説明

貨幣処理システム、貨幣処理装置及び貨幣処理方法

【課題】貨幣処理装置からの貨幣回収及び貨幣処理装置への貨幣補充に係る作業負担を軽減する。
【解決手段】筐体に対して着脱可能にセットされて貨幣の収納及び繰り出しを行うための貨幣カセットを有する貨幣処理装置と、貨幣を識別して計数する識別計数部、貨幣を収納するための貨幣収納部、及び貨幣処理装置で利用される貨幣カセットを着脱可能なカセット取付部を有し、識別計数部による識別結果に基づいてカセット取付部にセットされた貨幣カセット及び貨幣収納部に貨幣を分類して収納する貨幣分類装置とによって貨幣処理システムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金融機関で利用される貨幣処理システム、貨幣処理装置及び貨幣処理方法に関し、特に、貨幣処理装置からの貨幣の回収及び貨幣処理装置への貨幣の補充を容易に行うための貨幣処理システム及び貨幣処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行等の金融機関では、貨幣の入出金処理を行うための貨幣処理装置が利用されている。例えば、特許文献1には、入金操作に応じて入金口へ投入された紙幣の金種や真偽を識別して収納部へ収納すると共に、出金操作に応じて指定された紙幣を収納部から出金口へ出金する紙幣処理装置が開示されている。紙幣処理装置は、例えば、銀行窓口で顧客から依頼された入出金の処理を行う窓口係(以下「テラー」と記載する)によって利用される。紙幣処理装置を利用すれば、紙幣の計数や識別が自動的に行われるので、入出金処理に係るテラーの処理負担を軽減することができる。
【0003】
また、紙幣処理装置の中には、紙幣収納部が、装置から着脱可能な紙幣収納カセットにより構成されているものがある。このような紙幣処理装置では、内部に紙幣が収納されたカセットを装置から取り外して別の場所へ運搬したり、別の場所から運ばれたカセットを装置へ取り付けることができる。紙幣収納カセットを利用すれば、紙幣に触れることなくカセットごと紙幣を運ぶことができるので、運搬時のセキュリティを確保することができる。
【0004】
また、特許文献2には、識別した後の紙幣を金種別に分類し、100枚ずつ結束して紙幣束を作成する紙幣処理装置が開示されている。このような紙幣処理装置は、例えば、銀行の後方で、行内の紙幣を管理する出納員によって、大量の紙幣を識別計数して金種毎の紙幣束を作成するために利用される。テラーが利用する紙幣処理装置から回収された紙幣や、銀行外を回る渉外員が顧客から預かって持ち帰った紙幣を含む大量の紙幣を識別計数して、金種毎の紙幣束にできるので、出納員の処理負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−159075号公報
【特許文献2】特開2006−268340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、金融機関で行われる紙幣処理の中には、上記従来技術を利用してもなお手間のかかるものがある。例えば、一日の営業時間の終了後に、行内の全ての貨幣を回収して、所定の保管場所へ運搬して保管する銀行が存在する。このような銀行では、営業時間の終了後に行内の全ての貨幣が回収された後、翌朝にはその日の銀行業務に必要な運用金が行内に運び込まれる。運び込まれた貨幣は、行内での運用に合わせて配置される。例えば、テラーの窓口業務に必要な量の各金種の紙幣が、テラー用の紙幣処理装置に補充される。
【0007】
紙幣処理装置内の複数の収納部から全ての紙幣を回収し、さらに翌朝には、必要な紙幣を装置内の各収納部へ補充する作業は手間のかかる作業である。特に、複数台の紙幣処理装置が利用されている金融機関では、大量の紙幣を運搬しながら、各紙幣処理装置の備える複数の収納部から紙幣を回収したり補充したりする必要があるので作業負担が大きくなる。
【0008】
カセット式の収納部を利用する紙幣処理装置では、紙幣が収納されたカセットを紙幣処理装置から取り外してそのまま運搬することができる。ところが、営業時間を終了した際にカセット内に収納されている紙幣の量は、その日の入出金によって変化する。このため、翌朝、回収したカセットをそのまま装置に戻して利用することはできない。
【0009】
具体的には、一日の運用に必要な紙幣の金種や金額(枚数)は予め定められているので、カセット内に収納された紙幣の量が不足していれば補充し、多すぎる場合には回収する作業が必要となる。このような作業を全ての金種について行う必要があるので作業負担が大きくなる。
【0010】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたもので、金融機関内の貨幣を管理して、貨幣処理装置からの貨幣の回収及び貨幣処理装置への貨幣の補充を容易に行うことができる貨幣処理システム、貨幣処理装置及び貨幣処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、貨幣処理システムであって、筐体に対して着脱可能にセットされ貨幣の収納及び繰り出しを行うための貨幣カセットを有する貨幣処理装置と、貨幣を識別して計数する識別計数部、貨幣を収納するための貨幣収納部、及び前記貨幣カセットを着脱可能なカセット取付部を有し、前記識別計数部による識別結果に基づいて、前記貨幣を、前記カセット取付部にセットされた前記貨幣カセット及び前記貨幣収納部に分類して収納する貨幣分類装置とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記貨幣処理装置は、テラーが入出金処理を行う窓口に設置され、前記テラーの操作に応じて貨幣を入出金するテラー用の貨幣処理装置であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記貨幣分類装置は、前記カセット取付部にセットされた前記貨幣カセットに収納された貨幣のうち、予め設定された量を残して、それ以外の貨幣を前記貨幣収納部に収納することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記貨幣分類装置は、前記貨幣処理装置で利用される運用金貨幣として予め設定された量の貨幣を前記貨幣カセットに収納して、その他の貨幣を前記貨幣収納部に収納することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記貨幣分類装置は、前記貨幣収納部に収納された所定枚数の貨幣を包装して包装貨幣を作成する貨幣包装部をさらに有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、前記貨幣カセットは、前記貨幣カセットに収納された貨幣の在高情報が記憶されたICタグを有し、前記貨幣分類装置は、前記ICタグに記憶された情報を読み取るICタグリーダをさらに有し、該ICタグリーダによって読み取った前記在高情報に基づいて前記貨幣カセットに収納された貨幣を処理することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記発明において、前記貨幣処理装置及び前記貨幣分類装置で処理される貨幣を管理する管理端末をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記発明において、前記貨幣カセットは、該貨幣カセットを識別するためのカセット識別情報が記憶されたICタグを有し、前記貨幣処理装置及び前記貨幣分類装置は、前記ICタグに記憶された情報を読み取るICタグリーダをさらに有し、該ICタグリーダによって読み取った前記カセット識別情報を前記管理端末に送信すると共に、前記管理端末は、前記貨幣処理装置及び前記貨幣分類装置から受信した前記貨幣カセットの識別情報に基づいて、前記貨幣カセットに収納された貨幣の在高を管理することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、貨幣処理装置であって、貨幣を識別して計数する識別計数部と、貨幣を収納するための貨幣収納部と、筐体に対して着脱可能にセットされ、貨幣の収納及び繰り出しを行うための貨幣カセットと、予め設定された量の貨幣を前記貨幣収納部から前記貨幣カセットに搬送して収納する制御部とを備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、予め設定された量を超えた余剰分の貨幣を、前記貨幣カセットに搬送して回収することを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、貨幣処理方法であって、貨幣処理装置に着脱可能な貨幣カセットを貨幣分類装置にセットするカセット取付工程と、貨幣を識別計数する貨幣識別計数工程と、前記貨幣識別計数工程による識別結果に基づいて、前記貨幣を、前記貨幣分類装置の貨幣収納部及び前記貨幣カセットに分類して収納する貨幣分類収納工程とを含んだことを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、上記発明において、前記カセット取付工程でセットされた前記貨幣カセットに収納された貨幣のうち、予め設定された量を残して、それ以外の貨幣を繰り出す貨幣繰出工程をさらに含んだことを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、貨幣処理方法であって、貨幣処理装置の備える貨幣収納部から、予め設定された量の貨幣を繰り出す貨幣操出工程と、前記貨幣操出工程で繰り出された貨幣を、前記貨幣処理装置の筐体に着脱可能にセットされた貨幣カセットに収納して回収する貨幣回収工程とを含んだことを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、上記発明において、予め設定された量を超えた余剰分の貨幣を、前記貨幣カセットに搬送して回収する余剰金貨幣回収工程をさらに含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、貨幣分類装置によって貨幣を貨幣カセット及び貨幣収納部に分類して、利用目的に応じた2種類の貨幣を同時に作成することができる。また、貨幣カセットは、貨幣処理装置及び貨幣分類装置の両方で利用可能であるため、貨幣分類装置で貨幣を収納した貨幣カセットをそのまま貨幣処理装置にセットして利用することができる。例えば、窓口のテラーが貨幣処理装置を利用し、後方の出納員が貨幣分類装置を利用すれば、貨幣の回収や補充に係る業務効率が向上する。
【0026】
また、本発明によれば、貨幣処理装置で貨幣が収納された貨幣カセットを取り外して貨幣分類装置にセットし、枚数、金額、又は、金種及び枚数を指定して予め設定された量の貨幣のみを、貨幣カセットに残したり貨幣カセットから繰り出したりすることができるので、必要な貨幣のみを貨幣カセットから取り出して利用することができる。また、残りの貨幣については、貨幣カセットに収納したままの状態で貨幣処理装置に戻して利用することができるので、貨幣の取り扱いに関するセキュリティを確保することができる。
【0027】
また、本発明によれば、貨幣分類装置によって、貨幣処理装置での処理に必要な運用金貨幣とその他の貨幣とを仕分けながら、運用金貨幣を貨幣カセットに収納できるので、処理後すぐに貨幣カセットを貨幣処理装置にセットして運用金貨幣を利用することができる。
【0028】
また、本発明によれば、運用金以外の貨幣を包装貨幣とすることができるので、大量の貨幣を、結束紙幣、棒金硬貨、袋詰め硬貨等の包装形態にして容易に取り扱うことができる。
【0029】
また、本発明によれば、貨幣カセットの有するICタグに書き込まれた貨幣カセット内の貨幣の在高情報を読み取って利用することができるので、貨幣分類装置は、ICタグ内の情報を利用して貨幣カセットに残すべき貨幣又は貨幣カセットから繰り出すべき貨幣の量を算出して貨幣処理を行うことができる。
【0030】
また、本発明によれば、管理端末によって貨幣処理装置及び貨幣分類装置の貨幣を管理することができるので、複数の装置間での貨幣の流れを正確に管理することができる。
【0031】
また、本発明によれば、ICタグを利用して各貨幣カセットを識別することができるので、貨幣カセットが誤って別の装置で利用されるといった事態を回避することができる。
【0032】
また、本発明によれば、貨幣処理装置の有する貨幣収納部から、予め設定された量の貨幣を貨幣カセットに搬送して回収することができるので、貨幣収納部に運用金を残して余剰分の貨幣を貨幣カセットに回収したり、運用金を貨幣カセットに回収したりすることができる。
【0033】
また、本発明によれば、予め設定された量を超えた余剰分の貨幣を貨幣カセットに搬送して回収することができるので、余剰分の貨幣を容易に回収して運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明に係る貨幣処理システムの構成概略を示すブロック図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るテラー用紙幣処理装置の内部構成概略を説明する断面模式図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る出納員用紙幣処理装置の内部構成概略を説明する断面模式図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る紙幣処理装置の機能構成概略を示すブロック図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る紙幣処理の例を説明する図である。
【図6】図6は、本実施形態に係るテラー用紙幣処理装置内で行われる紙幣処理の例を説明する図である。
【図7】図7は、本実施形態に係るテラー用紙幣処理装置内で行われる紙幣処理の別の例を説明する図である。
【図8】図8は、本実施形態に係るテラー用紙幣処理装置内で行われる紙幣処理のさらに別の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る貨幣処理システム、貨幣処理装置及び貨幣処理方法の好適な実施例を詳細に説明する。貨幣処理システムは、銀行等の金融機関で利用されるシステムである。貨幣処理システムは、窓口で顧客から受け付けた入出金処理を行うテラー(窓口係)及び後方で管理業務を行う出納員によって利用される複数の貨幣処理装置やオンライン端末によって構成される。
【0036】
本実施形態に係る貨幣処理装置は、紙幣のみ、硬貨のみ、又は紙幣及び硬貨の両方を処理対象とすることができるが、以下では、紙幣のみを処理対象とする紙幣処理装置が、銀行に設置された貨幣処理システムで利用される場合を例に説明を行う。また、多数の装置及び端末を接続して貨幣処理システムを構成することができるが、以下では、貨幣処理システムの機能及び動作を説明するために必要な構成に留めて説明を行うこととする。
【0037】
図1は、貨幣処理システム1の構成概略を示すブロック図である。貨幣処理システム1は、複数のテラー(テラーA及びテラーB)によって利用される紙幣処理装置(貨幣処理装置)10と、各テラーに割り当てられたオンライン端末30A及び30Bと、出納員によって利用される紙幣処理装置(貨幣分類装置)210と、出納員用のオンライン端末230とを含んでいる。オンライン端末30A、30B及び230と、紙幣処理装置10及び210とは、ネットワーク2に接続されている。このネットワーク2には、銀行の行員が利用する端末や装置に加えて、図1に破線で示した両替機160やATM170等の装置が接続される場合もある。なお、本実施形態では紙幣処理装置10及び210をテラー用と出納員用に分けて説明するが、各装置を利用する権限をテラーまたは出納員に限定する必要はなく、テラー用紙幣処理装置10を出納員も利用できるようにしたり、出納員用紙幣処理装置210をテラーも利用できるようにしてもよい。
【0038】
ネットワーク2には、該ネットワーク2に接続された端末や装置によって行われる入出金処理の内容を管理する管理端末180が接続されている。管理端末180は、例えば、コンピュータ装置によって構成され、銀行内の貨幣の管理や銀行外の装置や端末とのデータ通信を行う機能を有している。なお、本実施形態では、管理端末180と、出納員が利用する出納員用オンライン端末230とを別々に示しているが、出納員用オンライン端末230が管理端末180の機能を兼ねる態様であっても構わない。
【0039】
テラー用紙幣処理装置10は、窓口でテラーA及びテラーBの間に設置され、2人のテラーによって紙幣の入出金を行うために利用される。ただし、本実施形態がこれに限定されるものではなく、テラーA及びテラーBにそれぞれ1台ずつ専用のテラー用紙幣処理装置10が割り当てられる態様であってもよい。なお、装置の詳細については後述する。
【0040】
各テラー用に設けられたオンライン端末30A及び30Bは、例えば、ネットワーク2に接続されたコンピュータ装置によって構成され、顧客から受け付けた入出金の処理内容を入力するために利用される。具体的には、顧客が入出金処理を依頼する際に記入する入金伝票や出金伝票のデータが端末に入力される。各テラーA及びBの処理内容を区別して管理することができるように、各テラーに専用のオンライン端末30A及び30Bが割り当てられている。オンライン端末30A及び30Bに入力された入金額や出金額を含む情報は、管理端末180に送信され管理される。なお、端末上で各テラーの入力を区別して管理することができれば、1台の端末を複数テラーで利用する態様であっても構わない。
【0041】
出納員用の紙幣処理装置210は、出納員によって、例えば、渉外担当者が銀行外から持ち帰った紙幣や、テラー用紙幣処理装置で利用する紙幣の入金処理を行うために利用される。この装置の詳細については後述する。
【0042】
出納員用のオンライン端末230は、テラー用オンライン端末30A及び30Bと同様にコンピュータ装置によって構成され、出納員によって行われる入出金の処理内容を入力するために利用される。また、出納員用オンライン端末230は、テラー用紙幣処理装置10の管理等にも利用される。オンライン端末230に入力された情報は、管理端末180に送信され管理される。
【0043】
銀行内では、ネットワーク2に接続された両替機160やATM170が利用される場合もある。これらの装置160及び170で行われる入出金処理や両替処理の内容も管理端末180によって管理される。両替機160及びATM170については従来装置を利用することができるため、その構成及び機能に関する詳細な説明は省略する。
【0044】
次に、テラー用紙幣処理装置10及び出納員用紙幣処理装置210の機能及び構成について説明する。
【0045】
図2はテラー用紙幣処理装置10の内部構成概略を示す断面模式図である。テラー用紙幣処理装置10は、顧客から受け付けた紙幣の入金及び顧客へ払い出す紙幣の出金を行うための機能を有する。
【0046】
図2に示すテラー用紙幣処理装置10は、上部ユニット17と下部ユニット18とを有する。上部ユニット17は、主に、入金された紙幣の識別計数や出金紙幣の投出等を行うユニットである。上部ユニット17には、入金口12と、識別計数部13と、出金口14と、一時保留部15と、これらの各部12〜15を接続する搬送路16とが含まれる。
【0047】
識別計数部13は、搬送路16によって搬送される紙幣を識別して計数する機能を有する。具体的には、識別計数部13は、搬送路16によって搬送される紙幣の金種判定、真偽判定、正損判定、表裏判定あるいは天地判定といった各種の識別処理を行う。また、識別計数部13は、識別した紙幣を金種別に計数する計数処理を行う。なお、真偽判定とは紙幣が本物か偽物かを判定する処理であり、正損判定とは本物の紙幣であると判定された紙幣が状態のよい紙幣(正券)であるか汚れや損傷がある紙幣(損券)であるかを判定する処理である。
【0048】
一時保留部15は、例えばテープ式の収納繰出部によって構成され、搬送される紙幣を一時的に保留した後、保留した紙幣を所定タイミングで繰り出す機能を有する。また、一時保留部15は、搬送路16を搬送される紙幣を一旦取り込んですぐに繰り出すスイッチバック搬送を行って紙幣の表裏を反転させるために利用される。
【0049】
下部ユニット18は前面に施錠可能な開閉扉を備えた金庫になっており、その内部には、金種別に紙幣を収納する複数のカセット式紙幣収納部(以下「紙幣カセット」と記載する)21a〜21eを有している。紙幣カセット21a〜21eは収納操出部を有し、搬送路16を搬送される紙幣を内部に繰り入れて収納したり、内部に収納した紙幣を搬送路16に繰り出せるようになっている。どの紙幣カセットにどの金種の紙幣を収納するかはユーザによって設定される。紙幣カセット21a〜21eは、図示しないカセット取付ユニットに着脱可能にセットされている。カセット取付ユニットは、金庫の扉を開けて前面に引き出せるようになっており、引き出したカセット取付ユニットに対して各紙幣カセット21a〜21eを着脱できるようになっている。
【0050】
また、各紙幣カセット21a〜21eにはICタグが取り付けられており、内部に各紙幣カセット21a〜21eを識別するためのカセット識別情報と、各紙幣カセット21a〜21eに収納されている紙幣の金種や枚数等に関するカセット内紙幣情報とが記憶されている。
【0051】
下部ユニット18内には、ICタグに対する情報の読み取り及び書き込みを行うためのICタグリーダ/ライタ(以下「ICタグリーダ」と記載する)19が設けられている。ICタグリーダ19によって読み取ったカセット識別情報に基づき、下部ユニット18内にセットされた各紙幣カセット21a〜21eの位置を認識できるようになっている。また、カセット内紙幣情報に基づき、各紙幣カセット21a〜21e内部に収納されている紙幣の情報を認識することもできる。
【0052】
ICタグリーダ19によって読み出されたカセット識別情報及びカセット内紙幣情報は管理端末180へ送信される。また、紙幣の識別計数結果等の入出金に係る情報も管理端末180へ送信される。管理端末180では、受信した情報と、この情報を送信してきたテラー用紙幣処理装置10とを関連付けて管理している。これにより、管理端末180では、紙幣カセット21a〜21eが利用されているテラー用紙幣処理装置10、この装置内における各紙幣カセット21a〜21eの取付位置、カセット内に収納された紙幣の金種や枚数等の情報を管理することができる。
【0053】
また、これに加えて、紙幣カセット21a〜21eは、各カセットを外観から容易に区別できるようになっている。具体的には、各カセットの一部又は全部に異なる色を有しており、この色によって各カセットを区別することができる。
【0054】
入金処理を行うテラーA又はBは、紙幣を入金口12に投入して所定の操作ボタンを操作する。この操作を受けた紙幣処理装置10は、入金口12の紙幣を1枚ずつ繰り出して搬送路16によって識別計数部13へ搬送し、識別計数部13によって識別計数処理を行い、識別結果に応じて対応する紙幣カセット21a〜21eへ搬送して収納する。このとき、識別計数部13によって偽券等のリジェクト紙幣と判定された紙幣は、紙幣カセット21a〜21eには収納されず出金口14から排出される。
【0055】
なお、入金口12で受け付けた紙幣を、入金時に一時保留部15を利用して処理する場合もある。一時保留部15を利用する場合には、識別した紙幣が一時保留部15に一時的に保留された状態で、識別計数の結果が紙幣処理装置10の備える表示部やオンライン端末30A又は30Bに表示される。テラーA又はBが、この表示を確認して承認すると、一時保留部15内の入金紙幣が繰り出されて搬送路16によって搬送され、対応する紙幣カセット21a〜21eへ収納される。
【0056】
出金処理を行うテラーA又はBは、出金する合計金額を指定したり、出金する紙幣の金種と枚数又は金額とを指定した後、所定の操作ボタンを操作する。この操作を受けた紙幣処理装置10は、指定に応じた紙幣を紙幣カセット21a〜21eから繰り出して搬送路16によって搬送して出金口14から投出する。なお、紙幣カセット21a〜21eから繰り出された紙幣は、搬送される途中で識別計数部13によって識別され、出金に適さない紙幣であると判定された場合には、一時保留部15等へ搬送され、出金口14から出金されないようになっている。出金されなかった紙幣は、その後、元の紙幣カセット21a〜21eへ戻される。紙幣カセット21eを回収カセットとして使用する場合は、出金に適さない紙幣を、一時保留部15を経ずに紙幣カセット21eに回収するようにしてもよい。
【0057】
次に、出納員用紙幣処理装置210について説明する。図3は出納員用紙幣処理装置210の内部構成概略を示す断面模式図である。出納員用紙幣処理装置210は、最上部に操作部11を有し、前面上段の分類集積部100と、前面中段のカセット取付部400と、前面下段の紙幣結束部(貨幣包装部)200と、背面の搬送部300とから構成されている。なお、図3では、図2に示すテラー用紙幣処理装置10と同様の構成部については同じ符合を付している。
【0058】
まず、分類集積部100について説明する。分類集積部100では、前面のほぼ中央部に処理すべき紙幣を受け付ける入金口101が設けられ、ここに金種の混合された紙幣が投入される。投入された紙幣は繰り出しローラ102及び103により繰り出され、搬送路16に沿って搬送される。
【0059】
搬送路16の途中には識別計数部13が設けられている。識別計数部13による識別結果に基づいて、リジェクト紙幣であると識別された紙幣はリジェクト紙幣集積部106に集積される。一方、正券かつ真券と識別された紙幣は、すべての紙幣の表裏面が一致するように、識別計数部13による表裏判定結果に基づき必要に応じて表裏反転部107で反転される。
【0060】
予め設定された金種等の紙幣の種類に基づいて、結束対象紙幣と判定された紙幣は、結束用紙幣集積部111〜115のいずれかに集積される。結束用紙幣集積部111〜115は、それぞれ集積用のステージ111a〜115aを有しており、これらは図示しない駆動手段で昇降可能とされている。各結束用紙幣集積部111〜115に搬送された紙幣は、壁部材111b〜115bに当たって停止して集積される。この際、紙幣の飛び出しを防止し、安定な集積を可能とするために、各結束用紙幣集積部111〜115には集積量に応じて回動可能な押さえ板111c〜115cが設けられている。一方、結束対象外と判定された紙幣は、さらに搬送されて外部集積部121及び122に集積される。
【0061】
結束用紙幣集積部111〜115と、外部集積部121及び122とに集積される紙幣の種類はユーザによって設定される。例えば金種や正損等の種類の組み合わせによって設定することができる。また、結束用紙幣集積部111〜115と、外部集積部121及び122とが、出納員用紙幣処理装置(貨幣分類装置)210の備える貨幣収納部に相当する。
【0062】
操作部11の下には、結束対象紙幣であるが結束可能枚数に達しなかった端数紙幣を返却するための端数紙幣返却部130が設けられている。端数紙幣返却部130では、端数紙幣返却トレイ131の下面に設けられた突き当て部材132の先端部132aが背面より押されることにより、端数返却トレイ131が前進して、前面に設けられたシャッタ133が開く。開いたシャッタ133は図3に一点鎖線で示された位置まで進み、端数紙幣を取り出せるようになっている。
【0063】
次に、カセット取付部400について説明する。カセット取付部400は、分類集積部100の下に設けられ、その内部に紙幣カセット21fを着脱可能にセットできるようになっている。
【0064】
カセット取付部400で利用する紙幣カセット21fは、テラー用紙幣処理装置10で利用される紙幣カセット21a〜21eと共通の構造を有している。よって、テラー用紙幣処理装置10から取り外した紙幣カセット21a〜21eの1つを出納員用紙幣処理装置210に取り付けて利用したり、出納員用紙幣処理装置210から取り外した紙幣カセット21fをテラー用紙幣処理装置10に取り付けて利用することができる。
【0065】
紙幣カセット21fがカセット取付部400にセットされると、紙幣カセット21fに設けられた収納操出部が搬送路16に接続される。識別計数部13で識別された紙幣を、表裏反転部107を経て搬送した後、紙幣カセット21fに収納できるようになっている。また、紙幣カセット21fから繰り出した紙幣を識別計数部13の上流側へ搬送して識別した後、表裏反転部107を経て結束用紙幣集積部111〜115等へ搬送できるようになっている。
【0066】
カセット取付部400には図示しないICタグリーダ19が設けられている。このICタグリーダ19で読み取られたカセット識別情報やカセット内紙幣情報は管理端末180へ送信され、管理端末180によって管理される。貨幣処理システム1では、同型式の多数の紙幣カセット21a〜21fが利用されるが、各カセット21a〜21fに取り付けられたICタグと、各装置に設けられたICタグリーダ19によって、カセットの取り違いが起きないようになっている。また、紙幣カセット21a〜21fは、その一部又は全部に施された色の違いによって、外観から区別できるようになっている。
【0067】
次に、紙幣結束部200について説明する。カセット取付部400の下に設けられた紙幣結束部200は、分類集積部100によって分類集積された紙幣が、所定枚数(通常100枚)に達すると、この紙幣に結束帯を巻回させて帯封を行う機能を有する。結束用紙幣集積部111〜115に集積された紙幣は、後述する搬送部300によって下方に移送され、セット部201によって挟持される。
【0068】
紙幣結束部200には、セット部201によって挟持された複数紙幣上の所定位置に結束帯を巻回させるための回転機構202が設けられており、結束帯204を結束帯収納部203から引き出して、その先端をテープ止め205で掴んで紙幣の周囲を回転させることにより紙幣を結束する。紙幣結束部200には、結束した後の結束帯の先端を切断するためのカッタ206と、その先端部を熱接着するためのヒータ207も設けられている。
【0069】
結束された紙幣束はベルト式の搬送機構208で紙幣束投出口209に投出されるが、搬送途中には処理を行った金融機関印を結束帯上に押印する行名スタンプ部220と、損券であることを結束帯上に押印する損券スタンプ部221とが設けられている。
【0070】
結束帯204の繰り出し部には、処理日付、処理時刻、号機番号、本発明で特徴的な処理情報、担当者番号などを印字する印字部212が設けられている。
【0071】
なお、紙幣束はこの実施例のように紙幣束投出口209に投出される場合の他、従来技術を利用して、例えば特開2003−141606号公報に開示された装置のように、紙幣束を束収納部へ収納するものであってもよい。また、本実施形態では処理対象が紙幣であるため紙幣束を作成する態様を示したが、硬貨を処理対象とする場合には、所定枚数の硬貨を包装して棒金硬貨としたり、袋状のパウチに収納した袋詰め硬貨とする態様であっても構わない。
【0072】
次に、搬送部300について説明する。搬送部300は、結束用紙幣集積部111〜115と紙幣結束部200との間で結束対象紙幣を搬送する機能を有する。また、結束用紙幣集積部111〜115と端数紙幣返却部130との間で端数紙幣を搬送する機能を有する。
【0073】
搬送部300は、装置の下端から上端に向けて垂直に設置されたガイド軸301と、このガイド軸301に係合しつつ上下移動可能な昇降ユニット310と、この昇降ユニット310を昇降させるための駆動ベルト302とを有している。
【0074】
昇降ユニット310はベルト機構311による前進後退可能なブロック312を有している。また、ブロック312には固定された下ハンド313と、ベルト316により軸315に沿って上下移動する上ハンド314とが設けられている。ハンド313及び314は、結束用紙幣集積部111〜115に集積された結束対象紙幣又は端数紙幣を挟んで取り出して、紙幣結束部200又は端数紙幣返却部130に移送するためのものである。
【0075】
次に、紙幣処理装置10及び210の機能構成について説明する。図4は、紙幣処理装置10及び210の機能構成を示すブロック図である。なお、同図には、紙幣処理装置10及び210の特徴を説明するために必要な構成要素のみを示している。
【0076】
図4に示すように、テラー用紙幣処理装置10は、ICタグリーダ19と、通信インターフェイス(通信I/F)140と、操作部11と、識別計数部13と、分岐部143と、表示部144と、制御部120と、記憶部145とを備えている。また、出納員用紙幣処理装置210は、これに加えて、図4に破線で示した紙幣結束部200を有している。
【0077】
通信インターフェイス140は外部装置との間でデータ通信を行う機能を有し、例えば、入出金した紙幣の識別計数結果に関する情報を、オンライン端末30A、30B及び230や、管理端末180へ送信する。
【0078】
ICタグリーダ19は、紙幣カセット21a〜21fに取り付けられたICタグから、各紙幣カセット21a〜21fを識別するためのカセット識別情報と、各紙幣カセット21a〜21fに収納されている紙幣の金種や枚数等に関するカセット内紙幣情報とを読み出す機能を有する。読み出した情報は、制御部120で利用される他、通信インターフェイス140によって管理端末180へ送信される。また、ICタグリーダ19は、制御部120又は管理端末180によって、ICタグにカセット内紙幣情報を書き込むために利用される。ICタグリーダ19は、非接触で数10cm〜1m程度離れた位置のICタグに対して情報の読み書きを行うことができる。
【0079】
操作部11は、テラーA又はBや出納員からの各種操作を受け付ける入力装置である。具体的には、操作部11では、動作モードの切替を指示する操作や識別計数の対象となる紙幣を選択する操作又は装置内への入金や装置内からの出金を指示する操作等を受け付ける。
【0080】
識別計数部13は、搬送路16を搬送される紙幣の金種判定、真偽判定、正損判定等の識別処理及び識別した紙幣の計数処理を行う。識別計数部13は、紙幣の識別計数処理を行うごとに識別結果及び計数結果を記憶部145へ保存する。
【0081】
分岐部143は、搬送路16の各分岐点に設けられた経路切替部である。搬送路16によって搬送される紙幣の搬送先を、識別計数部13による識別結果に応じて振り分けるために利用される。
【0082】
表示部144は、識別計数部13による紙幣の識別結果や計数結果を表示するためのディスプレイである。
【0083】
制御部120は、動作モードの切り替えや識別された紙幣の振り分け又は一時保留部15に一時的に保留された紙幣の繰り出しといった処理を制御する処理部である。制御部120は、識別計数部13から紙幣の識別結果を受け取ると、受け取った識別結果に応じて分岐部143を揺動させることによって紙幣の搬送先を制御する。また、出納員用紙幣処理装置210では、制御部120が、所定枚数の紙幣を結束するために、結束用紙幣集積部22に集積された紙幣枚数の判定と紙幣結束部200の制御とを行う。
【0084】
また、制御部120は、予め設定された設定内容、又はテラーや出納員の指示操作に基づき、紙幣の収納先を変更したり、各カセット21a〜21f間で紙幣を移動する制御を行う。以下、テラー用紙幣処理装置10及び出納員用紙幣処理装置210で行われるこれらの制御について詳細を説明する。
【0085】
図5は、テラー用紙幣処理装置10及び出納員用紙幣処理装置210で行われる紙幣処理を説明する模式図である。図5(a)は、出納員用紙幣処理装置210に投入された紙幣を、出納員が管理する紙幣と、テラー用紙幣処理装置10で利用する紙幣とに仕分ける処理の例を示している。
【0086】
図5(a)に示すように、出納員は、テラー用紙幣処理装置10から回収された紙幣や銀行外を回る渉外員が顧客から預かって持ち帰った紙幣等の大量の紙幣500を受け取ると、これを出納員用紙幣処理装置210に投入する。
【0087】
出納員用紙幣処理装置210へ投入された紙幣は、カセット収納分紙幣と、その他の紙幣とに分類される。カセット収納分紙幣とは、出納員用紙幣処理装置210へ投入された紙幣のうち、結束用紙幣集積部111〜115に搬送されずに、紙幣カセット21fへ搬送されて収納される紙幣である。
【0088】
例えば、出納員用紙幣処理装置210で識別計数された後、バラ紙幣として利用される紙幣は、紙幣束とする必要がないのでカセット収納分紙幣として、紙幣カセット21fへ収納される。また、例えば、識別計数された後、他の装置や他の銀行等で利用される紙幣のうち紙幣束にする必要がない紙幣は、紙幣カセット21fに収納された状態で運搬できるように、カセット収納分紙幣として紙幣カセット21fへ収納される。
【0089】
具体的には、例えば、翌日の銀行業務に必要な運用金、テラー用紙幣処理装置へ補充するための紙幣、紙幣カセット21fを利用可能な両替機160やATM170へ補充するための紙幣、中央銀行等他の銀行へ運ぶための紙幣等が、カセット収納分紙幣として紙幣カセット21fに収納される。
【0090】
カセット収納分紙幣は、例えば、管理端末180で金種及び金額(紙幣枚数)を指定して設定される。出納員用紙幣処理装置210は、管理端末180からこの設定情報を受信して利用することができる。また、出納員用紙幣処理装置210では、図5(a)に示す処理を行う際に、カセット収納分紙幣を、操作部11やオンライン端末230を利用して直接指定することもできる。
【0091】
図5(a)に示したように、識別計数部13による識別結果に基づいて、カセット収納分紙幣に該当する紙幣は紙幣カセット21fに収納される(図5(A−1))。また、カセット収納分紙幣に該当しない紙幣は、結束用紙幣集積部111〜115に集積される(図5(A−2))。
【0092】
結束用紙幣集積部111〜115に集積された紙幣は、所定枚数に達すると、紙幣結束部200に運ばれて結束される(図5(A−3))。そして、作成された紙幣束501は紙幣束投出口209から投出され、端数紙幣502は外部集積部121及び122や、端数紙幣返却部130から投出される(図5(A−4))。紙幣処理装置210から投出された紙幣束501や端数紙幣502は、出納員によって管理される。
【0093】
一方、紙幣カセット21fに収納されたカセット収納分紙幣は、その目的に応じて処理される。例えば、カセット収納分紙幣が、テラー用紙幣処理装置10への補充紙幣である場合には、出納員用紙幣処理装置210から取り外された紙幣カセット21fが、テラー用紙幣処理装置10にセットされる(図5(A−5))。
【0094】
例えば、図2に示す紙幣カセット21eの位置に紙幣カセット21fが取り付けられる。そして、テラー用紙幣処理装置10では、紙幣カセット21fから繰り出された紙幣が、金種に応じて対応する各紙幣カセット21a〜21dに収納される。
【0095】
紙幣カセット21fに収納されたカセット収納分紙幣が、両替機160やATM170への補充紙幣である場合には、同様に紙幣カセット21fから両替機160やATM170へ紙幣が補充される。また、カセット収納分紙幣が、他の銀行へ運搬される紙幣である場合には、紙幣カセット21fに収納された状態で運搬される。
【0096】
なお、出納員用紙幣処理装置210で処理された内容は、管理端末180によって管理される。例えば、紙幣カセット21fに収納された紙幣の金種や枚数、結束用紙幣集積部111〜115に集積された紙幣の金種や枚数、紙幣結束部200によって作成された紙幣束の金種や束数が、出納員用紙幣処理装置210から管理端末180に送信され管理される。
【0097】
このように、出納員用紙幣処理装置210では、投入された紙幣を2種類に分けて処理することができるので、例えば、余剰金として別の場所へ運ばれる紙幣と、翌日の銀行業務に利用する運用金とを同時に作成することができる。このとき、2種類に分けた紙幣を目的に応じて、一方を紙幣カセット21fに収納し、他方を紙幣束やバラ紙幣として投出することができる。また、紙幣カセット21fは、紙幣を内部に収納したまま運搬して運搬先の装置にセットし、内部の紙幣をカセット21fから繰り出して装置内で利用することができる。紙幣カセット21fを利用することにより、紙幣に触れることなく紙幣を処理することができるので、紙幣の取り扱いに関するセキュリティを確保することができる。
【0098】
出納員用紙幣処理装置210では、紙幣カセット21fに紙幣を収納する際に、ICタグリーダ19によって、紙幣カセット21fに取り付けられたICタグにカセット収納分紙幣に関する情報が書き込まれる。例えば、カセット収納分紙幣がテラー用紙幣処理装置10に補充するための紙幣である場合には、管理端末180から受信した情報や、操作部11から受け付けた操作に基づいて、補充先のテラー用紙幣処理装置10に関する情報と、カセット収納分紙幣が補充紙幣であることを示す情報と、補充紙幣の金種や枚数を示す情報等がICタグに書き込まれる。
【0099】
補充紙幣が収納された紙幣カセット21fは、補充先のテラー用紙幣処理装置10の所まで運ばれてカセット取付部にセットされる。このとき、テラー用紙幣処理装置10では、出納員又はテラーの操作、金庫の扉を開く動作、又は紙幣カセット21fの取付動作等によって、補充処理が開始されたことが認識され、ICタグリーダ19によって紙幣カセット21fのICタグから情報が読み出される。そして、紙幣カセット21fの補充先が別の装置であるにも拘わらず誤ってセットされた場合には、紙幣カセット21fから紙幣を繰り出すことなく、紙幣処理装置10の表示部144、端末30A及び30Bへの表示や、音声によってこれが報知される。
【0100】
また、補充対象となるテラー用紙幣処理装置10では、ICタグリーダ19によってICタグ内のカセット内紙幣情報を読み取り可能な範囲に、紙幣カセット21fが運び込まれると、補充紙幣に関する情報を読み出して、取り外し可能な紙幣カセット21a〜21eを判定する。すなわち、紙幣カセット21fに収納された補充紙幣の金種情報に基づいて、装置10内の紙幣カセット21a〜21eのうち、補充紙幣が収納されない紙幣カセット21a〜21eが特定される。そして、特定されたカセットに付された色情報が、装置10の表示部144、端末30A及び30Bへの表示や、音声によって通知される。出納員又はテラーは、取り外すことができるカセットをこの通知によって認識し、このカセットを取り外すと共に、その位置へ紙幣カセット21fをセットして補充紙幣を補充する処理を開始する。
【0101】
このように、紙幣カセット21a〜21fにICタグを取り付けて、カセット識別情報を利用することができるので、紙幣カセット21fが誤って別の装置に取り付けられるといった事態を回避することができる。また、ICタグ内のカセット内紙幣情報を利用することができるので、紙幣カセット21a〜21f内の紙幣を目視できない状態でも、取り外し可能な紙幣カセット21a〜21fを容易に認識して紙幣処理を行うことができる。
【0102】
図5(b)は、出納員用紙幣処理装置210にセットされた紙幣カセット21a〜21e内の紙幣を、出納員が管理する紙幣と、テラー用紙幣処理装置10で再利用する紙幣とに仕分ける処理の例を示している。
【0103】
図5(b)に示すように、出納員は、テラー用紙幣処理装置10から回収された紙幣カセット21eを出納員用紙幣処理装置210のカセット取付部400にセットする。
【0104】
紙幣カセット21eに収納された紙幣は、カセット収納分紙幣と、その他の紙幣とに分類される。ここで言うカセット収納分紙幣とは、紙幣カセット21eから繰り出されることなく、紙幣カセット21e内に保持される紙幣である。
【0105】
例えば、出納員用紙幣処理装置210での処理後に、紙幣カセット21eで利用される紙幣が、カセット収納分紙幣としてカセット21e内に保持される。
【0106】
出納員用紙幣処理装置210に紙幣カセット21eがセットされると(図5(B−1))、紙幣カセット21eから繰り出された紙幣は、識別計数部13による識別結果に基づいて、対応する結束用紙幣集積部111〜115へ搬送される(図5(B−2))。
【0107】
紙幣カセット21eのICタグには、テラー用紙幣処理装置10のICタグリーダ19によって、内部に収納された紙幣の金種や枚数に関するカセット内紙幣情報が書き込まれている。出納員用紙幣処理装置210では、ICタグからカセット内に収納された紙幣枚数が読み出される。そして、この枚数と、カセット収納分紙幣として管理端末180又は操作部11によって設定された紙幣枚数との差分、すなわち紙幣カセット21eから取り出されるべき紙幣枚数が算出される。こうして紙幣カセット21eから取り出す紙幣枚数が算出されると、この枚数に達するまで紙幣カセット21e内の紙幣が繰り出される。
【0108】
結束用紙幣集積部111〜115に搬送された紙幣は、所定枚数に達すると、紙幣結束部200に運ばれて結束される(図5(B−3))。そして、作成された紙幣束501は紙幣束投出口209から投出され、端数紙幣502は外部集積部121及び122や、端数紙幣返却部130から投出される(図5(B−4))。紙幣処理装置210から投出された紙幣束501や端数紙幣502は、出納員によって管理される。
【0109】
一方、カセット収納分紙幣を収納した状態にある紙幣カセット21eは、再び、テラー用紙幣処理装置10へ戻して利用される(図5(B−5))。
【0110】
このように、紙幣カセット21eに収納された紙幣の一部を内部に残したまま、他の紙幣を出納員用紙幣処理装置210で紙幣束とすることができるので、例えば、余剰金として中央銀行等の他の銀行へ運ばれる紙幣と、翌日の銀行業務に利用する運用金とを同時に作成することができる。このとき、2種類に分けた紙幣を目的に応じて、一方を紙幣カセット21eに収納し、他方を紙幣束として投出することができる。また、紙幣カセット21eでは、紙幣に触れることなく内部に収納した紙幣を運搬できるので、紙幣の取り扱いに関するセキュリティを確保することができる。
【0111】
なお、ICタグにカセット識別情報及びカセット内紙幣情報が記憶されている場合を示したが、本実施例がこれに限定されるものではなく、例えば、ICタグにはカセット識別情報のみを保存して、カセット内紙幣情報については、管理端末180によって管理される態様であってもよい。この場合には、管理端末180により、カセット識別情報と、紙幣処理装置10及び210による識別結果に基づくカセット内紙幣情報とが関連付けて管理される。そして、紙幣処理装置10及び210では、ICタグから読み出したカセット識別情報に基づき、関連付けられたカセット内紙幣情報を管理端末180から受信して利用する。また、紙幣カセット21e及び21fに収納されない紙幣について該紙幣から紙幣束を作成する態様を示したが、本実施例がこれに限定されるものではなく、例えば、紙幣束を作成せず外部集積部121及び122からバラ紙幣の状態で投出される態様であっても構わない。
【0112】
また、紙幣カセット21a〜21fがICタグ等を有さない態様であってもよい。例えば、紙幣カセット21eがICタグを有さず、図5(b)に示したように、紙幣カセット21eを出納員用紙幣処理装置210にセットした時点で、カセット内に保存された紙幣に係る情報を把握できない場合には、紙幣カセット21e内の紙幣の精査処理及び再装填処理を行ってカセット内の紙幣情報を把握すればよい。例えば、精査処理として、紙幣カセット21e内のすべての紙幣を、識別計数部13を経由して外部集積部121及び122に排出した後、これを入金口101から再度入金して紙幣カセット21eに再装填すれば、紙幣カセット21e内の紙幣の金種及び枚数を把握することができる。また、紙幣カセット21e内の全ての紙幣を、識別計数部13を経由して、図示しない一時保留部に収納した後、一時保留部から紙幣カセット21eに再装填することにより、カセット内の紙幣情報を把握するようにしてもよい。
【0113】
なお、精査処理及び再装填処理を行う場合には、再装填時に、カセット収納分紙幣のみを紙幣カセット21eに再装填し、その他の紙幣を結束用紙幣集積部111〜115等へ搬送して、予め設定された量の紙幣のみを紙幣カセット21eに残すようにしてもよい。この場合も、上述した処理と同様、結果的に、予め設定された量の紙幣のみを紙幣カセット21eに残すことができる。
【0114】
次に、テラー用紙幣処理装置10内で行われる紙幣処理について説明する。図6は、テラー用紙幣処理装置10内の紙幣カセット21a〜21eに収納された紙幣を、翌日の銀行業務に必要な運用金と、これを超える余剰金とに区別する紙幣処理の例を示している。
【0115】
図6(a)は、例えば一日の業務を終えた時点での、紙幣処理装置10内の紙幣の収納状況を示している。紙幣カセット21a〜21dには紙幣が金種別に収納され、紙幣カセット21eには複数金種の紙幣が混合された状態で収納されている。
【0116】
2つの紙幣カセット21a及び21cでは、収納されている紙幣枚数が運用金として設定された紙幣枚数を超えており、紙幣カセット21aには運用金紙幣600aと余剰金紙幣601aとが収納され、紙幣カセット21cにも運用金紙幣600cと余剰金紙幣601cとが収納されている。また、2つの紙幣カセット21b及び21dでは、収納されている紙幣枚数が運用金として設定された紙幣枚数に達しておらず、全てが翌日の銀行業務に使用される運用金紙幣600b及び600dである。また、紙幣カセット21eの紙幣は、例えば損券等、運用金として使用されない紙幣であり、余剰金紙幣と同様に一日の業務を終えた時点で回収される紙幣である。
【0117】
テラー用紙幣処理装置10では、営業時間終了後に、テラー用紙幣処理装置10から紙幣を回収するための所定操作が行われると、まず、図6(a)に、破線矢印で示したように紙幣カセット21a及び21cに収納された余剰金紙幣601a及び601cが繰り出され、実線矢印で示したように紙幣カセット21eへ収納される。
【0118】
その結果、図6(b)に示す収納状態となる。こうして、回収される紙幣が1つの紙幣カセット21eにまとめられた後、この紙幣カセット21eがテラー用紙幣処理装置10から取り外されて回収される。このとき、図6(c)に示すように、紙幣カセット21eに代えて、空の紙幣カセット621eがセットされる。
【0119】
続いて、翌日の運用金である運用金紙幣600a〜600dが、各紙幣カセット21a〜21dから繰り出されて、紙幣カセット621eに収納される。全ての運用金紙幣600a〜600dが1つの紙幣カセット621eにまとめられた後、紙幣カセット621eはテラー用紙幣処理装置10から取り外される。
【0120】
その結果、図6(e)に示すように、テラー用紙幣処理装置10内には紙幣が無い状態となる。テラー用紙幣処理装置10から取り外された、運用金紙幣600a〜600dを収納するカセット621eは、例えば警送会社によって銀行から別の場所へ運ばれ、夜間はそこへ保管される。なお、余剰金紙幣601c及び601aを含む回収紙幣が収納された紙幣カセット21eも同様に警送会社によって回収され、例えば中央銀行等へ運ばれて処理される。
【0121】
そして、翌朝、営業を開始する前に、再び警送会社によって、運用金紙幣600a〜600eが収納された紙幣カセット621eが銀行に運び込まれ、図6(f)に示すように、テラー用紙幣処理装置10にセットされる。なお、紙幣カセット21eに収納された紙幣は、余剰金紙幣又は運用金紙幣として利用されない紙幣であるため、銀行に戻されることはなく、翌朝には収納された紙幣が取り出された後の空の紙幣カセット21eが銀行へ戻される。
【0122】
運用金紙幣600a〜600dが収納された紙幣カセット621eがテラー用紙幣処理装置10にセットされ、テラー用紙幣処理装置10で所定操作が行われると、図6(f)に示したように紙幣カセット621eから繰り出された紙幣が、金種別に各紙幣カセット21a〜21dへ収納され、図6(g)に示すように銀行での営業を開始可能な状態となる。例えば、テラー用紙幣処理装置10の電源をオンにすると、紙幣カセット621eから各紙幣カセット21a〜21eへの紙幣の搬送移動が開始される。
【0123】
なお、図6に示す各処理においても、ICタグが利用される。例えば、図6(b)では、紙幣カセット21eに収納された紙幣が、誤って運用金紙幣として取り扱われることがないように、余剰金紙幣を含む回収対象紙幣であることを示す情報がICタグに書き込まれる。
【0124】
また、図6(d)では、紙幣カセット621eのICタグには、収納された紙幣が運用金紙幣であることを示す情報が書き込まれる。そして、図6(f)に示すように、翌朝テラー用紙幣処理装置10に再度セットされたときに、この紙幣カセット621eが前日に取り外された紙幣カセット621eと同一のカセットであること、内部の紙幣が運用金紙幣であることを確認するための判定が行われる。そして、紙幣カセット621eが誤って別の装置にセットされている場合には、紙幣カセット621eから運用金紙幣を繰り出すことなく、装置10の表示部144、端末30A及び30Bへの表示や、音声によってこれを報知する。また、紙幣カセット621eは同一であるが、内部に収納されている紙幣が運用金紙幣でなくなっている場合にも、これを報知する。
【0125】
このように、紙幣カセット21e及び621eを利用することにより、紙幣をまとめて回収することができる。また、紙幣をカセット内に収納した状態で運搬できるので紙幣の取り扱いに関するセキュリティを確保することができる。また、翌日、紙幣カセット621eを元の装置にセットするだけで、運用金紙幣が自動的に搬送され所定の紙幣カセット21a〜21eに収納された状態とすることができるので処理負担が軽減される。また、紙幣カセット621eのICタグを利用することにより、紙幣カセット621eが誤って回収時と異なる装置にセットされたり、運用金紙幣以外の紙幣が誤って運用金として各紙幣カセット21a〜21dに装填されるといった事態を回避することができる。
【0126】
なお、図6では、運用金紙幣600a〜600dを回収するために、空の紙幣カセット621eを利用する例を示したが、本実施例がこれに限定されるものではなく、例えば、テラー用紙幣処理装置10にセットされている紙幣カセット21a〜21dを利用してもよい。この場合の紙幣処理について、図7を参照しながら説明する。
【0127】
図7は、テラー用紙幣処理装置10内の紙幣カセット21a〜21eに収納された紙幣を、翌日の銀行業務に必要な運用金と、これを超える余剰金とに区別する紙幣処理の例を示している。
【0128】
図7(a)は、例えば、一日の業務を終えた時点での紙幣処理装置10内の紙幣の収納状況を示している。紙幣カセット21a〜21dには紙幣が金種別に収納され、紙幣カセット21eは空の状態にある。
【0129】
3つの紙幣カセット21a〜21cには、運用金紙幣700a〜700cと、余剰金紙幣701a〜701cとが収納されている。また、紙幣カセット21dには、運用金紙幣700dのみが収納されている。
【0130】
テラー用紙幣処理装置10では、営業時間終了後に、テラー用紙幣処理装置10から紙幣を回収するための所定操作が行われると、まず、図7(a)に示したように紙幣カセット21a〜21cに収納された余剰金紙幣701a〜701cが繰り出されて、紙幣カセット21eへ収納される。
【0131】
その結果、図7(b)に示す収納状態となる。こうして、回収される紙幣が紙幣カセット21eにまとめられた後、この紙幣カセット21eはテラー用紙幣処理装置10から取り外されて回収される。
【0132】
次に、翌日の運用金紙幣700a〜700dが、各紙幣カセット21a〜21dから繰り出され、紙幣カセット21aへ収納される。全ての運用金紙幣700a〜700dが、1つの紙幣カセット21aにまとめられた後、紙幣カセット21aはテラー用紙幣処理装置10から取り外される。
【0133】
なお、紙幣カセット21a〜21dのうち、どの紙幣カセットに運用金をまとめるかについては、例えば、各紙幣カセット21a〜21dに収納された紙幣枚数に基づいて選択される。具体的には、カセットから紙幣を繰り出して搬送する回数を減らすため、内部に収納されている紙幣枚数が最も多い紙幣カセット21aが選択される。
【0134】
紙幣カセット21aに全ての運用金紙幣700a〜700dがまとめられ、この紙幣カセット21aが回収されると、図7(d)に示すように、テラー用紙幣処理装置10内には紙幣が無い状態となる。テラー用紙幣処理装置10から取り外された紙幣カセット21a及び21eは、図6の場合と同様に管理される。
【0135】
そして、翌朝、営業を開始する前に、運用金紙幣700a〜700dが納められた紙幣カセット21aが再び銀行に運び込まれ、図7(e)に示すように、テラー用紙幣処理装置10にセットされる。
【0136】
運用金紙幣700a〜700dが収納された紙幣カセット21aがテラー用紙幣処理装置10にセットされ、テラー用紙幣処理装置10で所定操作が行われると、紙幣カセット21aから繰り出された運用金紙幣は、金種別に各紙幣カセット21b〜21dへ収納される。その結果、図7(f)に示すように、銀行での営業を開始可能な状態となる。なお、図7(f)には示していないが、余剰金701a〜701cが回収された後、空になった紙幣カセット21eを、再びテラー用紙幣処理装置10にセットして利用することも可能である。
【0137】
このように、金種別の紙幣収納先として利用されている紙幣カセット21a〜21dを回収用カセットとして利用すれば、空の回収用紙幣カセット621eを準備することなく紙幣を回収することができる。
【0138】
なお、図6(b)で余剰金紙幣701a〜701cを紙幣カセット21eに搬送した後、紙幣カセット21eを取り外すことなく、そのまま続けて運用金紙幣700a〜700dを紙幣カセット21aへ搬送してもよい。この場合には、余剰金紙幣と運用金紙幣とを別々の紙幣カセット21e及び21aに収納し終えた後に、これらの紙幣カセット21a及び21eが回収されるので、途中で紙幣カセット21eを取り外す必要がない分だけ処理時間が短縮される。
【0139】
また、図7(c)に示す運用金紙幣700a〜700dが収納された紙幣カセット21aが回収された後、ここに空のカセット821aをセットしてもよい。具体的には、図8(a)に示すように、紙幣カセット21aを取り外した後、その位置へ別の空の紙幣カセット821aを装着する。
【0140】
テラー用紙幣処理装置10で金種別カセットとして利用されていた紙幣カセット21aに運用金紙幣700a〜700dが収納され、その後に取り外されて、その位置に空の紙幣カセット821aが装着されると、この紙幣カセット821aが紙幣カセット21aに収納されていた金種の新たな収納先として設定される。また、取り外された紙幣カセット21aは、運用金紙幣700a〜700dの補充用カセットとして設定される。これらの設定は、管理端末180によって、各カセット21a及び821aのICタグを利用して行われる。
【0141】
図8(b)に示すように、翌朝、警送会社によって運び込まれた紙幣カセット21aがセットされるが、このとき、紙幣カセット21aは、取り外された際とは別の位置へセットされる。しかし、テラー用紙幣処理装置10では、紙幣カセット21aのICタグから、このカセットに運用金700a〜700dが収納されていることが認識されるので、紙幣カセット21aがセットされる位置によらず、紙幣カセット21aから運用金700a〜700dが繰り出されて、金種別に各カセットに収納される。このとき、前日に紙幣カセット21aが取り外された位置にセットされた紙幣カセット821aには、前日に紙幣カセット21aに割り当てられていた金種が割り当てられているので、前日の営業時間終了後に紙幣カセット21aに収納されていた運用金紙幣700aは、紙幣カセット821aに収納される。
【0142】
その結果、図8(c)に示すように、銀行業務を開始可能な状態とすることができる。運用金の各カセットへの収納が完了すると、紙幣カセット21aは、回収紙幣を収納するための回収用紙幣カセットとして利用される。
【0143】
ただし、本実施形態がこれに限定されるものではない。例えば、前日にセットされた空の紙幣カセット821aを回収用カセットとして設定して、翌朝セットした紙幣カセット21aに運用金紙幣700aを保持して、紙幣カセット21aを前日と同様に金種別の紙幣収納部として利用することもできる。また、本実施形態では、余剰金紙幣を回収用カセット21に収納して回収するものとしたが、余剰金紙幣については出金口14から出金してバラ状態のまま回収するようにして、運用金紙幣のみを紙幣カセットを利用して回収するようにしてもよい。
【0144】
各紙幣カセットに収納する紙幣、回収時に余剰金紙幣及び運用金紙幣をまとめるために利用するカセットの指定、新たにセットされた紙幣カセットや翌朝戻された紙幣カセットの利用方法等については、管理端末180によって自由に設定することができる。これにより、利用者の様々な要求に対応することができる。
【0145】
上述してきたように、本実施例によれば、紙幣処理装置210に投入された紙幣を2つに分類して、例えば一方の紙幣を紙幣カセットに収納しながら他方の紙幣を同時に紙幣束とすることができるので、短時間で目的に応じた2種類の紙幣を準備することができる。また、処理後すぐに、紙幣が収納された紙幣カセットを紙幣処理装置210から取り外して運搬し、別の保管場所で保管したり、別の紙幣処理装置10へセットして利用することができるので、紙幣の回収、補充及び運搬に係る作業負担を軽減することができる。
【0146】
また、出納員用紙幣処理装置210に、テラー用紙幣処理装置10から取り外された紙幣カセットをセットして、必要な紙幣のみをカセットから直接繰り出して処理することができるので、紙幣カセットから紙幣を抜き取って出納員用紙幣処理装置210へ投入したり、識別計数された紙幣の一部を再び紙幣カセットに戻す手作業が不要となり、作業負担を軽減することができる。
【0147】
また、テラー用紙幣処理装置10では、余剰金紙幣や運用金紙幣を、各々紙幣カセットにまとめて収納して、カセットごと回収することができるので、紙幣の取り扱いに関するセキュリティを確保しながら、回収して運搬する紙幣カセットの数を必要最小限の個数とすることができる。
【0148】
また、運用金を回収する際に紙幣を収納するカセットの選択や、カセットに収納する紙幣の選択を、設定により自由に変更することができるので、利用者の様々な要求に対応することができる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
以上のように、本発明は、貨幣処理装置にセットしたカセット式収納部を利用して、使用目的に応じて紙幣を仕分けたり、紙幣処理装置からの紙幣の回収や紙幣処理装置への紙幣の補充を行う場合に有用な技術である。
【符号の説明】
【0150】
1 貨幣処理システム
2 ネットワーク
10 テラー用紙幣処理装置
11 操作部
12、101 入金口
13 識別計数部
14 出金口
15 一時保留部
16 搬送路
17 上部ユニット
18 下部ユニット
19 ICタグリーダ
21a〜21f、621e,821a 紙幣カセット
22 結束用紙幣集積部
30A、30B、230 オンライン端末
100 分類集積部
106 リジェクト紙幣集積部
107 表裏反転部
111〜115 結束用紙幣集積部
120 制御部
121、122 外部集積部
130 端数紙幣返却部
140 通信インターフェイス
145 記憶部
160 両替機
170 ATM
200 紙幣結束部
210 出納員用紙幣処理装置
400 カセット取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に対して着脱可能にセットされ貨幣の収納及び繰り出しを行うための貨幣カセットを有する貨幣処理装置と、
貨幣を識別して計数する識別計数部、
貨幣を収納するための貨幣収納部、及び
前記貨幣カセットを着脱可能なカセット取付部を有し、
前記識別計数部による識別結果に基づいて、前記貨幣を、前記カセット取付部にセットされた前記貨幣カセット及び前記貨幣収納部に分類して収納する貨幣分類装置と
を備えたことを特徴とする貨幣処理システム。
【請求項2】
前記貨幣処理装置は、テラーが入出金処理を行う窓口に設置され、前記テラーの操作に応じて貨幣を入出金するテラー用の貨幣処理装置であることを特徴とする請求項1に記載の貨幣処理システム。
【請求項3】
前記貨幣分類装置は、前記カセット取付部にセットされた前記貨幣カセットに収納された貨幣のうち、予め設定された量を残して、それ以外の貨幣を前記貨幣収納部に収納することを特徴とする請求項1又は2に記載の貨幣処理システム。
【請求項4】
前記貨幣分類装置は、前記貨幣処理装置で利用される運用金貨幣として予め設定された量の貨幣を前記貨幣カセットに収納して、その他の貨幣を前記貨幣収納部に収納することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の貨幣処理システム。
【請求項5】
前記貨幣分類装置は、前記貨幣収納部に収納された所定枚数の貨幣を包装して包装貨幣を作成する貨幣包装部をさらに有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の貨幣処処理システム。
【請求項6】
前記貨幣カセットは、前記貨幣カセットに収納された貨幣の在高情報が記憶されたICタグを有し、
前記貨幣分類装置は、前記ICタグに記憶された情報を読み取るICタグリーダをさらに有し、該ICタグリーダによって読み取った前記在高情報に基づいて前記貨幣カセットに収納された貨幣を処理することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の貨幣処理システム。
【請求項7】
前記貨幣処理装置及び前記貨幣分類装置で処理される貨幣を管理する管理端末をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の貨幣処理システム。
【請求項8】
前記貨幣カセットは、該貨幣カセットを識別するためのカセット識別情報が記憶されたICタグを有し、
前記貨幣処理装置及び前記貨幣分類装置は、前記ICタグに記憶された情報を読み取るICタグリーダをさらに有し、該ICタグリーダによって読み取った前記カセット識別情報を前記管理端末に送信すると共に、
前記管理端末は、前記貨幣処理装置及び前記貨幣分類装置から受信した前記貨幣カセットの識別情報に基づいて、前記貨幣カセットに収納された貨幣の在高を管理することを特徴とする請求項7に記載の貨幣処理システム。
【請求項9】
貨幣を識別して計数する識別計数部と、
貨幣を収納するための貨幣収納部と、
筐体に対して着脱可能にセットされ、貨幣の収納及び繰り出しを行うための貨幣カセットと、
予め設定された量の貨幣を前記貨幣収納部から前記貨幣カセットに搬送して収納する制御部と
を備えることを特徴とする貨幣処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、予め設定された量を超えた余剰分の貨幣を、前記貨幣カセットに搬送して回収することを特徴とする請求項9に記載の貨幣処理装置。
【請求項11】
貨幣処理装置に着脱可能な貨幣カセットを貨幣分類装置にセットするカセット取付工程と、
貨幣を識別計数する貨幣識別計数工程と、
前記貨幣識別計数工程による識別結果に基づいて、前記貨幣を、前記貨幣分類装置の貨幣収納部及び前記貨幣カセットに分類して収納する貨幣分類収納工程と
を含んだことを特徴とする貨幣処理方法。
【請求項12】
前記カセット取付工程でセットされた前記貨幣カセットに収納された貨幣のうち、予め設定された量を残して、それ以外の貨幣を繰り出す貨幣繰出工程をさらに含んだことを特徴とする請求項11に記載の貨幣処理方法。
【請求項13】
貨幣処理装置の備える貨幣収納部から、予め設定された量の貨幣を繰り出す貨幣操出工程と、
前記貨幣操出工程で繰り出された貨幣を、前記貨幣処理装置の筐体に着脱可能にセットされた貨幣カセットに収納して回収する貨幣回収工程と
を含んだことを特徴とする貨幣処理方法。
【請求項14】
予め設定された量を超えた余剰分の貨幣を、前記貨幣カセットに搬送して回収する余剰金貨幣回収工程をさらに含んだことを特徴とする請求項13に記載の貨幣処理方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−114561(P2013−114561A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261894(P2011−261894)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】