説明

負荷開閉器

【課題】従来の制御装置内に設けられていた機能を簡単な構成で実現して内蔵することで、高い信頼性を図ることができる負荷開閉器を提供する。
【解決手段】負荷開閉器100は、高圧配電線に流れる負荷電流が過電流であるときに、引込配電線210の投入・開放を行う開閉部40に対して開放を指示する制御装置300へ、過電流を検出したときに過電流検出信号を出力するものである。負荷開閉器100は、引込配電線210の相電圧を検出する電圧検出部31と、負荷電流を検出する電流検出部32と、相電圧に応じた磁気と負荷電流に応じた磁気とが磁気結合によりベクトル合成されることで、負荷電流が過電流であっても逆方向潮流であれば過電流検出の既定以下を示す電流が流れる合成出力用巻線が設けられた信号合成回路33と、合成出力用巻線に流れる電流に基づいて制御装置300への過電流検出信号を出力する過電流検出回路34とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統との責任分界点に位置する負荷開閉器において、制御装置の計測・演算機能に頼ることなく、負荷開閉器に内蔵された相電圧(基準電圧)検出器及び過電流検出器の信号合成結果により、負荷開閉器単独にて潮流方向を判定し過電流方向を付加した過電流レベル検出機能付の負荷開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、負荷開閉器を制御する制御装置は過電流を検出する過電流検出手段を備えている。この過電流検出手段を備えた制御装置は、JIS−C4607規格等で定められた手順により図9が示すように動作を行う。この図9は従来の負荷開閉器を制御する制御装置の動作フローチャートである。
【0003】
需要家側で設定値を超過する過電流(又は短絡電流)が発生すると(ステップ101)、負荷開閉器をロックして過電流中の開放を防止する(ステップ102)。
変電所の保護継電器が動作して異常発生区間を選択遮断し、当該配電線を切離すことにより停電が発生し(ステップ103)、停電により過電流が消滅した後に事故原因のある需要家の負荷開閉器は開放される(ステップ104)。所定時間経過後、前記配電線が再閉路される(ステップ105)。事故原因のある需要家以外の需要家へ電力が供給され、事故原因のある需要家の引込配電線路は前記負荷開閉器により開放されたままなので、需要家構内は停電が継続される(ステップ106)。その後事故原因を取り除いて、人手により負荷開閉器を投入して復旧する(ステップ107)。
【0004】
図9に示される手順は、需要家が電力会社から電力の供給を受けるのみということが前提で規定されている。そのため、自己の発電機等の分散型電源設備を備え、商用電源の電力供給と併用して使用する需要家にあっては、構外の事故発生時に、分散型電源設備から配電線側へ過電流の逆方向潮流が発生し、この過電流により需要家の設備で事故が発生していない健全な配電線路であるにも拘らず負荷開閉器を開放するという課題を有していた。
【0005】
即ち、他の需要家又は電力配電線路中の事故が原因で変電所の遮断器が遮断し、この遮断器が再投入されても、事故発生していない需要家の負荷開閉器が開放状態にある。そのため、前記遮断器が再投入され、再び配電線路に電源が供給されても、負荷開閉器が開放状態では、引き続き需要家構内では停電状態が継続する。
【0006】
前記課題を解消するために、本出願人により、特許文献1にて負荷開閉器駆動制御装置が提案された。この特許文献1に記載の制御装置及びその方法は、電圧検出手段により検出された相電圧及び電流検出手段により検出された負荷電流により位相差を演算する位相差演算手段と、位相差に基づいて配電線の潮流方向を決定する潮流方向判定手段と、負荷電流が過電流と判断され且つ潮流方向が逆方向潮流と判断された場合に高圧配電線に設けられる負荷開閉器の開放を阻止する駆動制御手段とを備えたものである。この特許文献1では、潮流方向を制御装置の計測・演算機能にて算出(ベクトル演算)し、決定することで、構外事故が原因の過電流発生による負荷開閉器の不必要な開放を防止することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3812423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の負荷開閉器駆動制御装置では、電圧検出手段及び電流検出手段が負荷開閉器に設けられているものの、位相差演算手段、潮流方向判定手段、駆動制御手段などが制御装置に設けられているため、制御装置の機能構造が複雑である。制御装置が複雑化すると、調整・管理箇所の増加ならびに故障率の上昇等に対する信頼性確保に考慮が必要となるなどの問題が生じる。
制御装置においては、過電流や地絡などを検出して負荷開閉器を開放するのに、高度な波形記録・計測精度等の高機能が要求されているわけではなく、更に、制御装置の計測・演算機能ならびに処理能力が、制御装置全体の性能に大きく左右することから、制御装置は簡単な構成とするのが望ましい。
【0009】
そこで本発明は、従来の制御装置内に設けられていた機能を簡単な構成で実現して内蔵することで、高い信頼性を図ることができる負荷開閉器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の負荷開閉器は、高圧配電線に流れる負荷電流が過電流であるときに、前記高圧配電線の投入・開放を行う開閉部に対して開放を指示する制御装置へ、過電流を検出したときに過電流検出信号を出力する負荷開閉器において、前記高圧配電線の相電圧に応じた磁気と負荷電流に応じた磁気とが磁気結合によりベクトル合成されることで、負荷電流が過電流であっても逆方向潮流であれば過電流検出の既定以下を示す電流が流れる合成出力用巻線が設けられた信号合成回路と、前記合成出力用巻線に流れる電流に基づいて前記制御装置への前記過電流検出信号を出力する過電流検出回路とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の負荷開閉器は、相電圧と負荷電流のベクトル合成を磁気結合により行い、その結果を合成出力用巻線に流れる電流として検出することができる。このとき、合成出力用巻線には、負荷電流が過電流であっても逆方向潮流であれば過電流検出の既定以下を示す電流が流れるため、過電流検出回路による制御装置への過電流検出信号の出力が阻止される。
従って、制御装置内で演算処理などを行うことなく、負荷開閉器内で順方向潮流または逆方向潮流を判定することができ、負荷開閉器の不必要な開放を防止することができる。
【0012】
前記信号合成回路は、相電圧と負荷電流とのベクトル合成において、位相差が−90度から+90度までの範囲であるときに順方向潮流、それ以外の範囲であるときに逆方向潮流とするのが望ましい。このように本発明においては、相電圧に対して負荷電流の位相が−90度から90度の範囲であるか否かにより配電線の潮流方向を決定して開閉部の開放動作を制限するようにしているので、負荷電流の乱れ等により位相ずれが生じたとしても、潮流方向をより正確に判別できることとなり、電力再供給が確実に行われる。
【0013】
前記信号合成回路は、前記高圧配電線の相電圧に応じた電流が流れることで磁気が発生する第1の巻線と、前記高圧配電線の負荷電流に応じた電流が流れることで磁気が発生する第2の巻線と、前記第1の巻線及び前記第2の巻線と共に、コア部に巻き回された前記合成出力用巻線である第3の巻線とを備えたものとすることができる。このように信号合成回路を構成することで、ハイブリッドトランスのような3巻変圧器が使用できる。
【0014】
前記信号合成回路は、前記高圧配電線の相電圧に応じた電流が流れることで磁気を発生する第1の巻線と、前記高圧配電線の負荷電流に応じた磁気による磁束の磁路となるコア部と、前記第1の巻線と共に、前記コア部に巻き回された前記合成出力用巻線である第2の巻線とを備えたものとすることができる。このように信号合成回路を構成することで、コア部に巻線を2個付けた回路とすることができるので、シンプルな回路構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の負荷開閉器によれば、制御装置内で演算処理などを行うことなく、負荷開閉器内で順方向潮流または逆方向潮流を判定することができるので、従来の制御装置内に設けられていた機能を簡単な構成で実現して内蔵することで、高い信頼性を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】自家発電装置を有する需要家を説明するための図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る負荷開閉器の構成を示す図である。
【図3】順方向潮流と逆方向潮流とを説明するための波形図である。
【図4】図1に示す負荷開閉器の信号合成回路の一例を示す図である。
【図5】図4に示す信号合成回路の過電流検出回路の一例を示す図である。
【図6】図1に示す負荷開閉器の信号合成回路の一例を示す図である。
【図7】図1に示す負荷開閉器の信号合成回路の一例を示す図である。
【図8】図7に示す負荷開閉器の信号合成回路の概略外観図を示す図である。
【図9】従来の過電流(短絡電流)発生時の負荷開閉器を制御する制御装置の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る負荷開閉器について、図面に基づいて説明する。
まず、負荷開閉器が設置される環境について、図1に基づいて説明する。
図1に示すように、需要家の構内において自家発電装置206が設置されている。構外の引込分岐点201の高圧架空配電線200から構内の第1柱の責任分界点202(保安上の責任分界点)を境界として高圧配電線である引込配電線210により構内へ配電される。引込配電線210には、負荷開閉器(区分開閉器)100、PCT(Potential Current Transformer)204及び主遮断装置205が設けられている。主遮断装置205に負荷207が接続される。
【0018】
負荷開閉器100は、制御装置300と共に、引込配電線210中に配設されている。負荷開閉器100は、図2に示すように、零相変流器(ZCT)10と零相電圧検出装置(ZPD)20と、信号検出部30と、開閉部40と、引き外し部50を備えている。
【0019】
信号検出部30は、引込配電線210に通電される基準となる相電圧を検出する電圧検出部31と、引込配電線210に流れる負荷電流を検出する電流検出部32と、電圧検出部31により検出された相電圧に応じた磁気と電流検出部32により検出された負荷電流に応じた磁気とを磁気結合してベクトル合成する信号合成回路33と、過電流検出回路34とを備えている。
【0020】
電圧検出部31は、R・T各相の引込配電線210R、210Tに接続された抵抗とすることができる。電流検出部32は、R・T各相の引込配電線210R、210T上に配設されるOCR(過電流ロックリレー)とすることができる。信号合成回路33には、負荷電流が過電流であっても逆方向潮流であれば過電流検出の既定以下を示す電流が流れる合成出力用巻線(図2では図示せず)が設けられている。
【0021】
開閉部40は、引き外し部50の引き外し動作により引込配電線210の開放を行ったり、過電流発生事故状態の解除により引込配電線210の人手による投入を行ったりするものである。引き外し部50は、制御装置300からの指示により開閉部40を引き外すことで、引込配電線210を開放するものである。
【0022】
次に、制御装置300について説明する。制御装置300は、地絡検出部301と、地絡判定部302と、過電流検出信号受信部303と、過電流蓄勢制御部304と、開閉器制御部305とを備えている。
【0023】
地絡検出部301は、零相変流器10と零相電圧検出装置20とからの信号を受け、地絡判定部302へ出力する。地絡判定部302では、地絡検出部301からの信号に基づいて、地絡事故が発生しているか否かを判定して、過電流蓄勢制御部304へ出力する。
過電流検出信号受信部303は、負荷開閉器100からの過電流を検出した旨の信号(過電流検出信号)を受け、過電流蓄勢制御部304へ出力する。
過電流蓄勢制御部304は、地絡判定部302からの地絡事故を検出した旨の信号(地絡検出信号)、または過電流検出信号受信部303からの過電流を検出した旨の信号を受け、開閉器制御部305へ開閉部40への放勢を指示する旨の信号を出力する。開閉器制御部305は、開閉部40の引き外し部50へ放勢を指示する信号(電圧)を出力する。
【0024】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る負荷開閉器の動作について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、通常の受電時には構外の引込分岐点201の高圧架空配電線200から構内の第1柱の責任分界点202(保安上の責任分界点)、負荷開閉器(区分開閉器)100、PCT204及び主遮断装置205を介して負荷207へ電力が順方向潮流として供給される。
【0025】
まず、R相の引込配電線210Rの相電圧を電圧検出部31である抵抗により検出することで、相電圧に応じた信号(相電圧信号)の電流が信号合成回路33へ流れる。また、R相の引込配電線210Rに流れる電流を電流検出部32であるOCRにより検出することで、この電流に応じた信号(負荷電流信号)の電流が信号合成回路33へ流れる。信号合成回路33では、それぞれの信号の電流が流れることで、合成出力用巻線に、引込配電線210の相電圧に応じた磁気と負荷電流に応じた磁気とが磁気結合によりベクトル合成された電流が流れる。このとき、合成出力用巻線には、負荷電流が過電流であっても逆方向潮流であれば過電流検出の既定以下を示す電流が流れるように、電圧検出部31と電流検出部32とが調整されている。
【0026】
図3に示す波形図に示すように、相電圧を示す信号と負荷電流を示す信号とが同位相(順方向潮流)であればベクトル合成された合成信号は、相電圧を示す信号と負荷電流を示す信号とが加算されるため最大となり、位相が逆位相(逆方向潮流)であれば相電圧を示す信号から負荷電流を示す信号を減算することになるためベクトル合成された合成信号は最小となることがわかる。つまり、合成信号の度合いにより順方向潮流か逆方向潮流かを判定することができる。
【0027】
従って、相電圧を示す信号と負荷電流を示す信号とに応じた信号をベクトル合成することで、負荷電流が過電流であっても、逆方向潮流であれば過電流検出の既定以下を示す電流が合成出力用巻線に流れる
ここで、信号合成回路33は、相電圧と負荷電流とのベクトル合成において、位相差が−90度から+90度までの範囲であるときに順方向潮流、それ以外の範囲であるときに逆方向潮流とするように設定されている。相電圧に対して負荷電流の位相が−90度から90度の範囲であるか否かにより配電線の潮流方向を決定して開閉部の開放動作を制限するようにしているので、負荷電流の乱れ等により位相ずれが生じたとしても、潮流方向をより正確に判別できることとなり、電力再供給が確実に行われる。
【0028】
例えば、高圧架空配電線200から需要家側が給電を受けている場合において構内過電流事故(図1に示す)が発生したとすると、信号合成回路33の合成出力用巻線に、過電流検出を検出した旨の順方向潮流を示す電流が流れるため、過電流検出回路34から制御装置300へ過電流検出信号が出力される。
【0029】
制御装置300では、過電流検出信号受信部303が過電流検出信号を受けると、過電流蓄勢制御部304が地絡検出信号を受けたときと同様に、開閉器制御部305へ開閉部40への放勢を指示する旨の信号を出力することで、準備を行う。その後、配電線切離しにより停電することによって過電流が消滅した後に、開閉器制御部305が負荷開閉器100へ放勢を指示する信号(電圧)を出力する。
【0030】
制御装置300からの放勢を指示する信号(電圧)を引き外し部50が受けると、前記JIS−C4607規格等に基づいて可動接点41R、41S、41Tを駆動させて開放状態とする。
【0031】
また、例えば、図1に示す他の需要家で事故が発生し、変電所の遮断器が遮断して高圧架空配電線(電力会社配電線)200が停電した場合には、自家発電装置206を備えた需要家から、自家発電装置206の電力が高圧架空配電線200側へ流出する。このときは、信号合成回路33の合成出力用巻線に過電流検出の既定以下を示す電流が流れることにより、過電流検出回路34から制御装置300へは過電流検出信号の出力が阻止される。従って、負荷開閉器100の投入状態は保持される。
【0032】
次に、信号検出部30の構成について、図4から図7に基づいて詳細に説明する。
信号検出部30は、例えば、図4に示すような構成とすることができる。
図4に示す信号検出部30は、電圧検出部31を抵抗R0とし、電流検出部32を変流器(CT)とし、信号合成回路33をコア部に巻線L11〜L13が巻いた3巻変圧器であるハイブリッドトランスTRとしている。
抵抗R0は、一端が引込配電線210に接続され、他端がハイブリッドトランスTRの巻線L11の一端に接続されている。ハイブリッドトランスTRの巻線L11の他端はグランド(大地接地)70に接続されている。電流検出部32である変流器は、ハイブリッドトランスTRの巻線L12に接続されている。過電流検出回路34は、合成出力用巻線となるハイブリッドトランスTRの巻線L13に接続されている。
【0033】
過電流検出回路34は、図5に示すような回路構成とすることができる。
例えば、図5に示す過電流検出回路34は、ハイブリッドトランスTRからの電流信号を電圧信号に変換する抵抗R1と、交流を直流へ変換する交流・直流変換器(AC/DC CON.V)34aと、交流・直流変換器34aの出力電圧信号と閾値電圧(Vref)とを比較する比較器(CMP)34bと、比較器34bからの信号に基づいて過電流検出信号となる短絡信号を出力するトランジスタQ1とを備えている。
【0034】
このように構成された信号検出部30では、ハイブリッドトランスTRの巻線L11に、相電圧に応じた電流が流れ、巻線L12に負荷電流に応じた電流が流れることで、それぞれの巻線L11,L12による磁気が発生する。これらの磁気による磁束がコア部に巻き回された巻線L13に鎖交することで、加算されベクトル合成された磁気に応じた電流が巻線L13に流れる。
【0035】
ハイブリッドトランスTRの巻線L13からの電流は、過電流検出回路34の抵抗R1へ流れ、交流の電流信号として流れる。この交流の電流信号が抵抗R1に流れることで交流の電圧信号に変換される。抵抗R1による電圧信号は交流・直流変換器34aにより直流の電圧信号へ変換される。そして、比較器34bでは、電圧信号と閾値電圧(Vref)とを比較する。閾値電圧は、引込配電線210の潮流方向が順方向潮流となるときの電圧値、または逆方向潮流となるときの電圧値に合わせて設定される。従って、比較器34bにて判定された結果が、信号合成回路33からの信号が閾値電圧よりも高い場合には、負荷電流が過電流であり、かつ順方向潮流であることが判定されることで比較器34bから信号が出力される。また、信号合成回路33からの信号が閾値電圧よりも低い場合には、負荷電流が正常であることが判定できると共に、負荷電流が過電流であっても逆方向潮流であることが判定できることで、比較器34bから信号は出力されない。
【0036】
このように、電圧検出部31を抵抗R0とし、電流検出部32を変流器(CT)とし、信号合成回路33をハイブリッドトランスTRとすることで、簡単な回路構成で実現することができるので、負荷開閉器100内に収納することができる。また、制御装置300内に、位相差演算手段や潮流方向判定手段などを設ける必要がないので、高い信頼性を図ることができる。
【0037】
また、信号検出部30は、例えば、図6に示すような構成とすることもできる。
図6に示すように、電流検出部32および信号合成回路33は、2巻線のハイブリッドOCRとすることができる。また、過電流検出回路34は、ACリレーRYとすることができる。
ハイブリッドOCRは、図7に示すように、引込配電線210の1線を矩形穴に挿通させたコア部34cに、巻線L21,L22が設けたものとすることができる。ACリレーRYは、a接点の2極単投式のものが使用できる。
巻線L22は、合成出力用巻線であり、ACリレーRYの励磁コイルに接続されている。ACリレーRYの励磁コイルの一側と接点の一側との間に電圧調整用の抵抗R2が接続されている。
【0038】
このように構成された信号検出部30では、相電圧に応じた電流が抵抗R0を介して巻線L21に流れ、巻線L21が磁気を発生することで、磁束がコア部34cを通る。また、引込配電線210に流れる負荷電流に応じた磁界が、引込配電線210の周囲に右ねじの法則に従って発生して、コア部34c内を通るので、コア部34c内には、相電圧に応じた磁束と負荷電流に応じた磁束が加算される。従って、コア部34cで相電圧と負荷電流とをベクトル合成することができる。
そして、コア部34c内で加算された磁束に応じた電流が巻線L22に流れるので、この電流によりACリレーRYを駆動することで、電流量に応じてACリレーRYの接点を投入したり、開放したりすることができる。
【0039】
つまり、信号合成回路33からの信号がACリレーRYを投入状態とすることができる電流である場合には、負荷電流が過電流であり、かつ順方向潮流であるため、ACリレーRYから制御装置300へ接点が導通した状態を示す過電流検出信号を出力することができる。また、信号合成回路33からの信号がACリレーRYを開放状態のままとする電流である場合には、負荷電流が正常であるか、または負荷電流が過電流であっても逆方向潮流であることを示しており、ACリレーRYは投入されず制御装置300へは過電流検出信号が出力されない。
【0040】
このように、電圧検出部31を抵抗R0とし、電流検出部32および信号合成回路33は、2巻線のハイブリッドOCRとすることで、簡単な回路構成で実現することができるので、負荷開閉器100内に収納することができる。また、制御装置300内に、位相差演算手段や潮流方向判定手段などを設ける必要がないので、高い信頼性を図ることができる。
【0041】
図2、図4、図6においては、相電圧の検出に電圧検出部31である抵抗R0を、引込配電線210に直接接続していた。しかし、図8に示す負荷開閉器101では、制御装置300の電源部306のために、V結線で接続された2台の計器用変圧器(VT)60が、負荷開閉器101内に設けられているので、この計器用変圧器60から抵抗R0へ基準となる相電圧を供給することができる。なお、図8においては図2と同じ構成のものは同符号を付している。
このように、計器用変圧器60から電圧検出部31へ電圧を供給することで、低電圧で制御することができるので、引込配電線210から直接接続した場合と比較して、低抵抗なものが使用できる。従って、電圧検出部31(抵抗R0)を小型化、低廉化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、引込配電線に配設される負荷開閉器に好適である。
【符号の説明】
【0043】
100,101 負荷開閉器(区分開閉器)
10 零相変流器
20 零相電圧検出装置
30 信号検出部
31 電圧検出部
32 電流検出部
33 信号合成回路
34 過電流検出回路
34a 交流・直流変換器
34b 比較器
34c コア部
40 開閉部
41R、41S、41T 可動接点
42R、42S、42T 固定接点
50 引き外し部
60 計器用変圧器
70 グランド(大地接地)
201引込分岐点
200 高圧架空配電線
202 責任分界点
204 PCT
205 主遮断装置
206 自家発電装置
207 負荷
210,210R,210S,210T 引込配電線
300 制御装置
301 地絡検出部
302 地絡判定部
303 過電流検出信号受信部
304 過電流蓄勢制御部
305 開閉器制御部
306 電源部
L11,L12,L13,L21,L22 巻線
R0,R1,R2 抵抗
TR ハイブリッドトランス
RY ACリレー
Q1 トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧配電線に流れる負荷電流が過電流であるときに、前記高圧配電線の投入・開放を行う開閉部に対して開放を指示する制御装置へ、過電流を検出したときに過電流検出信号を出力する負荷開閉器において、
前記高圧配電線の相電圧に応じた磁気と負荷電流に応じた磁気とが磁気結合によりベクトル合成されることで、負荷電流が過電流であっても逆方向潮流であれば過電流検出の既定以下を示す電流が流れる合成出力用巻線が設けられた信号合成回路と、
前記合成出力用巻線に流れる電流に基づいて前記制御装置への前記過電流検出信号を出力する過電流検出回路とを備えたことを特徴とする負荷開閉器。
【請求項2】
前記信号合成回路は、相電圧と負荷電流とのベクトル合成において、位相差が−90度から+90度までの範囲であるときに順方向潮流、それ以外の範囲であるときに逆方向潮流とする請求項1記載の負荷開閉器。
【請求項3】
前記信号合成回路は、
前記高圧配電線の相電圧に応じた電流が流れることで磁気が発生する第1の巻線と、
前記高圧配電線の負荷電流に応じた電流が流れることで磁気が発生する第2の巻線と、
前記第1の巻線及び前記第2の巻線と共に、コア部に巻き回された前記合成出力用巻線である第3の巻線とを備えたものである請求項1または2記載の負荷開閉器。
【請求項4】
前記信号合成回路は、
前記高圧配電線の相電圧に応じた電流が流れることで磁気を発生する第1の巻線と、
前記高圧配電線の負荷電流に応じた磁気による磁束の磁路となるコア部と、
前記第1の巻線と共に、前記コア部に巻き回された前記合成出力用巻線である第2の巻線とを備えたものである請求項1または2記載の負荷開閉器。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−55727(P2013−55727A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190420(P2011−190420)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000003171)株式会社戸上電機製作所 (29)
【Fターム(参考)】