説明

負荷時タップ切換器

【課題】安価、小型な負荷時タップ切換器を提供する。
【解決手段】回動可能に支持した絶縁板401上に限流抵抗408を配置し、固定電極を挟み込むように固定した可動電極402〜405の可動電極402−可動電極403間を接続導体409にて絶縁板401の表面に接続し、可動電極404−可動電極405間を接続導体A−限流抵抗408−接続導体C407にて絶縁板401の裏面に接続し、限流抵抗1個で構成したことを特徴とする負荷時タップ切換器を提案するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動電極が回動することによる固定電極との接触、開離により変圧器タップ位置を切り換える負荷時タップ切換器の改良に関するものであり、小型化及び部品点数を減らすことによる材料費や組立工数の低減を図った負荷時タップ切換器に関する。
【背景技術】
【0002】
負荷時タップ切換器には、電気学会 電気規格調査会標準規格 JEC-2220「負荷時タップ切換装置」に記載する電流遮断性能、耐用切換回数10万または20万回の性能が求められ、タップ切換時の遮断電流を短時間に消弧し、接触子の消耗を抑制して、切換回数に耐えうる接触子の設計が必要となる。また、無停電でタップを切り換えるために変圧器タップ間を瞬時橋絡してコイル間に循環電流を通電し、停電を起こさせない方法がとられる。
【0003】
負荷時タップ切換器は、切換時に無電圧になることを防止するため、一つのコイルのタップ間を橋絡するので、コイル間の過電流によるコイル焼損、およびタップ切換器で遮断する遮断電流が増加するのを防止する目的で電流制限用の限流抵抗が用いられる。
【0004】
従来の負荷時タップ切換器は、この限流抵抗を2つ使用していた。
【0005】
以下に、回転動作によりタップを切り換える可動電極、固定電極を備え、2つの限流抵抗により切換時の循環電流を抑制する従来の負荷時タップ切換器の例を、図4を用い説明する。
【0006】
図4は従来の負荷時タップ切換器の接触部構成例の平面図である。
絶縁台座410上に円形に固定電極A201〜F206を配置し、この中心を軸に回転する絶縁板401を有する。前記絶縁板401上には前記固定電極と接触、開離する可動電極A402〜D405を固定し、前記可動電極A402は導線A502、限流抵抗408、導線B503にて可動電極D405と圧着接続する。前記可動電極D405は接続導体501にて可動電極C404と直接接続する。前記可動電極C404は導線C504、限流抵抗408、導線D505にて可動電極B403とを接続する。
【0007】
図5は従来の負荷時タップ切換器の変圧器接続回路図である。
図4のように構成された負荷時タップ切換器の固定電極A201〜F206は単相変圧器601の一次側巻線のタップ引出線602に各々を接続する。
【0008】
以下切換時の動作を図6を用いて説明する。
図6は従来の負荷時タップ切換器の切換動作図および電流通電経路である。
この例は6kV/100V・200V配電用柱上変圧器に使用される負荷時タップ切換器であり、5タップ切換のタップ電圧を有し、そのステップ電圧は150Vである。(a)位置が基準電圧である6600Vタップ位置、(b)位置が6600→6750V切換途中の変圧器コイル橋絡位置、(c)位置が6750Vタップ位置、(d)位置が6750→6900V切換途中の変圧器コイル橋絡位置、(e)位置が6900Vタップ位置を示し、各位置での通電経路を通過電流Ia、循環電流Ibの方向を示す。ここで言う通過電流とは負荷時タップ切換器を通過して外部回路に流れる電流をいう。
【0009】
絶縁板401を反時計回りに回転せしめると、可動電極B403および可動電極D405は固定電極E205上を接触しながら摺動し、可動電極A402および可動電極C404は固定電極B202から固定電極C203へ開離、接触を行う。切換途中では(b)位置を通過して(c)位置へと移行していくこととなるが、前記(b)位置では変圧器コイルを一時橋絡し、循環電流Ibを通電する。
【0010】
(b)位置での各電流の方向を説明すると、変圧器コイルを一時橋絡したときの循環電流Ibはステップ電圧/限流抵抗で表される。ここで言うステップ電圧とは同相巻線の相隣るタップ間の電圧である。この例の切換は、変圧器コイル電圧を昇圧する方向への切換のため、循環電流Ibはコイル電圧の高い側から低い側、すなわち6750V→6600V方向へ流れ込む。
このとき通過電流Iaは限流抵抗を通過しない回路を通電し、その方向は循環電流Ibと相反する方向となる。
【0011】
