説明

設備洗浄方法及び装置

【課題】洗浄設備を短時間で十分に洗浄することができる設備洗浄方法及び装置を提供する。
【解決手段】超純水ライン2から超純水を配管3、5,8、半導体洗浄機10、配管15、循環水槽17に流した後、循環水槽17内の水を循環ポンプ20、配管21を介して循環させ、薬液槽11〜13から薬液を添加する。主要な配管や、薬液槽11〜13、循環水槽17、カラム30,33、フィルタ6等はケーシング50内に設置されてユニット化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハ、ガラス基板等の電子部品用材料などを超純水によって洗浄するための設備を洗浄する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化が年々進む半導体製造プロセスにおいて、洗浄工程に要求される水質はますます厳しいものになっている。特に洗浄水中の微粒子、金属などの低減化は強く要望されている。しかしながら、半導体洗浄機を半導体製造工場へ設置した後は、設置場所が高グレードのクリーンルームであるため、簡易に洗浄することが困難であった。
【0003】
超純水供給配管と半導体洗浄機とを連結する配管や、半導体洗浄機の内部は、超純水を通水し続けること(フラッシング)により清浄化されるが、近年の要求水準の高さと早期生産開始要求のため、フラッシング時間の短縮と高清浄化を両立させる必要がでてきた。
【0004】
特許文献1の請求項5には、純水を用いて半導体を洗浄する半導体洗浄装置に対し温純水を流して洗浄する方法が記載されている。しかしながら、温純水のみでは洗浄装置内を十分に洗浄することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−234979
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、洗浄設備を短時間で十分に洗浄することができる設備洗浄方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の設備洗浄方法は、超純水によって被洗浄物を洗浄する設備を洗浄する方法において、該設備に対し洗浄薬品含有水を供給して洗浄することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の設備洗浄装置は、超純水によって被洗浄物を洗浄する設備を洗浄するための設備洗浄装置において、超純水に洗浄薬品を添加した洗浄薬品含有水を該設備に供給する供給手段を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、設備から流出する洗浄薬品含有水を該設備に循環させることが好ましい。
【0010】
本発明の設備洗浄装置は、前記供給手段及び循環手段が1つのケーシング内に設置されてユニットとなっていることが好ましい。
【0011】
本発明の設備洗浄装置は、供給手段及び循環手段に対しパージガスを供給して水をパージするパージ手段をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、被洗浄物洗浄設備を薬品洗浄するので、該設備を十分に洗浄することができる。本発明では、該設備から流出する洗浄薬品含有水を該設備に循環供給することにより、薬品コストの低減、洗浄廃液量の低減を図ることができる。
【0013】
本発明では、主要な配管や弁、ポンプ薬品添加手段などを1つのケーシング内に設置することにより、クリーンルーム内に設備洗浄装置を容易に設置することができると共に、ケーシング内からルーム内汚染物質が発生することを防止することができる。
【0014】
本発明では、洗浄後にNなどのパージガスによって系内の水をパージすることにより、系内の乾燥を促進することができると共に、系内を貧酸素雰囲気とし、菌体繁殖を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の設備洗浄方法及び装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の設備洗浄方法及び装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の設備洗浄方法及び装置を示すブロック図である。
【図4】本発明の設備洗浄方法及び装置を示すブロック図である。
【図5】本発明の設備洗浄方法及び装置を示すブロック図である。
【図6】本発明の設備洗浄方法及び装置を示すブロック図である。
【図7】実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1〜6を参照して実施の形態について説明する。
【0017】
クリーンルーム内に設置された設備洗浄装置1は、超純水ライン2から配管3、弁4、配管5、純化装置としてのフィルタ6、弁7及び配管8を介して超純水を半導体洗浄機10に対し供給可能としている。この配管5に対し、薬液槽11,12又は13から薬注ポンプ11a,12a又は13aを介して洗浄薬液が添加されることにより、半導体洗浄機10に対し洗浄薬品含有水が供給される。半導体洗浄機10から流出する洗浄薬品含有水は、配管15及び弁16を介して循環水槽17に導入される。配管8のうちフィルタ6と弁7との間が配管15のうち該弁16の下流側に対しバイパス配管18で接続されている。なお、バイパス配管18は、配管15に接続される代りに、循環水槽17に開放していてもよい。
【0018】
循環水槽17内の水は、循環ポンプ20、配管21、弁22を介して前記配管5に循環可能とされている。配管21には流量計23が設けられている。循環ラインを構成する配管5,8,15,21及び循環水槽17のいずれかに水質計(図示略)が設けられている。この水質計としては、pH、導電率、ORPなどを計測するセンサが好適である。
【0019】
弁22よりも循環ポンプ20側の配管21から配管25が分岐している。この配管25は、弁26を介して、並列状の配管27,28,29に連通している。配管27は、H分解カラム30及び弁31を介して配管32に連なる。配管28はイオン交換樹脂カラム33及び弁34を介して配管32に連なる。配管29は弁35を介して配管32に連なる。配管32にはpH、導電率、ORPなどを測定する水質計36が設けられている。
【0020】
配管32は、弁37を介してピット38に排水可能とされている。配管32のうち弁37よりも上流側から弁40を有した配管41が分岐しており、該配管41の末端は前記循環水槽17に臨んでいる。
【0021】
なお、この実施の形態では、薬液槽11内の薬液は酸であり、薬液槽12内の薬液はアルカリであり、薬液槽13内の薬液は過酸化水素水である。酸としてはフッ酸、塩酸、硝酸、亜硝酸、硫酸、リン酸、酢酸などが好適であり、アルカリとしてはアンモニア、TMAH、コリンなどが好適であるが、これに限定されない。
【0022】
過酸化水素分解カラム30内の過酸化水素分解触媒としては活性炭、触媒等を用いることができるが、クリーンルーム内であるので触媒が好ましい。イオン交換樹脂カラム3内に充填するイオン交換樹脂としては、処理水のpHを中性にするために、混合樹脂が好適に用いられる。多くの場合、クリーンルームからは酸を未処理で排水できるため、イオン交換樹脂カラム33はアルカリをイオン交換樹脂で吸着することが多い。
【0023】
配管5の弁4直近部位に、パージガスとしてNガスを供給するように、弁43を備えた配管42が接続されている。
【0024】
上記の配管、弁、薬液槽、水槽、ポンプ及びカラム等が1個のケーシング50内に設置され、全体として一体の一基のユニットとなっている。ケーシング50からは配管3,8,15,32,42が突出している。
【0025】
配管3の材質は超純水の清浄度が維持されるならば特に制限はなく、通常クリーン塩ビ、PVDF、PFAなどが用いられる。循環水槽17の材質は、超純水の清浄度が維持され、注入薬品に耐性があるものであればよく、PE、PP、PTFEなどが通常用いられる。循環水槽17には水位計が設けられている。この水位計としては、薬品耐性があり、超純水の純度を低下させないものが用いられ、非接触の光学式、超音波式などが用いられる。循環ポンプ20も耐薬品性と高清浄度のものが用いられ、接液部がフッ素樹脂のマグネットポンプ、磁気浮上ポンプ、ベローズポンプなどが用いられる。
【0026】
設備洗浄装置1及び半導体洗浄機10を工場内に設置した場合、配管3は未洗浄であることが多い。清浄度の低い配管3を経て超純水が半導体洗浄機10に供給されると、洗浄機10も汚染されてしまうので、配管3と洗浄機10とを同時にもしくは配管3を先に洗浄することが望ましい。図1は、弁4,7,16を開とし、弁22を閉とし、超純水を配管3,5,8から半導体洗浄機10に供給し、半導体洗浄機10の流出水を循環水槽17に流入させている状態を示している。循環水槽17内に所定水位まで水が溜ったならば、図3のように弁4を閉、弁22を開とし、循環ポンプ20を作動させ、循環水槽17内の水を配管21,5,8、半導体洗浄機10、配管15の順に循環させる。
【0027】
なお、この図3の循環工程に先立って、図2のように弁26,35,37を開とし、循環ポンプ20を作動させ、循環水槽17内の水を配管21,25,29,32からピット38に排水してもよい。ただし、この図2の工程を省略し、循環水槽17に水が所定水位まで溜ったならば図1の状態からそのまま図3の循環水槽17の水の循環工程に移行してもよい。
【0028】
図3の工程では、循環水槽17内の水を半導体洗浄機10に循環させると共に、配管5へ薬液槽11,12又は13から薬液が添加されている。薬液の添加は、循環水槽17内の水の循環開始と同時でもよく、それよりも前でも後でもよい。図3では薬液槽13から薬液が添加されているが、薬液槽11又は12から添加されてもよいことは明らかである。また、図1〜6では、薬液槽11〜13から薬液を配管5に添加しているが、図3で水が循環している箇所のいずれに添加されてもよく、例えば循環水槽17に添加されてもよい。
【0029】
薬液の注入量は保有水量に応じて、注入濃度、注入量、注入時間などを変えて定量注入しても良く、水質計の指示値に合うように注入量を変動させることで注入制御してもよい。ここで水質計はpH計、導電率計、ORP計などの単独またはかつ組み合わせのいずれでもよい。
【0030】
図3のように循環している水中の薬品濃度が所定濃度にまで上昇した後、所定時間循環または浸漬して系内を洗浄する。所定濃度としては、アルカリ洗浄であれば数十〜数百ppm程度、Hであれば0.5〜5%程度、酸洗浄であれば0.05%〜1%程度の濃度が好適であるが、これに限定されない。循環もしくは浸漬時間は、汚染の程度にもよるが概ね数十分〜数時間程度である。洗浄が終了した後、図4のように、弁22を閉、弁26,37を開とし、さらに弁31,34のいずれかを開とし、循環水槽17内の洗浄廃液をカラム30又は33で処理して排出する。洗浄廃液中のHはH分解カラム30で水と酸素に分解される。酸及び/又はアルカリはイオン交換樹脂カラム33でイオン交換(吸着)処理される。
