説明

製造方法および車両

【課題】電気自動車に用いられる電池パックを有効に利用すること。
【解決手段】車両の製造方法は、シャシ準備工程と、配線部形成工程と、電池モジュール接続工程とを備える。シャシ準備工程では、複数の電池モジュールが設置されている車両のシャシを準備する。配線部形成工程では、車両のボディに配線部を形成する。電池モジュール接続工程では、シャシとボディとを結合することで、配線部により複数の電池モジュールを電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造方法および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータ駆動用の電池を搭載した電気自動車が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−207664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、電気自動車の用途を変更する場合、変更後の電気自動車の必要な電気的エネルギーの電力量に応じて、電池パックの構成の変更が必要となる。この場合、変更前に使用していた電池パックは必要なくなるので、まだ利用できる状態であっても廃棄処分されてしまう。このように、従来技術では、電気自動車用の電池パックを有効に利用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、車両の製造方法であって、複数の電池モジュールが設置されている前記車両のシャシを準備するシャシ準備工程と、前記車両のボディに配線部を形成する配線部形成工程と、前記シャシと前記ボディとを結合することで、前記配線部により前記複数の電池モジュールを電気的に接続する電池モジュール接続工程とを備える。
【0006】
上記製造方法において、複数の電池モジュールの接続形態を決定する接続形態決定工程をさらに備えてもよく、配線部形成工程は、接続形態決定工程で決定された接続形態に基づいて、ボディに配線部を形成する工程を有してもよい。
【0007】
上記製造方法において、接続形態決定工程は、ボディの種類に基づいて、複数の電池モジュールの接続形態を決定する工程を有してもよい。
【0008】
上記製造方法において、接続形態決定工程は、車両が必要とする電圧に基づいて、複数の電池モジュールの接続形態を決定する工程を有してもよい。
【0009】
上記製造方法において、複数の電池モジュールの特性を取得する電池モジュール特性取得工程をさらに備えてもよく、接続形態決定工程は、電池モジュール特性取得工程で取得された特性に基づいて、複数の電池モジュールの接続形態を決定する工程を有してもよい。
【0010】
本発明の第2の態様においては、車両であって、シャシと、シャシに設置されている複数の電池モジュールと、ボディと、ボディに形成され、ボディとシャシとが結合された場合に、複数の電池モジュールを電気的に接続する配線部とを備える。
【0011】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電気自動車の製造方法の概念を示す。
【図2】電気自動車の製造方法の概念を示す。
【図3】電気自動車の製造工程の一例を示す。
【図4】複数の電池モジュール130が電気的に接続されている状態の電池パック200の一例を示す。
【図5】複数の電池モジュール130が電気的に接続されている状態の電池パック200の一例を示す。
【図6】複数の電池モジュール130が電気的に接続されている状態の電池パック200の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
図1および図2は、電気自動車の製造方法の概念を示す。以降、車両の一例としての電気自動車を製造する場合の製造方法の一例を説明する。
【0015】
まず、シャシ120およびボディ110を準備する。シャシ120には、予め電池パック200、インバータ112、およびモータ114を設ける。電池パック200は、複数の電池モジュール130を含む。インバータ112は、電池パック200から供給される電気的エネルギーの電流を直流から交流に変換する。インバータ112は、変換した交流電流をモータ114に供給する。モータ114は、電気自動車の車輪を駆動する。
【0016】
つぎに、ボディ110に、複数の電池モジュール130を電気的に接続するための配線部140を形成する。具体的には、ボディ110には、シャシ120に結合された場合にシャシ120に設けられている複数の端子と接する位置に配線部140を設ける。
【0017】
そして、ボディ110とシャシ120とを結合する。ボディ110とシャシ120とが結合されることで、シャシ120に設けられた複数の端子と、ボディ110に設けられた配線部140の配線142とが接する。これにより、複数の電池モジュール130が配線部140によって電気的に接続される。複数の電池モジュール130が電気的に接続されることで、電池パック200は、電気的エネルギーを供給できる。
【0018】
以上の製造方法を用いて電気自動車を製造することにより、シャシ120と、シャシ120に設置されている複数の電池モジュール130と、ボディ110と、ボディ110に形成され、ボディ110とシャシ120とが結合された場合に、複数の電池モジュール130を電気的に接続する配線部140とを備える電気自動車が製造される。
【0019】
シャシ120には、複数の種類のボディ110を結合することができる。たとえば、図1に示すように、シャシ120には、乗用車のボディ110A、フォークリフトのボディ110B、およびゴルフカートのボディ110Cをそれぞれ結合することができる。
【0020】
電気自動車のユーザは、電池パック200の信頼性に応じて、シャシ120に結合するボディ110を異ならせることにより、電気自動車を複数の用途に利用してもよい。たとえば、電池パック200の信頼性が高い場合にはボディ110Aをシャシ120に結合させて、電気自動車を乗用車として利用してもよい。そして、電池パック200の信頼性が低下した場合にはボディ110Cをシャシ120に結合させて、電気自動車をゴルフカートとして利用してもよい。そして、電池パック200の信頼性がさらに低下した場合にはボディ110Bをシャシ120に結合させて、電気自動車をフォークリフトとして利用してもよい。
【0021】
図2に示すように、配線部140には、ボディ110の用途に応じた電気的エネルギーを供給するための配線142を施す。たとえば、ボディ110Aに設ける配線部140Aには、乗用車に応じた電気的エネルギーを供給するための配線142Aを施す。また、ボディ110Bに設ける配線部140Bには、フォークリフトに応じた電気的エネルギーを供給するための配線142Bを施す。また、ボディ110Cに設ける配線部140Cには、ゴルフカートに応じた電気的エネルギーを供給するための配線142Cを施す。
【0022】
図3は、電気自動車の製造工程の一例を示す。なお、以降に説明する製造工程を実施する前に、電気自動車のシャシ120に複数の電池モジュール130を設置する電池モジュール設置工程が予め完了しているものとする。
【0023】
まず、シャシ準備工程において、複数の電池モジュール130が設置されている電気自動車のシャシ120を準備する(S302)。
【0024】
つぎに、電池モジュール特性取得工程において、複数の電池モジュール130の特性を取得する(S304)。たとえば、電池モジュール特性取得工程では、電池モジュール130の特性として、電池モジュール130が供給できる電力量を取得する。電池モジュール特性取得工程では、複数の電池モジュール130の特性を、電池モジュール130ごとに取得してもよい。
【0025】
電池モジュール特性取得工程において、電池モジュール130の特性として、電池モジュール130の劣化度を取得してもよい。電池モジュール特性取得工程において、電池モジュール130の劣化度として、電池モジュール130の内部抵抗値、温度、満充電時の電圧、充放電の回数、充電開始時の電圧、充電特性、放電特性、過充電回数、過放電回数などを取得してもよい。電池モジュール特性取得工程において、電池モジュール130の特性を、当該特性が格納されているメモリから取得してもよい。また、電池モジュール特性取得工程において、電池モジュール130の特性を、当該特性を測定する測定装置から取得してもよい。
【0026】
つぎに、接続形態決定工程において、複数の電池モジュール130の接続形態を決定する(S306)。たとえば、接続形態決定工程において、複数の電池モジュール130の接続形態として、並列接続、直列接続、接続させる電池モジュール130の組み合わせ、順番などを決定する。
【0027】
接続形態決定工程において、シャシ120に結合させるボディ110の種類に基づいて、複数の電池モジュール130の接続形態を決定してもよい。接続形態決定工程において、電気自動車が必要とする電圧に基づいて、複数の電池モジュール130の接続形態を決定してもよい。
【0028】
接続形態決定工程において、S304で取得された複数の電池モジュール130の特性に基づいて、複数の電池モジュール130の接続形態を決定してもよい。たとえば、電気自動車が必要とする特性の電気的エネルギーを電池パック200が供給するように、複数の電池モジュール130の接続形態を決定してもよい。一例を挙げると、電気自動車が必要とする電力量の電気的エネルギーを電池パック200が供給するように、複数の電池モジュール130の接続形態を決定してもよい。
【0029】
接続形態決定工程において、S304で取得された複数の電池モジュール130の特性に基づいて、シャシ120に結合させるボディ110の種類を決定してもよい。たとえば、S304で取得された複数の電池モジュール130の特性に基づいて、当該特性を有する電気的エネルギーの使用に適した用途のボディ110を、シャシ120に結合させるボディ110として決定してもよい。一例を挙げると、S304で取得された複数の電池モジュール130の電力量に基づいて、当該電力量を有する電気的エネルギーの使用に適した用途のボディ110を、シャシ120に結合させるボディ110として決定してもよい。
【0030】
つぎに、配線部形成工程において、電気自動車のボディに配線部140を形成する(S308)。具体的には、配線部形成工程において、S306で決定された接続形態に基づいて、ボディ110に配線部140を形成する。そして、電池モジュール接続工程において、シャシ120とボディ110とを結合することで、配線部140により複数の電池モジュール130を電気的に接続する(S310)。
【0031】
