器6を収容する本体1と、本体1の上方開口部を閉塞するふた2と、本体1とふた2とにより形成される内ケース4内の上部を加熱するヒータ13及び下部を加熱するヒータ13と、ふた2に配設され、外部からパン容器6内のパン生地の状態を視認可能な耐熱ガラスからなるのぞき窓14とを備えた構成が開示されている。なお、名称及び参照符号は、主に特許文献1の記載を用いた。
これにより、パン製造時に、作業者がのぞき窓を介してパン生地(製パン材料)の状態を監視しながら、ヒータ等を制御してパン生地の状態に合った焼成時間やパン生地の温度調節ができるので、家庭などで誰でも簡単に、おいしいパンを製造することができるとされている。
また、特許文献1に開示の製パン機の運転方法としては、パン容器6内に配設された練りばね8の回転によりパン容器6内のパン生地を混練する練成工程、ヒータ13及び練りばね8を作動させて、パン生地を発酵する発酵工程、パン生地を焼き上げる焼成工程を順次自動的に実行するように構成されている。
【0003】
一方で、特許文献2には、前方開口部を介して内部に製パントレイ22を収容する本体3と、本体3の前方開口部を閉塞するドア5と、本体3とドア5とにより形成されるオーブン室10内の上部を加熱する上部オーブンヒータ20及び上部ドアヒータ20と、オーブン室10内の下部を加熱する下部オーブンヒータ20及び下部ドアヒータ20と、各ヒータ20の運転を制御する制御部50とを備えた製パン機1が開示されている。
そして、制御部50は、予め設定された製パンプログラムに従って、捏ねドラム12を駆動させて製パン材料を捏ねる捏ね工程、各ヒータ20を加熱作動させて、製パン材料を発酵する発酵工程、製パン材料を焼き上げるベーキング工程を実行するように構成されている。この際、制御部50が、温度感知部45を通じて感知されたオーブン室10内の温度が、予め記録された設定温度を維持するように、各ヒータ20に連結されたスイッチ素子のオンオフ周期を制御して、異なる位置のヒータ20のデューティをそれぞれ調整するように構成されている。なお、名称及び参照符号は、主に特許文献2の記載を用いた。
これにより、それぞれ異なる位置に配設された各ヒータのデューティをそれぞれの工程ごとに調節することにより、オーブン室内の温度が予め記録された設定温度に至るようにし、温度を精密に調節して、製パン材料をそれぞれ異なる位置で最適な状態で加熱することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63‐28444号公報
【特許文献2】特開2004‐329910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の従来の製パン機においては、外部からケーシング内の製パン材料の調理状態を確認できる確認窓が配設されているが、通常、ケーシング内は蓋体等により密封された状態となっており、製パン材料から発生した水蒸気が確認窓に付着して結露し、当該確認窓が曇ることがあった。この場合、外部から確認窓を介してケーシング内の製パン材料の調理状態を視認できない場合があった。
【0006】
また、特許文献2に開示の従来の製パン機においては、複数の電熱ヒータを備え、各電熱ヒータに対して各工程において異なる制御を行って、製パン材料を異なる位置から焼き上げることができるとされるが、制御部による各電熱ヒータの加熱作動(通電駆動)の制御は、単に加熱室内の温度が製パン材料を最適な焼き具合で焼き上げるための設定温度(製パン材料加熱用目標温度)となるように加熱作動(通電駆動)されているに過ぎず、依然として上述のような確認窓の曇りを解消することはできていないのが実情であった。
【0007】
すなわち、従来の製パン機においては、電熱ヒータは加熱室内における製パン材料が最適な焼き具合となるよう調整するために配設され、しかも、制御部により電熱ヒータが製パン材料加熱用目標温度となるように加熱作動が制御されているに過ぎず、確認窓の曇りを積極的に解消することができるものではなかった。
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱室内に存在する水蒸気による確認窓の曇りを、簡易且つ確実に防止できる製パン機及びその製パン機の運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る製パン機は、開口部を介して内部にパンケースを収容するケーシングと、前記ケーシングの開口部を閉塞する蓋体と、前記ケーシングと前記蓋体とにより形成される加熱室内を加熱する電熱ヒータと、少なくとも可視光を透過する板状透過体からなり前記蓋体に配設される確認窓と、前記電熱ヒータの運転を制御する制御部とを備え、前記制御部が、前記パンケース内に配設された混練羽根により前記パンケース内の製パン材料を混練する混練工程と、前記電熱ヒータを加熱作動させて前記製パン材料を発酵する発酵工程を少なくとも1回実行し、さらに、前記電熱ヒータを加熱作動させて前記製パン材料を焼き上げる焼成工程を実行するように構成された製パン機であって、その特徴構成は、
前記加熱室内に配設される前記電熱ヒータが、前記制御部により前記加熱室内の温度が製パン材料加熱用目標温度となるように通電駆動されるとともに、前記電熱ヒータとは別に、前記確認窓における結露を防止する結露防止用電熱ヒータが前記蓋体に配設され、当該結露防止用電熱ヒータが、前記制御部により前記蓋体における前記加熱室に隣接する箇所の温度が結露防止用目標温度となるように通電駆動される構成で、前記制御部が、前記混練工程において、前記結露防止用目標温度を前記製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度に設定して、前記結露防止用電熱ヒータ及び前記電熱ヒータを加熱作動させる点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、基本的に、制御部が、パンケース内の製パン材料の混練工程、発酵工程、焼成工程を順次実行することができると共に、制御部が、加熱室内の温度が各工程に応じて適切に設定された製パン材料加熱用目標温度となるように、電熱ヒータに通電駆動させることができる。これにより、例えば、電熱ヒータによる製パン材料加熱用目標温度を目標温度とした発熱により、混練工程及び発酵工程においては、製パン材料を混練及び発酵に適した温度とすることができ、また、焼成工程においては、製パン材料を最適な焼き上がりに適した温度にすることができる。
【0011】
ここで、作業者が各工程における製パン材料の状態を、板状透過体からなる確認窓を介して外部から視認可能となっているが、ケーシングと蓋体とにより密閉された加熱室内におけるパンケースに収容された製パン材料から、水蒸気が発生することがあり、この水蒸気が蓋体に配設された確認窓に接触すると、外気と加熱室内との温度差が大きい場合(加熱室内と確認窓の板状透過体との温度差が大きい場合)には確認窓の板状透過体に結露が生じ、加熱室内の製パン材料を視認することが困難となることがある。特に、混練工程においては、混練羽根で製パン材料を混練することにより生じる摩擦及び電熱ヒータの発熱により、製パン材料の温度が上昇することも相俟って、製パン材料から発生する水蒸気が最も多い工程となる。
【0012】
しかしながら、製パン材料を加熱する電熱ヒータとは別に、確認窓における結露を防止する結露防止用電熱ヒータが蓋体に配設されているので、当該蓋体に配設される確認窓の板状透過体を適切に加熱することができる。また、制御部が、蓋体における加熱室に隣接する箇所の温度が各工程に応じて適切に設定された結露防止用目標温度となるように、結露防止用電熱ヒータに通電駆動するので、各工程ごとに設定された結露防止用目標温度を目標温度として、板状透過体を結露防止用電熱ヒータにより適切に加熱することができる。
特に、制御部が、混練工程において、結露防止用目標温度を製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度に設定して、結露防止用電熱ヒータ及び電熱ヒータを加熱作動させるので、各工程のうち製パン材料から最も水蒸気が発生する混練工程において、製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度で確認窓における板状透過体の加熱を行い、早期且つ確実に当該板状透過体を加熱することができ、確実に板状透過体の結露を防止することができる。
よって、混練工程において、加熱室内に存在する水蒸気による確認窓の曇りを、簡易且つ確実に防止できる製パン機を提供することができるようになった。
【0013】
本発明に係る製パン機の更なる特徴構成は、前記制御部が、前記発酵工程において、前記結露防止用目標温度を前記製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度に設定して、前記結露防止用電熱ヒータ及び前記電熱ヒータを加熱作動させる点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、制御部が、発酵工程において、結露防止用目標温度を製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度に設定して、結露防止用電熱ヒータ及び電熱ヒータを加熱作動させるので、各工程のうち混練工程に次いで製パン材料から水蒸気の発生量が多い発酵工程において、製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度で確認窓における板状透過体の加熱を行い、早期且つ確実に当該板状透過体を加熱することができ、確実に板状透過体の結露を防止することができる。
よって、発酵工程において、加熱室内に存在する水蒸気による確認窓の曇りを、簡易且つ確実に防止できる製パン機を提供することができるようになった。
【0015】
本発明に係る製パン機の更なる特徴構成は、前記混練工程における前記結露防止用電熱ヒータの結露防止用目標温度が、前記発酵工程における結露防止用目標温度よりも高い温度に設定されている点にある。
【0016】
本特徴構成によれば、混練工程における結露防止用電熱ヒータの結露防止用目標温度が、発酵工程における結露防止用目標温度よりも高い温度に設定されているので、発酵工程よりも前に実行され、且つ発酵工程よりも水蒸気の発生量が多い混練工程において、より迅速に確認窓の板状透過体の温度を上昇させることができ、より一層簡易且つ確実に確認窓における結露を防止することができる。
【0017】
本発明に係る製パン機の更なる特徴構成は、前記制御部が、少なくとも前記混練工程において、前記確認窓の温度が前記製パン材料の温度と略同等或いは当該温度よりも高くなるように、前記結露防止用電熱ヒータ及び前記電熱ヒータの何れか一方又は両方の加熱作動を制御する点にある。
【0018】
本特徴構成によれば、制御部が、少なくとも混練工程において、結露防止用目標温度が製パン材料加熱用目標温度よりも高くなる状態で、結露防止用電熱ヒータ及び電熱ヒータの何れか一方又は両方の加熱作動を制御するので、結果として、確認窓の温度(実測値)が製パン材料の温度(実測値)と略同等或いは当該温度よりも高くなるように調整することができ、より確実に確認窓における結露を防止することができる。ここで、本特徴構成において、確認窓の温度が製パン材料の温度と略同等とは、製パン材料の温度に対して±2℃程度の範囲を意味する。なお、例えば、確認窓の温度及び製パン材料の温度を温度計測手段によりそれぞれ計測し、当該計測結果に基づいて確認窓の温度が製パン材料の温度と略同等或いは当該温度よりも高くなるように、結露防止用目標温度及び製パン材料加熱用目標温度を適宜設定して、加熱室内及び蓋体における加熱室に隣接する箇所の各計測温度が設定された結露防止用目標温度及び製パン材料加熱用目標温度となるように、結露防止用電熱ヒータ及び電熱ヒータの加熱作動をフィードバック制御する構成としてもよい。
【0019】
本発明に係る製パン機の更なる特徴構成は、前記制御部が、前記混練工程及び前記発酵工程において、前記製パン材料の温度を、前記製パン材料の発酵が阻害される温度である40℃よりも低く維持するように、前記結露防止用電熱ヒータ及び前記電熱ヒータの何れか一方又は両方の加熱作動を制御する点にある。
【0020】
本特徴構成によれば、混練工程及び発酵工程において、製パン材料の温度を、製パン材料の発酵が阻害される温度である40℃よりも低く維持するように、結露防止用電熱ヒータ及び電熱ヒータの何れか一方又は両方の加熱作動が制御されるので、製パン材料の温度を40℃よりも低く、より好ましくは30℃程度前後に維持することができ、製パン材料の発酵を良好に進行させることができながら、製パン材料から水蒸気が発生する両工程において、確認窓の板状透過体を確実且つ十分に加熱して、確認窓における結露を防止することができる。
【0021】
本発明に係る製パン機の更なる特徴構成は、前記開口部として上方に開口する上方開口部が前記ケーシングに形成され、前記上方開口部を閉塞する前記蓋体が、外蓋と、当該外蓋の下部に配設され前記加熱室内の上部を区画形成する金属製の内蓋とを備え、前記結露防止用電熱ヒータが前記内蓋に隣接する状態で前記蓋体に配設され、前記確認窓に対応する開口が、前記外蓋及び前記内蓋に形成され、前記外蓋の開口縁部の下側が、前記確認窓を構成する前記板状透過体を下方から嵌合させる嵌合部とされ、前記内蓋の開口縁部の上側が、前記嵌合部に嵌合された前記板状透過体の外周縁部を下方から取り囲む状態で当接支持する当接支持部とされている点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、ケーシングの上方開口部を閉塞する蓋体に板状透過体を固定する固定構造が、板状透過体を外蓋の開口縁部の下側に形成された嵌合部に下方から嵌合させ、この嵌合された板状透過体の外周縁部を内蓋の開口縁部の上側の当接支持部により下方から当接支持させるだけでよく、非常に簡単な構造となる。さらに、板状透過体が外蓋の嵌合部と内蓋の当接支持部とにより挟み込まれた状態で固定され、しかも、板状透過体の外周縁部が、当該外周縁部の略全周に亘って内蓋の当接支持部により下方から取り囲まれた状態で、その略全周或いは少なくとも一部に亘って当接支持されるため、板状透過体の確実な固定が実現される。
【0023】
さらに、嵌合部に嵌合された板状透過体の外周縁部が、金属製の内蓋の開口縁部の上側に形成された当接支持部により下方から取り囲まれた状態で当接支持されているので、結露防止用電熱ヒータの熱を、加熱室内の上部を区画形成する内蓋、特に、内蓋の当接支持部の略全周を介して、加熱室内において板状透過体の下方の空気に伝熱させ、良好に加熱することができる。加えて、結露防止用電熱ヒータの熱を、板状透過体を当接支持する内蓋の当接支持部の略全周或いは少なくとも一部を介して、板状透過体の外周縁部の略全周或いは少なくとも一部に直接伝熱させ、当該板状透過体自身を良好に加熱することができる。従って、板状透過体を固定する機能を備えた内蓋を利用しながら、結露防止用電熱ヒータからの伝熱により、加熱室内における板状透過体の下方の空気及び板状透過体自身の加熱を同時に行うことができ、当該空気及び板状透過体の温度を確実に且つ容易に上昇させることができる。このため、加熱室内において製パン材料から水蒸気が発生したとしても、確認窓を構成する板状透過体の結露による曇りを確実に防止することができる。
よって、結露防止用電熱ヒータ及び確認窓を適切に配置して、簡易な構成で確実に確認窓の曇りを防止できるようになった。
【0024】
本発明に係る製パン機の更なる特徴構成は、前記結露防止用電熱ヒータが屈曲或いは湾曲した形状に形成され、平面視で、前記板状透過体を取り囲む状態で配設されており、金属製のヒータカバーが、前記内蓋としての遮熱板に対向して当該遮熱板の下部に配設され、前記結露防止用電熱ヒータが、前記ヒータカバーに当接する状態で、前記遮熱板と前記ヒータカバーとの間に形成される空間に配設されている点にある。
【0025】
本特徴構成によれば、金属製の内蓋に隣接して配設される結露防止用電熱ヒータが、屈曲或いは湾曲した形状に形成され、平面視で、板状透過体を取り囲む状態で配設されているので、結露防止用電熱ヒータからの熱が、板状透過体を取り囲む内蓋の当接支持部の略全周に亘って容易且つ確実に伝熱され、さらに、当該当接支持部を介して板状透過体の外周縁部の略全周或いは少なくとも一部に亘って容易且つ確実に伝熱されることとなる。従って、結露防止用電熱ヒータの熱により、板状透過体の下方の空気及び板状透過体自身の温度を、板状透過体の略全周に亘って偏りの少ない状態で上昇させることができ、より確実に結露による曇りを防止することができる。
また、結露防止用電熱ヒータから伝熱する熱は、結露防止用電熱ヒータに当接する金属製のヒータカバー及び金属製の内蓋を介して間接的に、或いは、直接的に確認窓を構成する板状透過体に伝熱される。加えて、結露防止用電熱ヒータから伝熱する熱は、遮熱板により遮熱されヒータカバー側に反射されて間接的に、或いは、金属製のヒータカバーを介して直接的に、下方に位置する製パン材料の上部にもある程度伝熱される。従って、結露防止用電熱ヒータを、主として確認窓の板状透過体を加熱する構成としながら、加熱室内における製パン材料の上部の加熱もある程度行えるように、兼用することができる。
よって、結露防止用電熱ヒータ及び確認窓をより適切に配置して、簡易な構成で確認窓の曇りをより一層確実に防止できるようになった。
【0026】
本発明に係る製パン機の更なる特徴構成は、前記制御部が、前記混練工程の前に、前記電熱ヒータを通電駆動させて、前記加熱室内を予備加熱する予熱工程を実行可能に構成され、前記制御部が、前記予熱工程において、前記結露防止用目標温度を前記製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度に設定して、前記結露防止用電熱ヒータ及び前記電熱ヒータを加熱作動させる点にある。
【0027】
