説明

記録装置

【課題】固着したロールに対して、メディアを傷めずに、確実にメディアを剥離する。
【解決手段】メディア2を挟持して印刷位置に搬送する搬送ローラ14とロール3の間に剥離ローラ7を配置する。剥離ローラ7は、剥離モータ9によって回転し、ロール3からメディアをロール3の接線方向に引き剥がす。また、剥離ローラ7と搬送ローラ14の間には、メディア2を弛ませた弛み部分18が形成されており、ここにテンションローラ8を乗せて引き剥がしたメディア2に一定の張力(テンション)を付与している。弛み部分18の弛み量は、弛み部分18の下端部分を赤外線を用いたセンサで監視することにより検出され、印刷装置は、弛み量が所定範囲となるように剥離ローラ7でメディア2を剥離して供給する。一定の張力が付与されたメディア2は、搬送ローラ14によってプラテン15上に送られ、ヘッド13によって印刷される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関し、例えば、ロール状に巻かれた印刷媒体を引き出し、当該印刷媒体にインクを吐出して印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、デパートの垂れ幕広告や看板など、プラスチックのシート材などのメディアにインクを吐出して、文字や画像などを記録(印刷)する大型のインクジェット式の印刷装置がある。
この種の印刷装置では、メディアをロール状に巻装したロール(ロール紙)を装着し、これをメディアの送り出し方向に回転させてメディアをプラテン上の印刷部に供給するようになっている。
【0003】
ところで、ロールは、例えば、自重が数十〜百キログラム程度あり、これを横に置いて保管しておくと、自重によりメディアが固着する場合がある。
この場合、ロールの固着部分を剥離しながら印刷部に送出する必要があるが、このような機構を有する印刷装置として、次の特許文献1の「印字装置の用紙剥離機構」がある。
【特許文献1】特開2007−268824号公報
【0004】
この技術は、ロールの表面に付勢され、メディアの固着部分に当接する剥離爪を備えたものである。
この技術によれば、メディアが固着したロールを回転させると、固着した部分が送り出されずに剥離爪に当接してメディアが剥離される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、剥離爪を用いると、爪の先端がメディアの印刷前の印刷面を擦ることになり、印刷面を傷つけてしまうことがある。
また、メディアが強力に固着している場合には、剥離爪では剥離することができず、仮に、できたとしても、剥離爪のロールへの圧接力を強くする必要があり、メディアの表面の傷を大きくしてしまう可能性がある。
更に、ロールの巻装方向(内巻き、外巻き)に応じて剥離爪のセット位置を変えなければならず、剥離爪の設定に手間がかかった。
【0006】
そこで、本発明は、固着したロールに対して、メディアを傷めずに、確実にメディアを剥離することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では記録媒体を巻いたロールを装着するロール装着手段と、前記記録媒体を記録動作に従って搬送ローラで搬送する搬送手段と、前記搬送された記録媒体に記録を行う記録手段と、前記ロール装着手段と前記搬送ローラの間に配置され、前記装着したロールから記録媒体を剥離ローラの回転によって引っ張り、前記ロールから剥離する剥離手段と、を具備したことを特徴とする記録装置を提供する。
請求項2に記載の発明では、前記記録媒体に所定の張力を付与する張力ローラを前記剥離ローラと前記搬送ローラの間に乗せることにより形成された当該記録媒体の弛み部分の弛み量を検出する弛み量検出手段を具備し、前記剥離手段は、前記検出した弛み量に応じて前記記録媒体の剥離量を調節することを特徴とする請求項1に記載の記録装置を提供する。
請求項3に記載の発明では、前記弛み量検出手段は、発光部から受光部に至る光が前記弛み部分で遮られたか否かにより前記張力ローラの位置を検出することを特徴とする請求項2に記載の記録装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、剥離ローラを用いて固着したメディアを剥離することにより、メディアを傷めずに、確実にメディアを剥離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(1)実施の形態の概要
図1は、本実施の形態の印刷装置の概要を説明するための図である。
メディア2を挟持して印刷位置に搬送する搬送ローラ14とロール3の間に剥離ローラ7を配置する。剥離ローラ7は、剥離モータ9によって回転し、ロール3からメディアをロール3の接線方向に引き剥がす。必要な場合には、ロール回転モータ52でロール3を回転することもできる。
【0010】
また、剥離ローラ7と搬送ローラ14の間には、メディア2を弛ませた弛み部分18が形成されており、ここにテンションローラ8を乗せて引き剥がしたメディア2に一定の張力(テンション)を付与している。
弛み部分18の弛み量は、弛み部分18の下端部分を赤外線を用いたセンサで監視することにより検出され、印刷装置は、弛み量が所定範囲となるように剥離ローラ7でメディア2を剥離して供給する。
【0011】
テンションローラ8によって一定の張力が付与されたメディア2は、搬送ローラ14によってプラテン15上に送られ、ヘッド13によって印刷される。
搬送ローラ14は、メディア2の張力が一定であるため、安定してメディア2を搬送することができ、これによってヘッド13による印刷も安定する。
このように、本実施の形態では、剥離し難いロール3を使用する際に、ロール3からメディア2を引き剥がしながら剥離して送る搬送機構を有する印刷装置を提供することができる。
【0012】
(2)実施の形態の詳細
図2は、本実施の形態の印刷装置1の側面を示した図である。
印刷装置1には、巻装軸がY方向(紙面と垂直な方向)と並行となるように印刷前のロール3(ロールメディア)が設置されている。
【0013】
ロール3は、スクローラ5のスクローラ軸に取り付けられており、スクローラ5と共に自由に回転することができる。
また、印刷装置1は、スクローラ5を図示しないロール回転モータで回転させてロール3を送り出し方向、又は巻き戻し方向に回転することも可能である。
ロール3から送り出されたメディア2は、剥離ローラ7、テンションローラ8、後方メディアガイド11、及び搬送ローラ14を経てプラテン15上に導かれる。
【0014】
プラテン15の上方では、ヘッド13が、Yレールと呼ばれるレール状のガイドに沿ってY方向に移動できるようになっており、ヘッド13は、Yレール上を移動しながら下端面のノズルよりメディア上にインクを吐出する。
ヘッド13によって印刷されたメディア2は、前方メディアガイド12を経て、ロール4に巻き取られる。
【0015】
前方メディアガイド12にはヒータが内蔵されており、この熱によってメディア2に吐出されたインクが乾燥する。
ロール4には、スクローラ6のスクローラ軸に取り付けられており、印刷装置1は、スクローラ6をモータで回転させて、印刷後のメディア2をロール4に巻き取る。
【0016】
印刷装置1の前方メディアガイド12側には、操作パネルが設けられており、ユーザは操作パネルの前に立って印刷装置1を操作する。
このため、以下では、印刷装置1に対して、前方メディアガイド12の側(紙面右側)を前方側、後方メディアガイド11の側(紙面左側)を後方側とする。
また、ヘッド13が設置されている側(紙面上側)を上方側、ロール3やロール4が設置されている側(紙面下側)を下方側とする。
以上の印刷装置1は、メディアの表面にインクを塗布して記録を行う記録装置として機能している。
【0017】
図3は、印刷装置1の後方側面を詳細に示した図である。
スクローラ5は、円板形状の部材の中心軸にスクローラ軸を設けて構成されており、ロール3の中心の空芯部分に当該スクローラ軸を挿入してロール3がスクローラ5に取り付けられている。
ロール3には、外巻きメディアと内巻きメディアが存在し、図3は外巻きメディアの場合を示している。メディア2の外巻きと内巻きについては、後ほど詳細に説明する。
このように、印刷装置1は、スクローラ5を用いて、記録媒体(メディア2)を巻いたロール(ロール3)を装着するロール装着手段を備えている。
【0018】
スクローラ5の下方には、スクローラ軸と並行な回転軸を有する2つのローラ53が前後方向に間隔を隔てて設置されている。
これらローラ53の外周は、スクローラ5の円板形状の部材の外周と接しており、印刷装置1は、図示しないロール回転モータでローラ53を回転させて、スクローラ5、及びこれに取り付けられたロール3をスクローラ軸の周りに回転させることができる。
【0019】
ローラ53の回転は、図示しないレバースイッチによりユーザが操作することができるようになっている。
ユーザは、メディア2を印刷装置1にセッティングする場合や、メディア2を巻き戻す場合に、レバースイッチを操作して、ロール3を所望の方向に回転させることができる。
また、レバースイッチでは、ローラ53の駆動を切断することもできる。この場合、スクローラ5、及びロール3は自由に回転する。
【0020】
なお、印刷装置1がメディア2を印刷している間は、剥離ローラ7がメディア2を剥離して、これをロール3から引っ張って供給するため、ロール3の回転を自由回転に設定する。
ただし、剥離ローラ7に同期して、ロール3をローラ53で回転させるように構成することも可能である。
【0021】
剥離ローラ7は、ロール3の上方、かつ、前方側に回転軸がロール3の回転軸と並行となるように設置されており、メディア2の弛みを作るのに十分な高さを確保すると共に、弛みがロール3などに干渉しないようになっている。
剥離ローラ7の周面は、ゴムなどの滑り止め部材で覆われており、メディア2と密着して滑らないようになっている。
【0022】
剥離ローラ7は、印刷装置1の後方に張り出した剥離ローラ支持部材16の先端側に取り付けられており、剥離ローラ支持部材16の根元側の紙面の裏側方向には剥離モータ9が設置されている。
剥離モータ9と剥離ローラ支持部材16の間にはベルト10が掛けられており、ベルト10を介して剥離モータ9の回転力が剥離ローラ7に伝達され、これによって剥離ローラ7が回転する。
【0023】
メディア2は、ロール3から引き出されて、剥離ローラ7の上側の周面に掛けられており、剥離ローラ7をメディア2の送り出し方向に回転すると、メディア2は、剥離ローラ7の回転によって引っ張られ、ロール3の接線方向に引き剥がされる。
【0024】
剥離モータ9の駆動力、及び、剥離ローラ7の周面とメディア2の摩擦力は、固着したメディア2を引き剥がすのに十分耐えられるように設定されている。
なお、剥離ローラ7は、上下方向からメディア2を挟むピンチローラによって構成することも可能である。
【0025】
テンションローラ8は、例えば、アルミなどの材質で構成されたパイプ状のローラで構成されている。また、円柱状の棒材によって構成することもできる。
剥離ローラ7と後方メディアガイド11の間には、メディア2を弛ませた弛み部分18(弛みバッファ)が設けてあり、テンションローラ8は、当該弛み部分18に乗せられている。
【0026】
テンションローラ8の位置は、弛み量の変化により上下するが、テンションローラ8は、単にメディア2の弛み部分18に置かれているため、メディア2に一定の張力を付与することができる。
なお、厳密には、テンションローラ8が上下する際に、テンションローラ8の慣性により張力が変動するが、この変動は、搬送ローラ14がメディア2を安定供給する上で無視できる程度に小さい。
【0027】
また、テンションローラ8は、例えば、揺動式のテンションバー(腕の先に取り付けたバーの自重でメディア2を下方に加圧する)とすることも考えられるが、ある支点を中心として腕の先のテンションバーが回転するため、腕の慣性もバーに加わり、バーの位置によって張力が異なる場合がある。そのため、腕付きのテンションバーよりも、単に置いただけのテンションローラ8の方が望ましい搬送精度を得ることができる。
【0028】
また、回転中心の前後にバーを配置したテンションバーの構成もあるが、メディア2に加える張力に対して、テンションバー自体の慣性モーメントが大きくなりがちであり、始動及び停止時の張力変化が大きくなって、搬送精度に好ましくない影響を及ぼすことがある。
しかし、十分に軽い素材を用いて腕を形成するなどして、揺動式のテンションバーや回転中心の前後にバーを配置したテンションバーを実装することも可能である。
【0029】
テンションローラ8の後方には、張り出し部材17に上発光源23と下発光源24が設けられている。
上発光源23は、下発光源24の上方に設けられており、上発光源23、下発光源24は、それぞれ略前方斜め下方向に赤外線を発している。
一方、テンションローラ8の前方には、上発光源23、下発光源24の赤外線を検出する上センサ21、下センサ22の2つの受光センサが設けられている。
【0030】
上センサ21は、下センサ22の上方に設けられており、上センサ21と下センサ22の間隔は、上発光源23と下発光源24の間隔よりも大きく設定されている。
そして、上センサ21は、上発光源23から前方やや斜め下方向に発せられた赤外線25を検出し、下センサ22は、下発光源24から前方斜め下方向に発せられた赤外線26を検出する。
【0031】
上発光源23から上センサ21に至る赤外線25、及び下発光源24から下センサ22に至る赤外線26の光路は、テンションローラ8の回転軸と垂直な同一平面上にあり、メディア2のなす面によって遮られる位置に設定されている。
【0032】
