説明

視覚装置付きロボット装置における座標較正方法

【目的】 取付治具の加工精度やハンドのたわみ等の問題にかかわらず、作業ツール取付位置とカメラ取付位置の正確な位置関係を算出することにより、能率的な座標較正方法を提供する。
【構成】 手首部にカメラ17を具備した視覚装置付きロボット装置において、ツール6により作業対象平面上に印を付け、該印をカメラ17で撮像し、該印が撮像画像内のある一定位置に来るようにハンドを移動することにより、印を付けた時のロボット座標データと、印が撮像画像内のある一定位置にある時のロボット座標データの認識を複数の位置について行い、どの位置においてもツール6とカメラ17の位置関係は等しいという条件のもとに連立方程式を解いて、ロボット座標系の座標較正を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、視覚装置付きロボット装置における座標較正方法に関し、特に手首部にカメラを具備したロボット装置において作業ツール取付位置とカメラ取付位置の正確な位置関係を算出する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ロボットハンドに取り付けられたカメラにより作業対象位置を認識しロボットの位置決めを行うタイプの視覚装置付きロボット装置では、作業ツール先端が作業対象位置にある時のロボット座標データと、その時のカメラの撮像画像内での作業対象位置のカメラ座標データを、ティーチングを行うことによりあらかじめ認識しておく。そして、実際に作業を行う時は、まずティーチング時の作業対象位置にロボットを移動し、その時のカメラの撮像画像内での作業対象位置のカメラ座標データを認識し、ティーチング時のカメラ座標データとのずれのベクトル量を求める。そして、カメラ座標系での作業対象位置のずれのベクトル量をロボット座標系でのベクトル量に変換して作業ツール先端位置の作業対象位置とのずれのベクトル量を認識する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の座標較正方法では、作業対象機種が切り替わる度にツール先端が作業対象位置にある時のカメラの撮像画像内での作業対象位置のカメラ座標データをティーチングする必要があり、能率的でないという問題があった。
【0004】また、この問題を解決するには、作業ツール取付位置とカメラ取付位置のロボット座標系における位置関係をあらかじめ把握しておけば、わざわざティーチングしなくても、作業対象ワークの設計データに基づいてカメラを作業対象部分の粗位置に移動するだけで、撮像画像内の作業対象位置のカメラ座標データから作業ツール先端位置の作業対象位置とのずれのベクトル量を算出することができる。しかしながら、この際、作業ツール取付位置とカメラ取付位置の位置関係を正確に把握することは、取付治具の加工精度やハンドのたわみ等の問題から非常に困難であった。
【0005】それ故に、本発明の目的は、取付治具の加工精度やハンドのたわみ等の問題にかかわらず、作業ツール取付位置とカメラ取付位置の正確な位置関係を算出することにより、ティーチングを必要としない能率的な座標較正方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は、上述の目的を達成するために、ロボットハンド手首部にカメラを具備し、このカメラからの画像データにより作業対象部分の位置を認識しその動作を制御する視覚装置付きロボット装置における座標較正方法において、作業ツール取付位置に取付けた治具により作業対象平面上に印を付け、該印を前記治具とある一定距離離れたカメラで撮像し、該印が撮像画像内のある一定位置に来るようにハンドを移動させ、印を付けた時のロボット座標データと、印が前記カメラの撮像画像内のある一定位置にある時のロボット座標データの認識を複数の位置について行い、どの位置においてもツールとカメラの位置関係が等しいという条件のもとでロボット座標系の座標較正を行うことを特徴とするものである。
【0007】
【実施例】次に、本発明の一実施例について、図1〜図5R>5を参照して説明する。
【0008】図1は、本実施例における視覚装置付きロボット装置を示している。ロボット1は、一般的な水平多関節型ロボットであり、X軸2を中心に第1腕3を、Y軸4を中心に第2腕5を回転することによりツール6の2次元位置を決定する。また、ハンド先端部分のツール6は、エアーシリンダ等により上下動作可能に取付られている。ツール6の斜め後方にはカメラ17が固定され、ハンド下方に設置された対象ワーク8を撮像する。
【0009】図3は、本実施例における視覚装置付きロボット装置のシステムブロック図を示している。カメラ17により撮像された対象ワークの画像データは、画像処理装置14に転送される。画像処理装置14は、画像データを処理することにより撮像画像内での認識対象部分のカメラ座標値を算出し、その座標データをホストコンピュータ13に転送する。一方、ロボット11の動作を制御するロボット制御装置12からは、対象ワークを撮像した際の各アームの回転角度データがホストコンピュータ13に転送される。これらのデータから、ホストコンピュータ13は認識対象部分のロボット座標値を算出し、算出データはロボット制御装置12に送られる。そして、ロボット制御装置12は、ホストコンピュータ13から送られてきたロボット座標位置にロボット11を動作させてロボット11の認識対象部分への位置決めを行う。
【0010】次に、本実施例の座標較正方法について説明する。今、ツール6は、対象ワーク8上の任意の位置にある。このとき、ツール6をエアーシリンダー等により下方に動作させて対象ワーク8上の作業対象平面にツール6の先端を押し当てる。(ツール6は、バネ等により上下に伸縮可能な専用治具とする。)このとき、対象ワーク8上の感圧紙9にツール6により受けた圧力により印10−1が付く。この状態でのX軸の回転角θX1とY軸の回転角θY1をホストコンピュータ13のメモリに記憶しておく。次に、印10−1がカメラ17の撮像画像内の中心位置に来た時のX軸の回転角θX2とY軸の回転角θY2をホストコンピュータ13のメモリに記憶する。図2は、ツール6の先端が印10−1上にある時のロボットの状態(X軸回転角θX1,Y軸回転角θY1)とカメラ17中心が印10−1上にある時のロボットの状態(X軸回転角θX2,Y軸回転角θY2)を示しており、同図から両状態におけるツール6先端の位置関係は、ツール6とカメラ17との位置関係に等しいことがわかる。ここで、ロボットハンド第1腕3の長さl1とロボットハンド第2腕5の長さl2が正確にわかっていれば、ツール6とカメラ17の位置関係は次式により求まる。
【0011】
【数式1】
【0012】


