説明

複合アンテナ

【課題】アンテナ素子間のアイソレーションが高い複合アンテナを提供する。
【解決手段】
所定の距離離れて配置された2つの誘電体導波管と、電体導波管が配置された基板と、基板と接合された導体板からなる複合アンテナであって、誘電体導波管は、表面の導体膜の一部に誘電体が露出したスロットを具え、
基板は、スロットと対向する位置に、スロットと略同一形状のビアホールを具え
導体板は、ビアホールと対向する位置に、ビアホールと略同一形状の放射孔と、ビアホールと対向する位置に、ビアホールと略同一形状の放射孔と、放射孔の近傍に、放射孔の中心点に対して点対称に設けられた一対の不連続反射部を具え、不連続反射部は、放射孔の長手方向から、略45°回転して配置され、
スロット、ビアホール、放射孔は、それぞれの放射孔の長手方向の延長線上に、他の放射孔の中心がないように回転して配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略等しい周波数帯域を有する複数のアンテナを一体化した複合アンテナ装置に関するものであり、特にマイクロ波帯やミリ波帯で用いられている、誘電体導波管によって給電される誘電体導波管スロットアンテナの複合アンテナに係るものである。
【背景技術】
【0002】
図10は、本願発明者らが特許文献2に開示した導波管スロットアンテナの分解斜視図である。
図10に示すように、誘電体導波管スロットアンテナ19は、表面の導電膜の一部に誘電体が露出するスロット39を具えた誘電体導波管29と、
スロット39に対向する位置に、スロット39と略同形状のビアホール59が形成された基板49と、
ビアホール59に対向する位置に、ビアホール50と略同形状の放射孔79と、
放射孔79の近傍に一対の不連続反射89、89とを具えた導体板29とからなり、
ビアホール59の長手方向の長さは、スロット39の長手方向の長さより長く、
放射孔の79の長手方向の長さは、ビアホール59の長手方向の長さより長く、
不連続反射部89の長手方向の長さは、放射孔79の長手方向の長さの略1.4倍であり、
不連続反射部89、89は、
放射孔79の中心点に対して点対称かつ、
放射方向から見て放射孔79の長手方向に対して右回りに略45°回転して配置され、
誘電体導波管29と基板49と導体板69とは、
スロット39、ビアホール59および放射孔79の位置を合わせて接合されている。
誘電体導波管スロットアンテナ19は、左旋円偏波を放射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2010−208977号明細書
【特許文献2】特開平5−175272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、2つのアンテナ素子を近接して配置する複合アンテナでは、
2つのアンテナ素子の周波数帯域が異なる場合には、一方のアンテナ素子の周波数帯域では他方のアンテナへの影響が小さく、他方のアンテナ素子の周波数帯域では一方のアンテナ素子への影響が小さいことを利用して、アンテナ素子間のアイソレーションを確保する。
【0005】
アンテナ素子の周波数帯域が略等しい場合は、互いの偏波の旋回方向を異ならせたり、アンテナ素子の指向性を利用して、互いのアンテナ素子の指向性利得が無い方向に他方のアンテナ素子を配置することによりアイソレーションを確保する。
【0006】
しかし、それぞれのアンテナ素子の周波数帯域が略等しい円偏波アンテナの場合は、周波数帯域の違いによるアンテナ素子間の指向性に差がないことから、上記した方法ではアンテナ素子の間のアイソレーションが確保できない。
【0007】
特にアンテナ素子が誘電体導波管の場合は、誘電体導波管の周波数帯域が広いので、中心周波数が離れていても、アイソレーションが低下することがある。
【0008】
したがって、周波数帯域の近いまたは等しいアンテナ素子からなる複合アンテナは、アンテナ素子を近接して配置すると、アンテナ素子間のアイソレーションが低下するため、複合アンテナの小型化の阻害要因となっていた。
【0009】
本発明の複合アンテナは、周波数帯域の近いまたは等しい円偏波用のアンテナ素子を近接して配置したとしても、アンテナ素子間のアイソレーションを高めることができる、小型軽量な複合アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の複合アンテナは、
