説明

親水性化セルロース繊維の製造方法

【課題】4−ヒドロキシ−TEMPOを触媒として用い場合における、原料セルロース繊維のグルコース単位の6位の炭素を、効率よく十分にカルボキシル基へと酸化させることができる、親水性化セルロース繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、酸化剤、及び助触媒を含む反応溶液中で、セルロース繊維を酸化させる反応工程(1a)、並びに工程(1a)の反応後、反応溶液中に、さらに、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルを加え、セルロース繊維をさらに酸化させる工程(1b)を含む親水性化セルロース繊維の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性化セルロース繊維の製造方法に関し、より詳細には、セルロース繊維を酸化させる際に4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(以下、4−ヒドロキシ−TEMPOとも表記する)を用いて酸化させる反応工程を含む親水性化セルロース繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、肌着等の綿衣料製品(セルロース繊維製品)では、高い吸湿性と放湿性とが求められている。このような高い吸湿性と放湿性を備える綿衣料製品(セルロース繊維製品)を得る方法としては、原料となるセルロース繊維の親水性化処理する方法が挙げられる。セルロース繊維の親水性化処理する方法としては、種々のものが知られており、代表的な例としては、セルロースの水酸基をカルボキシル基に酸化する方法がある。
【0003】
かかるセルロースの水酸基をカルボキシル基に酸化する方法としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)やその誘導体等のN−オキシル化合物を用いた原料セルロース繊維の酸化処理が知られている。また、安全性が確認されており、広く利用されているという観点から、特に4−ヒドロキシ−TEMPOを用いることが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/024807号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原料セルロース繊維を親水化させる工程において、触媒であるN−オキシル化合物として、4−ヒドロキシ−TEMPOを用いた場合、反応時間を長く設定しても、ある一定の段階で、セルロース繊維の酸化反応が低下し、十分な量のCOOH基をセルロース繊維に付与することが困難になるという問題があった。
【0006】
前記問題において、4−ヒドロキシ−TEMPOの初期の含有割合を多くする方法が考えられるが、4−ヒドロキシ−TEMPOの配合量が多い場合には、ある濃度以上4−ヒドロキシ−TEMPOを添加しても、セルロース繊維へのCOOH基導入量を増加させることができず、さらに重合度低下を引き起こすという点で問題があった。
【0007】
このような問題について、セルロース繊維の酸化工程において、反応時間の経過に伴い、反応溶液中で、4−ヒドロキシ−TEMPOが分解し、触媒作用の低下を招くということに起因すると考えられる。
【0008】
上記の知見に基づき、本発明は、4−ヒドロキシ−TEMPOを触媒として用いた場合における、原料セルロース繊維のグルコース単位の6位の炭素を、効率よく十分にカルボキシル基へと酸化させることができる、親水性化セルロース繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねていたところ、4−ヒドロキシ−TEMPO、酸化剤、及び助触媒を含む反応溶液中で、セルロース繊維を酸化させる反応工程を行い、当該反応の後、反応溶液中に、さらに、4−ヒドロキシ−TEMPOを加え、セルロース繊維の酸化を継続させることにより、触媒として4−ヒドロキシ−TEMPOを用いた反応系においてもセルロース繊維中に十分量のカルボキシル基が導入された親水性セルロース繊維が得られることを見出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0010】
項1.4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、酸化剤、及び助触媒を含む反応溶液中で、セルロース繊維を酸化させる反応工程(1a)、並びに工程(1a)の反応後、反応溶液中に、さらに、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルを加え、セルロース繊維をさらに酸化させる工程(1b)を含む
親水性化セルロース繊維の製造方法。
【0011】
項2.工程(1a)及び工程(1b)における4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルの合計の配合割合が、0.1〜20%owfである項1に記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【0012】
項3.工程(1a)における4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルの配合割合が、0.05〜10%owfである項1又は2に記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【0013】
項4.工程(1b)における4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルの配合割合が、0.05〜10%owfである項1〜3のいずれかに記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【0014】
項5.工程(1a)における反応時間が、1〜30分である項1〜4のいずれかに記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【0015】
項6.工程(1a)で用いられる酸化剤が、ハロゲン酸系酸化剤である項1〜5のいずれかに記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【0016】
項7.工程(1a)で用いられるハロゲン酸系酸化剤が、次亜ハロゲン酸、ハロゲン化イソシアヌル酸又はこれらの塩である項6に記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【0017】
項8.工程(1a)及び工程(1b)によって得られた酸化セルロース繊維を、さらに酸化剤を含む反応溶液中で酸化させる工程(2)を含む項1〜7のいずれかに記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【0018】
項9.工程(2)で用いられる酸化剤が、ハロゲン酸系酸化剤である項8に記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【0019】
項10.工程(2)で用いられるハロゲン酸系酸化剤が、亜ハロゲン酸又はその塩である項9に記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【0020】
項11.工程(2)で得られた酸化セルロース繊維を、さらに脱ハロゲン化剤で脱ハロゲン処理する工程(3)を含む項8〜10のいずれかに記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【0021】
項12.工程(2)によって得られた酸化セルロース繊維を、さらに還元剤を含む反応溶液中で還元させる還元処理工程(4a)を含む項8〜10のいずれかに記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【0022】
項13.工程(3)によって得られた酸化セルロース繊維を、さらに還元剤を含む反応溶液中で還元させる還元処理工程(4b)を含む項11に記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【0023】
項14.工程(2)で得られた酸化セルロース繊維を、さらに脱ハロゲン化剤、及び還元剤と混合し、酸化セルロース繊維中に残存するハロゲンを除去する脱ハロゲン処理を行うと共に、酸化セルロース繊維のグルコース単位の2位及び/又は3位に存在するケトン基を還元する還元処理を行う工程を含む項8〜10のいずれかに記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【0024】
項15.脱ハロゲン化剤が、過酸化水素、及びオゾンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である項11又は14に記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【0025】
項16.還元剤が、チオ尿素、ハイドロサルファイト、亜硫酸水素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、及び水素化ホウ素リチウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である項12〜15のいずれかに記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0026】
本発明の親水性化セルロース繊維の製造方法によれば、触媒であるN−オキシル化合物として、4−ヒドロキシ−TEMPOを用いた反応系においても、原料セルロース繊維のグルコース単位の6位の炭素を、効率よく十分にカルボキシル基へと酸化させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の親水性化セルロース繊維の製造方法について、詳細に説明する。
【0028】
・工程(1a)
工程(1a)は、4−ヒドロキシ−TEMPO、酸化剤、及び助触媒を含む反応溶液中で、セルロース繊維を酸化させる反応工程である。
【0029】
本発明の親水性化セルロース繊維の製造方法に用いられる原料セルロース繊維としては、植物、動物、バクテリア産生ゲル等の天然セルロース繊維のほか、再生セルロース繊維であってもよい。具体的には、綿、麻、パルプ、バクテリアセルロース等の天然セルロース繊維や、レーヨンやキュプラ等の再生セルロース繊維を用いることができる。
【0030】
なお、原料セルロース繊維の形態としては、織編物や不織布等の布帛に限らず、フィラメント、ステープル、紐等の糸状物であってもよい。また、繊維の構造組織としては、混繊、混紡、混織、交織、交編したものであってもよい。
【0031】
また、原料セルロース繊維は、あらかじめ水洗及び精練したものが、後の工程で十分にセルロース繊維を親水性化できる点、漂白効果を十分に発揮できる点から好ましい。ここで、「精練」とは、天然繊維に含まれている不純物や、紡績、編立の段階で加えられる油剤や、作業工程で付着した機械油、鉄さび等を除去する処理をいう。
【0032】
反応溶液中に含まれる4−ヒドロキシ−TEMPOは、セルロース繊維を酸化させる際に、触媒として用いられるものであり、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(TEMPO)の4位の炭素にヒドロキシル基を有する化合物である。
【0033】
工程(1a)における4−ヒドロキシ−TEMPOの含有割合は、反応溶液中、0.0167〜3.33g/L程度が好ましく、0.3333〜1.6667g/L程度がより好ましく、0.6667〜1.3333g/L程度がさらに好ましい。工程(1a)における4−ヒドロキシ−TEMPOの含有割合を0.0167g/L程度以上に設定することで、逐次添加によるCOOH基導入量を増加させることができる。また、工程(1a)における4−ヒドロキシ−TEMPOの含有割合を3.33g/L程度以下に設定することで、触媒過多による反応阻害が起こらないというという効果が得られる。
【0034】
また、反応溶液中の4−ヒドロキシ−TEMPOの含有割合は、0.05〜10%owf程度が好ましく、1.0〜5.0%owf程度がより好ましい。
【0035】
ここで、単位「%owf」とは、処理繊維重量に対する薬剤の重量割合(重量%)を表し、以下同じ意味である。
【0036】
工程(1a)における反応溶液中に含まれる酸化剤としては、ハロゲン酸系酸化剤が好ましく、次亜ハロゲン酸、ハロゲン化イソシアヌル酸又はこれらの塩等がより好ましい。
【0037】
次亜ハロゲン酸におけるハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、次亜ハロゲン酸の具体例としては、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸が挙げられる。
【0038】
次亜ハロゲン酸塩を形成する金属塩としては、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、アンモニウムと次亜ハロゲン酸との塩も挙げられる。
【0039】
より具体的には、次亜塩素酸の場合に、次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム、次亜塩素酸ストロンチウム等、次亜塩素酸アンモニウム等を例示することができる。さらに、これらに対応する次亜臭素酸塩、次亜ヨウ素酸塩を用いることもできる。
【0040】
ハロゲン化イソシアヌル酸又はその塩としては、一般式(III):
【0041】
【化1】

【0042】
(式(III)中、Aは、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アルカリ金属、又はアルカリ土類金属を示し、Xは、同一又は異なり、それぞれフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子である。)
で表されるハロゲン化イソシアヌル酸又はその塩が用いられる。
【0043】
ハロゲン化イソシアヌル酸塩を形成するアルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられ、ハロゲン化イソシアヌル酸塩を形成するアルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム等が挙げられる。また、アンモニウムとハロゲン化イソシアヌル酸との塩も挙げられる。また、これらのハロゲン化イソシアヌル酸塩は水和物を形成していてもよい。
【0044】
ハロゲン化イソシアヌル酸の具体例としては、ジクロロイソシアヌル酸、トリクロロイソシアヌル酸等が挙げられる。また、ハロゲン化イソシアヌル酸塩の具体例としては、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0045】
これらの中で、工程(1a)における酸化剤が、次亜ハロゲン酸アルカリ金属塩である場合、次亜塩素酸アルカリ金属塩(次亜塩素酸ナトリウム等)が好ましい。また、酸化剤がハロゲン化イソシアヌル酸である場合、水への溶解度が高く、水中での漂白、殺菌効果に優れる点から、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム及びジクロロイソシアヌル酸ナトリウム2水和物が好ましい。
【0046】
上記酸化剤の含有割合は、反応溶液中、0.03〜10g/L程度が好ましく、1.0〜5.0g/L程度がより好ましい。上記酸化剤の含有割合を、0.03g/L程度以上に設定することによって、セルロース繊維の親水性化、漂白効果を向上する効果が得られ、10g/L程度以下に設定することによって、重合度低下や風合い低下を抑止する効果が得られる。
【0047】
また、酸化剤の含有割合は、0.1〜30%owf程度が好ましく、3.0〜15%owf程度がより好ましい。
【0048】
さらに、工程(1a)の酸化処理では、4−ヒドロキシ−TEMPOに、助触媒を組み合わせた触媒成分として用いてもよい。助触媒としては例えば、ハロゲンとアルカリ金属との塩(アルカリ金属塩)、ハロゲンとアルカリ土類金属との塩(アルカリ土類金属塩)、アンモニウム塩、硫酸塩等が挙げられる。前記アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を形成するためのハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。アルカリ金属塩を形成するアルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を形成するアルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム等が挙げられる。
【0049】
より具体的には、臭化リチウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、臭化カルシウム、臭化マグネシウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化ストロンチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム等が挙げられる。
【0050】
また、アンモニウム塩としては、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、塩化アンモニウムが挙げられる。また、硫酸塩としては、硫酸ナトリウム(ボウ硝)、硫酸水素ナトリウム、ミョウバン等の硫酸塩等が挙げられる。これらの助触媒は単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。また、前記の助触媒は、水和物を形成していてもよい。
【0051】
工程(1a)における助触媒の含有割合は、反応溶液中、0.1〜200g/L程度が好ましく、0.33〜100g/L程度がより好ましく、3.3〜33.3g/L程度がさらに好ましい。助触媒の含有割合を0.1g/L程度以上に設定することで、セルロース繊維へのCOOH基の導入量を増加させることができ、セルロース繊維の剛軟度を柔らかくすることができるという効果が得られる。また、助触媒の含有割合を200g/L程度以下に設定することで、セルロース繊維の重合度低下を抑えた、効率的なTEMPO酸化反応が進行するという効果が得られる。
【0052】
また、反応溶液中の助触媒の含有割合は、0.1〜600%owf程度が好ましく、1〜300%owf程度がより好ましく、10〜100%owf程度がさらに好ましい。助触媒の含有割合を、0.1%owf程度以上に設定することで、セルロース繊維へのCOOH基の導入量を増加させることができ、セルロース繊維の剛軟度を柔らかくすることができるという効果が得られる。また、助触媒の含有割合を、600%owf程度以下に設定することで、セルロース繊維の重合度低下を抑えた、効率的な4−ヒドロキシ−TEMPOによる酸化反応が進行するという効果が得られる。
【0053】
工程(1a)における反応溶液のpHとしては、酸化された4−ヒドロキシ−TEMPOがセルロース繊維に作用するのに適したpHである4〜12程度に保持されることが好ましく、pH8〜11程度に保持することがより好ましい。
【0054】
反応溶液のpHは、塩基性物質(アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)又は酸性物質(酢酸、シュウ酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸等の有機酸、あるいは硝酸、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸)を適宜添加することで調整することができる。
【0055】
また、工程(1a)で用いられる反応溶液は、さらに浸透剤を添加してもよい。浸透剤としては、セルロース繊維に用いられる公知のものを適用することができ、具体的には、アニオン系界面活性剤(カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等)や非イオン界面活性剤(ポリエチレングルコール型、他価アルコール型等)等が挙げられ、例えば、シントール(商品名:高松油脂社製)等を用いることができる。
【0056】
反応溶液に浸透剤を添加することで、セルロース繊維の内部にまで薬剤を浸透させ、より多くのカルボキシル基(アルデヒド基)をセルロース繊維表面に導入することができる。これにより、セルロース繊維の親水性(吸湿性)をより高めることができる。
【0057】
工程(1a)の反応溶液における溶媒としては、通常水が使用される。
【0058】
工程(1a)において、セルロース繊維を酸化処理する手順としては、特に限定されないが、まず、4−ヒドロキシ−TEMPO及び助触媒を反応溶媒に添加し、さらに、セルロース繊維を浸漬させ、その後に酸化剤を添加することが好ましい。このような手順でセルロース繊維を酸化処理することによって、セルロース繊維にN−オキシル化合物及び助触媒が浸透するので、加工ムラがなく親水性化処理できるという効果が得られる。
【0059】
工程(1a)において用いられる反応溶液とセルロース繊維との浴比としては、セルロース繊維1gに対する反応溶液が、10〜100g程度であることが好ましく、15〜30g程度であることがより好ましい。セルロース繊維1gに対して反応溶液を10g程度以上に設定することにより、セルロース繊維と反応溶液の接触効率が良好になるという効果が得られ、セルロース繊維1gに対して反応溶液を100g程度以下に設定することにより、セルロース繊維と反応溶液の接触効率を保持できるという効果が得られる。
【0060】
工程(1a)における酸化処理の温度としては、セルロース繊維にCOOH基を十分に導入できる点、酸化剤の蒸散を防ぎ、酸化処理の際の有効なハロゲンを保持できる等の観点から0℃程度以上が好ましく、20℃程度以上がより好ましい。また、工程(1a)における酸化処理の温度としては、セルロース繊維の重合度が低下しない点、セルロース繊維の脆化抑止等の観点から、50℃程度以下が好ましく、30℃程度以下がより好ましい。
【0061】
工程(1a)における酸化処理の時間としては、セルロース繊維にCOOH基を十分に導入できる点、反応サイクルが進行し始めるための時間が必要である等の観点から1分程度以上が好ましく、3分程度以上がより好ましい。また、工程(1a)における酸化処理の時間としては、セルロース繊維の酸化反応の効率が低下するまでの時間がこのましく、また、セルロース繊維の重合度が低下しない点、セルロース繊維の脆化抑止等の観点から、30分程度以下が好ましく、15分程度以下がより好ましい。
【0062】
・工程(1b)
工程(1b)は、工程(1a)の反応後、反応溶液中に、さらに、4−ヒドロキシ−TEMPOを加え、セルロース繊維を酸化させる工程である。
【0063】
工程(1a)において、4−ヒドロキシ−TEMPOによるセルロース酸化の反応は、時間の経過に伴い、4−ヒドロキシ−TEMPOが反応溶液中で分解される傾向にある。そのため、工程(1a)の酸化処理の反応時間を長く設定しても、セルロース繊維に十分な量のCOOH基を置換させることができない。また、工程(1a)の反応で、4−ヒドロキシ−TEMPOの含有割合を大きくすることも考えられるが、この場合、ある濃度以上4−ヒドロキシ−TEMPOを添加してもセルロース繊維へのCOOH基導入量を増加させることができず、さらに重合度低下を引き起こしてしまうという問題がある。
【0064】
そのため、工程(1b)では、工程(1a)の反応後に、反応溶液中にさらに、4−ヒドロキシ−TEMPOを加えることで、十分なセルロース繊維の酸化(セルロース繊維中にCOOH基を十分に導入)を行うことができる。
【0065】
ここで、「工程(1a)の反応後」とは、反応溶液中の4−ヒドロキシ−TEMPOが90%以上分解されていることを意味する。
【0066】
工程(1b)における4−ヒドロキシ−TEMPOの配合割合は、反応溶液中、0.0167〜3.33g/L程度が好ましく、0.3333〜1.6667g/L程度がより好ましく、0.6667〜1.3333g/L程度がさらに好ましい。工程(1b)における4−ヒドロキシ−TEMPOの配合割合を0.0167g/L程度以上に設定することで、再添加によるCOOH基導入量を増加させることができる。また、工程(1b)における4−ヒドロキシ−TEMPOの配合割合を3.33g/L程度以下に設定することで、触媒過多による反応阻害を抑制することができるという効果が得られる。
【0067】
また、反応溶液中の4−ヒドロキシ−TEMPOの配合割合は、0.05〜10%owf程度が好ましく、1.0〜5.0%owf程度がより好ましい。
【0068】
なお、前記の反応溶液中の4−ヒドロキシ−TEMPOの配合割合は、工程(1a)及び工程(1b)で用いた4−ヒドロキシ−TEMPOの合計の配合割合が、好ましくは0.1〜20%owf程度、より好ましくは、1〜10%owf程度含有するように添加すればよい。
【0069】
工程(1b)における酸化処理の温度としては、セルロース繊維にCOOH基を十分に導入できる点、酸化剤の蒸散を防ぎ、酸化処理の際の有効なハロゲンを保持できる等の観点から0℃程度以上が好ましく、20℃程度以上がより好ましい。また、工程(1b)における酸化処理の温度としては、セルロース繊維の重合度が低下しない点、セルロース繊維の脆化抑止等の観点から、50℃程度以下が好ましく、30℃程度以下がより好ましい。
【0070】
工程(1b)における酸化処理の時間としては、セルロース繊維にCOOH基を十分に導入できる点、反応サイクルが進行し始めるための時間が必要である等の観点から1分程度以上が好ましく、3分程度以上がより好ましい。また、工程(1b)における酸化処理の時間としては、セルロース繊維の重合度が低下しない点、セルロース繊維の脆化抑止等の観点から、30分程度以下が好ましく、15分程度以下がより好ましい。
【0071】
工程(1b)における反応溶液のpHとしては、工程(1a)と同様、酸化されたN−オキシル化合物がセルロース繊維に作用するのに適したpHである4〜12程度に保持されることが好ましく、pH8〜11程度に保持することがより好ましい。
【0072】
工程(1b)で用いられる反応溶液が、上記のpHの範囲から外れている場合には、反応溶液に、塩基性物質又は酸性物質を適宜添加することで調整することができる。塩基性物質又は酸性物質の具体例としては、前記工程(1a)で挙げられたものを用いることができる。
【0073】
なお、工程(1b)で4−ヒドロキシ−TEMPOを添加する場合、4−ヒドロキシ−TEMPOの添加と共に、酸化剤や助触媒を同時に添加すると、セルロース繊維の白度低下やカルボキシル基の導入量の低下を招く。そのため、工程(1b)では、4−ヒドロキシ−TEMPOのみを反応溶液中に添加することが好ましい。
【0074】
また、工程(1b)の終了後、反応溶液中に、さらに4−ヒドロキシ−TEMPOを添加し、セルロース繊維の酸化反応をさらに進行させてもよい。
【0075】
工程(1b)の酸化処理の終了後は、必要に応じて未反応の酸化剤(次ハロゲン酸又はその塩、ハロゲン化シソシアヌル酸又はその塩、及びハロゲン化シソシアヌル酸又はその塩が分解した次ハロゲン酸又はその塩等)を除去する処理を行い、その後、水洗を繰り返すことが好ましい。
【0076】
・工程(2)
工程(2)は、前記工程(1a)及び工程(1b)で得られた酸化セルロース繊維を、酸化剤を含む反応溶液中で酸化させることにより、前記工程(1a)及び工程(1b)で得られた酸化セルロース繊維中に存在するアルデヒド基を酸化する工程である。
【0077】
前記工程(1a)及び工程(1b)の酸化処理によって、セルロース繊維のミクロフィブリル表面に位置するグルコース単位の1級水酸基が選択的にカルボキシル基へと酸化されるが、カルボキシル基以外にも一部アルデヒド基が形成される。このアルデヒド基の形成によってベータ脱離反応や加熱時の着色が引き起こされ、セルロース繊維の低分子化による強度低下を招いてしまう。
【0078】
工程(2)は、前記工程(1a)及び工程(1b)によって生成されたアルデヒド基をカルボキシル基に酸化させ、アルデヒド基を含まない酸化セルロース繊維を得る工程である。
【0079】
工程(2)で用いられる原料は、前記の工程(1b)によって得られた酸化セルロース繊維である。
【0080】
工程(2)で用いられる酸化剤は、アルデヒド基を酸化してカルボキシル基に変換することができる酸化剤である。具体的には、亜ハロゲン酸又はその塩(亜塩素酸又はその塩、亜臭素酸又はその塩、亜ヨウ素酸又はその塩等)、過酸(過酸化水素、過酢酸、過硫酸、過安息香酸等)が含まれる。これらの酸化剤は単独又は2種以上の組み合わせで使用することができる。また、ラッカーゼ等の酸化酵素と組み合わせて用いてもよい。酸化剤の含有量は適宜に設定することができるが、セルロース繊維に対して0.01〜50mmol/gの範囲とすることが好ましい。
【0081】
亜ハロゲン酸塩におけるハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。亜ハロゲン酸塩を形成するための塩としては、リチウム、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩等が挙げられる。より具体的な亜ハロゲン酸塩としては、例えば亜塩素酸の場合、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸ストロンチウム等、亜塩素酸アンモニウム等を例示することができる。また、これらに対応する亜臭素酸塩、亜ヨウ素酸塩を用いることもできる。
【0082】
工程(2)で用いられる好ましい酸化剤としては、亜ハロゲン酸アルカリ金属塩であり、亜塩素酸アルカリ金属塩を用いることがより好ましい。
【0083】
酸化剤の含有割合は、反応溶液中、1〜90g/L程度が好ましく、2〜20g/L程度がより好ましい。酸化剤の含有割合を、1g/L程度以上に設定することによって、アルデヒド基の酸化効果に加えて、セルロース繊維を漂白する効果が得られ、90g/L程度以下に設定することによって、酸化剤の塩素によるセルロース繊維の脆化を抑止する効果が得られる。
【0084】
また、酸化剤の含有割合は、2〜180%owf程度が好ましく、4〜40%owf程度がより好ましい。
【0085】
工程(2)の酸化処理では、反応溶液のpHは中性から酸性の範囲で維持されることが好ましい。より具体的なpHとしては、3〜7の範囲が好ましい。特に、反応溶液のpHが8以上とならないように留意すべきである。このようなpH範囲とすることで、工程(1a)及び工程(1b)で生成されたセルロースの6位の炭素のアルデヒド基によるベータ脱離反応を生じないようにしつつアルデヒド基をカルボキシル基に酸化することができ、セルロース繊維の強度低下を回避しつつ親水性化することができる。
【0086】
また、反応溶液に緩衝液をさらに添加することも好ましい。緩衝液としては、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液等、種々の緩衝液を用いることができる。
【0087】
前記緩衝液を用いることによって、反応溶液中のpHの変化を抑えることができ、pHを維持するための酸やアルカリの連続的な添加が不要となる。
【0088】
工程(2)で用いられる反応溶液とセルロース繊維との浴比としては、セルロース繊維1gに対する反応溶液が、5〜100g程度であることが好ましく、10〜30g程度であることがより好ましい。セルロース繊維1gに対して反応溶液を5g程度以上に設定することにより、セルロース繊維と反応溶液の接触効率が良好になるという効果が得られ、セルロース繊維1gに対して反応溶液を100g程度以下に設定することにより、セルロース繊維と反応溶液の接触効率を保持できるという効果が得られる。
【0089】
工程(2)の酸化処理において、金属類によるセルロース繊維の脆化抑止効果を向上させるために、さらに、キレート剤、界面活性剤、浸透剤等を適宜添加してもよい。
【0090】
工程(2)の酸化処理の温度としては、酸化セルロース繊維中のアルデヒド基を十分にCOOH酸基に酸化できる点、セルロース繊維の漂白効果を発揮できる等の観点から60℃程度以上が好ましく、70℃程度以上がより好ましい。また、工程(2)における酸化処理の温度としては、酸化セルロース繊維の重合度が低下しない点、酸化剤の塩素による酸化セルロース繊維の脆化抑止等の観点から、98℃程度以下が好ましく、90℃程度以下がより好ましい。
【0091】
工程(2)の酸化処理の時間としては、酸化セルロース繊維中のアルデヒド基を十分にCOOH酸基に酸化できる点、セルロース繊維の漂白効果を発揮できる等の観点から30分程度以上が好ましく、50分程度以上がより好ましい。また、工程(2)における酸化処理の時間としては、酸化セルロース繊維の重合度が低下しない点、酸化剤の塩素による酸化セルロース繊維の脆化抑止等の観点から、120分程度以下が好ましく、100分程度以下がより好ましい。
【0092】
なお、工程(2)の酸化処理では、反応容器を密閉することが可能であることから、反応容器の内部を加圧する加圧装置を併設し、酸化処理してもよい。
【0093】
工程(2)の酸化処理終了後は、必要に応じて酸化反応を停止させ、水洗を繰り返すことが好ましい。
【0094】
・工程(3)(脱ハロゲン処理)
工程(3)は、前記工程(2)で得られた酸化セルロース繊維を脱ハロゲン処理する工程である。
【0095】
工程(3)の脱ハロゲン処理で用いられる原料は、前記工程(2)の酸化処理によって得られた酸化セルロース繊維である。
【0096】
前記工程(1a)及び工程(1b)、並びに工程(2)において、酸化剤としてハロゲン系酸化剤が用いられた場合、酸化処理の後の酸化セルロース繊維には、前記酸化剤に由来するハロゲンが付着あるいは結合している。
【0097】
そのため、工程(3)で、このような酸化セルロース繊維に残留したハロゲンを除去する脱ハロゲン処理を行うことが好ましい。脱ハロゲン処理に用いられる脱ハロゲン処理剤としては、過酸化水素溶液やオゾン溶液に酸化セルロース繊維を浸漬することで行う。
【0098】
工程(3)の脱ハロゲン処理で用いられる反応溶液における脱ハロゲン処理剤の濃度としては、脱ハロゲン処理剤の種類にもよるが、例えば反応溶液中、0.1〜100g/L程度が好ましく、0.67〜10g/L程度がより好ましい。
【0099】
また、脱ハロゲン処理剤の含有割合は、1〜300%owf程度が好ましく、2〜30%owf程度がより好ましい。
【0100】
工程(3)の脱ハロゲン処理で用いられる反応溶液とセルロース繊維との浴比としては、セルロース繊維1gに対する反応溶液が、5〜100g程度であることが好ましく、5〜50g程度であることがより好ましい。セルロース繊維1gに対して反応溶液を5g程度以上に設定することにより、セルロース繊維に対して反応溶液の接触効率が良好になり、セルロース繊維に残存する酸化剤を中和するという効果が得られ、セルロース繊維1gに対して反応溶液を100g程度以下に設定することにより、セルロース繊維と反応溶液の接触効率を保持でき、かつセルロース繊維に残存する酸化剤を中和するという効果が得られる。
【0101】
工程(3)の脱ハロゲン処理に用いられる反応溶液のpHとしては、8〜11程度が好ましく、9.5〜10.7程度がより好ましい。反応溶液のpHを8程度以上に設定することで、セルロース繊維に残存する酸化剤を中和するという効果が得られ、また、反応溶液のpHを11程度以下に設定することで、アルカリ性側反応によるセルロース繊維の脆化を抑えられるという効果が得られる。
【0102】
工程(3)における脱ハロゲン処理の温度としては、脱塩素させる効果を発揮する等の観点から40℃程度以上が好ましく、45℃程度以上がより好ましい。また、工程(3)における脱ハロゲン処理の温度としては、アルカリ性によるセルロース繊維を抑えられる等の観点から、90℃程度以下が好ましく、80℃程度以下がより好ましい。
【0103】
工程(3)における脱ハロゲン処理の時間としては、十分な脱ハロゲン処理等の観点から5分程度以上が好ましく、10分程度以上がより好ましい。また、工程(3)における脱ハロゲン処理の時間としては、長時間アルカリ条件にさらされると酸化セルロース繊維の脆化、硬化等の観点から、60分程度以下が好ましく、40分程度以下がより好ましい。
【0104】
・工程(4)(還元処理)
前記工程(1a)、工程(1b)、工程(2)、及び工程(3)の脱ハロゲン処理によって、セルロース繊維により多くのカルボキシル基をセルロース繊維表面に導入することができるが、前記酸化処理によって、さらに黄変(白度低下)する場合がある。これは、セルロース繊維の6位の炭素のカルボキシル化だけでなく、2位や3位の炭素も一部酸化され、ケトンが生成されるためであると考えられる。そのため、前記工程の後に、さらに、還元剤による還元処理を行うことによって、生成したケトンを還元し、親水性化セルロース繊維の黄変(白度低下)を抑制することができる。
【0105】
なお、工程(4)の還元処理は、工程(3)の脱ハロゲン処理を行う場合には、工程(3)の脱ハロゲン処理を行った後に行い、工程(3)の脱ハロゲン処理を行わない場合には、工程(2)の酸化処理後に行われることが好ましい。
【0106】
還元剤としては、部分的に生成したケトン基をアルコールに還元することができ、かつ生成したカルボキシル基については、還元させないものが挙げられ、具体的には、チオ尿素、ハイドロサルファイト、亜硫酸水素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム等が挙げられる。これらの中で、初期白度と白度低下抑止において優れているという観点から、水素化ホウ素ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムが好ましい。
【0107】
還元剤を含む反応溶液における溶媒としては、蒸留水、イオン交換水、井戸水、水道水等、一般的な水及び水全般が用いられる。反応溶液に含まれる還元剤の濃度は、0.02〜4g/L程度が好ましく、0.2〜2g/L程度がより好ましい。前記範囲の濃度に設定することにより、過剰な還元剤による酸化セルロース繊維の脆化を抑えるという効果が得られる。
【0108】
また、還元剤の含有割合は、0.06〜12%owf程度が好ましく、0.6〜6.0%owf程度がより好ましい。
【0109】
前記還元剤による還元処理を行うときの反応溶液のpHとしては、還元剤活性維持において良好であるという点から、7程度以上が好ましく、7.5程度以上がより好ましく、8程度以上がさらに好ましい。また、前記還元剤による還元処理を行うときの反応溶液のpHとしては、アルカリ性側による生地脆化を抑えることができるという点から、12程度以下が好ましく、11程度以下がより好ましい。反応溶液のpHは、アンモニア水、塩酸、ソーダ灰、NaOH、KOH等を適宜添加することで調整することができる。
【0110】
還元処理で用いられる反応溶液とセルロース繊維との浴比としては、セルロース繊維1gに対する反応溶液が、5〜100g程度であることが好ましく、5〜50g程度であることがより好ましい。セルロース繊維1gに対して反応溶液を5g程度以上に設定することにより、セルロース繊維に対し反応溶液の液接触が良好になり、塩素を中和できるという効果が得られ、セルロース繊維1gに対して反応溶液を50g程度以下に設定することにより、セルロース繊維と反応溶液の撹拌効率を保持することができるという効果が得られる。
【0111】
還元剤による還元処理の反応温度は、還元剤の種類や添加量によって、適宜変更されるが、例えば、10〜80℃程度が好ましく、20〜40℃程度がより好ましい。
【0112】
なお、前記の工程(3)の脱ハロゲン化処理、及び工程(4)の還元処理は、同時に行ってもよい。
【0113】
工程(3)の脱ハロゲン化処理、及び工程(4)の還元処理を同時に行う場合の脱ハロゲン処理剤及び還元剤の種類、含有割合、浴比、並びに反応条件は、前記の工程(3)及び(4)と同様である。
【0114】
以上の親水性化セルロースの製造方法によって得られる親水性化セルロース繊維(酸化セルロース繊維)は、セルロースのミクロフィブリル表面に位置する水酸基の少なくとも一部が、カルボキシル基のみで酸化されているものである。特に、工程(1a)で用いた反応溶液をさらに4−ヒドロキシ−TEMPOを添加しセルロース繊維を酸化させる工程(1b)を行うことにより、カルボキシル基の置換度を向上させることができる。
【0115】
本発明の親水性化セルロース繊維の製造方法により得られる親水性化セルロース繊維は、十分量のCOOH基が導入され、6位の炭素がアルデヒド基であるものを実質的に含まないため、加熱処理を施しても、アルデヒド基由来の着色成分は生成し難い。したがって、上記の製造方法によって得られる親水性化セルロース繊維は、高い白度を要求される肌着等の衣料用途に好適な素材である。また、熱による品質低下が生じないことから、加工に際しての制限が無く、取り扱いが容易な素材である。
【0116】
さらに、上記の製造方法によって得られる親水性化セルロース繊維は、その製造工程において、アルデヒド基によるセルロースミクロフィブリルの切断が生じ難いため、原料セルロース繊維の強度をほとんど損なわずに吸湿性を高めたものとなっている。
【0117】
このようにセルロースミクロフィブリルの1級水酸基がカルボキシル基に酸化されている親水性化セルロース繊維は、その高い吸湿性により高い放熱効果や発熱効果を得られるものであり、種々の繊維製品に好適に用いることができる。
【0118】
かかる繊維製品としては、例えば、衣料用品、雑貨用品、インテリア用品、寝具用品、産業用資材等が挙げられる。
【0119】
上記衣料用品としては、外出着衣料、スポーツウェア、ホームウェア、リラックスウェア、パジャマ、寝間着、肌着、オフィスウェア、作業服、食品白衣、看護白衣、患者衣、介護衣、学生服、厨房衣等が挙げられ、肌着としては、例えばシャツ、ブリーフ、ショーツ、ガードル、パンティストッキング、タイツ、ソックス、レギンス、腹巻き、ステテコ、パッチ、ペチコート等が挙げられる。
【0120】
上記雑貨用品としては、エプロン、タオル、手袋、マフラー、帽子、靴、サンダル、かばん、傘等が挙げられる。
【0121】
上記インテリア用品としては、カーテン、じゅうたん、マット、こたつカバー、ソファーカバー、クッションカバー、ソファー用側地、便座カバー、便座マット、テーブルクロス等が挙げられる。
【0122】
上記寝具用品としては、布団用側地、布団用詰めわた、毛布、毛布用側地、枕の充填材、シーツ、防水シーツ、布団カバー、枕カバー等が挙げられる。
【0123】
上記産業用資材としては、フィルター等が挙げられる。
【実施例】
【0124】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0125】
<実施例1>
・酸化処理(工程(1a)及び工程(1b))
表1に示す反応溶液及び反応条件で、以下の手順で生地(セルロース繊維)の4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(4−ヒドロキシ−TEMPO)、及び次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)による酸化処理を行った。なお、生地としては、綿100%メリヤス生地(40番手のフライス生成り生地)を用いた。
【0126】
表1に示す4−ヒドロキシ−TEMPO、及びボウ硝(NaSO・10HO)を水に溶解させ、得られた溶液中に生地を十分に浸漬させた。前記生地を浸漬させた溶液に、NaClOを表1に示すpHとなるように調整しながら添加し、表1に示す条件で、10分間酸化処理(工程(1a))を行った。
【0127】
前記工程(1a)の酸化処理後、表1に示す条件で、反応溶液にさらに4−ヒドロキシ−TEMPOを添加し、20分間酸化処理(1b)を行った。
【0128】
なお、NaClOは、5重量%の水溶液を用い、表1中の配合量及び配合濃度は、5重量%水溶液の配合量及び配合濃度を示す。
【0129】
【表1】

【0130】
前記、4−ヒドロキシ−TEMPO及びNaClOによる酸化処理の後、各サンプルを反応溶液から取り出し、水洗した。
【0131】
・酸化処理(工程(2))
前記工程(1a)及び工程(1b)の酸化処理、並びに水洗を行った各サンプル生地を、表2に示す反応溶液及び反応条件で、亜塩素酸ナトリウム(NaClO)による酸化処理を行った。なお、表2中のCG1000は、亜塩素漂白用キレート剤ネオクリスタル(日華化学社製)であり、NaClOは、25重量%の水溶液を用い、表2中の配合量及び配合濃度は、25重量%水溶液の配合量及び配合濃度を示す。
【0132】
【表2】

【0133】
表2に示す反応溶液及び反応条件によって酸化処理(工程(2))を行った後、各サンプルを取り出し、60℃の水で湯洗いし、さらに水洗した。
【0134】
・脱塩素処理(工程(3))
前記、工程(2)の酸化処理後、湯洗い、及び水洗を行ったサンプル生地を、さらに表3に示す条件の反応溶液で過酸化水素(H)による脱塩素処理を行った。なお、表3中のPLC7000は、ポリカルボン酸系キレート剤(ネオレート(日華化学社製))であり、Hは、35重量%の水溶液を用い、表3中の配合量及び配合濃度は、35重量%水溶液の配合量及び配合濃度を示す。
【0135】
【表3】

【0136】
前記脱塩素処理を行った後、サンプルを取り出し、60℃の水で湯洗いし、さらに水洗した。
【0137】
・還元処理(工程(4))
前記脱塩素処理後、湯洗い、及び水洗を行ったサンプル生地を、さらに表4に示す条件の反応溶液で還元処理を行った。
【0138】
【表4】

【0139】
前記還元工程を行った後、サンプルを取り出し、水洗した。
【0140】
・中和処理
前記還元処理(工程(4))後のサンプル生地を、pHが4になるように10%酢酸水溶液を用いて中和処理を行った。
【0141】
・洗浄、及び乾燥処理
前記中和処理が終了したサンプル生地を、水洗い(5分間×2回)を行った。その後、サンプル生地を40℃の乾燥室で乾燥させた。
【0142】
<実施例2>
・酸化処理(工程(1a)及び工程(1b))
表5に示す反応溶液及び反応条件で、以下の手順で生地(セルロース繊維)の4−ヒドロキシ−TEMPO、及び次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)による酸化処理を行った。なお、生地としては、綿100%メリヤス生地(40番手のフライス生成り生地)を用いた。
【0143】
表5に示す4−ヒドロキシ−TEMPO、及びボウ硝を水に溶解させ、得られた溶液中に生地を十分に浸漬させた。前記生地を浸漬させた溶液に、NaClOを表5に示すpHとなるように調整しながら添加し、表5に示す条件で、10分間酸化処理(工程(1a))を行った。
【0144】
さらに、前記工程(1a)の酸化処理後、表5に示す条件で、反応溶液にさらに4−ヒドロキシ−TEMPOを添加し、15分間酸化処理(1b)を行った。なお、NaClOは、5重量%の水溶液を用い、表5中の配合量及び配合濃度は、5重量%水溶液の配合量及び配合濃度を示す。
【0145】
【表5】

【0146】
前記、TEMPO及びNaClOによる酸化処理の後、各サンプルを反応溶液から取り出し、水洗した。
【0147】
・酸化処理(工程(2))
実施例1の工程(2)と同様の方法により、酸化処理を行い、各サンプルを取り出し、60℃の水で湯洗いし、さらに水洗した。
【0148】
・脱塩素及び還元処理(工程(3)及び工程(4))
表6に示す過酸化水素(H)及び水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を含む反応溶液を調製し、該反応溶液に、前記の工程(2)の酸化処理、湯洗い、及び水洗を行った各サンプル生地を入れ、表6の反応条件で、Hによる脱塩素処理、及びNaBHによる還元処理を同時に行った。なお、表6中のPLC7000は、ポリカルボン酸系キレート剤ネオレート(日華化学社製)であり、Hは、35重量%の水溶液を用い、表6中の配合量及び配合濃度は、35重量%水溶液の配合量及び配合濃度を示す。
【0149】
【表6】

【0150】
前記脱塩素及び還元処理を行った後、各サンプルを取り出し、60℃の水で湯洗いし、さらに水洗した。
【0151】
・中和、洗浄、及び乾燥処理
前記実施例1と同様の方法により、サンプル生地を中和、洗浄、及び乾燥処理を行った。
【0152】
<実施例3>
工程(1b)の酸化処理において、4−ヒドロキシ−TEMPOを添加後、20分間酸化処理を行った以外は、実施例2と同様の方法により、サンプル生地を得た。
【0153】
<比較例1>
工程(1b)の酸化処理を行わずに、工程(1a)の酸化工程において、4−ヒドロキシ−TEMPOの配合割合を5%owf(1.7g/L)とし、脱塩素及び還元処理(工程(3)及び工程(4))を表7に示す条件で行った。それ以外は、実施例2と同様の方法により、サンプル生地を得た。なお、Hは、35重量%の水溶液を用い、表7中の配合量及び配合濃度は、35重量%水溶液の配合量及び配合濃度を示す。
【0154】
【表7】

【0155】
<比較例2及び3>
工程(1a)の酸化工程の反応時間をそれぞれ25分(比較例2)及び30分(比較例3)とした以外は、比較例1と同様の方法により、各サンプル生地を得た。
【0156】
<評価結果>
表8に、上記の製造工程によって製造された各サンプル生地(実施例1〜3及び比較例1〜3)についてのカルボキシル基量(COOH基量)、重合度、及び反応効率を示す。
【0157】
なお、カルボキシル基量は、電導度滴定により測定した。
【0158】
また、重合度は以下の方法により測定した。
【0159】
上記各サンプル生地から採取した繊維を前もって水素化ホウ素ナトリウムで還元することで残存アルデヒド基をアルコールに還元し、これを0.5Mの銅エチレンジアミン溶液に溶解させ、粘度法にて重合度を求めた。
【0160】
銅エチレンジアミン溶液はアルカリ性であり、酸化セルロース中にアルデヒド基が残存していた場合には、溶解過程でベータ脱離反応が起こって分子量が低下してしまう可能性があるため、予め還元処理してアルデヒド基をアルコール性水酸基に変換した。
【0161】
0.5Mの銅エチレンジアミン溶液に溶解させたセルロースの粘度から、セルロースの重合度を求める式については、「Isogai, A., Mutoh, N., Onabe, F., Usuda, M., “Vis cosity measurements of cellulose/SO2-amine- dimethylsulfoxide solution”, Seni Gakkaishi, 45, 299-306 (1989). 」を参考にした。
【0162】
また、表8に示す「生成り」は、精練後の40番手のフライス生成り生地を示し、「漂白後綿布」は、40番手のフライス生成り生地を精練後、NaClO処理とH処理にて漂白し、脱水、乾燥させた綿布である。
【0163】
【表8】

【0164】
<結果と考察>
実施例1及び3より、工程(1a)の4−ヒドロキシ−TEMPOによるセルロース繊維の酸化後、反応溶液中にさらに4−ヒドロキシ−TEMPOを添加し、さらなるセルロース繊維の酸化処理(工程(1b))を行った場合、脱塩素処理(工程(3))及び還元処理(工程(4))を別浴又は同浴のいずれにおいて行っても、COOH基量が増加し、十分にセルロース繊維中にCOOH基量が導入された酸化セルロース繊維を得ることが確認できた。
【0165】
また、実施例2及び3より、工程(1b)における4−ヒドロキシ−TEMPOの添加後の反応時間を長くすることによって、セルロース繊維中のCOOH基量が増加し、十分にセルロース繊維中にCOOH基量が導入された酸化セルロース繊維を得ることができることも確認できた。
【0166】
一方、工程(1b)の4−ヒドロキシ−TEMPOの更なる添加を行わなかった比較例1では、セルロース繊維中のCOOH基量が0.201mmol/gと十分に酸化されないことが明らかとなった。
【0167】
また、比較例2及び3のように、工程(1a)の反応時間を延ばしても、セルロース繊維中のCOOH基量は、比較例1と比較してもあまり変化が見られなかった。
【0168】
<比較例4>
・酸化処理(工程(1a)及び工程(1b))
表9に示す反応溶液及び反応条件で、以下の手順で生地(セルロース繊維)の4−ヒドロキシ−TEMPO、及び次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)による酸化処理を行った。なお、生地としては、綿100%メリヤス生地(40番手のフライス生成り生地)を用いた。
【0169】
表9に示す4−ヒドロキシ−TEMPO、及びボウ硝を水に溶解させ、得られた溶液中に生地を十分に浸漬させた。前記生地を浸漬させた溶液に、NaClOを表9に示すpHとなるように調整しながら添加し、表9に示す条件で、10分間酸化処理(工程(1a))を行った。
【0170】
さらに、前記工程(1a)の酸化処理後、表9に示す条件で、反応溶液にさらにNaClを添加し、10分間酸化処理(1b)を行った。なお、NaClOは、5重量%の水溶液を用い、表9中の配合量及び配合濃度は、5重量%水溶液の配合量及び配合濃度を示す。
【0171】
【表9】

【0172】
前記、TEMPO及びNaClOによる酸化処理の後、各サンプルを反応溶液から取り出し、水洗した。
【0173】
・酸化処理(工程(2))
前記工程(1a)及び工程(1b)の酸化処理、並びに水洗を行った各サンプル生地を、実施例1と同様の方法によって、亜塩素酸ナトリウム(NaClO)による酸化処理を行った。その後、各サンプルを取り出し、60℃の水で湯洗いし、さらに水洗した。
【0174】
・脱塩素及び還元処理(工程(3)及び工程(4))
表10に示す過酸化水素(H)及び水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を含む反応溶液を調製し、該反応溶液に、前記の工程(2)の酸化処理、湯洗い、及び水洗を行った各サンプル生地を入れ、表10の反応条件で、Hによる脱塩素処理、及びNaBHによる還元処理を同時に行った。なお、表6中のPLC7000は、ポリカルボン酸系キレート剤ネオレート(日華化学社製)であり、Hは、35重量%の水溶液を用い、表10中の配合量及び配合濃度は、35重量%水溶液の配合量及び配合濃度を示す。
【0175】
【表10】

【0176】
前記脱塩素及び還元処理を行った後、各サンプルを取り出し、60℃の水で湯洗いし、さらに水洗した。
【0177】
・中和、洗浄、及び乾燥処理
前記実施例1と同様の方法により、サンプル生地を中和、洗浄、及び乾燥処理を行った。
【0178】
<評価結果>
表11に、上記の製造工程によって製造された各サンプル生地(比較例4)についてのカルボキシル基量(COOH基量)、重合度、及び反応効率を示す。
【0179】
【表11】

【0180】
<結果と考察>
比較例4より、工程(1b)において、4−ヒドロキシ−TEMPOに代えてNaClOを再添加した場合、セルロース繊維の白度低下が大きくなり、ケトンが生成しているものと考えられる。また、重合度の低下も確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、酸化剤、及び助触媒を含む反応溶液中で、セルロース繊維を酸化させる反応工程(1a)、並びに
工程(1a)の反応後、反応溶液中に、さらに、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルを加え、セルロース繊維をさらに酸化させる工程(1b)を含む
親水性化セルロース繊維の製造方法。
【請求項2】
工程(1a)及び工程(1b)における4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルの合計の配合割合が、0.1〜20%owfである請求項1に記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【請求項3】
工程(1a)における4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルの配合割合が、0.05〜10%owfである請求項1又は2に記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【請求項4】
工程(1b)における4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルの配合割合が、0.05〜10%owfである請求項1〜3のいずれかに記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【請求項5】
工程(1a)における反応時間が、1〜30分である請求項1〜4のいずれかに記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【請求項6】
工程(1a)で用いられる酸化剤が、ハロゲン酸系酸化剤である請求項1〜5のいずれかに記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【請求項7】
工程(1a)で用いられるハロゲン酸系酸化剤が、次亜ハロゲン酸、ハロゲン化イソシアヌル酸又はこれらの塩である請求項6に記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【請求項8】
工程(1a)及び工程(1b)によって得られた酸化セルロース繊維を、さらに酸化剤を含む反応溶液中で酸化させる工程(2)を含む請求項1〜7のいずれかに記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【請求項9】
工程(2)で用いられる酸化剤が、ハロゲン酸系酸化剤である請求項8に記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【請求項10】
工程(2)で用いられるハロゲン酸系酸化剤が、亜ハロゲン酸又はその塩である請求項9に記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【請求項11】
工程(2)で得られた酸化セルロース繊維を、さらに脱ハロゲン化剤で脱ハロゲン処理する工程(3)を含む請求項8〜10のいずれかに記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【請求項12】
工程(2)によって得られた酸化セルロース繊維を、さらに還元剤を含む反応溶液中で還元させる還元処理工程(4a)を含む請求項8〜10のいずれかに記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【請求項13】
工程(3)によって得られた酸化セルロース繊維を、さらに還元剤を含む反応溶液中で還元させる還元処理工程(4b)を含む請求項11に記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【請求項14】
工程(2)で得られた酸化セルロース繊維を、さらに脱ハロゲン化剤、及び還元剤と混合し、酸化セルロース繊維中に残存するハロゲンを除去する脱ハロゲン処理を行うと共に、酸化セルロース繊維のグルコース単位の2位及び/又は3位に存在するケトン基を還元する還元処理を行う工程を含む請求項8〜10のいずれかに記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【請求項15】
脱ハロゲン化剤が、過酸化水素、及びオゾンよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項11又は14に記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。
【請求項16】
還元剤が、チオ尿素、ハイドロサルファイト、亜硫酸水素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、及び水素化ホウ素リチウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項12〜15のいずれかに記載の親水性化セルロース繊維の製造方法。

【公開番号】特開2013−96039(P2013−96039A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241906(P2011−241906)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】