説明

複数の試料容器、特にNMR試料管を用意するための試料枠

【課題】複数のリテーナを有する複数の試料容器、特に試料管の、キャップを有する試料容器の閉鎖を容易にする試料枠を提供する。
【解決手段】試料枠30;81は、試料容器41、42のそれぞれがその試料容器41、42の開口端部に冠着されるキャップ43、44を有し、試料枠30;81が着脱自在のカバープレート8を有し、その底部側が、カバープレート8を装着した状態において試料容器41、42のキャップ43、44の方に面しており、カバープレート8が各リテーナについて頂部側にほぼ漏斗形状の窪み11、71を有し、その中央にカバープレート8を通して貫通開口57が設けられ、カバープレート8が装着されると、貫通開口57が下に保持される試料容器41、42のキャップ43、44の穿孔53、54と同心とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の使用容器、特に試料管を用意するための試料枠であり、それぞれに試料容器が設置される複数のリテーナを有する試料枠に関する。
【背景技術】
【0002】
試料容器を用意するための試料枠は、いろいろな方法、例えば、Norell Inc.,Landisville,NJ,USA.の品番TR500「72ポジションNMRチューブラック(72 Position NMR Tube Rack)」を通じて知られるようになっている。
【0003】
機器分析、また特に核磁気共鳴(NMR)分光分析が、試料の化学組成を測定するために使用される。この場合、可能な限り高度に自動化されること、および測定結果が迅速に入手できることが特に重視される。高度に自動化された機器分析は、例えば、いわゆる直列分析(series assays)において使用され、複数の同様の試料、特に生物学的試料が同じ方法で分析されることになる。
【0004】
試料の準備(例えば、試料物質で試料容器を充填すること)の自動化、および測定装置の装填(例えば、測定装置において測定位置まで、および後方へ試料容器を移送すること)、ならびに測定結果の自動分析が目標となる。
【0005】
複数の測定試料用のリテーナを有する試料枠を用いることが、試料の準備において、および測定装置の装填において知られている。リテーナの定められた位置における個々の試料容器は、ロボットの補助の下取り扱うことができる。装填用の試料ロボットの例には、Bruker BioSpinからの「サンプルジェット(SampleJet)」がある。ロボットの把持装置が、通常、破壊する危険を低減するように試料容器のキャップに当てがわれる。
【0006】
試料容器の取り扱いは、試料の準備の前に試料容器にキャップがすでに設けられている場合、より容易になる。この場合には、試料容器の充填は、キャップの穿孔を通して行わなければならない。この種の穿孔を有するキャップは、例えば、DE 20 2007 001 251 U1によって知られている。試料物質が揮発性溶媒を含む場合、試料容器は、溶媒の蒸発、したがって試料の変化を避けるように充填の後に緊密に閉鎖されることになる。
【0007】
しかし、穿孔を有するキャップを備える試料容器を閉鎖することは、困難な作業であり、特に、自動化された試料の準備の際に行うことが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、自動化された試料準備において、穿孔を有するキャップを備える試料容器の閉鎖をより容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、最初に引用したタイプの試料枠によって実現され、この試料枠は、試料容器のそれぞれがその試料容器の開口端部に冠着されるキャップを有し、キャップがそれを通して試料容器の内部にアクセス可能である穿孔を有し、上記試料枠が着脱自在のカバープレートを有し、その底部側が、カバープレートを装着した状態において試料容器のキャップに面しており、カバープレートが各リテーナについて頂部側にほぼ漏斗形状の窪みを有し、その中央にカバープレートを貫通して貫通開口が設けられ、貫通開口は、カバープレートが装着されると下に保持される試料容器のキャップの穿孔と同心であることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、試料容器は、ロボット、特にBruker BioSpin社の「サンプルジェット」による自動的な取扱いのために試料枠内に用意される。リテーナは、例えば、96−ウェルプレート(well−plate)標準規格により空間的に適切に画定されて設置される。リテーナに設置される試料容器は、穿孔を有するキャップを備え、これを通して試料容器を、例えば注射針を用いて充填することができる。試料枠のカバープレートは、充填ロボットが試料容器へ容易にアクセスできるように、試料容器の充填の間取り外しておくことができる(あるいは、充填はカバープレートの貫通開口を介して行うこともできる)。試料容器の充填が終了した後、これらは閉鎖される。
