説明

調味料等の食品素材

【課題】食品原料から成分を効率よく抽出することができ、しかも温度をあまりかけないで、かつ、低温短時間で抽出することにより、食品原料そのものの風味を保持することができる調味料等の食品素材を提供する。
【解決手段】野菜類、キノコ類、茶葉類、穀物類、香辛料といった食品原料から、50μm以下の泡であるマイクロナノバブルを連続的に発生させた液体を用いて、10〜40度、数分〜数時間で抽出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調味料等の食品素材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品素材を製造するのに、食品原料からの抽出手段には種々のものがあり、冷水または熱水、アルコールを使用する液抽出法、加圧を使用する加圧抽出法、遠心分離を用いる遠心分離法など枚挙にいとまがない。
【0003】
例えば、海藻は、食材や調味料のだしとして一般に多用されており、食用として根コンブを軽く水洗いし、水中に入れ12時間程抽出して、コンブのエキスが出たコンブ水として利用されている。またコンブだしを取るため、温水で煮て、旨味であるグルタミン酸に富むだしの調製に利用されている。
【0004】
また、下記特許文献は香辛料の抽出物に関するものであり、従来、香辛料抽出物は、生の天然香辛料を加熱殺菌した後、水、アルコール、n−ヘキサンなどで溶媒抽出して製造する場合が一般的であるが、殺菌加熱をすると、天然香辛料の風味・呈味が低下する問題があったので、殺菌効果に優れ、且つ、生の香辛料が有する豊かな風味・呈味を保持できるものとして、天然香辛料をくん液に浸漬し、非加熱下で天然香辛料に親水抽出を施し、抽出済みの天然香辛料を浸漬液から除去することを特徴とする。
【特許文献1】特開2003−339341号公報
【0005】
この特許文献1にも、従来の香辛料抽出物の製造方法として、特開平7−87923号公報、特開平7−8209号公報、特開平7−8202号公報に、香辛料の粉体などに亜臨界又は超臨界炭素ガスを接触させて、有効成分を抽出する方法が開示されている。特開2000−256346号公報には、上記超臨界炭素ガス抽出、或は水蒸気蒸留などによって、香辛料から香気成分を抽出した後の抽出物残渣を、水とエタノールなどの親水性溶剤からなるアルカリ性水溶液で抽出して、ポリフェノール類の豊富な抽出物を得る方法が開示されているとある。
【0006】
なお、従来技術は、香辛料抽出物の製法ではあるが、殺菌効果は不明であるうえ、超臨界炭酸ガスなどを使用するために処理や設備が複雑になり、さらには、香辛料を親水性溶媒で抽出したものに比べて、香辛料から抽出される香味成分が異なる懸念もあるとされる。
【0007】
親水性溶媒での抽出については、特に特許文献はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、食品原料から成分を効率よく抽出することができ、しかも温度をあまりかけないで、かつ、低温短時間で抽出することにより、食品原料そのものの風味を保持することができる調味料等の食品素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の本発明は前記目的を達成するため、野菜類、キノコ類、茶葉類、穀物類、香辛料といった食品原料から、50μm以下の泡であるマイクロナノバブルを連続的に発生させた液体を用いて、10〜40度、数分〜数時間で抽出したことを要旨とするものである。
【0010】
請求項1記載の本発明によれば、マイクロナノバブルの物質への浸透性や溶解性を利用することにより、食品原料から成分を効率よく抽出することができる。また、温度をあまりかけられない食品原料を低温短時間で抽出することにより、食品原料そのものの風味を保持することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように本発明の調味料等の食品素材は、食品原料から成分を効率よく抽出することができ、しかも温度をあまりかけないで、かつ、低温短時間で抽出することにより、食品原料そのものの風味を保持することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明は、野菜類、キノコ類、茶葉類、穀物類、香辛料といった食品原料から、50μm以下の泡であるマイクロナノバブルを連続的に発生させた液体を用いて、10〜40度、数分〜数時間で抽出するものである。
【0013】
本発明で野菜類とは、例えば、生鮮の玉葱・白菜で8mm以下のダイスカットもしくはペースト状のものである。
【0014】
キノコ類とは、乾燥した椎茸・ポルチーニ茸で粉末状である。粉砕した石突も含む。
【0015】
茶葉類とは、乾燥した緑茶・紅茶・ウーロン茶・プーアル茶で乾燥したそのままの形状もしくは粉末状である。
【0016】
穀物類とは、米・小麦・粟や稗といった雑穀類でそのままの形状もしくは粉末状である。
【0017】
香辛料とは、クミン・キャラウェイ・コリアンダー・クローブ・桂皮の乾燥粉末である。
【0018】
本発明で使用する50μm以下の泡であるマイクロナノバブルを連続的に発生させた液体とは、気体を長時間液体中に溶存させることができ、また物質への浸透性や溶解性が高いものである。マイクロナノバブル発生装置を用いて作成する。
【0019】
本発明で用いるマイクロナノバブル発生装置は、まず30μm以下のマイクロバブルを生成し、このマイクロバブルが水圧により自然圧壊することで数十〜数百nmのナノバブルを生成する。
【0020】
かかるマイクロナノバブル発生装置としては、株式会社アスプの超微細気泡発生装置 AS−K3型が最適である。この装置はポンプ負圧を利用して気体を吸収し、気体と水の気液混合体を作った後、この気液混合体をミキサに送り、攪拌混合して微細気泡を作る。
【0021】
なお、タンクと超微細気泡発生装置を循環させることにより、連続して超微細気泡を発生させ、基質からの抽出に用いることができる。
【0022】
本発明で用いるマイクロナノバブルは、物質への浸透性や物質の溶解性が高い。マイクロナノバブルは気泡径が小さく、泡密度が濃くなるほど、表面積が広がり、効果的に気体を液体に溶存させることが可能となる。マイクロナノバブルの表面はマイナスの電荷を帯び、泡同士は反発して結合しないが、物体の汚れを剥離させたり、吸着する効果がある。
【0023】
マイクロバブルが水圧により自然圧壊する場合に、圧壊時に5500度の熱を発生させ、周りの水分子がフリーラジカルとなり、殺菌効果がある。圧壊と抽出の関係は、基質の細胞壁をフリーラジカルが破壊することにより、内容物が溶出し安くなると考えられる。
【0024】
圧壊を繰り返すことにより、温度が上昇するので、10〜40度で抽出する際は、チラー設備にて冷却を行う。
【0025】
マイクロナノバブルとして溶存させる気体は、空気以外に窒素やオゾン、水素がある。オゾンは溶存させることで更に殺菌効果や抽出効果、場合によっては、脱臭効果も考えられる。
【0026】
マイクロナノバブルを溶存させる液体は、水以外にエタノール、植物性油脂等がある。
【0027】
水とは、蒸留水やイオン交換水、海洋深層水、ミネラルウォーターである。
【0028】
エタノールとは、エチルアルコールとも呼ばれ、酒類の主成分である。
【0029】
植物性油脂とは、米油やキャノーラ油、コーン油である。
【0030】
抽出後は、シフター、濾布、フィルタープレス等で濾過した後、殺菌機及びストレーナー、マグネットを通す。
【0031】
抽出した調味料等の食品素材は冷凍もしくは粉末化により2年は保存が可能となる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例として、椎茸エキスとプーアル茶抽出物の場合について説明する。
[椎茸エキス]
粉砕した椎茸石突を10〜20倍量の蒸留水に漬け込み、そこに超微細気泡発生装置を接続して、30±5℃に保ちながら連続的に超微細気泡を発生させ、30〜240分抽出する。その後70〜90度まで加熱しシフターや濾布、遠心分離機、珪藻土を用いたフィルタープレスという濾過装置を用い固液分離を行い、液体のみを回収し、プレート式熱交換機等の殺菌機にて110℃で3秒程度殺菌後、マグネットやストレーナーを通し異物を除去する。
【0033】
殺菌された液体は濃縮機で濃縮したり、スプレードライヤーで粉末化する。抽出時の液体は、同条件での水抽出に比べて濃度が1.5〜2.0倍ある。
【0034】
[プーアル茶抽出物]
粉砕した茶葉を20〜30倍量の蒸留水に漬け込み、そこに超微細気泡発生装置を接続して、30±5℃に保ちながら連続的に超微細気泡を発生させ、30〜60分抽出する。その後70〜90度まで加熱しシフターや濾布、遠心分離機、珪藻土を用いたフィルタープレスという濾過装置を用い固液分離を行い、液体のみを回収し、プレート式熱交換機等の殺菌機にて110℃で3秒程度殺菌後、マグネットやストレーナーを通し異物を除去する。
【0035】
殺菌された液体は濃縮機で濃縮したり、スプレードライヤーで粉末化したり、アセプティック設備で無菌充填する。抽出時の液体は、同条件での水抽出に比べて濃度が1.5〜2.0倍ある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の製造工程図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜類、キノコ類、茶葉類、穀物類、香辛料といった食品原料から、50μm以下の泡であるマイクロナノバブルを連続的に発生させた液体を用いて、10〜40度、数分〜数時間で抽出したことを特徴とする調味料等の食品素材。

【図1】
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【公開番号】特開2011−142869(P2011−142869A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6821(P2010−6821)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(301002990)明王物産株式会社 (4)
【Fターム(参考)】