【0013】しかしながら、l1,l2はハンドのたわみやツール6の取付誤差等により完全に正確な値を把握することは困難である。そこで、対象ワーク上の他の点(例えば図2における印10−2)についても、上と同様なことを行うことにより、印10−2についての■〜■式を導き、両点におけるLの値,θの値は等しいという条件から、l1,l2を未知数として連立方程式を立て、それを解くことによってl1,l2の正確な値と、ツール6とカメラ17の正確な位置関係を求めることができる。以上に示した座標較正の計算フロー図を、図4に示す。
【0014】図5は、ホストコンピュータ13内での処理の流れを示している。ロボット制御装置12から送られて来る撮像時のアーム回転角データは、図4のフローによりあらかじめ求められたl1,l2の較正値から、式■,■より較正ロボット座標値に変換される。この撮像時のロボット座標値と画像処理装置から送られて来る撮像画像内での認識対象部分のカメラ座標値、および図4のフローによりあらかじめ得られたツール6とカメラ17の位置関係から、座標変換アルゴリズムを用いて演算することにより認識対象部分のロボット座標値を求め、ロボット制御装置12に転送する。
【0015】以上は、ロボットハンド第1腕3,第2腕5の長さおよびツール6とカメラ17の位置関係に関する較正方法であったが、各腕の回転角θX,θYの値に関しても腕のたわみやツール6の取付誤差等による誤差があると考えられる場合には、その誤差をそれぞれΔθX,ΔθYとし、θX1,θY1,θX2,θY2のかわりにθX1+ΔθX,θY1+ΔθY,θX2+ΔθX,θY2+ΔθYとして未知数がl1,l2,ΔθX,ΔθYの4つの場合の連立方程式を、さらに印の数を増やして解くことにより、ツール6とカメラ17の正確な位置関係を求めることができる。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、ツールが印の上にある時のロボット座標データとその印がカメラの撮像画像内のある一定位置にある時のロボット座標データの認識を複数の印について行い、それぞれの印においてツールとカメラの位置関係は等しいという条件のもとに連立方程式を解くことによりロボット座標系の較正を行うようにしたので、ロボットハンドのたわみやツール、カメラの取付誤差があっても、ツールとカメラの正確な位置関係を把握することができ、それにより作業対象位置へのツールとカメラのティーチングを機種が切り替わる度にいちいち行わなくても、対象ワークの設計データ等からカメラを作業対象位置付近へ動かしさえすれば、正確な作業対象位置の認識を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すロボットの側面図である。
【図2】図1に示した実施例の座標系とハンドの状態図である。
【図3】図1に示した実施例のシステムブロック図である。
【図4】座標較正の計算フローチャートである。
【図5】ホストコンピュータ内の処理フローチャートである。
【符号の説明】
1,11 ロボット
2 X軸
3 第1腕
4 Y軸
5 第2腕
6 ツール
8 対象ワーク
9 感圧紙
10 印
12 ロボット制御装置
13 ホストコンピュータ
14 画像処理装置
17 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ロボットハンド手首部にカメラを具備し、このカメラからの画像データにより作業対象部分の位置を認識しその動作を制御する視覚装置付きロボット装置における座標較正方法において、作業ツール取付位置に取付けた治具により作業対象平面上に印を付け、該印を前記治具とある一定距離離れたカメラで撮像し、該印が撮像画像内のある一定位置に来るようにハンドを移動させ、印を付けた時のロボット座標データと、印が前記カメラの撮像画像内のある一定位置にある時のロボット座標データの認識を複数の位置について行い、どの位置においてもツールとカメラの位置関係が等しいという条件のもとでロボット座標系の座標較正を行うことを特徴とする視覚装置付きロボット装置における座標較正方法。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate