視野測定方法
【課題】心理的要因によって狭くなった被験者の視野を定量的に測定するための方法および装置を提供する。
【解決手段】画像50を被験者Sに提示し、この被験者Sの周辺視野における知覚閾下の視覚刺激VSを被験者Sの周辺視野と視野外とに発生させる。そして、被験者Sが認識した視覚刺激VSの発生位置に基づいて被験者Sの視野を測定する。視覚刺激VSを画像50上に発生させ、画像50に定められた要注視点RPとの距離が徐々に小さくなるように視覚刺激VSの発生位置を経時的に変化させる。
【解決手段】画像50を被験者Sに提示し、この被験者Sの周辺視野における知覚閾下の視覚刺激VSを被験者Sの周辺視野と視野外とに発生させる。そして、被験者Sが認識した視覚刺激VSの発生位置に基づいて被験者Sの視野を測定する。視覚刺激VSを画像50上に発生させ、画像50に定められた要注視点RPとの距離が徐々に小さくなるように視覚刺激VSの発生位置を経時的に変化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視野測定方法および視野測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被験者の視野の広さや視野欠損を測定するための方法や装置が提案されている。視野を測定することで、緑内障などの視覚障害の度合いを調べることができる。また、一般に広い視野が求められるスポーツ競技や自動車の運転を行う被験者に対しては、十分な広さの視野であるか否かを判定することができる。
【0003】
視野とは、網膜の黄斑部の中心にあたる中心窩を基準として、視覚刺激を処理することができる上下左右方向の視角の大きさである。健常者の視野は、垂直方向の上側が60度、下側が75度程度である。水平(左右)方向では、単眼の場合、鼻側が60度、耳側が100度程度である。よって、正面を中心として左右に120度程度の視角は両眼で重複して観察される。このうち、中心窩から20度程度の中央の円形の視野領域を中心視野とよび、その周囲の120度程度までのドーナツ状の視野領域を周辺視野という。一般に中心視野は周辺視野よりも空間分解能が高く、また周辺視野では色覚が失われる。
【0004】
視野は、被検眼を動かさず、視標となる視覚刺激の方を動かして、被験者が認識できる領域の最大範囲を測定して求めることが一般的である。視野の測定方法には、大別して静的視野測定と動的視野測定とがある。静的視野測定は、固定点の輝度を徐々に変化(増加)させながら網膜感度を調べる方法である。動的視野測定は、発光点を移動させて視覚機能を調べる方法である。動的視野測定のうち、視野全体を定量的に測定する方法を動的量的視野測定といい、ゴールドマン視野計を用いることが一般的である。
【0005】
特許文献1には、被験者が視点を固定する固視点(要注視点)を表示し、視標となる発光点を固視点の周囲で渦巻状に移動させる視野測定法が記載されている。この方法では、発光点が視野範囲外から周辺視野に入った瞬間に被験者は発光点の存在を認識する。この瞬間に被験者は押しボタンなどの操作部を操作して、発光点を認識したことを回答する。これにより、被験者の周辺視野の最外位置が取得される。
【0006】
特許文献2には、視覚刺激に対する被験者の目の動きを追尾し、視覚刺激の移動方向に視点が移動した場合に、被験者が視覚刺激を認識したと判定する視野検査システムが記載されている。このシステムによれば、被験者の主観的な回答操作によることなく、被験者が視覚刺激を視認可能な領域を客観的に判定することができるとされている。また、このシステムでは、被験者の現在の視点位置と要注視点との距離に基づいて、次の視覚刺激の表示位置が決定される。
【0007】
特許文献1の視野測定法や特許文献2の視野検査システムは、医学的見地から被験者の視野の最大範囲を測定するものである。このため、特許文献1および特許文献2では、視野外で認識されず周辺視野で問題なく認識される光度の発光点を視覚刺激に用いて、被験者の周辺視野の医学的な最大範囲を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−075350号公報
【特許文献2】特表2010−526623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
人の視野の広狭は、目視対象に強く注目しているか否か、また周辺視野に対して視覚刺激が与えられることを被験者が予測しているか否か、などの心理的要因によって著しく変動する。自動車の運転中に前方の走行車両に注目しすぎると歩行者が認識できなくなったり、球技でボールに注目しすぎると他の競技者の動きが認識できなくなったりする現象は日常的にも経験される。したがって、被験者の周辺視野の医学的な最大範囲ではなく、上記のように心理的要因によって狭くなった視野(以下、狭視野)を測定することは極めて有用である。
【0010】
しかしながら、上記の特許文献1や特許文献2の発明では、視覚刺激の付与が予告された被験者に対して、周辺視野で問題なく認識される十分な光量の視覚刺激が付与されることから、狭視野を定量的に測定することはできない。
【0011】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、心理的要因によって狭くなった被験者の視野を定量的に測定するための方法および装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の視野測定方法は、画像を被験者に提示し、前記被験者の周辺視野における知覚閾下の視覚刺激を前記被験者の前記周辺視野と視野外とに発生させ、前記被験者が認識した前記視覚刺激の発生位置に基づいて前記被験者の視野を測定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の視野測定装置は、画像を被験者に提示する画像提示手段と、前記被験者の周辺視野における知覚閾下の視覚刺激を前記画像に発生させる刺激発生手段と、を備える。
【0014】
上記発明によれば、被験者の周辺視野における知覚閾下の視覚刺激が、提示された画像を目視している被験者の周辺視野と視野外とに発生する。したがって、視覚刺激が被験者の潜在意識下(サブリミナル)で付与されるため、画像に注目して狭視野となっている状態で被験者の視野を測定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、心理的要因によって狭くなった被験者の視野を定量的に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態にかかる視野測定装置の一例を示す構成図である。
【図2】本実施形態にかかる視野測定方法のフローチャートである。
【図3】本実施形態の視野測定方法に用いる画像の一例を示す図である。
【図4】顔画像および第一の視覚刺激を示す図である。
【図5】顔画像および第二の視覚刺激を示す図である。
【図6】視野決定ステップの変形例を示すフローチャートである。
【図7】第一変形例に用いる画像を示す図である。
【図8】第二変形例に用いる画像を示す図である。
【図9】顔画像に関するサブリミナル動画とフェードアウト動画について、各被験者の視野角の測定結果をプロットした散布図である。
【図10】被験者の視野角の説明図である。
【図11】風景画像に関するサブリミナル動画とフェードアウト動画について、各被験者の視野角の測定結果をプロットした散布図である。
【図12】無地画像に関するサブリミナル動画とフェードアウト動画について、各被験者の視野角の測定結果をプロットした散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0018】
(視野測定装置)
図1は、本発明の実施形態にかかる視野測定装置100の一例を示す構成図である。
【0019】
はじめに、本実施形態の概要について説明する。
視野測定装置100は、画像50を被験者Sに提示する画像提示部10と、被験者Sの周辺視野における知覚閾下の視覚刺激VSを画像50に発生させる刺激発生部60と、を備えている。
【0020】
視野測定装置100は、コンピュータプログラムを読み取って対応する処理動作を実行できるように、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)ユニット、等の汎用デバイスで構築されたハードウェア、所定の処理動作を実行するように構築された専用の論理回路、これらの組み合わせ、等で構成されている。
【0021】
画像提示部10は、液晶ディスプレイやスクリーンなどの画像表示装置である。画像提示部10は平面状であってもよく、または半球面状であってもよい。画像提示部10は被験者Sに正対して配置される。画像提示部10には画像50が表示される。被験者Sは、この画像50を目視する。
【0022】
刺激発生部60は、画像提示部10における予め定められた位置に視覚刺激VSを発生させる。刺激発生部60は、CPUおよび記憶装置で構成されている。刺激発生部60が視覚刺激VSを発生させる位置は、位置情報として刺激発生部60に記憶されている。
【0023】
視野測定装置100は、被験者Sの視線方向に関する視線データVDを取得する視線取得部20を備えている。また、視野測定装置100は視線データ蓄積部30をさらに備えている。画像提示部10、視線取得部20、視線データ蓄積部30、刺激発生部60および視野径算出部70は互いに接続されている。
【0024】
視線取得部20は、視覚刺激VSを間欠的または連続的に発生させている所定の刺激時間に亘って被験者Sの視線方向に関する視線データVDを取得する手段である。視線データ蓄積部30は、被験者Sから取得した視線データVDを記憶しておくための記憶手段である。視線取得部20には、眼検知装置(アイカメラ)を用いることができる。一例として、Tobii社製の注視点追跡システム(アイトラッカー)を好適に用いることができる。
【0025】
視覚刺激VSの発生位置を示す位置情報と視線データVDは、時刻情報をともに含んでいる。本実施形態の視野測定装置100は視野径算出部70を備えている。視野径算出部70は、互いに時刻を同期させた視線データVDと、視覚刺激VSが発生した位置情報とに基づいて、被験者Sが認識した一または複数の視覚刺激VSの発生位置と被験者Sの目視点との最大距離を算出する。
【0026】
視線取得部20、視線データ蓄積部30および視野径算出部70による具体的な情報処理に関しては後述する。
【0027】
(視野測定方法)
以下、本実施形態の視野測定装置100を用いて行う視野測定方法(以下、本方法という場合がある)について説明する。図2は本方法のフローチャートである。
【0028】
本方法の概要について説明する。本方法は、画像50を被験者Sに提示し(図2:ステップS10)、この被験者Sの周辺視野における知覚閾下の視覚刺激VSを被験者Sの周辺視野と視野外とに発生させる(図2:ステップS30)。そして、被験者Sが認識した視覚刺激VSの発生位置に基づいて被験者Sの視野を測定する(図2:ステップS70)ことを特徴とする。
【0029】
画像50は、無地画像でもよく、または対象物POを被写体として含む画像でもよい。被写体は、特に限られず、人物、風景、物体および幾何学的模様を例示することができる。画像50には要注視点RPが設定されている。この要注視点RPは、画像50に表示される視標でもよく、または画像50に含まれる被写体の一部もしくは全部を要注視点RPとして設定してもよい。このほか、画像50に表示されない仮想点を要注視点RPに設定してもよい。この場合、要注視点RPは、画像50のうち被験者Sが注目しやすい領域上またはその近傍に設定するとよい。たとえば、画像50が人間の顔を被写体として含む場合は、その目の近傍を要注視点RPにするとよい。このほか、画像50の重心位置を要注視点RPに設定してもよい。
【0030】
本方法では、対象物POを被写体として含む画像50を用いる場合を例示する。
図3は本方法に用いる画像50の一例を示す図である。この画像50は、人間の顔、または人間の顔と認識できる対象物を、被写体として含む画像(顔画像)である。人は、人間の顔を目視する際に狭視野になりやすく、また顔のうち目の近傍に本能的に注目することが本発明者の検討により明らかとなっている。したがって、画像50として顔画像を用いることで、被験者Sの視野が特に心理的に狭くなりやすい特殊な状況を形成することができる。かかる画像50に視覚刺激VSを発生させて被験者Sの視野を測定することで、被験者Sが狭視野となっているときの視野範囲を好適に判定することができる。
【0031】
なお、本方法でいう顔画像とは、人間の頭部を被写体に含む画像のほか、人間の頭部を模した人形を被写体とする画像、および人間の頭部を模したコンピュータグラフィクスを含む。
【0032】
本方法では、視覚刺激VSを、画像50における頭髪HRの領域(頭髪領域R1)上、および顔FCと頭髪HRを含む頭部HDの外部領域(頭部外領域R2)上に発生させる。視覚刺激VSを更に顔FCの領域上に発生させてもよい。
【0033】
要注視点RPは、画像50における両目の間または目EYの近傍に設定されている。本方法における目EYの近傍とは、画像50における両目の外接円OCの内部、またはこの外接円OC上を意味する。本実施形態の要注視点RPは、画像50における両目の間に設定されている。要注視点RPは、画像50に表示される視標である。
【0034】
そして本方法では、被験者Sが対象物POを目視している状態で視覚刺激VSを発生させるとともに、この視覚刺激VSの少なくとも一部を対象物POの外部に発生させる。被験者Sが対象物POを凝視している場合、一般にその周辺視野は対象物POの外縁程度まで狭まる。逆に被験者Sが対象物POを全体観察している場合、その周辺視野は対象物POの外部まで及びやすい。したがって、視覚刺激VSを対象物POの外部に発生させ、それを被験者Sが視野(周辺視野)で捉えることができるか否かを測定することで、被験者Sが対象物POを凝視する傾向があるかどうかを判定することが可能である。
【0035】
ここで、人の中心視野は空間分解能および時間分解能が高く、知覚閾値が低い。周辺視野は、中心視野よりも空間分解能および時間分解能が低く、知覚閾値は中心視野よりも高くなる。本方法では、周辺視野における知覚閾値よりも低い視覚刺激VSを、被験者Sの周辺視野と視野外とに発生させる。視覚刺激VSは、被験者Sの周辺視野における閾下(サブリミナル)刺激である。したがって、被験者Sは、視野外に発生した視覚刺激VSを認識せず、周辺視野に発生した視覚刺激VSを無意識下で認識する。
【0036】
なお、視覚刺激VSの刺激強度は、被験者Sの中心視野における閾上(スプリミナル)刺激であってもよく、または中心視野における閾下(サブリミナル)刺激であってもよい。
【0037】
刺激発生部60は、視野外および周辺視野に加えて、視覚刺激VSを被験者の中心視野に発生させてもよい。ただし、中心視野における閾上(スプリミナル)刺激の視覚刺激VSを中心視野に発生させると、被験者Sは当該視覚刺激VSを意識下で察知して、要注視点RPに注目する心理が緩和される。したがって、中心視野に視覚刺激VSを発生させる場合は、視覚刺激VSの刺激強度を中心視野における閾下とするか、または、視野外および周辺視野に所定回数の視覚刺激VSを発生させた後に、中心視野に視覚刺激VSを発生させるようにすることが好ましい。これにより、被験者Sが要注視点RPに注目している状態における周辺視野の範囲を、被験者Sの無意識下で測定することができる。
【0038】
同様の理由により、視覚刺激VSの発生を被験者Sに予告せずに所定の刺激時間に亘って視覚刺激VSを間欠的または連続的に発生させた後に、被験者Sが認識した視覚刺激VSの発生位置に関する回答を被験者Sから取得するとよい。これにより、被験者Sが画像50の要注視点RPに本能的に注目して狭視野となっている状態を維持したままで被験者Sの視野を測定することが可能である。具体的には、被験者Sからの回答に基づいて、要注視点RPからの距離がどの程度までの視覚刺激VSを被験者Sが認識したかを分析することで、画像50を目視している状態における被験者Sの周辺視野の最大範囲を判定することができる。
【0039】
本方法で画像50に発生させる視覚刺激VSの具体的な態様は特に限定されないが、視覚刺激VSを画像50上に発生させ、画像50に定められた要注視点RPとの距離が徐々に小さくなるように視覚刺激VSの発生位置を経時的に変化させるとよい。これにより、測定の当初は被験者Sの視野外に視覚刺激VSが発生するため被験者Sは視覚刺激VSの発生事実に気づかない。このため、視覚刺激VSが被験者Sの周辺視野内で発生した際に、この刺激を被験者Sは意識下で認識することになる。よって、被験者Sが画像50を自然に目視している状態における視野範囲を測定することができる。
【0040】
視覚刺激VSは、点もしくは点とみなしうる微小領域でもよく、または線もしくは面の領域でもよい。視覚刺激VSの形状は特に限定されない。
【0041】
画像50における顔FCの大きさは、一般的な成人の顔と略同等の大きさであることが好ましい。これにより、被験者Sが画像50を目視した場合の視野が、実際の人間を被験者Sが目視した場合の視野と略同等となる。
【0042】
ここで、画像50に視覚刺激VSを発生させるとは、被験者Sが画像50を目視したときに視覚刺激VSが画像50に重畳された状態に視認されるようにすることをいう。具体的な例としては、画像50における一または複数の画素の明度もしくは色成分と、その周囲の画素の明度もしくは色成分との比または逆比が所定以上となるように当該画素の画素値を変化させることが挙げられる。このほか、視覚刺激VSは、画像50の表面上または画像50と被験者Sの被検眼との空間的な間隙に配置された、発光体などの視標でもよい。
【0043】
以下、本方法では二通りの視覚刺激VSを例示する。第一の視覚刺激VS1は光点の瞬間的な発光である。かかる光点の光度および発光時間を所定以下にすることで、第一の視覚刺激VS1の刺激強度を被験者Sの周辺視野における知覚閾下に抑制することができる。第二の視覚刺激VS2は、画像50の画素値の変化である。各画素における画素値の変化速度を所定以下とし、また画素値を変化させる領域の移動速度を所定以下とすることで、第二の視覚刺激VS2の刺激強度を被験者Sの周辺視野における知覚閾下に抑制することができる。
【0044】
本実施形態の視野測定装置100においては、オペレータによる操作部(図示せず)の操作により、視覚刺激VSの態様(モード)が選択される(図2:ステップS10)。
【0045】
ステップS10において、被験者Sに対する画像50の提示タイミングと刺激モードの選択タイミングとの先後は任意である。さらに、視覚刺激VSの発生(ステップS30)の開始タイミングと、画像50を被験者Sに提示するタイミングの先後も任意である。すなわち本方法においては、被験者Sに画像50を提示した後に視覚刺激VSの発生を開始してもよく、または視覚刺激VSの発生が既に開始している画像50を被験者Sに提示してもよい。
【0046】
(第一の視覚刺激)
図4は、画像50および第一の視覚刺激VS1を示す図である。図4に示す第一の視覚刺激VS1は、上記のように、被験者Sの周辺視野における知覚閾下の光度および発光時間で点灯する光点1〜8(白丸で図示)の発光である。より具体的には、要注視点RPからの距離または方向の少なくとも一方が互いに異なる複数の光点1〜8を順次点灯させ、被験者Sがその発光を認識した一または複数の光点1〜8と要注視点RPとの最大距離に基づいて被験者Sの視野を決定する。
【0047】
図4には、要注視点RPを中心とする同心円CCを便宜上図示しているが、かかる同心円CCは被験者Sに提示されない。光点1〜8は、異なる径の同心円CC上にそれぞれ配置されている。光点1〜8のうち番号が小さいものほど、大径の同心円CC上に配置されている。したがって、光点1〜8を番号順に、かつ間欠的に発光させることで、あたかも画像50の外縁から要注視点RPに向かって縮径する螺旋状に光点が移動するように視認される第一の視覚刺激VS1が発生する。かかる光点の移動方向は、螺旋状に限らず、直線状でもよく、またはランダムでもよい。
【0048】
オペレータは、被験者Sに対して、画像50の目EYまたは要注視点RPに注目するよう指示する。被験者Sが目EYまたは要注視点RPに視線をあわせている間に、光点1を短時間(単発光時間)に亘って発光させる。かかる発光は点灯でも点滅でもよい。単発光時間は、1ミリ秒以上100ミリ秒未満が好ましく、10ミリ秒以上50ミリ秒以下が更に好ましい。発光時間が過小であると被験者Sによっては視野が過小に評価され、発光時間が過大であると被験者Sによっては第一の視覚刺激VS1が周辺視野における閾上刺激となる場合がある。上記範囲の単発光時間とすることで、光点1〜8の発光は被験者Sの閾下(サブリミナル)刺激となる。以下、かかる画像50をサブリミナル動画と呼ぶ。
【0049】
光点1〜8の一部(光点1〜4)は画像50における頭部HDの外部領域(頭部外領域R2)に設定されている。光点1〜8の他の一部(光点5〜7)は、画像50における頭髪HRの領域(頭髪領域R1)上に設定されている。光点1〜8の更に他の一部(光点8)は、画像50における顔FCの領域上に設定されている。光点8は一般的な被験者Sの中心視野に含まれる。
【0050】
光点1〜8の発光が終了すると(図2:ステップS40)、オペレータは被験者Sに対して、一以上の光点を発光させた事実を告知する。被験者Sは、意識下で認識した発光の位置を、口頭または画像50へのポインティングにより回答する(図2:ステップS60)。本方法において、総ての光点1〜8の位置は、要注視点RPを中心として異なる方向にある。言い換えると、要注視点RPを基端として光点1〜8を先端とする個々のベクトル(図示せず)は互いに一致しない。このため、被験者Sは、発光を認識した光点の位置のみならず、要注視点RPを基端とする光点の方向を回答してもよい。これにより、被験者Sが認識した光点1〜8を一意に識別することができる。
【0051】
視野決定ステップS70では、被験者Sが認識した光点(たとえば、光点6〜8)のうち、要注視点RPからの距離が最大であるもの(光点6)を、被験者Sの周辺視野の外縁と定める。そして、当該光点(光点6)が載る同心円CCの半径を、画像50を目視しているときの被験者Sの狭視野の範囲と決定する。
【0052】
(第二の視覚刺激)
図5は、画像50および第二の視覚刺激VS2を示す図である。図5に示す第二の視覚刺激VS2は、画像50の画素値を変化させることによって与えられる動画像である。具体的には、要注視点RPを囲む異径の複数の環状領域CAを画像50に設ける。環状領域CAに含まれる画素の画素値を、周辺視野における知覚閾下で時間変化させる。そして、画素値が変化したことを被験者Sが認識した一または複数の環状領域CAのうちの最大半径に基づいて視野を決定する。
【0053】
図5にも、要注視点RPを中心とする同心円CCが便宜上図示されているが、かかる同心円CCは被験者Sに提示されない。環状領域CAは、同心円CCで隔てられた領域であり、多数の画素を包含している。図中の(1)〜(7)の数字は、要注視点RPを中心として、遠位にある環状領域CA(1)から近位にある環状領域CA(7)、さらに中心の円形領域(8)に向かって順に符号を付したものである。
【0054】
オペレータは、被験者Sに対して、画像50の目EYまたは要注視点RPに注目するように指示する。被験者Sが目EYまたは要注視点RPに視線をあわせている間に、環状領域CA(1)に含まれる画素の画素値を変化させる。本方法では、変化前の画素の個々の明度を一定倍率(変化比率)だけ増大させることにより画素値を変化させる。この変化比率が過小であると、被験者Sによっては画素値の変化を知得することができず視野が過小に評価される。また、変化比率が過大であると被験者Sによっては第二の視覚刺激VS2が周辺視野における閾上刺激となる場合がある。本方法では、環状領域CAに含まれる画素の明度または輝度を、10%以上50%未満の増加率にて増大させることが好ましい。以下、かかる画像50をフェードアウト動画と呼ぶ。
【0055】
環状領域CA(1)からCA(3)は、画像50における頭部HDの外部領域(頭部外領域R2)に設定されている。環状領域CA(4)およびCA(5)は、画像50における頭髪HRの領域(頭髪領域R1)上に設定されている。環状領域CA(6)およびCA(7)は、顔FCの一部または全部を包含している。
【0056】
環状領域CA(1)に含まれる画素の明度が一定の倍率(変化比率)で変化すると、当該環状領域CA(1)の内側に隣接する環状領域CA(2)に含まれる画素の明度の変化を開始させる。以下順に環状領域CA(7)まで、各環状領域に含まれる画素の明度を変化させる。更に、環状領域CA(7)の内側の、要注視点RPを含む円形領域(8)の明度を変化させると、第二の視覚刺激VS2の発生が終了する(図2:ステップS40)。
【0057】
以下、オペレータは被験者Sに対して、画像50の画素値を変化させた事実を告知する。被験者Sは、画素値の変化を意識下で認識した位置を、口頭または画像50へのポインティングにより回答する(図2:ステップS60)。
【0058】
ここで、環状領域CAの数は特に限定されないが、これを5以上とすることで、被験者Sの視野を実用的な解像度で測定することができる。また、環状領域CAの数は20以下が好ましい。環状領域CAの数が過大であると、個々の環状領域CAの幅寸法が微小となるため、画像50の外縁から要注視点RPに向かって、画素値が変化する画素が実質的に連続的に進行することとなる。これにより、被験者Sが画素値の変化に気づきにくくなって視野が過小に評価される。これに対し、環状領域CAの数が上記の範囲内であると、個々の環状領域CAが所定の幅寸法をもつため、画素値が変化する領域が要注視点RPに向かって段階的に進行することとなる。これにより、被験者Sは、周辺視野の内側の画素の画素値が変化したことを意識下で好適に認識することができる。
【0059】
視野決定ステップS70では、画素値の変化を被験者Sが最初に認識した環状領域CAを、被験者Sの周辺視野の外縁と定める。具体的には、環状領域CAの幅中心の半径、または環状領域CAの内周縁の半径を、画像50を目視しているときの被験者Sの狭視野の範囲と決定する。
【0060】
(その他の工程)
視野提示ステップS80では、視野決定ステップS70で決定された視野を被験者Sに提示する。ここで、視野を提示するとは、視野の範囲を提示する場合のほか、画像50と被験者Sとの位置関係および上記視野に基づいて算出される視角を提示する場合を含む。
【0061】
(視線追跡)
本方法では、視線取得部20を用いて、視覚刺激VSを目視する被験者Sの視線データVDを取得し、これを視線データ蓄積部30に記憶する(図1を参照)。具体的には、視線取得部20は、被験者Sの頭部に向かって赤外線などの光ビームを照射するとともに、その反射光を受光する。視線取得部20は、受光光を画像化し、画素のコントラストに基づいて被験者Sの瞳孔位置を算出することで、被験者Sの目の位置を検出してその視点位置(視線方向)を数値データまたは画像データとして取得する。
【0062】
画像50を被験者Sに提示(図2:ステップS10)した後に、被験者Sの視線データVDの取得を開始する(図2:ステップS20)。ただし、視線データVDの取得開始のタイミングは図2に限定されるものではなく、視覚刺激VSの発生を開始(図2:ステップS30)した後でもよい。そして、視覚刺激VSの発生を停止(図2:ステップS40)後に、視線データVDの取得を終了する(図2:ステップS50)。
【0063】
被験者Sの視線データVDを取得することにより、視覚刺激VSの発生中に被験者Sが要注視点RPを注目しているか否かを把握することができる。また、視線データVDを用いることで、被験者Sの視野を高精度で測定することができる。以下説明する。
【0064】
図6は、視野決定ステップS70の変形例を示すフローチャートである。視線取得部20が視線データVDを取得すると、視野測定装置100のCPUは、被験者Sの視点位置が要注視点RPから所定の正常範囲内に含まれているか否かを判定(図6:ステップS71)する。被験者Sの視点位置が正常範囲内に収まっていないと判定された場合には(図6:ステップS71=NO)、かかる判定結果を示す報知出力を行うとともに視野測定を中止してもよい。
【0065】
正常の視点位置であると判定された場合には(図6:ステップS71=YES)、視覚刺激VSの発生履歴を示す刺激履歴データと、視線データVDとを時刻情報に基づいて同期させる(図6:ステップS72)。刺激履歴データと視線データVDは、相互に対応づけが可能な時刻情報を共に包含している。これにより、視覚刺激VSの発生位置の座標値と、その瞬間の被験者Sの目視点の座標値との乖離距離が算出される(図6:ステップS73)。
【0066】
オペレータは、被験者Sが意識下で認識した視覚刺激VS(図4の光点1〜8、または図5の環状領域CA)に関する回答を受け付けると(図2:ステップS60)、上記の乖離距離の最大値に基づいて、目視点からの最大距離を算出する(図6:ステップS74)。かかる最大距離を、被験者Sの周辺視野の最大範囲とする。
【0067】
すなわち、視野径算出部70(図1を参照)は、視線データVDと視覚刺激VSの発生位置を示す位置情報とに基づいて、被験者Sが認識した一または複数の視覚刺激VSの発生位置と被験者Sの目視点との最大距離を算出する。そして、この最大距離から被験者Sの視野を決定する。具体的には、視覚刺激VSの発生位置と被験者Sの目視点との最大距離の値を被験者Sの視野半径としてもよい。このほか、被験者Sが認識した視覚刺激VSの発生位置と被験者Sの目視点との距離に関する複数のデータ(距離データ)に対して、所定のエラー判定およびエラー除去をおこなったうえで、残った距離データのうちの最大値を被験者Sの視野半径としてもよい。
【0068】
本方法によれば、被験者Sの視点が無意識のうちに要注視点RPから離間していた場合でも、被験者Sの視野を好適に測定することができる。
【0069】
図7は、本方法の第一変形例に用いる画像(風景画像51)を示す図である。この風景画像51は、人の顔を含まないか、または人の顔を含む場合も被験者Sが注目しない程度に十分に小さい顔であって実質的に人の顔を含まない画像である。風景画像51はカラー画像である。
【0070】
図8は、本方法の第二変形例に用いる画像(無地画像52)を示す図である。無地画像52は、被写体を含まない画像である。無地画像52は、カラー画像でもモノクロ画像でもよい。
【0071】
風景画像51および無地画像52には、要注視点RPと、要注視点RPを中心とする同心円CCが内部的に設定されている。要注視点RPは、風景画像51および無地画像52のそれぞれ中心付近に設定されている。なお、図7および図8では要注視点RPおよび同心円CCを便宜上図示しているが、これらは被験者Sには提示されない。図7および図8の各同心円CC上には、図4の画像50(サブリミナル動画)と同様に光点1〜8が配置されている。すなわち、図7は風景画像51のサブリミナル動画であり、図8は無地画像52のサブリミナル動画である。
【0072】
(参考実験)
上記実施形態およびその第一、第二変形例の画像を用いて、多数の被験者Sの視野を測定した。より具体的には、図7の風景画像51(サブリミナル動画)に加えて、風景画像51のフェードアウト動画を用意した(図示せず)。風景画像51のフェードアウト動画は、図5の画像50と同様に、要注視点RPを中心とする環状領域CAを画成し、遠位にある環状領域CAから近位にある環状領域CAに向かって、各環状領域CAに含まれる画素の画素値を変化させる動画である。また、図8の無地画像52(サブリミナル動画)に関しても、これに加えて、同様にフェードアウト動画を用意した(図示せず)。
【0073】
画像50のサブリミナル動画(図4)およびフェードアウト動画(図5)、風景画像51のサブリミナル動画(図7)およびフェードアウト動画(図示せず)、無地画像52のサブリミナル動画(図8)およびフェードアウト動画(図示せず)を目視対象として、20人の被験者Sの視野を測定した。20人の被験者Sのうち、美容専門家を5人、美容非専門家を15人とした。
【0074】
被験者Sには、画像の中心を目視するように口頭で指示した。画像の中心は、当該画像に表示しない要注視点RPの位置にあたる。この状態で、画像の外周縁から、要注視点RPとの距離が徐々に小さくなるように、視覚刺激VSの発生位置を経時的に変化させた。視覚刺激VSの発生終了後に、被験者Sが意識下で認識した視覚刺激VSの位置に関する回答を取得し、当該位置と要注視点RPとの最大距離に基づいて、被験者Sの視野角を決定した。
【0075】
より具体的には、図4に示すサブリミナル動画において、顔画像50を被験者に提示してから所定時間経過後に光点1を発光させた。そして、光点1、光点2、・・・と次の光点が発光するまでの時間(発光間隔)を2秒として、光点8までを順番に、かつ間欠的に1回ずつ発光させた。したがって、光点1の発光から光点8の発光までの時間は14秒である。光点1から光点8の個々の点灯時間は30ミリ秒とした。すなわち、このサブリミナル動画は、0.03秒の発光と1.97秒の非発光とを繰り返す動画像である。以下、光点1の発光開始から光点8の発光終了までの時間を、サブリミナル動画における刺激提示時間という。
【0076】
図5に示すフェードアウト動画に関しては、顔画像50の提示開始より、環状領域CA(1)から環状領域CA(7)、そして円形領域(8)まで、順番にかつ連続的に、各領域内の画素の明度を20%だけ増大させた。各領域の画素の明度を3秒〜4秒で増大させ、顔画像50の全体の明度を合計約30秒で増大させた。以下、環状領域CA(1)の画素値の変化開始から円形領域(8)の画素値の変化終了までの時間を、フェードアウト動画における刺激提示時間という。
【0077】
図7の風景画像51および図8の無地画像52に関しても、サブリミナル動画とフェードアウト動画における視覚刺激は顔画像50と同様とした。
【0078】
図9は、画像50に関するサブリミナル動画とフェードアウト動画について、各被験者Sの視野角の測定結果をプロットした散布図である。美容専門家の測定結果を円で囲んである。視野角は、被験者Sが視覚刺激を認識した最大範囲FOVを表す頂角θ(図10を参照)である。図4、図5に示す画像50の縦寸法は28.5cm、横寸法は38cm、被験者Sから画像50までの距離を45cmとした。風景画像51および無地画像52に関しても同様とした。
【0079】
図9の結果から、人の顔を含む画像50(顔画像)を目視対象とする場合、サブリミナル動画とフェードアウト動画との相違によらず、美容専門家の視野は美容非専門家の視野に比べて顕著に広いことが分かった。具体的には、サブリミナル動画に対する視野角が40度以上であった5人の被験者Sのうちの4人が美容専門家であった。また、フェードアウト動画に対する視野角が40度以上であった3人の被験者Sは、いずれも美容専門家であった。
【0080】
図11は、風景画像51に関するサブリミナル動画とフェードアウト動画について、各被験者Sの視野角の測定結果をプロットした散布図である。図12は、無地画像52に関するサブリミナル動画とフェードアウト動画について、各被験者Sの視野角の測定結果をプロットした散布図である。
【0081】
図11と図12の結果から、風景画像51と無地画像52を目視対象とする場合は、美容専門家と美容非専門家の視野の広狭に有意な差異は見られなかった。すなわち、被験者Sのうち、美容専門家の視野が美容非専門家の視野よりも医学的に元々広かったわけではなく、顔画像を目視する場合に美容専門家は美容非専門家に比べて視野を広げて顔画像を観察していることが分かった。したがって、美容専門家が美容非専門家に比べて広い視野で人の顔を目視するという傾向は、訓練または経験によって美容専門家が身に付けた能力であることが分かった。
【0082】
また、参考実験の結果から、本方法のように周辺視野における知覚閾下の視覚刺激を被験者Sの周辺視野と視野外とに発生させて視野を測定することにより、目視対象に対する注視の度合いに応じて被験者Sの視野が変化することが好適に確認された。
【0083】
サブリミナル動画に関していえば、美容専門家を含む20人総ての被験者Sの視野角に関しては以下の結果となった。
画像50(顔画像)に対する平均の視野角は33度、風景画像51に対する平均の視野角は41度、無地画像52に対する平均の視野角は45度であった(図9、図11、図12より)。
これに対し、美容専門家5人の被験者Sの視野角は以下の結果となった。画像50(顔画像)に対する平均の視野角は46度、風景画像51に対する平均の視野角は44度、無地画像52に対する平均の視野角は46度であった。
そして、美容非専門家15人の被験者Sの視野角は以下の結果となった。画像50(顔画像)に対する平均の視野角は28度、風景画像51に対する平均の視野角は40度、無地画像52に対する平均の視野角は44度であった。
【0084】
フェードアウト動画に関しては以下の結果となった。
画像50(顔画像)に対する全被験者の平均の視野角は31度、風景画像51に対する平均の視野角は40度、無地画像52に対する平均の視野角は42度であった(図9、図11、図12より)。
これに対し、美容専門家5人の、画像50(顔画像)に対する平均の視野角は39度、風景画像51に対する平均の視野角は42度、無地画像52に対する平均の視野角は44度であった。
そして、美容非専門家15人の、画像50(顔画像)に対する平均の視野角は29度、風景画像51に対する平均の視野角は39度、無地画像52に対する平均の視野角は41度であった。
【0085】
以上の結果より、全体的な傾向として、被験者Sは無地画像52よりも風景画像51を目視している際に視野がやや狭くなることが、本方法により定量的に測定されたといえる。また、美容非専門家は、目視対象が無地画像52の場合と顔画像の場合とで、同程度に広い視野をもっていることが分かった。一方、美容非専門家は、サブリミナル動画およびフェードアウト動画とも、顔画像50を目視する際の視野が、無地画像52を目視する際の視野に対して70%未満になるまで狭視野となっていることが分かった。
【0086】
視覚刺激VSの強さが過剰であると、目視対象にかかわらず、被験者Sの医学的な視野の最大範囲で視覚刺激VSが認識されてしまう。このため、目視対象に応じて被験者Sの視野が微妙に変化したことを定量的に測定するためには、本方法のように、被験者Sの周辺視野における知覚閾下の視覚刺激VSを用いることが好ましい。
【0087】
本方法によれば、被験者Sの医学的な視野と、対象物を目視しているときの視野(狭視野)との比率に基づいて、当該対象物に対する被験者Sの注視度合いを求めることができる。これにより、たとえば車両の運転手が、対象物である前方の走行車両を目視しながら運転している場合に、視野を広く維持して側方の歩行者を認識できているか、または対象物に注視しすぎて側方の歩行者を認識していないか、の度合いを定量的に求めることができる。この場合には、車両の運転中に運転席から見た景観の静止画または動画を画像50として用いるとよい。
【0088】
同様に、被験者Sがスポーツ選手である場合は、競技中に被験者Sから見た景観の動画を画像50に用いるとよい。これにより、被験者Sが対戦相手や器具(ボール等)に対して注視している度合いを求めることができる。また、被験者Sがデザイナーである場合には、デザイン対象物(物品やインテリア等)の静止画や動画を画像50に用いるとよい。これにより、被験者Sがデザイン対象物の細部に注視しているか、またはその全体をバランスよく見ているか、の度合いを定量的に求めることができる。
よって、視野測定装置100および本方法によれば、被験者Sに応じて画像50を種々に変更することにより、様々な状況で広狭に変動する被験者Sの視野の大きさを精度よく測定することができる。さらに、この測定結果に基づいて、被験者Sの視野が現に十分に大きくとられているか、または視野をもっと広くして対象物を目視することが好ましいか、というアドバイスを被験者Sに提供することが可能である。
【0089】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)画像を被験者に提示し、前記被験者の周辺視野における知覚閾下の視覚刺激を前記被験者の前記周辺視野と視野外とに発生させ、前記被験者が認識した前記視覚刺激の発生位置に基づいて前記被験者の視野を測定することを特徴とする視野測定方法;
(2)前記視覚刺激を前記画像上に発生させ、前記画像に定められた要注視点との距離が徐々に小さくなるように前記視覚刺激の発生位置を経時的に変化させることを特徴とする上記(1)に記載の視野測定方法;
(3)前記視覚刺激が、前記被験者の中心視野における閾上刺激である上記(1)または(2)に記載の視野測定方法;
(4)前記視覚刺激が、前記周辺視野における知覚閾下の光度および発光時間で点灯する光点の発光である上記(1)から(3)のいずれかに記載の視野測定方法;
(5)前記画像に定められた要注視点からの距離または方向の少なくとも一方が互いに異なる複数の前記光点を順次点灯させ、前記被験者が前記発光を認識した一または複数の前記光点と前記要注視点との最大距離に基づいて前記視野を決定する上記(4)に記載の視野測定方法;
(6)前記視覚刺激が、前記画像の画素値を前記周辺視野における知覚閾下で時間変化させることによって与えられる上記(1)から(3)のいずれかに記載の視野測定方法;
(7)前記画像に定められた要注視点を囲む異径の複数の環状領域を前記画像に設け、前記環状領域に含まれる画素の画素値を変化させ、前記画素値が変化したことを前記被験者が認識した一または複数の前記環状領域のうちの最大半径に基づいて前記視野を決定する上記(6)に記載の視野測定方法;
(8)前記環状領域に含まれる前記画素の個々の明度を一定倍率で増加させることにより前記画素値を変化させる上記(7)に記載の視野測定方法;
(9)前記画像が対象物を被写体として含み、前記被験者が前記対象物を目視している状態で前記視覚刺激を発生させるとともに、前記視覚刺激の少なくとも一部を前記対象物の外部に発生させることを特徴とする上記(1)から(8)のいずれかに記載の視野測定方法;
(10)前記視覚刺激の発生を前記被験者に予告せずに所定の刺激時間に亘って前記視覚刺激を間欠的または連続的に発生させた後に、前記被験者が認識した前記視覚刺激の発生位置に関する回答を前記被験者から取得する上記(1)から(9)のいずれかに記載の視野測定方法;
(11)前記視覚刺激を間欠的または連続的に発生させている所定の刺激時間に亘って前記被験者の視線方向に関する視線データを取得する上記(1)から(10)のいずれかに記載の視野測定方法;
(12)前記視線データと前記視覚刺激の発生位置を示す位置情報とに基づいて、前記被験者が認識した一または複数の前記視覚刺激の発生位置と前記被験者の目視点との最大距離を算出し、前記最大距離から前記視野を決定する上記(11)に記載の視野測定方法;
(13)画像を被験者に提示する画像提示手段と、前記被験者の周辺視野における知覚閾下の視覚刺激を前記画像に発生させる刺激発生手段と、を備える視野測定装置;
(14)前記被験者の視線方向に関する視線データを取得する視線取得手段をさらに備える上記(13)に記載の視野測定装置;
(15)前記視覚刺激の発生位置を示す位置情報および前記視線データが時刻情報を含み、互いに時刻を同期させた前記視線データと前記位置情報とに基づいて、前記被験者が認識した一または複数の前記視覚刺激の発生位置と前記被験者の目視点との最大距離を算出する視野径算出手段をさらに備える上記(14)に記載の視野測定装置。
【0090】
(付記1)前記視覚刺激を間欠的または連続的に発生させている刺激時間が15秒以上45秒以下である上記の視野測定方法;
(付記2)前記画像提示手段が、複数の異なる前記画像を切り替えて提示可能である上記の視野測定装置。
【0091】
本発明の視野測定方法は、順番に記載された複数の工程を用いて説明される場合があるが、その記載の順番は複数の工程を実行する順番やタイミングを限定するものではない。このため、本発明の視野測定方法を実施するときには、その複数の工程の順番は内容的に支障のない範囲で変更することができ、また複数の工程の実行タイミングの一部または全部が互いに重複していてもよい。
また、本発明の視野測定装置の各種の構成要素は、その機能を実現するように形成されていればよく、たとえば、所定の機能を発揮する専用のハードウェア、所定の機能がコンピュータプログラムにより付与されたデータ処理装置または画像処理装置、コンピュータプログラムによりデータ処理装置または画像処理装置に実現された所定の機能、これらの任意の組み合わせ、等として実現することができる。本発明の視野測定装置の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【符号の説明】
【0092】
1〜8:光点、10:画像提示部、20:視線取得部、30:視線データ蓄積部、50:画像(顔画像)、51:風景画像、52:無地画像、60:刺激発生部、70:視野径算出部、100:視野測定装置、θ:頂角、CA:環状領域、CC:同心円、EY:目、FC:顔、FOV:範囲、HD:頭部、HR:頭髪、OC:外接円、PO:対象物、R1:頭髪領域、R2:頭部外領域、RP:要注視点、S:被験者、VD:視線データ、VS:視覚刺激、VS1:第一の視覚刺激、VS2:第二の視覚刺激
【技術分野】
【0001】
本発明は、視野測定方法および視野測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被験者の視野の広さや視野欠損を測定するための方法や装置が提案されている。視野を測定することで、緑内障などの視覚障害の度合いを調べることができる。また、一般に広い視野が求められるスポーツ競技や自動車の運転を行う被験者に対しては、十分な広さの視野であるか否かを判定することができる。
【0003】
視野とは、網膜の黄斑部の中心にあたる中心窩を基準として、視覚刺激を処理することができる上下左右方向の視角の大きさである。健常者の視野は、垂直方向の上側が60度、下側が75度程度である。水平(左右)方向では、単眼の場合、鼻側が60度、耳側が100度程度である。よって、正面を中心として左右に120度程度の視角は両眼で重複して観察される。このうち、中心窩から20度程度の中央の円形の視野領域を中心視野とよび、その周囲の120度程度までのドーナツ状の視野領域を周辺視野という。一般に中心視野は周辺視野よりも空間分解能が高く、また周辺視野では色覚が失われる。
【0004】
視野は、被検眼を動かさず、視標となる視覚刺激の方を動かして、被験者が認識できる領域の最大範囲を測定して求めることが一般的である。視野の測定方法には、大別して静的視野測定と動的視野測定とがある。静的視野測定は、固定点の輝度を徐々に変化(増加)させながら網膜感度を調べる方法である。動的視野測定は、発光点を移動させて視覚機能を調べる方法である。動的視野測定のうち、視野全体を定量的に測定する方法を動的量的視野測定といい、ゴールドマン視野計を用いることが一般的である。
【0005】
特許文献1には、被験者が視点を固定する固視点(要注視点)を表示し、視標となる発光点を固視点の周囲で渦巻状に移動させる視野測定法が記載されている。この方法では、発光点が視野範囲外から周辺視野に入った瞬間に被験者は発光点の存在を認識する。この瞬間に被験者は押しボタンなどの操作部を操作して、発光点を認識したことを回答する。これにより、被験者の周辺視野の最外位置が取得される。
【0006】
特許文献2には、視覚刺激に対する被験者の目の動きを追尾し、視覚刺激の移動方向に視点が移動した場合に、被験者が視覚刺激を認識したと判定する視野検査システムが記載されている。このシステムによれば、被験者の主観的な回答操作によることなく、被験者が視覚刺激を視認可能な領域を客観的に判定することができるとされている。また、このシステムでは、被験者の現在の視点位置と要注視点との距離に基づいて、次の視覚刺激の表示位置が決定される。
【0007】
特許文献1の視野測定法や特許文献2の視野検査システムは、医学的見地から被験者の視野の最大範囲を測定するものである。このため、特許文献1および特許文献2では、視野外で認識されず周辺視野で問題なく認識される光度の発光点を視覚刺激に用いて、被験者の周辺視野の医学的な最大範囲を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−075350号公報
【特許文献2】特表2010−526623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
人の視野の広狭は、目視対象に強く注目しているか否か、また周辺視野に対して視覚刺激が与えられることを被験者が予測しているか否か、などの心理的要因によって著しく変動する。自動車の運転中に前方の走行車両に注目しすぎると歩行者が認識できなくなったり、球技でボールに注目しすぎると他の競技者の動きが認識できなくなったりする現象は日常的にも経験される。したがって、被験者の周辺視野の医学的な最大範囲ではなく、上記のように心理的要因によって狭くなった視野(以下、狭視野)を測定することは極めて有用である。
【0010】
しかしながら、上記の特許文献1や特許文献2の発明では、視覚刺激の付与が予告された被験者に対して、周辺視野で問題なく認識される十分な光量の視覚刺激が付与されることから、狭視野を定量的に測定することはできない。
【0011】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、心理的要因によって狭くなった被験者の視野を定量的に測定するための方法および装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の視野測定方法は、画像を被験者に提示し、前記被験者の周辺視野における知覚閾下の視覚刺激を前記被験者の前記周辺視野と視野外とに発生させ、前記被験者が認識した前記視覚刺激の発生位置に基づいて前記被験者の視野を測定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の視野測定装置は、画像を被験者に提示する画像提示手段と、前記被験者の周辺視野における知覚閾下の視覚刺激を前記画像に発生させる刺激発生手段と、を備える。
【0014】
上記発明によれば、被験者の周辺視野における知覚閾下の視覚刺激が、提示された画像を目視している被験者の周辺視野と視野外とに発生する。したがって、視覚刺激が被験者の潜在意識下(サブリミナル)で付与されるため、画像に注目して狭視野となっている状態で被験者の視野を測定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、心理的要因によって狭くなった被験者の視野を定量的に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態にかかる視野測定装置の一例を示す構成図である。
【図2】本実施形態にかかる視野測定方法のフローチャートである。
【図3】本実施形態の視野測定方法に用いる画像の一例を示す図である。
【図4】顔画像および第一の視覚刺激を示す図である。
【図5】顔画像および第二の視覚刺激を示す図である。
【図6】視野決定ステップの変形例を示すフローチャートである。
【図7】第一変形例に用いる画像を示す図である。
【図8】第二変形例に用いる画像を示す図である。
【図9】顔画像に関するサブリミナル動画とフェードアウト動画について、各被験者の視野角の測定結果をプロットした散布図である。
【図10】被験者の視野角の説明図である。
【図11】風景画像に関するサブリミナル動画とフェードアウト動画について、各被験者の視野角の測定結果をプロットした散布図である。
【図12】無地画像に関するサブリミナル動画とフェードアウト動画について、各被験者の視野角の測定結果をプロットした散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0018】
(視野測定装置)
図1は、本発明の実施形態にかかる視野測定装置100の一例を示す構成図である。
【0019】
はじめに、本実施形態の概要について説明する。
視野測定装置100は、画像50を被験者Sに提示する画像提示部10と、被験者Sの周辺視野における知覚閾下の視覚刺激VSを画像50に発生させる刺激発生部60と、を備えている。
【0020】
視野測定装置100は、コンピュータプログラムを読み取って対応する処理動作を実行できるように、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)ユニット、等の汎用デバイスで構築されたハードウェア、所定の処理動作を実行するように構築された専用の論理回路、これらの組み合わせ、等で構成されている。
【0021】
画像提示部10は、液晶ディスプレイやスクリーンなどの画像表示装置である。画像提示部10は平面状であってもよく、または半球面状であってもよい。画像提示部10は被験者Sに正対して配置される。画像提示部10には画像50が表示される。被験者Sは、この画像50を目視する。
【0022】
刺激発生部60は、画像提示部10における予め定められた位置に視覚刺激VSを発生させる。刺激発生部60は、CPUおよび記憶装置で構成されている。刺激発生部60が視覚刺激VSを発生させる位置は、位置情報として刺激発生部60に記憶されている。
【0023】
視野測定装置100は、被験者Sの視線方向に関する視線データVDを取得する視線取得部20を備えている。また、視野測定装置100は視線データ蓄積部30をさらに備えている。画像提示部10、視線取得部20、視線データ蓄積部30、刺激発生部60および視野径算出部70は互いに接続されている。
【0024】
視線取得部20は、視覚刺激VSを間欠的または連続的に発生させている所定の刺激時間に亘って被験者Sの視線方向に関する視線データVDを取得する手段である。視線データ蓄積部30は、被験者Sから取得した視線データVDを記憶しておくための記憶手段である。視線取得部20には、眼検知装置(アイカメラ)を用いることができる。一例として、Tobii社製の注視点追跡システム(アイトラッカー)を好適に用いることができる。
【0025】
視覚刺激VSの発生位置を示す位置情報と視線データVDは、時刻情報をともに含んでいる。本実施形態の視野測定装置100は視野径算出部70を備えている。視野径算出部70は、互いに時刻を同期させた視線データVDと、視覚刺激VSが発生した位置情報とに基づいて、被験者Sが認識した一または複数の視覚刺激VSの発生位置と被験者Sの目視点との最大距離を算出する。
【0026】
視線取得部20、視線データ蓄積部30および視野径算出部70による具体的な情報処理に関しては後述する。
【0027】
(視野測定方法)
以下、本実施形態の視野測定装置100を用いて行う視野測定方法(以下、本方法という場合がある)について説明する。図2は本方法のフローチャートである。
【0028】
本方法の概要について説明する。本方法は、画像50を被験者Sに提示し(図2:ステップS10)、この被験者Sの周辺視野における知覚閾下の視覚刺激VSを被験者Sの周辺視野と視野外とに発生させる(図2:ステップS30)。そして、被験者Sが認識した視覚刺激VSの発生位置に基づいて被験者Sの視野を測定する(図2:ステップS70)ことを特徴とする。
【0029】
画像50は、無地画像でもよく、または対象物POを被写体として含む画像でもよい。被写体は、特に限られず、人物、風景、物体および幾何学的模様を例示することができる。画像50には要注視点RPが設定されている。この要注視点RPは、画像50に表示される視標でもよく、または画像50に含まれる被写体の一部もしくは全部を要注視点RPとして設定してもよい。このほか、画像50に表示されない仮想点を要注視点RPに設定してもよい。この場合、要注視点RPは、画像50のうち被験者Sが注目しやすい領域上またはその近傍に設定するとよい。たとえば、画像50が人間の顔を被写体として含む場合は、その目の近傍を要注視点RPにするとよい。このほか、画像50の重心位置を要注視点RPに設定してもよい。
【0030】
本方法では、対象物POを被写体として含む画像50を用いる場合を例示する。
図3は本方法に用いる画像50の一例を示す図である。この画像50は、人間の顔、または人間の顔と認識できる対象物を、被写体として含む画像(顔画像)である。人は、人間の顔を目視する際に狭視野になりやすく、また顔のうち目の近傍に本能的に注目することが本発明者の検討により明らかとなっている。したがって、画像50として顔画像を用いることで、被験者Sの視野が特に心理的に狭くなりやすい特殊な状況を形成することができる。かかる画像50に視覚刺激VSを発生させて被験者Sの視野を測定することで、被験者Sが狭視野となっているときの視野範囲を好適に判定することができる。
【0031】
なお、本方法でいう顔画像とは、人間の頭部を被写体に含む画像のほか、人間の頭部を模した人形を被写体とする画像、および人間の頭部を模したコンピュータグラフィクスを含む。
【0032】
本方法では、視覚刺激VSを、画像50における頭髪HRの領域(頭髪領域R1)上、および顔FCと頭髪HRを含む頭部HDの外部領域(頭部外領域R2)上に発生させる。視覚刺激VSを更に顔FCの領域上に発生させてもよい。
【0033】
要注視点RPは、画像50における両目の間または目EYの近傍に設定されている。本方法における目EYの近傍とは、画像50における両目の外接円OCの内部、またはこの外接円OC上を意味する。本実施形態の要注視点RPは、画像50における両目の間に設定されている。要注視点RPは、画像50に表示される視標である。
【0034】
そして本方法では、被験者Sが対象物POを目視している状態で視覚刺激VSを発生させるとともに、この視覚刺激VSの少なくとも一部を対象物POの外部に発生させる。被験者Sが対象物POを凝視している場合、一般にその周辺視野は対象物POの外縁程度まで狭まる。逆に被験者Sが対象物POを全体観察している場合、その周辺視野は対象物POの外部まで及びやすい。したがって、視覚刺激VSを対象物POの外部に発生させ、それを被験者Sが視野(周辺視野)で捉えることができるか否かを測定することで、被験者Sが対象物POを凝視する傾向があるかどうかを判定することが可能である。
【0035】
ここで、人の中心視野は空間分解能および時間分解能が高く、知覚閾値が低い。周辺視野は、中心視野よりも空間分解能および時間分解能が低く、知覚閾値は中心視野よりも高くなる。本方法では、周辺視野における知覚閾値よりも低い視覚刺激VSを、被験者Sの周辺視野と視野外とに発生させる。視覚刺激VSは、被験者Sの周辺視野における閾下(サブリミナル)刺激である。したがって、被験者Sは、視野外に発生した視覚刺激VSを認識せず、周辺視野に発生した視覚刺激VSを無意識下で認識する。
【0036】
なお、視覚刺激VSの刺激強度は、被験者Sの中心視野における閾上(スプリミナル)刺激であってもよく、または中心視野における閾下(サブリミナル)刺激であってもよい。
【0037】
刺激発生部60は、視野外および周辺視野に加えて、視覚刺激VSを被験者の中心視野に発生させてもよい。ただし、中心視野における閾上(スプリミナル)刺激の視覚刺激VSを中心視野に発生させると、被験者Sは当該視覚刺激VSを意識下で察知して、要注視点RPに注目する心理が緩和される。したがって、中心視野に視覚刺激VSを発生させる場合は、視覚刺激VSの刺激強度を中心視野における閾下とするか、または、視野外および周辺視野に所定回数の視覚刺激VSを発生させた後に、中心視野に視覚刺激VSを発生させるようにすることが好ましい。これにより、被験者Sが要注視点RPに注目している状態における周辺視野の範囲を、被験者Sの無意識下で測定することができる。
【0038】
同様の理由により、視覚刺激VSの発生を被験者Sに予告せずに所定の刺激時間に亘って視覚刺激VSを間欠的または連続的に発生させた後に、被験者Sが認識した視覚刺激VSの発生位置に関する回答を被験者Sから取得するとよい。これにより、被験者Sが画像50の要注視点RPに本能的に注目して狭視野となっている状態を維持したままで被験者Sの視野を測定することが可能である。具体的には、被験者Sからの回答に基づいて、要注視点RPからの距離がどの程度までの視覚刺激VSを被験者Sが認識したかを分析することで、画像50を目視している状態における被験者Sの周辺視野の最大範囲を判定することができる。
【0039】
本方法で画像50に発生させる視覚刺激VSの具体的な態様は特に限定されないが、視覚刺激VSを画像50上に発生させ、画像50に定められた要注視点RPとの距離が徐々に小さくなるように視覚刺激VSの発生位置を経時的に変化させるとよい。これにより、測定の当初は被験者Sの視野外に視覚刺激VSが発生するため被験者Sは視覚刺激VSの発生事実に気づかない。このため、視覚刺激VSが被験者Sの周辺視野内で発生した際に、この刺激を被験者Sは意識下で認識することになる。よって、被験者Sが画像50を自然に目視している状態における視野範囲を測定することができる。
【0040】
視覚刺激VSは、点もしくは点とみなしうる微小領域でもよく、または線もしくは面の領域でもよい。視覚刺激VSの形状は特に限定されない。
【0041】
画像50における顔FCの大きさは、一般的な成人の顔と略同等の大きさであることが好ましい。これにより、被験者Sが画像50を目視した場合の視野が、実際の人間を被験者Sが目視した場合の視野と略同等となる。
【0042】
ここで、画像50に視覚刺激VSを発生させるとは、被験者Sが画像50を目視したときに視覚刺激VSが画像50に重畳された状態に視認されるようにすることをいう。具体的な例としては、画像50における一または複数の画素の明度もしくは色成分と、その周囲の画素の明度もしくは色成分との比または逆比が所定以上となるように当該画素の画素値を変化させることが挙げられる。このほか、視覚刺激VSは、画像50の表面上または画像50と被験者Sの被検眼との空間的な間隙に配置された、発光体などの視標でもよい。
【0043】
以下、本方法では二通りの視覚刺激VSを例示する。第一の視覚刺激VS1は光点の瞬間的な発光である。かかる光点の光度および発光時間を所定以下にすることで、第一の視覚刺激VS1の刺激強度を被験者Sの周辺視野における知覚閾下に抑制することができる。第二の視覚刺激VS2は、画像50の画素値の変化である。各画素における画素値の変化速度を所定以下とし、また画素値を変化させる領域の移動速度を所定以下とすることで、第二の視覚刺激VS2の刺激強度を被験者Sの周辺視野における知覚閾下に抑制することができる。
【0044】
本実施形態の視野測定装置100においては、オペレータによる操作部(図示せず)の操作により、視覚刺激VSの態様(モード)が選択される(図2:ステップS10)。
【0045】
ステップS10において、被験者Sに対する画像50の提示タイミングと刺激モードの選択タイミングとの先後は任意である。さらに、視覚刺激VSの発生(ステップS30)の開始タイミングと、画像50を被験者Sに提示するタイミングの先後も任意である。すなわち本方法においては、被験者Sに画像50を提示した後に視覚刺激VSの発生を開始してもよく、または視覚刺激VSの発生が既に開始している画像50を被験者Sに提示してもよい。
【0046】
(第一の視覚刺激)
図4は、画像50および第一の視覚刺激VS1を示す図である。図4に示す第一の視覚刺激VS1は、上記のように、被験者Sの周辺視野における知覚閾下の光度および発光時間で点灯する光点1〜8(白丸で図示)の発光である。より具体的には、要注視点RPからの距離または方向の少なくとも一方が互いに異なる複数の光点1〜8を順次点灯させ、被験者Sがその発光を認識した一または複数の光点1〜8と要注視点RPとの最大距離に基づいて被験者Sの視野を決定する。
【0047】
図4には、要注視点RPを中心とする同心円CCを便宜上図示しているが、かかる同心円CCは被験者Sに提示されない。光点1〜8は、異なる径の同心円CC上にそれぞれ配置されている。光点1〜8のうち番号が小さいものほど、大径の同心円CC上に配置されている。したがって、光点1〜8を番号順に、かつ間欠的に発光させることで、あたかも画像50の外縁から要注視点RPに向かって縮径する螺旋状に光点が移動するように視認される第一の視覚刺激VS1が発生する。かかる光点の移動方向は、螺旋状に限らず、直線状でもよく、またはランダムでもよい。
【0048】
オペレータは、被験者Sに対して、画像50の目EYまたは要注視点RPに注目するよう指示する。被験者Sが目EYまたは要注視点RPに視線をあわせている間に、光点1を短時間(単発光時間)に亘って発光させる。かかる発光は点灯でも点滅でもよい。単発光時間は、1ミリ秒以上100ミリ秒未満が好ましく、10ミリ秒以上50ミリ秒以下が更に好ましい。発光時間が過小であると被験者Sによっては視野が過小に評価され、発光時間が過大であると被験者Sによっては第一の視覚刺激VS1が周辺視野における閾上刺激となる場合がある。上記範囲の単発光時間とすることで、光点1〜8の発光は被験者Sの閾下(サブリミナル)刺激となる。以下、かかる画像50をサブリミナル動画と呼ぶ。
【0049】
光点1〜8の一部(光点1〜4)は画像50における頭部HDの外部領域(頭部外領域R2)に設定されている。光点1〜8の他の一部(光点5〜7)は、画像50における頭髪HRの領域(頭髪領域R1)上に設定されている。光点1〜8の更に他の一部(光点8)は、画像50における顔FCの領域上に設定されている。光点8は一般的な被験者Sの中心視野に含まれる。
【0050】
光点1〜8の発光が終了すると(図2:ステップS40)、オペレータは被験者Sに対して、一以上の光点を発光させた事実を告知する。被験者Sは、意識下で認識した発光の位置を、口頭または画像50へのポインティングにより回答する(図2:ステップS60)。本方法において、総ての光点1〜8の位置は、要注視点RPを中心として異なる方向にある。言い換えると、要注視点RPを基端として光点1〜8を先端とする個々のベクトル(図示せず)は互いに一致しない。このため、被験者Sは、発光を認識した光点の位置のみならず、要注視点RPを基端とする光点の方向を回答してもよい。これにより、被験者Sが認識した光点1〜8を一意に識別することができる。
【0051】
視野決定ステップS70では、被験者Sが認識した光点(たとえば、光点6〜8)のうち、要注視点RPからの距離が最大であるもの(光点6)を、被験者Sの周辺視野の外縁と定める。そして、当該光点(光点6)が載る同心円CCの半径を、画像50を目視しているときの被験者Sの狭視野の範囲と決定する。
【0052】
(第二の視覚刺激)
図5は、画像50および第二の視覚刺激VS2を示す図である。図5に示す第二の視覚刺激VS2は、画像50の画素値を変化させることによって与えられる動画像である。具体的には、要注視点RPを囲む異径の複数の環状領域CAを画像50に設ける。環状領域CAに含まれる画素の画素値を、周辺視野における知覚閾下で時間変化させる。そして、画素値が変化したことを被験者Sが認識した一または複数の環状領域CAのうちの最大半径に基づいて視野を決定する。
【0053】
図5にも、要注視点RPを中心とする同心円CCが便宜上図示されているが、かかる同心円CCは被験者Sに提示されない。環状領域CAは、同心円CCで隔てられた領域であり、多数の画素を包含している。図中の(1)〜(7)の数字は、要注視点RPを中心として、遠位にある環状領域CA(1)から近位にある環状領域CA(7)、さらに中心の円形領域(8)に向かって順に符号を付したものである。
【0054】
オペレータは、被験者Sに対して、画像50の目EYまたは要注視点RPに注目するように指示する。被験者Sが目EYまたは要注視点RPに視線をあわせている間に、環状領域CA(1)に含まれる画素の画素値を変化させる。本方法では、変化前の画素の個々の明度を一定倍率(変化比率)だけ増大させることにより画素値を変化させる。この変化比率が過小であると、被験者Sによっては画素値の変化を知得することができず視野が過小に評価される。また、変化比率が過大であると被験者Sによっては第二の視覚刺激VS2が周辺視野における閾上刺激となる場合がある。本方法では、環状領域CAに含まれる画素の明度または輝度を、10%以上50%未満の増加率にて増大させることが好ましい。以下、かかる画像50をフェードアウト動画と呼ぶ。
【0055】
環状領域CA(1)からCA(3)は、画像50における頭部HDの外部領域(頭部外領域R2)に設定されている。環状領域CA(4)およびCA(5)は、画像50における頭髪HRの領域(頭髪領域R1)上に設定されている。環状領域CA(6)およびCA(7)は、顔FCの一部または全部を包含している。
【0056】
環状領域CA(1)に含まれる画素の明度が一定の倍率(変化比率)で変化すると、当該環状領域CA(1)の内側に隣接する環状領域CA(2)に含まれる画素の明度の変化を開始させる。以下順に環状領域CA(7)まで、各環状領域に含まれる画素の明度を変化させる。更に、環状領域CA(7)の内側の、要注視点RPを含む円形領域(8)の明度を変化させると、第二の視覚刺激VS2の発生が終了する(図2:ステップS40)。
【0057】
以下、オペレータは被験者Sに対して、画像50の画素値を変化させた事実を告知する。被験者Sは、画素値の変化を意識下で認識した位置を、口頭または画像50へのポインティングにより回答する(図2:ステップS60)。
【0058】
ここで、環状領域CAの数は特に限定されないが、これを5以上とすることで、被験者Sの視野を実用的な解像度で測定することができる。また、環状領域CAの数は20以下が好ましい。環状領域CAの数が過大であると、個々の環状領域CAの幅寸法が微小となるため、画像50の外縁から要注視点RPに向かって、画素値が変化する画素が実質的に連続的に進行することとなる。これにより、被験者Sが画素値の変化に気づきにくくなって視野が過小に評価される。これに対し、環状領域CAの数が上記の範囲内であると、個々の環状領域CAが所定の幅寸法をもつため、画素値が変化する領域が要注視点RPに向かって段階的に進行することとなる。これにより、被験者Sは、周辺視野の内側の画素の画素値が変化したことを意識下で好適に認識することができる。
【0059】
視野決定ステップS70では、画素値の変化を被験者Sが最初に認識した環状領域CAを、被験者Sの周辺視野の外縁と定める。具体的には、環状領域CAの幅中心の半径、または環状領域CAの内周縁の半径を、画像50を目視しているときの被験者Sの狭視野の範囲と決定する。
【0060】
(その他の工程)
視野提示ステップS80では、視野決定ステップS70で決定された視野を被験者Sに提示する。ここで、視野を提示するとは、視野の範囲を提示する場合のほか、画像50と被験者Sとの位置関係および上記視野に基づいて算出される視角を提示する場合を含む。
【0061】
(視線追跡)
本方法では、視線取得部20を用いて、視覚刺激VSを目視する被験者Sの視線データVDを取得し、これを視線データ蓄積部30に記憶する(図1を参照)。具体的には、視線取得部20は、被験者Sの頭部に向かって赤外線などの光ビームを照射するとともに、その反射光を受光する。視線取得部20は、受光光を画像化し、画素のコントラストに基づいて被験者Sの瞳孔位置を算出することで、被験者Sの目の位置を検出してその視点位置(視線方向)を数値データまたは画像データとして取得する。
【0062】
画像50を被験者Sに提示(図2:ステップS10)した後に、被験者Sの視線データVDの取得を開始する(図2:ステップS20)。ただし、視線データVDの取得開始のタイミングは図2に限定されるものではなく、視覚刺激VSの発生を開始(図2:ステップS30)した後でもよい。そして、視覚刺激VSの発生を停止(図2:ステップS40)後に、視線データVDの取得を終了する(図2:ステップS50)。
【0063】
被験者Sの視線データVDを取得することにより、視覚刺激VSの発生中に被験者Sが要注視点RPを注目しているか否かを把握することができる。また、視線データVDを用いることで、被験者Sの視野を高精度で測定することができる。以下説明する。
【0064】
図6は、視野決定ステップS70の変形例を示すフローチャートである。視線取得部20が視線データVDを取得すると、視野測定装置100のCPUは、被験者Sの視点位置が要注視点RPから所定の正常範囲内に含まれているか否かを判定(図6:ステップS71)する。被験者Sの視点位置が正常範囲内に収まっていないと判定された場合には(図6:ステップS71=NO)、かかる判定結果を示す報知出力を行うとともに視野測定を中止してもよい。
【0065】
正常の視点位置であると判定された場合には(図6:ステップS71=YES)、視覚刺激VSの発生履歴を示す刺激履歴データと、視線データVDとを時刻情報に基づいて同期させる(図6:ステップS72)。刺激履歴データと視線データVDは、相互に対応づけが可能な時刻情報を共に包含している。これにより、視覚刺激VSの発生位置の座標値と、その瞬間の被験者Sの目視点の座標値との乖離距離が算出される(図6:ステップS73)。
【0066】
オペレータは、被験者Sが意識下で認識した視覚刺激VS(図4の光点1〜8、または図5の環状領域CA)に関する回答を受け付けると(図2:ステップS60)、上記の乖離距離の最大値に基づいて、目視点からの最大距離を算出する(図6:ステップS74)。かかる最大距離を、被験者Sの周辺視野の最大範囲とする。
【0067】
すなわち、視野径算出部70(図1を参照)は、視線データVDと視覚刺激VSの発生位置を示す位置情報とに基づいて、被験者Sが認識した一または複数の視覚刺激VSの発生位置と被験者Sの目視点との最大距離を算出する。そして、この最大距離から被験者Sの視野を決定する。具体的には、視覚刺激VSの発生位置と被験者Sの目視点との最大距離の値を被験者Sの視野半径としてもよい。このほか、被験者Sが認識した視覚刺激VSの発生位置と被験者Sの目視点との距離に関する複数のデータ(距離データ)に対して、所定のエラー判定およびエラー除去をおこなったうえで、残った距離データのうちの最大値を被験者Sの視野半径としてもよい。
【0068】
本方法によれば、被験者Sの視点が無意識のうちに要注視点RPから離間していた場合でも、被験者Sの視野を好適に測定することができる。
【0069】
図7は、本方法の第一変形例に用いる画像(風景画像51)を示す図である。この風景画像51は、人の顔を含まないか、または人の顔を含む場合も被験者Sが注目しない程度に十分に小さい顔であって実質的に人の顔を含まない画像である。風景画像51はカラー画像である。
【0070】
図8は、本方法の第二変形例に用いる画像(無地画像52)を示す図である。無地画像52は、被写体を含まない画像である。無地画像52は、カラー画像でもモノクロ画像でもよい。
【0071】
風景画像51および無地画像52には、要注視点RPと、要注視点RPを中心とする同心円CCが内部的に設定されている。要注視点RPは、風景画像51および無地画像52のそれぞれ中心付近に設定されている。なお、図7および図8では要注視点RPおよび同心円CCを便宜上図示しているが、これらは被験者Sには提示されない。図7および図8の各同心円CC上には、図4の画像50(サブリミナル動画)と同様に光点1〜8が配置されている。すなわち、図7は風景画像51のサブリミナル動画であり、図8は無地画像52のサブリミナル動画である。
【0072】
(参考実験)
上記実施形態およびその第一、第二変形例の画像を用いて、多数の被験者Sの視野を測定した。より具体的には、図7の風景画像51(サブリミナル動画)に加えて、風景画像51のフェードアウト動画を用意した(図示せず)。風景画像51のフェードアウト動画は、図5の画像50と同様に、要注視点RPを中心とする環状領域CAを画成し、遠位にある環状領域CAから近位にある環状領域CAに向かって、各環状領域CAに含まれる画素の画素値を変化させる動画である。また、図8の無地画像52(サブリミナル動画)に関しても、これに加えて、同様にフェードアウト動画を用意した(図示せず)。
【0073】
画像50のサブリミナル動画(図4)およびフェードアウト動画(図5)、風景画像51のサブリミナル動画(図7)およびフェードアウト動画(図示せず)、無地画像52のサブリミナル動画(図8)およびフェードアウト動画(図示せず)を目視対象として、20人の被験者Sの視野を測定した。20人の被験者Sのうち、美容専門家を5人、美容非専門家を15人とした。
【0074】
被験者Sには、画像の中心を目視するように口頭で指示した。画像の中心は、当該画像に表示しない要注視点RPの位置にあたる。この状態で、画像の外周縁から、要注視点RPとの距離が徐々に小さくなるように、視覚刺激VSの発生位置を経時的に変化させた。視覚刺激VSの発生終了後に、被験者Sが意識下で認識した視覚刺激VSの位置に関する回答を取得し、当該位置と要注視点RPとの最大距離に基づいて、被験者Sの視野角を決定した。
【0075】
より具体的には、図4に示すサブリミナル動画において、顔画像50を被験者に提示してから所定時間経過後に光点1を発光させた。そして、光点1、光点2、・・・と次の光点が発光するまでの時間(発光間隔)を2秒として、光点8までを順番に、かつ間欠的に1回ずつ発光させた。したがって、光点1の発光から光点8の発光までの時間は14秒である。光点1から光点8の個々の点灯時間は30ミリ秒とした。すなわち、このサブリミナル動画は、0.03秒の発光と1.97秒の非発光とを繰り返す動画像である。以下、光点1の発光開始から光点8の発光終了までの時間を、サブリミナル動画における刺激提示時間という。
【0076】
図5に示すフェードアウト動画に関しては、顔画像50の提示開始より、環状領域CA(1)から環状領域CA(7)、そして円形領域(8)まで、順番にかつ連続的に、各領域内の画素の明度を20%だけ増大させた。各領域の画素の明度を3秒〜4秒で増大させ、顔画像50の全体の明度を合計約30秒で増大させた。以下、環状領域CA(1)の画素値の変化開始から円形領域(8)の画素値の変化終了までの時間を、フェードアウト動画における刺激提示時間という。
【0077】
図7の風景画像51および図8の無地画像52に関しても、サブリミナル動画とフェードアウト動画における視覚刺激は顔画像50と同様とした。
【0078】
図9は、画像50に関するサブリミナル動画とフェードアウト動画について、各被験者Sの視野角の測定結果をプロットした散布図である。美容専門家の測定結果を円で囲んである。視野角は、被験者Sが視覚刺激を認識した最大範囲FOVを表す頂角θ(図10を参照)である。図4、図5に示す画像50の縦寸法は28.5cm、横寸法は38cm、被験者Sから画像50までの距離を45cmとした。風景画像51および無地画像52に関しても同様とした。
【0079】
図9の結果から、人の顔を含む画像50(顔画像)を目視対象とする場合、サブリミナル動画とフェードアウト動画との相違によらず、美容専門家の視野は美容非専門家の視野に比べて顕著に広いことが分かった。具体的には、サブリミナル動画に対する視野角が40度以上であった5人の被験者Sのうちの4人が美容専門家であった。また、フェードアウト動画に対する視野角が40度以上であった3人の被験者Sは、いずれも美容専門家であった。
【0080】
図11は、風景画像51に関するサブリミナル動画とフェードアウト動画について、各被験者Sの視野角の測定結果をプロットした散布図である。図12は、無地画像52に関するサブリミナル動画とフェードアウト動画について、各被験者Sの視野角の測定結果をプロットした散布図である。
【0081】
図11と図12の結果から、風景画像51と無地画像52を目視対象とする場合は、美容専門家と美容非専門家の視野の広狭に有意な差異は見られなかった。すなわち、被験者Sのうち、美容専門家の視野が美容非専門家の視野よりも医学的に元々広かったわけではなく、顔画像を目視する場合に美容専門家は美容非専門家に比べて視野を広げて顔画像を観察していることが分かった。したがって、美容専門家が美容非専門家に比べて広い視野で人の顔を目視するという傾向は、訓練または経験によって美容専門家が身に付けた能力であることが分かった。
【0082】
また、参考実験の結果から、本方法のように周辺視野における知覚閾下の視覚刺激を被験者Sの周辺視野と視野外とに発生させて視野を測定することにより、目視対象に対する注視の度合いに応じて被験者Sの視野が変化することが好適に確認された。
【0083】
サブリミナル動画に関していえば、美容専門家を含む20人総ての被験者Sの視野角に関しては以下の結果となった。
画像50(顔画像)に対する平均の視野角は33度、風景画像51に対する平均の視野角は41度、無地画像52に対する平均の視野角は45度であった(図9、図11、図12より)。
これに対し、美容専門家5人の被験者Sの視野角は以下の結果となった。画像50(顔画像)に対する平均の視野角は46度、風景画像51に対する平均の視野角は44度、無地画像52に対する平均の視野角は46度であった。
そして、美容非専門家15人の被験者Sの視野角は以下の結果となった。画像50(顔画像)に対する平均の視野角は28度、風景画像51に対する平均の視野角は40度、無地画像52に対する平均の視野角は44度であった。
【0084】
フェードアウト動画に関しては以下の結果となった。
画像50(顔画像)に対する全被験者の平均の視野角は31度、風景画像51に対する平均の視野角は40度、無地画像52に対する平均の視野角は42度であった(図9、図11、図12より)。
これに対し、美容専門家5人の、画像50(顔画像)に対する平均の視野角は39度、風景画像51に対する平均の視野角は42度、無地画像52に対する平均の視野角は44度であった。
そして、美容非専門家15人の、画像50(顔画像)に対する平均の視野角は29度、風景画像51に対する平均の視野角は39度、無地画像52に対する平均の視野角は41度であった。
【0085】
以上の結果より、全体的な傾向として、被験者Sは無地画像52よりも風景画像51を目視している際に視野がやや狭くなることが、本方法により定量的に測定されたといえる。また、美容非専門家は、目視対象が無地画像52の場合と顔画像の場合とで、同程度に広い視野をもっていることが分かった。一方、美容非専門家は、サブリミナル動画およびフェードアウト動画とも、顔画像50を目視する際の視野が、無地画像52を目視する際の視野に対して70%未満になるまで狭視野となっていることが分かった。
【0086】
視覚刺激VSの強さが過剰であると、目視対象にかかわらず、被験者Sの医学的な視野の最大範囲で視覚刺激VSが認識されてしまう。このため、目視対象に応じて被験者Sの視野が微妙に変化したことを定量的に測定するためには、本方法のように、被験者Sの周辺視野における知覚閾下の視覚刺激VSを用いることが好ましい。
【0087】
本方法によれば、被験者Sの医学的な視野と、対象物を目視しているときの視野(狭視野)との比率に基づいて、当該対象物に対する被験者Sの注視度合いを求めることができる。これにより、たとえば車両の運転手が、対象物である前方の走行車両を目視しながら運転している場合に、視野を広く維持して側方の歩行者を認識できているか、または対象物に注視しすぎて側方の歩行者を認識していないか、の度合いを定量的に求めることができる。この場合には、車両の運転中に運転席から見た景観の静止画または動画を画像50として用いるとよい。
【0088】
同様に、被験者Sがスポーツ選手である場合は、競技中に被験者Sから見た景観の動画を画像50に用いるとよい。これにより、被験者Sが対戦相手や器具(ボール等)に対して注視している度合いを求めることができる。また、被験者Sがデザイナーである場合には、デザイン対象物(物品やインテリア等)の静止画や動画を画像50に用いるとよい。これにより、被験者Sがデザイン対象物の細部に注視しているか、またはその全体をバランスよく見ているか、の度合いを定量的に求めることができる。
よって、視野測定装置100および本方法によれば、被験者Sに応じて画像50を種々に変更することにより、様々な状況で広狭に変動する被験者Sの視野の大きさを精度よく測定することができる。さらに、この測定結果に基づいて、被験者Sの視野が現に十分に大きくとられているか、または視野をもっと広くして対象物を目視することが好ましいか、というアドバイスを被験者Sに提供することが可能である。
【0089】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)画像を被験者に提示し、前記被験者の周辺視野における知覚閾下の視覚刺激を前記被験者の前記周辺視野と視野外とに発生させ、前記被験者が認識した前記視覚刺激の発生位置に基づいて前記被験者の視野を測定することを特徴とする視野測定方法;
(2)前記視覚刺激を前記画像上に発生させ、前記画像に定められた要注視点との距離が徐々に小さくなるように前記視覚刺激の発生位置を経時的に変化させることを特徴とする上記(1)に記載の視野測定方法;
(3)前記視覚刺激が、前記被験者の中心視野における閾上刺激である上記(1)または(2)に記載の視野測定方法;
(4)前記視覚刺激が、前記周辺視野における知覚閾下の光度および発光時間で点灯する光点の発光である上記(1)から(3)のいずれかに記載の視野測定方法;
