複合工具、加工方法および工作機械
【課題】安価で、しかも、工具交換を行うことなく、孔加工から座ぐり加工、面取り加工を1つの工具によって連続的に行うことができる複合工具、加工方法および工作機械を提供。
【解決手段】軸線方向の一端側に形成され工作機械の主軸に差し込み可能な装着部42、および、軸線方向の他端側に形成された刃部取付部44を含む工具本体41と、工具本体の刃部取付部において、装着部42とは反対側に取り付けられた第1刃部51と、工具本体の刃部取付部において、装着部側に取り付けられた第2刃部52とを備え、軸線から第1刃部の先端までの寸法に対して、軸線から第2刃部の先端までの寸法が小さい。
【解決手段】軸線方向の一端側に形成され工作機械の主軸に差し込み可能な装着部42、および、軸線方向の他端側に形成された刃部取付部44を含む工具本体41と、工具本体の刃部取付部において、装着部42とは反対側に取り付けられた第1刃部51と、工具本体の刃部取付部において、装着部側に取り付けられた第2刃部52とを備え、軸線から第1刃部の先端までの寸法に対して、軸線から第2刃部の先端までの寸法が小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の工具によって孔加工から座ぐり加工、面取り加工を行うことが可能な複合工具、この複合工具を用いた加工方法および工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの加工において、ワークに表裏面を貫通する下孔を加工したのち、あるいは、予め形成された下孔の内面を仕上加工したのち、その下孔の裏面に裏座ぐり加工を行う場合がある。このような場合、まず、エンドミル工具などで下孔加工(下孔の内面仕上加工を含む)したのち、この下孔の裏側周囲に裏座ぐり加工を行う。
従来、裏座ぐり加工を行う工具として、特許文献1に開示された裏座ぐり切削工具が知られている。これは、基端側に工作機械への装着部を有するシャフトと、このシャフトの先端側に回動可能に支持され、シャフトに沿って倒れる収納位置とシャフトに対して起立する突出位置とに起伏される刃具と、この刃具を起立させて突出位置に付勢するばねと、側面に窓を有しかつシャフトにスライド可能に装着され、スライド位置に応じて刃具を突出位置と収納位置とに切り換えるガイドスリーブとを備える構成である。
【0003】
裏座ぐり加工にあたって、予め、ワークの表裏面を貫通する下孔を加工しておき、工作機械の主軸に取り付けたシャフトを下孔に挿入してシャフトの先端をワークの裏面側に突出させる。この状態において、ガイドスリーブをスライドさせると、刃具がばねによってシャフトに対して起立する突出位置に起立されるから、この状態でシャフトまたはワークを回転させると、下孔の裏面周囲に裏座ぐり加工が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の裏座ぐり切削工具は、シャフトに刃具を回動可能に支持し、この刃具を起立するように付勢するばねをシャフト内に内蔵するとともに、シャフトの外側にガイドスリーブをスライド可能に装着した構造であるため、構造が複雑化し、コストも高くなるという欠点がある。
しかも、裏座ぐり加工にあたっては、予め、エンドミル工具などで下孔加工しておく必要があるうえ、エンドミル工具から裏座ぐり切削工具に交換するための工具交換作業が必要であるため、作業効率が悪い。
【0006】
本発明の目的は、このような課題を解消し、安価で、しかも、工具交換を行うことなく、孔加工から座ぐり加工、面取り加工を1つの工具によって連続的に行うことができる複合工具、加工方法および工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の複合工具は、軸線方向の一端側に形成され工作機械の工具取付部に差し込み可能な装着部、および、前記軸線方向の他端側に形成された刃部取付部を含んで構成された工具本体と、前記工具本体の刃部取付部において、前記装着部とは反対側に取り付けられた第1刃部と、前記工具本体の刃部取付部において、前記装着部側に取り付けられた第2刃部とを備え、前記軸線から前記第1刃部の先端までの寸法に対して、前記軸線から前記第2刃部の先端までの寸法が小さい、ことを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、複合工具および被加工物を回転軸線と平行な軸方向へ相対移動させると、複合工具の第1刃部によって被加工物に下孔が加工、あるいは、予め形成された下孔の内面が加工される。このとき、軸線から第1刃部の先端までの寸法に対して、軸線から第2刃部の先端までの寸法が小さいから、第1刃部によって加工された下孔に第2刃部が接触することがない。従って、下孔の加工を支障なく行える。
次に、この下孔加工した被加工物の裏面に複合工具の第2刃部を突出させた状態において、複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、複合工具および被加工物を、回転軸線と平行な軸方向および回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させると、複合工具の第2刃部によって被加工物の裏面において裏座ぐり加工や面取り加工を行うことができる。
また、下孔加工した被加工物の表面に複合工具の第1刃部を突出させた状態において、複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、複合工具および被加工物を、回転軸線と平行な軸方向および回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させると、複合工具の第1刃部によって被加工物の表面において表座ぐり加工や面取り加工を行うことができる。
従って、工具交換を行うことなく、孔加工から表裏座ぐり加工および面取り加工を1つの工具によって連続的に行うことができるから、作業効率を向上させることができる。しかも、工具本体の刃部取付部において、装着部とは反対側に第1刃部を、装着部側に第2刃部を取り付けるだけで構成できるから、安価に構成できる。
【0009】
本発明の複合工具において、前記工具本体は、前記装着部と、基端に前記装着部を有する延長シャフトと、この延長シャフトの先端に設けられた前記刃部取付部とを含んで構成され、前記刃部取付部は、前記軸線方向に対して直交する方向から見て幅方向両端側が前記装着部に向かうに従って次第に幅方向寸法が狭くなった台形形状に形成され、前記台形形状の角部に前記第1刃部および第2刃部が取り付けられている、ことが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、工具本体は、装着部と、延長シャフトと、刃部取付部とを含んで構成され、刃部取付部は、幅方向両端側が装着部に向かうに従って次第に幅方向寸法が狭くなった台形形状に形成され、その台形形状の角部に第1刃部および第2刃部が取り付けられているから、第1刃部によって被加工物に下孔加工する際、刃部取付部の幅方向両端面が下孔に干渉することがない。従って、下孔加工を支障なく行うことができる。
【0011】
本発明の複合工具において、前記第1刃部および前記第2刃部は、前記軸線に対して直交する線上に沿って配置されている、ことが好ましい。
このような構成によれば、第1刃部および第2刃部が、複合工具の軸線に対して直交する線上に配置されているから、切削加工時にびびり等が生じることなく、加工する表面状態を良好に仕上げることができる。
【0012】
本発明の複合工具において、前記工具本体の刃部取付部において、前記装着部とは反対側に取り付けられた第3刃部を備え、前記第3刃部は、前記第1刃部に対して、前記軸線方向へ突出して取り付けられているとともに、前記軸線から前記第1刃部の先端までの寸法に対して、前記軸線から前記第3刃部の先端までの寸法が小さい、ことが好ましい。
このような構成によれば、第3刃部は、第1刃部に対して、軸線方向へ突出して取り付けられているから、被加工物の表面において表座ぐり加工や面取り加工を行うことができる。従って、第1刃部については孔加工のみでよいから、それぞれの加工に適した刃部を用いることにより、高精度な加工が期待できる。
【0013】
本発明の加工方法は、上述した複合工具を用いて、被加工物を加工する加工方法において、前記複合工具および被加工物の一方を回転軸線を中心として回転させるとともに、前記複合工具および被加工物を前記回転軸線と平行な軸方向へ相対移動させながら、前記複合工具の第1刃部によって被加工物に下孔を加工する孔加工工程と、前記下穴を加工した前記被加工物の裏面に前記複合工具の第2刃部を突出させた状態において、前記複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、前記複合工具および被加工物を、前記回転軸線と平行な軸方向および前記回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させながら、前記複合工具の第2刃部によって被加工物の裏面に裏座ぐり穴を加工する裏座ぐり加工工程と、を備えることを特徴とする。
このような構成によれば、工具交換を行うことなく、下孔加工から裏座ぐり加工を1つの複合工具によって連続的に加工することができるから、作業効率を向上させることができる。
【0014】
本発明の加工方法において、前記下孔を加工した前記被加工物の表面に前記複合工具の第1刃部を突出させた状態において、前記複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、前記複合工具および被加工物を、前記回転軸線と平行な軸方向および前記回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させながら、前記複合工具の第1刃部によって被加工物の表面に表座ぐり穴を加工する表座ぐり加工工程と、を備えることが好ましい。
このような構成によれば、工具交換を行うことなく、下孔加工から裏座ぐり加工および表座ぐり加工を1つの複合工具によって連続的に加工することができるから、作業効率を向上させることができる。
【0015】
本発明の加工方法において、前記下孔と前記裏座ぐり穴または表座ぐり穴との角部に前記複合工具の第2刃部または第1刃部を接触させた状態において、前記複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、前記複合工具および被加工物を、前記回転軸線と平行な軸方向および前記回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させながら、前記複合工具の第2刃部または第1刃部によって前記角部に面取り加工を行う面取り加工工程と、を備えることが好ましい。
このような構成によれば、工具交換を行うことなく、下孔加工から裏座ぐり加工および表座ぐり加工、更に、これら下孔と座ぐり穴との間の面取り加工を1つの複合工具によって連続的に加工することができるから、作業効率を飛躍的に向上させることができる。
【0016】
本発明の工作機械は、被加工物を載置するテーブル、主軸、前記テーブルおよび前記主軸の少なくとも一方を回転駆動させる回転駆動機構、並びに、前記テーブルおよび前記主軸を前記回転駆動機構の回転軸線と平行な軸方向および前記回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させる直線駆動機構を備えた工作機械本体と、前記回転駆動機構および直線駆動機構を加工プログラムに従って駆動制御する制御装置と、前記主軸に装着される複合工具とを備え、前記複合工具は、上述したいずれかの複合工具が用いられている、ことを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、制御装置によって、回転駆動機構および直線駆動機構を駆動制御すると、主軸に装着された複合工具によって、被加工物に対して、下孔加工および表裏座ぐり加工、表裏面取り加工を連続して実行することができる。そのため、より効率的な加工を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る工作機械を示す斜視図。
【図2】前記実施形態で用いる複合工具を示す斜視図。
【図3】前記実施形態で用いる複合工具を示す部分正面図。
【図4】前記実施形態の複合工具を用いて加工した例を示す図。
【図5】前記実施形態の複合工具を用いて加工した他の例を示す図。
【図6】本発明の第2実施形態で用いる複合工具を示す斜視図。
【図7】前記実施形態で用いる複合工具を示す部分正面図。
【図8】前記実施形態で用いる複合工具を示す平面図。
【図9】前記実施形態の複合工具を用いて下孔加工する際の図。
【図10】前記実施形態の複合工具を用いて裏座ぐり、面取り加工する際の図。
【図11】前記実施形態の複合工具を用いて表座ぐり、面取り加工する際の図。
【図12】本発明の第3実施形態で用いる複合工具を示す正面図。
【図13】前記実施形態の複合工具を用いて加工した例を示す図。
【図14】本発明の複合工具の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明の工作機械の第1実施形態を示す斜視図である。同工作機械は、工作機械本体10と、この工作機械本体10を加工プログラムに従って駆動制御する制御装置30と、工作機械本体10に取り付けられ被加工物としてのワークを加工する複合工具40とを備える。
【0020】
<工作機械本体の説明>
工作機械本体10は、ベース11と、このベース11の上面に前後方向(X軸方向)へ移動可能に設けられたXテーブル12Aと、このXテーブル12Aの上面に垂直な軸(C軸)を中心に回転可能に設けられ上面に被加工物としてのワークを載置する回転テーブル12Bと、ベース11の両側に立設された一対のコラム13A,13Bと、この両コラム13A,13Bの上部間に掛け渡されたクロスレール14と、このクロスレール14に沿って左右方向(Y軸方向)へ移動可能に設けられたサドル15と、このサドル15に上下方向(Z軸方向)へ昇降可能に設けられたラム16と、このラム16内に回転可能に収納された工具取付部としての主軸17と、この主軸17を回転駆動させる回転駆動源(図示省略)を備える門型工作機械によって構成されている。主軸17の先端には、自動工具交換装置あるいは手動によって、複合工具40が取り付けられる。
【0021】
ベース11にはXテーブル12AをX軸方向へ移動させるX軸直線駆動機構(図示省略)が、Xテーブル12Aには回転テーブル12BをC軸(Z軸と平行な軸)を中心に回転させる回転駆動機構(図示省略)が設けられている。また、クロスレール14には、サドル15をY軸方向に移動させるY軸直線駆動機構22が、サドル15には、ラム16をZ軸方向に移動させるZ軸直線駆動機構23が設けられている。
従って、回転テーブル12Bに載置されるワークは、回転およびX軸方向へ移動可能な構造に、また、主軸17に取り付けられる複合工具40については、回転およびX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向への移動が可能な構造に構成されている。
【0022】
<制御装置の説明>
制御装置30は、工作機械本体10を、手動、あるいは、予め設定されたプログラムに従って駆動を制御するもので、具体的には、Xテーブル12AのX軸直線駆動機構、回転テーブル12Bの回転駆動機構、サドル15のY軸直線駆動機構22、ラム16のZ軸直線駆動機構23、主軸17の回転駆動源を予め設定された加工プログラムに従って駆動制御する。
【0023】
<複合工具の説明>
図2は複合工具40の斜視図、図3は複合工具40の部分正面図である。
複合工具40は、工具本体41と、この工具本体41に取り付けられる第1刃部51および第2刃部52とを含んで構成されている。
工具本体41は、軸線方向の一端側に形成された装着部42と、基端に装着部42を有し軸線方向に延びる延長シャフト43と、この延長シャフト43の先端(軸線方向の他端側)に設けられた刃部取付部44とを含んで構成されている。
【0024】
装着部42は、工作機械の工具取付部、つまり、主軸17に差し込みできるように、テーパシャンクに形成されている。
延長シャフト43は、棒状または筒状素材によって形成され、加工する孔の深さに対応できる長さ寸法に形成されている。
刃部取付部44は、軸線方向の他端側に形成され、装着部42の軸線方向に対して直交する方向の寸法よりも大きい外形寸法を有する形状に形成されている。つまり、軸線方向に対して直交する方向から見て、幅方向両端側が装着部42に向かうに従って次第に幅方向寸法が狭くなった台形形状で、奥行き寸法が一定厚みに形成されている。具体的には、台形形状の正面44A、背面44B、左右側面44C,44D、上面44E、底面44Fを有する台形箱状に形成され、底面44Fは、中央部分が上面に向かって台形状に窪んだ凹部に形成されている。
【0025】
第1刃部51は、菱形板状の刃で、工具本体41の刃部取付部44において、装着部42とは反対側に取り付けられている。本実施形態では、刃部取付部44の正面44Aおよび背面44Bにおいて、底面44F側角部のうち右側の角部に、刃先が刃部取付部44の底面44Fおよび側面44C,44Dより突出するように、ボルトなどにより取り付けられている。
第2刃部52は、菱形板状の刃で、工具本体41の刃部取付部44において、装着部42側に取り付けられている。本実施形態では、刃部取付部44の正面44Aおよび背面44Bにおいて、上面44E側角部のうち右側角部に、刃先が刃部取付部44の上面44Eおよび側面44C,44Dより突出するように、ボルトなどにより取り付けられている。
ここで、工具本体41の軸線(回転軸線)から第1刃部51の先端までの寸法L1に対して、工具本体41の軸線(回転軸線)から第2刃部52の先端までの寸法L2が小さい寸法に形成されている。
【0026】
<加工方法の説明>
図4は、ワークWの壁部分W1,W2に下孔H1,H2を連続して加工(孔加工工程)したのち、壁部分W1の裏面において、下孔H1の周囲に沿って裏座ぐり穴Z1を加工(裏座ぐり加工工程)する例である。
孔加工工程では、回転テーブル12Bの回転およびサドル15のY軸方向への移動により、主軸17をワークWの加工位置に位置決めしたのち、主軸17を回転させる。この状態において、ラム16を下降させる。すると、複合工具40の第1刃部51によってワークWの壁部分W1,W2に下孔H1,H2が連続的に加工される。
【0027】
この下孔加工において、工具本体41は、装着部42と、延長シャフト43と、刃部取付部44とを含んで構成され、刃部取付部44は、幅方向両端側が装着部42に向かうに従って次第に幅方向寸法が狭くなった台形形状に形成され、その台形形状の角部に第1刃部51および第2刃部52が取り付けられているから、第1刃部51によってワークWに下孔加工する際、刃部取付部44の幅方向両側面44C,44Dや第2刃部52がワークWの下孔H1,H2に干渉することがない。従って、下孔加工を支障なく行うことができる。
【0028】
裏座ぐり加工工程では、ラム16を上昇させて、複合工具40の第2刃部52を孔加工したワークWの壁部分W1の裏面に突出させた状態において、サドル15のY軸方向への移動により、複合工具40の第2刃部52を座ぐり位置に移動させる。この位置から、主軸17を回転させるとともに、X−Y軸の円弧補間動作、つまり、Xテーブル12AのX軸方向への移動、サドル15のY軸方向への移動を制御して複合工具40の第2刃部52を円運動させながら、ラム16のZ軸方向の移動を制御する。つまり、複合工具40の第2刃部52を下孔H1を中心とする螺旋運動させる。すると、下孔H1の裏面周囲に裏座ぐり穴Z1が形成される。
【0029】
従って、第1実施形態によれば、工具交換を行うことなく、下孔加工から裏座ぐり加工を1つの複合工具40によって連続的に行うことができるから、作業効率を向上させることができる。もとより、構成的には、工具本体41の刃部取付部44において、装着部42とは反対側に第1刃部51を、装着部42側に第2刃部52を取り付けるだけで構成できるから、安価に構成できる。
【0030】
更に、上述した裏座ぐり加工の動作を応用すれば、裏座ぐり加工が完了した加工部位の面取り加工も行うことができる。
例えば、図5に示すように、裏座ぐり穴Z1と下孔H1との角部に面取りC1を、裏座ぐり穴Z1の裏面側角部に面取りC11を、複合工具40の第2刃部52を利用して行うこともできる。また、同様にして、裏面側のボスの外周角部にも面取りC12を加工することもできる。
【0031】
[第2実施形態]
図6は第2実施形態で用いる複合工具40Aを示す斜視図、図7は同複合工具40Aの部分正面図、図8は同複合工具40Aの平面図である。
これらの図に示すように、第2実施形態の複合工具40Aは、第1実施形態の複合工具40に対して、刃部取付部44の形状が異なる。刃部取付部44は、延長シャフト43の下端に一体的に形成されこれよりも径大な円筒部44Gと、この円筒部44Gの外周面180度間隔位置に工具本体41の軸線に対して直交する方向へ突出された一対の突起部44Hとを有する。各突起部44Hは、工具本体41の軸線に対して直交する軸線と平行でかつ互いに逆向きな刃部取付面45を有し、この刃部取付面45に第1刃部51および第2刃部52が取り付けられている。
【0032】
つまり、第1刃部51は、刃部取付面45において、刃先部分が刃部取付面45の底面および側面より突出するように、接着剤などにより取り付けられている。
第2刃部52は、刃部取付面45において、刃先部分が刃部取付面45の上面および側面より突出するように、接着剤などにより取り付けられている。
ここで、第1刃部51および第2刃部52の刃面は、図8に示すように、工具本体41の軸線に対して直交する線上に沿って配置されている。また、第1実施形態と同様に、工具本体41の軸線から第1刃部51の先端までの寸法L1に対して、工具本体41の軸線から第2刃部52の先端までの寸法L2が小さい寸法に形成されている。
【0033】
<加工方法の説明>
図9〜図11は、ワークWの壁部分W3に下孔H3を加工(孔加工工程)したのち、壁部分W3の裏面において、下孔H3の周囲に沿って裏座ぐり穴Z3を加工(裏座ぐり加工工程)するとともに、裏座ぐり穴Z3と下孔H3との角部に面取りC3を加工(裏面取り加工工程)したのち、壁部分W3に表面において、下孔H3の周囲に沿って表座ぐり穴Z4を加工(表座ぐり加工工程)するとともに、表座ぐり穴Z4と下孔H3との角部に面取りC4を加工(表面取り加工工程)する例である。
【0034】
孔加工工程では、図9に示すように、回転テーブル12Bの回転およびサドル15のY軸方向への移動により、主軸17をワークWの加工位置(壁部分W3)に位置決めしたのち、主軸17を回転させる。この状態において、ラム16を下降させる。すると、複合工具40Aの第1刃部51によってワークWの壁部分W3に下孔H3が加工される。
【0035】
裏座ぐり加工工程および裏面取り加工工程では、図10(A)に示すように、ラム16を上昇させて、複合工具40Aの第2刃部52を下孔加工したワークWの壁部分W3の裏面に接触させた状態において、サドル15のY軸方向への移動により、複合工具40の第2刃部52を座ぐり位置に移動させる。この位置から、主軸17を回転させるとともに、複合工具40Aの第2刃部52を下孔H3を中心とする螺旋運動させる。つまり、X−Y軸の円弧補間動作(Xテーブル12AのX軸方向への移動およびサドル15のY軸方向への移動制御)させて複合工具40Aの第2刃部52を円運動させながら、ラム16のZ軸方向の移動を制御する。すると、下孔H3の裏面周囲に裏座ぐり穴Z3が形成される。
続いて、図10(B)に示すように、複合工具40Aの第2刃部52を裏座ぐりZ3と下孔H3との角部に位置させ、この位置から、主軸17を回転させるとともに、複合工具40Aの第2刃部52を下孔H3を中心とする円錐螺旋運動させる。つまり、Xテーブル12AのX軸方向への移動、サドル15のY軸方向への移動およびラム16のZ軸方向の移動を制御しながら、複合工具40Aの第2刃部52を螺旋運動させる。すると、裏座ぐり穴Z3と下孔H3との角部に裏面取りC3が形成される。
【0036】
表座ぐり加工工程および表面取り加工工程では、図11(A)に示すように、ラム16を上昇させて、複合工具40Aの第1刃部51を下孔加工したワークWの壁部分W3の表面に接触させた状態において、サドル15のY軸方向への移動により、複合工具40Aの第1刃部51を座ぐり位置に移動させる。この位置から、主軸17を回転させるとともに、複合工具40Aの第1刃部51を下孔H3を中心とする螺旋運動させる。つまり、Xテーブル12AのX軸方向への移動、サドル15のY軸方向への移動およびラム16のZ軸方向の移動を制御しながら、複合工具40Aの第1刃部51を螺旋運動させる。すると、下孔H3の表面周囲に表座ぐり穴Z4が形成される。
続いて、図11(B)に示すように、複合工具40Aの第1刃部51を表座ぐり穴Z4と下孔H3との角部に位置させ、この位置から、主軸17を回転させるとともに、複合工具40Aの第2刃部51を下孔H3を中心とする円錐螺旋運動させる。つまり、X−Y軸の円弧補間動作(Xテーブル12AのX軸方向への移動およびサドル15のY軸方向への移動制御)させて複合工具40Aの第1刃部51を螺旋運動させながら、ラム16のZ軸方向の移動を制御する。すると、表座ぐり穴Z4と下孔H3との角部に裏面取りC4が形成される。
【0037】
従って、第2実施形態によれば、工具交換を行うことなく、下孔加工から裏座ぐり加工および裏面取り加工、更に、表座ぐり加工および表面取り加工を1つの複合工具40Aによって連続的に加工することができるから、作業効率を向上させることができる。
しかも、第2実施形態で用いる複合工具40Aは、第1刃部51および第2刃部52が、複合工具40Aの軸線に対して直交する線上に配置されているから、切削加工時にびびり等が生じることなく、表面状態を良好に仕上げることができる。
【0038】
[第3実施形態]
図12は第3実施形態で用いる複合工具40Bを示す部分正面図である。
この図に示すように、第3実施形態の複合工具40Bは、第1実施形態の複合工具40において、刃部取付部44の正面44Aおよび背面44Bに設けられた一対の第1刃部51のうち、一方が省略され、その一方の代わりに第3刃部53が設けられている。
第3刃部53は、第1刃部51に対して、軸線方向へ寸法Dだけ突出して取り付けられているとともに、軸線から第1刃部51の先端までの寸法L1に対して、軸線から第3刃部の先端までの寸法L2が小さい位置に取り付けられている。
【0039】
<加工方法の説明>
図13は、ワークWの壁部分W4に表座ぐり穴Z5を加工(表座ぐり加工工程)し、続いて、下孔H4の内面を加工(孔加工工程)し、続いて、下孔H4の周囲に沿って裏座ぐり穴Z6を加工(裏座ぐり加工工程)する。次に、ワークWの壁部分W5に表座ぐり穴Z7を加工(表座ぐり加工工程)し、続いて、下孔H5の内面を加工(孔加工工程)し、続いて、下孔H5の周囲に沿って裏座ぐり穴Z8を加工(裏座ぐり加工工程)する。次に、裏座ぐり穴Z8と下孔H5との角部に面取りC5を加工(裏面取り加工工程)し、続いて、下孔H5と表座ぐり穴Z7との角部に面取りC6を加工(表面取り加工工程)する。最後に、裏座ぐり穴Z6と下孔H4との角部に面取りC7を加工(裏面取り加工工程)し、続いて、下孔H4と表座ぐり穴Z5との角部に面取りC8を加工(表面取り加工工程)する例である。
【0040】
表座ぐり加工工程では、複合工具40Bの第3刃部53を表座ぐり穴Z5の位置に移動させたのち、この位置から、主軸17を回転させるとともに、複合工具40Bの第3刃部53を下孔H4を中心とする螺旋運動させる。つまり、X−Y軸の円弧補間動作(Xテーブル12AのX軸方向への移動およびサドル15のY軸方向への移動制御)させて複合工具40Bの第3刃部53を円運動させながら、ラム16のZ軸方向の移動を制御する。すると、下孔H4の表面周囲に表座ぐり穴Z5が形成される。
【0041】
孔加工工程では、複合工具40Bの第1刃部51を下穴H4の位置に位置させたのち、主軸17を回転させるとともに、ラム16を下降させる。すると、複合工具40Bの第1刃部51によってワークWの壁部分W4に下孔H4が加工される。
【0042】
裏座ぐり加工工程では、複合工具40Aの第2刃部52を孔加工したワークWの壁部分W4の裏面に接触させた状態において、複合工具40Bの第2刃部52を座ぐり穴Z6の位置に移動させる。この位置から、主軸17を回転させるとともに、複合工具40Bの第2刃部52を下孔H4を中心とする螺旋運動させる。つまり、X−Y軸の円弧補間動作(Xテーブル12AのX軸方向への移動およびサドル15のY軸方向への移動制御)させて複合工具40Bの第2刃部52を円運動させながら、ラム16のZ軸方向の移動を制御する。すると、下孔H4の表面周囲に裏座ぐり穴Z6が形成される。
【0043】
このようにして、ワークWの壁部分W5の部分についても、表座ぐり穴Z7を加工(表座ぐり加工工程)し、続いて、下孔H5の内面を加工(孔加工工程)し、続いて、下孔H5の周囲に沿って裏座ぐり穴Z8を加工(裏座ぐり加工工程)する。
【0044】
裏面取り加工工程では、複合工具40Bの第2刃部52を裏座ぐり穴ZZ8と下孔H5との角部に位置させ、この位置から、主軸17を回転させるとともに、複合工具40Bの第2刃部52を下孔H5を中心とする円錐螺旋運動させる。つまり、Xテーブル12AのX軸方向への移動、サドル15のY軸方向への移動およびラム16のZ軸方向の移動を制御しながら、複合工具40Bの第2刃部52を円錐螺旋運動させる。すると、裏座ぐり穴Z8と下孔H5との角部に裏面取りC5が形成される。
同様にして、裏座ぐり穴Z6と下孔H4との角部に裏面取りC7を形成することができる。
【0045】
表面取り加工工程では、複合工具40Bの第3刃部53を表座ぐり穴ZZ7と下孔H5との角部に位置させ、この位置から、主軸17を回転させるとともに、複合工具40Bの第3刃部53を下孔H5を中心とする円錐螺旋運動させる。つまり、Xテーブル12AのX軸方向への移動、サドル15のY軸方向への移動およびラム16のZ軸方向の移動を制御しながら、複合工具40Bの第3刃部53を円錐螺旋運動させる。すると、表座ぐり穴Z7と下孔H5との角部に裏面取りC6が形成される。
同様にして、表座ぐり穴Z5と下孔H4との角部に裏面取りC8を形成することができる。
【0046】
従って、第3実施形態によれば、工具交換を行うことなく、下孔加工から裏座ぐり加工および裏面取り加工、更に、表座ぐり加工および表面取り加工を1つの複合工具40Bによって連続的に加工することができるから、作業効率を向上させることができる。
しかも、第3実施形態で用いる複合工具40Bは、第1刃部51および第2刃部52のほかに、第3刃部53が設けられているから、被加工物の表面において表座ぐり加工や面取り加工を行うことができる。従って、第1刃部51については孔加工のみでよいから、それぞれの加工に適した刃部を用いることにより、高精度な加工精度ができる。
【0047】
<変形例>
なお、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
第1実施形態では、刃部取付部44を台形箱状に形成し、その角部に第1刃部51およ
び第2刃部52を取り付けて、工具本体41の軸線(回転軸線)から第1刃部51の先端までの寸法L1に対して、工具本体41の軸線(回転軸線)から第2刃部52の先端までの寸法L2が小さい寸法に形成したが、これに限られない。例えば、刃部取付部44を矩形箱状とし、工具本体41の軸線(回転軸線)から第1刃部51の先端までの寸法L1に対して、工具本体41の軸線(回転軸線)から第2刃部52の先端までの寸法L2が小さい寸法になるように、第1刃部51および第2刃部52を矩形箱状の刃部取付部44に取り付けてもよい。
【0048】
前記3実施形態では、刃部取付部44の正面44Aおよび背面44Bに設けられた一対の第1刃部51のうち、一方を省略し、その一方の代わりに第3刃部53を取り付けたが、例えば、図14に示すように、刃部取付部44の正面44Aおよび背面44Bにおいて、第1刃部51とは反対側に第3刃部53を設けるようにしてもよい。このようにすれば、工具本体41を一方向(時計方向)へ回転させれば、第1刃部51によって下孔を加工することができ、また、他方向(反時計方向)へ回転させれば、第3刃部53によって座ぐり加工および面取り加工することができる。
この場合、第2刃部52についても、図14に示すように、第3刃部53と同じ側に設けるようにすれば、工具本体41の他方向(反時計方向)への回転により、第2刃部52によって裏座ぐり穴加工および裏面取り加工することができる。
【0049】
各実施形態では、第1刃部51および第2刃部52がそれぞれ2つずつであったが、第1刃部51および第2刃部52の数は1つでもよく、あるいは、3つ以上であってもよい。
例えば、第1刃部51および第2刃部52を3つ以上設ける場合、刃部取付部44の形状を円錐台形状に形成し、この円錐台の底面に複数の第1刃部51を放射状にかつ等間隔に配置すればよい。また、第2刃部52についても、円錐台の上面に複数の第2刃部52を放射状にかつ等間隔に配置すればよい。
【0050】
各実施形態では、工具本体41を、装着部42と、延長シャフト43と、刃部取付部44とから構成したが、延長シャフト43の長さは、加工しようとする孔の深さに応じて最適な長さのものを用いるようにすればよい。
【0051】
各実施形態では、工作機械本体10として、垂直な軸(C軸)を中心に回転可能に設けられ上面に被加工物としてのワークを載置する回転テーブル12Bと、複合工具40を取り付ける主軸17を回転駆動させる回転駆動源と、主軸17を回転テーブル12Bの回転軸線(C軸)と平行なZ軸方向およびこれに対して直交するX軸方向へ移動させるX軸直線駆動機構22およびZ軸直線駆動機構23とを備えた門型加工機を用いたが、これに限られない。
【0052】
例えば、ワークを載置するテーブルについては回転しない構造とし、このテーブルと複合工具40,40Aを取り付けた主軸17とをX軸方向、Y軸方向、および、Z軸方向へ移動させる相対移動機構を備えた工作機械であっても、下孔加工から裏座ぐり加工を連続的に行うことができる。
逆に、主軸17は回転しない構造として、回転テーブル12Bのみが回転する構造で、主軸17と回転テーブルとが、回転テーブルの回転軸線と平行な軸方向およびそれと直交する少なくとも1軸方向(例えば、X軸方向)へのみ移動できる構造の工作機械であってもよい。
【0053】
更に、本発明の複合工具や加工方法を、主軸が水平な横中ぐり盤や、横型マシニングセンタに適用し、これらの横中ぐり盤や、横型マシニングセンタにおいて、横下孔および裏座ぐりを加工するようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、孔加工および座ぐり加工を必要とするワークの加工に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10…工作機械本体、
12…回転テーブル、
17…主軸(工具取付部)
21…回転駆動機構、
22…X軸直線駆動機構、
23…Z軸直線駆動機構、
40A、40B,40C…複合工具、
41…工具本体、
42…装着部、
43…延長シャフト、
44…刃部取付部、
51…第1刃部、
52…第2刃部、
53…第3刃部、あ
H1,H2,H3,H4,H5…下孔、
Z1,Z3,Z6,Z8…裏座ぐり穴、
Z4,Z5,Z7…表座ぐり穴、
C1,C11,C12,C3,C4,C5,C6,C7…面取り。
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の工具によって孔加工から座ぐり加工、面取り加工を行うことが可能な複合工具、この複合工具を用いた加工方法および工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークの加工において、ワークに表裏面を貫通する下孔を加工したのち、あるいは、予め形成された下孔の内面を仕上加工したのち、その下孔の裏面に裏座ぐり加工を行う場合がある。このような場合、まず、エンドミル工具などで下孔加工(下孔の内面仕上加工を含む)したのち、この下孔の裏側周囲に裏座ぐり加工を行う。
従来、裏座ぐり加工を行う工具として、特許文献1に開示された裏座ぐり切削工具が知られている。これは、基端側に工作機械への装着部を有するシャフトと、このシャフトの先端側に回動可能に支持され、シャフトに沿って倒れる収納位置とシャフトに対して起立する突出位置とに起伏される刃具と、この刃具を起立させて突出位置に付勢するばねと、側面に窓を有しかつシャフトにスライド可能に装着され、スライド位置に応じて刃具を突出位置と収納位置とに切り換えるガイドスリーブとを備える構成である。
【0003】
裏座ぐり加工にあたって、予め、ワークの表裏面を貫通する下孔を加工しておき、工作機械の主軸に取り付けたシャフトを下孔に挿入してシャフトの先端をワークの裏面側に突出させる。この状態において、ガイドスリーブをスライドさせると、刃具がばねによってシャフトに対して起立する突出位置に起立されるから、この状態でシャフトまたはワークを回転させると、下孔の裏面周囲に裏座ぐり加工が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の裏座ぐり切削工具は、シャフトに刃具を回動可能に支持し、この刃具を起立するように付勢するばねをシャフト内に内蔵するとともに、シャフトの外側にガイドスリーブをスライド可能に装着した構造であるため、構造が複雑化し、コストも高くなるという欠点がある。
しかも、裏座ぐり加工にあたっては、予め、エンドミル工具などで下孔加工しておく必要があるうえ、エンドミル工具から裏座ぐり切削工具に交換するための工具交換作業が必要であるため、作業効率が悪い。
【0006】
本発明の目的は、このような課題を解消し、安価で、しかも、工具交換を行うことなく、孔加工から座ぐり加工、面取り加工を1つの工具によって連続的に行うことができる複合工具、加工方法および工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の複合工具は、軸線方向の一端側に形成され工作機械の工具取付部に差し込み可能な装着部、および、前記軸線方向の他端側に形成された刃部取付部を含んで構成された工具本体と、前記工具本体の刃部取付部において、前記装着部とは反対側に取り付けられた第1刃部と、前記工具本体の刃部取付部において、前記装着部側に取り付けられた第2刃部とを備え、前記軸線から前記第1刃部の先端までの寸法に対して、前記軸線から前記第2刃部の先端までの寸法が小さい、ことを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、複合工具および被加工物を回転軸線と平行な軸方向へ相対移動させると、複合工具の第1刃部によって被加工物に下孔が加工、あるいは、予め形成された下孔の内面が加工される。このとき、軸線から第1刃部の先端までの寸法に対して、軸線から第2刃部の先端までの寸法が小さいから、第1刃部によって加工された下孔に第2刃部が接触することがない。従って、下孔の加工を支障なく行える。
次に、この下孔加工した被加工物の裏面に複合工具の第2刃部を突出させた状態において、複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、複合工具および被加工物を、回転軸線と平行な軸方向および回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させると、複合工具の第2刃部によって被加工物の裏面において裏座ぐり加工や面取り加工を行うことができる。
また、下孔加工した被加工物の表面に複合工具の第1刃部を突出させた状態において、複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、複合工具および被加工物を、回転軸線と平行な軸方向および回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させると、複合工具の第1刃部によって被加工物の表面において表座ぐり加工や面取り加工を行うことができる。
従って、工具交換を行うことなく、孔加工から表裏座ぐり加工および面取り加工を1つの工具によって連続的に行うことができるから、作業効率を向上させることができる。しかも、工具本体の刃部取付部において、装着部とは反対側に第1刃部を、装着部側に第2刃部を取り付けるだけで構成できるから、安価に構成できる。
【0009】
本発明の複合工具において、前記工具本体は、前記装着部と、基端に前記装着部を有する延長シャフトと、この延長シャフトの先端に設けられた前記刃部取付部とを含んで構成され、前記刃部取付部は、前記軸線方向に対して直交する方向から見て幅方向両端側が前記装着部に向かうに従って次第に幅方向寸法が狭くなった台形形状に形成され、前記台形形状の角部に前記第1刃部および第2刃部が取り付けられている、ことが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、工具本体は、装着部と、延長シャフトと、刃部取付部とを含んで構成され、刃部取付部は、幅方向両端側が装着部に向かうに従って次第に幅方向寸法が狭くなった台形形状に形成され、その台形形状の角部に第1刃部および第2刃部が取り付けられているから、第1刃部によって被加工物に下孔加工する際、刃部取付部の幅方向両端面が下孔に干渉することがない。従って、下孔加工を支障なく行うことができる。
【0011】
本発明の複合工具において、前記第1刃部および前記第2刃部は、前記軸線に対して直交する線上に沿って配置されている、ことが好ましい。
このような構成によれば、第1刃部および第2刃部が、複合工具の軸線に対して直交する線上に配置されているから、切削加工時にびびり等が生じることなく、加工する表面状態を良好に仕上げることができる。
【0012】
本発明の複合工具において、前記工具本体の刃部取付部において、前記装着部とは反対側に取り付けられた第3刃部を備え、前記第3刃部は、前記第1刃部に対して、前記軸線方向へ突出して取り付けられているとともに、前記軸線から前記第1刃部の先端までの寸法に対して、前記軸線から前記第3刃部の先端までの寸法が小さい、ことが好ましい。
このような構成によれば、第3刃部は、第1刃部に対して、軸線方向へ突出して取り付けられているから、被加工物の表面において表座ぐり加工や面取り加工を行うことができる。従って、第1刃部については孔加工のみでよいから、それぞれの加工に適した刃部を用いることにより、高精度な加工が期待できる。
【0013】
本発明の加工方法は、上述した複合工具を用いて、被加工物を加工する加工方法において、前記複合工具および被加工物の一方を回転軸線を中心として回転させるとともに、前記複合工具および被加工物を前記回転軸線と平行な軸方向へ相対移動させながら、前記複合工具の第1刃部によって被加工物に下孔を加工する孔加工工程と、前記下穴を加工した前記被加工物の裏面に前記複合工具の第2刃部を突出させた状態において、前記複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、前記複合工具および被加工物を、前記回転軸線と平行な軸方向および前記回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させながら、前記複合工具の第2刃部によって被加工物の裏面に裏座ぐり穴を加工する裏座ぐり加工工程と、を備えることを特徴とする。
このような構成によれば、工具交換を行うことなく、下孔加工から裏座ぐり加工を1つの複合工具によって連続的に加工することができるから、作業効率を向上させることができる。
【0014】
本発明の加工方法において、前記下孔を加工した前記被加工物の表面に前記複合工具の第1刃部を突出させた状態において、前記複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、前記複合工具および被加工物を、前記回転軸線と平行な軸方向および前記回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させながら、前記複合工具の第1刃部によって被加工物の表面に表座ぐり穴を加工する表座ぐり加工工程と、を備えることが好ましい。
このような構成によれば、工具交換を行うことなく、下孔加工から裏座ぐり加工および表座ぐり加工を1つの複合工具によって連続的に加工することができるから、作業効率を向上させることができる。
【0015】
本発明の加工方法において、前記下孔と前記裏座ぐり穴または表座ぐり穴との角部に前記複合工具の第2刃部または第1刃部を接触させた状態において、前記複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、前記複合工具および被加工物を、前記回転軸線と平行な軸方向および前記回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させながら、前記複合工具の第2刃部または第1刃部によって前記角部に面取り加工を行う面取り加工工程と、を備えることが好ましい。
このような構成によれば、工具交換を行うことなく、下孔加工から裏座ぐり加工および表座ぐり加工、更に、これら下孔と座ぐり穴との間の面取り加工を1つの複合工具によって連続的に加工することができるから、作業効率を飛躍的に向上させることができる。
【0016】
本発明の工作機械は、被加工物を載置するテーブル、主軸、前記テーブルおよび前記主軸の少なくとも一方を回転駆動させる回転駆動機構、並びに、前記テーブルおよび前記主軸を前記回転駆動機構の回転軸線と平行な軸方向および前記回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させる直線駆動機構を備えた工作機械本体と、前記回転駆動機構および直線駆動機構を加工プログラムに従って駆動制御する制御装置と、前記主軸に装着される複合工具とを備え、前記複合工具は、上述したいずれかの複合工具が用いられている、ことを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、制御装置によって、回転駆動機構および直線駆動機構を駆動制御すると、主軸に装着された複合工具によって、被加工物に対して、下孔加工および表裏座ぐり加工、表裏面取り加工を連続して実行することができる。そのため、より効率的な加工を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る工作機械を示す斜視図。
【図2】前記実施形態で用いる複合工具を示す斜視図。
【図3】前記実施形態で用いる複合工具を示す部分正面図。
【図4】前記実施形態の複合工具を用いて加工した例を示す図。
【図5】前記実施形態の複合工具を用いて加工した他の例を示す図。
【図6】本発明の第2実施形態で用いる複合工具を示す斜視図。
【図7】前記実施形態で用いる複合工具を示す部分正面図。
【図8】前記実施形態で用いる複合工具を示す平面図。
【図9】前記実施形態の複合工具を用いて下孔加工する際の図。
【図10】前記実施形態の複合工具を用いて裏座ぐり、面取り加工する際の図。
【図11】前記実施形態の複合工具を用いて表座ぐり、面取り加工する際の図。
【図12】本発明の第3実施形態で用いる複合工具を示す正面図。
【図13】前記実施形態の複合工具を用いて加工した例を示す図。
【図14】本発明の複合工具の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明の工作機械の第1実施形態を示す斜視図である。同工作機械は、工作機械本体10と、この工作機械本体10を加工プログラムに従って駆動制御する制御装置30と、工作機械本体10に取り付けられ被加工物としてのワークを加工する複合工具40とを備える。
【0020】
<工作機械本体の説明>
工作機械本体10は、ベース11と、このベース11の上面に前後方向(X軸方向)へ移動可能に設けられたXテーブル12Aと、このXテーブル12Aの上面に垂直な軸(C軸)を中心に回転可能に設けられ上面に被加工物としてのワークを載置する回転テーブル12Bと、ベース11の両側に立設された一対のコラム13A,13Bと、この両コラム13A,13Bの上部間に掛け渡されたクロスレール14と、このクロスレール14に沿って左右方向(Y軸方向)へ移動可能に設けられたサドル15と、このサドル15に上下方向(Z軸方向)へ昇降可能に設けられたラム16と、このラム16内に回転可能に収納された工具取付部としての主軸17と、この主軸17を回転駆動させる回転駆動源(図示省略)を備える門型工作機械によって構成されている。主軸17の先端には、自動工具交換装置あるいは手動によって、複合工具40が取り付けられる。
【0021】
ベース11にはXテーブル12AをX軸方向へ移動させるX軸直線駆動機構(図示省略)が、Xテーブル12Aには回転テーブル12BをC軸(Z軸と平行な軸)を中心に回転させる回転駆動機構(図示省略)が設けられている。また、クロスレール14には、サドル15をY軸方向に移動させるY軸直線駆動機構22が、サドル15には、ラム16をZ軸方向に移動させるZ軸直線駆動機構23が設けられている。
従って、回転テーブル12Bに載置されるワークは、回転およびX軸方向へ移動可能な構造に、また、主軸17に取り付けられる複合工具40については、回転およびX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向への移動が可能な構造に構成されている。
【0022】
<制御装置の説明>
制御装置30は、工作機械本体10を、手動、あるいは、予め設定されたプログラムに従って駆動を制御するもので、具体的には、Xテーブル12AのX軸直線駆動機構、回転テーブル12Bの回転駆動機構、サドル15のY軸直線駆動機構22、ラム16のZ軸直線駆動機構23、主軸17の回転駆動源を予め設定された加工プログラムに従って駆動制御する。
【0023】
<複合工具の説明>
図2は複合工具40の斜視図、図3は複合工具40の部分正面図である。
複合工具40は、工具本体41と、この工具本体41に取り付けられる第1刃部51および第2刃部52とを含んで構成されている。
工具本体41は、軸線方向の一端側に形成された装着部42と、基端に装着部42を有し軸線方向に延びる延長シャフト43と、この延長シャフト43の先端(軸線方向の他端側)に設けられた刃部取付部44とを含んで構成されている。
【0024】
装着部42は、工作機械の工具取付部、つまり、主軸17に差し込みできるように、テーパシャンクに形成されている。
延長シャフト43は、棒状または筒状素材によって形成され、加工する孔の深さに対応できる長さ寸法に形成されている。
刃部取付部44は、軸線方向の他端側に形成され、装着部42の軸線方向に対して直交する方向の寸法よりも大きい外形寸法を有する形状に形成されている。つまり、軸線方向に対して直交する方向から見て、幅方向両端側が装着部42に向かうに従って次第に幅方向寸法が狭くなった台形形状で、奥行き寸法が一定厚みに形成されている。具体的には、台形形状の正面44A、背面44B、左右側面44C,44D、上面44E、底面44Fを有する台形箱状に形成され、底面44Fは、中央部分が上面に向かって台形状に窪んだ凹部に形成されている。
【0025】
第1刃部51は、菱形板状の刃で、工具本体41の刃部取付部44において、装着部42とは反対側に取り付けられている。本実施形態では、刃部取付部44の正面44Aおよび背面44Bにおいて、底面44F側角部のうち右側の角部に、刃先が刃部取付部44の底面44Fおよび側面44C,44Dより突出するように、ボルトなどにより取り付けられている。
第2刃部52は、菱形板状の刃で、工具本体41の刃部取付部44において、装着部42側に取り付けられている。本実施形態では、刃部取付部44の正面44Aおよび背面44Bにおいて、上面44E側角部のうち右側角部に、刃先が刃部取付部44の上面44Eおよび側面44C,44Dより突出するように、ボルトなどにより取り付けられている。
ここで、工具本体41の軸線(回転軸線)から第1刃部51の先端までの寸法L1に対して、工具本体41の軸線(回転軸線)から第2刃部52の先端までの寸法L2が小さい寸法に形成されている。
【0026】
<加工方法の説明>
図4は、ワークWの壁部分W1,W2に下孔H1,H2を連続して加工(孔加工工程)したのち、壁部分W1の裏面において、下孔H1の周囲に沿って裏座ぐり穴Z1を加工(裏座ぐり加工工程)する例である。
孔加工工程では、回転テーブル12Bの回転およびサドル15のY軸方向への移動により、主軸17をワークWの加工位置に位置決めしたのち、主軸17を回転させる。この状態において、ラム16を下降させる。すると、複合工具40の第1刃部51によってワークWの壁部分W1,W2に下孔H1,H2が連続的に加工される。
【0027】
この下孔加工において、工具本体41は、装着部42と、延長シャフト43と、刃部取付部44とを含んで構成され、刃部取付部44は、幅方向両端側が装着部42に向かうに従って次第に幅方向寸法が狭くなった台形形状に形成され、その台形形状の角部に第1刃部51および第2刃部52が取り付けられているから、第1刃部51によってワークWに下孔加工する際、刃部取付部44の幅方向両側面44C,44Dや第2刃部52がワークWの下孔H1,H2に干渉することがない。従って、下孔加工を支障なく行うことができる。
【0028】
裏座ぐり加工工程では、ラム16を上昇させて、複合工具40の第2刃部52を孔加工したワークWの壁部分W1の裏面に突出させた状態において、サドル15のY軸方向への移動により、複合工具40の第2刃部52を座ぐり位置に移動させる。この位置から、主軸17を回転させるとともに、X−Y軸の円弧補間動作、つまり、Xテーブル12AのX軸方向への移動、サドル15のY軸方向への移動を制御して複合工具40の第2刃部52を円運動させながら、ラム16のZ軸方向の移動を制御する。つまり、複合工具40の第2刃部52を下孔H1を中心とする螺旋運動させる。すると、下孔H1の裏面周囲に裏座ぐり穴Z1が形成される。
【0029】
従って、第1実施形態によれば、工具交換を行うことなく、下孔加工から裏座ぐり加工を1つの複合工具40によって連続的に行うことができるから、作業効率を向上させることができる。もとより、構成的には、工具本体41の刃部取付部44において、装着部42とは反対側に第1刃部51を、装着部42側に第2刃部52を取り付けるだけで構成できるから、安価に構成できる。
【0030】
更に、上述した裏座ぐり加工の動作を応用すれば、裏座ぐり加工が完了した加工部位の面取り加工も行うことができる。
例えば、図5に示すように、裏座ぐり穴Z1と下孔H1との角部に面取りC1を、裏座ぐり穴Z1の裏面側角部に面取りC11を、複合工具40の第2刃部52を利用して行うこともできる。また、同様にして、裏面側のボスの外周角部にも面取りC12を加工することもできる。
【0031】
[第2実施形態]
図6は第2実施形態で用いる複合工具40Aを示す斜視図、図7は同複合工具40Aの部分正面図、図8は同複合工具40Aの平面図である。
これらの図に示すように、第2実施形態の複合工具40Aは、第1実施形態の複合工具40に対して、刃部取付部44の形状が異なる。刃部取付部44は、延長シャフト43の下端に一体的に形成されこれよりも径大な円筒部44Gと、この円筒部44Gの外周面180度間隔位置に工具本体41の軸線に対して直交する方向へ突出された一対の突起部44Hとを有する。各突起部44Hは、工具本体41の軸線に対して直交する軸線と平行でかつ互いに逆向きな刃部取付面45を有し、この刃部取付面45に第1刃部51および第2刃部52が取り付けられている。
【0032】
つまり、第1刃部51は、刃部取付面45において、刃先部分が刃部取付面45の底面および側面より突出するように、接着剤などにより取り付けられている。
第2刃部52は、刃部取付面45において、刃先部分が刃部取付面45の上面および側面より突出するように、接着剤などにより取り付けられている。
ここで、第1刃部51および第2刃部52の刃面は、図8に示すように、工具本体41の軸線に対して直交する線上に沿って配置されている。また、第1実施形態と同様に、工具本体41の軸線から第1刃部51の先端までの寸法L1に対して、工具本体41の軸線から第2刃部52の先端までの寸法L2が小さい寸法に形成されている。
【0033】
<加工方法の説明>
図9〜図11は、ワークWの壁部分W3に下孔H3を加工(孔加工工程)したのち、壁部分W3の裏面において、下孔H3の周囲に沿って裏座ぐり穴Z3を加工(裏座ぐり加工工程)するとともに、裏座ぐり穴Z3と下孔H3との角部に面取りC3を加工(裏面取り加工工程)したのち、壁部分W3に表面において、下孔H3の周囲に沿って表座ぐり穴Z4を加工(表座ぐり加工工程)するとともに、表座ぐり穴Z4と下孔H3との角部に面取りC4を加工(表面取り加工工程)する例である。
【0034】
孔加工工程では、図9に示すように、回転テーブル12Bの回転およびサドル15のY軸方向への移動により、主軸17をワークWの加工位置(壁部分W3)に位置決めしたのち、主軸17を回転させる。この状態において、ラム16を下降させる。すると、複合工具40Aの第1刃部51によってワークWの壁部分W3に下孔H3が加工される。
【0035】
裏座ぐり加工工程および裏面取り加工工程では、図10(A)に示すように、ラム16を上昇させて、複合工具40Aの第2刃部52を下孔加工したワークWの壁部分W3の裏面に接触させた状態において、サドル15のY軸方向への移動により、複合工具40の第2刃部52を座ぐり位置に移動させる。この位置から、主軸17を回転させるとともに、複合工具40Aの第2刃部52を下孔H3を中心とする螺旋運動させる。つまり、X−Y軸の円弧補間動作(Xテーブル12AのX軸方向への移動およびサドル15のY軸方向への移動制御)させて複合工具40Aの第2刃部52を円運動させながら、ラム16のZ軸方向の移動を制御する。すると、下孔H3の裏面周囲に裏座ぐり穴Z3が形成される。
続いて、図10(B)に示すように、複合工具40Aの第2刃部52を裏座ぐりZ3と下孔H3との角部に位置させ、この位置から、主軸17を回転させるとともに、複合工具40Aの第2刃部52を下孔H3を中心とする円錐螺旋運動させる。つまり、Xテーブル12AのX軸方向への移動、サドル15のY軸方向への移動およびラム16のZ軸方向の移動を制御しながら、複合工具40Aの第2刃部52を螺旋運動させる。すると、裏座ぐり穴Z3と下孔H3との角部に裏面取りC3が形成される。
【0036】
表座ぐり加工工程および表面取り加工工程では、図11(A)に示すように、ラム16を上昇させて、複合工具40Aの第1刃部51を下孔加工したワークWの壁部分W3の表面に接触させた状態において、サドル15のY軸方向への移動により、複合工具40Aの第1刃部51を座ぐり位置に移動させる。この位置から、主軸17を回転させるとともに、複合工具40Aの第1刃部51を下孔H3を中心とする螺旋運動させる。つまり、Xテーブル12AのX軸方向への移動、サドル15のY軸方向への移動およびラム16のZ軸方向の移動を制御しながら、複合工具40Aの第1刃部51を螺旋運動させる。すると、下孔H3の表面周囲に表座ぐり穴Z4が形成される。
続いて、図11(B)に示すように、複合工具40Aの第1刃部51を表座ぐり穴Z4と下孔H3との角部に位置させ、この位置から、主軸17を回転させるとともに、複合工具40Aの第2刃部51を下孔H3を中心とする円錐螺旋運動させる。つまり、X−Y軸の円弧補間動作(Xテーブル12AのX軸方向への移動およびサドル15のY軸方向への移動制御)させて複合工具40Aの第1刃部51を螺旋運動させながら、ラム16のZ軸方向の移動を制御する。すると、表座ぐり穴Z4と下孔H3との角部に裏面取りC4が形成される。
【0037】
従って、第2実施形態によれば、工具交換を行うことなく、下孔加工から裏座ぐり加工および裏面取り加工、更に、表座ぐり加工および表面取り加工を1つの複合工具40Aによって連続的に加工することができるから、作業効率を向上させることができる。
しかも、第2実施形態で用いる複合工具40Aは、第1刃部51および第2刃部52が、複合工具40Aの軸線に対して直交する線上に配置されているから、切削加工時にびびり等が生じることなく、表面状態を良好に仕上げることができる。
【0038】
[第3実施形態]
図12は第3実施形態で用いる複合工具40Bを示す部分正面図である。
この図に示すように、第3実施形態の複合工具40Bは、第1実施形態の複合工具40において、刃部取付部44の正面44Aおよび背面44Bに設けられた一対の第1刃部51のうち、一方が省略され、その一方の代わりに第3刃部53が設けられている。
第3刃部53は、第1刃部51に対して、軸線方向へ寸法Dだけ突出して取り付けられているとともに、軸線から第1刃部51の先端までの寸法L1に対して、軸線から第3刃部の先端までの寸法L2が小さい位置に取り付けられている。
【0039】
<加工方法の説明>
図13は、ワークWの壁部分W4に表座ぐり穴Z5を加工(表座ぐり加工工程)し、続いて、下孔H4の内面を加工(孔加工工程)し、続いて、下孔H4の周囲に沿って裏座ぐり穴Z6を加工(裏座ぐり加工工程)する。次に、ワークWの壁部分W5に表座ぐり穴Z7を加工(表座ぐり加工工程)し、続いて、下孔H5の内面を加工(孔加工工程)し、続いて、下孔H5の周囲に沿って裏座ぐり穴Z8を加工(裏座ぐり加工工程)する。次に、裏座ぐり穴Z8と下孔H5との角部に面取りC5を加工(裏面取り加工工程)し、続いて、下孔H5と表座ぐり穴Z7との角部に面取りC6を加工(表面取り加工工程)する。最後に、裏座ぐり穴Z6と下孔H4との角部に面取りC7を加工(裏面取り加工工程)し、続いて、下孔H4と表座ぐり穴Z5との角部に面取りC8を加工(表面取り加工工程)する例である。
【0040】
表座ぐり加工工程では、複合工具40Bの第3刃部53を表座ぐり穴Z5の位置に移動させたのち、この位置から、主軸17を回転させるとともに、複合工具40Bの第3刃部53を下孔H4を中心とする螺旋運動させる。つまり、X−Y軸の円弧補間動作(Xテーブル12AのX軸方向への移動およびサドル15のY軸方向への移動制御)させて複合工具40Bの第3刃部53を円運動させながら、ラム16のZ軸方向の移動を制御する。すると、下孔H4の表面周囲に表座ぐり穴Z5が形成される。
【0041】
孔加工工程では、複合工具40Bの第1刃部51を下穴H4の位置に位置させたのち、主軸17を回転させるとともに、ラム16を下降させる。すると、複合工具40Bの第1刃部51によってワークWの壁部分W4に下孔H4が加工される。
【0042】
裏座ぐり加工工程では、複合工具40Aの第2刃部52を孔加工したワークWの壁部分W4の裏面に接触させた状態において、複合工具40Bの第2刃部52を座ぐり穴Z6の位置に移動させる。この位置から、主軸17を回転させるとともに、複合工具40Bの第2刃部52を下孔H4を中心とする螺旋運動させる。つまり、X−Y軸の円弧補間動作(Xテーブル12AのX軸方向への移動およびサドル15のY軸方向への移動制御)させて複合工具40Bの第2刃部52を円運動させながら、ラム16のZ軸方向の移動を制御する。すると、下孔H4の表面周囲に裏座ぐり穴Z6が形成される。
【0043】
このようにして、ワークWの壁部分W5の部分についても、表座ぐり穴Z7を加工(表座ぐり加工工程)し、続いて、下孔H5の内面を加工(孔加工工程)し、続いて、下孔H5の周囲に沿って裏座ぐり穴Z8を加工(裏座ぐり加工工程)する。
【0044】
裏面取り加工工程では、複合工具40Bの第2刃部52を裏座ぐり穴ZZ8と下孔H5との角部に位置させ、この位置から、主軸17を回転させるとともに、複合工具40Bの第2刃部52を下孔H5を中心とする円錐螺旋運動させる。つまり、Xテーブル12AのX軸方向への移動、サドル15のY軸方向への移動およびラム16のZ軸方向の移動を制御しながら、複合工具40Bの第2刃部52を円錐螺旋運動させる。すると、裏座ぐり穴Z8と下孔H5との角部に裏面取りC5が形成される。
同様にして、裏座ぐり穴Z6と下孔H4との角部に裏面取りC7を形成することができる。
【0045】
表面取り加工工程では、複合工具40Bの第3刃部53を表座ぐり穴ZZ7と下孔H5との角部に位置させ、この位置から、主軸17を回転させるとともに、複合工具40Bの第3刃部53を下孔H5を中心とする円錐螺旋運動させる。つまり、Xテーブル12AのX軸方向への移動、サドル15のY軸方向への移動およびラム16のZ軸方向の移動を制御しながら、複合工具40Bの第3刃部53を円錐螺旋運動させる。すると、表座ぐり穴Z7と下孔H5との角部に裏面取りC6が形成される。
同様にして、表座ぐり穴Z5と下孔H4との角部に裏面取りC8を形成することができる。
【0046】
従って、第3実施形態によれば、工具交換を行うことなく、下孔加工から裏座ぐり加工および裏面取り加工、更に、表座ぐり加工および表面取り加工を1つの複合工具40Bによって連続的に加工することができるから、作業効率を向上させることができる。
しかも、第3実施形態で用いる複合工具40Bは、第1刃部51および第2刃部52のほかに、第3刃部53が設けられているから、被加工物の表面において表座ぐり加工や面取り加工を行うことができる。従って、第1刃部51については孔加工のみでよいから、それぞれの加工に適した刃部を用いることにより、高精度な加工精度ができる。
【0047】
<変形例>
なお、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
第1実施形態では、刃部取付部44を台形箱状に形成し、その角部に第1刃部51およ
び第2刃部52を取り付けて、工具本体41の軸線(回転軸線)から第1刃部51の先端までの寸法L1に対して、工具本体41の軸線(回転軸線)から第2刃部52の先端までの寸法L2が小さい寸法に形成したが、これに限られない。例えば、刃部取付部44を矩形箱状とし、工具本体41の軸線(回転軸線)から第1刃部51の先端までの寸法L1に対して、工具本体41の軸線(回転軸線)から第2刃部52の先端までの寸法L2が小さい寸法になるように、第1刃部51および第2刃部52を矩形箱状の刃部取付部44に取り付けてもよい。
【0048】
前記3実施形態では、刃部取付部44の正面44Aおよび背面44Bに設けられた一対の第1刃部51のうち、一方を省略し、その一方の代わりに第3刃部53を取り付けたが、例えば、図14に示すように、刃部取付部44の正面44Aおよび背面44Bにおいて、第1刃部51とは反対側に第3刃部53を設けるようにしてもよい。このようにすれば、工具本体41を一方向(時計方向)へ回転させれば、第1刃部51によって下孔を加工することができ、また、他方向(反時計方向)へ回転させれば、第3刃部53によって座ぐり加工および面取り加工することができる。
この場合、第2刃部52についても、図14に示すように、第3刃部53と同じ側に設けるようにすれば、工具本体41の他方向(反時計方向)への回転により、第2刃部52によって裏座ぐり穴加工および裏面取り加工することができる。
【0049】
各実施形態では、第1刃部51および第2刃部52がそれぞれ2つずつであったが、第1刃部51および第2刃部52の数は1つでもよく、あるいは、3つ以上であってもよい。
例えば、第1刃部51および第2刃部52を3つ以上設ける場合、刃部取付部44の形状を円錐台形状に形成し、この円錐台の底面に複数の第1刃部51を放射状にかつ等間隔に配置すればよい。また、第2刃部52についても、円錐台の上面に複数の第2刃部52を放射状にかつ等間隔に配置すればよい。
【0050】
各実施形態では、工具本体41を、装着部42と、延長シャフト43と、刃部取付部44とから構成したが、延長シャフト43の長さは、加工しようとする孔の深さに応じて最適な長さのものを用いるようにすればよい。
【0051】
各実施形態では、工作機械本体10として、垂直な軸(C軸)を中心に回転可能に設けられ上面に被加工物としてのワークを載置する回転テーブル12Bと、複合工具40を取り付ける主軸17を回転駆動させる回転駆動源と、主軸17を回転テーブル12Bの回転軸線(C軸)と平行なZ軸方向およびこれに対して直交するX軸方向へ移動させるX軸直線駆動機構22およびZ軸直線駆動機構23とを備えた門型加工機を用いたが、これに限られない。
【0052】
例えば、ワークを載置するテーブルについては回転しない構造とし、このテーブルと複合工具40,40Aを取り付けた主軸17とをX軸方向、Y軸方向、および、Z軸方向へ移動させる相対移動機構を備えた工作機械であっても、下孔加工から裏座ぐり加工を連続的に行うことができる。
逆に、主軸17は回転しない構造として、回転テーブル12Bのみが回転する構造で、主軸17と回転テーブルとが、回転テーブルの回転軸線と平行な軸方向およびそれと直交する少なくとも1軸方向(例えば、X軸方向)へのみ移動できる構造の工作機械であってもよい。
【0053】
更に、本発明の複合工具や加工方法を、主軸が水平な横中ぐり盤や、横型マシニングセンタに適用し、これらの横中ぐり盤や、横型マシニングセンタにおいて、横下孔および裏座ぐりを加工するようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、孔加工および座ぐり加工を必要とするワークの加工に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10…工作機械本体、
12…回転テーブル、
17…主軸(工具取付部)
21…回転駆動機構、
22…X軸直線駆動機構、
23…Z軸直線駆動機構、
40A、40B,40C…複合工具、
41…工具本体、
42…装着部、
43…延長シャフト、
44…刃部取付部、
51…第1刃部、
52…第2刃部、
53…第3刃部、あ
H1,H2,H3,H4,H5…下孔、
Z1,Z3,Z6,Z8…裏座ぐり穴、
Z4,Z5,Z7…表座ぐり穴、
C1,C11,C12,C3,C4,C5,C6,C7…面取り。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向の一端側に形成され工作機械の工具取付部に差し込み可能な装着部、および、前記軸線方向の他端側に形成された刃部取付部を含んで構成された工具本体と、
前記工具本体の刃部取付部において、前記装着部とは反対側に取り付けられた第1刃部と、
前記工具本体の刃部取付部において、前記装着部側に取り付けられた第2刃部とを備え、
前記軸線から前記第1刃部の先端までの寸法に対して、前記軸線から前記第2刃部の先端までの寸法が小さい、ことを特徴とする複合工具。
【請求項2】
請求項1に記載の複合工具において、
前記工具本体は、前記装着部と、基端に前記装着部を有する延長シャフトと、この延長シャフトの先端に設けられた前記刃部取付部とを含んで構成され、
前記刃部取付部は、前記軸線方向に対して直交する方向から見て幅方向両端側が前記装着部に向かうに従って次第に幅方向寸法が狭くなった台形形状に形成され、
前記台形形状の角部に前記第1刃部および第2刃部が取り付けられている、ことを特徴とする複合工具。
【請求項3】
請求項1に記載の複合工具において、
前記第1刃部および前記第2刃部は、前記軸線に対して直交する線上に沿って配置されている、ことを特徴とする複合工具。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の複合工具において、
前記工具本体の刃部取付部において、前記装着部とは反対側に取り付けられた第3刃部を備え、
前記第3刃部は、前記第1刃部に対して、前記軸線方向へ突出して取り付けられているとともに、前記軸線から前記第1刃部の先端までの寸法に対して、前記軸線から前記第3刃部の先端までの寸法が小さい、ことを特徴とする複合工具。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の複合工具を用いて、被加工物を加工する加工方法において、
前記複合工具および被加工物の一方を回転軸線を中心として回転させるとともに、前記複合工具および被加工物を前記回転軸線と平行な軸方向へ相対移動させながら、前記複合工具の第1刃部によって被加工物に下孔を加工する孔加工工程と、
前記下孔を加工した前記被加工物の裏面に前記複合工具の第2刃部を突出させた状態において、前記複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、前記複合工具および被加工物を、前記回転軸線と平行な軸方向および前記回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させながら、前記複合工具の第2刃部によって被加工物の裏面に裏座ぐり穴を加工する裏座ぐり加工工程と、
を備えることを特徴とする加工方法。
【請求項6】
請求項5に記載の加工方法において、
前記下孔を加工した前記被加工物の表面に前記複合工具の第1刃部を突出させた状態において、前記複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、前記複合工具および被加工物を、前記回転軸線と平行な軸方向および前記回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させながら、前記複合工具の第1刃部によって被加工物の表面に表座ぐり穴を加工する表座ぐり加工工程と、
を備えることを特徴とする加工方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の加工方法において、
前記下孔と前記裏座ぐり穴または表座ぐり穴との角部に前記複合工具の第2刃部または第1刃部を接触させた状態において、前記複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、前記複合工具および被加工物を、前記回転軸線と平行な軸方向および前記回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させながら、前記複合工具の第2刃部または第1刃部によって前記角部に面取り加工を行う面取り加工工程と、
を備えることを特徴とする加工方法。
【請求項8】
被加工物を載置するテーブル、主軸、前記テーブルおよび前記主軸の少なくとも一方を回転駆動させる回転駆動機構、並びに、前記テーブルおよび前記主軸を前記回転駆動機構の回転軸線と平行な軸方向および前記回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させる直線駆動機構を備えた工作機械本体と、
前記回転駆動機構および直線駆動機構を加工プログラムに従って駆動制御する制御装置と、
前記主軸に装着される複合工具とを備え、
前記複合工具は、前記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の複合工具が用いられている、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項1】
軸線方向の一端側に形成され工作機械の工具取付部に差し込み可能な装着部、および、前記軸線方向の他端側に形成された刃部取付部を含んで構成された工具本体と、
前記工具本体の刃部取付部において、前記装着部とは反対側に取り付けられた第1刃部と、
前記工具本体の刃部取付部において、前記装着部側に取り付けられた第2刃部とを備え、
前記軸線から前記第1刃部の先端までの寸法に対して、前記軸線から前記第2刃部の先端までの寸法が小さい、ことを特徴とする複合工具。
【請求項2】
請求項1に記載の複合工具において、
前記工具本体は、前記装着部と、基端に前記装着部を有する延長シャフトと、この延長シャフトの先端に設けられた前記刃部取付部とを含んで構成され、
前記刃部取付部は、前記軸線方向に対して直交する方向から見て幅方向両端側が前記装着部に向かうに従って次第に幅方向寸法が狭くなった台形形状に形成され、
前記台形形状の角部に前記第1刃部および第2刃部が取り付けられている、ことを特徴とする複合工具。
【請求項3】
請求項1に記載の複合工具において、
前記第1刃部および前記第2刃部は、前記軸線に対して直交する線上に沿って配置されている、ことを特徴とする複合工具。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の複合工具において、
前記工具本体の刃部取付部において、前記装着部とは反対側に取り付けられた第3刃部を備え、
前記第3刃部は、前記第1刃部に対して、前記軸線方向へ突出して取り付けられているとともに、前記軸線から前記第1刃部の先端までの寸法に対して、前記軸線から前記第3刃部の先端までの寸法が小さい、ことを特徴とする複合工具。
【請求項5】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の複合工具を用いて、被加工物を加工する加工方法において、
前記複合工具および被加工物の一方を回転軸線を中心として回転させるとともに、前記複合工具および被加工物を前記回転軸線と平行な軸方向へ相対移動させながら、前記複合工具の第1刃部によって被加工物に下孔を加工する孔加工工程と、
前記下孔を加工した前記被加工物の裏面に前記複合工具の第2刃部を突出させた状態において、前記複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、前記複合工具および被加工物を、前記回転軸線と平行な軸方向および前記回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させながら、前記複合工具の第2刃部によって被加工物の裏面に裏座ぐり穴を加工する裏座ぐり加工工程と、
を備えることを特徴とする加工方法。
【請求項6】
請求項5に記載の加工方法において、
前記下孔を加工した前記被加工物の表面に前記複合工具の第1刃部を突出させた状態において、前記複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、前記複合工具および被加工物を、前記回転軸線と平行な軸方向および前記回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させながら、前記複合工具の第1刃部によって被加工物の表面に表座ぐり穴を加工する表座ぐり加工工程と、
を備えることを特徴とする加工方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の加工方法において、
前記下孔と前記裏座ぐり穴または表座ぐり穴との角部に前記複合工具の第2刃部または第1刃部を接触させた状態において、前記複合工具および被加工物の一方を回転させるとともに、前記複合工具および被加工物を、前記回転軸線と平行な軸方向および前記回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させながら、前記複合工具の第2刃部または第1刃部によって前記角部に面取り加工を行う面取り加工工程と、
を備えることを特徴とする加工方法。
【請求項8】
被加工物を載置するテーブル、主軸、前記テーブルおよび前記主軸の少なくとも一方を回転駆動させる回転駆動機構、並びに、前記テーブルおよび前記主軸を前記回転駆動機構の回転軸線と平行な軸方向および前記回転軸線に対して直交する軸方向へ相対移動させる直線駆動機構を備えた工作機械本体と、
前記回転駆動機構および直線駆動機構を加工プログラムに従って駆動制御する制御装置と、
前記主軸に装着される複合工具とを備え、
前記複合工具は、前記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の複合工具が用いられている、
ことを特徴とする工作機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−161904(P2012−161904A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111181(P2011−111181)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】
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