【0011】
カバープレートは、本発明においては試料容器を閉鎖するように装着される。次いで、閉鎖ビーズが、カバープレートに外部から(頂部側に)配置される。閉鎖ビーズは、カバープレートの貫通開口の中に漏斗形状の窪みを通して個々に転がり込む。貫通開口の深さは、1つの閉鎖ビーズを収容するためにのみ適切であることが好ましい。そうでなければ、閉鎖ビーズの配置の間、1つの閉鎖ビーズだけが各窪み内に置かれるようにしてもよい。閉鎖ビーズは、窪みおよび貫通開口によって下に保持される試料容器のキャップの孔の上部開口に向けて自動的に方向づけられる。次いで、通常、閉鎖ビーズは穿孔の上部開口に押し当たる。
【0012】
次いで、穿孔を閉鎖するように穿孔の中に方向づけられる閉鎖ビーズを押圧することも、非常に簡単である。キャップの材料(通常、プラスチック)は通常この目的のために弾性的に変形され、それによってまた、閉鎖ビーズの密着座面が生じることに留意されたい。閉鎖ビーズは、プランジャを用いて圧入することができ、貫通開口よりも僅かに小さい直径を有する。プランジャは、貫通開口、および漏斗形状の窪みを通して誘導される。最も簡単な場合には、プランジャは手動で挿入され、あるいはまた、ロボットがこの工程を行ってもよい。
【0013】
貫通開口および穿孔は、通常、横断面が円形状で提供される。閉鎖ビーズは、試料物質およびその溶媒に耐える材料により提供される。ガラスビーズまたはセラミックビーズはほとんどすべての場合に使用することができるが、プラスチックビーズを用いてもよい。閉鎖ビーズの通常の外径は、ほぼ1mm〜5mmであり、3mmが好ましい。底部で閉鎖されかつ1mm〜5mmの外径を有する、基本的に円柱状の外套の形のガラス管が、通常、試料容器として使用される。
【0014】
試料容器の閉鎖、より正確には、キャップの穿孔への閉鎖ビーズの導入は、本発明により試料枠、特にカバープレートを提供することによって著しく容易になる。閉鎖は、本発明によれば、試料の準備、および測定装置の装填のいかなる場合にも使用される試料容器において行われ、それによって、さまざまな試料枠(試料リテーナ)の間での試料容器の移送が回避される。したがって、自動化された試料の取扱いに至る好適な統合も実現される。
【0015】
本発明による試料枠の特に好ましい実施形態では、試料枠は、複数の閉鎖ビーズを備え、これを用いてキャップの穿孔は閉鎖することができ、貫通開口は、閉鎖ビーズがこの貫通開口を通過することができるように十分に大きい。試料容器が閉鎖された後、閉鎖ビーズは、キャップの穿孔に配置される。閉鎖ビーズは、試料容器に収容される試料物質の揮発成分の蒸発を妨げ、同時に試料物質中への汚染物質の導入を妨げる。
【0016】
さらに好ましい実施形態では、カムがカバープレートの底部側に設けられ、これと共に試料容器は、カバープレートを装着した状態において方向づけられる。試料容器につき4つのカムが好ましく、この4つのカムは各試料容器のキャップに係合する。最も簡単な場合には、カムは、円形状で提供されるが、キャップの外部輪郭に特別に適合させることもできる。カムは、「グロイン(groins)」(試料容器の格子の中間格子空間)に特に配置することができる。カムは、特に試料枠が枢動される場合には移動のないように試料枠の移送時に各試料容器の位置を確実にする(カバープレートが装着される、すなわちカバーが閉鎖される場合)。
【0017】
特に好ましい実施形態では、試料枠は上部保持プレートを有し、これは試料容器のための窪みを有し、この窪みの直径は、試料容器の直径よりも大きいが、キャップの外径よりも小さく、試料容器は上部保持プレートに懸架され、キャップは保持プレートに載っている。試料容器(試料管)は、通常、上部保持プレートの窪み(孔)を通して垂直に、下方にぶら下がっている。キャップは、保持プレートに載っており、また、窪み(孔)の中に突出することもできる(したがって、キャップは、単に窪みの最も小さい直径よりも大きければよい)。この実施形態では、試料枠の床板上での試料容器自体の、例えばその下端部の接触が回避される。このことは、試料枠の震動時にも、およびロボットによる個々の試料容器の取扱い時にも、試料容器のガラスを破壊する危険を低減する。保持プレートの窪み(孔)は、短い管状部分に移行することができる。窪みの正確な形状は、キャップの設計に適合されることが好ましく、キャップもまた、貫通開口の中に部分的に突出することができる。
【0018】
さらに、試料枠が底部に開いた床領域を有する実施形態が好ましい。したがって、試料容器および/またはその中に収容される試料物質を冷却するために、下方から試料枠の中に冷却ブロックを挿入することが可能である。下方からの冷却ブロックの挿入は、試料容器(これは、通常、真直ぐに下方にぶら下がっている)の伸長方向と平行に行われる。
