説明

試料分析方法、及び試料分析システム

【課題】リサイクル原料をサンプリング試料とする分析工程において、袋詰めされた試料の分析準備に費やす作業負担を軽減するとともに、試料の分析の準備にかかる時間を短縮する。
【解決手段】作業ステージ上の運搬トレイに載せられた、試料が封入された袋を開封ステージに移動し、クランプに把持させ、前記クランプが把持する前記袋の先端をカッターで切削して開封し、前記試料を採取トレイに落下させ、前記採取トレイ上の前記試料を採取し、パレットに設けられた複数の試料充填部の1つへ移動し充填する作業を、試料が封入された袋ごとに繰り返し行い、前記パレットに前記試料がそろった後、前記パレットを分析装置に移動し、分析を実施し、分析後の前記パレットを取り出すことを特徴とする試料分析方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉用原料サンプルの試料分析方法、及び試料分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属スクラップや使用済みの電子機器から取り出す部品は、リサイクル原料として活用されている。リサイクル原料は、直接、または破砕などされて自溶炉や転炉へ供給される。このようなリサイクル原料の精錬を行うにあたって、原料中の構成成分の含有率を正確に知る必要がある。このため、原料の構成成分の含有率を正確に反映した試料を用いたサンプリングが行われる。このような原料のサンプリングでは、塊状の原料が試料として取得された場合、原料の構成成分の含有率に偏りが生じてしまう。このため、原料を細かく砕き、均一化した原料から試料が取得される。
【0003】
特許文献1の方法及び装置では、従来、手作業と半自動化されていたサンプルの調製において、サンプルを縮分する工程から微粉砕及び袋詰めまでの工程を全て自動化し、効率の改善を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−304441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の方法、及び装置では、袋詰めした試料を分析する工程までは自動化されていない。このため、試料の分析の工程において、袋詰めされた試料を1つずつ開封し、パレットへ移し、分析装置へ入れる作業を作業員が行っている。ところが、近年のリサイクル原料の増加に伴って、大量の試料の分析が必要とされており、試料を手作業で処理することは、作業員の負担を増加するとともに、多くの時間を費やすこととなる。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、袋詰めされた試料の分析準備に費やす作業負担を軽減するとともに、試料の分析の準備にかかる時間を短縮する試料分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決する本発明は、作業ステージ上の運搬トレイに載せられた、試料が封入された袋を開封ステージに移動し、クランプに把持させ、前記クランプが把持する前記袋の先端をカッターで切削して開封し、前記試料を採取トレイに落下させ、前記採取トレイ上の前記試料を採取し、パレットに設けられた複数の試料充填部の1つへ移動し充填する作業を、試料が封入された袋ごとに繰り返し行い、前記パレットに前記試料がそろった後、前記パレットを分析装置に移動し、分析を実施し、分析後の前記パレットを取り出すことを特徴とする試料分析方法である。本発明の方法によると、袋詰めされた試料の分析準備に費やす作業負担を軽減するとともに、試料の分析の準備にかかる時間を短縮する。
【0008】
上記の方法において、第1ロボットが、前記運搬トレイ上の前記袋をつかみ、移動し、前記クランプに把持させることとしてもよい。
【0009】
上記の方法において、第2ロボットが、前記試料を前記採取トレイから採取し、前記パレットの前記試料充填部へ移動し充填することとしてもよい。
【0010】
上記の方法において、前記試料充填部が前記パレット上に座標化され、前記試料充填部を示す座標の情報にしたがって、前記ロボットが前記試料充填部へ前記試料を充填することにしてもよい。
【0011】
上記の方法において、前記第2ロボットは、前記試料の採取に用いる計量さじを備えていてもよい。
【0012】
上記の方法において、前記第1ロボット及び前記第2ロボットは多軸アームを備えていることとしてもよい。
【0013】
上記の方法において、前記第1ロボットと前記第2ロボットは同一のロボットであってもよい。
【0014】
上記の方法において、ロボットが、前記試料を前記採取トレイから採取し、前記パレットの前記試料充填部へ移動し充填することとしてもよい。
【0015】
上記の方法において、前記クランプが回転することにより、前記袋の開封端を前記採取トレイへ向け、前記試料を前記採取トレイに落下させることとしてもよい。
【0016】
上記の方法において、前記試料充填部は前記パレットに一体に形成されていてもよい。
【0017】
上記の方法において、前記試料充填部は前記パレットから分離可能に形成されていてもよい。
【0018】
上記の方法において、前記袋には試料の情報を有するバーコードが貼り付けられていてもよい。
【0019】
上記の方法において、前記バーコードを読み取り、分析データを不純物分析管理のためのコンピュータに自動取り込みをしてもよい。
【0020】
上記の方法において、前記試料はリサイクル原料であってもよい。
【0021】
上記の方法において、前記パレットに前記試料がそろった後、前記パレットを前記分析装置に移動する前に、前記パレットに振動を与えることとしてもよい。
【0022】
上記の方法において、前記振動の振動数が70〜120Hzであってもよい。
【0023】
上記の課題を解決する本発明は、試料が封入された袋が載せられた運搬トレイが設置される作業ステージと、前記袋の開封と、該袋内の試料を採取トレイへ移す処理とが実行される開封ステージと、前記試料の分析を行う分析装置と、前記試料を乗せた状態で分析装置に入れられるパレットと、前記袋をつかみ作業ステージから開封ステージへ移動する動作と、前記採取トレイ上の前記試料を採取し、前記パレットに設けられた複数の試料充填部へ移動し充填する動作と、前記試料を充填した前記パレットを前記分析装置へ移動する動作と、分析後の前記パレットを取り出す作業を行うロボットと、を備えた試料分析システムである。これにより、袋詰めされた試料の分析準備に費やす作業負担を軽減するとともに、試料の分析の準備にかかる時間を短縮する。
【0024】
上記のシステムにおいて、前記試料を乗せた状態のパレットが前記分析装置に入れられる前に、当該パレットに振動を与える振動装置を更に備えていてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の試料分析方法によると、袋詰めされた試料の分析準備に費やす作業負担を軽減するとともに、試料の分析の準備にかかる時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】試料分析システムの配置を示した模式図である。
【図2】試料充填部が一体に形成されたパレットの断面図である。
【図3】試料充填部が分離可能に形成されたパレットの断面図である。
【図4】試料分析システムの制御ブロック図である。
【図5】試料の分析工程を示したフロー図である。
【図6】ロボットの動作に関する制御フローである。
【図7】データの管理に関する制御フローである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施する試料分析方法の一形態を、図面を参照して説明する。
【0028】
図1は本実施の形態にかかる試料分析システム1の配置を示した模式図である。図1は試料分析システム1の配置を上から見た平面図である。試料分析システム1は、リサイクル原料の含有成分を分析(例えば、蛍光X線分析)するシステムであって、対象となる原料のサンプル試料(以下、単に「試料」という。)が封入された袋の開封から成分分析までを自動で行う。
【0029】
試料分析システム1は、作業ステージ2、開封ステージ3、分析装置4、パレット5、ロボット6を備えている。試料分析システム1の大部分は屋内に設けられており、試料分析システム1が配置された部屋は、ロボット6が作業するロボット作業室11と、作業員が分析を行う分析室12とからなる。ロボット作業室11には、作業ステージ2、開封ステージ3、分析装置4、パレット5、ロボット6が配置されている。分析室12には、ロボット6の操作盤13、分析用コンピュータ14が置かれた第1作業台15と、主に作業員による手作業が行われる第2作業台16とが配置されている。なお、ロボット作業室11と分析室12とは厳密に区分けされているわけではない。
【0030】
作業ステージ2は、作業員により試料が封入された袋が載せられた運搬トレイが設置される場所である。開封ステージ3は、ロボット6が、試料が封入された袋を開封し、試料を採取トレイへ移す場所である。開封ステージ3には、袋を掴むクランプ17が備えられている。
【0031】
分析装置4は、例えば、蛍光X線分析装置(一例としてエスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製のSEA6000VX HSFinder)であり、ナトリウムからウランまでの元素を測定可能であるものとする。分析装置4は、試料を分析し、リサイクル原料中の不純物を測定する。
【0032】
パレット5は、試料を分析装置4へ投入するための容器である。パレット5は、振動装置としての振動テーブル55上に設けられているものとする。振動テーブル55は、エアシリンダを有するピストンバイブレータを備えており、ピストンバイブレータの起振力を利用して、水平面内の少なくとも一軸方向に振動する。なお、ピストンバイブレータの振動数は、一例として70〜120(Hz)であり、起振力は、300〜800(N)であるものとする。本実施形態では、ピストンバイブレータとして、エクセン株式会社製のEPV35を用いることができる。なお、振動テーブル55は、不図示の振動テーブル制御部により制御される。パレット5には、試料を収容する試料充填部51が100個(例えば、幅方向に10個、奥行き方向に10個)設けられている。試料充填部51は、パレット5の表面に、パレット5に一体に形成されていてもよいし、パレット5から分離可能に形成されていてもよい。図2、図3は、パレット5の試料充填部51の一例を断面にして示した模式図である。図2は試料充填部51aがパレット5aに一体に形成されたものである。試料充填部51aは、パレット5aの表面に形成された窪み、あるいは凹部をなしている。図3は試料充填部51bがパレット5bから分離可能に形成されたものである。図3(a)は、試料充填部51bがパレット5bに装着された状態を示し、図3(b)は、試料充填部51bがパレット5bから分離した状態を示している。試料充填部51bはパレット5bに装着可能なるつぼともいえる。
【0033】
ロボット6は、多軸(6軸)のアーム61を備える(株)安川電機製のMOTOMAN−MH5Lである。ロボット6の可搬質量は、5kgである。ロボット6のアーム61は先端で物を把持することができる。ロボット6は、作業ステージ2上の運搬トレイの中の袋を掴み、作業ステージ2から開封ステージ3へ移動する動作と、採取トレイ上の試料を採取し、パレット5に設けられた複数の試料充填部51へ移動し充填する動作と、試料を充填したパレット5を分析装置4へ移動する動作と、分析後のパレット5を取り出す動作を行う。ロボット6の制御はコントロールボックス7が行う。
【0034】
さらに、試料分析システム1は、排出ボックス8、高圧集塵機9を備えている。排出ボックス8は、分析に必要な試料を採取した後の残りの試料や、試料が封入されている袋を廃棄する箱である。高圧集塵機9は、排出ボックス8中の試料や、パレット5などの試料に触れた工具を洗浄した際の試料を吸引、ろ過する。高圧集塵機9は部屋の外に配置され、室内とはホースなどで接続されている。
【0035】
また、作業ステージ2、開封ステージ3、分析装置4、パレット5、排出ボックス8は、いずれもロボット6のアーム61の稼働範囲内に配置されている。分析用コンピュータ14は、不純物分析管理のためのコンピュータとして用いられる。また、分析用コンピュータ14にはバーコードリーダ22が接続されている。試料の分析は24時間稼働させることができる。ただし、夜間は分析装置4のみの自動運転が行われ、トラブルが発生した場合には、停止したまま待機する事となっている。
【0036】
図4は、試料分析システム1の制御ブロック図である。図4に示すように、分析用コンピュータ14のCPU141がバーコード情報の取得、及びデータの管理を実行する。分析装置4の分析装置CPU41が試料の分析を行う。バーコードリーダ22が読み込んだ試料のデータは、分析用コンピュータ14の記憶装置に保存され、分析用コンピュータ14のディスプレイ142で確認することができる。分析装置CPU41は、分析装置4において得られた試料の分析結果を分析用コンピュータ14へ送る。CPU141は、試料の分析結果をバーコードの情報とリンクして保存する。また、ロボット6の動作はコントロールボックス7に内蔵されたロボットCPU71が行う。操作盤13からの指令に従い、ロボットCPU71はロボット6のアーム61の動作を行う。
【0037】
分析に係る試料は100メッシュ以下の粒径とし、大きさ200mm×150mm×10mm、厚さ77μmのポリエチレン、ナイロン、シーラント剤からなる袋に封入されている。試料は、例えば、公開特許2008−304441号公報に記載の方法で粉砕された後、上記の袋に詰められたものである。袋には約50gの試料が封入されているが、分析の際には1g(約0.5cc)の試料を採取する。
【0038】
次に試料の分析工程についてフロー図を参照しつつ説明する。図5は試料の分析工程を示したフロー図である。
【0039】
まず、自動分析を始める前に準備(ステップ1)を行う。この準備は人手により行われる。作業員は、試料の情報を分析用コンピュータ14へ取り込む。試料を封入した袋20には試料の情報が記載されたバーコード21がついており、このバーコード21をバーコードリーダ22で読み取り、分析する試料の情報を分析用コンピュータ14へ取り込む。バーコード21の情報は分析用コンピュータ14において、下流の工程において得られた試料の分析結果とリンクして管理される。次に、作業員は、バーコード21を読み込んだ袋20を運搬トレイ23へセットする。作業員は、この作業を100袋分繰り返す。袋20が100袋ない場合は、全ての袋20を運搬トレイ23へセットする。運搬トレイ23に袋20がそろったら、運搬トレイ23に振動を与え、袋の中の試料を下方へ集める。試料を下方へ集めることにより、後の工程における袋20の開封がスムーズに行える。作業員は、運搬トレイ23を作業ステージ2に置く。ここで行うバーコード21の読み取り作業と、袋20のセットは60分以内に完了することが望ましい。
【0040】
人手による作業が完了すると、ロボット6による試料の分析の工程へ進む。試料の分析工程では初めにロボット6を起動させる。ロボット6は初期動作に180秒を要する。このため、上記の作業中に始動ボタンを押しておいてもよい。ロボット6が初期動作を終えると、ロボット6の作業を開始する。
【0041】
ロボット6はアーム61の先端を原点位置から作業ステージ2上へ移動する。ロボット6は、作業ステージ2上の運搬トレイ23にセットされた袋20を1つ掴み、開封ステージ3へ移動する(ステップ2)。
【0042】
続いて、ロボット6は、袋20を開封ステージ3上のクランプ17に把持させる。このとき、クランプ17は、袋20の先端20aがクランプ17の先端17aから突き出るように把持する。そして、クランプ17が把持する袋20の先端をカッター24で切削して開封する(ステップ3)。このとき、ロボット6は開封時に袋がぶれてしまわないように袋を固定している。カッター24は退避位置より水平方向へ前進させ、突き出した袋の先端を開封端が横向きになるようにカットする。
【0043】
次に、試料を採取トレイ25へ落下させる。ここでは、クランプ17を90度回転させることにより、袋20の開封端20bを採取トレイ25へ向け、試料を採取トレイ25に落下させる。ロボット6はアーム61の先端に計量さじ26を持ち、採取トレイ25上の試料をすくい上げる。ロボット6は、計量さじ26が袋の端をなぞるように移動して、すりきり一杯の定量分を確保する(ステップ4)。このように、計量さじ26を備えることにより、試料の正確な量が確保できる。計量さじ26による試料の確保が済むと、採取トレイ25上の残りの試料及びクランプ17が掴んだ袋を排出ボックス8へ投入する。
【0044】
次に、ロボット6は計量さじ26をパレット5に設けられた複数の試料充填部51の1つへ移動し、試料を充填する(ステップ5)。予め、試料充填部51をパレット5上に座標化しておき、試料充填部51を示す座標の情報にしたがって、ロボット6が試料充填部51へ試料を充填することとしてもよい。これにより、試料を充填する作業の精度が向上し、正確な量の試料を試料充填部51へ充填できる。また、試料の移動中に計量さじ26内の試料を風防でカバーして、移動中の試料の落下を防止することとしてもよい。
【0045】
試料充填後、ロボット6は、ブローブース91へ移動し、コンタミネーションの防止のためエアーブロー92で計量さじ26に付着した試料を落とす(ステップ6)。ロボット6は、袋20を掴み、開封し、試料をパレット5の試料充填部51に充填する一連の作業が終了したら、再度、運搬トレイ23上の別の袋20を掴み、同じ作業を繰り返す。新たな袋20の試料はパレット5上の別の試料充填部51へ充填する。この一連の作業のタクトタイムは74秒であり、100袋を実行すると、2.1時間を要する。
【0046】
パレット5に試料がそろった後、パレット5へ振動を与え、パレット5の試料充填部51内の試料を均等にならす(ステップ7)。この場合、パレット5への振動は、振動テーブル55によって与えられる(例えば、振動数70〜120(Hz)、起振力300〜800(N)の振動が3〜10秒間与えられる)。なお、振動数や起振力、振動時間については、試料の量や粒径等に応じて適宜変更することができる。ここで、蛍光X線分析においては、X線を試料に照射して試料から発生する固有X線(蛍光X線)を利用した分析を行うため、試料の測定表面が平らであるか否かが分析精度に影響を与える。したがって、上記のようにして試料充填部51内の試料を均等にならすことで、分析精度を向上することができる。
【0047】
ここで、パレット5に試料がそろうとは、試料充填部51の全てに100袋の試料の充填が完了した場合、あるいは分析するだけの試料の充填が完了した場合をいう。試料が均等にならされたら、ロボット6は分析装置4の扉を開き、パレット5を分析装置4へ入れる(ステップ8)。分析装置4内には、XYテーブルのピン穴があり、ロボット6は、試料充填部51がピン穴に一致するようにパレット5を配置する。ロボット6は、パレット5の位置決めが終わると分析装置4の扉を閉じる。ロボット6がパレット5へ振動を与える工程から、分析装置4の扉を閉じるまでの時間は110秒である。分析装置4の1試料あたりの分析に係る時間は、試料充填部51間の移動を含め、6分である。すなわち、100試料分の分析にかかる時間は10時間である。分析後のデータは分析用コンピュータ14へ送られ、分析され、その後、分析システムサーバ(図示していない)へ送られて保存される。
【0048】
ロボット6は分析装置4が分析する間に、別のパレット5に新たに分析する試料を充填し、作り置きしておくことができる。ロボット6は先に実施した分析が終了したら、分析装置4の扉を開き、分析済みのパレット5を取り出す(ステップ9)。続いて、ロボット6は、作り置きしていた(既に振動を与えていた)パレット5を分析装置4へ挿入し、位置決め後、分析装置4の扉を閉じる。このパレット5の入れ替えに要する時間は145秒である。分析済みのパレット5は作業員がエアーブローにより洗浄した後、トレイ収容棚に戻される。ここでの試料の作り置きに要する時間は、分析装置4の分析に係る時間内に行われるため、実際には、作業工程に費やす時間を延長するものではない。
【0049】
200試料分の分析の作業に要する時間は、人手のかからない自動化している部分だけみると、ロボット6の初期動作に184秒、最初のパレットへの試料の充填に2.1時間、最初のパレット5の振動に最大10秒、パレット5の分析装置4への出し入れに255秒、200試料の分析に20時間かかるので、22時間10分程度で作業が行われる。これに、人手による作業が約1時間で行われるとしても、200試料分の処理は24時間以内に完了できる。
【0050】
従来、作業員が手作業でパレットへ試料を充填していたときには、手作業にかかる時間は、サンプルが200試料あるとき8.6時間も必要であった。本実施例の分析方法の導入により、人手の作業は、バーコードの読み込みやトレイの洗浄の作業に限られ、1時間程度まで減少した。これにより、人的負担を軽減し、人件費を軽減できる。特に、転炉用のリサイクル原料は多種多様な形状であり、検体も多いため、不純物の把握に費やす作業員の労力と作業時間が膨大になってしまっていたが、本実施例の試料分析方法を導入することにより、転炉用のリサイクル原料の不純物把握が容易になる。これにより、転炉用のリサイクル原料の不純物に起因した操業不良を低減できる。
【0051】
以上の分析工程における制御のフローについてまとめる。まず、ロボット6等の動作に関する制御の流れを説明する。図6は、ロボット6等の動作に関する制御フローである。ロボット6の動作の制御は、コントロールボックス7のロボットCPU71により実行される。初めに、ロボットCPU71は、アーム61に運搬トレイ23にセットされた袋20を1つ掴ませ、開封ステージ3へ移動させる(ステップS102)。次に、ロボットCPU71は、アーム61により袋20を開封ステージ3上のクランプ17に把持させる(ステップS103)。
【0052】
次に、把持したクランプ17を回転させ、試料を採取トレイ25へ落下させる(ステップS104a)。次に、ロボットCPU71は、アーム61に計量さじ26を持たせ、採取トレイ25上の試料をすくい上げさせる(ステップS104b)。そして、ロボットCPU71は、試料をすくったアーム61をパレット5の試料充填部51の1つへ移動し、充填する(ステップS105)。試料の充填が済むと、ロボットCPU71はアーム61をブローブースへ移動させ、計量さじ26に付着した試料を落とし、洗浄する(ステップS106)。
【0053】
ステップS106までの一連の処理を終えると、ロボットCPU71は、パレット5に試料がそろっているかどうかを判断する(ステップS107a)。この判断は、運搬トレイ23上に袋20があるかどうかで判断してもよいし、予め設定した数量の処理を終えたら、試料がそろったと判断するようにしてもよい。ロボットCPU71は、パレット5に試料がそろっていると判断すると、振動テーブル制御部(不図示)に対して指示を出し、振動テーブル55を振動させ、パレット5を振動させる(ステップS107b)。この振動により試料充填部51内の試料が均等にならされると、ロボットCPU71は、ロボット6を制御して、パレット5を分析装置4へ入れる(ステップS107c)。反対に、パレット5に試料がそろっていないと判断すると、再び、ステップS102へ戻り、試料の開封、充填を行う。ロボットCPU71は分析装置4における試料の分析が終了すると、パレット5を取り出す(ステップS108)。
【0054】
次に、データの管理に関する制御の流れを説明する。図7は、データの管理に関する制御フローである。データの管理は分析用コンピュータ14のCPU141により実行される。初めに、CPU141は試料の封入された袋20のバーコード情報を取り込む(ステップS201)。バーコードの読み込みは作業員による人的作業であるが、CPU141はバーコードリーダ22により読み込まれたデータを分析用コンピュータ14に取り込む。次に、分析装置4から試料の分析結果が送信されてくると、CPU141は試料の分析結果を分析用コンピュータ14に取り込む(ステップS202)。試料の分析結果を取り込むと、CPU141はバーコードの情報と分析結果とをリンク付ける(ステップS203)。そして、CPU141は、リンク付けたデータを分析システムサーバへ送信する(ステップS204)。
(実施例)
【0055】
上記で説明した試料分析システム1による試料の分析結果の一例を表1乃至表3に示す。試料の分析は10回行い、それぞれの数値と平均値、最大値、最小値、cv値を示した。
【表1】

【表2】

【表3】

【0056】
上記実施の形態において、ロボット6は多軸アームを備える構成であるため、可動範囲内の動作自由度が高い。このため、運搬トレイ23上の袋20をつかみ、移動し、クランプ17に把持させる作業と、試料を採取トレイ25から採取し、パレット5の試料充填部51へ移動し充填する作業とを1台で可能としている。このように、本実施例では、1台のロボット6で実行することにより、試料分析システム1の構成費用を抑えることができる。ただし、これらの作業はそれぞれ異なる2台のロボット、例えば、第1ロボットが運搬トレイ23上の袋20をつかみ、移動し、クランプ17に把持させる作業を行い、第2ロボットが試料を採取トレイ25から採取し、パレット5の試料充填部51へ移動し充填する作業を実行することとしてもよい。また、ロボットは多軸アームを備えるものでなくともよい。なお、上記実施形態では、振動テーブル55がパレット5を振動させて、試料充填部51内の試料を均等にならす場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、ロボット6がパレット5を分析装置4に搬送する間に振動することで、試料充填部51内の試料を均等にならすようにしてもよい。
【0057】
上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、さらに本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
【符号の説明】
【0058】
1 試料分析システム
2 作業ステージ
3 開封ステージ
4 分析装置
5、5a、5b パレット
6 ロボット
14 分析用コンピュータ
17 クランプ
20 袋
21 バーコード
23 運搬トレイ
25 採取トレイ
26 計量さじ
51、51a、51b 試料充填部
55 振動テーブル(振動装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業ステージ上の運搬トレイに載せられた、試料が封入された袋を開封ステージに移動し、クランプに把持させ、
前記クランプが把持する前記袋の先端をカッターで切削して開封し、前記試料を採取トレイに落下させ、
前記採取トレイ上の前記試料を採取し、パレットに設けられた複数の試料充填部の1つへ移動し充填する作業を、
試料が封入された袋ごとに繰り返し行い、
前記パレットに前記試料がそろった後、前記パレットを分析装置に移動し、分析を実施し、分析後の前記パレットを取り出すことを特徴とする試料分析方法。
【請求項2】
第1ロボットが、前記運搬トレイ上の前記袋をつかみ、移動し、前記クランプに把持させることを特徴とする請求項1記載の試料分析方法。
【請求項3】
第2ロボットが、前記試料を前記採取トレイから採取し、前記パレットの前記試料充填部へ移動し充填することを特徴とする請求項2記載の試料分析方法。
【請求項4】
前記試料充填部が前記パレット上に座標化され、前記試料充填部を示す座標の情報にしたがって、前記第2ロボットが前記試料充填部へ前記試料を充填することを特徴とする請求項3記載の試料分析方法。
【請求項5】
前記第2ロボットは、前記試料の採取に用いる計量さじを備えたことを特徴とする請求項3または4のいずれか一項記載の試料分析方法。
【請求項6】
前記第1ロボット及び前記第2ロボットは多軸アームを備えていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか一項記載の試料分析方法。
【請求項7】
前記第1ロボットと前記第2ロボットは同一のロボットであることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項記載の試料分析方法。
【請求項8】
ロボットが、前記試料を前記採取トレイから採取し、前記パレットの前記試料充填部へ移動し充填することを特徴とする請求項1記載の試料分析方法。
【請求項9】
前記クランプが回転することにより、前記袋の開封端を前記採取トレイへ向け、前記試料を前記採取トレイに落下させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項記載の試料分析方法。
【請求項10】
前記試料充填部は前記パレットに一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項記載の試料分析方法。
【請求項11】
前記試料充填部は前記パレットから分離可能に形成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項記載の試料分析方法
【請求項12】
前記袋には試料の情報を有するバーコードが貼り付けられていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項記載の試料分析方法。
【請求項13】
前記バーコードを読み取り、分析データを不純物分析管理のためのコンピュータに自動取り込みをすることを特徴とする請求項12記載の試料分析方法。
【請求項14】
前記試料はリサイクル原料であることを特徴とする請求項1乃至13記載のいずれか一項記載の試料分析方法。
【請求項15】
前記パレットに前記試料がそろった後、前記パレットを前記分析装置に移動する前に、前記パレットに振動を与えることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項記載の試料分析方法。
【請求項16】
前記振動の振動数が70〜120Hzであることを特徴とする請求項15記載の試料分析方法。
【請求項17】
試料が封入された袋が載せられた運搬トレイが設置される作業ステージと、
前記袋の開封と、該袋内の試料を採取トレイへ移す処理とが実行される開封ステージと、
前記試料の分析を行う分析装置と、
前記試料を乗せた状態で分析装置に入れられるパレットと、
前記袋をつかみ作業ステージから開封ステージへ移動する動作と、前記採取トレイ上の前記試料を採取し、前記パレットに設けられた複数の試料充填部へ移動し充填する動作と、前記試料を充填した前記パレットを前記分析装置へ移動する動作と、分析後の前記パレットを取り出す作業を行うロボットと、
を備えた試料分析システム。
【請求項18】
前記試料を乗せた状態のパレットが前記分析装置に入れられる前に、当該パレットに振動を与える振動装置を更に備えたことを特徴とする請求項17記載の試料分析システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate