複合粉体の色の調整方法及び複合粉体の色の推定方法
【課題】 薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法及び薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に推定することが可能な複合粉体の色の推定方法を提供する。
【解決手段】 薄膜片20の表面に複数の粒子30が付着した複合粉体10の色を調整する複合粉体の色の調整方法は、薄膜片20の表面における複数の粒子30の間隔を調整することで、複合粉体10の色を調整する。薄膜片20の表面に複数の粒子30が付着した複合粉体10の色を推定する複合粉体の色の推定方法は、薄膜片20の表面における複数の粒子30の間隔に対して算出される複合粉体10の反射又は透過スペクトルから複合粉体10の色を推定する。
【解決手段】 薄膜片20の表面に複数の粒子30が付着した複合粉体10の色を調整する複合粉体の色の調整方法は、薄膜片20の表面における複数の粒子30の間隔を調整することで、複合粉体10の色を調整する。薄膜片20の表面に複数の粒子30が付着した複合粉体10の色を推定する複合粉体の色の推定方法は、薄膜片20の表面における複数の粒子30の間隔に対して算出される複合粉体10の反射又は透過スペクトルから複合粉体10の色を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粉体の色の調整方法及び複合粉体の色の推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜片のみで構成される基礎化粧品の顔料が用いられてきた。このような薄膜片のみで構成される顔料を含む化粧料を肌に塗布すると、顔料の薄膜片による光の正反射によって、肌がぎらついて見えることがあった。そこで、顔料の薄膜片によって正反射した光を拡散させるために、顔料も薄膜片の表面に微細な粒子を設けた複合粉体の顔料が開発されてきた。このような複合粉体の顔料を化粧料に用いることによって、自然な仕上がり及び透明感のある肌を演出することが可能となった。
【0003】
例えば、特許文献1は、タルク、雲母、カオリン、セリサイトからなる群より選択される薄板状体質顔料の表面をアクリル樹脂の1種又は2種以上からなる平均粒径が1μm〜50μm程度の微細粒子により被覆した被覆顔料であって、体質顔料とアクリル樹脂との重量比が、95:5〜60:40である被覆顔料を少なくとも1種以上配合することを特徴とする過度の光沢が抑制された化粧料を開示している。
【0004】
しかしながら、このような薄膜片と微細粒子からなる複合粉体の顔料を製造すると、顔料のわずかな製造条件によって、複合粉体の顔料の色彩が異なるという問題があった。このように複合粉体の顔料の色彩が、その製造条件によって異なる原因は、これまで不明であり、従って、適切な色彩を有する複合粉体の顔料を製造するためには、複合粉体の製造に関して多数回の試作が要求される。このため、現状では、適切な色彩を有する複合粉体の顔料の製造に関する時間及びコストを要する。
【特許文献1】特公平5−76444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に推定することが可能な複合粉体の色の推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を調整する複合粉体の色の調整方法であって、前記薄膜片の表面における前記複数の粒子の間隔を調整することで、前記複合粉体の色を調整することを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、前記薄膜片の表面における前記複数の粒子の間隔を調整することで、前記複合粉体の色を調整するので、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法を提供することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の複合粉体の色の調整方法において、前記薄膜片の材料は、雲母であり、前記粒子の材料は、ポリメタクリル酸メチル及び硫酸バリウムからなる群より選択される。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、前記薄膜片の材料は、雲母であり、前記粒子の材料は、ポリメタクリル酸メチル及び硫酸バリウムからなる群より選択されるので、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易にかつより確実に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法を提供することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の複合粉体の色の調整方法において、前記薄膜片の材料は、前記複数の粒子の材料と同一であることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、前記薄膜片の材料は、前記複数の粒子の材料と同一であるので、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色をより安定して容易に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法を提供することができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3いずれか1項記載の複合粉体の色の調整方法において、前記複数の粒子の直径は、700nm以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、前記複数の粒子の直径は、700nm以下であるので、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易にかつより広範囲に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法を提供することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4いずれか1項記載の複合粉体の色の調整方法において、前記複合粉体は、化粧料粉末であることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、前記複合粉体は、化粧料粉末であるので、化粧料粉末である、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法を提供することができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を推定する複合粉体の色の推定方法であって、前記薄膜片の表面における前記複数の粒子の間隔に対して算出される前記複合粉体の反射又は透過スペクトルから前記複合粉体の色を推定することを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、前記薄膜片の表面における前記複数の粒子の間隔に対して算出される前記複合粉体の反射又は透過スペクトルから前記複合粉体の色を推定するので、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に推定することが可能な複合粉体の色の推定方法を提供することができる。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の複合粉体の色の推定方法において、前記複合粉体は、化粧料粉末であることを特徴とする。
【0020】
請求項7記載の発明によれば、前記複合粉体は、化粧料粉末であるので、化粧料粉末である、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に推定することが可能な複合粉体の色の推定方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法を提供することができる。
【0022】
また、本発明によれば、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に推定することが可能な複合粉体の色の推定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
【0024】
まず、本発明による複合粉体の色の調整方法を説明する。本発明による複合粉体の色の調整方法は、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を調整する方法であって、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を調整することで、複合粉体の色を調整する。
【0025】
本発明による複合粉体の色を調整する方法に用いられる複合粉体は、薄膜片及び複数の粒子の両方を有し、複合粉体において複数の粒子は、薄膜片の表面に付着しいている。複合粉体に含まれる薄膜片は、薄膜片による吸収を無視することができる程度に無色透明な材料で形成される。また、薄膜片は、薄膜片による吸収を無視することができる程度に薄い厚さを有する。複合粉体に含まれる複数の粒子は、粒子による吸収を無視することができる程度に無色透明な同一又は類似の(実質的に同一の)屈折率を有する材料で形成される。複数の粒子の形状は、球状であってもよいし、(例えば、楕円粒子のような)球状でなくてもよい。ただし、複数の粒子は、同一又は類似の(実質的に同一の)形状を有する。また、複数の粒子の大きさは、可視光の波長程度の大きさ、すなわち、300nm以上800nm以下である。複合粉体において、薄膜片の表面に複数の粒子が付着する方法は、特に限定されず、薄膜片の表面における微小面積で接着していてもよく、薄膜片と複数の粒子とが一体化していてもよい。薄膜片の表面に複数の粒子が一体に設けられる場合には、薄膜片の表面に設けられた複数の粒子の間隔を調整することで、複合粉体の色を調整することができる。さらに、複合粉体において複数の粒子は、薄膜片の片面のみに付着していてもよく、薄膜片の両面に付着していてもよい。薄膜片の表面における複数の粒子の分布は、均一な分布(等間隔)であってもよく、実質的に均一(等間隔)とみなせるような分布であってもよい。また、薄膜片の表面に付着する粒子の数は、複数であり、複数の粒子が互いに接触するような最密充填となる数までである。
【0026】
図1は、複合粉体の一例を説明する模式図であり、(a)は、複合粉体の一例の模式的な平面図であり、(b)は、複合粉体の一例の模式的な側面図である。図1に示すように、本発明による複合粉体の色を調整する方法に用いられる複合粉体10は、薄膜片20及び複数の粒子30を有する。複合粉体10においては、薄膜片20の両面に複数の粒子30が付着している。複数の粒子30は、実質的に球形の粒子である。また、薄膜片20の材料は、実質的に吸収を無視することができる透明な無色材料であり、複数の粒子30の材料もまた、実質的に吸収を無視することができる透明な無色透明な材料である。
【0027】
本発明者は、上記のような薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体に関して、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を調整することで複合粉体の色を調整することが可能であることを見出した。また、上記のような複合粉体の色は、薄膜片のみの色、及び複数の粒子のみの色とは異なり、複合粉体に特有の色を示すことも見出すことができた。特に、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体において、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を広げると、複合粉体に光を入射させる側から見た場合には、複合粉体の色は、より青色を示し、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を狭めると、より赤色を示すことを発見した。また、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体において、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を広げると、複合粉体に光を入射させる側と反対側から見た場合には、複合粉体の色は、より黄色を示し、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を狭めると、より緑色を示すことを発見した。
【0028】
本発明者は、複合粉体における薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を調整することで複合粉体の色を調整することができることを以下のような計算により確認した。図1に示すような複合粉体のモデルにおいて、薄膜片20の厚さは、400nmであり、薄膜片20の材料は、屈折率1.56の無色透明な材料である雲母とした。また、複数の粒子30は、全て同一の直径を有する球形であり、複数の粒子の直径は、可視光の波長と同程度の大きさである350nmであるとした。複数の粒子30の材料は、屈折率1.49の無色透明な材料であるPMMA(ポリメタクリル酸メチル)又は屈折率1.64の無色透明な材料である硫酸バリウムとした。なお、薄膜片20の両面に複数の粒子30は付着しており、複数の粒子30の分布は、薄膜片20の表面において均一であるとした。
【0029】
このような複合粉体モデルに関して、薄膜片の表面に垂直な方向から、複数の粒子の直径350nmより大きい波長である波長400nmから800nmまでの白色光を入射させた場合についての計算を行った。より具体的には、波長400nmから800nmまでの特定の波長λの光を複合粉体に入射させる。そして、波長λの可視光を複合粉体の薄膜片に入射させたときに、複合粉体の界面、すなわち、空気と粒子の界面、空気と薄膜片の界面、及び粒子と薄膜片の界面(粒子と薄膜片との接点)における光の入射、反射、及び透過を考えた。薄膜片及び複数の粒子は無色透明な材料であるため、薄膜片及び粒子における光の吸収は、無いものとした。より詳しくは、光の進行方向に沿った複合粉体の界面に入射する入射光i、界面よって反射される反射光r、及び界面を透過する透過光tについてマックスウェルの方程式の解を求めた。なお、複合粉体に含まれる薄膜片及び複数の粒子は、いずれも電気的に中性な誘電体であるため、複合粉体においては、電荷及び電流は、存在しないとした。
【0030】
上記の複合粉体のモデルに適用したマックスウェルの方程式は、
▽×E=−μ∂H/∂t
▽×H=ε∂E/∂t
▽・E=0
▽・H=0
であり、ここで、E=Ei+Er+Et及びH=Hi+Hr+Htであり、Ei及びHi、Er及びHr、並びにEt及びHtは、それぞれ、界面に入射する光の電場ベクトル及び磁場ベクトル、界面で反射される光の電場ベクトル及び磁場ベクトル、並びに界面を透過する光の電場ベクトル及び磁場ベクトルであり、tは、時間を表し、ε及びμは、それぞれ、マクスウェル方程式を適用する空気、粒子、又は薄膜片の誘電率及び透磁率である。
【0031】
上記のマックスウェルの方程式は、実際には、微分演算を差分演算として近似計算する公知のFTDT(時間領域差分)法及び適当な境界条件を用いて、計算機において行った。計算機によって得られたEi及びHi、Er及びHr並びにEt及びHtから、それぞれ、入射光、反射光、及び透過光のポインティングベクトルSi=Ei×Hi、Sr=Er×Hr、及びSt=Et×Htの薄膜片に対して垂直な成分を計算した。複合粉体の色を薄膜片に対して垂直な方向から観察することを考慮して、複合粉体の薄膜片に垂直に入射する入射光に対する、複合粉体の薄膜片に垂直な方向に沿った反射光及び透過光の反射率及び透過率を算出した。すなわち、上記のポインティングベクトルSi、Sr、及びStの複合粉体における薄膜片に平行な面にわたって面積分し、さらに時間平均したポインティングベクトルSi(垂直,平均)、Sr(垂直,平均)、及びSt(垂直,平均)を算出し、反射率=|Sr(垂直,平均)|/|Si(垂直,平均)|及び透過率=|St(垂直,平均)|/|Si(垂直,平均)|を算出した。なお、||は、ポインティングベクトルのノルムを表す。
【0032】
ここで、複合粉体における複数の粒子の間隔及び入射光の波長λを変化させて、波長λに対する複合粉体の反射率及び透過率を算出した。なお、複合粉体に入射する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の関係を、それぞれ、複合粉体の反射スペクトル及び複合粉体の透過スペクトルと呼ぶことにする。複合粉体における複数の粒子の間隔については、簡便のため、複合粉体における複数の粒子の間隔に対応する値として、複合粉体に含まれる薄膜片の面積に対して粒子の直径を規格化した被覆率を用いた。すなわち、被覆率は、薄膜片の表面を粒子の数で分割した領域の面積に対する粒子の薄膜片への射影の面積の比である。図2は、図1に示す複合粉体における被覆率の計算方法を説明する図である。図2に示すように、図1に示す複合粉体は、正方形の形状を有する薄膜片に複数の粒子が付着しているため、薄膜片の表面を粒子の数で分割した領域の形状は、一辺の長さがaである正方形である。また、粒子は、球形であるため、粒子の薄膜片への射影は、半径rの円形になる。よって、図1に示す複合粉体の被覆率は、一辺aの正方形の面積に対する半径rの円形の面積の比であり、πr2/a2で計算される。複合粉体において、薄膜片の表面に複数の粒子が互いに接触して付着する最密充填の状態における被覆率、すなわち被覆率の最大値は、π/4となる。図3は、複数の粒子が薄膜片の表面で最密充填の状態にある複合粉体の被覆率を説明する図である。図3に示すように、最密充填の状態においては、半径rを有する粒子の周囲における正方形の領域の一辺aは、2rであるため、最密充填における被覆率は、πr2/(2r)2=π/4≒78.5%となる。なお、図1に示す複合粉体における複数の粒子の間隔は、図2に示すように、正方形の対辺の間隔から円形の直径を差し引いた値に等しく、a−2rと表される。
【0033】
図4〜図7は、マイカの薄膜片の表面にPMMAの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率(反射スペクトル及び透過スペクトル)の計算結果を示す図である。図4、5、6及び7は、それぞれ、マイカの薄膜片に対するPMMAの粒子の被覆率が、34.9%、50.2%、62.1%、及び最密充填の78.5%である。図4〜図7において、横軸は、400nmから800nmまでの入射光の波長(nm)を表し、縦軸は、複合粉体の反射率(%)又は透過率(%)を表す。また、複合粉体の透過率(%)を点線で表し、複合粉体の反射率(%)を実線で表している。なお、図4〜図7に示す複合粉体の反射率及び透過率の計算結果には、10〜20%程度の計算誤差が含まれている。図4〜図7に示すマイカの薄膜片の表面にPMMAの複数の粒子が付着した複合粉体に関して、複合粉体の被覆率(%)に対する複合粉体の反射率が最大となる及び透過率が最小となる入射光の波長(ピーク波長)(nm)を表1に示す。
【0034】
【表1】
表1より、複合粉体の被覆率が増加するほど、すなわち、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔が小さくなるほど、反射率が最大となる及び透過率が最小となる入射光の波長は、長波長側から短波長側へシフトする傾向がある。このことは、複合粉体に白色光を照射したとき、複合粉体の被覆率が増加するほど、すなわち、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔が小さくなるほど、より短波長側の光の反射率が最大となり、より短波長側の光の透過率が最小となることを意味する。言い換えれば、複合粉体の被覆率を増加させるほど、すなわち、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を小さくするほど、複合粉体に光を入射させる側から見れば、より青色になり、複合粉体に光を入射させる側と反対側から見れば、より黄色になる。逆に、複合粉体の被覆率を減少させるほど、すなわち、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を大きくするほど、複合粉体に光を入射させる側から見れば、より赤色になり、複合粉体に光を入射させる側と反対側から見れば、より緑色になる。
【0035】
図8〜図11は、マイカの薄膜片の表面に硫酸バリウムの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率(反射スペクトル及び透過スペクトル)の計算結果を示す図である。図8、9、10及び11は、それぞれ、マイカの薄膜片に対する硫酸バリウムの粒子の被覆率が、34.9%、50.2%、62.1%、及び最密充填の78.5%である。図8〜図11において、横軸は、400nmから800nmまでの入射光の波長(nm)を表し、縦軸は、複合粉体の反射率(%)又は透過率(%)を表す。また、複合粉体の透過率(%)を点線で表し、複合粉体の反射率(%)を実線で表している。なお、図8〜図11に示す複合粉体の反射率及び透過率の計算結果には、10〜20%程度の計算誤差が含まれている。図8〜図11に示すマイカの薄膜片の表面に硫酸バリウムの複数の粒子が付着した複合粉体に関して、複合粉体の被覆率(%)に対する複合粉体の反射率が最大となる及び透過率が最小となる入射光の波長(ピーク波長)(nm)を表2に示す。
【0036】
【表2】
表2より、複合粉体の被覆率が増加するほど、すなわち、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔が小さくなるほど、反射率が最大となる及び透過率が最小となる入射光の波長は、長波長側から短波長側へシフトする傾向がある。このことは、複合粉体に白色光を照射したとき、複合粉体の被覆率が増加するほど、すなわち、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔が小さくなるほど、より短波長側の光の反射率が最大となり、より短波長側の光の透過率が最小となることを意味する。言い換えれば、複合粉体の被覆率を増加させるほど、すなわち、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を小さくするほど、複合粉体に光を入射させる側から見れば、より青色になり、複合粉体に光を入射させる側と反対側から見れば、より黄色になる。逆に、複合粉体の被覆率を減少させるほど、すなわち、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を大きくするほど、複合粉体に光を入射させる側から見れば、より赤色になり、複合粉体に光を入射させる側と反対側から見れば、より緑色になる。
【0037】
以上のように、雲母の薄膜片にPMMAの複数の粒子を付着させた複合粉体であっても、雲母の薄膜片に硫酸バリウムの複数の粒子を付着させた複合粉体であっても、複合粉体の被覆率と複合粉体の反射率及び透過率の関係は、同様である。このことより、複合粉体に含まれる薄膜片及び複数の粒子の材料は、特に限定されず、同じであっても異なっていてもよい。しかしながら、本発明による複合粉体の色の調整方法において、薄膜片の材料は、複数の粒子の材料と同一であることが好ましい。薄膜片の材料及び複数の粒子の材料を同一にすることにより、薄膜片と複数の粒子との間における付着の強度を高めることができる。このため、複合粉体を製造することがより容易になる。また、薄膜片の材料及び複数の粒子の材料が同一である場合には、粒子が薄膜片から剥がれにくい。よって、複合粉体を安定して製造することができる。よって、複合粉体の色もまたより容易に安定して調整することができる。
【0038】
本発明による複合粉体の色の調整方法によれば、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を調整することで、容易に調整することができる。なお、上述したように、本発明による複合粉体の色の調整方法において、薄膜片の材料を雲母とし、複数の粒子の材料をポリメタクリル酸メチル及び硫酸バリウムからなる群より選択することによって、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色をより確実に調整することができる。
【0039】
本発明による複合粉体の色の調整方法において、複数の粒子の直径は、好ましくは、700nm以下である。複数の粒子の直径を700nm以下とすることにより、薄膜片の表面の面積が一定であっても、複数の粒子が小さいため、複数の粒子の間隔を調整する範囲が比較的大きい。よって、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色をより広範囲に調整することができる。
【0040】
本発明による複合粉体の色の調整方法において、複合粉体は、化粧料粉末であってもよい。複合粉体が、化粧料粉末である場合には、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体である化粧料粉末の色を容易に調整することができる。
【0041】
次に、本発明による複合粉体の色の推定方法を説明する。
【0042】
本発明による複合粉体の色の推定方法は、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を推定する複合粉体の色の推定方法であって、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔に対して算出される複合粉体の反射又は透過スペクトルから複合粉体の色を推定する。本発明による複合粉体の色の推定方法に用いられる複合粉体も、本発明による複合粉体の色の推定方法で用いられる上述の複合粉体と同様である。薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体について、本発明による複合粉体の色の推定方法を適用しようとする複合粉体の薄膜片の表面に付着した複数の粒子の間隔を決定し、複合粉体の色の調整方法で説明したような、その決定した複数の粒子の間隔を有する複合粉体について、複合粉体に入射する光の波長に対する複合粉体の反射率又は透過率の関係(反射スペクトル又は透過スペクトル)を算出する。得られた複合粉体の反射スペクトル又は透過スペクトルから、予め決定した複数の粒子の間隔を有する複合粉体の色を推定することができる。このように、本発明による複合粉体の色の推定方法によれば、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に推定することができる。
【0043】
特に、予め決定した複数の粒子の間隔を有する複合粉体について算出した反射スペクトル又は透過スペクトルから、複合粉体の反射率が最大となる光の波長、又は透過率が最小となる光の波長(ピーク波長)を求めて、予め決定した複数の粒子の間隔を有する複合粉体の反射スペクトル又は透過スペクトルのピーク波長から、その複合粉体の色を概ね推定することができる。複合粉体の反射スペクトル又は透過スペクトルのピーク波長から複合粉体の色を推定することは、より容易であるため、複合粉体の概略の色を推定するためには、都合がよい。
【0044】
なお、本発明による複合粉体の色の推定方法に従って、複合粉体の薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を変動させて複合粉体の反射スペクトル又は透過スペクトルを算出して、それぞれの複合粉体の色を推定することにより、所望の色の複合粉体に要求される複合粉体の表面に付着する複数の粒子の間隔を推定することもできる。この場合にも、複合粉体の色を推定する際に、複合粉体の反射スペクトル又は透過スペクトルのピーク波長を用いて、複合粉体の概略の色を推定すれば、複合粉体の表面に付着する複数の粒子の概略の間隔をより容易に推定することができる。
【0045】
本発明による複合粉体の色の推定方法において、複合粉体は、化粧料粉末であってもよい。複合粉体が、化粧料粉末である場合には、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体である化粧料粉末の色を容易に推定することができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明してきたが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、これら本発明の実施の形態を、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、変更又は変形することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法に適用することができる
また、本発明は、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に推定することが可能な複合粉体の色の推定方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】複合粉体の一例を説明する模式図であり、(a)は、複合粉体の一例の模式的な平面図であり、(b)は、複合粉体の一例の模式的な側面図である。
【図2】図1に示す複合粉体における被覆率の計算方法を説明する図である。
【図3】複数の粒子が薄膜片の表面で最密充填の状態にある複合粉体の被覆率を説明する図である。
【図4】マイカの薄膜片の表面にPMMAの複数の粒子が付着した複合粉体に関する波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の計算結果を示す図(マイカの薄膜片に対するPMMAの粒子の被覆率=34.9%)である。
【図5】マイカの薄膜片の表面にPMMAの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の計算結果を示す図(マイカの薄膜片に対するPMMAの粒子の被覆率=50.2%)である。
【図6】マイカの薄膜片の表面にPMMAの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の計算結果を示す図(マイカの薄膜片に対するPMMAの粒子の被覆率=62.1%)である。
【図7】マイカの薄膜片の表面にPMMAの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の計算結果を示す図(マイカの薄膜片に対するPMMAの粒子の被覆率=最密充填=78.5%)である。
【図8】マイカの薄膜片の表面に硫酸バリウムの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の計算結果を示す図(マイカの薄膜片に対する硫酸バリウムの粒子の被覆率=34.9%)である。
【図9】マイカの薄膜片の表面に硫酸バリウムの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の計算結果を示す図(マイカの薄膜片に対する硫酸バリウムの粒子の被覆率=50.2%)である。
【図10】マイカの薄膜片の表面に硫酸バリウムの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の計算結果を示す図(マイカの薄膜片に対する硫酸バリウムの粒子の被覆率=62.1%)である。
【図11】マイカの薄膜片の表面に硫酸バリウムの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の計算結果を示す図(マイカの薄膜片に対する硫酸バリウムの粒子の被覆率=最密充填=78.5%)である。
【符号の説明】
【0049】
10 複合粉体
20 薄膜片
30 粒子
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合粉体の色の調整方法及び複合粉体の色の推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜片のみで構成される基礎化粧品の顔料が用いられてきた。このような薄膜片のみで構成される顔料を含む化粧料を肌に塗布すると、顔料の薄膜片による光の正反射によって、肌がぎらついて見えることがあった。そこで、顔料の薄膜片によって正反射した光を拡散させるために、顔料も薄膜片の表面に微細な粒子を設けた複合粉体の顔料が開発されてきた。このような複合粉体の顔料を化粧料に用いることによって、自然な仕上がり及び透明感のある肌を演出することが可能となった。
【0003】
例えば、特許文献1は、タルク、雲母、カオリン、セリサイトからなる群より選択される薄板状体質顔料の表面をアクリル樹脂の1種又は2種以上からなる平均粒径が1μm〜50μm程度の微細粒子により被覆した被覆顔料であって、体質顔料とアクリル樹脂との重量比が、95:5〜60:40である被覆顔料を少なくとも1種以上配合することを特徴とする過度の光沢が抑制された化粧料を開示している。
【0004】
しかしながら、このような薄膜片と微細粒子からなる複合粉体の顔料を製造すると、顔料のわずかな製造条件によって、複合粉体の顔料の色彩が異なるという問題があった。このように複合粉体の顔料の色彩が、その製造条件によって異なる原因は、これまで不明であり、従って、適切な色彩を有する複合粉体の顔料を製造するためには、複合粉体の製造に関して多数回の試作が要求される。このため、現状では、適切な色彩を有する複合粉体の顔料の製造に関する時間及びコストを要する。
【特許文献1】特公平5−76444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に推定することが可能な複合粉体の色の推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を調整する複合粉体の色の調整方法であって、前記薄膜片の表面における前記複数の粒子の間隔を調整することで、前記複合粉体の色を調整することを特徴とする。
【0008】
請求項1記載の発明によれば、前記薄膜片の表面における前記複数の粒子の間隔を調整することで、前記複合粉体の色を調整するので、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法を提供することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の複合粉体の色の調整方法において、前記薄膜片の材料は、雲母であり、前記粒子の材料は、ポリメタクリル酸メチル及び硫酸バリウムからなる群より選択される。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、前記薄膜片の材料は、雲母であり、前記粒子の材料は、ポリメタクリル酸メチル及び硫酸バリウムからなる群より選択されるので、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易にかつより確実に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法を提供することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の複合粉体の色の調整方法において、前記薄膜片の材料は、前記複数の粒子の材料と同一であることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、前記薄膜片の材料は、前記複数の粒子の材料と同一であるので、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色をより安定して容易に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法を提供することができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3いずれか1項記載の複合粉体の色の調整方法において、前記複数の粒子の直径は、700nm以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、前記複数の粒子の直径は、700nm以下であるので、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易にかつより広範囲に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法を提供することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4いずれか1項記載の複合粉体の色の調整方法において、前記複合粉体は、化粧料粉末であることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、前記複合粉体は、化粧料粉末であるので、化粧料粉末である、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法を提供することができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を推定する複合粉体の色の推定方法であって、前記薄膜片の表面における前記複数の粒子の間隔に対して算出される前記複合粉体の反射又は透過スペクトルから前記複合粉体の色を推定することを特徴とする。
【0018】
請求項6記載の発明によれば、前記薄膜片の表面における前記複数の粒子の間隔に対して算出される前記複合粉体の反射又は透過スペクトルから前記複合粉体の色を推定するので、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に推定することが可能な複合粉体の色の推定方法を提供することができる。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の複合粉体の色の推定方法において、前記複合粉体は、化粧料粉末であることを特徴とする。
【0020】
請求項7記載の発明によれば、前記複合粉体は、化粧料粉末であるので、化粧料粉末である、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に推定することが可能な複合粉体の色の推定方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法を提供することができる。
【0022】
また、本発明によれば、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に推定することが可能な複合粉体の色の推定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
【0024】
まず、本発明による複合粉体の色の調整方法を説明する。本発明による複合粉体の色の調整方法は、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を調整する方法であって、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を調整することで、複合粉体の色を調整する。
【0025】
本発明による複合粉体の色を調整する方法に用いられる複合粉体は、薄膜片及び複数の粒子の両方を有し、複合粉体において複数の粒子は、薄膜片の表面に付着しいている。複合粉体に含まれる薄膜片は、薄膜片による吸収を無視することができる程度に無色透明な材料で形成される。また、薄膜片は、薄膜片による吸収を無視することができる程度に薄い厚さを有する。複合粉体に含まれる複数の粒子は、粒子による吸収を無視することができる程度に無色透明な同一又は類似の(実質的に同一の)屈折率を有する材料で形成される。複数の粒子の形状は、球状であってもよいし、(例えば、楕円粒子のような)球状でなくてもよい。ただし、複数の粒子は、同一又は類似の(実質的に同一の)形状を有する。また、複数の粒子の大きさは、可視光の波長程度の大きさ、すなわち、300nm以上800nm以下である。複合粉体において、薄膜片の表面に複数の粒子が付着する方法は、特に限定されず、薄膜片の表面における微小面積で接着していてもよく、薄膜片と複数の粒子とが一体化していてもよい。薄膜片の表面に複数の粒子が一体に設けられる場合には、薄膜片の表面に設けられた複数の粒子の間隔を調整することで、複合粉体の色を調整することができる。さらに、複合粉体において複数の粒子は、薄膜片の片面のみに付着していてもよく、薄膜片の両面に付着していてもよい。薄膜片の表面における複数の粒子の分布は、均一な分布(等間隔)であってもよく、実質的に均一(等間隔)とみなせるような分布であってもよい。また、薄膜片の表面に付着する粒子の数は、複数であり、複数の粒子が互いに接触するような最密充填となる数までである。
【0026】
図1は、複合粉体の一例を説明する模式図であり、(a)は、複合粉体の一例の模式的な平面図であり、(b)は、複合粉体の一例の模式的な側面図である。図1に示すように、本発明による複合粉体の色を調整する方法に用いられる複合粉体10は、薄膜片20及び複数の粒子30を有する。複合粉体10においては、薄膜片20の両面に複数の粒子30が付着している。複数の粒子30は、実質的に球形の粒子である。また、薄膜片20の材料は、実質的に吸収を無視することができる透明な無色材料であり、複数の粒子30の材料もまた、実質的に吸収を無視することができる透明な無色透明な材料である。
【0027】
本発明者は、上記のような薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体に関して、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を調整することで複合粉体の色を調整することが可能であることを見出した。また、上記のような複合粉体の色は、薄膜片のみの色、及び複数の粒子のみの色とは異なり、複合粉体に特有の色を示すことも見出すことができた。特に、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体において、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を広げると、複合粉体に光を入射させる側から見た場合には、複合粉体の色は、より青色を示し、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を狭めると、より赤色を示すことを発見した。また、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体において、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を広げると、複合粉体に光を入射させる側と反対側から見た場合には、複合粉体の色は、より黄色を示し、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を狭めると、より緑色を示すことを発見した。
【0028】
本発明者は、複合粉体における薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を調整することで複合粉体の色を調整することができることを以下のような計算により確認した。図1に示すような複合粉体のモデルにおいて、薄膜片20の厚さは、400nmであり、薄膜片20の材料は、屈折率1.56の無色透明な材料である雲母とした。また、複数の粒子30は、全て同一の直径を有する球形であり、複数の粒子の直径は、可視光の波長と同程度の大きさである350nmであるとした。複数の粒子30の材料は、屈折率1.49の無色透明な材料であるPMMA(ポリメタクリル酸メチル)又は屈折率1.64の無色透明な材料である硫酸バリウムとした。なお、薄膜片20の両面に複数の粒子30は付着しており、複数の粒子30の分布は、薄膜片20の表面において均一であるとした。
【0029】
このような複合粉体モデルに関して、薄膜片の表面に垂直な方向から、複数の粒子の直径350nmより大きい波長である波長400nmから800nmまでの白色光を入射させた場合についての計算を行った。より具体的には、波長400nmから800nmまでの特定の波長λの光を複合粉体に入射させる。そして、波長λの可視光を複合粉体の薄膜片に入射させたときに、複合粉体の界面、すなわち、空気と粒子の界面、空気と薄膜片の界面、及び粒子と薄膜片の界面(粒子と薄膜片との接点)における光の入射、反射、及び透過を考えた。薄膜片及び複数の粒子は無色透明な材料であるため、薄膜片及び粒子における光の吸収は、無いものとした。より詳しくは、光の進行方向に沿った複合粉体の界面に入射する入射光i、界面よって反射される反射光r、及び界面を透過する透過光tについてマックスウェルの方程式の解を求めた。なお、複合粉体に含まれる薄膜片及び複数の粒子は、いずれも電気的に中性な誘電体であるため、複合粉体においては、電荷及び電流は、存在しないとした。
【0030】
上記の複合粉体のモデルに適用したマックスウェルの方程式は、
▽×E=−μ∂H/∂t
▽×H=ε∂E/∂t
▽・E=0
▽・H=0
であり、ここで、E=Ei+Er+Et及びH=Hi+Hr+Htであり、Ei及びHi、Er及びHr、並びにEt及びHtは、それぞれ、界面に入射する光の電場ベクトル及び磁場ベクトル、界面で反射される光の電場ベクトル及び磁場ベクトル、並びに界面を透過する光の電場ベクトル及び磁場ベクトルであり、tは、時間を表し、ε及びμは、それぞれ、マクスウェル方程式を適用する空気、粒子、又は薄膜片の誘電率及び透磁率である。
【0031】
上記のマックスウェルの方程式は、実際には、微分演算を差分演算として近似計算する公知のFTDT(時間領域差分)法及び適当な境界条件を用いて、計算機において行った。計算機によって得られたEi及びHi、Er及びHr並びにEt及びHtから、それぞれ、入射光、反射光、及び透過光のポインティングベクトルSi=Ei×Hi、Sr=Er×Hr、及びSt=Et×Htの薄膜片に対して垂直な成分を計算した。複合粉体の色を薄膜片に対して垂直な方向から観察することを考慮して、複合粉体の薄膜片に垂直に入射する入射光に対する、複合粉体の薄膜片に垂直な方向に沿った反射光及び透過光の反射率及び透過率を算出した。すなわち、上記のポインティングベクトルSi、Sr、及びStの複合粉体における薄膜片に平行な面にわたって面積分し、さらに時間平均したポインティングベクトルSi(垂直,平均)、Sr(垂直,平均)、及びSt(垂直,平均)を算出し、反射率=|Sr(垂直,平均)|/|Si(垂直,平均)|及び透過率=|St(垂直,平均)|/|Si(垂直,平均)|を算出した。なお、||は、ポインティングベクトルのノルムを表す。
【0032】
ここで、複合粉体における複数の粒子の間隔及び入射光の波長λを変化させて、波長λに対する複合粉体の反射率及び透過率を算出した。なお、複合粉体に入射する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の関係を、それぞれ、複合粉体の反射スペクトル及び複合粉体の透過スペクトルと呼ぶことにする。複合粉体における複数の粒子の間隔については、簡便のため、複合粉体における複数の粒子の間隔に対応する値として、複合粉体に含まれる薄膜片の面積に対して粒子の直径を規格化した被覆率を用いた。すなわち、被覆率は、薄膜片の表面を粒子の数で分割した領域の面積に対する粒子の薄膜片への射影の面積の比である。図2は、図1に示す複合粉体における被覆率の計算方法を説明する図である。図2に示すように、図1に示す複合粉体は、正方形の形状を有する薄膜片に複数の粒子が付着しているため、薄膜片の表面を粒子の数で分割した領域の形状は、一辺の長さがaである正方形である。また、粒子は、球形であるため、粒子の薄膜片への射影は、半径rの円形になる。よって、図1に示す複合粉体の被覆率は、一辺aの正方形の面積に対する半径rの円形の面積の比であり、πr2/a2で計算される。複合粉体において、薄膜片の表面に複数の粒子が互いに接触して付着する最密充填の状態における被覆率、すなわち被覆率の最大値は、π/4となる。図3は、複数の粒子が薄膜片の表面で最密充填の状態にある複合粉体の被覆率を説明する図である。図3に示すように、最密充填の状態においては、半径rを有する粒子の周囲における正方形の領域の一辺aは、2rであるため、最密充填における被覆率は、πr2/(2r)2=π/4≒78.5%となる。なお、図1に示す複合粉体における複数の粒子の間隔は、図2に示すように、正方形の対辺の間隔から円形の直径を差し引いた値に等しく、a−2rと表される。
【0033】
図4〜図7は、マイカの薄膜片の表面にPMMAの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率(反射スペクトル及び透過スペクトル)の計算結果を示す図である。図4、5、6及び7は、それぞれ、マイカの薄膜片に対するPMMAの粒子の被覆率が、34.9%、50.2%、62.1%、及び最密充填の78.5%である。図4〜図7において、横軸は、400nmから800nmまでの入射光の波長(nm)を表し、縦軸は、複合粉体の反射率(%)又は透過率(%)を表す。また、複合粉体の透過率(%)を点線で表し、複合粉体の反射率(%)を実線で表している。なお、図4〜図7に示す複合粉体の反射率及び透過率の計算結果には、10〜20%程度の計算誤差が含まれている。図4〜図7に示すマイカの薄膜片の表面にPMMAの複数の粒子が付着した複合粉体に関して、複合粉体の被覆率(%)に対する複合粉体の反射率が最大となる及び透過率が最小となる入射光の波長(ピーク波長)(nm)を表1に示す。
【0034】
【表1】
表1より、複合粉体の被覆率が増加するほど、すなわち、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔が小さくなるほど、反射率が最大となる及び透過率が最小となる入射光の波長は、長波長側から短波長側へシフトする傾向がある。このことは、複合粉体に白色光を照射したとき、複合粉体の被覆率が増加するほど、すなわち、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔が小さくなるほど、より短波長側の光の反射率が最大となり、より短波長側の光の透過率が最小となることを意味する。言い換えれば、複合粉体の被覆率を増加させるほど、すなわち、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を小さくするほど、複合粉体に光を入射させる側から見れば、より青色になり、複合粉体に光を入射させる側と反対側から見れば、より黄色になる。逆に、複合粉体の被覆率を減少させるほど、すなわち、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を大きくするほど、複合粉体に光を入射させる側から見れば、より赤色になり、複合粉体に光を入射させる側と反対側から見れば、より緑色になる。
【0035】
図8〜図11は、マイカの薄膜片の表面に硫酸バリウムの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率(反射スペクトル及び透過スペクトル)の計算結果を示す図である。図8、9、10及び11は、それぞれ、マイカの薄膜片に対する硫酸バリウムの粒子の被覆率が、34.9%、50.2%、62.1%、及び最密充填の78.5%である。図8〜図11において、横軸は、400nmから800nmまでの入射光の波長(nm)を表し、縦軸は、複合粉体の反射率(%)又は透過率(%)を表す。また、複合粉体の透過率(%)を点線で表し、複合粉体の反射率(%)を実線で表している。なお、図8〜図11に示す複合粉体の反射率及び透過率の計算結果には、10〜20%程度の計算誤差が含まれている。図8〜図11に示すマイカの薄膜片の表面に硫酸バリウムの複数の粒子が付着した複合粉体に関して、複合粉体の被覆率(%)に対する複合粉体の反射率が最大となる及び透過率が最小となる入射光の波長(ピーク波長)(nm)を表2に示す。
【0036】
【表2】
表2より、複合粉体の被覆率が増加するほど、すなわち、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔が小さくなるほど、反射率が最大となる及び透過率が最小となる入射光の波長は、長波長側から短波長側へシフトする傾向がある。このことは、複合粉体に白色光を照射したとき、複合粉体の被覆率が増加するほど、すなわち、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔が小さくなるほど、より短波長側の光の反射率が最大となり、より短波長側の光の透過率が最小となることを意味する。言い換えれば、複合粉体の被覆率を増加させるほど、すなわち、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を小さくするほど、複合粉体に光を入射させる側から見れば、より青色になり、複合粉体に光を入射させる側と反対側から見れば、より黄色になる。逆に、複合粉体の被覆率を減少させるほど、すなわち、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を大きくするほど、複合粉体に光を入射させる側から見れば、より赤色になり、複合粉体に光を入射させる側と反対側から見れば、より緑色になる。
【0037】
以上のように、雲母の薄膜片にPMMAの複数の粒子を付着させた複合粉体であっても、雲母の薄膜片に硫酸バリウムの複数の粒子を付着させた複合粉体であっても、複合粉体の被覆率と複合粉体の反射率及び透過率の関係は、同様である。このことより、複合粉体に含まれる薄膜片及び複数の粒子の材料は、特に限定されず、同じであっても異なっていてもよい。しかしながら、本発明による複合粉体の色の調整方法において、薄膜片の材料は、複数の粒子の材料と同一であることが好ましい。薄膜片の材料及び複数の粒子の材料を同一にすることにより、薄膜片と複数の粒子との間における付着の強度を高めることができる。このため、複合粉体を製造することがより容易になる。また、薄膜片の材料及び複数の粒子の材料が同一である場合には、粒子が薄膜片から剥がれにくい。よって、複合粉体を安定して製造することができる。よって、複合粉体の色もまたより容易に安定して調整することができる。
【0038】
本発明による複合粉体の色の調整方法によれば、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を調整することで、容易に調整することができる。なお、上述したように、本発明による複合粉体の色の調整方法において、薄膜片の材料を雲母とし、複数の粒子の材料をポリメタクリル酸メチル及び硫酸バリウムからなる群より選択することによって、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色をより確実に調整することができる。
【0039】
本発明による複合粉体の色の調整方法において、複数の粒子の直径は、好ましくは、700nm以下である。複数の粒子の直径を700nm以下とすることにより、薄膜片の表面の面積が一定であっても、複数の粒子が小さいため、複数の粒子の間隔を調整する範囲が比較的大きい。よって、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色をより広範囲に調整することができる。
【0040】
本発明による複合粉体の色の調整方法において、複合粉体は、化粧料粉末であってもよい。複合粉体が、化粧料粉末である場合には、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体である化粧料粉末の色を容易に調整することができる。
【0041】
次に、本発明による複合粉体の色の推定方法を説明する。
【0042】
本発明による複合粉体の色の推定方法は、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を推定する複合粉体の色の推定方法であって、薄膜片の表面における複数の粒子の間隔に対して算出される複合粉体の反射又は透過スペクトルから複合粉体の色を推定する。本発明による複合粉体の色の推定方法に用いられる複合粉体も、本発明による複合粉体の色の推定方法で用いられる上述の複合粉体と同様である。薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体について、本発明による複合粉体の色の推定方法を適用しようとする複合粉体の薄膜片の表面に付着した複数の粒子の間隔を決定し、複合粉体の色の調整方法で説明したような、その決定した複数の粒子の間隔を有する複合粉体について、複合粉体に入射する光の波長に対する複合粉体の反射率又は透過率の関係(反射スペクトル又は透過スペクトル)を算出する。得られた複合粉体の反射スペクトル又は透過スペクトルから、予め決定した複数の粒子の間隔を有する複合粉体の色を推定することができる。このように、本発明による複合粉体の色の推定方法によれば、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に推定することができる。
【0043】
特に、予め決定した複数の粒子の間隔を有する複合粉体について算出した反射スペクトル又は透過スペクトルから、複合粉体の反射率が最大となる光の波長、又は透過率が最小となる光の波長(ピーク波長)を求めて、予め決定した複数の粒子の間隔を有する複合粉体の反射スペクトル又は透過スペクトルのピーク波長から、その複合粉体の色を概ね推定することができる。複合粉体の反射スペクトル又は透過スペクトルのピーク波長から複合粉体の色を推定することは、より容易であるため、複合粉体の概略の色を推定するためには、都合がよい。
【0044】
なお、本発明による複合粉体の色の推定方法に従って、複合粉体の薄膜片の表面における複数の粒子の間隔を変動させて複合粉体の反射スペクトル又は透過スペクトルを算出して、それぞれの複合粉体の色を推定することにより、所望の色の複合粉体に要求される複合粉体の表面に付着する複数の粒子の間隔を推定することもできる。この場合にも、複合粉体の色を推定する際に、複合粉体の反射スペクトル又は透過スペクトルのピーク波長を用いて、複合粉体の概略の色を推定すれば、複合粉体の表面に付着する複数の粒子の概略の間隔をより容易に推定することができる。
【0045】
本発明による複合粉体の色の推定方法において、複合粉体は、化粧料粉末であってもよい。複合粉体が、化粧料粉末である場合には、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体である化粧料粉末の色を容易に推定することができる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明してきたが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、これら本発明の実施の形態を、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、変更又は変形することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に調整することが可能な複合粉体の色の調整方法に適用することができる
また、本発明は、薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を容易に推定することが可能な複合粉体の色の推定方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】複合粉体の一例を説明する模式図であり、(a)は、複合粉体の一例の模式的な平面図であり、(b)は、複合粉体の一例の模式的な側面図である。
【図2】図1に示す複合粉体における被覆率の計算方法を説明する図である。
【図3】複数の粒子が薄膜片の表面で最密充填の状態にある複合粉体の被覆率を説明する図である。
【図4】マイカの薄膜片の表面にPMMAの複数の粒子が付着した複合粉体に関する波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の計算結果を示す図(マイカの薄膜片に対するPMMAの粒子の被覆率=34.9%)である。
【図5】マイカの薄膜片の表面にPMMAの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の計算結果を示す図(マイカの薄膜片に対するPMMAの粒子の被覆率=50.2%)である。
【図6】マイカの薄膜片の表面にPMMAの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の計算結果を示す図(マイカの薄膜片に対するPMMAの粒子の被覆率=62.1%)である。
【図7】マイカの薄膜片の表面にPMMAの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の計算結果を示す図(マイカの薄膜片に対するPMMAの粒子の被覆率=最密充填=78.5%)である。
【図8】マイカの薄膜片の表面に硫酸バリウムの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の計算結果を示す図(マイカの薄膜片に対する硫酸バリウムの粒子の被覆率=34.9%)である。
【図9】マイカの薄膜片の表面に硫酸バリウムの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の計算結果を示す図(マイカの薄膜片に対する硫酸バリウムの粒子の被覆率=50.2%)である。
【図10】マイカの薄膜片の表面に硫酸バリウムの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の計算結果を示す図(マイカの薄膜片に対する硫酸バリウムの粒子の被覆率=62.1%)である。
【図11】マイカの薄膜片の表面に硫酸バリウムの複数の粒子が付着した複合粉体に関する光の波長に対する複合粉体の反射率及び透過率の計算結果を示す図(マイカの薄膜片に対する硫酸バリウムの粒子の被覆率=最密充填=78.5%)である。
【符号の説明】
【0049】
10 複合粉体
20 薄膜片
30 粒子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を調整する複合粉体の色の調整方法であって、
前記薄膜片の表面における前記複数の粒子の間隔を調整することで、前記複合粉体の色を調整することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記薄膜片の材料は、雲母であり、
前記粒子の材料は、ポリメタクリル酸メチル及び硫酸バリウムからなる群より選択される請求項1記載の複合粉体の色の調整方法。
【請求項3】
前記薄膜片の材料は、前記複数の粒子の材料と同一であることを特徴とする請求項1記載の複合粉体の色の調整方法。
【請求項4】
前記複数の粒子の直径は、700nm以下であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の複合粉体の色の調整方法。
【請求項5】
前記複合粉体は、化粧料粉末であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の複合粉体の色の調整方法。
【請求項6】
薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を推定する複合粉体の色の推定方法であって、
前記薄膜片の表面における前記複数の粒子の間隔に対して算出される前記複合粉体の反射又は透過スペクトルから前記複合粉体の色を推定することを特徴とする複合粉体の色の推定方法。
【請求項7】
前記複合粉体は、化粧料粉末であることを特徴とする請求項6記載の複合粉体の色の推定方法。
【請求項1】
薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を調整する複合粉体の色の調整方法であって、
前記薄膜片の表面における前記複数の粒子の間隔を調整することで、前記複合粉体の色を調整することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記薄膜片の材料は、雲母であり、
前記粒子の材料は、ポリメタクリル酸メチル及び硫酸バリウムからなる群より選択される請求項1記載の複合粉体の色の調整方法。
【請求項3】
前記薄膜片の材料は、前記複数の粒子の材料と同一であることを特徴とする請求項1記載の複合粉体の色の調整方法。
【請求項4】
前記複数の粒子の直径は、700nm以下であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の複合粉体の色の調整方法。
【請求項5】
前記複合粉体は、化粧料粉末であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の複合粉体の色の調整方法。
【請求項6】
薄膜片の表面に複数の粒子が付着した複合粉体の色を推定する複合粉体の色の推定方法であって、
前記薄膜片の表面における前記複数の粒子の間隔に対して算出される前記複合粉体の反射又は透過スペクトルから前記複合粉体の色を推定することを特徴とする複合粉体の色の推定方法。
【請求項7】
前記複合粉体は、化粧料粉末であることを特徴とする請求項6記載の複合粉体の色の推定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−16539(P2006−16539A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197062(P2004−197062)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】
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