上記特徴構成によれば、制御部が、混練工程の前に、電熱ヒータを通電駆動させて、加熱室内を予備加熱する予熱工程において、結露防止用目標温度を製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度に設定して、結露防止用電熱ヒータ及び電熱ヒータを加熱作動させるので、各工程のうち最も水蒸気が発生する混練工程の前の予熱工程において、製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度で確認窓における板状透過体の加熱を行い、当該板状透過体の温度を予め上昇させておくことができ、混練工程の初期から板状透過体に結露が生じるのをより確実に防止することができる。また、予熱工程でも確認窓の板状透過体に結露が生じるのを確実に防止することができる。
よって、予熱工程及びこれに続く混練工程において、加熱室内に存在する水蒸気による確認窓の曇りを、一層簡易且つ確実に防止できる製パン機を提供することができるようになった。
【0028】
本発明に係る製パン機の更なる特徴構成は、前記制御部が、前記混練工程の前に、前記電熱ヒータを通電駆動させて、前記加熱室内を予備加熱する予熱工程を実行可能に構成され、前記制御部が、前記予熱工程において、前記結露防止用目標温度を前記製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度に設定して、前記結露防止用電熱ヒータ及び前記電熱ヒータを加熱作動させる構成で、前記予熱工程、前記混練工程及び前記発酵工程における前記結露防止用電熱ヒータの結露防止用目標温度のそれぞれが、共通の温度に設定されている点にある。
【0029】
本特徴構成によれば、制御部が、混練工程の前に、電熱ヒータを通電駆動させて、加熱室内を予備加熱する予熱工程において、結露防止用目標温度を製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度に設定して、結露防止用電熱ヒータ及び電熱ヒータを加熱作動させるので、各工程のうち最も水蒸気が発生する混練工程の前の予熱工程において、製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度で確認窓における板状透過体の加熱を行い、当該板状透過体の温度を予め上昇させておくことができ、混練工程の初期から板状透過体に結露が生じるのをより確実に防止することができる。また、予熱工程でも確認窓の板状透過体に結露が生じるのを確実に防止することができる。
また、予熱工程、混練工程及び発酵工程における結露防止用電熱ヒータの結露防止用目標温度のそれぞれが、共通の温度に設定されているので、各工程ごとに結露防止用目標温度を設定する必要が無く簡易な構成とすることができながら、結露防止用電熱ヒータにより適切に確認窓の板状透過体を加熱することができ、各工程において確認窓の結露を防止することができる。
【0030】
上記目的を達成するための本発明に係る製パン機の運転方法は、上記特徴構成の何れかの製パン機の運転方法であって、その特徴構成は、
前記電熱ヒータを、前記加熱室内の温度が前記製パン材料加熱用目標温度となるように通電駆動するとともに、前記電熱ヒータとは別の前記結露防止用電熱ヒータを、前記蓋体における前記加熱室に隣接する箇所の温度が前記結露防止用目標温度となるように通電駆動する構成で、前記混練工程において、前記結露防止用目標温度を前記製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度に設定して、前記結露防止用電熱ヒータ及び前記電熱ヒータを加熱作動する点にある。
【0031】
上記特徴構成によれば、基本的に、パンケース内の製パン材料の混練工程、発酵工程、焼成工程を順次実行することができると共に、加熱室内の温度が各工程に応じて適切に設定された製パン材料加熱用目標温度となるように、電熱ヒータに通電駆動することができる。これにより、例えば、電熱ヒータによる製パン材料加熱用目標温度を目標温度とした発熱により、混練工程及び発酵工程においては、製パン材料を混練及び発酵に適した温度とすることができ、また、焼成工程においては、製パン材料を最適な焼き上がりに適した温度にすることができる。
【0032】
ここで、作業者が各工程における製パン材料の状態を、板状透過体からなる確認窓を介して外部から視認可能となっているが、ケーシングと蓋体とにより密閉された加熱室内におけるパンケースに収容された製パン材料から、水蒸気が発生することがあり、この水蒸気が蓋体に配設された確認窓に接触すると、外気と加熱室内との温度差が大きい場合(加熱室内と確認窓の板状透過体との温度差が大きい場合)には確認窓の板状透過体に結露が生じ、加熱室内の製パン材料を視認することが困難となることがある。特に、混練工程においては、混練羽根で製パン材料を混練することにより生じる摩擦及び電熱ヒータの発熱により、製パン材料の温度が上昇することも相俟って、製パン材料から発生する水蒸気が最も多い工程となる。
【0033】
しかしながら、製パン材料を加熱する電熱ヒータとは別に、確認窓における結露を防止する結露防止用電熱ヒータが蓋体に配設されているので、当該蓋体に配設される確認窓の板状透過体を適切に加熱することができ、蓋体における加熱室に隣接する箇所の温度が各工程に応じて適切に設定された結露防止用目標温度となるように、結露防止用電熱ヒータに通電駆動させるので、各工程ごとに設定された結露防止用目標温度を目標温度として、板状透過体を結露防止用電熱ヒータにより適切に加熱することができる。
特に、混練工程において、結露防止用目標温度を製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度に設定して、結露防止用電熱ヒータ及び電熱ヒータを加熱作動するので、各工程のうち製パン材料から最も水蒸気が発生する混練工程において、製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度で確認窓における板状透過体の加熱を行い、早期且つ確実に当該板状透過体を加熱することができ、確実に板状透過体の結露を防止することができる。
よって、混練工程において、加熱室内に存在する水蒸気による確認窓の曇りを、簡易且つ確実に防止できる製パン機の運転方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】製パン機の外観を示す斜視図
【図2】蓋体を開けた状態での製パン機の外観を示す斜視図
【図3】製パン機の縦断側面視図
【図4】製パン機の縦断正面視図
【図5】蓋体の分解斜視図
【図6】蓋体の縦断側面視図
【図7】蓋体の下面視図
【図8】実施形態に係る製パン機の運転状態の概略を示すタイムチャート
【図9】別実施形態に係る製パン機の運転状態の概略を示すタイムチャート
【図10】別実施形態に係る製パン機の運転状態の概略を示すタイムチャート
【図11】別実施形態に係る製パン機の運転状態の概略を示すタイムチャート
【図12】別実施形態に係る蓋体の下面視図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
図1及び図2に示すように、製パン機は、上方が上方開口部4(開口部の一例)にて開口したケーシングCを内部に備えた本体1、上方開口部4を介してケーシングCの内部に収容されて着脱自在に装着されるパンケース2、ケーシングCの上方開口部4を開閉自在な蓋体3、少なくとも可視光を透過する耐熱板ガラス10(板状透過体の一例)からなる確認窓B等を備えて構成されている。
【0036】
図3及び図4に示すように、本体1は、平面視が概ね長方形状で、上部が開口した有底箱状に形成され、平面視において、その本体1内における長手方向の一端側(図4の左側)に寄せて、四隅が丸みを帯びた概ね長方形状のケーシングCが設けられている。そして、本体1内は、平面視で長手方向の一端側のケーシングC内に形成される加熱室5と、長手方向の他端側(図4の右側)の制御部収容室6と、それら加熱室5及び制御部収容室6の下方の伝動部収容室7との三区画に仕切られている。
【0037】
具体的には、本体1には、平面視で、矩形板状の底板部材C1が本体1内の略全域にわたって配設されている。底板部材C1は、本体1の底部との間に伝動部収容室7を形成すべく、スペーサ(図示せず)により間隔を開けて配設されている(図3及び図4参照)。また、本体1には、平面視で四隅が丸みを帯びた概ね長方形状で角筒状に構成された周壁部材C2が、本体1の長手方向の一端側に寄せた状態で底板部材C1上に固定されて配設されている。この周壁部材C2は、底板部材C1の上部の空間において、本体1の長手方向の一端側に加熱室5の一部を形成し、他端側に制御部収容室6を形成すべく配設されている。本体1の長手方向の一端側の底板部材C1によりケーシングCの底部が形成され、周壁部材C2によりケーシングCの側周面が形成されて、ケーシングCは上方開口部4を備えた有底箱状に形成される。従って、詳細は後述するが、有底箱状のケーシングCと縦断側面視及び縦断正面視で上方に膨出する概略逆U字形状の蓋体3とにより区画形成された内部空間が加熱室5として形成され、この加熱室5内にパンケース2が収容されることとなる。
【0038】
図3及び図4に示すように、製パン機には、後述する制御部15により運転が制御される電熱ヒータ8と結露防止用電熱ヒータ9とが設けられている。これら電熱ヒータ8及び結露防止用電熱ヒータ9としては、例えば、いわゆるシーズヒータを用いることができる。
電熱ヒータ8は、ケーシングCの底面上を巡らせるように屈曲した形状で長尺状に形成され、ヒータ支持具(図示せず)を介して底面から離間した位置に配設される。すなわち、電熱ヒータ8は、加熱室5内の下部に(パンケース2の底面の下部において、パンケース2の側壁面を外周側から所定間隔を空けて囲繞する形態で)配設され、加熱室5内、特に、加熱室5内の下部、パンケース2の下部及び側部を加熱できるように構成されている。なお、電熱ヒータ8は、加熱室5内を加熱して、パンケース2内の製パン材料を良好に加熱可能であれば、加熱室5内の適宜位置に配設することができる。
また、詳細は後述するが、結露防止用電熱ヒータ9は、蓋体3に配設され、主として確認窓Bを構成する耐熱板ガラス10を加熱できるように構成されている。
【0039】
図2〜図4に示すように、パンケース2は、平面視で四隅が丸みを帯びた長方形状で、上部が開口した有底箱状であり、その上部開口の縁部には、その長手方向の両端側に振り分けて、一対の取手2a,2aが設けられている。
図4に示すように、パンケース2の底部の裏面側には、パンケース2を載置支持するパンケース台23が一体的に取り付けられている。
又、パンケース2の底部には、一対の駆動軸20,20が、上下方向の軸心回りで回転自在に支持された状態で長手方向に並べて設けられ、各駆動軸20におけるパンケース2の底部から下方側に突出した突出部には、従動側連結具24が固定されている。各駆動軸20におけるパンケース2内の底部から上方側に突出した部分には、混練羽根22が着脱自在に装着される。
そして、図2〜図4に示すように、パンケース2は、パンケース台23に載置支持される状態で、ケーシングC内(加熱室5内)に装着される。
又、パンケース2がケーシングC内に装着された状態では、パンケース2の上部開口がケーシングCの上方開口部4よりも下方に位置するように構成されている。このことにより、蓋体3が開かれても、パンケース2内からの放熱を抑制して、パンケース2内の温度低下を抑制する構成となっている。
【0040】
図2〜図4に示すように、ケーシングCの底部には、パンケース2がパンケース台23に装着状態でケーシングC内に装着されたときに、一対の従動側連結具24,24夫々に係合するように、一対の駆動側連結具25,25が、上下方向の軸心回りで回転自在に支持された状態で、加熱室5の長手方向に並べられて設けられている。
【0041】
図4に示すように、制御部収容室6には、一対の駆動軸20を駆動回転するための電動モータ21、並びに、電熱ヒータ8、結露防止用電熱ヒータ9及び電動モータ21等の作動を制御することにより製パン機の運転を制御する制御部15が設けられている。図示しないが、制御部15は、公知の情報処理手段であるCPUやメモリ等を備えて構成され、また、電源から供給される電力を適切に各機器に供給可能に構成されている。又、図1、図2及び図4に示すように、その制御部収容室6の上部を閉じるカバー16には、運転スイッチ等を備えた操作部17が設けられている。図示を省略するが、操作部17には、この製パン機の運転開始及び停止を指令する運転スイッチのほかに、自動焼き上げスイッチ、焼き上げ時刻を指令するタイマー、及び、目標温度設定スイッチ等が設けられている。
【0042】
更に、図3及び図4に示すように、伝動部収容室7には、電動モータ21と一対の駆動軸20,20とを伝動連結する伝動部40が設けられている。
伝動部40は、一対の駆動側連結具25,25の夫々における底板部材C1から下方に突出する回転軸部(図示省略)に、夫々固定された一対の小プーリ41,41と、一方の小プーリ41の下側に突出する回転軸部(図示省略)に固定された大プーリ42と、電動モータ21の出力軸21a及び大プーリ42にわたって巻回された第1タイミングベルト43と、一対の小プーリ41,41にわたって巻回された第2タイミングベルト44とを備えて構成されている。これにより、電動モータ21により、一対の駆動軸20,20が回転駆動されるように構成されている。
【0043】
図2及び図3に示すように、蓋体3は、ケーシングCの上方開口部4の後縁部(図3の右側)に、ヒンジ構造によりケーシングCの長手方向に沿った軸心D周りに揺動自在に設けられて、その揺動によりケーシングCの上方開口部4を開閉自在に構成されている。なお、蓋体3の詳細構成については後述する。
【0044】
次に、本願の特徴的構成について説明する。
本発明に係る製パン機の蓋体3は、上述のとおり、軸心D周りに揺動してケーシングCの上方開口部4を開閉自在に構成されている。
図3〜図7、特に、図5に示すように、蓋体3は、上部に配設される外蓋30と、下部に配設される内蓋としての遮熱板31と、外蓋30と遮熱板31との間に配設され、少なくとも可視光を透過して外部から加熱室5内を視認可能な耐熱板ガラス10からなる確認窓Bと、確認窓Bを構成する耐熱板ガラス10を加熱して当該耐熱板ガラス10における結露を防止する結露防止用電熱ヒータ9と、結露防止用電熱ヒータ9を保護するヒータカバー32とを備える。
【0045】
図5及び図6に示すように、外蓋30は、耐熱樹脂により形成され、最も上方に位置する外側カバー30A、外側カバー30Aの下方に位置する内側カバー30B及び枠部材30Cを備えている。なお、外蓋30は、縦断側面視で、後方から前方(図6の右側から左側)へ行くに連れて、若干下方に傾斜する傾斜状に形成されている。
【0046】
図5及び図6に示すように、外側カバー30Aは、平面視で長方形状に形成された周壁部材C2と同様の長方形状に形成され、縦断側面視及び縦断正面視で上方に膨出するように概略逆U字形状に形成されている。外側カバー30Aの前側(図6の左側)には、外側カバー30Aを摘んで開閉可能な鍔部30aが設けられている。また、図7に示すように、外側カバー30Aには、確認窓Bの耐熱板ガラス10の形状に対応する長方形状の開口30bが、長手方向を外側カバー30Aの長手方向に沿わせるように外側カバー30Aに形成されている。この開口30bは、外側カバー30Aの左右方向(図7の上下方向)の略中央位置で、前後方向(図7の左右方向)の中央位置より、やや前方に偏倚した位置に形成されている。
【0047】
図5及び図6に示すように、内側カバー30Bは、平面視で外側カバー30Aと同様の長方形状の外形を備えた枠状に形成され、縦断側面視及び縦断正面視で外側カバー30Aと同様に上方に膨出するように概略逆U字形状に形成されている。内側カバー30Bには、外側カバー30Aの開口30bよりも大きな長方形状の開口30cが形成されている。なお、図5及び図7に示すように、外側カバー30A及び内側カバー30Bの後側(図6の右側)には、加熱室5内の水蒸気を排出可能な蒸気口30dが貫通形成されている。
【0048】
図5及び図6に示すように、枠部材30Cは、平面視で長方形状の枠状に形成され、外側カバー30Aの長方形状の開口30bと同程度の大きさの長方形状の開口30eを備えている。なお、枠部材30Cは、後述する確認窓Bの耐熱板ガラス10(長方形状)と略相似形で、若干大きな長方形状に形成される。また、枠部材30Cには、開口30eの開口縁部の下側に、開口30eの全周に亘って周回し、下方側に拡径した段部が形成されている。この段部は、開口30eよりも大きな長方形状で、後述する長方形状の耐熱板ガラス10と略同じ大きさに形成される。従って、耐熱板ガラス10の上面を当該段部の下面に当接させた状態で、当該耐熱板ガラス10を下方から嵌合可能に構成されており、当該枠部材30Cの段部が、耐熱板ガラス10を下方から嵌合させる嵌合部30f(外蓋30の開口縁部の下側の一例)とされる。
【0049】
図5及び図6に示すように、遮熱板31は、金属により形成され、平面視で外蓋30の外側カバー30A及び内側カバー30Bと同様に、長方形状に形成され、縦断側面視及び縦断正面視で外側カバー30Aと同様に上方に膨出するように概略逆U字形状に形成されている。遮熱板31は、ケーシングCの上方開口部4に対向する上方に位置して(図3参照)、加熱室5内の上部を区画形成する。具体的には、遮熱板31は、加熱室5内の上部において、加熱室5内の天面を区画形成する天面部31aと加熱室5内の側面を区画形成する側面部31bとを備えるように、上方に膨出している。なお、加熱室5内の下部及び側部は、ケーシングCにより区画形成される。