所定の距離離れて配置された第1と第2の誘電体導波管と、前記誘電体導波管が配置された基板と、前記基板と接合された導体板からなる複合アンテナであって、
前記第1の誘電体導波管は、表面の導体膜の一部に誘電体が露出した第1のスロットを具え、
前記第2の誘電体導波管は、表面の導体膜の一部に誘電体が露出した第2のスロットを具え、
前記基板は、前記第1のスロットと対向する位置に、前記第1のスロットと略同一形状の第1のビアホールと、前記第2のスロットと対向する位置に、前記第2のスロットと略同一形状の第1のビアホールとを具え、
前記導体板は、前記第1のビアホールと対向する位置に、前記第1のビアホールと略同一形状の第1の放射孔と、前記第2のビアホールと対向する位置に、前記第2のビアホールと略同一形状の第2の放射孔と、前記第1の放射孔の近傍に、前記第1の放射孔の中心点に対して点対称に設けられた一対の第1の不連続反射部と、前記第2の放射孔の近傍に、前記第2の放射孔の中心点に対して点対称に設けられた一対の第2の不連続反射部とを具え、
前記第1の不連続反射部は、前記第1の放射孔の長手方向から、略45°回転して配置され、
前記第2の不連続反射部は、前記第2の放射孔の長手方向から、略45°回転して配置され、
前記第1のスロット、前記第1のビアホール、および前記第1の放射孔と、前記第2のスロット、前記第2のビアホール、および前記第2の放射孔とは、それぞれの放射孔の長手方向の延長線上に、他の放射孔の中心がないように回転して配置された
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の複合アンテナによれば、周波数帯域が同一または近い円偏波用の誘電体導波管スロットアンテナ素子を近接して配置しても、アンテナ素子間の相互の影響を少なくすることができる。その結果、アンテナ素子間の距離を離さなくても、アイソレーションの高い複合アンテナを提供でき、その結果、複合アンテナを小型軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の一実施例を示す分解斜視図である。
【図2】図1を詳しく説明するための図である。
【図3】図1において、θ0を変化させた場合のアイソレーション特性を示すグラフである。
【図4】図1において、θ0=15°の場合の導体板上の電流分布のシミュレーション結果である。
【図5】第1のアンテナ素子の放射指向性を示すグラフである。
【図6】第2のアンテナ素子の放射指向性を示すグラフである。
【図7】本発明の第2の実施例を説明する分解斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施例を説明する分解斜視図である。
【図9】本発明の第4の実施例を説明する分解斜視図である。
【図10】誘電体導波管スロットアンテナの例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
以下、本発明の複合アンテナの一実施例を、図1〜2を参照して説明する。
図1は、本発明の複合アンテナの一実施例を、放射方向を上方に示した分解斜視図である。
以後、後述の導体板と基板と誘電体導波管の積層方向をZ軸方向、導体板を平面視して、誘電体導波管の管軸方向と直交する方向をX軸方向、誘電体導波管の管軸方向をY軸方向と定義する。
図2は、図1を詳しく説明するために、導体板、基板、誘電体導波管をそれぞれ放射面から見た平面図である。
【0014】
図1に示すように、複合アンテナ10は、比誘電率εrの誘電体材料からなる電体導波管20a、20bと、誘電体導波管20a、20bが管軸方向を並行に実装される基板40と、基板40に積み重ねられる導体からなる導体板60とからなる。
図2(b)において、点線は、誘電体導波管40a、40bの実装される位置を示す。
【0015】
誘電体導波管20aと20bには、それぞれ、誘電体が露出する長手方向の長さL、幅Wの長孔形状のスロット30aと30bが設けられ、スロット30aの中心線と30bの中心線との距離は、d離れている。
スロット30aは、放射面から見て、誘電体導波管20aの管軸方向と直交する方向から右回りにθ回転して配置され、
スロット30bは、放射面から見て、誘電体導波管20bの管軸方向と直交する方向から左回りにθ回転して配置されている。
【0016】
基板40には、スロット30a、30bと対向する位置に、基板40を貫通する長手方向の長さL、幅Wの長孔形状で、内壁面に導体層を有するビアホール50a、50bが設けられている。
ビアホール50a、50bは、それぞれが対向するスロット30a、30bと回転角が等しくなるように配置されている。
【0017】
導体板60には、ビアホール50a、50bと対向する位置に、導体板60を貫通する長手方向の長さL、幅Wの長穴形状の放射孔70a、70bと、放射孔70aの中心から半径rの範囲に、導体板60を貫通する長手方向の長さL、幅Wの長穴形状の不連続反射部80a、80a、80a、80bとが設けられている。
放射孔70a、70bは、それぞれが対向するビアホール50a、50bと回転角が等しくなるように配置され、
不連続反射部80a、80aは、放射孔70aの中心点に対して点対称かつ貫通孔70aの長手方向から放射面から見て左回りにθ回転して配置され、
不連続反射部80b、80bは、放射孔70bの中心点に対して点対称かつ貫通孔70bの長手方向から放射面から見て右回りにθ回転して配置されている。
放射孔70aの中心から不連続反射部80aの中心までの距離rおよび放射孔70bの中心から不連続反射部80bの中心までの距離rは、2分の1波長以下が望ましい。
【0018】
ビアホール50a、50bの長手方向の長さLは、スロット30a、30bの長手方向の長さLより長く、
放射孔70a、70bの長手方向の長さLは、ビアホール50a、50bの長手方向の長さLと略同じであり、
不連続反射部80a、80bの長手方向の長さLは、放射孔70a、70bの長手方向の長さLの略1.4倍である。
回転角θは、略45°である。
【0019】
上記の複合アンテナ10において、
誘電体導波管20aと、ビアホール50aと、放射孔70aと、不連続反射部80a、80aとからなるアンテナ素子を第1のアンテナ素子、
誘電体導波管20bと、ビアホール50bと、放射孔70bと、不連続反射部80b、80bとからなるアンテナ素子を第2のアンテナ素子、と呼称すると、
第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子は、基板と、導体板を共有し、
第1のアンテナ素子は左旋円偏波(RHCP)を放射し、
第2のアンテナ素子は右旋円偏波(LHCP)を放射する。
第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子の周波数帯域は等しい。
【0020】
(実験1)
図3は、図1〜2に示した複合アンテナにおいて、第1のスロットと第2のスロットの回転角θを、0〜30°変化させた場合の、第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子の間のアイソレーション値の変化を示す。図3において、横軸はθ0[°]、縦軸はアイソレーション[dB]を示す。
その他の条件は以下の通りである。
誘電体材料の比誘電率εr=4.5、
誘電体導波管は、幅1.8mm×高さ1mm、
導体板は、縦15mm×横7.5mm×厚さ1.42mm、
プリント基板は、縦15mm×横7.5mm×厚さ0.17mm、
スロットの位置は、誘電体導波管の端部から1.31mm、
スロットは、L×W=1.6mm×0.7mm、
ビアホールは、L×W=3mm×0.7mm
放射孔は、L×W=3mm×0.7mm、
不連続反射部は、L×W=3.81mm×1.5mm、
不連続反射部の回転角θ=45°、
放射孔の中心と不連続反射部の中心の距離rは、2.16mm、
第1の放射孔と第2の放射孔の間の距離dは、7.2mm、
周波数は61GHz
【0021】
図より、θ=0°の場合には、アイソレーション値は、34[dB]であり、θが大きくなるに従い、アイソレーション値が増加し、θ=15°と場合には、最も高いアイソレーション値49[dB]が得られ、更にθを大きくすると、アイソレーション値は低下し、θ=30°では略θ=0°の場合と略同じアイソレーション値になった。
【0022】
(実験2)
図4は、実験1において、θ=15°とし、第1のアンテナ素子を励振されたときの導体板上の電流分布のシミュレーション結果である。その他の条件は実験1の場合と同様である。図において、左側が第1のアンテナ素子、右側が第2のアンテナ素子を示す。
図より、アンテナ素子の間の距離が近いにも関わらず、第2のアンテナ素子の中心付近には電流がほとんど流れていないことがわかる。このために、アイソレーションが非常に高くなったと考えられる。
【0023】
(実験3)
図5は、実験1においてθ=15°とし、第1のアンテナ素子を励振されたときの放射特性のシミュレーション結果である。その他の条件は、実験1の場合と同様である。
図5(a)は、XZ平面における右旋円偏波(RHCP)と左旋円偏波(LHCP)であり、点線は左旋円偏波を示し、実線は右旋円偏波を示す。
図5(b)は、YZ平面における右旋円偏波(RHCP)と左旋円偏波(LHCP)であり、点線は左旋円偏波を示し、実線は左旋円偏波を示す。
図より、第1のアンテナ素子を励振された時は、正面方向に左旋円偏波が放射されていることがわかる。
【0024】
(実験4)
図6は、実験1においてθ=15°とし、第2のアンテナ素子を励振されたときの放射特性のシミュレーション結果である。その他の条件は、実験1の場合と同様である。
図6(a)は、XZ平面における右旋円偏波(RHCP)と左旋円偏波(LHCP)を示し、点線は左旋円偏波を示し、実線は右旋円偏波を示す。
図6(b)は、YZ平面における右旋円偏波(RHCP)と左旋円偏波(LHCP)を示し、点線は左旋円偏波を示し、実線は右旋円偏波を示す。
図より、第2のアンテナ素子を励振された時は、正面方向に右旋円偏波が放射されていることがわかる。
【0025】
実験3、4の結果から、第1のアンテナ素子が励振されているときには、第2のアンテナ素子の円偏波特性に与える影響が小さく、第2のアンテナ素子が励振されているときには、第1のアンテナ素子の円偏波特性に与える影響が小さいことがわかる。その結果、アンテナ素子の間のアイソレーションを大きくすることができる。
【0026】
第1の放射孔と第2の放射孔は、第1の放射孔の長手方向の延長線上が、第2の放射孔の中心を通らず、第2の放射孔の長手方向の延長線上が第1の放射孔の中心を通らないように、5〜25°程度回転角(θ)して配置するだけでよい。
第1の放射孔と第2の放射孔の回転角(θ)は、同じ角度である必要性はないが、第1の放射孔と第2の放射孔とは、互いに逆方向に回転していなければならない。
一方のアンテナのみが回転している場合には、回転していない他方のアンテナは、一方のアンテナからの影響を受け、アンテナ間のアイソレーションが低下する。
【0027】
(変形実施例)
第1のアンテナ素子と、第2のアンテナ素子の偏波の旋回方向は同じでもよい。
図7は、本発明第2の実施例を示す分解斜視図である。
図7に示すように、複合アンテナ11は、誘電体導波管21a、21aと、誘電体導波管21a、21bが管軸方向を並行に実装される基板41と、基板41に積み重ねられる導体板61とからなる。
【0028】
誘電体導波管21a、21bには、それぞれ、誘電体が露出する長孔形状のスロット31a、31bが設けられ、スロット31a、31bは、放射面から見て、誘電体導波管21a、31bの管軸方向と直交する方向から右回りにθ回転して配置されている。
【0029】
基板41には、スロット31a、31bと対向する位置に、基板41を貫通する長孔形状のビアホール51a、51bが設けられている。
ビアホール51a、51bは、それぞれが対向するスロット31a、31bと回転角が等しくなるように配置されている。
【0030】
導体板61には、ビアホール51a、51bと対向する位置に、導体板61を貫通する長穴形状の放射孔71a、71bと、放射孔71a、71bの近傍に、導体板61を貫通する長穴形状の不連続反射部81a、81bとが設けられている。
放射孔71a、71bは、それぞれが対向するビアホール51a、51bと回転角が等しくなるように配置され、
不連続反射部81a、81bは、それぞれ、放射孔71a、71bの中心点に対して点対称、かつ、放射面から見て、貫通孔71a、71bの長手方向から右回りに略45°回転して配置されている。
【0031】
上記の複合アンテナ11において、
誘電体導波管21aと、ビアホール51aと、放射孔71aと、不連続反射部81a、81aとからなるアンテナ素子を第1のアンテナ素子、
誘電体導波管21bと、ビアホール51bと、放射孔71bと、不連続反射部81b、81bとからなるアンテナ素子を第2のアンテナ素子、と呼称すると、
第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子は、基板と、導体板を共有しており、
第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子は、共に左旋円偏波(RHCP)を放射する。
このように、本発明の複合アンテナは、偏波の旋回方向が同じであってもアンテナ素子間のアイソレーションを高めることができる。
【0032】
