複合成形体の製造方法
【課題】金属成形体と樹脂成形体との接合強度が高められた複合成形体が得られる製造方法の提供。
【解決手段】金属成形体10の接合面に対して、ドット状の独立した複数の孔11を形成するようにレーザー照射する工程と、ドット状の独立した複数の孔11を形成した金属成形体10の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂をインサート成形する工程を有する複合成形体の製造方法であって、レーザース照射工程において1つの孔11を形成するとき、前記孔の開口部径(D)と前記孔の深さ(dep)との比(dep/D)が1.0〜10の範囲になるようにする、複合成形体の製造方法。
【解決手段】金属成形体10の接合面に対して、ドット状の独立した複数の孔11を形成するようにレーザー照射する工程と、ドット状の独立した複数の孔11を形成した金属成形体10の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂をインサート成形する工程を有する複合成形体の製造方法であって、レーザース照射工程において1つの孔11を形成するとき、前記孔の開口部径(D)と前記孔の深さ(dep)との比(dep/D)が1.0〜10の範囲になるようにする、複合成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属成形体と樹脂成形体からなる複合成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種部品の軽量化の観点から、金属代替品として樹脂成形体が使用されているが、全ての金属部品を樹脂で代替することは難しい場合も多い。そのような場合には、金属成形体と樹脂成形体を接合一体化することで新たな複合部品を製造することが考えられる。
しかしながら、金属成形体と樹脂成形体を工業的に有利な方法で、かつ高い接合強度で接合一体化できる技術は実用化されていない。
【0003】
特許文献1には、金属表面に対して、一つの走査方向にレーザースキャニングする工程と、それにクロスする走査方向にレーザースキャニングする工程を含む、異種材料(樹脂)と接合するための金属表面のレーザー加工方法の発明が記載されている。
特許文献2には、特許文献1の発明において、さらに複数回重畳的にレーザースキャニングするレーザー加工方法の発明が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1、2の発明は、必ずクロスする2つの方向に対してレーザースキャンする必要があるため、加工時間が長く掛かりすぎるという点で改善の余地がある。
さらにクロス方向へのレーザースキャンにより十分な表面粗し処理ができることから、接合強度は高くできることが考えられるが、表面粗さ状態が均一にならず、金属と樹脂との接合部分の強度の方向性が安定しないおそれがあるという問題がある。
【0005】
また接合面が複雑な形状や幅の細い部分を含む形状のものである場合(例えば星形、三角形、ダンベル型)には、クロス方向にレーザースキャンする方法では、部分的に表面粗し処理が不均一になる結果、充分な接合強度が得られないことも考えられる。
【0006】
特許文献3には、金属表面にレーザー光を照射して凹凸を形成し、凹凸形成部位に樹脂、ゴム等を射出成形する電気電子部品の製造方法が記載されている。
実施形態1〜3では、金属長尺コイル表面にレーザー照射して凹凸を形成することが記載されている。そして、段落番号10では、金属長尺コイル表面をストライプ状や梨地状に荒らすこと、段落番号19では、金属長尺コイル表面をストライプ状、点線状、波線状、ローレット状、梨地状に荒らすることが記載されている。
しかし、段落番号21、22の発明の効果に記載されているとおり、レーザー照射をする目的は、金属表面に微細で不規則な凹凸を形成し、それによりアンカー効果を高めるためである。特に処理対象が金属長尺コイルであることから、どのような凹凸を形成した場合でも、必然的に微細で不規則な凹凸になるものと考えられる。
よって、特許文献3の発明は、特許文献1、2の発明のようにクロス方向にレーザー照射して表面に微細な凹凸を形成する発明と同じ技術的思想を開示しているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4020957号公報
【特許文献2】特開2010−167475号公報
【特許文献3】特開平10−294024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、金属成形体の接合面に対するレーザー照射面積を小さくし、表面粗し加工の程度を抑制した上で、金属成形体と樹脂成形体の接合強度を高めることができる、複合成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、課題の解決手段として、
金属成形体の接合面に対して、ドット状の独立した複数の孔を形成するようにレーザー照射する工程と、
ドット状の独立した複数の孔を形成した金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂をインサート成形する工程を有する複合成形体の製造方法であって、
レーザー照射工程において1つの孔を形成するとき、前記孔の開口部径(D)と前記孔の深さ(dep)との比(dep/D)が1.0〜10の範囲になるようにする、複合成形体の製造方法を提供する。
【0010】
本発明は、課題の他の解決手段として、
金属成形体の接合面に対して、複数の孔からなる溝が形成されるようにレーザー照射する工程と、
前記溝が形成された金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂をインサート成形する工程を有する複合成形体の製造方法であって、
レーザー照射工程において前記溝を形成するとき、前記溝の幅(W)と前記溝の深さ(dep)との比(dep/W)が1.0〜10の範囲になるようにする、複合成形体の製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、課題のさらに他の解決手段として、
金属成形体の接合面に対して、複数の独立した凸部を形成するようにレーザー照射する工程と、
前記複数の凸部を形成した金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂をインサート成形する工程を有する複合成形体の製造方法であって、
レーザース照射工程において独立した凸部を形成するとき、隣接する凸部同士の距離(Dis)と凸部の高さ(h)との比(h/Dis)が1.0〜10の範囲になるようにする、複合成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、
レーザー照射工程において形成された1つの孔の開口部径(D)と深さ(d)との比(d/D)、
レーザー照射工程において形成された溝の幅(W)と深さ(d)との比(d/W)又は
レーザー照射工程において形成された複数の凸部の隣接する凸部同士の距離(Dis)と凸部の高さ(h)との(h/Dis)、
を所定範囲に調整することによって、レーザー照射(レーザースキャン)範囲を従来よりも狭くした場合であっても(即ち、金属成形体の表面粗し加工の程度を抑制した場合であっても)、金属成形体と樹脂成形体との接合強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のレーザー照射工程におけるドット状の独立した孔の形成方法を説明するための平面図。
【図2】本発明のレーザー照射工程におけるドット状の独立した孔を含む金属成形体の厚み方への断面図。
【図3】(a)は、本発明のレーザー照射工程における溝の形成方法を説明するための平面図であり、(b)は(a)とはレーザー照射のピッチが異なる溝の形成方法を説明するための平面図。
【図4】(a)は、本発明のレーザー照射工程における溝の平面図、(b)は、(a)の溝を含む金属成形体の厚み方向への断面図。
【図5】本発明のレーザー照射工程における凸部の形成方法を説明するための平面図。
【図6】(a)は図5で形成した凸部の幅方向断面図であり、(b)は別実施形態の幅方向断面図。
【図7】実施例における金属成形体へのレーザー照射方法の説明図。
【図8】図7に示す金属成形体へのレーザー照射方法の説明図。
【図9】複合成形体に対する引張試験方法を説明するための図。
【図10】実施例4においてレーザースキャン後の金属成形体表面の顕微鏡写真(450倍)を示す図。
【図11】実施例4においてレーザースキャン後の金属成形体断面の走査型電子顕微鏡写真(50倍)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の複合成形体の製造方法は、金属成形体表面へのレーザー照射工程の違いによって、
ドット状の独立した孔を形成するようにレーザー照射する工程を有する製造方法(第1の製造方法)と、
複数の孔からなる溝が形成されるようにレーザー照射する(即ち、レーザースキャンする)工程を有する製造方法(第2の製造方法)と、
複数の独立した凸部が形成されるようにレーザー照射する(即ち、レーザースキャンする)工程を有する製造方法(第3の製造方法)に分けることができる。
【0015】
(1)第1の製造方法
<レーザー照射工程>
第1の製造方法におけるレーザー照射工程は、樹脂成形体との接合面となる金属成形体10の表面に対して、ドット状の独立した多数の孔を形成するようにレーザー照射する工程である。
このレーザー照射工程では、図1に示すように独立した多数の孔11(11a、11b、11c等)を形成する。
【0016】
ドット状の独立した多数の孔11は、図1のように所定間隔(ピッチ)をおいて形成する。
ドット状の独立した多数の孔11(11a、11b、11c……)同士のピッチP1、P2……は、樹脂成形体との接合強度を高めるため、30〜300μmであることが好ましく、50〜150μmであることが好ましい。ピッチP1、P2の距離は、隣接する孔11aと孔11b、孔11bと孔11c同士の中心点間の距離である。
ピッチP1、P2の距離は同一に設定することが好ましいが、部分的に異ならせることができる。例えば、正方形の面にレーザースキャンするときは、各辺に沿ってドット状の孔を直線状に形成するときは等間隔のピッチとし、角部に沿ってレーザー照射するときは、ピッチを狭くすることができる。
【0017】
ドット状の独立した多数の孔11は、例えば、図2(a)〜(d)に示すような断面形状を有するものである。
1つの孔11は、孔の開口部径(D)と孔の深さ(dep)との比(dep/D)が1.0〜10の範囲のものであり、好ましくは1.2〜8.0、より好ましくは1.5〜5.0の範囲のものである。
(dep/D)を前記範囲に調整することで、レーザー照射範囲を従来よりも狭くした場合であっても、金属成形体と樹脂成形体との接合強度を高めることができるようになる。
【0018】
孔11の開口部径(D)は30〜200μmが好ましく、50〜150μmが好ましい。孔11の深さ(dep)は、金属成形体10の強度を維持するため、金属成形体10の厚さの50%以内になるように調整することが好ましい。
【0019】
レーザー照射工程において図1、図2に示すような1つの孔11(11a〜11c)を形成するとき、1つの独立した孔11を形成するために1〜400ショットのパルスレーザーを照射することが好ましく、1〜200ショットのパルスレーザーを照射することがより好ましい。
またレーザー照射位置をずらしながら照射することで、孔11の開口部径(D)を広げることもできる。
【0020】
レーザー照射工程において図1、図2に示すような1つの孔11(11a〜11c)を形成するとき、照射するレーザーのビーム径を同一にしてもよいし、1回のショットごと又は複数回のショットごとに異ならせても良い。
図1(a)の孔11の場合には、レーザーのビーム径を同一にして照射する。
図1(b)の孔11の場合には、レーザーのビーム径を少しずつ小さくして照射する。
図1(c)の孔11の場合には、レーザーのビームの照射角度を変更して照射することにより、得ることができる。
図1(d)の孔11の場合には、最初は同一径のビームで照射した後、小さな径のビームで照射する。
【0021】
レーザー照射する工程では、金属成形体の接合面に対してドット状の独立した多数の孔を形成するようにレーザー照射するが、全体として直線(点線)、曲線(点線からなる曲線)、直線及び/又は曲線からなる図形等を形成するようにしてマーキングすることができる。
例えば、断面が円形の丸棒の端面(金属成形体の接合面)にレーザー照射するとき、直径の異なる複数の同心円を形成するようにレーザー照射したり、渦巻きを形成するようにレーザー照射したり、多数の水玉模様状にレーザー照射したりすることができる。
その他、金属成形体の接合面の形状(三角形、四角形、六角形、楕円形、不定形等)に応じて、上記した円形のものと同様にしてレーザー照射することができる。
【0022】
第1の製造方法において、レーザー照射工程を適用する金属成形体は特に制限されるものではなく、用途に応じて公知の金属からなる成形体を適宜選択することができる。例えば、鉄、各種ステンレス、アルミニウム又はその合金、銅、マグネシウム及びそれらを含む合金から選ばれる成形体を挙げることができる。
【0023】
第1の製造方法のレーザー照射工程では公知のレーザーを使用することができ、例えば、YAGレーザー、半導体レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、He−Neレーザー、窒素レーザー、キレートレーザー、色素レーザーを使用することができる。
【0024】
<インサート成形工程>
第1の製造方法におけるインサート成形工程は、多数のドット状の独立した孔を形成した金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂をインサート成形する工程である。
【0025】
インサート成形方法は特に制限されるものではなく、金型内に溶融状態の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂(プレポリマー)を射出する方法、金属成形体と樹脂成形体を加熱プレスする方法等を適用することができる。なお、熱硬化性樹脂(プレポリマー)を使用したときには後硬化処理をする。
【0026】
熱可塑性樹脂は、用途に応じて公知の熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。例えば、ポリアミド系樹脂(PA6、PA66等の脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド)、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン単位を含む共重合体、ポリエチレン、エチレン単位を含む共重合体、ポリプロピレン、プロピレン単位を含む共重合体、その他のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂を挙げることができる。
【0027】
熱硬化性樹脂は、用途に応じて公知の熱硬化性樹脂から適宜選択することができる。例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レソルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニルウレタンを挙げることができる。
【0028】
熱可塑性エラストマーは、用途に応じて公知の熱可塑性エラストマーから適宜選択することができる。例えば、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーを挙げることができる。
【0029】
これらの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマーには、公知の繊維状充填材を配合することができる。
公知の繊維状充填材としては、炭素繊維、無機繊維、金属繊維、有機繊維等を挙げることができる。
炭素繊維は周知のものであり、PAN系、ピッチ系、レーヨン系等のものを用いることができるが、PAN系、ピッチ系のものが好ましい。
無機繊維としては、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維等を挙げることができるが、ガラス繊維が好ましい。
金属繊維としては、ステンレス、アルミニウム、銅等からなる繊維を挙げることができるが、ステンレス繊維が好ましい。
有機繊維としては、ポリアミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維、ジアミンとジカルボン酸のいずれか一方が芳香族化合物である半芳香族ポリアミド繊維、脂肪族ポリアミド繊)、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエステル繊維(全芳香族ポリエステル繊維を含む)、ポリイミド繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、セルロース繊維、再生セルロース繊維を用いることができるが、これらの中でも全芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)やセルロース繊維、再生セルロース繊維がより好ましい。
【0030】
これらの繊維状充填材は、繊維径が3〜60μmの範囲のものを使用することができるが、これらの中でも、例えば金属成形体1の接合面1aに対して形成されるマーキングパターン5の孔の開口部径(D)より小さな繊維径のものを使用することが好ましい。
このようなマーキングパターン5の孔の開口部径(D)より小さな繊維径の繊維状充填材を使用したときには、金属成形体のマーキングパターン5の孔内部に繊維状充填材の一部が入り込んだ状態の複合成形体が得られ、金属成形体と樹脂成形体の接合強度が高められるので好ましい。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー100質量部に対する繊維状充填材の配合量は5〜250質量部が好ましい。
【0031】
<第2の製造方法>
第2の製造方法におけるレーザー照射工程は、樹脂成形体との接合面となる金属成形体10の表面に対して、複数の孔からなる溝が形成されるようにレーザー照射(レーザースキャン)する工程である。
このレーザースキャン工程では、図3(a)、(b)に示すように多数の孔21〜28等が互いに重複するように形成することで、図4(a)に示すように全体として溝30を形成する工程である。図3(a)と図3(b)は、孔同士の間隔(ピッチ)が異なる例であり、図3(b)の方のピッチが大きくなっている。ここでピッチは図1に示すP1、P2と同じで、隣接する孔同士の中心間の距離である。
【0032】
溝30は、例えば、図4(b)に示すような断面形状を有するものである。
溝30は、溝の幅(W)と溝の深さ(dep)との比(dep/W)が1.0〜10の範囲のものであり、好ましくは1.2〜8.0、より好ましくは1.5〜5.0の範囲のものである。
(W/dep)を前記範囲に調整することで、レーザー照射範囲を従来よりも狭くした場合であっても、金属成形体と樹脂成形体との接合強度を高めることができるようになる。
【0033】
溝30の幅は30〜200μmが好ましく、50〜150μmが好ましい。孔11の深さは、金属成形体10の強度を維持するため、金属成形体10の厚さの50%以内になるように調整することが好ましい。
【0034】
レーザースキャン速度はレーザー出力に応じて選択することができ、一般的には0.1〜20000mm/secの範囲で選択可能であり、1〜12000mm/secが好ましく、5〜2000mm/secがより好ましく、10〜1000mm/secがさらに好ましい。
隣接する溝同士の距離(隣接する溝の幅中間点同士の距離)は30〜300μmが好ましく、40〜150μmがより好ましい。
【0035】
レーザースキャン工程では、金属成形体の接合面に対して溝を形成するようにレーザー照射するが、全体として直線、曲線、直線及び/又は曲線からなる図形等を形成するようにしてマーキングすることができる。
例えば、断面が円形の丸棒の端面(金属成形体の接合面)にレーザー照射するとき、直径の異なる複数の同心円を形成するようにレーザー照射したり、渦巻きを形成するようにレーザー照射したり、多数の水玉模様状にレーザー照射したりすることができる。
その他、金属成形体の接合面の形状(三角形、四角形、六角形、楕円形、不定形等)に応じて、上記した円形のものと同様にしてレーザー照射することができる。
【0036】
第2の製造方法におけるレーザースキャン工程を適用する金属成形体は特に制限されるものではなく、用途に応じて公知の金属からなる成形体を適宜選択することができる。例えば、鉄、各種ステンレス、アルミニウム又はその合金、銅、マグネシウム及びそれらを含む合金から選ばれる成形体を挙げることができる。
【0037】
第2の製造方法のレーザースキャン工程では公知のレーザーを使用することができ、例えば、YAGレーザー、半導体レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、He−Neレーザー、窒素レーザー、キレートレーザー、色素レーザーを使用することができる。
【0038】
第2の製造方法のインサート成形工程は、第1の製造方法と同じ方法を適用することができる。
樹脂成形体の成形材料として繊維状充填剤を使用したときは、繊維径が3〜60μmの範囲のものを使用することができる。これらの中でも、例えば金属成形体1の接合面1aに対して形成されるマーキングパターン5の溝の幅(W)より小さな繊維径のものを使用することが好ましい。
このようなマーキングパターン5の溝の幅(W)より小さな繊維径の繊維状充填材を使用したときには、金属成形体のマーキングパターン5の溝内部に繊維状充填材の一部が入り込んだ状態の複合成形体が得られ、金属成形体と樹脂成形体の接合強度が高められるので好ましい。
【0039】
<第3の製造方法>
第3の製造方法におけるレーザー照射工程は、金属成形体の接合面に対して、複数の独立した凸部を形成するようにレーザー照射(レーザースキャン)する工程である。
このレーザースキャン工程では、樹脂成形体との接合面となる金属成形体10の表面に対して、図5に示すような複数の独立した凸部41が形成されるようにレーザー照射する。
このような複数の独立した凸部41を形成するためには、凸部41を形成しない金属成形体10の表面に対してレーザースキャンして凹部(溝)を含む金属除去面42を形成する。
このような所定高さの凸部41(及び金属除去面42)を形成するには、金属成形体10の接合面に対して、複数回レーザースキャンする方法を適用することができる。
スキャン回数を増加させると凸部高さ(h)が相対的に高くなり、スキャン回数を減少させると凸部高さ(h)が相対的に低くなる。
【0040】
独立した複数の凸部41は、図5に示すように隣接する凸部41同士の間に所定間隔をおいて形成する。
隣接する凸部41同士の距離(Dis)は40〜250μmが好ましく、80〜200μmが好ましい。
隣接する凸部41同士の距離(Dis)は同一に設定することが好ましいが、部分的に異ならせることができる。例えば、正方形の面にレーザースキャンするときは、各辺に沿ってドット状の孔を直線状に形成するときは等間隔のピッチとし、角部に沿ってレーザー照射するときは、ピッチを狭くすることができる。
隣接する凸部41同士の間隔(W)は、30〜200μmが好ましく、50〜150μmがより好ましい。
凸部41の幅は、例えば図5に示すように凸部41の平面形状が正方形であるときは、幅(1辺の長さ)は30〜200μmが好ましく、50〜150μmがより好ましい。
【0041】
独立した凸部41は、例えば、図6(a)、(b)に示すような断面形状を有するものである。
凸部41の高さ(h)は、金属成形体10の強度を維持するため、金属成形体10の厚さの50%以内になるように調整することが好ましい。
複数の独立した凸部41は、隣接する凸部41同士の距離(Dis)と凸部41の高さ(h)との比(h/Dis)が1.0〜10の範囲の範囲のものであり、好ましくは1.2〜8、より好ましくは1.5〜5の範囲のものである。
(h/Dis)を前記範囲に調整することで、レーザー照射範囲を従来よりも狭くした場合であっても、金属成形体と樹脂成形体との接合強度を高めることができるようになる。
【0042】
レーザー照射する工程では、金属成形体10の接合面に対して独立した多数の凸部を形成するようにレーザー照射するが、凸部全体として直線(点線)、曲線(点線からなる曲線)、直線及び/又は曲線からなる図形等を形成するようにしてマーキングすることができる。
例えば、断面が円形の丸棒の端面(金属成形体の接合面)にレーザー照射するとき、凸部全体として直径の異なる複数の同心円を形成するようにレーザー照射したり、凸部全体として渦巻きを形成するようにレーザー照射したり、凸部全体として多数の水玉模様状にレーザー照射したりすることができる。
その他、金属成形体の接合面の形状(三角形、四角形、六角形、楕円形、不定形等)に応じて、上記した円形のものと同様にしてレーザー照射することができる。
【0043】
第3の製造方法におけるレーザースキャン工程を適用する金属成形体は特に制限されるものではなく、用途に応じて公知の金属からなる成形体を適宜選択することができる。例えば、鉄、各種ステンレス、アルミニウム又はその合金、銅、マグネシウム及びそれらを含む合金から選ばれる成形体を挙げることができる。
【0044】
第3の製造方法のレーザースキャン工程では公知のレーザーを使用することができ、例えば、YAGレーザー、半導体レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、He−Neレーザー、窒素レーザー、キレートレーザー、色素レーザーを使用することができる。
【0045】
第3製造方法のインサート成形工程は、第1の製造方法と同じ方法を適用することができる。
樹脂成形体の成形材料として繊維状充填剤を使用したときは、繊維径が3〜60μmの範囲のものを使用することができる。これらの中でも、例えば金属成形体10の接合面に対して形成される凸部同士の間隔(W)より小さな繊維径のものを使用することが好ましい。