遮熱板31の天面部31aには、確認窓Bの耐熱板ガラス10の形状に対応する長方形状の開口31cが、長手方向を遮熱板31の長手方向に沿わせるように遮熱板31に形成されている。この開口31cは、天面部31aの左右方向(図7の上下方向)の略中央位置で、前後方向(図7の左右方向)の中央位置より、やや前方に偏倚した位置に形成されている。また、この開口31cは、外側カバー30Aの開口30b及び枠部材30Cの開口30eと略同じ大きさの長方形状とされるが、耐熱板ガラス10よりも若干小さな大きさの長方形状とされる。この開口31cの開口縁部には、開口31cの全周に亘って周回する状態で、天面部31aから上方に膨出する膨出部31pが形成されている。従って、この膨出部31pの上端部に開口31cが形成されることとなり、この膨出部31pの上端部が、枠部材30Cの嵌合部30fに嵌合された耐熱板ガラス10の外周縁部10aを下方から取り囲む状態で全周に亘って当接支持する当接支持部31d(内蓋の開口縁部の上側の一例)とされる。また、天面部31aに形成された膨出部31pにより、当該膨出部31p内には上方に膨出した空間S1が形成される(図6参照)。
【0050】
図5〜図7に示すように、確認窓Bを構成する耐熱板ガラス10は、長方形状で透明な板状に形成される。具体的には、枠部材30Cの段部である嵌合部30fに下方から嵌合できる大きさで、遮熱板31における当接支持部31dにより下方から当接支持できる大きさの長方形状に形成されている。そして、嵌合部30fに嵌合され当接支持部31dにより当接支持された状態では、外側カバー30Aの表面と略平行に配設される。
【0051】
図5〜図7に示すように、ヒータカバー32は、金属により形成され、平面視で遮熱板31の天面部31aと同様に、長方形状に形成され、縦断側面視及び縦断正面視で天面部31aの下面に沿う形状に形成されている。ヒータカバー32には、確認窓Bの耐熱板ガラス10及び遮熱板31の膨出部31pの形状よりも若干大きな長方形状の開口32aが、長手方向をヒータカバー32の長手方向に沿わせるようにヒータカバー32に形成されている。この開口32aは、ヒータカバー32の左右方向(図7の上下方向)の略中央位置で、前後方向(図7の左右方向)の中央位置より、やや前方に偏倚した位置に形成されている。ヒータカバー32の最外周縁部及び開口32aの開口縁部には、上方に突出する係止片32bが複数設けられている。そして、ヒータカバー32が遮熱板31の天面部31aに対向して当該天面部31aの下部に配設された状態で、当該係止片32bを遮熱板31の天面部31aの孔31eにそれぞれ挿入し捩じることにより、ヒータカバー32が遮熱板31に係止される。これにより、遮熱板31とヒータカバー32との上下方向間には、後述する結露防止用電熱ヒータ9が配設される空間S2が形成される(図6参照)。
【0052】
ここで、ヒータカバー32をアルミニウムで構成し、遮熱板31をガルバリウムで構成することにより、ヒータカバー32の熱伝導率が、遮熱板31の熱伝導率よりも高く設定されている。また、外側カバー30Aの開口30b、内側カバー30Bの開口30c、枠部材30Cの開口30e、遮熱板31の開口31c、及びヒータカバー32の開口32aは、それぞれ確認窓Bの開口に対応する箇所に形成された開口となっている。
【0053】
よって、蓋体3は、加熱室5に隣接する箇所に、遮熱板31、ヒータカバー32及び耐熱板ガラス10が配設される構成となっている(図6参照)。
【0054】
図5〜図7に示すように、結露防止用電熱ヒータ9は、長尺状のシーズヒータで構成され、平面視で耐熱板ガラス10の外周の略全周を周回して取り囲むように屈曲した形状で、遮熱板31とヒータカバー32との間に形成される空間S2内に配設される。この際には、結露防止用電熱ヒータ9はヒータカバー32の上面に当接した状態で、結露防止用電熱ヒータ9の上側からアルミ箔9aをヒータカバー32に貼り付けることにより固定される。また、結露防止用電熱ヒータ9は、遮熱板31に隣接するが、当接しない状態で配設されている。さらに、結露防止用電熱ヒータ9の基端9bと終端9cの位置は、蓋体3の後側で、加熱室5内における制御部収納室6とは反対側(図7の上側)に偏移した位置に配設されている。
【0055】
次に、蓋体3の組み付け状態について説明する。
図5に示すように、外蓋30は、外側カバー30Aに、下方から内側カバー30Bが装着され固定手段(図示せず)により固定されるとともに、枠部材30Cが内側カバー30Bの開口30eを介して下方から装着されることで一体的に構成される。この際には、外側カバー30Aの開口30bと枠部材30Cの開口30eとは、略同形状の開口として形成されている(図6参照)。
【0056】
一方で、図5に示すように、ヒータカバー32と結露防止用電熱ヒータ9との固定は、ヒータカバー32の上面に結露防止用電熱ヒータ9を当接させた状態で、当該結露防止用電熱ヒータ9の上側からアルミ箔9aをヒータカバー32の上面に貼り付けることで固定される。そして、ヒータカバー32の各係止片32bが遮熱板31の各孔31eに挿入されるように、ヒータカバー32を遮熱板31の下方から当該遮熱板31に装着し各係止片32bを捩ることで、ヒータカバー32と結露防止用電熱ヒータ9と遮熱板31とを固定する(図6参照)。
【0057】
そして、耐熱板ガラス10を下方から外蓋30における枠部材30Cの嵌合部30fに嵌合させた状態で、遮熱板31を外蓋30の下方から装着する。このとき、遮熱板31の当接支持部31dが耐熱板ガラス10の外周縁部10aを下方から全周に亘って取り囲むように当接支持する状態となる。その後、遮熱板31と外蓋30とを固定手段(図示せず)により固定することで、蓋体3が組み付けられた状態となる。
【0058】
従って、耐熱板ガラス10を蓋体3に固定する固定構造は、耐熱板ガラス10を枠部材30Cに形成された嵌合部30fに下方から嵌合させ、この嵌合された耐熱板ガラス10の外周縁部10aを遮熱板31の当接支持部31dにより下方から当接支持させるだけでよく、非常に簡単な構造となる。さらに、耐熱板ガラス10が枠部材30Cの嵌合部30fと遮熱板31の当接支持部31dとにより挟み込まれた状態で固定され、しかも、耐熱板ガラス10の外周縁部10aが、当該外周縁部10aの略全周に亘って遮熱板31の当接支持部31dにより下方から取り囲まれた状態で当接支持されるため、耐熱板ガラス10の確実な固定が実現される。
【0059】
さらに、嵌合部30fに嵌合された耐熱板ガラス10の外周縁部10aが、金属製の遮熱板31の当接支持部31dにより下方から取り囲まれた状態で当接支持されているので、結露防止用電熱ヒータ9の熱を、加熱室5内の上部を区画形成する遮熱板31、特に、遮熱板31の当接支持部31dの略全周を介して、加熱室5内において耐熱板ガラス10の下方の空気に伝熱させ、良好に加熱することができる。加えて、結露防止用電熱ヒータ9の熱を、耐熱板ガラス10を当接支持する遮熱板31の当接支持部31dの略全周を介して、耐熱板ガラス10の外周縁部10aの略全周に直接伝熱させ、当該耐熱板ガラス10自身を良好に加熱することができる。従って、耐熱板ガラス10を固定する機能を備えた遮熱板31を利用しながら、結露防止用電熱ヒータ9からの伝熱により、加熱室5内における耐熱板ガラス10の下方の空気及び耐熱板ガラス10自身の加熱を同時に行うことができ、当該空気及び耐熱板ガラス10の温度を確実に且つ容易に上昇させることができる。このため、加熱室5内において製パン材料から水蒸気が発生したとしても、耐熱板ガラス10の結露による曇りを確実に防止することができる。
【0060】
また、金属製の遮熱板31に隣接して配設される結露防止用電熱ヒータ9が、屈曲した形状に形成され、平面視で、耐熱板ガラス10を取り囲む状態で配設されているので、結露防止用電熱ヒータ9からの熱が、耐熱板ガラス10を取り囲む遮熱板31の当接支持部31dの略全周に亘って容易且つ確実に伝熱され、さらに、当該当接支持部31dを介して耐熱板ガラス10の外周縁部10aの略全周に亘って容易且つ確実に伝熱されることとなる。従って、結露防止用電熱ヒータ9の熱により、耐熱板ガラス10の下方の空気及び耐熱板ガラス10自身の温度を、耐熱板ガラス10の略全周に亘って偏りの少ない状態で上昇させることができ、より確実に結露による曇りを防止することができる。
【0061】
加えて、加熱室5内の上部を区画形成する遮熱板31が、天面部31aと側面部31bとを備えるので、加熱室5内の上部の空間をできるだけ大きく確保しながら、遮熱板31を簡易な構成とすることができ、低コストを実現することができる。また、遮熱板31の天面部31aには上方に膨出する膨出部31pが設けられ、当該膨出部31pの上端部は、嵌合部30fに嵌合された耐熱板ガラス10の外周縁部10aを下方から取り囲む状態で当接支持する当接支持部31dとされている。このため、電熱ヒータ8或いは結露防止用電熱ヒータ9により加熱され比較的高温となった空気が上昇する際、加熱室5内の上部において遮熱板31の側面部31b及び天面部31aに沿って当該天面部31aに形成された膨出部31p内の空間S1に案内される。従って、当該空間S1に案内された比較的高温の空気により、耐熱板ガラス10の下方の空気及び耐熱板ガラス10自身の温度をより確実に上昇させることができ、より確実に結露による曇りを防止することができる。また、膨出部31pの上端部は耐熱板ガラス10の外周縁部10aを当接支持する当接支持部31dであるので、当該空間S1に案内された比較的高温の空気により当接支持部31dが加熱され、当該当接支持部31dを介して、より一層耐熱板ガラス10の外周縁部10aを加熱することができる。
【0062】
そして、結露防止用電熱ヒータ9から伝熱する熱は、結露防止用電熱ヒータ9に当接する金属製のヒータカバー32及び金属製の遮熱板31を介して間接的に、或いは、直接的に耐熱板ガラス10に伝熱される。加えて、結露防止用電熱ヒータ9から伝熱する熱は、遮熱板31により遮熱されヒータカバー32側に反射されて間接的に、或いは、ヒータカバー32を介して直接的に、下方に位置する製パン材料の上部にもある程度伝熱される。従って、結露防止用電熱ヒータ9を、主として耐熱板ガラス10を加熱する構成としながら、加熱室5内における製パン材料の上部の加熱もある程度行えるように、兼用することができる。
【0063】
図3〜図7に示すように、製パン機には、蓋体3の温度を計測する蓋体温度計測手段60、加熱室5内の温度を計測する加熱室温度計測手段61を備えて構成される。これら温度計測手段は、公知の温度計測手段で構成され、本実施形態では、公知のサーミスタで構成されている。各温度計測手段からの温度計測結果は、制御部15に出力されるように構成されている。
【0064】
蓋体温度計測手段60は、図3、図5〜図7に示すように、遮熱板31とヒータカバー32との間に形成される空間S2内において、結露防止用電熱ヒータ9に隣接する状態で、ヒータカバー32に貼り付けられたアルミ箔9a上に配設されている。そして、蓋体温度計測手段60は、蓋体3における加熱室5に隣接する箇所の温度である、ヒータカバー32の温度を計測可能に構成され、当該ヒータカバー32の温度を耐熱板ガラス10(確認窓の板状透過体)の温度に相当する温度として計測可能に構成されている。なお、蓋体温度計測手段60が、蓋体3における加熱室5に隣接する箇所の温度として遮熱板31や耐熱板ガラス10の温度を計測するように、適切な位置に配置して構成することもできる。
【0065】
加熱室温度計測手段61は、図3に示すように、ケーシングCの周壁部材C2の外周面のうち後面側(図3の右側)で、周壁部材C2の上下方向の中間付近よりもやや上方付近に配設されており、加熱室5内の温度に相当する温度を計測可能に構成され、間接的にパンケース2内の製パン材料の温度を見るように構成されている。なお、加熱室温度計測手段61は、加熱室5内の温度を適切に計測可能であれば、底板部材C1や周壁部材C2の外周面や内周面、或いはパンケース2の外周面等その他の適宜位置に配設することもできる。
【0066】
次に、製パン機にて、製パン材料からパンを焼き上げる際の、制御部15等の動作(製パン機の運転方法)について説明する。
作業者が、蓋体3を開放してパンケース2内に製パン材料を入れ、操作部17の自動焼き上げスイッチを押圧することにより、運転開始を指令する。
すると、図8のタイムチャートに示すように、制御部15は、予め設定された運転状態で、電熱ヒータ8を加熱作動させて加熱室5内を予熱する予熱工程、及び、電動モータ21を作動させて混練羽根22を回転させることによりパンケース2内の製パン材料を混練する混練工程の後、電熱ヒータ8を加熱作動させてパンケース2内の製パン材料を発酵させる発酵工程を少なくとも1回実行し、さらに、電熱ヒータ8を加熱作動させて製パン材料を焼き上げる焼成工程を順次自動的に実行し、パンを焼き上げる。なお、予熱工程と混練工程との間、混練工程と焼成工程との間に、電気ヒータ8や電動モータ21等を作動させず放置する放置工程を所定時間実行するように構成してもよい。
【0067】
そして、制御部15は、発酵工程を合計3回行い、2回目及び3回目の発酵工程の開始後の所定の時間において、電動モータ21を作動させて混練羽根22を回転させることにより、パンケース2内の製パン材料を混練して、製パン材料中の気体(空気)を抜くガス抜き工程を夫々行っている。なお、このガス抜き工程においても製パン材料の発酵は進んでいる。また、制御部15は、上記焼成工程の終了後に必要に応じて、電熱ヒータ8を加熱作動させて焼き上がったパンを保温する保温工程を実行するが、図8においては、焼成工程及び保温工程のタイムチャートは、図示を省略している。
予熱工程、混練工程、3回の発酵工程(2回のガス抜き工程を含む)、焼成工程、及び、保温工程の各工程を実行する工程時間は、夫々の工程に対応して設定されている。なお、図8に示すタイムチャートにおいて、各工程を示す幅は、実際の工程時間の時間幅を示すものではない。
【0068】
説明を加えると、制御部15は、予熱工程、混練工程、各発酵工程、焼成工程、保温工程において、加熱室温度計測手段61により計測され当該制御部15に入力された加熱室5内の計測温度が、各工程に応じて設定された製パン材料加熱用目標温度になるように、電熱ヒータ8の加熱作動を制御(例えば、通電駆動をオンオフ制御)するように構成されている。このような製パン材料加熱用目標温度の一例を、図8(b)に1点鎖線で示し、電熱ヒータ8の通電駆動のオンオフ制御の一例を、図8(c)に1点鎖線で示す。なお、タイムチャートにて示す電熱ヒータ8のオンオフの時間間隔は、電熱ヒータ8のオンオフを模式的に示すものであり、実際の時間間隔を示すものではない。
また、図8(b)に示すように、電熱ヒータ8の製パン材料加熱用目標温度は、予熱工程及び混練工程では27℃に設定され、1回目及び2回目の発酵工程では28℃に設定され、3回目の発酵工程では30℃に設定されている。
【0069】
ここで、混練工程及び発酵工程、特に混練工程においては、製パン材料に水分が十分に含まれていることもあり、また、電熱ヒータ8による加熱及び混練羽根22の回転により発生する摩擦による加熱によって、製パン材料から水蒸気が比較的多く発生しやすく、この水蒸気により、加熱室5内の上部に配設される耐熱板ガラス10の内面(加熱室5側の面)にて結露を発生させ曇りの原因となりやすい。
【0070】
このような場合でも、制御部15は、電熱ヒータ8の加熱作動と並行して、混練工程及び発酵工程において、蓋体温度計測手段60により計測され当該制御部15に入力されたヒータカバー32(蓋体3における加熱室5に隣接する箇所)の計測温度が、混練工程及び発酵工程に応じて設定された結露防止用目標温度になるように、結露防止用電熱ヒータ9の加熱作動を制御(例えば、通電駆動をオンオフ制御)するように構成されている。このような結露防止用目標温度の一例を、図8(b)に実線で示し、結露防止用電熱ヒータ9の通電駆動のオンオフ制御の一例を、図8(c)に実線で示す。なお、タイムチャートにて示すオンオフの時間間隔は、結露防止用電熱ヒータ9のオンオフを模式的に示すものであり、実際の時間間隔を示すものではない。
また、図8(b)に示すように、結露防止用電熱ヒータ9の結露防止用目標温度は、混練工程では60℃に設定され、1回目〜3回目の発酵工程では40℃に設定されている。なお、図8に示す例においては、予熱工程では、結露防止用電熱ヒータ9の加熱作動は実行されず、電熱ヒータ8の加熱作動のみが実行される。
【0071】
従って、制御部15は、混練工程及び発酵工程において、結露防止用電熱ヒータ9の結露防止用目標温度を電熱ヒータ8の製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度に設定して、結露防止用電熱ヒータ9及び電熱ヒータ8を加熱作動させている。また、制御部15は、混練工程における結露防止用目標温度を、発酵工程における結露防止用目標温度よりも高い温度に設定して、結露防止用電熱ヒータ9及び電熱ヒータ8を加熱作動させている。
【0072】
このように制御部15により結露防止用電熱ヒータ9及び電熱ヒータ8の加熱作動が制御されることにより、図8(a)に示すように、混練工程及び発酵工程において、確認窓Bの耐熱板ガラス10における内面(加熱室5側の面)の温度(図8(a)の実線参照)を、製パン材料の温度と略同等(製パン材料の温度に対して±2℃程度の範囲内)の温度(図8(a)の一点鎖線参照)とすることができる。また、この際には、制御部15により結露防止用電熱ヒータ9及び電熱ヒータ8の加熱作動が制御されることにより、図8(a)に示すように、混練工程及び発酵工程において、製パン材料の温度を、製パン材料の発酵が阻害される温度である40℃よりも低く維持することができる。ここで、図8(a)に示す耐熱板ガラス10の温度は、図示しない温度計測手段により計測された耐熱板ガラス10における内面(加熱室5側の面)の温度であり、製パン材料の温度は、図示しない温度計測手段により計測された温度である。なお、混練工程及び発酵工程において、確認窓Bの耐熱板ガラス10における内面(加熱室5側の面)の温度を、製パン材料の温度よりも高くなるようにしてもよい。
【0073】
従って、各工程ごとに設定された結露防止用目標温度を目標温度として、耐熱板ガラス10を結露防止用電熱ヒータ9により適切に加熱することができ、特に、各工程のうち製パン材料から最も水蒸気が発生する混練工程及び混練工程に次いで製パン材料から水蒸気の発生量が多い発酵工程において、製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度で耐熱板ガラス10の加熱を行い、早期且つ確実に当該耐熱板ガラス10を加熱することができ、確実に耐熱板ガラス10の結露を防止することができる。
【0074】
〔別実施形態〕
(A)上記実施形態では、制御部15が、混練工程と焼成工程との間に発酵工程を3回実行する構成としたが、発酵工程の回数は適宜変更することができ、例えば、発酵工程を1回や2回、或いは4回以上実行する構成とすることができる。具体的には、例えば、図9に示すように、発酵工程を2回実行する構成で、ガス抜き工程を2回目の発酵工程の開始後の所定時間内に1回だけ実行する構成としてもよい。この場合、図9(b)に示すように、例えば、製パン材料加熱用目標温度を、予熱工程及び混練工程では27℃とし、1回目の発酵工程では29℃とし、2回目の発酵工程では30℃とするとともに、結露防止用目標温度を、混練工程では60℃とし、1回目及び2回目の発酵工程では40℃とすることができる。この結果、図9(a)に示すように、混練工程及び発酵工程において、確認窓Bの耐熱板ガラス10における内面(加熱室5側の面)の温度(図9(a)の実線参照)を、製パン材料の温度と略同等(製パン材料の温度に対して±2℃程度の範囲内)の温度(図9(a)の一点鎖線参照)とすることができ、製パン材料の温度を、製パン材料の発酵が阻害される温度である40℃よりも低く維持することができる。
【0075】
(B)上記実施形態では、制御部15が、予熱工程において、結露防止用電熱ヒータ9の加熱作動を行わない構成とし、混練工程及び発酵工程における結露防止用目標設定温度を各工程において異なる温度となるように設定して、結露防止用電熱ヒータ9を加熱作動させる構成としたが、特に、この構成に限られるものではない。例えば、予熱工程においても結露防止用電熱ヒータ9の加熱作動を行う構成とすることもでき、また、予熱工程、混練工程及び発酵工程における結露防止用電熱ヒータ9の結露防止用目標温度の夫々を、共通の温度に設定することもできる。
具体的には、図10に示すように、基本的に上記実施形態と同様に、制御部15は、予熱工程、混練工程、3回の発酵工程、焼成工程(図示せず)、保温工程(図示せず)を順次実行するように構成されている。そして、図10(b),(c)に示すように、制御部15は、予熱工程において、電熱ヒータ8を加熱作動させると共に、結露防止用電熱ヒータ9も加熱作動させ、この際、予熱工程、混練工程及び発酵工程における各結露防止用目標温度を、共通の温度(例えば、40℃)に設定することもできる。これにより、各工程ごとに結露防止用目標温度を設定する必要が無く簡易な構成とすることができながら、結露防止用電熱ヒータ9により適切に耐熱板ガラス10を加熱することができ、各工程において確認窓Bの結露を防止することができる。なお、製パン材料加熱用目標温度は、上記実施形態と同様に、例えば、予熱工程及び混練工程では27℃とし、1回目及び2回目の発酵工程では28℃とし、3回目の発酵工程では30℃とすることができる。この結果、図10(a)に示すように、予熱工程、混練工程及び発酵工程において、確認窓Bの耐熱板ガラス10における内面(加熱室5側の面)の温度(図10(a)の実線参照)を、製パン材料の温度と略同等(製パン材料の温度に対して±2℃程度の範囲内)の温度(図10(a)の一点鎖線参照)とすることができ、製パン材料の温度を、製パン材料の発酵が阻害される温度である40℃よりも低く維持することができる。
このように、予熱工程で結露防止用電熱ヒータ9を加熱作動させる構成とすれば、各工程のうち最も水蒸気が発生する混練工程の前の予熱工程において、製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度で確認窓Bにおける耐熱板ガラス10の加熱を行い、当該耐熱板ガラス10の温度を予め上昇させておくことができ、混練工程の初期から耐熱板ガラス10に結露が生じるのをより確実に防止することができる。また、予熱工程でも耐熱板ガラス10に結露が生じるのを確実に防止することができる。なお、図10(b)において、混練工程における結露防止用目標温度を、予熱工程や発酵工程における結露防止用目標温度よりも高く(例えば、60℃や80℃等)設定することもできる。
(C)上記別実施形態(B)において、制御部15が、混練工程と焼成工程との間に、例えば、発酵工程を1回や2回、或いは4回以上実行する構成とすることもできる。具体的には、例えば、図11に示すように、発酵工程を2回実行する構成で、ガス抜き工程を2回目の発酵工程の開始後の所定時間内に1回だけ実行する構成としてもよい。
この場合、図11(b)に示すように、例えば、製パン材料加熱用目標温度を、予熱工程及び混練工程では27℃とし、1回目の発酵工程では29℃とし、2回目の発酵工程では30℃とするとともに、結露防止用目標温度を、予熱工程、混練工程、1回目及び2回目の発酵工程で共通の40℃とすることができる。
これら結果、図11(a)に示すように、予熱工程、混練工程及び発酵工程において、確認窓Bの耐熱板ガラス10における内面(加熱室5側の面)の温度(図11(a)の実線参照)を、製パン材料の温度と略同等(製パン材料の温度に対して±2℃程度の範囲内)の温度(図11(a)の一点鎖線参照)とすることができ、製パン材料の温度を、製パン材料の発酵が阻害される温度である40℃よりも低く維持することができる。
【0076】
(D)上記実施形態では、加熱室温度計測手段61により計測される加熱室5内の計測温度が、各工程に応じて設定された製パン材料加熱用目標温度になるように、電熱ヒータ8の加熱作動を制御し、蓋体温度計測手段60により計測されるヒータカバー32(蓋体3における加熱室5に隣接する箇所)の計測温度が、混練工程及び発酵工程に応じて設定された結露防止用目標温度になるように、結露防止用電熱ヒータ9の加熱作動をフィードバック制御するように構成されている。
しかしながら、各工程における結露防止用目標温度や製パン材料加熱用目標温度を目標温度とするが、加熱室温度計測手段61や蓋体温度計測手段60による各計測温度に関係なく、経験的に設定した電熱ヒータ8や結露防止用電熱ヒータ9の電力量で加熱作動を制御することもできる。
また、例えば、製パン機の外部の温度、確認窓Bの耐熱板ガラス10の内面の温度及び製パン材料の温度を、図示しない温度計測手段によりそれぞれ計測し、当該計測結果に基づいて耐熱板ガラス10の温度が製パン材料の温度と略同等或いは当該温度よりも高くなるように、結露防止用目標温度及び製パン材料加熱用目標温度を適宜設定して、ヒータカバー32(蓋体3における加熱室5に隣接する箇所)の温度及び加熱室5内の温度が当該設定された結露防止用目標温度及び製パン材料加熱用目標温度となるように、結露防止用電熱ヒータ9及び電熱ヒータ8の加熱作動をフィードバック制御する構成としてもよい。
【0077】
(E)上記実施形態では、制御部15が、予熱工程や保温工程、発酵工程中におけるガス抜き工程を適宜を実行するように構成したが、これら工程の一つ以上を省略する構成としてもよい。
【0078】
(F)上記実施形態では、図7に示すように、平面視で、結露防止用電熱ヒータ9を耐熱板ガラス10の外周の略全周を周回して取り囲むように配設し、結露防止用電熱ヒータ9の基端9b及び終端9cを蓋体3の後側で、且つ制御部収容室6とは反対側に配設したが、結露防止用電熱ヒータ9からの熱を確認窓Bの耐熱板ガラス10に良好に伝熱できる構成であれば、その他の構成を採用することもできる。
例えば、図12(a)に示すように、平面視で、結露防止用電熱ヒータ90を耐熱板ガラス10の周囲を取り囲むように配設し、結露防止用電熱ヒータ90の基端9b及び終端9cを、蓋体3の後側(図12(a)の上側)で、且つ加熱室5内における長手方向の中間位置近傍に配設することもできる。
また、例えば、図12(b)に示すように、平面視で、結露防止用電熱ヒータ91の基端9b及び終端9cを、蓋体3の後側(図12(b)の上側)で、且つ加熱室5内における制御部収容室6側(図12(b)の右側)に配設し、結露防止用電熱ヒータ91を耐熱板ガラス10の後側(図12(b)の上側)において当該耐熱板ガラス10の長手方向に沿って往復するように配設することもできる。
さらに、例えば、図12(c)に示すように、平面視で、結露防止用電熱ヒータ92の基端9b及び終端9cを、蓋体3の後側(図12(c)の上側)で、且つ耐熱板ガラス10の長手方向の両端に振り分けて配設し、結露防止用電熱ヒータ92を耐熱板ガラス10の後側(図12(c)の上側)において耐熱板ガラス10の長手方向に沿うように配設することもできる。
その他、図示しないが、結露防止用電熱ヒータ9を、平面視で概ね環状に湾曲形成する形態でも良い。
なお、上記いずれの構成においても、上記実施形態と同様に、結露防止用電熱ヒータ9の近傍には、ヒータカバー32(蓋体3における加熱室5に隣接する箇所)の温度である、耐熱板ガラス10の温度に相当する温度を計測する蓋体温度計測手段60が配設されているが、蓋体温度計測手段60を配設せず、経験的に設定した電熱ヒータ8や結露防止用ヒータ9の電力量で加熱作動を制御することにより、ヒータカバー32の温度が結露防止用目標温度となるようにしてもよい。