【0019】
また、好ましい他の実施形態では、試料枠は、多数の孔を有する床板を備える。床板は、例えば試料枠の移送の間中、試料容器をある程度保護するが、同時に、例えば低温フィンガーまたは冷却ガス流を用いた冷却の際に、保持される試料容器に下方からアクセスすることも可能にする。
【0020】
この実施形態の特に好ましい改良は、床板の孔が、保持される試料容器の間の中間空間に方向づけられ、特に各保持位置が、4個の孔によって囲まれるようになっている。低温フィンガー(金属棒またはパイプなど)は、試料容器の周囲に孔を通して挿入可能であり、これを用いて試料容器内の試料物質を冷却することができる。低温フィンガーは、試料容器の伸長方向と平行に動き、この伸長方向と平行に挿入され、取り外される。
【0021】
本発明による試料枠の特に非常に好ましい実施形態は、試料枠が、
試料容器の下部領域において保持される試料容器を少なくとも横方向に囲む枠底部と、
試料容器の上部領域において保持される試料容器を少なくとも横方向に囲み、上部保持プレートを収容する枠頂部と、
カバープレートを収容するカバーと
から成り、
この枠底部を枠頂部にクランプすることができ、カバーを枠頂部にクランプすることができるようになっている。この構成により、試料枠の製作、組み立て、および取り扱いもまた特に簡単である。枠底部と枠頂部との間のクランピングは、最も単純な場合には元に戻すことはできないが、再びクランプし、取り外すようにすることもできる。カバーと枠頂部との間のクランピングは基本的に取り外すことができて、カバーが測定装置に試料容器を配置する(また、通常、それから試料容器を取り外す)目的で取り外される(取り去られる)と、試料容器へのアクセスが可能になる。カバーと枠頂部との間のクランピングは、試料枠がカバーのところで(および/またはカバーと枠頂部との間の連結のところで)担持することができるほどカバーを装着した(クランプされた)状態で堅牢であることが好ましい。
【0022】
さらに、中間床が設けられる実施形態が好ましく、これは試料容器を方向づけるために試料容器のための窪みを有し、上部保持プレートから間隔を置いて配置され、特に上部保持プレートと中間床との間隔がAB、および試料容器の長さがLの場合に、次の方程式:AB≧0.25*Lが適用される。試料容器は、その中に中間床および/または窪み(孔)を用いて垂直軸に配置され、取り付けられる。特に、試料容器は、中間床によって互いに衝突すること、または動かなくなることを防止することができる。したがって、冷却ブロックまたは低温フィンガーを試料枠の中に下方から挿入する際に、ガラス破壊もまた防止される。中間床の窪み(孔)の直径は、例えば、せいぜい10%の遊び(直径の差異)を有するなど、単に試料容器の外径よりもわずかに大きいだけでよい。予め定められた最小間隔ABは、これらの下端部の領域において試料容器の遊びを限定する。
【0023】
中間床が枠頂部と枠底部との間に挿入可能である、先の2つの実施形態の改良もまた好ましく、突起が、特に枠底部の上部領域に中間床を載せるために実装されている。次いで、このことは、本発明による試料枠の製作および組立てを簡単にする。加えて、中間床は、例えば、さまざまな試料容器の直径に適合させるために一層容易に取り替えることができる。
【0024】
最後に、試料容器のリテーナが「96−ウェルプレート」標準規格により配置される実施形態が、特に好ましい。この標準規格は、画定された間隔で試料位置についての8×12の配置を規定している。これらの画定は、ロボットによる試料位置への制御、すなわちアクセスを容易にする。
【0025】
また、本発明の範囲内で、閉鎖ビーズを用いて試料容器を閉鎖するための本発明による試料枠の使用方法は、閉鎖ビーズが、装着カバープレートに配置され、貫通開口の中に転がり込む1つの閉鎖ビーズが、特に手動でプランジャを用いて、下に保持される試料容器のキャップの穿孔の中に貫通開口を通してそれぞれの場合に押圧される。本発明による使用方法では、カバープレートの漏斗形状の窪みの自己誘導特性が、閉鎖ビーズの配置や、キャップの閉鎖を用意し容易にするように使用される。プランジャがカバープレートの貫通開口を通して誘導され、これにより、追加的にキャップの閉鎖が容易になることに留意されたい。
【0026】
そのうえ、本発明は、核磁気共鳴(=NMR)測定のための試料の準備および/または試料提供するための本発明による試料枠の使用方法を含み、試料容器は、特にNMR試料管として提供される。本発明による試料枠は、NMR分光分析の直列分析の実行において特に有用である。特に、NMR分光計の装填は、本発明による試料枠を用いて(すなわち、本発明による試料枠から)実行される。