このようなマーキングパターン5の凸部同士の間隔(W)より小さな繊維径の繊維状充填材を使用したときには、金属成形体のマーキングパターン5の凸部同士間に繊維状充填材の一部が入り込んだ状態の複合成形体が得られ、金属成形体と樹脂成形体の接合強度が高められるので好ましい。
【実施例】
【0046】
<測定方法>
(1)孔径(D)、溝幅(W)及び凸部同士の距離(Dis)
レーザー照射して加工した金属接合面の上から、CCD(キーエンス社製のデジタル顕微鏡VHX,レンズVH-Z450)を用いて、レンズ倍率450倍で凹凸の上面に焦点が合う状態で像を撮影した。
孔径(D)については、画像上で焦点が合っている部分のDの寸法を15点測定し、その平均値を求めた。
溝幅(W)については、同様にWの寸法を15点測定し、その平均値を求めた。
凸部同士の距離(Dis)についても同様にDisの間隔を15点測定し、その平均値を求めた。測定に使用した顕微鏡写真の一例を図10に示す。
【0047】
(2)孔の深さ(Dep)、溝の深さ(Dep)及び、凸部の高さ(h)
複合成形体をダイヤモンドワイヤソー(メイワフォーシス(株)製のDWS3242)で切断した。
切断は、ダイヤモンドワイヤソーの刃(円形の刃)を18°ずつ回転させて切断することで、合計で10個の試験片に切断した。
それぞれの試験片の切断面をエポキシ樹脂で包埋した後に、断面を研磨機(ムサシノ電子製のMA-200D)で研磨した。
その後、研磨した断面を走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ社製のS-3400N)で50倍の倍率で観察して断面画像を得た。
それぞれの断面画像について、2mm以上の視野で凸部の底面(凹部)の2点以上を通る線1を引き、凸部の頂点を2点以上通りかつ線1に対して平行になるように線2を引いた。
線1と線2間の間隔を測定し、その中で最も間隔が大きいものを孔の深さ(Dep)、溝の深さ(Dep)及び凸部の高さ(h)とした。測定に使用した顕微鏡写真の一例(実施例4)を図11に示す。
【0048】
実施例1、2(第1の製造方法)
金属板(SUS304)又はアルミニウム板(AL A5052)とポリアミド66からなる複合成形体を製造した。
【0049】
図7に示す金属板(SUS304又はAL(A5052))(幅15mm,長さ60mm,厚み1mm)の示すレーザー照射エリア(接合面)15(40mm2〔4mm×10mm〕)に対して、YAGレーザーを使用して、金属板10の接合面15に対して90度の角度で(真上から)レーザー照射した。レーザー照射条件は、表1に示すとおりである。多数の孔からなるマーキングパターンは図8(a)である。
【0050】
金属板10の接合面15にレーザー照射した後、下記の方法でインサート成形して、図9で示す金属板10と樹脂成形体20が接合一体化された複合成形体30を得た。但し図9は、引張試験用のスペーサ40(スペーサ40は、本発明の方法で得られる複合成形体には含まれない)を取り付けた状態で示している。
【0051】
<インサート成形(射出成形)>
樹脂:GF60%強化PA66樹脂(プラストロンPA66−GF60−01(L9):ダイセルポリマー(株)製)
樹脂温度:320℃
金型温度:100℃
射出成形機:FUNAC ROBOSHOT S−2000i−100B
【0052】
図9で示す複合成形体30を用いて、引張試験を行った。結果を表1に示す。
<引張試験条件>
試験機:テンシロンUCT−1T
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
引張方向:図7〜図9に示す白矢印方向。試験は、n数5で行い、それらの平均値を求めた。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例3(第2の製造方法)、比較例1、2
実施例1の方法に準じて、表2に示すレーザー照射条件でレーザースキャンした。
その後、実施例1と同様にしてインサート成形して図9で示す複合成形体30(引張試験用のスペーサ40付き)を成形し、さらに実施例1と同様に引張試験を行った。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
比較例1、2は、簡単に剥がれたため、測定できなかった。
実施例3と比較例1、2の引張強度の対比から、dep/W比を制御することによって金属成形体と樹脂成形体の接合強度が高められることが確認された。この事実は、スキャン範囲が同じ場合であれば、本発明の製造方法(レーザースキャン工程)を実施することで接合強度が高められることを示している。
【0057】
実施例4〜7(第3の製造方法)
図7に示す金属板(AL(A5052))(幅15mm,長さ60mm,厚み1mm)の示すレーザー照射エリア(接合面)15(40mm2〔4mm×10mm〕)に対して、YVO4レーザー(バナジウムレーザー)を使用して、金属板10の接合面15に対して90度の角度で(真上から)レーザースキャンした。レーザースキャン条件は、表3に示すとおりである。多数の凸部からなるマーキングパターンは図5である。凸部は、低面が1辺が70μmの正方形である四角柱とし、Wが70μmとなるように条件設定した。その他の詳細条件設定は、表3に示す。レーザー加工設定条件と実際に形成された凸部の寸法形状は若干異なっており、その寸法については、CCDデジタル顕微鏡(図10;実施例4)や走査型電子顕微鏡観察(図11;実施例4)により測定した。
その後、実施例1と同様にしてインサート成形して図9で示す複合成形体30(引張試験用のスペーサ40付き)を成形し、さらに実施例1と同様に引張試験を行った。結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【符号の説明】
【0059】
10 金属成形体
11 孔
21−28 孔
30 溝
41 凸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属成形体と樹脂成形体からなる複合成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種部品の軽量化の観点から、金属代替品として樹脂成形体が使用されているが、全ての金属部品を樹脂で代替することは難しい場合も多い。そのような場合には、金属成形体と樹脂成形体を接合一体化することで新たな複合部品を製造することが考えられる。
しかしながら、金属成形体と樹脂成形体を工業的に有利な方法で、かつ高い接合強度で接合一体化できる技術は実用化されていない。
【0003】
特許文献1には、金属表面に対して、一つの走査方向にレーザースキャニングする工程と、それにクロスする走査方向にレーザースキャニングする工程を含む、異種材料(樹脂)と接合するための金属表面のレーザー加工方法の発明が記載されている。
特許文献2には、特許文献1の発明において、さらに複数回重畳的にレーザースキャニングするレーザー加工方法の発明が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1、2の発明は、必ずクロスする2つの方向に対してレーザースキャンする必要があるため、加工時間が長く掛かりすぎるという点で改善の余地がある。
さらにクロス方向へのレーザースキャンにより十分な表面粗し処理ができることから、接合強度は高くできることが考えられるが、表面粗さ状態が均一にならず、金属と樹脂との接合部分の強度の方向性が安定しないおそれがあるという問題がある。
【0005】
また接合面が複雑な形状や幅の細い部分を含む形状のものである場合(例えば星形、三角形、ダンベル型)には、クロス方向にレーザースキャンする方法では、部分的に表面粗し処理が不均一になる結果、充分な接合強度が得られないことも考えられる。
【0006】
特許文献3には、金属表面にレーザー光を照射して凹凸を形成し、凹凸形成部位に樹脂、ゴム等を射出成形する電気電子部品の製造方法が記載されている。
実施形態1〜3では、金属長尺コイル表面にレーザー照射して凹凸を形成することが記載されている。そして、段落番号10では、金属長尺コイル表面をストライプ状や梨地状に荒らすこと、段落番号19では、金属長尺コイル表面をストライプ状、点線状、波線状、ローレット状、梨地状に荒らすることが記載されている。
しかし、段落番号21、22の発明の効果に記載されているとおり、レーザー照射をする目的は、金属表面に微細で不規則な凹凸を形成し、それによりアンカー効果を高めるためである。特に処理対象が金属長尺コイルであることから、どのような凹凸を形成した場合でも、必然的に微細で不規則な凹凸になるものと考えられる。
よって、特許文献3の発明は、特許文献1、2の発明のようにクロス方向にレーザー照射して表面に微細な凹凸を形成する発明と同じ技術的思想を開示しているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4020957号公報
【特許文献2】特開2010−167475号公報
【特許文献3】特開平10−294024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、金属成形体の接合面に対するレーザー照射面積を小さくし、表面粗し加工の程度を抑制した上で、金属成形体と樹脂成形体の接合強度を高めることができる、複合成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、課題の解決手段として、
金属成形体の接合面に対して、ドット状の独立した複数の孔を形成するようにレーザー照射する工程と、
ドット状の独立した複数の孔を形成した金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂をインサート成形する工程を有する複合成形体の製造方法であって、
レーザー照射工程において1つの孔を形成するとき、前記孔の開口部径(D)と前記孔の深さ(dep)との比(dep/D)が1.0〜10の範囲になるようにする、複合成形体の製造方法を提供する。
【0010】
本発明は、課題の他の解決手段として、
金属成形体の接合面に対して、複数の孔からなる溝が形成されるようにレーザー照射する工程と、
前記溝が形成された金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂をインサート成形する工程を有する複合成形体の製造方法であって、
レーザー照射工程において前記溝を形成するとき、前記溝の幅(W)と前記溝の深さ(dep)との比(dep/W)が1.0〜10の範囲になるようにする、複合成形体の製造方法を提供する。
【0011】
本発明は、課題のさらに他の解決手段として、
金属成形体の接合面に対して、複数の独立した凸部を形成するようにレーザー照射する工程と、
前記複数の凸部を形成した金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂をインサート成形する工程を有する複合成形体の製造方法であって、
レーザース照射工程において独立した凸部を形成するとき、隣接する凸部同士の距離(Dis)と凸部の高さ(h)との比(h/Dis)が1.0〜10の範囲になるようにする、複合成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、
レーザー照射工程において形成された1つの孔の開口部径(D)と深さ(d)との比(d/D)、
レーザー照射工程において形成された溝の幅(W)と深さ(d)との比(d/W)又は
レーザー照射工程において形成された複数の凸部の隣接する凸部同士の距離(Dis)と凸部の高さ(h)との(h/Dis)、
を所定範囲に調整することによって、レーザー照射(レーザースキャン)範囲を従来よりも狭くした場合であっても(即ち、金属成形体の表面粗し加工の程度を抑制した場合であっても)、金属成形体と樹脂成形体との接合強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のレーザー照射工程におけるドット状の独立した孔の形成方法を説明するための平面図。
【図2】本発明のレーザー照射工程におけるドット状の独立した孔を含む金属成形体の厚み方への断面図。
【図3】(a)は、本発明のレーザー照射工程における溝の形成方法を説明するための平面図であり、(b)は(a)とはレーザー照射のピッチが異なる溝の形成方法を説明するための平面図。
【図4】(a)は、本発明のレーザー照射工程における溝の平面図、(b)は、(a)の溝を含む金属成形体の厚み方向への断面図。
【図5】本発明のレーザー照射工程における凸部の形成方法を説明するための平面図。
【図6】(a)は図5で形成した凸部の幅方向断面図であり、(b)は別実施形態の幅方向断面図。
【図7】実施例における金属成形体へのレーザー照射方法の説明図。
【図8】図7に示す金属成形体へのレーザー照射方法の説明図。
【図9】複合成形体に対する引張試験方法を説明するための図。
【図10】実施例4においてレーザースキャン後の金属成形体表面の顕微鏡写真(450倍)を示す図。
【図11】実施例4においてレーザースキャン後の金属成形体断面の走査型電子顕微鏡写真(50倍)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の複合成形体の製造方法は、金属成形体表面へのレーザー照射工程の違いによって、
ドット状の独立した孔を形成するようにレーザー照射する工程を有する製造方法(第1の製造方法)と、
複数の孔からなる溝が形成されるようにレーザー照射する(即ち、レーザースキャンする)工程を有する製造方法(第2の製造方法)と、
複数の独立した凸部が形成されるようにレーザー照射する(即ち、レーザースキャンする)工程を有する製造方法(第3の製造方法)に分けることができる。
【0015】
(1)第1の製造方法
<レーザー照射工程>
第1の製造方法におけるレーザー照射工程は、樹脂成形体との接合面となる金属成形体10の表面に対して、ドット状の独立した多数の孔を形成するようにレーザー照射する工程である。
このレーザー照射工程では、図1に示すように独立した多数の孔11(11a、11b、11c等)を形成する。
【0016】
ドット状の独立した多数の孔11は、図1のように所定間隔(ピッチ)をおいて形成する。
ドット状の独立した多数の孔11(11a、11b、11c……)同士のピッチP1、P2……は、樹脂成形体との接合強度を高めるため、30〜300μmであることが好ましく、50〜150μmであることが好ましい。ピッチP1、P2の距離は、隣接する孔11aと孔11b、孔11bと孔11c同士の中心点間の距離である。
ピッチP1、P2の距離は同一に設定することが好ましいが、部分的に異ならせることができる。例えば、正方形の面にレーザースキャンするときは、各辺に沿ってドット状の孔を直線状に形成するときは等間隔のピッチとし、角部に沿ってレーザー照射するときは、ピッチを狭くすることができる。
【0017】
ドット状の独立した多数の孔11は、例えば、図2(a)〜(d)に示すような断面形状を有するものである。
1つの孔11は、孔の開口部径(D)と孔の深さ(dep)との比(dep/D)が1.0〜10の範囲のものであり、好ましくは1.2〜8.0、より好ましくは1.5〜5.0の範囲のものである。
(dep/D)を前記範囲に調整することで、レーザー照射範囲を従来よりも狭くした場合であっても、金属成形体と樹脂成形体との接合強度を高めることができるようになる。
【0018】
孔11の開口部径(D)は30〜200μmが好ましく、50〜150μmが好ましい。孔11の深さ(dep)は、金属成形体10の強度を維持するため、金属成形体10の厚さの50%以内になるように調整することが好ましい。
【0019】
レーザー照射工程において図1、図2に示すような1つの孔11(11a〜11c)を形成するとき、1つの独立した孔11を形成するために1〜400ショットのパルスレーザーを照射することが好ましく、1〜200ショットのパルスレーザーを照射することがより好ましい。
またレーザー照射位置をずらしながら照射することで、孔11の開口部径(D)を広げることもできる。
【0020】
レーザー照射工程において図1、図2に示すような1つの孔11(11a〜11c)を形成するとき、照射するレーザーのビーム径を同一にしてもよいし、1回のショットごと又は複数回のショットごとに異ならせても良い。
図1(a)の孔11の場合には、レーザーのビーム径を同一にして照射する。
図1(b)の孔11の場合には、レーザーのビーム径を少しずつ小さくして照射する。
図1(c)の孔11の場合には、レーザーのビームの照射角度を変更して照射することにより、得ることができる。
図1(d)の孔11の場合には、最初は同一径のビームで照射した後、小さな径のビームで照射する。
【0021】
レーザー照射する工程では、金属成形体の接合面に対してドット状の独立した多数の孔を形成するようにレーザー照射するが、全体として直線(点線)、曲線(点線からなる曲線)、直線及び/又は曲線からなる図形等を形成するようにしてマーキングすることができる。
例えば、断面が円形の丸棒の端面(金属成形体の接合面)にレーザー照射するとき、直径の異なる複数の同心円を形成するようにレーザー照射したり、渦巻きを形成するようにレーザー照射したり、多数の水玉模様状にレーザー照射したりすることができる。
その他、金属成形体の接合面の形状(三角形、四角形、六角形、楕円形、不定形等)に応じて、上記した円形のものと同様にしてレーザー照射することができる。
【0022】
第1の製造方法において、レーザー照射工程を適用する金属成形体は特に制限されるものではなく、用途に応じて公知の金属からなる成形体を適宜選択することができる。例えば、鉄、各種ステンレス、アルミニウム又はその合金、銅、マグネシウム及びそれらを含む合金から選ばれる成形体を挙げることができる。
【0023】
第1の製造方法のレーザー照射工程では公知のレーザーを使用することができ、例えば、YAGレーザー、半導体レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、He−Neレーザー、窒素レーザー、キレートレーザー、色素レーザーを使用することができる。
【0024】
<インサート成形工程>
第1の製造方法におけるインサート成形工程は、多数のドット状の独立した孔を形成した金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂をインサート成形する工程である。
【0025】
インサート成形方法は特に制限されるものではなく、金型内に溶融状態の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂(プレポリマー)を射出する方法、金属成形体と樹脂成形体を加熱プレスする方法等を適用することができる。なお、熱硬化性樹脂(プレポリマー)を使用したときには後硬化処理をする。
【0026】
熱可塑性樹脂は、用途に応じて公知の熱可塑性樹脂から適宜選択することができる。例えば、ポリアミド系樹脂(PA6、PA66等の脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド)、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等のスチレン単位を含む共重合体、ポリエチレン、エチレン単位を含む共重合体、ポリプロピレン、プロピレン単位を含む共重合体、その他のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂を挙げることができる。
【0027】
熱硬化性樹脂は、用途に応じて公知の熱硬化性樹脂から適宜選択することができる。例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レソルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニルウレタンを挙げることができる。
【0028】
熱可塑性エラストマーは、用途に応じて公知の熱可塑性エラストマーから適宜選択することができる。例えば、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーを挙げることができる。
【0029】
これらの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマーには、公知の繊維状充填材を配合することができる。
公知の繊維状充填材としては、炭素繊維、無機繊維、金属繊維、有機繊維等を挙げることができる。
炭素繊維は周知のものであり、PAN系、ピッチ系、レーヨン系等のものを用いることができるが、PAN系、ピッチ系のものが好ましい。
無機繊維としては、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維等を挙げることができるが、ガラス繊維が好ましい。
金属繊維としては、ステンレス、アルミニウム、銅等からなる繊維を挙げることができるが、ステンレス繊維が好ましい。
有機繊維としては、ポリアミド繊維(全芳香族ポリアミド繊維、ジアミンとジカルボン酸のいずれか一方が芳香族化合物である半芳香族ポリアミド繊維、脂肪族ポリアミド繊)、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエステル繊維(全芳香族ポリエステル繊維を含む)、ポリイミド繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、セルロース繊維、再生セルロース繊維を用いることができるが、これらの中でも全芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維)やセルロース繊維、再生セルロース繊維がより好ましい。
【0030】
これらの繊維状充填材は、繊維径が3〜60μmの範囲のものを使用することができるが、これらの中でも、例えば金属成形体1の接合面1aに対して形成されるマーキングパターン5の孔の開口部径(D)より小さな繊維径のものを使用することが好ましい。
このようなマーキングパターン5の孔の開口部径(D)より小さな繊維径の繊維状充填材を使用したときには、金属成形体のマーキングパターン5の孔内部に繊維状充填材の一部が入り込んだ状態の複合成形体が得られ、金属成形体と樹脂成形体の接合強度が高められるので好ましい。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー100質量部に対する繊維状充填材の配合量は5〜250質量部が好ましい。
【0031】
<第2の製造方法>
第2の製造方法におけるレーザー照射工程は、樹脂成形体との接合面となる金属成形体10の表面に対して、複数の孔からなる溝が形成されるようにレーザー照射(レーザースキャン)する工程である。
このレーザースキャン工程では、図3(a)、(b)に示すように多数の孔21〜28等が互いに重複するように形成することで、図4(a)に示すように全体として溝30を形成する工程である。図3(a)と図3(b)は、孔同士の間隔(ピッチ)が異なる例であり、図3(b)の方のピッチが大きくなっている。ここでピッチは図1に示すP1、P2と同じで、隣接する孔同士の中心間の距離である。
【0032】
溝30は、例えば、図4(b)に示すような断面形状を有するものである。
溝30は、溝の幅(W)と溝の深さ(dep)との比(dep/W)が1.0〜10の範囲のものであり、好ましくは1.2〜8.0、より好ましくは1.5〜5.0の範囲のものである。
(W/dep)を前記範囲に調整することで、レーザー照射範囲を従来よりも狭くした場合であっても、金属成形体と樹脂成形体との接合強度を高めることができるようになる。
【0033】
溝30の幅は30〜200μmが好ましく、50〜150μmが好ましい。孔11の深さは、金属成形体10の強度を維持するため、金属成形体10の厚さの50%以内になるように調整することが好ましい。
【0034】
レーザースキャン速度はレーザー出力に応じて選択することができ、一般的には0.1〜20000mm/secの範囲で選択可能であり、1〜12000mm/secが好ましく、5〜2000mm/secがより好ましく、10〜1000mm/secがさらに好ましい。
隣接する溝同士の距離(隣接する溝の幅中間点同士の距離)は30〜300μmが好ましく、40〜150μmがより好ましい。
【0035】
レーザースキャン工程では、金属成形体の接合面に対して溝を形成するようにレーザー照射するが、全体として直線、曲線、直線及び/又は曲線からなる図形等を形成するようにしてマーキングすることができる。
例えば、断面が円形の丸棒の端面(金属成形体の接合面)にレーザー照射するとき、直径の異なる複数の同心円を形成するようにレーザー照射したり、渦巻きを形成するようにレーザー照射したり、多数の水玉模様状にレーザー照射したりすることができる。
その他、金属成形体の接合面の形状(三角形、四角形、六角形、楕円形、不定形等)に応じて、上記した円形のものと同様にしてレーザー照射することができる。
【0036】
第2の製造方法におけるレーザースキャン工程を適用する金属成形体は特に制限されるものではなく、用途に応じて公知の金属からなる成形体を適宜選択することができる。例えば、鉄、各種ステンレス、アルミニウム又はその合金、銅、マグネシウム及びそれらを含む合金から選ばれる成形体を挙げることができる。
【0037】
第2の製造方法のレーザースキャン工程では公知のレーザーを使用することができ、例えば、YAGレーザー、半導体レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、He−Neレーザー、窒素レーザー、キレートレーザー、色素レーザーを使用することができる。
【0038】
第2の製造方法のインサート成形工程は、第1の製造方法と同じ方法を適用することができる。
樹脂成形体の成形材料として繊維状充填剤を使用したときは、繊維径が3〜60μmの範囲のものを使用することができる。これらの中でも、例えば金属成形体1の接合面1aに対して形成されるマーキングパターン5の溝の幅(W)より小さな繊維径のものを使用することが好ましい。
このようなマーキングパターン5の溝の幅(W)より小さな繊維径の繊維状充填材を使用したときには、金属成形体のマーキングパターン5の溝内部に繊維状充填材の一部が入り込んだ状態の複合成形体が得られ、金属成形体と樹脂成形体の接合強度が高められるので好ましい。
【0039】
<第3の製造方法>
第3の製造方法におけるレーザー照射工程は、金属成形体の接合面に対して、複数の独立した凸部を形成するようにレーザー照射(レーザースキャン)する工程である。
このレーザースキャン工程では、樹脂成形体との接合面となる金属成形体10の表面に対して、図5に示すような複数の独立した凸部41が形成されるようにレーザー照射する。
このような複数の独立した凸部41を形成するためには、凸部41を形成しない金属成形体10の表面に対してレーザースキャンして凹部(溝)を含む金属除去面42を形成する。
このような所定高さの凸部41(及び金属除去面42)を形成するには、金属成形体10の接合面に対して、複数回レーザースキャンする方法を適用することができる。
スキャン回数を増加させると凸部高さ(h)が相対的に高くなり、スキャン回数を減少させると凸部高さ(h)が相対的に低くなる。
【0040】
独立した複数の凸部41は、図5に示すように隣接する凸部41同士の間に所定間隔をおいて形成する。
隣接する凸部41同士の距離(Dis)は40〜250μmが好ましく、80〜200μmが好ましい。
隣接する凸部41同士の距離(Dis)は同一に設定することが好ましいが、部分的に異ならせることができる。例えば、正方形の面にレーザースキャンするときは、各辺に沿ってドット状の孔を直線状に形成するときは等間隔のピッチとし、角部に沿ってレーザー照射するときは、ピッチを狭くすることができる。
隣接する凸部41同士の間隔(W)は、30〜200μmが好ましく、50〜150μmがより好ましい。
凸部41の幅は、例えば図5に示すように凸部41の平面形状が正方形であるときは、幅(1辺の長さ)は30〜200μmが好ましく、50〜150μmがより好ましい。
【0041】
独立した凸部41は、例えば、図6(a)、(b)に示すような断面形状を有するものである。
凸部41の高さ(h)は、金属成形体10の強度を維持するため、金属成形体10の厚さの50%以内になるように調整することが好ましい。
複数の独立した凸部41は、隣接する凸部41同士の距離(Dis)と凸部41の高さ(h)との比(h/Dis)が1.0〜10の範囲の範囲のものであり、好ましくは1.2〜8、より好ましくは1.5〜5の範囲のものである。
(h/Dis)を前記範囲に調整することで、レーザー照射範囲を従来よりも狭くした場合であっても、金属成形体と樹脂成形体との接合強度を高めることができるようになる。
【0042】
レーザー照射する工程では、金属成形体10の接合面に対して独立した多数の凸部を形成するようにレーザー照射するが、凸部全体として直線(点線)、曲線(点線からなる曲線)、直線及び/又は曲線からなる図形等を形成するようにしてマーキングすることができる。
例えば、断面が円形の丸棒の端面(金属成形体の接合面)にレーザー照射するとき、凸部全体として直径の異なる複数の同心円を形成するようにレーザー照射したり、凸部全体として渦巻きを形成するようにレーザー照射したり、凸部全体として多数の水玉模様状にレーザー照射したりすることができる。
その他、金属成形体の接合面の形状(三角形、四角形、六角形、楕円形、不定形等)に応じて、上記した円形のものと同様にしてレーザー照射することができる。
【0043】
第3の製造方法におけるレーザースキャン工程を適用する金属成形体は特に制限されるものではなく、用途に応じて公知の金属からなる成形体を適宜選択することができる。例えば、鉄、各種ステンレス、アルミニウム又はその合金、銅、マグネシウム及びそれらを含む合金から選ばれる成形体を挙げることができる。
【0044】
第3の製造方法のレーザースキャン工程では公知のレーザーを使用することができ、例えば、YAGレーザー、半導体レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、He−Neレーザー、窒素レーザー、キレートレーザー、色素レーザーを使用することができる。
【0045】
第3製造方法のインサート成形工程は、第1の製造方法と同じ方法を適用することができる。
樹脂成形体の成形材料として繊維状充填剤を使用したときは、繊維径が3〜60μmの範囲のものを使用することができる。これらの中でも、例えば金属成形体10の接合面に対して形成される凸部同士の間隔(W)より小さな繊維径のものを使用することが好ましい。
このようなマーキングパターン5の凸部同士の間隔(W)より小さな繊維径の繊維状充填材を使用したときには、金属成形体のマーキングパターン5の凸部同士間に繊維状充填材の一部が入り込んだ状態の複合成形体が得られ、金属成形体と樹脂成形体の接合強度が高められるので好ましい。
【実施例】
【0046】
<測定方法>
(1)孔径(D)、溝幅(W)及び凸部同士の距離(Dis)
レーザー照射して加工した金属接合面の上から、CCD(キーエンス社製のデジタル顕微鏡VHX,レンズVH-Z450)を用いて、レンズ倍率450倍で凹凸の上面に焦点が合う状態で像を撮影した。
孔径(D)については、画像上で焦点が合っている部分のDの寸法を15点測定し、その平均値を求めた。
溝幅(W)については、同様にWの寸法を15点測定し、その平均値を求めた。
凸部同士の距離(Dis)についても同様にDisの間隔を15点測定し、その平均値を求めた。測定に使用した顕微鏡写真の一例を図10に示す。
【0047】
(2)孔の深さ(Dep)、溝の深さ(Dep)及び、凸部の高さ(h)
複合成形体をダイヤモンドワイヤソー(メイワフォーシス(株)製のDWS3242)で切断した。
切断は、ダイヤモンドワイヤソーの刃(円形の刃)を18°ずつ回転させて切断することで、合計で10個の試験片に切断した。
それぞれの試験片の切断面をエポキシ樹脂で包埋した後に、断面を研磨機(ムサシノ電子製のMA-200D)で研磨した。
その後、研磨した断面を走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ社製のS-3400N)で50倍の倍率で観察して断面画像を得た。
それぞれの断面画像について、2mm以上の視野で凸部の底面(凹部)の2点以上を通る線1を引き、凸部の頂点を2点以上通りかつ線1に対して平行になるように線2を引いた。
線1と線2間の間隔を測定し、その中で最も間隔が大きいものを孔の深さ(Dep)、溝の深さ(Dep)及び凸部の高さ(h)とした。測定に使用した顕微鏡写真の一例(実施例4)を図11に示す。
【0048】
実施例1、2(第1の製造方法)
金属板(SUS304)又はアルミニウム板(AL A5052)とポリアミド66からなる複合成形体を製造した。
【0049】
図7に示す金属板(SUS304又はAL(A5052))(幅15mm,長さ60mm,厚み1mm)の示すレーザー照射エリア(接合面)15(40mm2〔4mm×10mm〕)に対して、YAGレーザーを使用して、金属板10の接合面15に対して90度の角度で(真上から)レーザー照射した。レーザー照射条件は、表1に示すとおりである。多数の孔からなるマーキングパターンは図8(a)である。
【0050】
金属板10の接合面15にレーザー照射した後、下記の方法でインサート成形して、図9で示す金属板10と樹脂成形体20が接合一体化された複合成形体30を得た。但し図9は、引張試験用のスペーサ40(スペーサ40は、本発明の方法で得られる複合成形体には含まれない)を取り付けた状態で示している。
【0051】
<インサート成形(射出成形)>
樹脂:GF60%強化PA66樹脂(プラストロンPA66−GF60−01(L9):ダイセルポリマー(株)製)
樹脂温度:320℃
金型温度:100℃
射出成形機:FUNAC ROBOSHOT S−2000i−100B
【0052】
図9で示す複合成形体30を用いて、引張試験を行った。結果を表1に示す。
<引張試験条件>
試験機:テンシロンUCT−1T
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
引張方向:図7〜図9に示す白矢印方向。試験は、n数5で行い、それらの平均値を求めた。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例3(第2の製造方法)、比較例1、2
実施例1の方法に準じて、表2に示すレーザー照射条件でレーザースキャンした。
その後、実施例1と同様にしてインサート成形して図9で示す複合成形体30(引張試験用のスペーサ40付き)を成形し、さらに実施例1と同様に引張試験を行った。結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
比較例1、2は、簡単に剥がれたため、測定できなかった。
実施例3と比較例1、2の引張強度の対比から、dep/W比を制御することによって金属成形体と樹脂成形体の接合強度が高められることが確認された。この事実は、スキャン範囲が同じ場合であれば、本発明の製造方法(レーザースキャン工程)を実施することで接合強度が高められることを示している。
【0057】
実施例4〜7(第3の製造方法)
図7に示す金属板(AL(A5052))(幅15mm,長さ60mm,厚み1mm)の示すレーザー照射エリア(接合面)15(40mm2〔4mm×10mm〕)に対して、YVO4レーザー(バナジウムレーザー)を使用して、金属板10の接合面15に対して90度の角度で(真上から)レーザースキャンした。レーザースキャン条件は、表3に示すとおりである。多数の凸部からなるマーキングパターンは図5である。凸部は、低面が1辺が70μmの正方形である四角柱とし、Wが70μmとなるように条件設定した。その他の詳細条件設定は、表3に示す。レーザー加工設定条件と実際に形成された凸部の寸法形状は若干異なっており、その寸法については、CCDデジタル顕微鏡(図10;実施例4)や走査型電子顕微鏡観察(図11;実施例4)により測定した。
その後、実施例1と同様にしてインサート成形して図9で示す複合成形体30(引張試験用のスペーサ40付き)を成形し、さらに実施例1と同様に引張試験を行った。結果を表3に示す。
【0058】
【表3】
【符号の説明】
【0059】
10 金属成形体
11 孔
21−28 孔
30 溝
41 凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属成形体の接合面に対して、ドット状の独立した複数の孔を形成するようにレーザー照射する工程と、
ドット状の独立した複数の孔を形成した金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂をインサート成形する工程を有する複合成形体の製造方法であって、
レーザース照射工程において1つの孔を形成するとき、前記孔の開口部径(D)と前記孔の深さ(dep)との比(dep/D)が1.0〜10の範囲になるようにする、複合成形体の製造方法。
【請求項2】
前記(dep/D)が1.2〜8.0の範囲になるようにする、請求項1記載の複合成形体の製造方法。
【請求項3】
孔の開口部径(D)が30〜200μmで、孔の深さ(dep)が金属成形体の厚さの50%以内である、請求項1又は2記載の複合成形体の製造方法。
【請求項4】
レーザー照射する工程が、金属成形体の接合面に対してドット状の独立した複数の孔を形成するようにレーザー照射して、前記複数の孔から形成される直線、曲線及びそれらからなる所望形状にマーキングする工程である、請求項1〜3のいずれか1項記載の複合成形体の製造方法。
【請求項5】
金属成形体の接合面に対して、複数の孔からなる溝が形成されるようにレーザー照射する工程と、
前記溝が形成された金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂をインサート成形する工程を有する複合成形体の製造方法であって、
レーザー照射工程において前記溝を形成するとき、前記溝の幅(W)と前記溝の深さ(dep)との比(dep/W)が1.0〜10の範囲になるようにする、複合成形体の製造方法。
【請求項6】
前記(dep/W)が1.2〜8.0の範囲になるようにする、請求項1記載の複合成形体の製造方法。
【請求項7】
溝の幅(W)が30〜200μmで、溝の深さ(dep)が金属成形体の厚さの50%以内である、請求項1又は2記載の複合成形体の製造方法。
【請求項8】
レーザー照射する工程が、金属成形体の接合面に対して溝を形成するようにレーザースキャンして、前記溝からなる直線、曲線及びそれらからなる所望形状にマーキングする工程である、請求項5〜7のいずれか1項記載の複合成形体の製造方法。
【請求項9】
金属成形体の接合面に対して、複数の独立した凸部を形成するようにレーザー照射する工程と、
前記複数の独立した凸部を形成した金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂をインサート成形する工程を有する複合成形体の製造方法であって、
レーザース照射工程において凸部を形成するとき、隣接する凸部同士の距離(Dis)と凸部の高さ(h)との比(h/Dis)が1.0〜10の範囲になるようにする、複合成形体の製造方法。
【請求項10】
前記(h/Dis)が1.2〜8.0の範囲になるようにする、請求項9記載の複合成形体の製造方法。
【請求項11】
前記隣接する凸部同士の距離(Dis)が
40〜250μmで、凸部の高さ(h)が金属成形体の厚さの50%以内である、請求項1又は2記載の複合成形体の製造方法。
【請求項12】
レーザー照射する工程が、金属成形体の接合面に対して複数の独立した凸部を形成するようにレーザー照射して、前記複数の独立した凸部から形成される直線、曲線及びそれらからなる所望形状にマーキングする工程である、請求項9〜11のいずれか1項記載の複合成形体の製造方法。
【請求項1】
金属成形体の接合面に対して、ドット状の独立した複数の孔を形成するようにレーザー照射する工程と、
ドット状の独立した複数の孔を形成した金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂をインサート成形する工程を有する複合成形体の製造方法であって、
レーザース照射工程において1つの孔を形成するとき、前記孔の開口部径(D)と前記孔の深さ(dep)との比(dep/D)が1.0〜10の範囲になるようにする、複合成形体の製造方法。
【請求項2】
前記(dep/D)が1.2〜8.0の範囲になるようにする、請求項1記載の複合成形体の製造方法。
【請求項3】
孔の開口部径(D)が30〜200μmで、孔の深さ(dep)が金属成形体の厚さの50%以内である、請求項1又は2記載の複合成形体の製造方法。
【請求項4】
レーザー照射する工程が、金属成形体の接合面に対してドット状の独立した複数の孔を形成するようにレーザー照射して、前記複数の孔から形成される直線、曲線及びそれらからなる所望形状にマーキングする工程である、請求項1〜3のいずれか1項記載の複合成形体の製造方法。
【請求項5】
金属成形体の接合面に対して、複数の孔からなる溝が形成されるようにレーザー照射する工程と、
前記溝が形成された金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂をインサート成形する工程を有する複合成形体の製造方法であって、
レーザー照射工程において前記溝を形成するとき、前記溝の幅(W)と前記溝の深さ(dep)との比(dep/W)が1.0〜10の範囲になるようにする、複合成形体の製造方法。
【請求項6】
前記(dep/W)が1.2〜8.0の範囲になるようにする、請求項1記載の複合成形体の製造方法。
【請求項7】
溝の幅(W)が30〜200μmで、溝の深さ(dep)が金属成形体の厚さの50%以内である、請求項1又は2記載の複合成形体の製造方法。
【請求項8】
レーザー照射する工程が、金属成形体の接合面に対して溝を形成するようにレーザースキャンして、前記溝からなる直線、曲線及びそれらからなる所望形状にマーキングする工程である、請求項5〜7のいずれか1項記載の複合成形体の製造方法。
【請求項9】
金属成形体の接合面に対して、複数の独立した凸部を形成するようにレーザー照射する工程と、
前記複数の独立した凸部を形成した金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、前記樹脂成形体となる樹脂をインサート成形する工程を有する複合成形体の製造方法であって、
レーザース照射工程において凸部を形成するとき、隣接する凸部同士の距離(Dis)と凸部の高さ(h)との比(h/Dis)が1.0〜10の範囲になるようにする、複合成形体の製造方法。
【請求項10】
前記(h/Dis)が1.2〜8.0の範囲になるようにする、請求項9記載の複合成形体の製造方法。
【請求項11】
前記隣接する凸部同士の距離(Dis)が
40〜250μmで、凸部の高さ(h)が金属成形体の厚さの50%以内である、請求項1又は2記載の複合成形体の製造方法。
【請求項12】
レーザー照射する工程が、金属成形体の接合面に対して複数の独立した凸部を形成するようにレーザー照射して、前記複数の独立した凸部から形成される直線、曲線及びそれらからなる所望形状にマーキングする工程である、請求項9〜11のいずれか1項記載の複合成形体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−107273(P2013−107273A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253751(P2011−253751)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【出願人】(501041528)ダイセルポリマー株式会社 (144)
【Fターム(参考)】
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