【0031】
カラム30又は33の流出水の水質は水質計36で検知される。水質が許容値以下であれば、図4の通り処理水はピット38へ排出されるが、水質が許容値を超えるときには、図5のように弁37を閉、弁40を開とし、カラム流出水を循環水槽17に返送し、水質が許容値以下となった後、図4の通りピット38へ排出する。
【0032】
図4のように循環水槽17の水をピット38へ排出するか、又は図5のように配管41を介して循環させている間、もしくはその後、弁4を開とし、超純水ライン2から超純水を配管3,5,8を介して半導体洗浄機10に導入し、半導体洗浄機10内を超純水でフラッシングする。フラッシング排水は循環水槽17に導入する。
【0033】
フラッシング終了後、設備洗浄装置1内の清浄度を保つために、図6のように、装置1内の水抜きと、菌体繁殖抑制のため、Nパージを行う。すなわち、弁43,22を開とし、弁4,7,16,26を閉とし、N供給配管42から配管5,21内にNガスを導入し、配管5,21内に残留する水を循環水槽17に押し出す。この際、弁7,16を閉としており、配管5内の水は半導体洗浄機10には流れず、バイパス配管18を介して循環水槽17に流入する。循環水槽17内に流入した水は、その後、循環ポンプ20、配管21,29,32を介してピット38へ排出される。このように水抜き後にNパージを所定時間行うことにより、系内の乾燥を促し、また貧酸素雰囲気とすることにより菌体繁殖を抑制することができる。
【実施例】
【0034】
[実施例1]
図1〜6に示す手順に従って半導体洗浄機10の洗浄を行った。半導体洗浄機10としては(株)カナメックス社製の枚葉洗浄機を用い、半導体洗浄機10への送水量は3L/minとした。薬液としてはTMAH及び塩酸を用いた。
【0035】
具体的には、図1の工程を5min、図2の工程を10min行った後、図3のように循環水槽17内の水を循環させつつ薬液槽12からアルカリとしてTMAHを添加した。TMAHは循環濃度が100ppmとなるように添加した。TMAH添加後、30min間循環洗浄した。このTMAH洗浄後、超純水で十分フラッシングした。フラッシング後、塩酸を系内濃度0.5%として30分間浸漬し、次いで超純水で十分にフラッシングした。その後、半導体洗浄機10の流出水の微粒子数を栗田工業(株)製の微粒子計KLAMIC−KSを用いて測定すると共に、この流出水中の金属濃度を測定した。図7に微粒子測定結果、表1に金属分析結果を示す。
【0036】
[比較例1]
図1において、半導体洗浄機10に対し配管3、5,8,15を介して超純水を一過式に1時間洗浄した。その後、半導体洗浄機10からの流出水の微粒子数及び金属濃度を測定し、図7及び表1に示した。表1には洗浄前の金属濃度も示してある。
【0037】
【表1】

【0038】
図2から明らかなように実施例1では1日以内で微粒子が1個/mL以下となるのに対し、比較例では3〜4日を要している。
【0039】
また、表1の通り、実施例1では全ての測定元素で<0.1ng/Lであるのに対して、比較例1では、Na、Al、Cr、Feなどが0.1ng/L以上となっている。この実施例及び比較例より明らかな通り、本発明によると、簡便に、短時間で高い清浄度が得られ、洗浄機の稼動開始時期を早めることが可能となり、洗浄機の生産性が向上する。
【符号の説明】
【0040】
2 超純水ライン
6 フィルタ
10 半導体洗浄機
17 循環水槽
30 H分解カラム
33 イオン交換樹脂カラム
36 水質計
50 ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水によって被洗浄物を洗浄する設備を洗浄する方法において、
該設備に対し洗浄薬品含有水を供給して洗浄することを特徴とする設備洗浄方法。
【請求項2】
請求項1において、前記設備から流出した洗浄薬品含有水を該設備に循環供給することを特徴とする設備洗浄方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記洗浄薬品は、酸、アルカリ、過酸化水素水、オゾン水、キレート剤及び界面活性剤の少なくとも1種であることを特徴とする設備洗浄方法。
【請求項4】
超純水によって被洗浄物を洗浄する設備を洗浄するための設備洗浄装置において、超純水に洗浄薬品を添加した洗浄薬品含有水を該設備に供給する供給手段を備えたことを特徴とする設備洗浄装置。
【請求項5】
請求項4において、前記設備から流出する洗浄薬品含有水を該設備に循環させる循環手段をさらに備えたことを特徴とする設備洗浄装置。
【請求項6】
請求項5において、前記供給手段及び循環手段が1つのケーシング内に設置されてユニットとなっていることを特徴とする設備洗浄装置。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1項において、前記供給手段及び循環手段に対しパージガスを供給して水をパージするパージ手段をさらに備えたことを特徴とする設備洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−111537(P2013−111537A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260554(P2011−260554)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】