(c)位置へ移行するときには可動電極C404で遮断する遮断電流Icは通過電流Iaと循環電流Ibの和となるので、この接続によれば遮断電流Ic=Ia+(−Ib)となるので遮断電流を抑制する。ここで言う遮断電流とは可動電極が開離する直前に接触子を流れる電流である。
【0012】
(c)位置まで移動を終えると1タップ分の切換が完了したことになる。このときは限流抵抗と導体の並列回路が2つ直列接続された回路となり、通過電流Iaが通電する。
(d)、(e)位置はさらに同方向へタップ切換を行った場合の動作図であり、前記の動作と同様に循環電流Ibは通過電流Iaに対して相反する方向に流れるため、遮断電流を抑制することとなる。
【特許文献1】特開平7−192939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の負荷時タップ切換器においては、タップ切換時の変圧器コイル間循環電流を抑制するために限流抵抗を2個接続していた。
【0014】
ところが、負荷時タップ切換器に求められる市場の要求としては、高性能化や信頼性の向上だけではなく、小型化や低価格化が強い。
【0015】
ここで負荷時タップ切換器を小型化するにあたって、従来構造では限流抵抗2個分のスペースを確保しなければならなかった。しかしながら限流抵抗を2個接続、配置することは装置の大型化、部品点数の増加、作業工数の増加につながるという問題があった。
【0016】
本発明は、上記課題を解消するもので、限流抵抗を2個から1個にし、かつタップ切換時に限流抵抗2個の時と同様な遮断電流となるよう導体を接続して、部品点数を減らしながら装置の小型化を図った負荷時タップ切換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。タップ数に応じた複数の可動電極と複数の固定電極をもち、可動電極は絶縁板上に配置すると共に、タップ切換時は隣接する固定電極間をまたぐように接触し、可動電極の一方は対向する固定電極間を直接接続し、もう一方は限流抵抗を介在させて対向する固定電極間を接続し、循環電流を制限する限流抵抗を1個で構成したことを特徴とする負荷時タップ切換器。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。このように構成すると、限流抵抗を1個にでき、かつ限流抵抗2個使用時と同様の遮断電流となる。
【0019】
図1を用いて詳しく説明すると、絶縁板401の両端に可動電極A402〜可動電極E405を固定し、絶縁板401の表面には可動電極A402−可動電極B403間を接続導体C409にて接続する。可動電極D404−可動電極E405間は絶縁板の裏面に接続導体A406−限流抵抗408−接続導体B407を介して接続する。
【0020】
本発明では単純に限流抵抗を一つにするだけでなく、タップ切換時の遮断電流も限流抵抗を2個使用した場合と同様とし、性能を損なうことなく小型化、部品点数の削減を図ったものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施例を図1を用いて説明する。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明の請求項1に記載の特徴を有する一実施の形態例を示す負荷時タップ切換器の接触部平面図である。
絶縁台座410に固定電極A201〜固定電極F206を円形に配置し、その中心に絶縁板401を回転可能に支持し、絶縁板401の両端に可動電極A402〜可動電極D405を固定する。
【0023】
可動電極A402と可動電極B403は接続導体C409にて前記絶縁板401の表面に接続する。
【0024】
可動電極C404と可動電極D405は接続導体A406と限流抵抗408および接続導体B407を介して前記絶縁板401の裏面に接続する。
【0025】
絶縁板401の両面に導体を接続する理由は、タップ切換動作中の中途位置においては、可動電極A402と可動電極C404間にはタップ間ステップ電圧分の絶縁が必要となるため、切換途中の混蝕を防止する目的である。
【0026】
本発明の遮断電流が従来と同様であることを図3を用い説明する。
図3は従来の負荷時タップ切換器の切換動作図および電流経路図である。
この例では前記(0008)項と同様に(a)位置が6600Vタップ位置、(b)位置が6600V切換時の変圧器コイル橋絡位置、(c)位置が6750タップ位置、(d)位置が6750→6900V切換時の変圧器コイル橋絡位置、(e)位置が6900Vタップ位置を示し、各タップ位置での通過電流Ia、循環電流Ibの方向を示す。
【0027】
絶縁板401を反時計回りに回転せしめると可動電極B403および可動電極D405は固定電極E205上を接触しながら摺動し、可動電極A402および可動電極C404は固定電極B202から固定電極C203へ開離、接触を行う。切換途中では(b)位置を通過して(c)位置へと移行していくこととなるが前記(b)位置では変圧器コイルを一時橋絡する。
【0028】
(b)での各電流の方向を説明すると変圧器コイルを一時橋絡するときの循環電流Ibはステップ電圧/限流抵抗で表される。この例の切換は、変圧器コイル電圧は昇圧する方向への切換のため、循環電流Ibはコイル電圧の高い側から低い側、すなわち6750V→6600V方向へ流れ込む。
このとき通過電流Iaは限流抵抗を通過しない回路(線路抵抗が低い回路)を通電し、その方向は循環電流Ibと相反する方向となる。
【0029】
(c)位置へ移行するときには可動電極C404で遮断する遮断電流Icは通過電流Iaと循環電流Ibの和となるので、この接続によれば遮断電流Ic=Ia+(−Ib)となり遮断電流を抑制する。
【0030】
(c)位置まで移動を終えると1タップ分の切換が完了したことになる。このときは限流抵抗と導体の並列回路となり、通過電流Iaのみ通電する。
(d)、(e)位置はさらに同方向へタップ切換を行った場合の動作図であり、前記動作時と同様に循環電流Ibは通過電流Iaに対して相反する方向に流れるため、遮断電流を抑制することとなる。
以上のように本構成によれば限流抵抗2個使用時と同等の遮断電流となる。
【0031】
この実施例では電極の配置を同心円状のもので説明したが、長方形型の配置として固定電極を向かい合う辺に配置し、可動電極がその間を直線動作してタップ切換する構造にも適用できる。また、可動電極の接続線は絶縁板の両面に配置せず、同じ片面に配置し交差部分を離隔するか絶縁を介在させる構造としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、とりわけ柱上変圧器に内蔵されるものに利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の負荷時タップ切換器の(a)平面図、(b)底面図である。
【図2】本発明の負荷時タップ切換器の変圧器接続回路図である。
【図3】本発明の負荷時タップ切換器の切換動作図と通電経路図である。
【図4】従来例の負荷時タップ切換器の平面図である。
【図5】従来例の負荷時タップ切換器の変圧器接続回路図である。
【図6】従来例の負荷時タップ切換器の切換動作図と通電経路図である。
【符号の説明】
【0034】
101 負荷時タップ切換器
201 固定電極A
202 固定電極B
203 固定電極C
204 固定電極D
205 固定電極E
206 固定電極F
401 絶縁板
402 可動電極A
403 可動電極B
404 可動電極C
405 可動電極D
406 接続導体A
407 接続導体B
408 限流抵抗
409 接続導体C
410 絶縁台座
501 接続導体
502 導線A
503 導線B
504 導線C
505 導線D
601 単相変圧器
602 タップ引出線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
限流抵抗を利用してタップ切換時の循環電流を低減しながらタップを切り換える負荷時タップ切換器であって、タップ数に応じた複数の可動電極と複数の固定電極をもち、可動電極は絶縁板上に配置すると共に、タップ切換時は隣接する固定電極間をまたぐように接触し、可動電極の一方は対向する固定電極間を直接接続し、もう一方は限流抵抗を介在させて対向する固定電極間を接続し、循環電流を制限する限流抵抗を1個で構成したことを特徴とする負荷時タップ切換器。
【請求項2】
前記複数の可動電極と複数の固定電極が、同心円状に配置され可動電極が回転移動することによりタップ切換を行う請求項1記載の負荷時タップ切換器。
【請求項3】
可動電極を接続する導体を前記絶縁板の両面に配置した請求項1または請求項2記載の負荷時タップ切換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−103395(P2010−103395A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275278(P2008−275278)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)