複合アンテナのアンテナ素子は3つ以上であってもよい。
図8は、本発明第3の実施例を示す分解斜視図である。
図8に示すように、複合アンテナ12は、誘電体導波管22a、22b、22cと、誘電体導波管22a、22b、22cが管軸方向を並行に実装される基板42と、基板42に積み重ねられる導体板62とからなる。
【0033】
誘電体導波管22a、22b、22cには、それぞれ、誘電体が露出する長孔形状のスロット32a、32b、32c、が設けられ、スロット31a、32cは、放射面から見て、誘電体導波管21aの管軸方向と直交する方向から右回りにθ回転して配置され、
スロット32bは、放射面から見て、誘電体導波管22cの管軸方向と直交する方向から右回りにθ回転して配置されている。
【0034】
基板42には、スロット32a、32b、32cと対向する位置に、基板42を貫通する長孔形状のビアホール52a、52b、52cが設けられている。
ビアホール52a、52b、52cは、それぞれが対向するスロット32a、32b、32cと回転角が等しくなるように配置されている。
【0035】
導体板62には、ビアホール52a、52b、52cと対向する位置に、導体板62を貫通する長穴形状の放射孔72a、72b、72cと、放射孔72a、72b、72cの近傍に、導体板62を貫通する長穴形状の不連続反射部82a、82b、82cとが設けられている。
【0036】
不連続反射部82a、82cは、それぞれ、放射孔72a、72cの中心点に対して点対称、かつ、放射面から見て、貫通孔72a、72cの長手方向から右回りに略45°回転して配置され。
不連続反射部82bは、放射孔72bの中心点に対して点対称、かつ、放射面から見て、貫通孔72a、72cの長手方向から右回りに略45°回転して配置されている。
【0037】
上記の複合アンテナ12において、
誘電体導波管22aと、ビアホール52aと、放射孔72aと、不連続反射部82a、82aとからなるアンテナ素子を第1のアンテナ素子、
誘電体導波管22bと、ビアホール52bと、放射孔72bと、不連続反射部82b、82bとからなるアンテナ素子を第2のアンテナ素子、
誘電体導波管22cと、ビアホール52cと、放射孔72cと、不連続反射部82c、82cとからなるアンテナ素子を第3のアンテナ素子、と呼称すると、
第1のアンテナ素子と第2のアンテナ素子と第3のアンテナ素子は、基板と、導体板を共有しており、
第1のアンテナ素子と第3のアンテナ素子は、共に左旋円偏波(RHCP)を放射し、第2のアンテナ素子は、右旋円偏波(LHCP)を放射する。
【0038】
このように、本発明の複合アンテナは、アンテナ素子が3つ以上であっても、1つの放射孔の長手方向の延長線上に、他の放射孔の中心が通らないように配置することによって、アンテナ素子の間のアイソレーションを高めることができる。
【0039】
複合アンテナのアンテナ素子間のアイソレーションを、さらに高めるために、それぞれのアンテナ素子の放射孔の間に、突起物を配置してもよい。
図9は、図1の複合アンテナに突起物を追加した場合を示す分解斜視図である。
図9に示すように、放射孔70aと70bの間に突起物90が配置されている。
このように、貫通孔の間に突起物を配置することにより、アンテナ素子の間の干渉を低く抑え、アイソレーションをさらに高めることができる。
【0040】
なお、不連続反射部は、導体板を貫通していなくてもよい。貫通孔からの直接波と、不連続反射部で反射した間接波とを合成した放射波が円偏波となるようにしているので、不連続反射部は、孔状ではなく、溝状や凸形状としてもよい。
【0041】
以上述べたように、本発明の複合アンテナは、
円偏波を放射する誘電体導波管アンテナを複数並べ、それぞれの誘電体導波管スロットアンテナの放射孔、ビアホール、放射孔、並びに、不連続反射部を、それぞれのアンテナ素子の放射孔の長手方向の延長線上が、他のアンテナ素子の放射孔の中心を通らないように、回転角して配置することにより、アンテナ素子間のアイソレーションを高かめることができる。また、それぞれのアンテナ素子は導体板と基板を共有することができる。その結果、複合アンテナを小型軽量化することができる。
【符号の説明】
【0042】
10、11、12、13 複合アンテナ
19 誘電体導波管スロットアンテナ
20a、20b、21a、21b、22a、22b、22c、29 誘電体導波管
30a、30b、31a、31b、32a、32b、32c、39 スロット
40、41、42、49 基板
50、51、52、59 ビアホール
60、61、62、69 導体板
70、71、72、79 放射孔
80a、80b、81a、81b、81a、82b、83c、89 不連続反射部
90 突起物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の距離離れて配置された第1と第2の誘電体導波管と、前記誘電体導波管が配置された基板と、前記基板と接合された導体板からなる複合アンテナであって、
前記第1の誘電体導波管は、表面の導体膜の一部に誘電体が露出した第1のスロットを具え、
前記第2の誘電体導波管は、表面の導体膜の一部に誘電体が露出した第2のスロットを具え、
前記基板は、前記第1のスロットと対向する位置に、前記第1のスロットと略同一形状の第1のビアホールと、前記第2のスロットと対向する位置に、前記第2のスロットと略同一形状の第1のビアホールとを具え、
前記導体板は、前記第1のビアホールと対向する位置に、前記第1のビアホールと略同一形状の第1の放射孔と、前記第2のビアホールと対向する位置に、前記第2のビアホールと略同一形状の第2の放射孔と、前記第1の放射孔の近傍に、前記第1の放射孔の中心点に対して点対称に設けられた一対の第1の不連続反射部と、前記第2の放射孔の近傍に、前記第2の放射孔の中心点に対して点対称に設けられた一対の第2の不連続反射部とを具え、
前記第1の不連続反射部は、前記第1の放射孔の長手方向から、略45°回転して配置され、前記第2の不連続反射部は、前記第2の放射孔の長手方向から、略45°回転して配置され、
前記第1のスロット、前記第1のビアホール、および前記第1の放射孔と、前記第2のスロット、前記第2のビアホール、および前記第2の放射孔とは、それぞれの放射孔の長手方向の延長線上に、他の放射孔の中心がないように回転して配置されたことを特徴とする複合アンテナ。
【請求項2】
前記第1の放射孔の周辺に配置された一対の不連続反射部の回転方向と、前記第2の放射孔の周辺に配置された一対の不連続反射部の回転方向とは、互いに逆方向に回転して配置されたことを特徴とする請求項1記載の複合アンテナ。
【請求項3】
前記前記第1の誘電体導波管と、前記第1のスロットと、前記第1のビアホールと、前記第1の放射孔と、前記一対の第1の不連続反射部からなるアンテナ素子は、受信用アンテナであり、
前記前記第2の誘電体導波管と、前記第2のスロットと、前記第2のビアホールと、前記第2の放射孔と、前記一対の第2の不連続反射部からなるアンテナ素子は、送信用アンテナであることを特徴とする請求項1乃至2記載の複合アンテナ。
【請求項4】
前記第1のアンテナ素子の周波数帯域と、前記第2のアンテナ素子の周波数帯域は、略等しいことを特徴とする請求項1乃至3記載の複合アンテナ。
【請求項5】
前記第1と第2の放射孔の長手方向の長さは、前記第1と第2のスロットの長手方向の長さより長いことを特徴とする請求項1乃至請求項4記載の複合アンテナ。
【請求項6】
前記第1の放射孔の中心と前記第1の不連続反射部の中心との間の距離と、
前記第2の放射孔の中心と前記第2の不連続反射部の中心との間の距離とは、
使用する周波数の半波長より短い
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5記載の複合アンテナ。
【請求項7】
前記第1の不連続反射部の長手方向の長さは、前記第1の放射孔の長手方向の長さの略1.4倍であり、
前記第2の不連続反射部の長手方向の長さは、前記第1の放射孔の長手方向の長さの略1.4倍であることを特徴とする請求項1乃至請求項6記載の複合アンテナ。
【請求項8】
前記第1の放射孔と第2の放射孔との間に、突起物を配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項7記載の複合アンテナ。
【請求項9】
前記第1のアンテナ素子の周波数帯域と、前記第2のアンテナ素子の周波数帯域は、等しいまたは近いことを特徴とする請求項1乃至請求項8記載の複合アンテナ。
【請求項10】
前記第1のアンテナ素子と、前記第2のアンテナ素子を複数配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項9記載の複合アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図4】
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