このため、メディア2の弛み部分18の下端部分が、赤外線25よりも上にある場合には、上センサ21、下センサ22の両方が赤外線を検知し、下端部分が赤外線26よりも上で赤外線25以下の場合には、下センサ22のみが赤外線を検知し、下端部分が赤外線26以下の場合には、上センサ21、下センサ22の両方とも赤外線を検知しない。
印刷装置1は、このようにしてメディア2の弛み量、即ち、テンションローラ8の位置を検知し、これに応じて剥離ローラ7を駆動して、メディア2の剥離量を調節する。
【0033】
剥離量の調整方法は、各種考えられるが、例えば、印刷装置1は、下センサ22が赤外線26を検知すると、剥離モータ9を一定期間、一定速度で駆動して停止する。
即ち、メディア2が印刷により消費されると、テンションローラ8が上方向に上がって弛み量が小さくなってくる。そして、弛みの下端部分が赤外線26の上に上がると、印刷装置1は、これを下センサ22によって検知し、剥離ローラ7を駆動して、一定量のメディア2をロール3から剥離・供給する。
【0034】
また、ロール3のメディア2を使い切ると、印刷によってメディア2が消費されるにもかかわらず、ロール3からメディア2が供給されないため弛み量が小さくなり、下端部分が赤外線25よりも上がって、上センサ21が赤外線を検知する。
印刷装置1は、これによって、メディア切れを検知し、印刷動作を停止して、ユーザにアラームを発する。
【0035】
なお、剥離ローラ7の引き剥がし力の最大値は、メディア2の固着を引き剥がすのに必要な程度(例えば、8kg)であり、これ以上の力を要する場合には、離ローラ7は回転しない。このため、メディア切れの場合には、ロール3からメディア2を引きちぎったり、スクローラ5を壊すことなく、弛み部分18の下端部分が上昇する。
【0036】
このように、印刷装置1は、記録媒体(メディア2)に所定の張力を付与する張力ローラ(テンションローラ8)を剥離ローラ(剥離ローラ7)と搬送ローラ(搬送ローラ14)の間に乗せることにより形成された当該記録媒体の弛み部分(弛み部分18)の弛み量を検出する弛み量検出手段を備え、当該検出した弛み量に応じて記録媒体の剥離量を調節している。
【0037】
また、当該弛み量検出手段は、発光部(上発光源23、下発光源24)から受光部(上センサ21、下センサ22)に至る光(赤外線25、赤外線26)が弛み部分18で遮られたか否かにより張力ローラ(テンションローラ8)の位置を検出している。
【0038】
後方メディアガイド11は、ロール3の中心軸と平行な軸の周りに形成された略円筒面を有する案内板であり、テンションローラ8から略垂直上方に搬送されてくるメディア2を水平方向に搬送されるように案内する。
【0039】
搬送ローラ14は、後方メディアガイド11の前方に設けられ、メディア2を上下方向から挟むピンチローラによって構成されている。
搬送ローラ14は、ヘッド13(図2)の印刷動作に同期してメディア2をヘッド13の下方に搬送する。
後方メディアガイド11から搬送ローラ14に供給されるメディア2には、テンションローラ8によって安定した最適の張力が作用しているため、搬送ローラ14は、安定してメディア2を搬送することができる。
【0040】
このように、印刷装置1は、記録媒体(メディア2)を記録動作(印刷動作)に従って搬送ローラで搬送する搬送手段を備えており、ヘッド13は、搬送された記録媒体に記録(印刷)を行う記録手段として機能している。
また、印刷装置1は、ロール装着手段(スクローラ5など)と搬送ローラ(搬送ローラ14)の間に配置され、当該装着したロール(ロール3)から記録媒体(メディア2)を剥離ローラ(剥離ローラ7)の回転によって引っ張り、当該ロールから剥離する剥離手段を備えている。
【0041】
ところで、ロール3には、メディア2の外周面を印刷面とする外巻きメディアと、メディア2の内周面を印刷面とする内巻きメディアがあり、ロール3の外巻き、内巻きによって、印刷装置1への装着方法が異なる。以下、これらロール3の装着方法について説明する。
【0042】
図4(a)は、外巻きメディアのロール3をスクローラ5(図示せず)に設置したところを示している。
この場合、まず、ロール3の後端からメディア2を矢線のように送り方向に引っ張り出す。
次に、図4(b)に示したように、メディア2を、剥離ローラ7の上方で後方メディアガイド11に渡し、これを搬送ローラ14で挟んで更に前方メディアガイド12に渡し、図2に示したようにスクローラ6に巻き付ける。
【0043】
次に、図5(a)に示したように、ロール3を矢線に示した送り出し方向に回転させてメディア2を剥離ローラ7と後方メディアガイド11の間で弛ませ、そこにテンションローラ8を置く。
そして、図5(b)に示したように、ロール3を更に送り出し方向に回転させて弛み部分の下端部分が上センサ21、下センサ22で検知される所定位置に位置するように更にメディア2を弛ませる。
以上のようにして、外巻きメディアは印刷装置1に装着される。
【0044】
図6(a)は、内巻きメディアのロール3をスクローラ5(図示せず)に設置したところを示している。
この場合、まず、ロール3の前端からメディア2を矢線のように送り出し方向に引っ張り出す。なお、外巻きメディアと内巻きメディアでは、送り出し方向が逆となる。
次に、図6(b)に示したように、メディア2を、剥離ローラ7の上方を介して後方メディアガイド11に渡し、これを搬送ローラ14で挟んで更に前方メディアガイド12に渡し、図2に示したようにスクローラ6に巻き付ける。
【0045】
次に、図7(a)に示したように、ロール3を矢線に示した送り出し方向に回転させてメディア2を剥離ローラ7と後方メディアガイド11の間で弛ませ、そこにテンションローラ8を置く。
そして、図7(b)に示したように、ロール3を更に送り出し方向に回転させて弛み部分の下端部分が上センサ21、下センサ22で検知される所定位置に位置するように更にメディア2を弛ませる。
以上のようにして、内巻きメディアは印刷装置1に装着される。
【0046】
図8は、印刷装置1の剥離ローラ制御系50を示したブロック図である。
剥離ローラ制御系50は、ロール3からメディア2を剥離する剥離装置として機能している。
剥離ローラ制御系50は、剥離制御部51、剥離モータ9、上発光源23、下発光源24、上センサ21、及び下センサ22などから構成されている。
【0047】
剥離制御部51は、上発光源23、下発光源24を駆動して赤外線を発光させると共に、上センサ21と下センサ22で赤外線が検知されるか否かを監視しており、検出結果に応じてメディア2の剥離が必要か否かを判断する。
そして、剥離が必要であると判断した場合、剥離制御部51は、剥離モータ9を駆動して、メディア2をロール3から剥離する。
【0048】
図9は剥離ローラ制御系50が行うメディア剥離処理の手順を説明するためのフローチャートである。
まず、剥離ローラ制御系50は、上発光源23、下発光源24に発光させ、上センサ21と下センサ22の検出値を監視する。
【0049】
次に、剥離ローラ制御系50は、下センサ22が赤外線26を検知したか否かを確認する(ステップ5)。
下センサ22が赤外線26を検知しなかった場合(ステップ5;N)、メディア2は必要なだけ弛んでいるため、剥離ローラ制御系50は、特に剥離ローラ7を駆動せず、引き続きステップ5にて確認を続行する。
【0050】
下センサ22が赤外線26を検知した場合(ステップ5;Y)、剥離ローラ制御系50は、更に上センサ21が赤外線25を検知したか否かを確認する(ステップ10)。
上センサ21が赤外線25を検知した場合(ステップ10;Y)、メディア切れであるため、剥離ローラ制御系50は、印刷処理を停止させ(ステップ20)、メディア切れを表示する(ステップ25)。
【0051】
一方、上センサ21が赤外線25を検知しなかった場合(ステップ10;N)、剥離ローラ制御系50は、剥離ローラ7を一定期間回転させて(ステップ15)、ロール3からメディア2を一定量だけ剥離して供給する。
その後、剥離ローラ制御系50は、ステップ5に戻り、下センサ22の出力を監視する。
【0052】
以上の処理により、剥離ローラ制御系50は、メディア2の弛みが必要な量よりも少なくなった場合に剥離ローラ7を回転させ、メディア2の弛みの量が所定の範囲となるように制御することができる。
また、剥離ローラ制御系50は、メディア切れを検知して、アラームを発することができる。
【0053】
図10は、剥離ローラ制御系50が行うメディア剥離処理の変形例を説明するためのフローチャートである。
本変形例では、剥離ローラ制御系50は、弛み部分18の下端部分が赤外線25と赤外線26の間にあるように制御を行う。
【0054】
まず、剥離ローラ制御系50は、上センサ21が赤外線25を検知しているか否かを確認する(ステップ50)。
上センサ21が赤外線25を検知しない場合(ステップ50;N)、剥離ローラ制御系50は、ステップ50にて引き続き上センサ21の監視を行う。
【0055】
上センサ21が赤外線25を検知した場合(ステップ50;Y)、弛み部分18の下端部分が上昇したため、剥離ローラ制御系50は剥離ローラ7を回転し、ロール3からメディア2を引き剥がす(ステップ55)。
そして、剥離ローラ制御系50は、剥離ローラ7の回転を維持しながら、下センサ22を監視し、下センサ22が赤外線26を検知した場合には(ステップ60;N)、弛み部分18の下端部分がまだ赤外線26に達していないため、ステップ55に戻って剥離ローラ7の回転を持続する。
【0056】
一方、下センサ22が赤外線26を検知しなかった場合には(ステップ60;Y)、弛み部分18の下端部分が下降して赤外線26を遮ったため、剥離ローラ制御系50は、剥離ローラ7を停止し(ステップ65)、ステップ50に戻る。
【0057】
以上に説明した本実施の形態により次のような効果を得ることができる。
(1)剥離ローラ7でメディア2を剥離するため、強固に固着したロール3であっても、メディア2の印刷面を傷つけることなく、強い剥離力でメディア2を剥離することができる。
(2)剥離ローラ7と搬送ローラ14の間でメディア2を弛ませて弛み部分18にテンションローラ8を置くことにより、搬送ローラ14直前のメディア2の張力は、一定に保たれ、高い搬送精度が得られる。
(3)赤外線を用いて弛み量を検出するため、機械的機構を必要とせず、故障率の低減、メンテナンスの容易化、及びコスト低減を図ることができる。
(4)テンションローラ8は、支持機構を必要としないため、内巻きメディア、外巻きメディアの何れに対しても特に設定を必要とせず、また、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施の形態の印刷装置の概要を説明するための図である。
【図2】本実施の形態の印刷装置の側面を示した図である。
【図3】印刷装置の後方側面を詳細に示した図である。
【図4】外巻きメディアのロールの装着方法を説明するための図である。
【図5】外巻きメディアのロールの装着方法を説明するための図である。
【図6】内巻きメディアのロールの装着方法を説明するための図である。
【図7】内巻きメディアのロールの装着方法を説明するための図である。
【図8】印刷装置の剥離ローラ制御系を示したブロック図である。
【図9】メディア剥離処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図10】メディア剥離処理の手順の変形例を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1 印刷装置
2 メディア
3 ロール
4 ロール
5 スクローラ
6 スクローラ
7 剥離ローラ
8 テンションローラ
9 剥離モータ
10 ベルト
11 後方メディアガイド
12 前方メディアガイド
13 ヘッド
14 搬送ローラ
15 プラテン
16 剥離ローラ支持部材
17 張り出し部材
18 弛み部分
21 上センサ
22 下センサ
23 上発光源
24 下発光源
25 赤外線
26 赤外線
50 剥離ローラ制御系
51 剥離制御部
52 ロール回転モータ
53 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を巻いたロールを装着するロール装着手段と、
前記記録媒体を記録動作に従って搬送ローラで搬送する搬送手段と、
前記搬送された記録媒体に記録を行う記録手段と、
前記ロール装着手段と前記搬送ローラの間に配置され、前記装着したロールから記録媒体を剥離ローラの回転によって引っ張り、前記ロールから剥離する剥離手段と、
を具備したことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記記録媒体に所定の張力を付与する張力ローラを前記剥離ローラと前記搬送ローラの間に乗せることにより形成された当該記録媒体の弛み部分の弛み量を検出する弛み量検出手段を具備し、
前記剥離手段は、前記検出した弛み量に応じて前記記録媒体の剥離量を調節することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記弛み量検出手段は、発光部から受光部に至る光が前記弛み部分で遮られたか否かにより前記張力ローラの位置を検出することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−279861(P2009−279861A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135314(P2008−135314)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(395003187)株式会社セイコーアイ・インフォテック (173)
【Fターム(参考)】