説明

計数部にLCD表示器を有する流量計

【課題】 計数部の前面を直角方向から見た場合に流量表示が見やすくなる計数部にLCD表示器を有する流量計を提供する。
【解決手段】 計数部にLCD表示器を有する流量計としての容積流量計1は、流量検出部からの信号を処理して流量を表示する計数部3に設けられる計数部ケース25の前面内側に存在するLCD表示器5を、計数部ケース25の前面に対して傾けた状態に配置してなるものとする。具体的には、計数部3の前面に対して直角となる方向(矢印Q)と、LCD表示器5の単体においてこの表示面に対し例えば斜め下方向から見た場合に見やすくなる方向(斜め下方向)とが略一致するようにLCD表示器5を傾けて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定流体の流量を液晶表示するLCD表示器を有する計数部を構成に備えた流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD表示器を有する計数部を構成に備えた流量計として、以下、容積流量計を一例に挙げて説明する。
【0003】
容積流量計は、内部に回転子を設けた計量室を有している。回転子は、計量室内に流入する被測定流体の体積に比例して回転するように配置されている。容積流量計は、回転子の回転から流量を求める体積流量計であって、流量計を取り付ける配管形状による流れ変化影響を受けることが殆どないという特性を有している。容積流量計は、例えば下記特許文献1の開示技術等により一般的に知られている。
【0004】
下記特許文献1に開示された容積流量計は、容器本体と蓋体とで構成される容器内に計数部が内蔵されている。容器は、計数部に対して別体の構成となっている。計数部で演算された流量は、計数部に設けられたLCD表示器に数値によって表示されるようになっている。LCD表示器に表示された流量は、蓋体の窓を介して視認することができるようになっている。
【0005】
容積流量計は、配管の所定位置に取り付ける際に、又は取り付けられた後に、計数部の前面(具体的には計数部ケースの前面)がこの前面の直角方向から見られるように計数部の向きが調整されている。下記特許文献1に開示された容積流量計も蓋体の窓を介して計数部の前面が直角方向から見られるように取り付け調整されている。
【0006】
下記特許文献1に開示された容積流量計は、計数部前面の表ガラスが蓋体の窓に対して平行に配置されるとともに、計数部前面の表ガラスの奥に存在するLCD表示器が表ガラスに対して平行に配置される構造を有している。
【特許文献1】特許第3529201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
流量計において用いられるLCD表示器は、単に流量を数値によって表示することを目的としており、また、安価なもので十分に機能を果たすことから、次のような問題点を有している。すなわち、流量計用のLCD表示器として、例えば電卓で用いられる安価なLCD表示器と同じものを利用すると、表示された数値は表示面に対して直角方向から見るよりも、斜め上又は斜め下方向から見る場合の方が若干よく見えるようになることから(電卓の使用形態に合う表示であるため)、流量計用のLCD表示器においては、コストを優先させると見やすさが犠牲になってしまうという問題点を有している。
【0008】
その他の問題点としては、流量計が様々な環境で使用されることから、LCD表示器が使用環境の温度により影響を受けてしまうような場合には、輝度に変化が出て見難くなってしまう恐れがあるという問題点を有している。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、計数部の前面を直角方向から見た場合に流量表示が見やすくなる計数部にLCD表示器を有する流量計を提供することを課題とする。また、常に見やすい表示が維持される計数部にLCD表示器を有する流量計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の計数部にLCD表示器を有する流量計は、流量検出部からの信号を処理して流量を表示するための計数部に設けられる計数部ケースの前面内側に存在するLCD表示器を、前記計数部ケースの前記前面又は前記計数部を収容する別体の容器の前面に対して傾けた状態に配置することによりなることを特徴としている。
【0011】
このような特徴を有する本発明によれば、表示面に対して斜め上又は斜め下方向から見た場合に見やすくなるようなLCD表示器の前記方向と、計数部の前面(計数部ケースの前面)に対して直角となる方向とが略一致するようにLCD表示器が傾けられて配置される。傾きは例えば30°位までの範囲であり、この程度の範囲であれば、計数部の前面を直角方向から見てもLCD表示器の配置として違和感は感じられないものとなる。これは、LCD表示器の前方に存在する例えば表ガラスや、LCD表示器の周囲に存在する化粧パネルが、計数部の前面に対して略平行に配置されるからであり、LCD表示器の傾きが小さい状態で配置されれば、ユーザーはこの傾きに気が付くことなくLCD表示器に表示された数値を見て流量を把握することができるようになる。LCD表示器を傾けて配置することにより、コストを優先させても見やすさが犠牲になるようなことは避けられる。尚、計数部は、これ自体を別体の容器に収納して使用する形態もあることから、計数部を別体の容器内に収納する場合には、LCD表示器を容器前面に対して傾くように配置すればよい。これにより、見やすさが犠牲になるようなことは避けられる。
【0012】
請求項2記載の本発明の計数部にLCD表示器を有する流量計は、請求項1に記載の計数部にLCD表示器を有する流量計において、前記計数部の周囲の温度に応じて前記LCD表示器の輝度を自動調節する自動輝度調節手段を前記計数部に設けることを特徴としている。
【0013】
このような特徴を有する本発明によれば、計数部の周囲の温度に応じてLCD表示器へ供給される駆動電圧が決定される。温度の測定及び駆動電圧の決定は、自動輝度調節手段により行われ、例えば、温度によって抵抗値が変化するサーミスタを用いて次のような処理が行われる。先ず、自動輝度調節手段では、サーミスタの抵抗変化が電圧変化のデータとして取り込まれる。次に、この取り込んだデータに基づいてLCD表示器の輝度が自動調節される。本発明によれば、LCD表示器に対する温度補償機構を有することになり、常に見やすい表示が維持される。
【0014】
請求項3記載の本発明の計数部にLCD表示器を有する流量計は、請求項1に記載の計数部にLCD表示器を有する流量計において、前記LCD表示器の輝度を任意に調節する手動用の任意輝度調節手段を前記計数部に設けることを特徴としている。
【0015】
このような特徴を有する本発明によれば、例えば表示状態の微調整が必要な場合に、LCD表示器へ供給される駆動電圧が任意輝度調節手段によって変更される。例えば、任意輝度調節手段では、抵抗値を変化させることが可能なボリューム等を用いてユーザーが抵抗値を変化させると、この抵抗値の変化が電圧変化のデータとして取り込まれる。次に、この取り込んだデータに基づいてLCD表示器の輝度が調節される。本発明によれば、任意輝度調節手段を有することにより、見やすい表示に維持することが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載された本発明によれば、計数部の前面を直角方向から見た場合に、又は、計数部を収容する別体の容器前面を直角方向から見た場合に、流量表示が従来よりも見やすくなるという効果を奏する。また、請求項2に記載された本発明によれば、様々な環境で使用されても常に見やすい表示が維持されるという効果を奏する。また、請求項3に記載された本発明によれば、例えば表示状態の微調整が可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の計数部にLCD表示器を有する流量計の一実施の形態を示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)は要部断面図である。また、図2は計数部にLCD表示器を有する流量計の取り付け状態を示す斜視図、図3は計数部全体の向きに係る説明図、図4は本体部の分解斜視図、図5は計数部にLCD表示器を有する流量計の制御説明に係るブロック図である。
【0018】
図1において、引用符号1は本発明の計数部にLCD表示器を有する流量計の一例となる容積流量計を示している。容積流量計1は、本体部2と、この本体部2の軸方向に対して直交方向から本体部中間に取り付けられる計数部3とを備えて構成されている。容積流量計1は、図2に示すように配管4の途中に取り付けられており、この配管4の内部を流れる被測定流体(図示省略)を計量して計数部3の内部で流量に係る演算をすることができるように構成されている。また、容積流量計1は、演算により得られた流量を計数部3に設けたLCD表示器5に表示することができるように構成されている。容積流量計1は、後述するが、従来に比べてLCD表示器5における流量表示が見やすくなるような工夫が施されている。
【0019】
図2において、上流側の配管4と本体部2の上流側フランジ6との間には、ストレーナ7が設けられている。図2中の引用符号8はバイパス管を示している。また、引用符号9はバルブを示している。バルブ9は、3つ図示されている。バイパス管8は、容積流量計1の分解点検の際に用いる部分として設けられている。通常では、バイパス管8のバルブ9が閉じられており、分解点検の際には、ストレーナ7の上流のバルブ9と本体部2の下流側フランジ10の下流側のバルブ9とが閉じられるようになっている。
【0020】
図2及び図3において、計数部3は、矢印P方向に向きを変えることができるような流量読み取り方向変更機構11を有している。この流量読み取り方向変更機構11を有することにより、ユーザーは計数部3の前面に対して直角方向からこれを見ることができるようになっている。ユーザーは、容積流量計1の配置が例えばユーザーの足元側や頭側になったとしても、計数部3の前面に対して直角方向からこれを見ることができるようになっている。人間の行動として、計数部3の前面を直角方向から見ることは一般的なことであり、本形態において流量読み取り方向変更機構11は有用な部分となっている。
【0021】
図1及び図4において、本体部2は、計数部3の取付台座12が取り付く前蓋部13と、計量室14を有する計量室形成部15と、計量室14内に収納されて回転子軸16、16により回転する二つの回転子17、18と、計量室形成部15に連続する上流側フランジ6及び下流側フランジ10とを備えて構成されている。前蓋部13は、回転子17、18を回転自在に収納した状態で計量室14を覆う部材として形成されている。このような前蓋部13は、ネジ19によって計量室形成部15に対して固定されるようになっている。
【0022】
前蓋部13と計量室形成部15との間には、Oリング20が設けられている。また、前蓋部13と取付台座12との間には、パッキン21が設けられている。回転子17には、S極とN極の二つの磁石22が設けられている。二つの磁石22は、図示のように離れて配置されており、前蓋部13の凹部23に収納される、計数部3の流量検出部24(公知のものと同じであり具体的な図示は省略する)により検知されるようになっている。回転子17、18は、計量室14内に流入する被測定流体(図示省略)の体積に比例して回転するように配置されている。
【0023】
図1及び図2において、計数部3は、取付台座12と、この取付台座12よりも前方の流量読み取り方向変更機構11と、流量読み取り方向変更機構11よりも前方の計数部ケース25とを備えて構成されている。取付台座12の内部には、流量検出部24(図5参照)が設けられている。流量検出部24からの信号(被測定流体の計量に係る信号)は、計数部ケース25に内蔵された制御演算部26(図5参照)に取り込まれるようになっている。流量読み取り方向変更機構11の反対側の位置には、パルス発信器27が設けられている。パルス発信器27は、ケーブル28を介して例えばF/I変換器、積算計(図示省略)に接続されている。
【0024】
計数部ケース25には、LCD表示器5が設けられている。LCD表示器5は、流量を数値によって表示する装置であって、従来に比べて流量表示が見やすくなるようにするために、LCD表示器5よりも前方となる計数部3の前面に対して角度θ分だけ傾けた状態に配置されている。もう少し具体的に説明すると、図1中の引用符号29、30は計数部3の前面を構成する平らな部材であって、ここでは透明な部材(表ガラスのように機能する部材)と化粧パネル(LCD表示器5に対する開口部31を有する。また、LCD表示器5の周囲に存在する)とを示しており、LCD表示器5はこれら透明な部材29及び化粧パネル30に対して角度θ分だけ傾けた状態に配置されている。透明な部材29は、計数部ケース25の前面に設けられている。
【0025】
LCD表示器5を傾けて配置するために、本形態においては専用の表示器配置部材32が設けられている(配置に係る構造は一例であるものとする)。表示器配置部材32は、幾つかの傾きが可能となるように複数の溝33を有している。表示器配置部材32は、例えば化粧パネル30に対して固定されている。計数部3の前面に一番近い溝33は、この計数部3の前面に対して角度θ分だけ傾けた状態となるように形成されている。LCD表示器5は、表示器配置部材32の上部から対応する溝33に差し込まれて下方に案内されると、上記のような状態に配置されるようになっている。LCD表示器5は、角度θ分だけ傾けられた状態に配置された後に、溝33に取り付けられる抜け止め部材(図示省略。着脱自在なものが好ましい)によって固定されるようになっている。
【0026】
本発明によれば、計数部3の前面(ここでは計数部ケース25の前面となる透明な部材29)に対して直角となる方向(矢印Q参照)と、LCD表示器5の単体においてこの表示面に対し例えば斜め下方向から見た場合に見やすくなる方向(斜め下方向)とが略一致するように、LCD表示器5が傾けられて配置される構造であることから、安価なLCD表示器5を利用する場合であっても流量表示が従来よりも見やすくなるようになっている。
【0027】
図1及び図5において、計数部ケース25に内蔵される制御演算部26は、流量検出部24からの信号を取り込んで流量に係る演算を行うとともに、演算によって得られた流量データをLCDドライバ34を介してLCD表示器5に表示させることができるように構成されている。LCD表示器5の輝度に関しては、後述する自動輝度調節手段、任意輝度調節手段によって制御されるようになっている。LCDドライバ34は、LCD表示器5の表示及び輝度調節の際に用いるものとして設けられている。
【0028】
上記自動輝度調節手段は、計数部3の周囲の温度に応じてLCD表示器5の輝度を自動調節する機能を有している。上記自動輝度調節手段は、サーミスタ35、電圧変換部36、LCDドライバ34により構成されている。上記任意輝度調節手段は、LCD表示器5の輝度を手動で任意に調節する機能を有している。上記任意輝度調節手段は、ボリューム37、電圧変換部36、LCDドライバ34により構成されている。サーミスタ35やボリューム37は、例えば計数部ケース25の目立たない位置に配置されている。
【0029】
上記自動輝度調節手段においては、電圧変換部36を介してサーミスタ35の抵抗値変化がLCDドライバ34に取り込まれるようになっている。また、上記自動輝度調節手段においては、取り込まれた電圧変化のデータに基づいてLCDドライバ34がLCD表示器5の輝度を自動で調節するようになっている。上記自動輝度調節手段を備えることにより、容積流量計1が様々な環境で使用されても常に見やすい表示を維持することができるようになっている(尚、上記自動輝度調節手段の設定は任意であるものとする)。
【0030】
上記任意輝度調節手段においては、ボリューム37を用いてユーザーが抵抗値を変化させると、この抵抗値の変化が電圧変換部36を介してLCDドライバ34に取り込まれるようになっている。また、上記任意輝度調節手段においては、取り込まれた電圧変化のデータに基づいてLCDドライバ34がLCD表示器5の輝度を調節するようになっている。上記任意輝度調節手段は、LCD表示器5の表示状態の微調整を行う際に好適な手段となっている(尚、上記任意輝度調節手段の設定は任意であるものとする)。
【0031】
以上、図1ないし図5を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、計数部3の前面を直角方向から見た場合に流量表示が従来よりも見やすくなるという構造になっている。また、本発明によれば、様々な環境で使用されても常に見やすい表示が維持されるという構造になっている。さらに、本発明によれば、表示状態の微調整ができるという構造になっている。
【0032】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の活用例として、上述の容積流量計の他に、コリオリ流量計や渦流量計等のLCD表示器を有する流量計が挙げられるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の計数部にLCD表示器を有する流量計の一実施の形態を示す図であり、(a)は外観斜視図、(b)は要部断面図である。
【図2】計数部にLCD表示器を有する流量計の取り付け状態を示す斜視図である。
【図3】計数部全体の向きに係る説明図である。
【図4】本体部の分解斜視図である。
【図5】計数部にLCD表示器を有する流量計の制御説明に係るブロック図である。
【符号の説明】
【0035】
1 容積流量計(計数部にLCD表示器を有する流量計)
2 本体部
3 計数部
4 配管
5 LCD表示器
6 上流側フランジ
7 ストレーナ
8 バイパス管
9 バルブ
10 下流側フランジ
11 流量読み取り方向変更機構
12 取付台座
13 前蓋部
14 計量室
15 計量室形成部
16 回転子軸
17、18 回転子
19 ネジ
20 Oリング
21 パッキン
22 磁石
23 凹部
24 流量検出部
25 計数部ケース
26 制御演算部
27 パルス発信器
28 ケーブル
29 透明な部材
30 化粧パネル
31 開口部
32 表示器配置部材
33 溝
34 LCDドライバ
35 サーミスタ
36 電圧変換部
37 ボリューム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量検出部からの信号を処理して流量を表示するための計数部に設けられる計数部ケースの前面内側に存在するLCD表示器を、前記計数部ケースの前記前面又は前記計数部を収容する別体の容器の前面に対して傾けた状態に配置することによりなる
ことを特徴とする計数部にLCD表示器を有する流量計。
【請求項2】
請求項1に記載の計数部にLCD表示器を有する流量計において、
前記計数部の周囲の温度に応じて前記LCD表示器の輝度を自動調節する自動輝度調節手段を前記計数部に設ける
ことを特徴とする計数部にLCD表示器を有する流量計。
【請求項3】
請求項1に記載の計数部にLCD表示器を有する流量計において、
前記LCD表示器の輝度を任意に調節する手動用の任意輝度調節手段を前記計数部に設ける
ことを特徴とする計数部にLCD表示器を有する流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−47018(P2007−47018A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231647(P2005−231647)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)
【Fターム(参考)】