説明

診断マーカーとしてのエキソソーム関連マイクロRNA

【課題】診断マーカーとしてのエキソソーム関連マイクロRNAの提供。
【解決手段】被検体からの生物学的サンプルから単離したガン由来エキソソームに存在する1又はそれより多いマイクロRNAの量を測定することにより、被検体におけるガン又は有害な妊娠転帰を診断する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2007年7月25日出願の米国仮特許出願第60/951,812号及び2008年5月5日出願の米国仮特許出願第61/050,438号(これらの開示の全体が参照により本明細書中に組み込
まれる)の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本明細書に開示の主題は、ガン及び有害な妊娠転帰(outcome)の診断及び予後の方法に
関する。詳細には、本明細書に開示の主題は、被検体(subject)からの生物学的サンプル
中のガン又は有害な妊娠転帰(pregnancy outcome)と相関付けられる1又はそれより多い
エキソソーム由来マイクロRNAの量を決定することに基づく診断及び予後の方法に関する

【背景技術】
【0003】
背景
ガンの早期検出及び診断に適切なガンのバイオマーカーの同定は、被検体の臨床転帰を改善する大きな見込みを有している。これは、曖昧な徴候を示すか若しくは徴候を全く示さない被検体又は健康診断では比較的知見し難い腫瘍を有する被検体にとって特に重要である。早期検出を指向する相当な努力にもかかわらず、早期ステージのガンを診断することができる信頼性のある対費用効果の高いスクリーニング試験はほとんど開発されていない。
【0004】
一例として、卵巣ガンは、世界中の婦女子において第16番目に一般的なガンのままであり、毎年約125,000人の死亡原因である(Sankaranarayanan及びFerlay,2006)。卵巣ガン
を有するほとんどの婦女子は、進行したステージで診断され、75%が卵巣外疾患(extra-ovarian disease)と診断される(Berekら,2003)。婦女子に関連する他のガンと比較して、子宮内膜ガンの73%、乳ガンの55%及び子宮頸ガンの50%がステージI疾患で診断される(Menon及びJacobs,2000)。ステージI卵巣ガンを有する患者の5年生存率は90%を超えるが、進行したステージの卵巣ガン患者は僅か21%しか最初の診断の5年後に生存していない(Berekら,2003)。長期生存率は過去数十年間有意に変化していないので、卵巣ガンの生存率の更なる改善は、早期診断にあると最も見込まれる(Menon及びJacobs,2000)。
【0005】
卵巣ガン検出に関して現在承認されている唯一のバイオマーカーはCA125であり、ELISAによるその定量化は、1983年の紹介以来、卵巣ガンの検出に関して「ゴールドスタンダード」であるとされている。CA125の評価は、代表的には、疾患管理において疾患検出及び
疾患再発のモニタリングの両方のために使用される;しかし、CA125の使用は早期ステー
ジのガン検出に関しては限定的である(50〜60%の感受性)。CA125定量化は寛解(remission)モニタリングについてのみ承認されており、一貫して証明されている。CA125は、ステージI疾患を有する婦女子の50%より多くで上昇しているが、進行したステージの卵巣ガンを有する患者の80%より多くで上昇しているので、デノボ卵巣ガン検出には高感度でも特異的でもない。CA125は特異性に乏しい。このことは、とりわけ、良性及び悪性の乳房及び結腸疾患、腹膜刺激物及び良性婦人科疾患と関連する上昇により示されている。
【0006】
分析前サンプル分離を劇的に簡素化し、質量分析(MS)と組み合わせることによりプロテオミック分析を容易にする新たなストラテジーが、バイオマーカー発見の研究について導入されている。表面増強レーザ脱離/イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF-MS)が、生
化学的に異なるタンパク質チップアレイへの結合による生物学的標本中のタンパク質の解
析における使用について注目を集めている。ガンの存在を規定するために、ある技術では4つの血清タンパク質をELISAにより検査する一方で、別の技術は、患者血清中の7つの
特異的な血清成分の質量分析又は一般的ペプチドパターンを使用する。SELDI-TOF-MSプロファイリングは、卵巣ガン、乳ガン、前立腺ガン及び肝臓ガンをコントロールと識別するための使用に成功している。
【0007】
血清のSELDI-TOF-MSプロファイリングは、卵巣ガンを有する患者を良性卵巣疾患を有する患者及び健常コントロールと識別する点で、現在の標準的血清バイオマーカーCA125よ
り有意に良好であることが示されている。研究により、SELDI-TOF-MSにより解析される複数タンパク質の組合せの選択は、診断アプローチとして可能性を有することが示されている。卵巣ガンについての有効なスクリーニング試験は、高い感受性及び特異性を達成する必要があり、現時点では、異なるプロテオミック技術及びピークを見分けるために使用されるコンピュータ分析ツールは異なる知見を生じる。SELDI-TOF-MSプロファイリングの病識についてのこれら初期の研究は見込みがあり、その着想は一連の異なるバックグランドで再現可能である;しかし、このアプローチをルーチンの診断試験に変更することは困難なままである。
【0008】
有効なスクリーニング試験であるためには、アッセイは最低限99.6%の特異性を達成する必要があると計算されている。このレベルの特異性を達成するためには、卵巣及び他のガンの多因子性の性質に起因して、腫瘍に特徴的な複数の成分を有効な検出のための新たな診断検査に組み込む必要がある。質量分析技法の短所は、重要な幾つかのサンプルがMS及び分光測定結果の分析でより豊富なタンパク質によってマスクされる可能性があることである。多くの技法(例えば、高速液体クロマトグラフィー及び親和性結合によるポジテ
ィブ又はネガティブ選択)による予備精製は、タンパク質の特定の群を除去することがで
きる。現在の質量分析アプローチのほとんどにおける最大の難題は、感受性よりむしろダイナミックレンジである。優勢なタンパク質又はペプチドの除去は、特定のサンプルから獲得できる情報の内容を大いに増加させることができる一方、アルブミンのような優勢なタンパク質は診断上有意なタンパク質サブセットのキャリアとして機能することができる。卵巣ガン又は任意の他の適応症についてのスクリーニングにこのプラットフォームを適用することを幾らかでも検討する前に、より大きなサンプルサイズ及び独立検証セットの注意深い盲検性を有する更なる研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、ほぼ全てのガン及び他の障害(有害な妊娠転帰のリスク増大を含む)における改善されたバイオマーカーを開発する必要が依然として存在する。血液ベースのアッセイは、サンプル収集の入手可能性及び容易性のために魅力的なゴールのままである。ガン及び有害な妊娠転帰のリスク増大の早期確定診断により、患者のより早期でより可能性の高い有効な治療が容易となる。このように、個々に若しくは他のバイオマーカー若しくは診断様式との組合せで、ガン及び有害な妊娠転帰の早期検出及び予後(prognosis)に必要な感受性及び特異性を提供する新たなバイオマーカーについて満たされていない必要性が存在する。詳細には、ガン及び有害な妊娠転帰のバイオマーカーに関して、容易に接近可能な生物学的流体で実施される簡単な試験が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
要旨
本要旨は、本明細書に開示の主題の幾つかの実施形態を列挙し、そして多くの場合、これら実施形態の変形及び入替えを列挙する。本要旨は、多くの種々の実施形態の単なる例示である。与えた実施形態の1又は複数の代表的特徴の言及も同様に例示である。典型的には、言及した特徴を有するか又は有しない実施形態が存在することもある;同様に、特
徴は、本要旨に列挙されているかいないかにかかわらず、本明細書に開示の主題の他の実施形態に適用可能である。過剰な反復を回避するために、本要旨は、そのような特徴の可能な全ての組合せを列挙せず、示唆もしない。
【0011】
本明細書に開示の主題の或る実施形態では、被検体のガンを診断する方法が提供される。或る実施形態では、この方法は、被検体からの生物学的サンプルを用意し;前記生物学的サンプルからマイクロRNA(miRNA)を含んでなるガン由来エキソソームを単離し;1又はそれより多くの前記miRNAの量を決定し;前記1又はそれより多いmiRNAの量を1又はそれより多いmiRNAコントロールレベルと比較することを含んでなる。被検体は、次いで、ガン由来エキソソームからの1又はそれより多いmiRNAの量に、1又はそれより多いmiRNAコントロールレベルと比較して無視できない差があれば、ガンを有すると診断される。或る実施形態では、この方法は更に、決定した1又はそれより多いmiRNAの量に基づいてガンの治療法を選択するか又は治療法を改変することを含んでなる。
【0012】
本明細書に開示の主題の他の実施形態では、被検体におけるガンの治療効力及び/又は
ガン進行を評価する方法が提供される。或る実施形態では、この方法は、被検体からの或る期間にわたる一連の生物学的サンプルを用意し;前記一連の生物学的サンプルからmiRNAを含んでなるガン由来エキソソームを単離し;前記一連の生物学的サンプルの各々における1又はそれより多くの前記miRNAの量を決定し;前記一連の生物学的サンプルの各々における前記1又はそれより多いmiRNAの量の無視できない変化を決定して、被検体におけるガンの治療効力及び/又はガン進行を評価することを含んでなる。
【0013】
本明細書に開示の主題の更に他の実施形態では、被検体のガンを特徴付ける方法が提供される。或る実施形態では、この方法は、被検体からの生物学的サンプルを用意し;前記生物学的サンプルからmiRNAを含んでなるガン由来エキソソームを単離し;1又はそれよ
り多くの前記miRNAの量を決定し;前記1又はそれより多いmiRNAの量を1又はそれより多いmiRNAコントロールレベルと比較することを含んでなる。次いで、1又はそれより多いmiRNAコントロールレベルに対するガン由来エキソソームからの1又はそれより多いmiRNA
の量の無視できない差に基づいてガンを特徴付ける。或る実施形態では、ガンの特徴付けは、ガンのタイプ、悪性度(grade)及び/又はステージを決定することを含んでなる。更に、或る実施形態では、1又はそれより多いmiRNAの量の決定は、ガン由来エキソソーム中のmiRNAの総量を決定することを含んでなる。
【0014】
これら方法の或る実施形態では、ガンは、卵巣ガン、子宮頸ガン、乳ガン、子宮内膜ガン、結腸ガン、前立腺ガン、肺ガン、黒色腫及び膵臓ガンからなる群より選択されるガンである。
【0015】
更に、これら方法の幾つかでは、ガン由来エキソソームの単離は更に、サイズ排除クロマトグラフィーを使用してガン由来エキソソームを単離することを含んでなる。或る実施形態では、ガン由来エキソソームの単離は、ガン由来エキソソームを含んでなるクロマトグラフィー画分を遠心分離することを含んでなる。クロマトグラフィー画分は、或る実施形態では、空隙容量画分であり得る。
【0016】
また更に、或る実施形態では、ガン由来エキソソームは、抗ガン抗原抗体(例えば、抗
上皮細胞接着分子(抗EpCAM)抗体)を用いる免疫吸着捕捉により非ガン由来エキソソームから分離される。
【0017】
これら方法の幾つかでは、1又はそれより多いmiRNAの量の決定は、1又はそれより多
いmiRNAを標識することを含んでなり、或る実施形態では、次いで各々が1又はそれより
多いmiRNAと選択的に結合する1又はそれより多いポリヌクレオチドプローブで1又はそ
れより多いmiRNAを捕捉することを含んでなる。これら方法の他の実施形態では、1又は
それより多いmiRNAの量の決定は、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を使用して1又は
それより多いmiRNAの量を定量することを含んでなる。更に、これら方法の或る実施形態
では、miRNAは、表2に示される1又はそれより多いmiRNAであり、例えば、miR-21、miR-141、miR-200a、miR-200b、miR-200c、miR-203、miR-205及びmiR-214からなる群より選択される1又はそれより多いmiRNAを含む。
【0018】
本明細書に開示の主題の更に他の実施形態では、被検体の有害な妊娠転帰を診断する方法が提供される。或る実施形態では、この方法は、被検体からの生物学的サンプルを用意し;前記生物学的サンプルからmiRNAを含んでなるエキソソームを単離し;1又はそれよ
り多くの前記miRNAの量を決定し;前記1又はそれより多いmiRNAの量を1又はそれより多いmiRNAコントロールレベルと比較することを含んでなる。被検体は、エキソソームから
の1又はそれより多いmiRNAの量に、1又はそれより多いmiRNAコントロールレベルと比較して無視できない差があれば、有害な妊娠転帰を有すると診断される。或る実施形態では、有害な妊娠転帰は、早期破水、子癇前症、早産、胎内発育遅延及び再発性妊娠喪失からなる群より選択される疾患である。
【0019】
本明細書に開示される実施形態の幾つかでは、被検体はヒトである。更に、本明細書に開示される実施形態の幾つかでは、生物学的サンプルは、乳、血液、血清、血漿、腹水、嚢胞液、胸膜液、腹膜液、脳脊髄液、涙、尿、唾液、痰又はこれらの組合せを含む。
【0020】
したがって、エキソソーム関連miRNAを診断マーカーとして利用することは本明細書に
開示の主題の目的である。この目的は、全体又は一部が本明細書に開示の主題により達成される。
上記に述べた本明細書に開示の主題の目的及び全体又は一部が本明細書に開示の主題により達成される目的、他の目的及び利点は、本明細書に開示の主題についての以下の説明、図面及び非限定的実施例を熟読後に当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、クロマトグラフィーによりガン由来エキソソームを単離し、エキソソームからmiRNAを単離し、miRNAの量をマイクロアレイにより決定し、データを分析して試験した被検体にガンが存在するかどうかを決定する例示的方法を示す概略図である。
【図2】図2は、ガン由来エキソソームを単離し、エキソソームからmiRNAを単離し、miRNAの量をリアルタイムPCRにより決定し、データを分析して検査した被検体にガンが存在するかどうか及びガンのステージを決定する例示的方法を示す概略図である。
【図3】図3Aは、循環腫瘍由来エキソソームのレベルを、卵巣ガンのステージと比較して示すグラフである。エキソソームは、年齢が適合する女性コントロール(n=10)、年齢が適合する良性卵巣疾患を有する婦女子(n=10)及び卵巣ガンを有すると診断された婦女子(各ステージについてn=10)から得た血清から単離した。エキソソームのレベルはタンパク質濃度として表す。図3Bは、磁性ビーズにより単離した循環エキソソームの電子顕微鏡写真である。超薄切片(65nm)を切り出し、酢酸ウラニル及びレイノルズクエン酸鉛で染色した。切片はJeol 1210透過型電子顕微鏡で検査した。
【図4】図4Aは、卵巣ガン患者からの循環EpCAMポジティブエキソソームと結合した低分子RNAの存在を示すグラフである。Agilent 2100 Bioanalyzerを使用する、腫瘍エキソソームから単離したRNAの代表的分析を示す。図4Bは、循環エキソソーム及び対応する腫瘍からのトータルRNAのアガロースゲル(1%)分離の写真である。このトータルRNAは、miRNAプロファイリングの出発材料として使用した。
【図5】図5は、同じ患者の血清から単離した、進行したステージの卵巣腫瘍(□)及びEpCAMポジティブエキソソーム(■)に由来する特異miRNAの強度を示す一連のグラフである。miR-21、miR-141、miR-200a、miR-200b、miR-200c、miR-203、miR-205、miR-214は、卵巣ガンのアップレギュレートされたマーカーであることが証明されている。各バーは、示された代表的な4人の患者の結果を用いた2連サンプルの平均強度を表す。
【図6】図6は、良性卵巣疾患を有する患者及び卵巣ガンを有する患者の末梢血(2.5mL)から単離したEpCAMポジティブエキソソームに由来する特異miRNAについての強度を示すグラフである。卵巣ガンを有する患者は、ステージI、II及びIIIに分けられた。バーは、各群(各群についてn=10)の患者の規格化強度の平均±標準偏差を表す。
【図7】図7A及び7Bは、血液採取直後又は24、48及び96時間後の卵巣ガン患者血清(4℃で貯蔵)に由来する特異エキソソームmiRNAの比較(図7A)、又は7〜28日後の血清(−70℃で貯蔵)に由来する特異エキソソームmiRNAの比較(図7B)を示すグラフである。腫瘍エキソソームは、抗EpCAMを用いてMACSにより単離した。
【図8】図8は、ガン由来エキソソームを単離し、エキソソームからmiRNAを単離し、miRNAの量をマイクロアレイにより決定し、データを分析して検査した被検体にガンが存在するかどうかを決定する例示的方法を示す概略図である。
【図9】図9は、進行したステージの肺腫瘍(明るい灰色)及び同じ患者の血清から単離したEpCAMポジティブエキソソーム(暗い灰色)に由来する特異miRNAの強度を示す一連のグラフである。各バーは、示された代表的な4人の患者の結果を用いた2連サンプルの平均強度を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本明細書に開示の主題の1又はそれより多い実施形態の詳細を下記の説明に示す。本明細書に開示の主題の他の特徴、目的及び利点は、本明細書、図面及び特許請求の範囲から明らかになる。本明細書中で引用した全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾する場合には、本明細書(定義を含む)が支配する。
【0023】
他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本明細書に開示の主題が属する分野の当業者に通常理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似するか又は等価である任意の方法、デバイス及び材料が本明細書に開示の主題の実施又は試験に使用することができるが、代表的な方法及び材料をここで記載する。
長年の特許慣習に従い、本願(特許請求の範囲を含む)で使用するときには、用語「a」
、「an」及び「the」は「1又はそれより多い」を意味する。よって、例えば、「ペプチ
ド」への言及は、複数のそのようなペプチドを含む、という具合である。
【0024】
他に指摘しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用する成分、反応条件などの量を表す全ての数は、全ての場合において用語「約」で修飾されていると理解すべきである。したがって、反対の指摘がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数的パラメータは、本明細書に開示の主題により得ることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「約」は、質量、重量、時間、容量、濃度又はパーセンテージの値又は量に言及するとき、指定された量から、或る実施形態では±20%、或る実施形態では±10%、或る実施形態では±5%、或る実施形態では±1%、或る実施形態で
は±0.5%、或る実施形態では±0.1%の変動を包含することを意味する。なぜならば、このような変動は開示された方法を実施するために適切であるからである。
【0026】
ここ5年にわたって、発現プロファイリング技術は、診断的適用を有する新たなバイオマーカーを同定している。1つのそのようなバイオマーカー群は、マイクロRNA(miRNA)と名付けられた低分子の非コーディングRNAのクラスである(Iorioら2007;De Ceccoら,200
4;Calin及びCroce,2006)。低分子(22〜25ヌクレオチド長)の非コーディングRNAである
マイクロRNAは、3'非翻訳領域への結合により標的mRNAの翻訳を抑制する(Esquela-Kerscher及びSlack,2006;Bartel,2004)。miRNAによる標的遺伝子の転写後サイレンシングは、相同mRNAの切断又はタンパク質合成の特異的阻害のいずれかにより起こり得る。
【0027】
miRNAプロファイリングにより分析した全ての腫瘍は、同じ組織からの正常細胞と比較
して、有意に異なるmiRNA署名(signature)を示している(Iorioら,2007;Calin及びCroce,2006a;Calin及びCroce,2006b)。Luら(2005)は、白血病及び充実性ガンの分析を実施し、miRNA発現プロフィールが発生系統及び分化状態によりヒトガンを分類し得ると決定した。現在、個々のmiRNAの発現及び特異miRNA署名が多くのヒトガンの診断及び予後と結び付けられている。
【0028】
組織標本を用いて、Iorioら(2007)は、正常卵巣と比較して、特異miRNAが卵巣ガンで異常に発現することを証明した。miR-141、miR-200a、miR-200b及びmiR-200cが最も顕著に
過剰発現した。彼らは更に、正常卵巣と比較して、卵巣腫瘍における低メチル化がmiR-21、miR-203及びmiR-205の上方変調(up-modulation)を生じることを証明した。2つの上方変調したmiRNA、miR-200a及びmiR-200cは、検査した3つの組織学的タイプ(漿液細胞、類内膜細胞及び明細胞)全てで増強する一方、miR-200b及びmiR-141の上方変調は、類内膜及び漿液の組織学的タイプにより共有された。一般に、異なる組織学的タイプの卵巣ガン(漿液細胞、類内膜細胞、明細胞及び混合)を正常組織と比較して得られるmiRNA署名は、ほとんどの症例でオーバーラップしていた。卵巣腫瘍の彼らの分析はまた、腫瘍のステージ又は悪性度に関連して異なって発現したmiRNAは存在しないことを証明した。このことは、進行したステージの腫瘍に主として由来するサンプルセットに起因しているようである。
【0029】
miRNAの中でも、最も顕著に上方変調したmiR-200a及びmiR-141は同じファミリーに属し、miR-200bは染色体1p36.33上でmiR-200aと同じ領域に局在し、miR-200cは染色体12p13.31上でmiR-141の同じ領域に局在する(Iorioら(2007))。この関連は、特異miRNAの上方変調がmiRNA遺伝子の増幅であり得ることを提案するZhangら(2006)の知見と一致する。高分解能アレイをベースにした比較ゲノムハイブリダイゼーションを用いて、異常に高い割合のmiRNA遺伝子含有遺伝子座はDNAコピー数の変化が示された。卵巣ガンにおいて、miRNA遺伝子を含有するゲノム遺伝子座の37.1%がDNAコピー数変化と関連していた(Zhangら,2006)。乳ガン及び黒色腫では、これら遺伝子座の更により高い割合でDNAコピー数変化を示した(それぞれ72.8%及び85.9%)(Zhangら,2006)。結果として、miRNA発現パターン又は署名は、mRNA発現パターンより、腫瘍発生の起源に特徴的であるようであり、診断、ステージ決定、進行、予後及び治療に対する応答と関連し得る。しかし、ガン診断ツールとして、本明細書に開示の主題以前には、miRNA署名の分析は組織生検に制限されていた。
【0030】
ガン細胞の最近記述された特徴は、原形質膜のインタクトなベシクル状部分(本明細書
中、「エキソソーム」と呼び、当該分野において膜フラグメント、膜小胞又はマイクロベシクルとしても公知である)を遊離又は脱粒する能力である。驚くべきことにガン細胞に
起源を有するエキソソーム(すなわち、「ガン由来エキソソーム」)に結合しているmiRNA
を最初に同定したデータが本明細書に開示される。本明細書に開示の主題は更に、ガン由来エキソソームから単離したmiRNAが、ガンに罹患した被検体において、ガンを有さない
被検体で測定したmiRNA発現レベル(本明細書では「miRNAコントロールレベル」と呼ぶ)とは異なる(例えば、増加した又は減少した)発現レベルを示すことを最初に開示する。更に、本明細書に開示の主題は、検査被検体の容易に接近可能な生物学的流体からのガン由来エキソソームの単離を提供する。このように、本明細書に開示の主題は、ガン細胞を直接サンプリングする必要のない、容易に接近可能な生物学的サンプルからのガン由来エキソソームのmiRNAの収集及びそのレベルの測定に基づくガンの診断及び予後の方法を最初に提供する。
【0031】
「エキソソーム」は、種々の異なる細胞から遊離されるマイクロベシクルである(ガン
細胞から遊離されるマイクロベシクル(すなわち、「ガン由来エキソソーム」)を含む)。
これら小さな小胞(直径50〜100nm)は、大きな多小胞性エンドソームに由来し、細胞外環
境中に分泌される。エキソソームの遊離/脱粒の正確な機序は、不明のままである;しか
し、この遊離は、エネルギーを必要とする現象であり、細胞外シグナルによりモジュレートされる。これらは、後期エンドソームの境界膜から陥入により形成され、出芽するようであり、サイトゾルを含有し、膜結合細胞タンパク質の細胞外ドメインを表面に露出する小胞を生じる。電子顕微鏡観察を使用する研究により、細胞外環境中への内部小胞の分泌に至る、原形質膜との多小胞性エンドソームの融合プロフィールが示されている。エキソソーム遊離の速度は、ほとんどの新生物細胞において顕著に増加し、連続して生じる。エキソソームの増加した遊離及びその蓄積は、悪性形質転換プロセスにおいて重要であるようである。ガン細胞に加えて、エキソソームの遊離は、胚起源(例えば、胎盤)の細胞及び活性化リンパ様細胞と関連することも証明されている。
【0032】
エキソソームの細胞外脱粒は他のタイプの細胞では特異的な生理学的条件下で生じるが、非新生物細胞からのエキソソームの蓄積はインビボでめったに観察されない。対照的に、腫瘍細胞により遊離されたエキソソームは生物学的流体(血清、腹水及び胸膜液を含む)中に蓄積する。エキソソーム遊離及びその蓄積は、悪性形質転換の重要な特徴であるようである。脱粒したガン由来エキソソームは、起源となった腫瘍細胞の原形質膜の一般的な組成を反映しないが、腫瘍抗原の発現が増強しており「微小地図(micromap)」を表す。
【0033】
エキソソームの遊離は細胞間連絡の重要な特徴であるようである。遊離されたエキソソームは生物学的活性を有する分子(例えば、Fasリガンド、PD-1、mICA/B、mdr1、mMPs、CD44及び自己反応性の抗原)を発現するので、これらマイクロベシクルがリンパ球及び単球の機能をモジュレートする能力は、幾つかのモデルで分析されている。これら遊離されたエキソソームは「活性化誘導細胞死」(AICD)を模倣することによってリンパ球機能をモジュレートすると理論上想定されている。リンパ様細胞は活性化後にエキソソームを遊離するようであり、これらは、過剰な免疫応答及び自己免疫の発生を予防することによって、免疫調節において必須の役割を演じているようである。腫瘍細胞によるエキソソーム遊離は胎児細胞エキソソームの再発現であり、共に免疫監視を迂回する経路を構成すると仮定されている。
【0034】
マイクロRNAは、生物学的に活性な形態において長さが約17〜約25ヌクレオチド塩基(nt)である天然に生じる低分子非コーディングRNAである。miRNAは、標的mRNAの翻訳を抑制することにより、遺伝子発現を転写後調節する。miRNAは、ネガティブレギュレータとして機能すると考えられている。すなわち、より多量の特異miRNAは標的遺伝子発現のより低いレベルと相関する。
【0035】
インビボで存在するmiRNAには3つの形態が存在する:一次型(primary)miRNA(pri-miRNA)、未熟型miRNA(pre-miRNA)及び成熟型miRNA。一次型miRNA(pri-miRNA)は約数百塩基から1kbを超えるステムループ構造の転写物として発現する。pri-miRNA転写物は、核内で、ステムループの基部の近くで該ステムの両方の鎖を切断するDroshaと呼ばれるRNAase IIエンドヌクレアーゼにより切断される。Droshaは、段違い切断(staggered cut)により、3'末端に5'リン酸及び2ntオーバーハングを残してRNA二重鎖を切断する。切断産物たる未熟型miRNA(pre-miRNA)は、折り曲げ様式で形成されたヘアピン構造を有する約60〜約110nt長である。Pre-miRNAは、核から細胞質までRan-GTP及びエクスポーチン(Exportin)-5により輸送される。Pre-miRNAは、細胞質でDicerと呼ばれる別のRNAase IIエンドヌクレアーゼにより更にプロセシングを受ける。Dicerは5'リン酸及び3'オーバーハングを認識し、ステムループ移行部(junction)で切断してループを切り離してmiRNA二重鎖を形成する。miRNA二重鎖はRNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)に結合し、そこでアンチセンス鎖は優先的に分解され、センス鎖成熟型miRNAがRISCをその標的部位に導く。生物学的に活性形態のmiRNAは成熟型miRNAであり、約17〜約25nt長である。
【0036】
マイクロRNAは、標的遺伝子のメッセージ(mRNA)中の特定配列と塩基対合(完全な又は不完全な)で嵌合することにより機能する。miRNAはmRNAを分解するか又はその翻訳を抑制して、標的遺伝子の発現を転写後にダウンレギュレートし、抑制し又はサイレントにする。動物では、miRNAは、必ずしも、標的部位と完全な相同性を有さず、部分的な相同性が翻
訳抑制を導く一方、植物では、miRNAは標的部位と完全な相同性を示し、メッセージ(mRNA)の分解が優勢である傾向がある。
【0037】
マイクロRNAは、ゲノム中に広く分布し、遺伝子調節を支配し、多くの生理学的及び病
理学的プロセスに能動的に関与する。例えば、或るmiRNAの調節形式は、細胞の増殖、分
化及びアポトーシスをコントロールすることが見出されている;そして、異常なmiRNAプ
ロフィールは腫瘍形成に関連する。更に、ウイルス感染は、「細胞生存促進(pro-cell survival)」遺伝子をサイレントにするために標的されるmiRNAの増加及びアポトーシス(プログラムされた細胞死)と関連する遺伝子を抑制するmiRNAの減少を引き起こし、よってアポトーシスシグナル伝達を増幅する方向へバランスを傾けることが示唆されている。
【0038】
数千のmRNAが、これまでに同定された数百のmiRNA種によるこの選択圧下にある。この
選択プロセスは、細胞が生理学的プログラムの方向を新たな遺伝子発現経路に導くように、例えばもはや必要ではなくなったかもしれない特定群の遺伝子発現を弱めることに関与する。標的群の遺伝子発現をmiRNA依存性に弱めることは、細胞を古いプログラムから移行プログラムへ、そして新たなプログラムに出発させる強固で迅速な調節である。この代表例は、胚発生の間に、特定の細胞群が独特な特化された細胞タイプ(例えば、ニューロン、心筋細胞、筋肉など)になるように方向付けられる場合に証明される。
【0039】
大まかに3分の1のヒト遺伝子の発現レベルがmiRNAにより調節され、独特な遺伝子発
現のmiRNA調節は各特異細胞タイプについて特定のシグナル伝達経路に関係していると考
えられる。例えば、アポトーシスシグナル伝達経路は、生存促進遺伝子メッセージを脱安定化するために標的される一群のmiRNAにより指図され、代わりにアポトーシス促進遺伝
子(pro-apoptosis gene)を優勢にし、よって死亡プログラムを活性化させ得る。別の例は、ガン増殖の制御である;最近の発見により、miRNAはまた、細胞が腫瘍性になることを予防するために必須であり得ることが示されている。例えば、2つのガン遺伝子cMyc及びcRasは、ガンにおいてその発現がダウンレギュレートされる1つのmiRNA種による制御を共有していることが見出されている。換言すれば、このmiRNAの欠如により、cMyc及びcRasの抑制されない発現が可能になり、よってこれら2つの遺伝子はガン細胞中に豊富に存在するようになり、当該細胞は未制御の細胞増殖能を獲得し、新生物成長のステージに設定される。更に、miRNA変異がベルギー起源のヒツジにおける筋肉質(muscularity)の表現型を担っていると報告されている。このことは、プロモーター領域、コーディング領域及びサイレンシング部位に変異の証拠が見出されていない遺伝子疾患と関連する変異がmiRNAに見出され得ることを示唆する。
【0040】
複数経路の協調性組織化は、階層的順序及び分子制御の冗長性により機能的に操作される或る分子「ハブ」が関与し得る特定の細胞状態を制御するために働く可能性がある。確かに、数十のmiRNAは、これら「ハブ」が、細胞において、それ自体又はその機能的な対
抗物(opponent)のいずれかの発現を単に抑制することによって、主要な機能又は副次的な機能のいずれかを発揮できることを確実にするように働き得る。よって、或る遺伝子産物は、或る細胞タイプでは、或るシグナル伝達経路の主要な「ハブ」として機能し、別の細
胞タイプでは、副次的な「ハブ」であるか又は全く使用されない可能性がある。「ハブ」遺伝子発現のマイクロRNA制御は、種々の分子が異なるタイプの細胞機能様式(operational modality)に主要か若しくは副次的な「ハブ」として役立つか又は全く役立たないという汎用性を提供する好都合な機序であり得る。
【0041】
遺伝子調節並びに多くの生理学的及び病理学的プロセスにおけるmiRNAの役割を仮定す
れば、相互作用態様及び発現パターンについての情報は得ることが望ましい。どの群の推定miRNAが特定の細胞タイプで稼動中であり、又は目的とする特定のプロセス又は条件に
関連するかを定量し同定する系及び方法は、各細胞状態がどのように進化し維持されるか及び機能不全の維持がキー遺伝子の発現を調節する独特なmiRNAセットの不適切な減少又
は増加によりどのように幇助されるのかを理解するために有用な情報を提供することができる。このような理解は、多くの疾患(ガン及び有害な妊娠転帰を含む)の診断及び特徴付けに有用であることを証明し得る。
【0042】
可能性のある臨床診断ツールとして、miRNAは、全ての(でなければ多くの)ガンに関し
ての重要で正確な決定因子であることが示されている。miRNA遺伝子の発現がヒトガンで
調節解除(deregulated)されることを示す証拠が増えている。miRNAの発現は組織及び発生ステージに高度に特異的であり、最近では、miRNAの発現により腫瘍の分子分類が可能に
なっている。今日まで、miRNAプロファイリングにより分析した全ての腫瘍は、同じ組織
からの正常細胞と比較して有意に異なるmiRNAプロフィールを示している。フローサイト
メトリー的miRNAプロファイリングは、miRNA発現プロフィールがヒトガンを腫瘍の発生系統及び分化状態に従って分類することを証明した。特異的な過剰発現又は過少発現は、特定の腫瘍タイプと相関することが示されている。マイクロRNAの過剰発現は腫瘍サプレッ
サー遺伝子のダウンレギュレーションを生じ得る一方、過少発現はガン遺伝子のアップレギュレーションを導き得る。大規模マイクロアレイ分析により、ガン細胞は、正常細胞と比較して異なるmiRNAプロフィールを示した。228のうち36のmiRNA遺伝子がガン細胞にお
いて正常細胞に対して過剰発現され、21のmiRNA遺伝子がダウンレギュレートされた。階
層的クラスタリング分析(hierarchical clustering analysis)は、このmiRNA署名により
、腫瘍サンプルをその起源の組織に基づいてグループ化することが可能であることを示した。ゲノムの広範なプロファイリング研究は、CLL、乳ガン、グリア芽細胞腫、甲状腺乳
頭状ガン腫、肝細胞ガン腫、卵巣ガン、結腸ガン及び内分泌膵臓腫瘍を含む種々のガンタイプで実施されている。適合した104対の原発性ガン性卵巣組織及び非ガン性卵巣組織の
研究において、異なって発現する43のmiRNAが観察された;28は腫瘍中でダウンレギュレ
ートされ、15は過剰発現した。
【0043】
6つの充実性腫瘍(卵巣ガン腫、乳ガン種、結腸ガン種、胃ガン腫及び前立腺ガン腫並
びに内分泌膵臓腫瘍)からの、2つの異なる方法により得られたマイクロアレイデータの
統計分析、マイクロアレイの有意性分析(SAM)及びマイクロアレイの予測分析(PAM)により、少なくとも3つの腫瘍タイプで異なって発現する21のmiRNAから構成される共通の署名が証明された。そのリストの上位は、miR-21(6タイプのガン細胞で過剰発現)、miR-17-5p及びmiR-191(5タイプで過剰発現)であった。分析した腫瘍の胚起源は異なっていたので、この知見の有意性は、これら共通のmiRNAが多くの腫瘍タイプで変化する基礎的シグナル伝達経路に関与するということであり得る。腫瘍形成におけるこれら遺伝子の機能の支持として、異なって発現するmiRNAの予想される標的は、既知の腫瘍サプレッサー及びガン遺伝子を標的するものについて顕著に富化されることが見出された。更に、分析した6つ全てのガンタイプで過剰発現した唯一のmiRNAであるmiR-21は、腫瘍サプレッサーPTEN(増殖及び/又は生存経路を阻害するホスファターゼをコードする)を直接標的することが示された。PTENの機能は、乳、卵巣、胃及び前立腺を含む種々のタイプの進行した腫瘍において変更される。
【0044】
本明細書に開示の主題の或る実施形態では、被検体のガンを診断する方法が提供される。或る実施形態では、この方法は、被検体からの生物学的サンプルを用意し;前記生物学的サンプルからmiRNAを含んでなるガン由来エキソソームを単離し;1又はそれより多くの前記miRNAの量を決定し;前記1又はそれより多いmiRNAの量を1又はそれより多いmiRNAコントロールレベルと比較することを含んでなる。被検体は、次いで、サンプル中のガン由来エキソソームからの1又はそれより多いmiRNAの量に、1又はそれより多いmiRNAコントロールレベルと比較して無視できない差があれば、ガンを有すると診断され得る。測定し得る例示的miRNAの非制限的リストは、表1及び2に提供される。或る実施形態では、測定されるmiRNAは表2に列挙されるmiRNAから選択され、幾つかの特別な実施形態では、測定されるmiRNAは、miR-21、miR-141、miR-200a、miR-200b、miR-200c、miR-203、miR-205及びmiR-214からなる群より選択されるmiRNAである。
【0045】
用語「ガン」とは、動物に見出される全てのタイプのガン又は新生物又は悪性腫瘍をいう(白血病、ガン腫及び肉腫を含む)。ガンの例は、脳ガン、膀胱ガン、乳ガン、子宮頸ガン、結腸ガン、頭頸部ガン、腎臓ガン、肺ガン、非小細胞肺ガン、黒色腫、中皮腫、卵巣ガン、膵臓ガン、前立腺ガン、肉腫、胃ガン及び子宮ガンである。
【0046】
「白血病」とは、広く、血液生成器官の進行性の悪性疾患を意味し、一般には、血液及び骨髄におけるリンパ球及びその前駆体の歪められた増殖及び発生により特徴付けられる。白血病疾患としては、例えば、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、非白血性白血病、白血球性白血病、好塩基性白血病、芽細胞白血病、ウシ白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚白血病、胎生細胞性白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、ヘアリーセル白血病、血芽球性白血病、血球始原細胞白血病、組織球白血病、幹細胞白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性(lymphatic)白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ性(lymphocytic)白血病、リンパ性(lymphogenous)白血病、リンパ性(lymphoid)白血病、リンパ肉腫細胞性白血病、肥満細胞性白血病、巨核球性白血病、小骨髄芽球性白血病、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄性白血病、骨髄顆粒球性白血病、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病、形質細胞性(plasma cell)白血病、形質細胞性(plasmacytic)白血病、前骨髄球性白血病、リーダー細胞性白血病、シリング白血病、幹細胞白血病、亜白血性白血病及び未分化細胞白血病が挙げられる。
【0047】
用語「ガン腫」は、周囲組織へ浸潤し転移を生じる傾向がある上皮細胞からなる悪性の新成長物をいう。例示的なガン腫としては、例えば、小葉(acinar)ガン腫、小葉(acinous)ガン腫、腺嚢ガン腫、腺様嚢胞ガン腫、腺ガン腫(carcinoma adenomatosum)、副腎皮質のガン腫、肺胞腺ガン腫、肺胞細胞ガン腫、基底細胞ガン腫(basal cell carcinoma)、基底細胞ガン腫(carcinoma basocellulare)、類基底細胞ガン腫、基底有棘細胞ガン腫、気管支肺胞腺ガン腫、細気管支ガン腫、気管支原性ガン腫、脳状ガン腫(cerebriform carcinoma)、胆管細胞性ガン腫、絨毛ガン腫、膠様ガン腫(colloid carcinoma)、コメドガン腫、脳梁ガン腫(corpus carcinoma)、篩状ガン腫、鎧状ガン腫、皮膚ガン腫、円筒状ガン腫(cylindrical carcinoma)、円柱細胞ガン腫、腺管ガン腫、緻密ガン腫(carcinoma durum)、胎児性ガン腫、脳様ガン腫(encephaloid carcinoma)、類表皮ガン腫(epiennoid carcinoma)、上皮腺ガン腫(carcinoma epitheliale adenoides)、外方増殖性ガン腫、潰瘍ガン腫、線維ガン腫(carcinoma fibrosum)、ゼラチン状ガン腫、膠状ガン腫(gelatinous carcinoma)、巨細胞ガン腫(giant cell carcinoma)、巨細胞ガン腫(carcinoma gigantocellulare)、腺ガン腫(glandular carcinoma)、顆粒膜細胞ガン腫、毛母体ガン腫(hair-matrix carcinoma)、血性ガン腫(hematoid carcinoma)、肝細胞ガン腫、ヒュルトレ細胞ガン腫、硝子様ガン腫(hyaline carcinoma)、副腎様ガン腫(hypemephroid carcinoma)、乳児型胎児性ガン腫(infantile embryonal carcinoma)、上皮内ガン腫、表皮内ガン腫(carcinoma in situ)、表皮内ガン腫(intraepithelial carcinoma)、Krompecherガン腫、Kulchitzky細胞ガン腫、大細胞ガン腫、レンズ状ガン腫(lenticular carcinoma)、レンズ状ガン腫(carcinoma lenticulare)、脂肪腫性ガン腫、リンパ上皮ガン腫、髄様ガン腫(carcinoma medullare)、髄様ガン腫(medullary carcinoma)、黒色ガン腫、軟ガン腫(carcinoma molle)、粘液性ガン腫(mucinous carcinoma)、粘液性ガン腫(carcinoma muciparum)、粘液細胞ガン腫(carcinoma mucocellulare)、粘液性類表皮ガン腫(mucoepidermoid carcinoma)、粘液ガン腫(carcinoma mucosum)、粘液性ガン腫(mucous carcinoma)、粘液腫様、鼻咽頭ガン腫(naspharyngeal carcinoma)、えん麦細胞ガン腫、骨化性ガン腫(carcinoma ossificans)、類骨ガン腫(osteoid carcinoma)、乳頭状ガン腫、門脈周囲ガン腫、上皮内ガン腫(preinvasive carcinoma)、有棘細胞ガン腫、粥状ガン腫(pultaceous arcinoma)、腎臓の腎細胞ガン腫、補充ガン腫(reserve cell carcinoma)、肉腫様ガン腫(carcinoma sarcomatodes)、シュナイダーガン腫、硬性ガン腫、陰嚢ガン腫(carcinoma scroti)、印環細胞ガン腫、単純ガン腫、小細胞ガン腫、ソラノイドガン腫(solanoid carcinoma)、回転楕円面細胞ガン腫、紡錘体細胞ガン腫、海綿様ガン腫、扁平上皮ガン腫、扁平上皮細胞ガン腫、ストリングガン腫(string carcinoma)、毛細血管拡張性ガン腫(carcinoma telangiectaticum)、毛細血管拡張性ガン腫(carcinoma telangiectodes)、移行上皮ガン腫、結節ガン腫(carcinoma tuberosum)、結節ガン腫(tuberous carcinoma)、疣贅ガン腫及び絨毛ガン腫(carcinoma villosum)が挙げられる。
【0048】
用語「肉腫」とは、一般に、胚性結合組織のような物質からなる腫瘍をいい、一般に、線維性物質又は均質な物質中に埋め込まれた密にパックされた細胞から構成される。肉腫としては、例えば、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、Abemethy肉腫、脂肪肉腫(adipose sarcoma)、脂肪肉腫(liposarcoma)、胞状軟部肉腫、エナメル上皮肉腫、ブドウ状肉腫、緑色腫肉腫、絨毛ガン腫、胎児性肉腫、Wilns腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質性肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発性多発性色素性出血性肉腫(idiopathic multiple pigmented hemorrhagic sarcoma)、B細胞の免疫芽球性肉腫、リンパ腫、T細胞の免疫芽球性肉腫、イエンセン肉腫、カポジ肉腫、クップファー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉肉腫、傍骨性肉腫、細網肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢胞性肉腫、滑膜肉腫及び毛細血管拡張性肉腫が挙げられる。
【0049】
用語「黒色腫」は、皮膚及び他の器官のメラニン細胞系から生じる腫瘍を意味することとする。黒色腫としては、例えば、末端部黒子黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、ハーディング‐パッセー黒色腫、若年性黒
色腫、悪性黒子黒色腫、悪性黒色腫、結節性黒色腫、爪下黒色腫及び表在拡大型黒色腫が挙げられる。
【0050】
或る特定の実施形態では、ガンは、卵巣ガン、子宮頸ガン、乳ガン、子宮内膜ガン、結腸ガン、前立腺ガン、肺ガン、黒色腫及び膵臓ガンからなる群より選択されるガンである。
【0051】
用語「生物学的サンプル」は、本明細書で使用する場合、生体分子を含んでなるサンプル及び/又は被検体に由来するサンプルである。代表的な生体分子としては、トータルDNA、RNA、miRNA、mRNA及びポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。生物学的サンプルは、ガン由来エキソソームに関連する目的のmiRNAの存在及び/又はその発現レベルの検出に利用することができる。任意の細胞、細胞群、細胞断片又は細胞生成物を本明細書で主張する主題の方法に使用することができるが、正常コントロールと比較して異なるmiRNA発現を示すガン由来エキソソームを含有すると予想される生物学的流体及び器官が最も適切である。或る実施形態では、生物学的サンプルは、比較的容易に取得される生物学的サンプル、例えば血液又はその成分のようなサンプルである。或る実施形態では、生物学的サンプルは、乳、血液、血清、血漿、腹水、嚢胞液、胸膜液、腹膜液、脳脊髄液、涙、尿、唾液、痰又はこれらの組合せを含んでなる。
【0052】
或る実施形態では、サイズ排除クロマトグラフィーを利用してガン由来エキソソームを単離することができる。例えば、図1及び2を参照。サイズ排除クロマトグラフィー技法は当該分野で公知である。例示的な非制限的技法が本実施例で提供される。或る実施形態では、空隙容量画分が単離され、これが目的のエキソソームを含んでなる。更に、或る実施形態では、ガン由来エキソソームは、当該分野において広く公知のように、クロマトグラフィー分離後、(1又はそれより多いクロマトグラフィー画分の)遠心分離技法により更に単離することができる。或る実施形態では、例えば、密度勾配遠心分離を利用してエキソソームを更に単離することができる。尚更に、或る実施形態では、ガン由来の単離されたエキソソームを他の起源のエキソソームから更に分離することが望ましくあり得る。例えば、ガン由来エキソソームは、抗ガン抗原抗体を用いる免疫吸着捕捉により、非ガン由来エキソソームから分離することができる。例えば、図8を参照。例示的な抗ガン抗原抗体としては、(例えば本実施例に記載されたように利用される)抗上皮細胞接着分子(抗EpCAM)抗体が挙げられるが、これに限定されない。
【0053】
用語「診断する(こと)」及び「診断」は、本明細書で使用する場合、被検体が所与の疾患又は病的状態を患っているか否かを当業者が推定し、決定さえできる方法をいう。当業者は、しばしば、その量(存否を含む)が、病的状態の存在、重篤度又は不在の指標である1又はそれより多い診断指標(例えば、バイオマーカーのような指標(例えば、miRNA発現
レベル))に基づいて診断を下す。
【0054】
診断と共に、臨床ガンの予後もまた大いに関心及び興味のある領域である。最も効果的な治療を計画するために、ガン細胞の攻撃性及び腫瘍再発の可能性を知ることは重要である。自己抗体の測定は、更なる治療の必要がない良好な予後を有する被検体を、更なる集中治療の利益を享受する可能性がより高い被検体と分けるために有用であり得る。例えば、幾つかの代替のストラテジーにより取り扱われるガンもある。局所領域的及び全身的な放射線療法が利用される場合もあれば、外科的介入及び/又は化学療法が用いられる場合もある。個々のガン被検体についての現行の治療決定は、診断時の(1)疾患に関係するリンパ節の数、(2)ガンマーカーの状態、(3)原発性腫瘍のサイズ及び(4)疾患ステージに基づき得る。しかし、これら因子を用いてでさえ、全てのガン被検体について疾患のコースを正確に予測することは不可能である。より正確な予後を判断することができれば、患者にとって適切な治療、或る場合には負担の少ない治療を選択できる。本明細書に開示のガン由来エキソソームmiRNAレベルの測定は、ガンの進行度に従って、特定の治療の利益を受けるであろう被検体を分類し、代替又は追加の治療がより適切であり得る他の被検体と区別するために、有用であり得る。このように、本明細書に開示の主題の或る実施形態では、被検体のガンを特徴付ける方法が提供される。或る実施形態では、この方法は、被検体からの生物学的サンプルを用意し;前記生物学的サンプルからマイクロRNA(miRNA)を含んでなるガン由来エキソソームを単離し;1又はそれより多くの前記miRNAの量を決定し;1又はそれより多いmiRNAの量を1又はそれより多いmiRNAコントロールレベルと比較することを含んでなる。このような実施形態において、ガンは、1又はそれより多いmiRNAコントロールレベルに対するガン由来エキソソームからの1又はそれより多いmiRNAの量の無視できない差に基づいて特徴付けることができる。或る実施形態では、ガンの特徴付けは、ガンのタイプ、悪性度及び/又はステージを決定することを含んでなる。
【0055】
「診断を下す(こと)」又は「診断する(こと)」は、本明細書で使用する場合、予後を判断することを更に含める。予後の判断は、ガン由来エキソソームの診断用miRNAレベルの
測定に基づいて、臨床転帰(内科療法を伴うか又は伴わない)の予測、適切な治療の選択(
又は治療が有効か否か)又は現行治療のモニター及び場合によっては治療の変更を提供す
ることができる。更に、本明細書に開示の主題の或る実施形態では、診断(予後を含む)、
治療効力及び/又はガンの進行の評価を容易にするために、時間経過に伴う1又はそれよ
り多いmiRNAの量の複数回の決定を行うことができる。1又はそれより多いガン由来エキ
ソソームmiRNAレベル(すなわち、生物学的サンプル中のmiRNA量)の時間的変化を使用して臨床転帰を予測し、ガンの進行及び/又は施行したガン療法の効力をモニターすることが
できる。このような実施形態では、例えば、治療の過程で、時間経過に伴う生物学的サンプル中の特定miRNAの量の減少を観察することによって、治療の有効性を示し得る。
【0056】
本明細書に開示の主題は更に、或る実施形態では、被検体におけるガンの治療効力及び/又はガン進行を評価する方法を提供する。或る実施形態では、この方法は、被検体からの或る期間にわたる一連の生物学的サンプルを用意し;前記一連の生物学的サンプルからmiRNAを含んでなるガン由来エキソソームを単離し;前記一連の生物学的サンプルの各々における1又はそれより多くの前記miRNAの量を決定し;前記一連の生物学的サンプルの各々における前記1又はそれより多いmiRNAの量の無視できない変化を決定して、被検体におけるガンの治療効力及び/又はガン進行を評価することを含んでなる。前記期間にわたって測定されたmiRNAの変化を使用して、臨床転帰を予想し、ガン治療を開始又は継続するかどうか及び現行の治療がガンを効果的に治療しているかどうかを決定することができる。例えば、第1の時点は治療開始前を選択することができ、第2の時点は治療開始後のいつかを選択することができる。miRNAレベルは、異なる時点で採取したサンプルの各々において測定することができ、質的及び/又は量的差異が注目される。第1のサンプル及び第2のサンプルから測定されたmiRNAレベルの1つ又はそれより多くの量的変化は、予後、被検体における治療効力の決定及び/又は疾患の進行と相関付けることができる。
【0057】
用語「相関付けられる」及び「相関する(こと)」は、ガンに関連する診断及び予後的miRNAレベルの使用に言及して本明細書で使用する場合、被検体におけるmiRNAレベルの存在又は量を、ガンを患っていることが既知の被検体又はガンを有していないことが既知の被検体(すなわち、「正常被検体」又は「コントロール被検体」)における存在又は量と比較することをいう。例えば、生物学的サンプル中の1又はそれより多いmiRNAレベルを、試験されガンと相関付けられていると決定された特異miRNAの各々についてのmiRNAレベルと比較することができる。サンプル中の1又はそれより多いmiRNAレベルは、診断と相関付けられているといえる;すなわち、当業者は、miRNAレベルを使用して、被検体がガンを患っているかどうかを決定し、相応に対応することができる。或いは、サンプル中のmiRNAレベルは、良好な転帰(例えば、ガンの不在)と関連することが既知のコントロールmiRNAレベル(例えば、正常被検体集団で見出される平均レベル)と比較することができる。
【0058】
或る実施形態では、診断又は予後的miRNAレベルは、単にその存否によりガンと相関付
けられる。他の実施形態では、診断又は予後的miRNAレベルの閾値レベルを設定すること
ができ、被検体サンプル中のmiRNAレベルを単純に閾値レベルと比較することができる。
【0059】
上記のように、或る実施形態では、1又はそれより多い診断又は予後的miRNAレベルの
複数回の測定をなすことができ、レベルの時間変化を診断又は予後の決定に使用することができる。例えば、特異miRNAのレベルを、最初の時点で決定し、第2の時点で再び決定
することができる。このような実施形態では、最初の時点から第2の時点の間でのmiRNA
レベルの増加は、ガンと診断し得るか、又は所与の予後であり得る。同様に、最初の時点から第2の時点の間でのmiRNAレベルの減少は、ガンを示し得るか、又は所与の予後であ
り得る。更に、1又はそれより多いmiRNAレベルの変化の程度は、ガンの重篤度及び/又は疾患進行及び将来の有害な事象のタイムラインと関連付けられ得る。
【0060】
当業者は、或る実施形態では、複数の時点での同じmiRNAレベルの比較測定を行うこと
ができる一方、或る時点の所定miRNAレベル及び第2の時点の第2のmiRNAレベルを測定することもでき、これらレベルの比較が診断情報を提供することを理解する。
【0061】
句「予後を決定する(こと)」とは、本明細書で使用する場合、当業者が被検体における病的状態の過程又は転帰を予想することができる方法をいう。用語「予後」は、病的状態の経過又は転帰を100%の正確性で予想できることをいうものでも、所与の経過又は転帰
がバイオマーカーの存否又はレベルに基づいて起こる可能性が高いか低いかを予想できることをいうものでもない。代わりに、当業者は、用語「予後」は或る経過又は転帰が起こる可能性の増大;すなわち、経過又は転帰が、所与の病的状態を示さない個体と比較したとき、該病的状態を示す被検体において起こる可能性がより高いことをいうものであると理解する。例えば、病的状態を示さない(例えば、miRNAレベルを示さないか、又は減少したレベルのmiRNAレベルを示す)個体では、所与の転帰(例えば、ガン罹患)となる見込みは非常に低いか(例えば、<1%)、又はそのような見込みはない。対照的に、病的状態を示す(例えば、miRNAレベルを示すか、又はコントロールレベルに対して大いに増大したレベルのmiRNAレベルを示す)個体では、所与の転帰(例えば、或る形態/ステージのガンの罹患)となる見込みは高い。或る実施形態では、予後は、所与の予想される転帰の約5%の見込み、約7%の見込み、約10%の見込み、約12%の見込み、約15%の見込み、約20%の見込み、約25%の見込み、約30%の見込み、約40%の見込み、約50%の見込み、約60%の見込み、約75%の見込み、約90%の見込み又は約95%の見込みである。
【0062】
当業者は、予後の指標と有害な転帰に対する疾病素質との関連付けは統計分析であることを理解する。例えば、コントロールレベルより多い又は少ないmiRNAレベル(例えば、サンプル中の1又はそれより多いmiRNAの量)は、或る実施形態では、或るレベルの統計学的有意性により決定するとき、被検体が、コントロールレベル以下のレベルを有する被検体よりガンに罹患する可能性が高いことを示すことができる。加えて、miRNAレベルのベー
スラインレベルからの変化は被検体の予後を反映し得、マーカーレベルの変化の程度は、有害な事象の重篤度に関連し得る。統計学的有意性は、しばしば、2又はそれより多い集団を比較し、信頼区間及び/又はp値を決定することにより決定される。例えば、Dowdy及びWearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York, 1983(参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる)を参照。本主題の例示的信頼区間は、90%、95%
、97.5%、98%、99%、99.5%、99.9%及び99.99%である一方、例示的なp値は、0.1、0.05、0.025、0.02、0.01、0.005、0.001及び0.0001である。
【0063】
他の実施形態では、予後又は診断的miRNAレベルの閾値レベル変化度を確立することが
でき、生物学的サンプル中の該指標のレベル変化度は、単純に閾値レベル変化度と比較することができる。本明細書に開示の主題のmiRNAレベルに関して好適な閾値レベル変化は
、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約50%、約60%、約75%、約100
%及び約150%である。更に他の実施形態では、「ノモグラム」を確立することができ、
これにより予後又は診断的指標のレベルを、所与の転帰への関連性向と直接関係付けることができる。当業者は、2つの数値を関係付けるためのノモグラムの使用に精通しており、集団の平均ではなく個々のサンプル測定値を言及するので、この測定値の不確定性はマーカー濃度の不確定性と同じであることを理解する。
【0064】
サンプル中のmiRNAの同一性及び相対量を、特定サンプルのmiRNAプロフィールを提供するために使用することができる。サンプルのmiRNAプロフィールは、サンプル中に含まれ
るmiRNAの同一性、サンプル中に含まれるmiRNAの量的レベル及び/又は別のサンプルに対
するmiRNAの量的レベルの変化についての情報を含む。例えば、サンプルのmiRNAプロフィールは、特定のガンと関連するmiRNAの量的レベル及び/又は量的レベルの変化についての情報を含む。
【0065】
更に、本明細書に開示の主題の診断方法に関して、好ましい被検体は脊椎動物の被検体である。好ましい脊椎動物は温血動物であり;好ましい温血脊椎動物は哺乳動物である。
好ましい哺乳動物は最も好ましくはヒトである。本明細書で使用する場合、用語「被検体」にはヒト被検体及び動物被検体の両方が含まれる。よって、獣医学上の治療的使用が本明細書に開示の主題に従って提供される。
【0066】
このように、本明細書に開示の主題は、哺乳動物(例えば、ヒト)及び絶滅危惧にあるため重要な哺乳動物(例えば、シベリアトラ);経済学的重要性を有する哺乳動物(例えば、
ヒトが消費するために農場で飼育される動物);及び/又はヒトにとって社会的重要性を有する動物(例えば、ペットとして又は動物園で飼われる動物)の治療を提供する。このような動物の例としては、以下のもの挙げられるがそれらに限定されない:肉食動物(例えば
、ネコ及びイヌ);ブタ(swine)(豚(pig)、去勢豚(hog)を含む)及びイノシシ;反芻動物及び/又は有蹄動物(例えば、ウシ(cattle)、去勢ウシ(ox)、ヒツジ、キリン、シカ、ヤギ、バイソン及びラクダ);及びウマ。トリ(bird)の治療もまた提供される。これには、絶滅
危惧にあるもの及び/又は動物園で飼われているもの、並びに鳥(fowl)、より具体的には
家禽(domestic fowl)、すなわち、食用家禽(poultry)(例えばシチメンチョウ、ニワトリ
、アヒル、カモ、ホロホロチョウなど)の種類のトリの治療が含まれる。なぜなら、これ
らは、ヒトにとって経済的重要性を有するからである。よって、家畜化したブタ、反芻動物、有蹄動物、ウマ(競走馬を含む)、食用家禽などを含むがこれらに限定されない家畜の治療も提供される。
【0067】
上記のように、本明細書に開示の主題は、被検体の生物学的流体内、詳細には、被検体の血清学的サンプル(例えば、血液)内でのガンと相関付けられるガン由来エキソソームmiRNAの量の決定を提供する。これは、被検体から容易に獲得される検査用の生物学的サンプルの利点を提供する。生物学的サンプル中の目的の1又はそれより多いmiRNAの量は、次いで、当該分野において一般に公知の多くの方法のいずれかを利用して決定し、miRNAコントロールレベルと比較することができる。
【0068】
決定した1又はそれより多いmiRNAの「量」は、1又はそれより多いmiRNAの定性的測定(例えば、測定サンプル中に存在するか否か)及び/又は定量的測定(例えば、どれだけ存在するか)をいう。「コントロールレベル」は、ガンを患っていない被検体における匹敵す
る生物学的サンプル中の1又はそれより多いmiRNAの量(定性的な存否を含む)又は量の範
囲である。コントロールレベルの計算の1つの非制限的例として、正常生物学的サンプル(例えば、血液)中の目的の1又はそれより多いmiRNAの量を計算し、全被検体に外挿する
ことができる。
【0069】
生物学的サンプル中のエキソソームからのmiRNAレベルを測定する例示的方法は、遺伝
子発現研究に適用される強力なツールであるマイクロアレイ技法である。この技法は、サンプル中の相補鎖を見つけてこれとハイブリダイズすることによって、選択的結合により該相補鎖を捕捉するプローブとして、既知の配列情報を有する多くのポリヌクレオチドを提供する。図1及び8は、マイクロアレイによりエキソソーム由来miRNAを単離し測定す
るための例示的プロトコルのフローチャートを提供する。
【0070】
用語「選択的結合」とは、本明細書で使用する場合、プローブが標的ポリヌクレオチドに特異性を有してハイブリダイズする能力の程度をいう。よって、プローブは、標的ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補性であるか又は本質的に相補性であるポリヌクレオチド配列を含んでなる。「相補性」である核酸配列は、標準のWatson-Crick相補性規則に従って塩基対合するものである。本明細書で使用する場合、用語「相補性配列」は、上記と同じヌクレオチド比較により評価できるような、又は比較的ストリンジェントな条件(例えば、本明細書中に記載の条件)下で、問題の核酸セグメントとハイブリダイズし得ると定義されるような、実質的に相補性である核酸配列を意味する。企図される相補性核酸セグメントの特定の例は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。miRNAに対して結
合親和性を有する本明細書に開示のプローブに関して、プローブは、標的ポリヌクレオチド配列と100%相補性であり得る。しかし、プローブは、該プローブが標的ポリヌクレオ
チドと特異性を有して結合することができ、サンプルからそれを捕捉できる限り、必ずしも、該標的ポリヌクレオチドに対しその全長にわたって完全に相補性であることを要しない。
【0071】
核酸ハイブリダイゼーションは、当業者により容易に理解されるように、塩基組成、相補鎖の長さ及びハイブリダイズする核酸同士間のヌクレオチド塩基ミスマッチの数に加えて、塩濃度、温度又は有機溶剤のような条件によって影響される。ストリンジェントな温度条件としては、一般には30℃以上の温度、代表的には37℃以上の温度、好ましくは45℃以上の温度が挙げられる。ストリンジェントな塩条件は、通常1,000mM未満、代表的には500mM未満、好ましくは200mM未満である。しかし、パラメータの組合せが、いずれか1つ
のパラメータの値より遥かに重要である。高いレベルの相同性を含む配列を同定及び/又
は単離するための適切なハイブリダイゼーション条件の決定は、当該分野において周知である。高ストリンジェンシーの条件を特定するという目的には、好適な条件は、約200mM
の塩濃度及び約45℃の温度である。
【0072】
データマイニング作業(data mining work)は、チップの走査、信号収集、画像処理、規格化、統計学的処理及びデータ比較並びに経路分析を含むバイオインフォマティックスにより達成される。このように、マイクロアレイは、高いスループット能で、数百、数千のポリヌクレオチドを同時にプロファイリングできる。mRNA発現のマイクロアレイプロファイリング分析は、基礎研究において遺伝子発現研究に有益なデータを提供することに成功している。そして、この技法は製薬産業及び臨床診断において実践されてきた。利用可能になるmiRNAデータの量の増大及び遺伝子調節におけるmiRNAの重要性についての証拠の蓄積に伴い、マイクロアレイは高スループットmiRNA研究に有用な技法となっている。
【0073】
ガンと相関付けられたmiRNAの分析は、1つの試験サンプル内で複数のポリヌクレオチ
ドプローブを別途に又は同時に使用して行うことができる。例えば、複数のサンプルの効率的な加工処理及びより高い診断及び/又は予後的正確性を提供できる可能性のために、
幾つかのプローブを1つの試験で組み合わせることができる。加えて、当業者は、同じ被検体の(例えば、連続する時点の)複数サンプルを試験する価値を認識する。このような系列サンプルの試験により、miRNAレベルの変化を経時的に同定することが可能になる。miRNAレベルの増加又は減少及びレベルに変化がないことは、疾患状態について有益な情報を提供することができる。
【0074】
或る実施形態では、1又はそれより多いガンと相関付けられたガン由来エキソソームmiRNAに選択的に結合するポリヌクレオチドプローブからなるパネルは、ガンの診断又は予後及びガンを有する被検体の管理(management)に関する関連情報を提供するように構築することができる。このようなパネルは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、75、100、150、200、250、300、400、500又は1,000の個々のポリヌクレオチドプローブを使用して構築することができる。単一プローブ又はより大きなプローブパネルを含んでなるプローブサブセットの分析は、種々の臨床設定で、臨床感受性又は特異性を最適化するために当業者により行われている。これらには、外来診療、応急手当、救命救急医療、集中治療、監視ユニット、入院患者(in-subject)、外来患者(out-subject)、診療所(clinic、physician office)及び集団検診の設定が含まれるが、これらに限定されない。更に、当業者は、単一プローブ又はプローブのより大きなパネルを含んでなる更なるプローブのサブセットを、臨床感受性及び特異性を最適化するために前記設定の各々において診断閾値を調節することと組み合わせて使用することができる。アッセイの臨床感受性は、当該アッセイが正確に予測する疾患を有するもののパーセンテージとして規定され、アッセイの特異性は、当該アッセイが正確に予測できる疾患を有さないもののパーセンテージとして規定される。
【0075】
或る実施形態では、1又はそれより多いmiRNAの量の決定は、1又はそれより多いmiRNAを標識することを含んでなる。標識miRNAは、次いで、各々が1又はそれより多いmiRNAと選択的に結合する1又はそれより多いポリヌクレオチドプローブで捕捉することができる。
【0076】
本明細書で使用する場合、用語「標識」及び「標識した」とは、プローブ分子に、分光学的、放射線学的又は他の方法により検出し得る成分を付着することをいう。よって、用語「標識」又は「標識した」とは、分子(例えば、ポリヌクレオチド)への検出可能なマーカーの(任意に、共有結合的又は非共有結合的な)組込み又は付着をいう。ポリペプチドを標識する種々の方法が当該分野において公知であり、これらを使用することができる。ポリヌクレオチド用の標識の例としては、以下が挙げられるがそれらに限定されない:放射性同位体、蛍光標識、重原子、酵素標識又はレポーター遺伝子、化学発光基、ビオチニル基、二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシン
ジッパー対配列、抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグなど)。或る実施
形態では、標識は、可能性のある立体障害を減少させるために、種々の長さのスペーサーアームにより付着される。
【0077】
ポリヌクレオチドプローブを利用するmiRNAレベルの分析は、種々の物理学的フォーマ
ットでも実施することができる。例えば、マイクロタイタープレート又は自動操作を用いて、多数の試験サンプルの加工処理を容易にすることができる。或いは、単一サンプルフォーマットは、時宜に即した様式で、即時の治療及び診断を容易にするように開発され得る。
【0078】
或る実施形態では、複数のポリヌクレオチドプローブは各々基体に結合される。或る実施形態では、基体は複数のアドレスを含んでなる。各アドレスは、アレイの少なくとも1つのポリヌクレオチドプローブと結合され得る。アレイは、当該アレイ上の特定の所定位置(すなわち、「アドレス」)の領域(すなわち、該アレイの「特徴点(feature)」又は「スポット」)が特定の標的又は特定クラスの標的を検出する(しかし、特徴点は偶発的にその特徴点の非標的を検出するかもしれない)ように該アレイが異なる成分(例えば、異なるポリヌクレオチド配列)の複数の領域を有するとき、「アドレス可能」である。アレイの特
徴点は、代表的には、介在するスペースにより分離される(しかし、そうである必要はな
い)。アレイの場合、「標的」miRNAは、基体の種々の領域に結合したプローブ(「標的プ
ローブ」)により検出されるべき移動相(体表的には、流体)中の成分として参照されるこ
とがある。
【0079】
生体高分子アレイ(例えば、ポリヌクレオチドマイクロアレイ)は、(例えば、合成によ
り又は天然の供給源から)予め得られた生体高分子を基体上に堆積させるか、又はインサ
イチュ合成法により作製することができる。得られた生体高分子を体積させる方法としては、(例えば米国特許第5,807,522号に記載のように)ピン若しくは毛細管に搭載し、次い
でそれを表面に接触させること、又は(例えば、PCT公開第WO 95/25116号及び同第WO 98/41531号に記載のような)パルスジェット(例えば、インクジェットヘッド)からの発射による堆積などが含まれるが、これらに限定されない。インサイチュ作製方法としては、ペプチドアレイの合成には米国特許第5,449,754号に記載の方法、ポリヌクレオチド用には米国特許第6,180,351号及びWO 98/41531並びにこれらで引用された参考文献に記載の方法が挙げられる。試薬の堆積にはパルスジェットもまた使用し得る。予め得られた生体高分子の堆積又はインサイチュ法のいずれかによる生体高分子アレイ作製の更なる詳細は、米国特許第6,242,266号、同第6,232,072号、同第6,180,351号及び同第6,171,797号に開示されている。予め得られた生体高分子の堆積又はインサイチュ法によるアレイ作製では、代表的には、アレイが形成される予定か又は形成されている基体表面上の各領域(「アレイ領域」)が、1又はそれより多い試薬に完全に曝される。例えば、いずれの方法でも、アレイ領域は、しばしば、基体及び生体高分子又は生体モノマーの両方に結合する1又はそれより多い試薬に曝されて表面に適切な層を形成する。インサイチュ作製では、アレイ領域はまた、代表的には、酸化薬、脱ブロッキング試薬、任意にキャッピング剤に曝される。同様に、特に予め得られた生体高分子の堆積による作製では、アレイ領域を適切なブロッキング剤に曝して、特徴点がない表面位置を標的への非特異結合からブロックすることが望ましくあり得る。
【0080】
ガン由来エキソソームmiRNAの量の決定は、択一的に又はマイクロアレイ分析に加えて
、(例えば、本実施例で詳細に開示するような)リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
の使用を含んでなり得る。リアルタイムPCR(RT-PCR)は、サンプル中のmiRNAの存在及び存在量に関する正確で迅速なデータを提供することができる。図2は、RT-PCRによるエキソソーム由来miRNAの単離及び測定の例示的プロトコルのフローチャートを提供する。例示
的方法の更なる詳細は本実施例に記載される。
【0081】
本明細書に開示の主題の或る実施形態では、被検体における可能性のある有害な妊娠転帰を診断する方法が提供される。miRNAを含んでなるエキソソームの単離及びmiRNA量の決定について上記に詳細に開示した方法は、以下に説明する幾つかの改変を伴って、有害な妊娠転帰に関連する特定のmiRNAの定量化に同様に適用可能である。
【0082】
有害な妊娠転帰の予測のために、胎盤に由来する循環エキソソームを生物学的サンプル(例えば、血液又はその成分)から単離することができる。胎盤は、胎児に由来するが、母体の系と実際に接触している唯一の胎児組織である。このように、胎盤細胞により産生されるエキソソームは、母親の血流内を循環することができる。胎盤由来エキソソームの単離には、磁性ビーズに固定した抗EpCAM抗体(腫瘍エキソソームの単離に使用されるような)又は抗胎盤タイプアルカリホスファターゼ抗体(PLAP)のいずれかを利用することができる(例えば、図8を参照)。
【0083】
例えば、或る実施形態では、この方法は、被検体からの生物学的サンプルを用意し、生物学的サンプルからマイクロRNA(miRNA)を含んでなるエキソソームを単離することを含んでなる。次いで、1又はそれより多いmiRNAの量を決定し、1又はそれより多いmiRNAコントロールレベルと比較する。次いで、1又はそれより多いmiRNAコントロールレベルと比
較して、エキソソームからの1又はそれより多いmiRNAの量に無視できない差が存在すれ
ば、被検体が有害な妊娠転帰の危険を有していると診断することができる。或る実施形態では、有害な妊娠転帰は、子癇前症、早産(例えば、32週間の妊娠期間前の出産)、早期破水、胎内発育遅延及び再発性妊娠喪失からなる群より選択される疾患である。
【0084】
本明細書に開示の主題の実施には、他に指摘がない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子導入生物学、微生物学、組換えDNA及び免疫学の従来の技法(当該分野の技術範囲内である)を用いることができる。このような技法は文献に十分に説明されている
。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual (1989),第2版,Sambrook, Fritsch及びManiatis編,Cold Spring Harbor Laboratory Press,第16章及び第17章;米国特許第4,683,195号;DNA Cloning,第I巻及び第II巻,Glover編,1985;Oligonucleotide Synthesis, M. J. Gait編,1984;Nucleic Acid Hybridization, D. Hames及びS. J. Higgins編,1984;Transcription and Translation, B. D. Hames及びS. J. Higgins編,1984;Culture Of Animal Cells, R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987;Immobilized Cells And Enzymes, IRL Press, 1986;Perbal (1984),Practical Guide To Molecular Cloning;See Methods In Enzymology (Academic Press, Inc., N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells, J. H. Miller及びM. P. Calos編,Cold Spring Harbor Laboratory, 1987;Methods In Enzymology,第154巻及び第155巻,Wuら編,Academic Press Inc., N.Y.;Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer及びWalker編,Academic Press, London, 1987;Handbook Of Experimental Immunology,第I巻〜第IV巻, D. M. Weir及びC. C. Blackwell編,1986を参照。
【実施例】
【0085】
実施例
以下の実施例は、本明細書に開示の主題の態様を説明するために含まれている。本開示及び当該分野における一般技術レベルに照らせば、当業者は、以下の実施例が例示を意図するに過ぎないこと及び本明細書に開示の主題の範囲から逸脱することなく多くの変更、改変及び修正を用いることができることを理解する。
【0086】
本明細書に開示の主題は、miRNAが生物学的流体中に見出され、生物学的流体中のエキ
ソソームから単離できることを開示する。単離したmiRNAは、ガン及び有害な妊娠転帰の
診断ツールとして利用することができる。本実施例はこれら適用の支持を提供する。
【0087】
実施例1〜5の材料及び方法
患者サンプル及び細胞株
これら実施例は、例示的生物学的流体として、卵巣の漿液性乳頭状腺ガンと診断された婦女子由来の血清(n=50;ステージIについてn=10、ステージIIについてn=10、ス
テージIIIについてn=20及びステージIVについてn=10)、良性卵巣腺腫を有する年齢が適合する婦女子由来の血清(n=10)及び卵巣疾患の証拠がない年齢が適合する婦女子由来の血清(n=10)を利用した。コントロール、良性卵巣疾患を有する患者並びにステージIII及びIVの卵巣ガンは、早期ステージの卵巣ガンを有する患者と年齢が適合することを基準にして選択した。これら実施例は更に、卵巣のIIIc嚢胞腺ガンを有する6人の婦女子から樹立した初代腫瘍細胞培養物及び対応する手術前の血清サンプルの研究のデータを含む。これら材料の全てを、University of LouisvilleのUniversity Human Studies Committeeにより承認されたインフォームドコンセントの下で得た。
【0088】
初代卵巣腫瘍細胞培養物は、本発明者らの研究室で樹立され、UL-1、UL-2、UL-3、UL-6、UL-B及びUL-Oと名付けられた。UL-2及びUL-3は遺伝性卵巣ガンに由来した一方、UL-1、UL-6、UL-B及びUL-Oは自然発生ガンに由来した。これら卵巣腫瘍細胞は、湿潤5% CO2雰囲気下で、エキソソームを含まない(限外濾過による)10%の胎仔ウシ血清、0.1mM非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム、200mM L-グルタミン、100mg/mLストレプトマイシン及び100IU/mLペニシリンを補充したRPMI 1640培地中で増殖させた。生存可能な細胞をトリパンブルー排除により評価した。利用した全ての培養物は、>95%生存可能であった。
【0089】
循環エキソソームの単離
腫瘍由来エキソソームは、抗上皮細胞接着分子(EpCAM)を使用する改変磁性活性化細胞
ソーティング(MACS)手順により特異的に単離した。本発明者らの以前の研究により、上皮腫瘍からのエキソソームはその表面にEpCAMを発現し、選択的単離に使用することができ
ることが示されている。正常コントロール、良性疾患を有する患者及び早期ステージ卵巣ガンを有する患者の血清サンプル(2.5ml)を、磁性マイクロビーズ(50μl)にカップリングした抗EpCAMとインキュベートした。これらを混合し、2時間4℃にてインキュベートし
た。LDマイクロカラムをMACSセパレータの磁界中に置き、カラムを500μlのTris-緩衝化
生理食塩水(TBS)でリンスした。磁性免疫複合体をカラムに適用し、未結合(未標識)の材
料を通過させて、廃棄した。カラムを500μlのTBSで4回洗浄した。カラムをセパレータ
から取り出して収集チューブ上に配置することにより、特異的に選択されたエキソソームを回収した。TBS(1ml)をカラムに加え、カラムに共に供給されたプランジャを適用する
ことにより、磁性標識したエキソソームを得た。単離したエキソソーム/マイクロビーズ
をIgG溶出緩衝液(Pierce Chemical Co, Rockford, IL)中に希釈し、複合体を10,000rpmで遠心分離してマイクロビーズとエキソソーム(上清)とを分離した。次いで、上清を100,000gで1時間4℃にて遠心分離した。ペレット化エキソソームを250μlリン酸-緩衝化生理食塩水(PBS)中に再懸濁し、これら腫瘍由来エキソソームをトータルタンパク質アッセイした。タンパク質の量は、標準としてウシ血清アルブミン(BSA)を用いてBradfordマイクロアッセイ法(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)により決定した。
【0090】
透過電子顕微鏡観察
透過電子顕微鏡観察のために、ペレット化エキソソームを、PBS中2.5%(w/v)のグルタ
ルアルデヒド中で固定し、脱水し、エポンに包埋した。超薄切片(65nm)を切り出し、酢酸ウラニル及びレイノルズクエン酸鉛で染色した。切片はJeol 1210透過型電子顕微鏡で検
査した。
【0091】
miRNAの単離及びプロファイリング
mirVana miRNA単離キットを製造業者(Ambion, Austin, TX)の指示に従って用いて、腫
瘍細胞及びエキソソームからトータルRNAを単離した。Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies, Foster City, CA)を用いて、RNAの質、miRNA画分の収率及びサイズを分析した。mirVana miRNAアレイ標識キット(Ambion)及びPost Labeling Reactive Dyeキット(Amersham Bioscience, Pittsburgh, PA)を用いて、単離したmiRNAをCy3で3'末端標識した。マイクロRNAプロファイリングは、467のヒト成熟型miRNA用のプローブを含有するマイクロアレイを使用してOcean Ridge Biosciences(Jupiter, FL)が二連で行った。この分析は、Invitrogenにより製造され二連でスポット状に塗布された35〜44量体オリゴヌクレオチドからなるSanger Institute mirBASE v9.0中に存在する467のmiRNAをカバーする特注miRNAアレイを使用した。ハイブリダイゼーション後、GenePix 4000Aアレイスキャナー(Axon Instruments, Union City, CA)を用いてmiRNAアレイを走査し、GeneSpring 7.0ソフトウェア(Silicon Genetics, Redwood City, CA)を用いて生データを規格化及び分析した。miRNAの組の各々を、各サンプルに加えたコントロールmiRNA(Ambion)と比較して表現することによって規格化を行い、アレイ間の比較を可能にした。38のミスマッチ且つシャッフルしたコントロールプローブ及び87の非保存C. elegansプローブを含むネガティブコントロールプローブからのハイブリダイゼーションシグナルに基づいて、閾値及びネガティブコントロールの95番目のパーセンタイル(95th percentile)(TPT95)を計算した。感受性を規定するために、標識反応中にNCode合成miRNAを1/500,000質量比でスパイクし、そのシグナル強度を検出した。特異性については、miR-93、miR-27a及びmiR-152についての完全適合プローブ及び各々について2ミスマッチを使用した。2塩基対ミスマッチプローブは、全てのアレイに対してTPT95以下のシグナルを示した。
【0092】
貯蔵及び操作に伴うエキソソームプロファイリングの安定性を評価するため、卵巣ガンを有する患者の血清を得て、4つの4mlサンプルに小分けした。直後にMACS手順により第1のアリコートから腫瘍エキソソームを単離し、トータルRNAを単離して全てのサンプル
の単離まで−70℃にて保存した。残る血清サンプルをその後のエキソソーム単離のために4℃にて保存した。4℃にて24時間後に第2のアリコートから、48時間後に第3のアリコートから、96時間後に第4のサンプルから腫瘍エキソソームを単離した。各エキソソーム調製物からRNAを単離して保存した。同様な研究において、保存された標本(banked specimens)の使用を模擬するために、3つの更なる血清アリコートをエキソソーム及びRNAの単離の前に−70℃にて7〜28日間保存した。
【0093】
一般的な統計学的考察
統計学ソフトウェアパッケージSAS9.1(SAS Institute, Cary, NC)を使用してデータを
分析した。各患者群について循環エキソソームのレベルを、3連で行った少なくとも2つ
の別個の実験からの平均±標準偏差として規定した。これら群間の比較は、片側ANOVAに
続く、各集団を事後検定的に比較するTukeyの多重比較により行った。miRNA発現の相対的定量化は、2-ΔΔCt法(Applied Biosystems User Bulletin No. 2)により計算し、デー
タは標的miRNAの相対量(RQ)のlog10として分析し、各サンプルに加えたコントロールmiRNAに関して規格化して、アレイ間の比較を可能にした。各サブセットについてmiRNA分布及び相関を信頼区間と共に計算した。統計学的有意性はp≦0.05に設定した。
【0094】
実施例1
良性卵巣疾患及び悪性卵巣疾患を有する婦女子における循環EPCAMポジティブエキソソー
ムの存在
抗EpCAM磁性ビーズを用いてEpCAMポジティブエキソソームを特異的に単離し、これら循環エキソソームをトータルタンパク質についてアッセイし、疾患のステージに対してプロットした(図3A)。年齢が適合する正常ボランティア(コントロール)におけるEpCAMポジティブエキソソームのレベルは、0.039±0.030mg/mlエキソソームタンパク質であった(これは、本アッセイのバックグランドを表した)。良性卵巣疾患を有すると診断された患者は、0.149±0.065mg/mlエキソソームタンパク質を有していた。これはコントロールに対して有意に上昇していた。卵巣ガンを有すると診断された患者は全て、EpCAMポジティブエキソソームレベルの有意な上昇を示した(良性疾患又はコントロールと比較)。ステージIの卵巣ガンを有する婦女子は、0.320±0.056mg/ml循環エキソソームタンパク質を示した。これはコントロール及び良性疾患の両方に対して有意に大きかった(p<0.01)。循環エキソソームのレベルはステージが進行するにつれて増大し、ステージIIのガンは0.640±0.053mg/mlを有し、ステージIIIは0.995±0.084mg/mlを有し、ステージIVは1.42±0.228mg/mlを示した。これら3つのステージに関連するエキソソームレベルは、良性疾患を有する婦女子又はコントロールより有意に大きかった(p<0.001)。得られる画分を電子顕微鏡観察により更に分析した。電子顕微鏡観察により、エキソソームに特徴的なベシクル状構造が示された(図3B)。この材料のエキソソーム性質は、ウェスタンイムノブロッティングによるテトラスパニン、クラスI抗原、胎盤タイプアルカリホスファターゼの存在により更に確証された。
【0095】
実施例2
低分子RNAと腫瘍由来エキソソームとの結合
これら単離したエキソソームが低分子RNAを含有するかどうかを同定するために、Bio-Analyzer 2100を用いてエキソソームを調べた(図4)。この分析により、一般には細胞由来RNAで観察される18S及び28S RNAの不在下に、低分子RNAの相当な集団の存在が同定された。続けて、この材料をmiRNAプロファイリングに使用した。
【0096】
実施例3
細胞由来miRNAに対するエキソソーム由来miRNAのプロファイリング
467のmiRNAについてプロービングするマイクロアレイ分析(図1)を用いて、細胞由来miRNA及びエキソソーム由来miRNAの両方からの特異miRNAの存在及びレベルを決定した。例示的結果を表1に示す。本発明者らの卵巣腫瘍のmiRNAプロフィールは、以前(Iorioら,2007)に報告された変化を確証した。更に、本発明者らは、467miRNAのうち218は規格化された閾値(細胞及びエキソソームの両方におけるネガティブコントロールプローブシグナルの95番目のパーセンタイルに基づいて計算)を越えることを示した(表2)。218のポジティブmiRNAのうち、175のレベルは、卵巣腫瘍細胞とその対応するエキソソームとの間で有意には異ならなかった。比較により、12のmiRNAは細胞中により高い割合で存在する一方で、31のmiRNAはエキソソーム内で上昇したレベルで存在していた。
【0097】
以前に、特異miRNAはヒト卵巣ガン細胞で過剰発現されることが示された(miR-21、miR-141、miR-200a、miR-200c、miR-200b、miR-203、miR-205及びmiR-214)。これら知見とエ
キソソーム由来の材料とを相関させるため、同じ患者の元の腫瘍細胞及び循環腫瘍エキソソームからRNA画分を単離した(図5)。マイクロアレイ分析を使用した腫瘍由来miRNAと末梢血由来エキソソームmiRNAとの間の比較は、これらが有意には異ならないことを示した
。更に、腫瘍由来miRNAのレベルは、末梢血由来エキソソームmiRNAのレベルと強い相関を示した(miR-21についてはr=0.77;miR-141についてはr=0.88;miR-200aについてはr=0.76;miR-200bについてはr=0.85;miR-200cについてはr=0.83;miR-203について
はr=0.85;miR-205についてはr=0.91;及びmiR-214についてはr=0.71)。
【0098】
【表1−1】

【0099】
【表1−2】

【0100】
【表1−3】

【0101】
【表1−4】

【0102】
【表1−5】

【0103】
【表1−6】

【0104】
【表1−7】

【0105】
【表1−8】

【0106】
【表2−1】

【0107】
【表2−2】

【0108】
実施例4
疾患の存在及びステージとのエキソソームmiRNAの相関
腫瘍エキソソームと循環エキソソームとの間の本発明者らの以前の比較を、進行したステージ患者で行った。特異miRNAと疾患の存在との関連を種々のステージにわたって比較
するために、エキソソームmiRNAの平均強度を決定した。ステージI、II及びIIIの患者間での8つの診断的miRNAの存在は、これらmiRNAのほとんどについて有意には異ならなかっ
た(図6)。miR-200c及びmiR-214は、ステージII及びIIIと比較して、ステージIを有する患者においてより低かった。しかし、全ての場合で、これらmiRNAは、良性疾患に由来す
るエキソソーム中で検出されたレベルを超えて有意に上昇していた。低分子RNA画分は正
常コントロールでは証明できなかった。miRNAの存在を評価する試みはネガティブであっ
た。
【0109】
実施例5
エキソソームmiRNAプロフィールの安定性
循環エキソソームmiRNAの測定は診断的であることが本明細書中で示されたので、次に
その安定性という技術的問題に取り組んだ。4℃で短時間(96時間まで)貯蔵された血清サンプルについてmiRNAプロファイリングを行い、強度を比較すると、分析した3つの診断
的miRNAにおいて有意差は観察されなかった(図7A)。血清サンプルを−70℃にてより長時
間貯蔵した場合、マイクロアレイにおけるこれらmiRNAの強度は有意には異ならなかった(図7B)。これら結果は、これらエキソソームmiRNAのレベルが安定で、貯蔵により有意には変化しないことを示している。
【0110】
実施例1〜5の検討
マイクロRNA発現プロファイリングは、現在信頼できる分子マーカーを欠いているガン(例えば卵巣ガン)の診断ツールとして使用することができる。以前の研究により、miRNA署名が卵巣ガンの診断マーカー又は予後マーカーとして役立ち得ることが示されているが、これらデータは組織標本における発現に基づいていた。本実施例は、循環腫瘍由来エキソソームとのmiRNAの結合を最初に証明するデータを提供する。以前の研究では、miRNAはヒト卵巣ガンにおいて異常に発現することが示されており、全体のmiRNA発現が正常組織とガン組織とを区別した(Iorioら,2007)。Luら(2005)の研究により、miRNA署名の使用がガン診断における重要な進歩として示されている。彼らの研究は、ガンのmiRNAベースの同定が、mRNA分類より、原発部位不明のガンを正確に診断することにおいて優れていることを示した。しかし、本明細書に開示の主題の前には、生検すべき塊(a mass to be biopsied)が存在しないとmiRNAプロファイリングを使用することはできなかった。
【0111】
本発明者らの最初のエキソソームの電子顕微鏡観察による特徴付けにより、それらが中空である(すなわち、ウイルス様構造がない)ことが示された(Taylor及びBlack,1986)。
その結果、本発明者らのグループは、他のグループと共に、エキソソームの外部タンパク質成分及びエキソソーム曝露の生物学的結果に焦点を当てた。本実施例では、しかし、本発明者らは、驚くべきことに、循環腫瘍エキソソームと結合した低分子RNA種の存在を最
初に示す(図4)。この低分子RNAは、細胞由来RNAに関係する18S及び28Sを欠いている。更に、本明細書に開示のマイクロアレイ分析は、同定された低分子RNAの少なくとも一部がmiRNAであることを証明した。
【0112】
本発明者らの卵巣腫瘍細胞のMiRNA発現プロファイリングは、以前の研究で報告されたmiRNAの異常性を確証した。同じ患者の循環腫瘍エキソソーム及び腫瘍細胞の両方の分析は、両方とも試験したmiRNAの46%(218/467)についてポジティブであることを示した。miRNAの強度を規格化すると、これらmiRNAのほとんどが細胞とエキソソームとの間で同様なレベルで発現しているか、又はエキソソーム内で上昇していた(175は有意には異ならず、31がエキソソーム内で上昇していた)。よって、(ガン特異的な署名を確立するために使用される)異常に発現したmiRNAは、卵巣ガン患者の細胞区画(compartment)及びエキソソーム区画の両方で出現する。
【0113】
本発明者らの(以前に診断的であることが示された)特異miRNAの比較は、腫瘍からのmiRNAと対応するエキソソームとの間の高い程度の相関を示した(0.71〜0.90の範囲)。この高い相関は、エキソソーム中により高い割合で存在するようにみえたmiRNA(例えばmiR-214)についてさえ保持される。エキソソーム中の特異miRNAの一様な上昇は、(少なくとも幾つかのmiRNAについて)miRNAのエキソソーム中への区画化(compartmentalization)が能動的(選択的)プロセスであるとの示唆を導いた。このようなプロセスは、腫瘍エキソソーム上で異常に発現される成分(例えば、ヌクレオリン又はヌクレオフォスミン)により媒介され得る。
【0114】
これら結果により、エキソソームmiRNAプロファイリングは組織miRNAの代理物(surrogate)として使用できることが証明され、スクリーニングにおけるゴールは早期ステージ疾患の同定であるので、早期ステージ疾患において循環エキソソームmiRNAを検出することが可能であることを調べた。早期ステージ卵巣ガン患者と後期ステージ卵巣ガン患者との間に診断的miRNAのエキソソーム発現は、これらmiRNAのほとんどについて有意には異ならなかった(図6)。miR-200c及びmiR-214は、ステージII及びIIIと比較して、ステージIを有する患者においてより低かった;しかし、全ての場合で、これらmiRNAは、良性疾患に由来するエキソソーム中で検出されたレベルを超えて有意に上昇していた。低分子RNA画分は正常コントロール中では証明できなかった。miRNAの存在を評価する試みはネガティブであった。よって、エキソソーム及び/又はエキソソーム低分子RNAの不在は、ガンを有さない正常な個体に関連し、正常組織miRNAプロフィールを映すエキソソームmiRNAは良性疾患と関連しているようである。卵巣ガンのステージ間の類似性は、おそらく、出発エキソソーム低分子RNAの量の標準化及び得られるアレイデータの規格化の結果である。この標準化及び規格化にもかかわらず、良性疾患を有する患者のエキソソームmiRNAを用いて得られるプロフィールは、異なるままであった。これら結果は、循環エキソソームに結合した特異miRNAの分析が全てのステージの卵巣ガンに適用可能であること、及び良性疾患及び悪性疾患は本明細書で着目した8つの特異miRNAのレベルに基づいて識別可能に見えることを示している。
【0115】
エキソソームのmiRNA署名は、由来した腫瘍細胞のmiRNA発現プロフィールのものとパラレルであり、このことは、miRNAプロファイリングは、組織がなくても実施可能であり、
腫瘍プロフィールを正確に反映することを示している。本発明者らはまた、肺ガン患者からの腫瘍由来エキソソームが対応する腫瘍miRNA署名と類似するmiRNAを含有していることを観察した(実施例6参照)。循環腫瘍由来エキソソームは、腫瘍マーカー(例えばEpCAM)
を用いて単離することができ、続いてエキソソーム結合miRNAの分析を行う。このアプロ
ーチは生検すべき塊を必要としないという点で非侵襲的であるので、エキソソームmiRNA
プロファイリングは、多くの異なるガンの検出用のスクリーニングツールとして利用することができる。予後(治療抵抗性を含む)を予測する腫瘍組織に関連する特異miRNA(例えば、let-7i、miR-16、miR-21及びmiR-214)が同定されている(Yangら,2008;Blowerら,2008)ので、腫瘍エキソソーム中のその存在はまた、予後の指標としてのエキソソームmiRNAプロファイリングの有用性を更に規定するために評価することができる。エキソソームmiRNAプロファイリングの使用は、このアプローチを無症状個体のスクリーニング及び疾患再発のモニタリングに拡張することができる。
【0116】
実施例6
対応する肺腫瘍から単離したmiRNAと比較した、末梢血由来肺腫瘍エキソソームとのmiRNAの相関
非小細胞肺ガン腫(NSCLC)の診断的miRNA署名を示す研究において、特異miRNAは正常肺
組織と比較して過剰発現した(miR-17-3p、miR-21、miR-106a、miR-146、miR-155、miR-191、miR-192、miR-203、miR-205、miR-210、miR-212及びmiR-214)。これら知見と患者由来の材料とを相関させるため、本明細書中上記で開示した図8に示す方法を用いて循環腫瘍エキソソーム及び元の腫瘍からmiRNA画分を単離し、プロファイリングした。mirVana miRNAアレイ標識キット(Ambion)を用いて、単離したmiRNAをCy3で3'末端標識した。miRNAプロファイリングは、467のヒト成熟型miRNA用のプローブを含有するマイクロアレイを使用して二連で行った。ハイブリダイゼーション後、GenePix 4000Aアレイスキャナーを用いてmiRNAアレイを走査し、GeneSpring 7.0ソフトウェア(Silicon Genetics, Redwood City, CA)を用いて生データを規格化及び分析した。miRNAの組の各々を、各サンプルに加えたコントロールマイクロRNA(Ambion)と比較して表現することによって規格化を行い、チップ間の比較を可能にした。
【0117】
末梢循環由来腫瘍エキソソームと腫瘍との間の比較により、miRNA署名は有意には異な
らないことが示された(図9)。このアプローチは、少なくとも12の特異miRNAがNSCLCで上昇していること及びこれら12特異miRNAの関連が循環腫瘍由来エキソソーム中に反映され
ていることを確証した。よって、これらmiRNAの評価は、腫瘍中のそのレベルの代理物と
して使用することができ、したがってガン(この特定の場合にはNSCLC)の存在を診断でき
る。
【0118】
実施例7
有害な妊娠転帰との相関のための胎盤由来エキソソームmiRNAプロファイリング
循環エキソソームが有害な妊娠転帰(例えば早産)を診断できるmiRNAを含んでなるかど
うかを決定するために、妊娠被検体の血清サンプルを収集し、磁性ビーズに結合した抗胎盤アルカリホスファターゼ抗体を用いて胎盤組織由来エキソソーム画分を単離した。本明細書中上記で開示した図8に示す方法を用いて、単離した循環胎盤由来エキソソームから及び同じ被検体の胎盤組織から直接miRNAを単離し、プロファイリングした。簡潔には、mirVana miRNAアレイ標識キットを用いて、単離したmiRNAをCy3で3'末端標識した。miRNAプロファイリングは、467のヒト成熟型miRNA用のプローブを含有するマイクロアレイを使用して二連で行った。ハイブリダイゼーション後、GenePix 4000Aアレイスキャナーを用いてmiRNAアレイを走査し、GeneSpring 7.0ソフトウェア(Silicon Genetics, Redwood City, CA)を用いて生データを規格化及び分析した。miRNAの組の各々を、各サンプルに加えたコントロールマイクロRNA(Ambion)と比較して表現することによって規格化を行い、チップ間の比較を可能にした。
【0119】
結果を表3に示す。DT1サンプルは、出産予定日まで身ごもった婦女子の胎盤組織から
単離したmiRNAである。DT2サンプルは、出産予定日まで身ごもった婦女子の胎盤由来エキソソームから単離したmiRNAである。DT3サンプルは、早産した(32週間の妊娠期間前の出
産)婦女子の胎盤組織から単離したmiRNAである。DT4サンプルは、早産した婦女子の胎盤
由来エキソソームから単離したmiRNAである。影付きの細胞は、試験したmiRNAのサンプル中での存在を示す。
【0120】
これらデータは、胎盤由来エキソソームのmiRNAプロファイリングが達成されたこと、
及びこれらデータが胎盤からのmiRNAのプロフィールと相関することを示している。この
ように、胎盤細胞により産生されたエキソソームから単離したmiRNAのmiRNAプロフィールは、有害な妊娠転帰の診断目的に利用することができる。
【0121】
【表3−1】

【0122】
【表3−2】

【0123】
【表3−3】

【0124】
【表3−4】

【0125】
【表3−5】

【0126】
【表3−6】

【0127】
【表3−7】

【0128】
【表3−8】

【0129】
【表3−9】

【0130】
【表3−10】

【0131】
本実施例は、現在利用可能な診断アッセイに対して大いに改善された特異性、感受性及びポジティブ予測値を有するガン及び有害な妊娠転帰の診断アッセイの適用の成功を証明し、本実施例はまた、他のアッセイ方式では入手可能ではないステージ、重篤度及び治療応答に関する追加情報を提供する。
【0132】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.被検体から得た生物学的サンプル又は一連の生物学的サンプルの各々から、マイクロRNA(miRNA)を含むエキソソームを単離し;
b.単離したエキソソーム中の1又はそれより多くのmiRNAの量を決定し;
c.前記1又はそれより多いmiRNAの量を1又はそれより多いmiRNAコントロールレベルと比較することを含んでなり、
前記1又はそれより多いmiRNAコントロールレベルに対する前記エキソソームに由来する前記1又はそれより多いmiRNAの量の差を使用して検出、特徴又は評価を決定する、被検体においてガンを検出若しくは特徴決定するか又はガンの治療効力及び/若しくは進行を評価する方法。
【請求項2】
a.被検体から得た生物学的サンプル又は一連の生物学的サンプルの各々から、マイクロRNA(miRNA)を含むエキソソームを単離し;
b.単離したエキソソーム中の1又はそれより多くのmiRNAの量を決定し;
c.前記1又はそれより多いmiRNAの量を1又はそれより多いmiRNAコントロールレベルと比較することを含んでなり、
前記1又はそれより多いmiRNAコントロールレベルに対する前記エキソソームに由来する前記1又はそれより多いmiRNAの量の差を使用して検出、特徴又は評価を決定する、被検体において有害な妊娠転帰を検出若しくは予知するか又は有害な妊婦転帰のリスクを評価する方法。
【請求項3】
前記ガンが、卵巣ガン、子宮頸ガン、乳ガン、子宮内膜ガン、結腸ガン、前立腺ガン、肺ガン、黒色腫及び膵臓ガンからなる群より選択されるガンである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記被検体がヒトである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記生物学的サンプル又は前記一連の生物学的サンプルの各々が、乳、血液、血清、血漿、腹水、嚢胞液、胸膜液、腹膜液、脳脊髄液、涙、尿、唾液、痰又はこれらの組合せを含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記エキソソームの単離が、サイズ排除クロマトグラフィーを使用してエキソソームを単離することを含んでなる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記エキソソームの単離が、エキソソームを含むクロマトグラフィー画分を遠心分離することを更に含んでなる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記クロマトグラフィー画分が空隙容量画分を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記エキソソームがガン由来エキソソームであり、該ガン由来エキソソームが抗ガン抗原抗体を用いる免疫吸着捕捉により非ガン由来エキソソームから分離される、請求項1に従属する場合の請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗ガン抗原抗体が抗上皮細胞接着分子(抗EpCAM)抗体である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1又はそれより多いmiRNAの量の決定が、1又はそれより多いmiRNAを標識すること、又は各々が1又はそれより多いmiRNAと選択的に結合する1又はそれより多いポリヌクレオチドプローブで該1又はそれより多いmiRNAを捕捉すること、又はリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を用いて1又はそれより多いmiRNAの量を定量すること、又は前記エキソソーム中のmiRNAの総量を決定することを含んでなる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
前記方法がガンを検出又は特徴決定するか又はガンの治療効力及び/又は進行を評価するために使用され、前記1又はそれより多いmiRNAが、下記の表1:
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【表1−8】

若しくは下記の表2:
【表2−1】

【表2−2】

に記載されているものであるか、又はmiR-21、miR-141、miR-200a、miR-200b、miR-200c、miR-203、miR-205及びmiR-214からなる群より選択されるものであるか、或いは
前記方法が有害な妊娠転帰を検出又は特徴決定するか又は有害な妊娠転帰のリスクを評価するか又は有害な妊娠転帰の治療効力及び/又は進行を評価するために使用され、前記1又はそれより多いmiRNAが、表3:
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【表3−4】

【表3−5】

【表3−6】

【表3−7】

【表3−8】

【表3−9】

【表3−10】

に記載されているものである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
前記決定した1又はそれより多いmiRNAの量に基づいて、ガン又は有害な妊娠転帰の治療法を選択するか、ガン又は有害な妊娠転帰の治療法を改変するか、ガン又は有害な妊娠転帰の治療効力を評価するか、或いはガン又は有害な妊娠転帰の進行を評価することを更に含んでなる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項14】
前記一連の生物学的サンプルが、ガン治療の開始前及び/又はガン発生の前に収集した第1の生物学的サンプルと、ガン治療の開始後又はガン発生の後に収集した第2の生物学的サンプルとを含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ガンの特徴決定が、ガンのタイプ、悪性度及び/又はステージを決定することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記有害な妊娠転帰が、早期破水、子癇前症、早産、胎内発育遅延及び再発性妊娠喪失からなる群より選択される疾患である請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記コントロールが、
a.前記疾患を有していない被検体からの少なくとも1つのmiRNA遺伝子産物のレベル
b.前記疾患を示していない被検体のサンプルからの少なくとも1つのmiRNA遺伝子産物のレベル
からなる群より選択される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項18】
a.ガン又は有害な妊娠転帰を有しているか又は有すると疑われる被検体由来のサンプルから単離したmiRNAを標識し;
b.前記miRNAをmiRNAアレイにハイブリダイズさせ;
c.前記アレイへのmiRNAのハイブリダイゼーションを測定し;
d.参照と比較してガン又は有害な妊娠転帰を代表するサンプル中で異なって発現するmiRNAを同定すること
を含む、miRNA発現とガン又は有害な妊娠転帰との間の相関を特定することを更に含んでなる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項19】
前記異なって発現するmiRNAの同定が、前記サンプルのmiRNAプロフィールを作成し、miRNAプロフィールを評価して該サンプル中のmiRNAが正常サンプルと比較して異なって発現するかどうかを決定することを含んでなる請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−102768(P2013−102768A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−269463(P2012−269463)
【出願日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【分割の表示】特願2010−518421(P2010−518421)の分割
【原出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(506217427)ユニバーシティー オブ ルイヴィル リサーチ ファウンデーション,インコーポレーテッド (8)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF LOUISVILLE RESEARCH FOUNDATION,INC.
【住所又は居所原語表記】201 East Jefferson Street,Suite 215,MedCenter Three,Louisville,KY 40202,U.S.A.
【Fターム(参考)】