図4、図5、および図6は、複数の電池モジュール130が電気的に接続されている状態の電池パック200の一例を示す。図4は、乗用車のボディ110Aがシャシ120に結合された場合の電池パック200の一例を示す。図4に示す例では、電池パック200においては、ボディ110Aに設けられている配線部140Aの配線142Aにより、複数の電池モジュール130が電気的に接続されている。具体的には、配線142Aにより、複数の電池モジュール130が電気的に並列に接続されている。これにより、電池パック200は、乗用車に応じた電圧の電気的エネルギーを供給できる。
【0032】
図5は、フォークリフトのボディ110Bがシャシ120に結合された場合の電池パック200の一例を示す。図5に示す例では、電池パック200においては、ボディ110Bに設けられている配線部140Bの配線142Bにより、複数の電池モジュール130が電気的に接続されている。具体的には、配線142Bにより、複数の電池モジュール130が電気的に直列に接続されている。これにより、電池パック200は、フォークリフトに応じた電圧の電気的エネルギーを供給できる。
【0033】
図6は、ゴルフカートのボディ110Cがシャシ120に結合された場合の電池パック200の一例を示す。図6に示す例では、電池パック200においては、ボディ110Cに設けられている配線部140Cの配線142Cにより、複数の電池モジュール130が電気的に接続されている。具体的には、配線142Cにより、複数の電池モジュール130が電気的に直列に接続され、直列に接続された複数の電池モジュール130がさらに並列に接続されている。これにより、電池パック200は、ゴルフカートに応じた電圧の電気的エネルギーを供給できる。
【0034】
このように、本実施形態の製造方法および電気自動車によれば、ボディ110に配線部140を設けたので、ボディ110をシャシ120に結合することで、複数の電池モジュール130を電気的に接続することができる。また、配線部140には、ボディ110の用途に応じた電気的エネルギーを供給できる配線142が施すので、ボディ110をシャシ120に結合することで、結合したボディ110の用途に応じた電気的エネルギーを供給するように、電池パック200の構成を変更することができる。
【0035】
また、本実施形態の製造方法および電気自動車によれば、電気自動車の用途を変更する場合であっても、電池パック200を変更する必要がなく、用途の変更後の電気自動車に電池パック200を利用できるので、電池パック200を有効に利用できる。また、電池パック200の特性に変化が生じた場合であっても、電気自動車の用途を変更することにより、電池パック200を変更することなく、電池パック200を使用し続けることができる。
【0036】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0037】
112 インバータ、114 モータ、110 ボディ、120 シャシ、130 電池モジュール、140 配線部、142 配線、200 電池パック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の製造方法であって、
複数の電池モジュールが設置されている前記車両のシャシを準備するシャシ準備工程と、
前記車両のボディに配線部を形成する配線部形成工程と、
前記シャシと前記ボディとを結合することで、前記配線部により前記複数の電池モジュールを電気的に接続する電池モジュール接続工程と
を備える製造方法。
【請求項2】
前記複数の電池モジュールの接続形態を決定する接続形態決定工程
をさらに備え、
前記配線部形成工程は、
前記接続形態決定工程で決定された前記接続形態に基づいて、前記ボディに前記配線部を形成する工程を有する
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記接続形態決定工程は、前記ボディの種類に基づいて、前記複数の電池モジュールの接続形態を決定する工程を有する
請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記接続形態決定工程は、前記車両が必要とする電圧に基づいて、前記複数の電池モジュールの接続形態を決定する工程を有する
請求項2または3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記複数の電池モジュールの特性を取得する電池モジュール特性取得工程
をさらに備え、
前記接続形態決定工程は、前記電池モジュール特性取得工程で取得された前記特性に基づいて、前記複数の電池モジュールの接続形態を決定する工程を有する
請求項2から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
シャシと、
前記シャシに設置されている複数の電池モジュールと、
ボディと、
前記ボディに形成され、前記ボディと前記シャシとが結合された場合に、前記複数の電池モジュールを電気的に接続する配線部と
を備える車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−228678(P2010−228678A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80599(P2009−80599)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(302064762)株式会社日本総合研究所 (367)
【出願人】(000000147)伊藤忠商事株式会社 (43)
【Fターム(参考)】