【0027】
さらに、本発明は、試料容器内の試料物質を冷却するための本発明による試料枠の使用方法を含む。この使用方法は、ぶら下がっている試料容器の場合に特にうまく用いることができ、冷却手段は、試料枠の床領域を介して設定することが好ましい。ぶら下がっている試料の場合、床は、試料の配置には必要ない。いかなる熱伝導も、試料容器の熱放散により枠壁を通して生じないことが特に好ましく、冷却は、試料枠から機械的に切り離して行われることが好ましい。
【0028】
上述の使用方法は、本発明において互いに組み合わせ可能であることに留意されたい。
【0029】
底部に開いた床領域を備える試料枠を有する、最後に述べた使用方法の好ましい変形は、ほぼ立方形の冷却ブロックが、底部に開いた床領域を通して試料枠の中に挿入され、その中に、保持される試料容器が挿入され、冷却ブロックが、特に−196℃以下の予め定められた温度まで冷却される。冷却ブロックは、製作や取り扱いが簡単であり、非常に高い冷却性能を確保する。予め定められた温度は、試料および材料の要求事項に従って選択される。
【0030】
床板に孔を備える試料枠を有する、最後に述べた使用方法のさらなる変形は、冷却ガス流が、床板の孔の一部を通して注入され、床板の孔の一部を通して流れ出ることを特徴とする。このタイプの冷却は、特に簡単に実施することができる。
【0031】
試料位置に関してオフセットする床板に孔を有する試料枠を備える、最後に述べた使用方法のさらなる好ましい変形は、低温フィンガーが、床板の孔を通して試料枠の中に挿入され、これは保持される試料容器の間に係合し、低温フィンガーが、特に試料容器と接触せず、特に−196℃以下の予め定められた温度まで冷却されるようになっている。試料容器の極めて均一な冷却を、低温フィンガーを用いて実現することができ、試料枠から簡単に機械的に切り離して冷却を行うことが可能である。予め定められた温度は、試料および材料の要求事項に従って選択される。
【0032】
本発明のさらなる利点は、説明および図面に由来するものである。上に述べた特徴、および列挙されるさらなる特徴は、単独で、または任意の組合せで一緒に使用することができる。示されかつ説明された実施形態は、本発明を網羅しているとされるべきではなく、むしろ本発明の説明のための例示に過ぎない。
【0033】
本発明は、図面に示され、例示の実施形態に基づいて一層詳しく説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】カバー(a)、枠頂部(b)、中間床(c)、および枠底部(d)を有する、本発明による試料枠の概略分解図である。
【図2】下方から斜めの透視画法で表した図1dの枠底部の透視図である。
【図3a】低温フィンガーを有する冷却装置に配置された、図1の組立てられた試料枠の概略透視図である。
【図3b】図3aの低温フィンガーのみを有する冷却装置の概略透視図である。
【図4】図3bの低温フィンガーを有する冷却装置に配置された、試料枠の概略断面図である。
【図5】懸架された試料容器のキャップの領域についての図4の詳細図である。
【図6】閉鎖ビーズを配置するためのプランジャを有する、キャップの穿孔の領域についての図5の詳細図である。
【図7】カバープレートにおける窪みの他の設計についての概略図である。
【図8】挿入された冷却ブロックを有する、本発明による試料枠の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、機器分析、特にNMR分光分析において、試料容器、およびその中に収容される試料物質を主として自動的に取り扱うために、試料容器、特にNMR試料管を用意するための試料枠(または試料ホルダ)に関する。
【0036】
本発明による試料枠は、製作が特に簡単で、コスト効率が良く、したがって、使い捨て使用にもまた好適である。特に、環境調和型ポリカーボネートは、試料枠用の材料として適切である。すなわち、試料枠の材料は、外側から容易に試料枠の充填をチェックできるように、やはり透明、または少なくとも半透明であることが好ましい。
【0037】
試料枠は、通常、試料容器で完全に占有されて設けられる(したがって、試料枠はまた、試料容器のパッケージとして機能する)。次いで、試料容器は、試料物質で充填され、(通常)密封される。閉鎖ビーズが使用され、これは、本発明に係るカバープレートの設計による試料容器の閉鎖リスト(closure list)の孔の中に特に容易に挿入可能である。あるいは、試料枠の一時保管の後に、次いで、試料容器は、NMR分光計などの測定装置まで運ばれ(移送され)、測定される。通常、試料容器の移送および測定は、それぞれの試料容器について個々に、かつ連続的に行われる。測定後に、試料容器は、通常、試料枠の中に戻され、すべての試料容器の測定後に、試料枠全体が通常処分される。あるいは、測定された試料容器のみを処分してもよく、この試料枠を、空の(未使用の)試料容器で再充填してもよい。
【0038】
試料容器の取扱い、また好ましくは試料物質を用いた充填は、ロボットを用いて本発明により自動的に行われる。すなわち、本発明による試料枠は、自動化ラック(automation rack)として使用される。
【0039】
図1a〜図1dは、本発明による試料枠の実施形態を示し、これは、4個の個々の部品から(ここで)組み立てることができる。試料枠は、カバー1、枠頂部2、中間床3、および枠底部4を備える。試料枠に配置することができる試料容器は、図1a〜図1dには示されていない(この点に関しては図4を参照されたい)。
【0040】
試料用のリテーナは、基本的に枠頂部2によって提供される。これは、上部保持プレート5を備え、その中に複数の窪み(孔)6が提供される。この窪みは、保持プレート5の底部側において短い管状部分に移行することができる(図1bでは見えない)。窪み6は、試料容器の挿入をより容易にするように漏斗形状に面取りすることができる。試料容器は、窪み6のそれらのキャップのところで懸架される(図示せず、図4を参照されたい)。このように、窪み6はまた、保持されることになる試料容器について位置を指定する(この試料位置は、ここで水平面に正方格子を形成する)。図示した例示の実施形態では、リテーナおよび/または位置は、96個の試料容器について(96−ウェルプレート標準規格に対応する8×12の配置に)設けられる。枠頂部5は、横方向の外壁7を有し、これは、枠頂部2の内側チャンバを横方向に囲う。係合能力部21を、外壁7に、特にそれらの上縁に設けることができる。
【0041】
カバー1は、装着され、頂部の枠頂部2から取り外され得る。カバー1は通常、一体で提供され、カバープレート8およびカバー枠9を有する。カバー1は、枠頂部2のノッチ10およびカバー枠9の突起(図示せず)などのクランプ手段を用いて、枠頂部2に係合する(クランプする)ことができ、再び枠頂部2から手動で切り離すことができる。カバープレート8は、複数の漏斗形状の窪み11を有し、そのそれぞれの中央において貫通開口が、カバープレート8を貫通している。カバー1が装着されると、1つの窪み11および/または関連するカバープレート1の貫通開口は、上部保持プレート5のそれぞれの窪み6と整合する。
【0042】
クランプジョー12が、枠頂部2の底部に提供され、これを用いて枠頂部2は、枠底部4にクランプすることができる。このために、クランプジョー12は、枠底部4の窪み13に係合する。枠底部4は側壁14を有し、この側壁14は試料容器としてチャンバ15を囲んでいる。図示した実施形態では、枠底部4はまた床板16を有し、そこに孔17が、冷却装置の低温フィンガーを挿入するために提供される。孔17は、保持される試料容器の位置に対してオフセットされ、水平の正方格子を形成する。
【0043】
中間床3は、枠底部4内に置くことができる。突起18が、このために枠底部4の短い側壁14の内側に提供され、この上に中間床3のタブ19を置くことができる(追加的に、クランプジョー12を用いて垂直に固定することができる)。窪み(孔)20が中間床3に提供され、これを通して試料容器が誘導され、それによって、試料容器はほとんど遊びもなく横方向に固定される。後者により、カバーが取り外されると試料容器が互いに衝突すること、とりわけ動かなくなることを防止することができる(それによりカムを介して試料容器を取り付けることができる)。
【0044】
図2は、下方から斜めの透視画法で表した図1dの枠底部4を示す。孔17は、(水平の)正方格子を形成し、これは、試料位置の格子に対応するが、縦1列、横1行以上からなり、両格子方向に関して、格子の各目について半格子分だけオフセットされる。このように、全体で9×13個の孔17が設けられ、各試料位置は、4個の孔17によって直接に囲まれる。低温フィンガーは、試料枠に保持される試料容器の間に孔17を通して挿入することができる(図3b、図4を参照されたい)。
【0045】
図3aは、枠頂部2に挿入される(密閉され、クランプされた)カバー1、および枠頂部2にクランプされた枠底部4を有する、組立てられた状態の本発明による試料枠30を示している。挿入される中間床は、図では隠されている。試料枠30は、冷却装置31内に配置され、これは、枠底部4の床板の孔を通して延在する低温フィンガー32を有する。試料枠なしの冷却装置31が図3bに示され、また、その中に低温フィンガー32をよく見ることができる。低温フィンガー32の数および配置は、床板の孔の数および配列に対応する。したがって、図示した実施形態では、9×13個の低温フィンガー32が設けられる。低温フィンガー32と試料容器との間の熱伝達は、放射を用いて、および部分的に対流によって行われる。
【0046】
図4は、床板16を通して挿入される冷却装置31の低温フィンガー32を有する、本発明による試料枠30を概略断面図で示す。
【0047】
試料容器は、保持プレート5の窪み(孔)6に保持され、2つの試料容器41および試料容器42が、ここでは例として示されている(試料枠は、同様の試料容器によって完全に占有されることが好ましいが、試料容器による試料枠の一部分のみの占有もまた、本発明により可能である)。試料容器41および試料容器42は、ほぼ円筒形のガラス管として提供され、これは、底部に閉鎖端、および頂部に開放端を有する。左の試料容器41は、5mmの外径を有し、右の試料容器42は、3mmの外径を有する。試料容器41および試料容器42はそれぞれ、それらの窪み6を通して突出する。したがって、試料容器41および試料容器42の外径は、窪み6の最も小さい内径(底部領域における)よりも小さい。キャップ43およびキャップ44が、試料容器41および試料容器42のそれぞれの上端部の上に置かれ(押圧され)、それにより、試料容器41および試料容器42が、窪み6から抜けることを防止する(この点に関しては図4bを参照されたい)。キャップ43およびキャップ44は、基本的に、保持プレート5とカバー1のカバープレート8との間にクランプされる。
【0048】
中間床3の窪み(孔)20は、それらから突出する試料容器41および試料容器42を有する。中間床3は、この場合には、左の試料容器41のより大きな直径に適合される。なぜならば、この試料容器41は、やはり関連する窪み20を通して僅かな遊びだけで嵌まっているからである。頂部保持プレート5と中間床3との間の間隔AB(キャップまたは試料容器の特定の接触点の間で測定される)は、試料管41の全長Lのかなりの構成部分、ここでほぼ半分を構成するので、試料容器41の底端部もまた、僅かな横方向の遊びしか有さない。
【0049】
試料容器41および試料容器42は、床板16上に載っているそれらの底端部を有するのではなく、むしろ自由にぶら下がっており、また、特に低温フィンガー32と接触せず、これらはずれて配置されるということが理解できる。熱交換は、低温フィンガー32と試料容器41および試料容器42との間の放射によって(および、追加的に局部的なガス対流によって)直接に行うことができる。冷却装置31と試料枠30(試料容器41および試料容器42を含む)は、少しも接触しないことが好ましく、これにより、試料リテーナを機械的に完全に切り離し、冷却することができる。冷却装置31は、例えば、ヒートポンプを用いて図示されていない方法で能動的に冷却される。短い保管時間の間、また冷却能力は、予冷却された冷却装置31の熱容量によって維持してもよい。
【0050】
図5は、拡大した状態で、「B」で標示された図4の詳細を示す。キャップ43およびキャップ44は、試料容器41および試料容器42のそれぞれの頂端部の上に置かれる。キャップ43およびキャップ44はそれぞれ、試料容器41および試料容器42よりも著しく大きな最大(外)径を有する。また、キャップ43およびキャップ44の最大外径は、保持プレート5の窪み(孔)6の(最小)内径よりも大きい。次には、試料容器41および試料容器42の外径は窪み6の最小内径よりも小さい。したがって、試料容器41および試料容器42は、窪み6を通してそれらのキャップ43およびキャップ44によって下方に(重力に従って)ぶら下がっている。キャップ43およびキャップ44は、保持プレート5上に、上から載っており、また、キャップ43およびキャップ44は、窪み6の中に部分的に突出している。後者は、それらの保持位置において試料容器41および試料容器42をある程度センタリングする。カバープレート8の底部側において実行される、さらなるセンタリングがカム51によって行われる。カム51は、キャップ43およびキャップ44の上部(環状領域)52を横方向に固定する。
【0051】
キャップ43およびキャップ44のそれぞれは、穿孔53および穿孔54を有し、これを通して試料容器41および試料容器42の内部は、アクセスが閉鎖ビーズ55および閉鎖ビーズ56によって阻止されない限り、上からアクセス可能である。加えて、環状窪み58が、キャップ43およびキャップ44に提供され、これは、ロボット(図示せず)の把持装置の係合を容易にする。試料容器41および試料容器42は、堅く着座されたキャップ43およびキャップ44によって問題なく操作することができる。キャップ43およびキャップ44は、特にDE 20 2007 001 251 U1で説明されるような形で提供することができる。
【0052】
キャップ43およびキャップ44の穿孔53および穿孔54は、カバープレート8の窪み11および貫通開口57の下にそれぞれ直接に設置され、その中にこの窪み11が連なる(また特に、顕著な垂直方向の間隔なしで連なる。すなわち、本発明によればカバープレート8の下縁とキャップ43およびキャップ44の上縁との間隔は、閉鎖ビーズ55および閉鎖ビーズ56の直径よりも小さい)。カバープレート8に置かれた閉鎖ビーズは、窪み11において、重力を受け、貫通開口の中へ転がり込む(閉鎖ビーズ56を参照されたい)。すなわち、閉鎖ビーズはそれ自身の進路を見出し、続いて孔の上縁に押し当たる(穿孔54を参照されたい)。貫通開口57は、閉鎖ビーズ55および閉鎖ビーズ56が通過できるように十分大きく開いている。この位置から、閉鎖ビーズは、プランジャを用いて手動で、キャップの孔の中に容易に押圧することができ(キャップ43の穿孔53内の閉鎖ビーズ55を参照されたい)、それによって、試料容器(ここでは試料容器41)は、閉鎖され、特にガス密に閉鎖される。キャップ43およびキャップ44は、穿孔53および穿孔54の領域において弾力的に広げられる。
【0053】
プランジャ61を用いたこの種の圧入手順は、図6に示されている。プランジャ61は、後部のハンドル部62、およびプランジャ突起部63を有する。後者は、カバープレート8の貫通開口57を通して、およびキャップ43の穿孔53の中に押し進めることができ、それの前の閉鎖ビーズ55を押す。プランジャ突起部63は、窪み11、貫通開口57、および穿孔53を通して誘導される。ハンドル部62に対するプランジャ突起部63の突出長さは、ハンドル部62がカバープレート8上に停止する時に閉鎖ビーズ55の圧入距離を限定する。このように、孔53内の閉鎖ビーズ55の最終位置を設定することができる。
【0054】
図5および図6に示される漏斗形状の窪み11は、広範に亘って比較的平担であり、中心付近においては非常に急な形状である。しかし、例えば、窪み71によって図7に示されるような直線の窪みのエッジ形状、あるいはまた、ほぼ球形のキャップの形の窪みを有する、他のタイプの漏斗形状の窪みでもよい。鋭利なエッジは、窪みまたは貫通開口の領域において回避されることが好ましい。
【0055】
最後に、図8は、概略断面図において底部で開いている床領域82を有する、本発明による試料枠81のもう1つの実施形態をさらに示す。ほぼ立方形の冷却ブロック83は、それを通して試料容器81の中に、特に枠底部4の中に挿入することができる。孔84が、冷却ブロック83内に設けられ、その中に試料容器41および試料容器42の底端部が挿入される。
【符号の説明】
【0056】
1 カバー
2 枠頂部
3 中間床
4 枠底部
5 上部保持プレート
6 窪み
7 外壁
8 カバープレート
9 カバー枠
10 ノッチ
11、71 漏斗形状の窪み
12 クランプジョー
13 枠底部の窪み
14 側壁
15 チャンバ
16 床板
17 孔
18 突起
19 タブ
20 窪み(孔)
21 係合能力部
30、81 試料枠
31 冷却装置
32 低温フィンガー
41、42 試料容器
43、44 キャップ
51 カム
52 上部(カラー領域)
53、54 穿孔
55、56 閉鎖ビーズ
57 貫通開口
58 環状窪み
61 プランジャ
62 ハンドル部
63 プランジャ突起部
82 床領域
83 冷却ブロック
84 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
そのそれぞれに試料容器(41、42)が設置される複数のリテーナを有する複数の試料容器(41、42)、特に試料管を用意するための試料枠(30;81)であって、
前記試料容器(41、42)のそれぞれは、前記試料容器(41、42)の開口端部に冠着されるキャップ(43、44)を有し、前記キャップ(41、42)は、それを通して前記試料容器(41、42)の内部にアクセス可能である穿孔(53、54)を有し、
前記試料枠(30;81)は、着脱自在のカバープレート(8)を有し、その底部側は、前記カバープレート(8)を装着した状態において前記試料容器(41、42)の前記キャップ(43、44)の方に面しており、
前記カバープレート(8)は、各リテーナについて頂部側にほぼ漏斗形状の窪み(11、71)を有し、その中央に前記カバープレート(8)を通して貫通開口(57)が設けられ、前記貫通開口(57)は、前記カバープレート(8)が装着されると下に保持される試料容器(41、42)のキャップ(43、44)の前記穿孔(53、54)と同心であることを特徴とする、試料枠(30;81)。
【請求項2】
前記試料枠(30;81)は、複数の閉鎖ビーズ(55、56)を備え、これを用いて前記キャップ(43、44)の前記穿孔(53、54)は閉鎖可能であり、前記貫通開口(57)は、前記閉鎖ビーズ(55、56)が前記貫通開口(57)を通過することができるように十分に大きいことを特徴とする、請求項1に記載の試料枠(30;81)。
【請求項3】