【0079】
(G)上記実施形態では、ケーシングCの上方に上方開口部4を設け、当該上方開口部4を蓋体3により閉塞する構成としたが、この構成に限定されるものではなく、例えば、ケーシングCの前方や側方に開口部を設け、当該開口部を蓋体3により閉塞する構成としてもよい。
【0080】
(H)上記実施形態では、確認窓Bを構成する板状透過体としての耐熱板ガラス10を長方形状に形成したが、加熱室5内を視認することができる構成であれば、特にこの構成に限定されるものではない。例えば、円形状、正方形状、多角形状等、適宜その形状を変更することができる。
【0081】
(I)上記実施形態では、確認窓Bを構成する板状透過体として耐熱板ガラス10を用いたが、少なくとも可視光を透過でき、加熱室5内を視認することができる構成であれば、特にこの構成に限定されるものではない。例えば、透明な耐熱樹脂等を採用することができる。
【0082】
(J)上記実施形態では、結露防止用電熱ヒータ9を内蓋としての遮熱板31に隣接する状態で蓋体30に配設する際に、遮熱板31にヒータカバー32を取り付け、結露防止用電熱ヒータ9をヒータカバー32に当接させる構成について説明したが、特にこの構成に限定されるものではない。例えば、結露防止用電熱ヒータ9をヒータカバー32から離間させて配置することもでき、遮熱板31に当接させて配置することもできる。また、ヒータカバー32を省略して、結露防止用電熱ヒータ9を遮熱板31近傍に遮熱板31から離間させて配設することもでき、ヒータカバー32を省略して、結露防止用電熱ヒータ9を遮熱板31に当接させて配設することもできる。
【0083】
(K)上記実施形態では、遮熱板31の当接支持部31dが、枠部材30Cの嵌合部30fに嵌合された耐熱板ガラス10の外周縁部10aを下方から取り囲む状態で当接支持するにあたり、当接支持部31dが外周縁部10aの全周に亘って当接支持するように構成したが、例えば、当接支持部31dが外周縁部10aを下方から取り囲み、その全周の少なくとも一部(例えば、外周縁部10aに沿って等間隔に6箇所以上)で当接支持する構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
以上説明したように、加熱室内に存在する水蒸気による確認窓の曇りを、簡易且つ確実に防止できる製パン機及びその製パン機の運転方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0085】
2 パンケース
3 蓋体
4 上方開口部(開口部)
5 加熱室
8 電熱ヒータ
9 結露防止用電熱ヒータ
10 耐熱板ガラス(板状透過体)
10a 外周縁部(板状透過体)
15 制御部
22 混練羽根
30 外蓋
30f 嵌合部(外蓋の開口縁部の下側)
31 遮熱板(内蓋)
31d 当接支持部(内蓋の開口縁部の上側)
32 ヒータカバー
60 蓋体温度計測手段
61 加熱室温度計測手段
B 確認窓
C ケーシング
S2 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を介して内部にパンケースを収容するケーシングと、前記ケーシングの開口部を閉塞する蓋体と、前記ケーシングと前記蓋体とにより形成される加熱室内を加熱する電熱ヒータと、少なくとも可視光を透過する板状透過体からなり前記蓋体に配設される確認窓と、前記電熱ヒータの運転を制御する制御部とを備え、
前記制御部が、前記パンケース内に配設された混練羽根により前記パンケース内の製パン材料を混練する混練工程と、前記電熱ヒータを加熱作動させて前記製パン材料を発酵する発酵工程を少なくとも1回実行し、さらに、前記電熱ヒータを加熱作動させて前記製パン材料を焼き上げる焼成工程を実行するように構成された製パン機であって、
前記加熱室内に配設される前記電熱ヒータが、前記制御部により前記加熱室内の温度が製パン材料加熱用目標温度となるように通電駆動されるとともに、
前記電熱ヒータとは別に、前記確認窓における結露を防止する結露防止用電熱ヒータが前記蓋体に配設され、当該結露防止用電熱ヒータが、前記制御部により前記蓋体における前記加熱室に隣接する箇所の温度が結露防止用目標温度となるように通電駆動される構成で、
前記制御部が、前記混練工程において、前記結露防止用目標温度を前記製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度に設定して、前記結露防止用電熱ヒータ及び前記電熱ヒータを加熱作動させる製パン機。
【請求項2】
前記制御部が、前記発酵工程において、前記結露防止用目標温度を前記製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度に設定して、前記結露防止用電熱ヒータ及び前記電熱ヒータを加熱作動させる請求項1に記載の製パン機。
【請求項3】
前記混練工程における前記結露防止用電熱ヒータの結露防止用目標温度が、前記発酵工程における結露防止用目標温度よりも高い温度に設定されている請求項1又は2に記載の製パン機。
【請求項4】
前記制御部が、少なくとも前記混練工程において、前記確認窓の温度が前記製パン材料の温度と略同等或いは当該温度よりも高くなるように、前記結露防止用電熱ヒータ及び前記電熱ヒータの何れか一方又は両方の加熱作動を制御する請求項1〜3の何れか一項に記載の製パン機。
【請求項5】
前記制御部が、前記混練工程及び前記発酵工程において、前記製パン材料の温度を、前記製パン材料の発酵が阻害される温度である40℃よりも低く維持するように、前記結露防止用電熱ヒータ及び前記電熱ヒータの何れか一方又は両方の加熱作動を制御する請求項1〜4の何れか一項に記載の製パン機。
【請求項6】
前記開口部として上方に開口する上方開口部が前記ケーシングに形成され、
前記上方開口部を閉塞する前記蓋体が、外蓋と、当該外蓋の下部に配設され前記加熱室内の上部を区画形成する金属製の内蓋とを備え、
前記結露防止用電熱ヒータが前記内蓋に隣接する状態で前記蓋体に配設され、
前記確認窓に対応する開口が、前記外蓋及び前記内蓋に形成され、
前記外蓋の開口縁部の下側が、前記確認窓を構成する前記板状透過体を下方から嵌合させる嵌合部とされ、前記内蓋の開口縁部の上側が、前記嵌合部に嵌合された前記板状透過体の外周縁部を下方から取り囲む状態で当接支持する当接支持部とされている請求項1〜5の何れか一項に記載の製パン機。
【請求項7】
前記結露防止用電熱ヒータが屈曲或いは湾曲した形状に形成され、平面視で、前記板状透過体を取り囲む状態で配設されており、
金属製のヒータカバーが、前記内蓋としての遮熱板に対向して当該遮熱板の下部に配設され、前記結露防止用電熱ヒータが、前記ヒータカバーに当接する状態で、前記遮熱板と前記ヒータカバーとの間に形成される空間に配設されている請求項6に記載の製パン機。
【請求項8】
前記制御部が、前記混練工程の前に、前記電熱ヒータを通電駆動させて、前記加熱室内を予備加熱する予熱工程を実行可能に構成され、
前記制御部が、前記予熱工程において、前記結露防止用目標温度を前記製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度に設定して、前記結露防止用電熱ヒータ及び前記電熱ヒータを加熱作動させる請求項1〜7の何れか一項に記載の製パン機。
【請求項9】
前記制御部が、前記混練工程の前に、前記電熱ヒータを通電駆動させて、前記加熱室内を予備加熱する予熱工程を実行可能に構成され、
前記制御部が、前記予熱工程において、前記結露防止用目標温度を前記製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度に設定して、前記結露防止用電熱ヒータ及び前記電熱ヒータを加熱作動させる構成で、
前記予熱工程、前記混練工程及び前記発酵工程における前記結露防止用電熱ヒータの結露防止用目標温度のそれぞれが、共通の温度に設定されている請求項1又は2に記載の製パン機。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載の製パン機の運転方法であって、
前記電熱ヒータを、前記加熱室内の温度が前記製パン材料加熱用目標温度となるように通電駆動するとともに、
前記電熱ヒータとは別の前記結露防止用電熱ヒータを、前記蓋体における前記加熱室に隣接する箇所の温度が前記結露防止用目標温度となるように通電駆動する構成で、
前記混練工程において、前記結露防止用目標温度を前記製パン材料加熱用目標温度よりも高い温度に設定して、前記結露防止用電熱ヒータ及び前記電熱ヒータを加熱作動する製パン機の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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