(5)前記画像に定められた要注視点からの距離または方向の少なくとも一方が互いに異なる複数の前記光点を順次点灯させ、前記被験者が前記発光を認識した一または複数の前記光点と前記要注視点との最大距離に基づいて前記視野を決定する上記(4)に記載の視野測定方法;
(6)前記視覚刺激が、前記画像の画素値を前記周辺視野における知覚閾下で時間変化させることによって与えられる上記(1)から(3)のいずれかに記載の視野測定方法;
(7)前記画像に定められた要注視点を囲む異径の複数の環状領域を前記画像に設け、前記環状領域に含まれる画素の画素値を変化させ、前記画素値が変化したことを前記被験者が認識した一または複数の前記環状領域のうちの最大半径に基づいて前記視野を決定する上記(6)に記載の視野測定方法;
(8)前記環状領域に含まれる前記画素の個々の明度を一定倍率で増加させることにより前記画素値を変化させる上記(7)に記載の視野測定方法;
(9)前記画像が対象物を被写体として含み、前記被験者が前記対象物を目視している状態で前記視覚刺激を発生させるとともに、前記視覚刺激の少なくとも一部を前記対象物の外部に発生させることを特徴とする上記(1)から(8)のいずれかに記載の視野測定方法;
(10)前記視覚刺激の発生を前記被験者に予告せずに所定の刺激時間に亘って前記視覚刺激を間欠的または連続的に発生させた後に、前記被験者が認識した前記視覚刺激の発生位置に関する回答を前記被験者から取得する上記(1)から(9)のいずれかに記載の視野測定方法;
(11)前記視覚刺激を間欠的または連続的に発生させている所定の刺激時間に亘って前記被験者の視線方向に関する視線データを取得する上記(1)から(10)のいずれかに記載の視野測定方法;
(12)前記視線データと前記視覚刺激の発生位置を示す位置情報とに基づいて、前記被験者が認識した一または複数の前記視覚刺激の発生位置と前記被験者の目視点との最大距離を算出し、前記最大距離から前記視野を決定する上記(11)に記載の視野測定方法;
(13)画像を被験者に提示する画像提示手段と、前記被験者の周辺視野における知覚閾下の視覚刺激を前記画像に発生させる刺激発生手段と、を備える視野測定装置;
(14)前記被験者の視線方向に関する視線データを取得する視線取得手段をさらに備える上記(13)に記載の視野測定装置;
(15)前記視覚刺激の発生位置を示す位置情報および前記視線データが時刻情報を含み、互いに時刻を同期させた前記視線データと前記位置情報とに基づいて、前記被験者が認識した一または複数の前記視覚刺激の発生位置と前記被験者の目視点との最大距離を算出する視野径算出手段をさらに備える上記(14)に記載の視野測定装置。
【0090】
(付記1)前記視覚刺激を間欠的または連続的に発生させている刺激時間が15秒以上45秒以下である上記の視野測定方法;
(付記2)前記画像提示手段が、複数の異なる前記画像を切り替えて提示可能である上記の視野測定装置。
【0091】
本発明の視野測定方法は、順番に記載された複数の工程を用いて説明される場合があるが、その記載の順番は複数の工程を実行する順番やタイミングを限定するものではない。このため、本発明の視野測定方法を実施するときには、その複数の工程の順番は内容的に支障のない範囲で変更することができ、また複数の工程の実行タイミングの一部または全部が互いに重複していてもよい。
また、本発明の視野測定装置の各種の構成要素は、その機能を実現するように形成されていればよく、たとえば、所定の機能を発揮する専用のハードウェア、所定の機能がコンピュータプログラムにより付与されたデータ処理装置または画像処理装置、コンピュータプログラムによりデータ処理装置または画像処理装置に実現された所定の機能、これらの任意の組み合わせ、等として実現することができる。本発明の視野測定装置の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【符号の説明】
【0092】
1〜8:光点、10:画像提示部、20:視線取得部、30:視線データ蓄積部、50:画像(顔画像)、51:風景画像、52:無地画像、60:刺激発生部、70:視野径算出部、100:視野測定装置、θ:頂角、CA:環状領域、CC:同心円、EY:目、FC:顔、FOV:範囲、HD:頭部、HR:頭髪、OC:外接円、PO:対象物、R1:頭髪領域、R2:頭部外領域、RP:要注視点、S:被験者、VD:視線データ、VS:視覚刺激、VS1:第一の視覚刺激、VS2:第二の視覚刺激
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を被験者に提示し、前記被験者の周辺視野における知覚閾下の視覚刺激を前記被験者の前記周辺視野と視野外とに発生させ、前記被験者が認識した前記視覚刺激の発生位置に基づいて前記被験者の視野を測定することを特徴とする視野測定方法。
【請求項2】
前記視覚刺激を前記画像上に発生させ、前記画像に定められた要注視点との距離が徐々に小さくなるように前記視覚刺激の発生位置を経時的に変化させることを特徴とする請求項1に記載の視野測定方法。
【請求項3】
前記視覚刺激が、前記被験者の中心視野における閾上刺激である請求項1または2に記載の視野測定方法。
【請求項4】
前記視覚刺激が、前記周辺視野における知覚閾下の光度および発光時間で点灯する光点の発光である請求項1から3のいずれか一項に記載の視野測定方法。
【請求項5】
前記画像に定められた要注視点からの距離または方向の少なくとも一方が互いに異なる複数の前記光点を順次点灯させ、
前記被験者が前記発光を認識した一または複数の前記光点と前記要注視点との最大距離に基づいて前記視野を決定する請求項4に記載の視野測定方法。
【請求項6】
前記視覚刺激が、前記画像の画素値を前記周辺視野における知覚閾下で時間変化させることによって与えられる請求項1から3のいずれか一項に記載の視野測定方法。
【請求項7】
前記画像に定められた要注視点を囲む異径の複数の環状領域を前記画像に設け、前記環状領域に含まれる画素の画素値を変化させ、前記画素値が変化したことを前記被験者が認識した一または複数の前記環状領域のうちの最大半径に基づいて前記視野を決定する請求項6に記載の視野測定方法。
【請求項8】
前記環状領域に含まれる前記画素の個々の明度を一定倍率で増加させることにより前記画素値を変化させる請求項7に記載の視野測定方法。
【請求項9】
前記画像が対象物を被写体として含み、
前記被験者が前記対象物を目視している状態で前記視覚刺激を発生させるとともに、前記視覚刺激の少なくとも一部を前記対象物の外部に発生させることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の視野測定方法。
【請求項10】
前記視覚刺激の発生を前記被験者に予告せずに所定の刺激時間に亘って前記視覚刺激を間欠的または連続的に発生させた後に、前記被験者が認識した前記視覚刺激の発生位置に関する回答を前記被験者から取得する請求項1から9のいずれか一項に記載の視野測定方法。
【請求項11】
前記視覚刺激を間欠的または連続的に発生させている所定の刺激時間に亘って前記被験者の視線方向に関する視線データを取得する請求項1から10のいずれか一項に記載の視野測定方法。
【請求項12】
前記視線データと前記視覚刺激の発生位置を示す位置情報とに基づいて、前記被験者が認識した一または複数の前記視覚刺激の発生位置と前記被験者の目視点との最大距離を算出し、前記最大距離から前記視野を決定する請求項11に記載の視野測定方法。
【請求項13】
画像を被験者に提示する画像提示手段と、前記被験者の周辺視野における知覚閾下の視覚刺激を前記画像に発生させる刺激発生手段と、を備える視野測定装置。
【請求項14】
前記被験者の視線方向に関する視線データを取得する視線取得手段をさらに備える請求項13に記載の視野測定装置。
【請求項15】
前記視覚刺激の発生位置を示す位置情報および前記視線データが時刻情報を含み、
互いに時刻を同期させた前記視線データと前記位置情報とに基づいて、前記被験者が認識した一または複数の前記視覚刺激の発生位置と前記被験者の目視点との最大距離を算出する視野径算出手段をさらに備える請求項14に記載の視野測定装置。
【請求項1】
画像を被験者に提示し、前記被験者の周辺視野における知覚閾下の視覚刺激を前記被験者の前記周辺視野と視野外とに発生させ、前記被験者が認識した前記視覚刺激の発生位置に基づいて前記被験者の視野を測定することを特徴とする視野測定方法。
【請求項2】
前記視覚刺激を前記画像上に発生させ、前記画像に定められた要注視点との距離が徐々に小さくなるように前記視覚刺激の発生位置を経時的に変化させることを特徴とする請求項1に記載の視野測定方法。
【請求項3】
前記視覚刺激が、前記被験者の中心視野における閾上刺激である請求項1または2に記載の視野測定方法。
【請求項4】
前記視覚刺激が、前記周辺視野における知覚閾下の光度および発光時間で点灯する光点の発光である請求項1から3のいずれか一項に記載の視野測定方法。
【請求項5】
前記画像に定められた要注視点からの距離または方向の少なくとも一方が互いに異なる複数の前記光点を順次点灯させ、
前記被験者が前記発光を認識した一または複数の前記光点と前記要注視点との最大距離に基づいて前記視野を決定する請求項4に記載の視野測定方法。
【請求項6】
前記視覚刺激が、前記画像の画素値を前記周辺視野における知覚閾下で時間変化させることによって与えられる請求項1から3のいずれか一項に記載の視野測定方法。
【請求項7】
前記画像に定められた要注視点を囲む異径の複数の環状領域を前記画像に設け、前記環状領域に含まれる画素の画素値を変化させ、前記画素値が変化したことを前記被験者が認識した一または複数の前記環状領域のうちの最大半径に基づいて前記視野を決定する請求項6に記載の視野測定方法。
【請求項8】
前記環状領域に含まれる前記画素の個々の明度を一定倍率で増加させることにより前記画素値を変化させる請求項7に記載の視野測定方法。
【請求項9】
前記画像が対象物を被写体として含み、
前記被験者が前記対象物を目視している状態で前記視覚刺激を発生させるとともに、前記視覚刺激の少なくとも一部を前記対象物の外部に発生させることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の視野測定方法。
【請求項10】
前記視覚刺激の発生を前記被験者に予告せずに所定の刺激時間に亘って前記視覚刺激を間欠的または連続的に発生させた後に、前記被験者が認識した前記視覚刺激の発生位置に関する回答を前記被験者から取得する請求項1から9のいずれか一項に記載の視野測定方法。
【請求項11】
前記視覚刺激を間欠的または連続的に発生させている所定の刺激時間に亘って前記被験者の視線方向に関する視線データを取得する請求項1から10のいずれか一項に記載の視野測定方法。
【請求項12】
前記視線データと前記視覚刺激の発生位置を示す位置情報とに基づいて、前記被験者が認識した一または複数の前記視覚刺激の発生位置と前記被験者の目視点との最大距離を算出し、前記最大距離から前記視野を決定する請求項11に記載の視野測定方法。
【請求項13】
画像を被験者に提示する画像提示手段と、前記被験者の周辺視野における知覚閾下の視覚刺激を前記画像に発生させる刺激発生手段と、を備える視野測定装置。
【請求項14】
前記被験者の視線方向に関する視線データを取得する視線取得手段をさらに備える請求項13に記載の視野測定装置。
【請求項15】
前記視覚刺激の発生位置を示す位置情報および前記視線データが時刻情報を含み、
互いに時刻を同期させた前記視線データと前記位置情報とに基づいて、前記被験者が認識した一または複数の前記視覚刺激の発生位置と前記被験者の目視点との最大距離を算出する視野径算出手段をさらに備える請求項14に記載の視野測定装置。
【図1】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2013−85710(P2013−85710A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229018(P2011−229018)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
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