前記試料枠(30;81)は、上部保持プレート(5)を有し、これは前記試料容器(41、42)のための窪み(6)を有し、前記窪み(6)の直径は、前記試料容器(41、42)の直径よりも大きいが、前記キャップ(43、44)の外径よりも小さく、
前記試料容器(41、42)は、前記上部保持プレート(5)に懸架され、前記キャップ(43、44)は前記保持プレート(5)に載っていることを特徴とする、請求項1および2のうちの一項に記載の試料枠(30;81)。
【請求項4】
前記試料枠(30;81)が、前記底部に開いた床領域(82)を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の試料枠(30;81)。
【請求項5】
前記試料枠(30;81)が、多数の孔(17)を有する床板(16)を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の試料枠(30;81)。
【請求項6】
前記床板(16)の前記孔(17)が、保持される試料容器(41、42)の間の中間空間に方向づけられ、各保持位置が、特に4個の孔(17)によって囲まれることを特徴とする、請求項5に記載の試料枠(30;81)。
【請求項7】
前記試料枠(30;81)が、
前記試料容器(41、42)の下部領域において前記保持される試料容器(41、42)を少なくとも横方向に囲む枠底部(4)と、
前記試料容器(41、42)の上部領域において前記保持される試料容器(41、42)を少なくとも横方向に囲み、前記上部保持プレート(5)を収容する枠頂部(2)と、
前記カバープレート(8)を収容し、前記枠頂部(2)にクランプされることができ、前記枠底部(4)が前記枠頂部(2)にクランプされることができるカバー(1)と
から組み立てられることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の試料枠(30;81)。
【請求項8】
前記試料容器(41、42)の前記リテーナが、「96−ウェルプレート」標準により配置されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の試料枠(30;81)。
【請求項9】
閉鎖ビーズ(55、56)が、装着カバープレート(8)上に配置され、貫通開口(57)の中に転がり込む各閉鎖ビーズ(55、56)が、プランジャ(61)を用いて特に手動で、下に保持される試料容器(41、42)のキャップ(43、44)の前記穿孔(53、54)の中に前記貫通開口(57)を通して押圧される、閉鎖ビーズ(55、56)を用いて試料容器(41、42)を閉鎖するための、請求項1から8までのいずれか一項に記載の試料枠(30;81)の使用方法。
【請求項10】
前記試料容器(41、42)が特にNMR試料管として提供される、核磁気共鳴(NMR)測定のための試料の準備および/または試料提供するための、請求項1から8までのいずれか一項に記載の試料枠(30;81)の使用方法。
【請求項11】
前記試料容器(41、42)内の試料物質を冷却するための、請求項1から8までのいずれか一項に記載の試料枠(30;81)の使用方法。
【請求項12】
ほぼ立方形の冷却ブロック(83)が、前記底部に開いた床領域(82)を通して前記試料枠(30;81)の中に挿入され、孔(84)を有し、この冷却ブロック(83)の中に、保持される試料容器(41、42)が挿入され、前記冷却ブロックが、特に−196℃以下の予め定められた温度まで冷却されることを特徴とする、請求項5に記載の前記試料枠(30;81)と関連した請求項11に記載の使用方法。
【請求項13】
冷却ガス流が、前記床板(16)の前記孔(17)の一部を通して注入され、前記床板(16)の前記孔(17)の一部を通して流れ出ることを特徴とする、請求項6に記載の試料枠(30;81)と関連した請求項11に記載の使用方法。
【請求項14】
低温フィンガー(32)が、前記床板(16)の前記孔(17)を通して前記試料枠(30;81)の中に挿入され、保持される試料容器(41、42)の間に係合し、特に前記試料容器(41、42)と接触せず、特に−196℃以下の予め定められた温度まで冷却されることを特徴とする、請求項7に記載の試料枠(30;81)と関連した請求項11に記載の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−222709(P2009−222709A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−35505(P2009−35505)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(591148048)ブルーカー バイオシュピン アー・ゲー (53)
【Fターム(参考)】