説明

貨幣処理システム及び貨幣処理方法

【課題】テラーの手持ち貨幣を含む金融機関内の貨幣の在高を管理する。
【解決手段】テラー又は出納員による入金操作に応じて貨幣を識別計数して収納すると共に出金操作に応じて貨幣を出金する貨幣処理装置と、貨幣処理装置を操作するテラー又は出納員を識別する利用者識別情報を入力するための入力装置と、貨幣処理装置及び入力装置と接続され、テラー及び出納員と利用者識別情報との対応、テラーの管理する貨幣の在高及び出納員の管理する貨幣の在高を管理する管理装置とにより貨幣処理システムを構成し、管理装置が入力装置に入力された利用者識別情報からテラーにより貨幣処理装置を利用して入金操作が行われたことを認識して、貨幣処理装置に入金された入金貨幣の金額情報に基づいて出納員の管理する貨幣の在高を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金融機関で利用される貨幣処理システム及び貨幣処理方法に関し、特に、窓口で顧客に対応する窓口係及び後方で貨幣を管理する出納員の取り扱う貨幣を管理するための貨幣処理システム及び貨幣処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行等の金融機関では、貨幣の入出金処理を行うための貨幣処理装置が利用されている。例えば、特許文献1には、入金操作に応じて入金口へ投入された紙幣の金種や真偽を識別して収納部へ収納すると共に、出金操作に応じて指定された紙幣を収納部から出金口へ出金する紙幣処理装置が開示されている。紙幣処理装置は、例えば、銀行窓口で顧客から依頼された入出金の処理を行う窓口係(以下「テラー」と記載する)によって利用される。紙幣処理装置を利用すれば、紙幣の計数や識別が自動的に行われるので、入出金処理に係るテラーの負担を軽減することができる。
【0003】
また、紙幣処理装置の中には2人のテラーによって利用されるものもある。このような装置は、2人のテラーの間に設置され、左右から各テラーが入出金の操作を行えるように、装置の左右に独立した操作部を有している。1台の紙幣処理装置を複数のテラーによって利用できるようにすれば、装置の導入に必要なコストやスペースを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−159075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術によれば、従来行われていた金融機関での運用に対応できない場合がある。例えば、1台の貨幣処理装置が複数のテラーによって利用されると、複数のテラーによって入出金された貨幣が装置内に混在することになる。このため、従来、入出金された貨幣を各テラー別に管理する運用を行っていた金融機関では、装置内の貨幣の取扱が問題となる。このような従来技術の問題点について以下に具体的に説明する。
【0006】
金融機関の中には、貨幣の収納された収納箱を利用して入出金処理を行う銀行が存在する。貨幣収納箱とは所謂手提げ金庫のような箱で、様々な金種の紙幣や硬貨を分類して収納できるようになっている。貨幣収納箱を利用する銀行のテラーは、顧客から入金された貨幣を収納箱に収納し、顧客へ出金する貨幣を収納箱から出金する。
【0007】
各テラーには各人専用の貨幣収納箱が割り当てられる。テラーは自身に割り当てられた貨幣収納箱内の貨幣を手持ち貨幣として管理しながら入出金の処理を行う。これによりテラーの責任の範囲が明確となるので、例えば、入出金処理の内容から算出されたテラーの手持ち貨幣の在高と実際の在高とが一致しない場合でも、このテラーが行った処理を再確認するだけでその原因を調査することができる。
【0008】
ところが、貨幣処理装置が導入され、1台の貨幣処理装置が2人のテラーによって利用されるようになると、貨幣処理装置の在高に問題がある場合に、いずれのテラーによる処理が原因で問題が生じたのかを特定することが困難になる。また、同様に、入出金処理の内容から算出されたテラーの手持ち貨幣の在高と実際の在高とが一致しない場合にも、入出金処理の一部が貨幣処理装置を利用して行われているため、貨幣処理装置で行われた処理や貨幣処理装置を利用する他のテラーの処理を含めた確認作業が必要となり、原因調査に手間がかかる。
【0009】
1人のテラーに1台ずつ専用の貨幣処理装置を割り当てれば、従来の貨幣収納箱の場合と同様に、装置内の在高をテラー毎に管理することができるが、この場合には、装置導入に必要なコストや設置スペース大幅に増加することになる。
【0010】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたもので、テラー管理の貨幣を含む金融機関内の貨幣の在高を管理することができる貨幣処理システム及び貨幣処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、貨幣処理システムであって、テラー又は出納員による入金操作に応じて貨幣を識別計数して収納すると共に、出金操作に応じて貨幣を出金する貨幣処理装置と、前記貨幣処理装置を操作する前記テラー又は前記出納員を識別する利用者識別情報を入力するための入力装置と、前記貨幣処理装置及び前記入力装置と接続されて、前記テラー及び前記出納員と前記利用者識別情報との対応、前記テラーの管理する貨幣の在高及び前記出納員の管理する貨幣の在高を管理する管理装置とを備え、前記管理装置は、前記入力装置に入力された前記利用者識別情報から前記テラーにより前記貨幣処理装置を利用して前記入金操作が行われたことを認識して、前記貨幣処理装置に入金された入金貨幣の金額情報に基づいて、前記出納員の管理する貨幣の在高を更新することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記管理装置は、前記入力装置に入力された前記利用者識別情報から前記テラーにより前記貨幣処理装置を利用して前記出金操作が行われたことを認識して、前記貨幣処理装置から出金された出金貨幣の金額情報に基づいて、前記出納員の管理する貨幣の在高を更新することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記入力装置は、前記出金操作が、顧客への出金処理又は前記テラーの管理する貨幣の補充処理のいずれであるかを示す入力を受け付けて前記管理装置へ送信し、前記管理装置は、前記出金操作が前記補充処理であることを認識した場合には、前記貨幣処理装置から出金された前記出金貨幣の金額情報に基づいて、前記テラーの管理する貨幣の在高を更新することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記貨幣処理装置は、前記テラーが入出金を行う窓口に設置される貨幣処理装置であって、前記管理装置と接続されて、前記出納員による入金操作に応じて貨幣を識別計数して収納すると共に、出金操作に応じて貨幣を出金する出納員用貨幣処理装置をさらに備え、前記管理装置は、前記入力装置に入力された前記利用者識別情報から前記出納員により前記出納員用貨幣処理装置を利用して前記入出金操作が行われたことを認識して、前記出納員用貨幣処理装置に入出金された貨幣の金額情報に基づいて、前記出納員の管理する貨幣の在高を更新することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記テラーが、該テラーの管理する貨幣の一部を前記貨幣処理装置に入金した場合には、前記管理装置は、前記貨幣処理装置に入金された入金貨幣の金額を前記テラーの管理する貨幣の在高から減ずると共に前記出納員の管理する貨幣の在高に加えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、前記入力装置は、前記テラーから、入出金処理に係る金額情報と、前記入出金処理を前記テラーの管理する貨幣を利用して行うことを示す処理方法選択情報との入力を受け付けて前記管理装置へ送信し、前記管理装置は、前記入力装置から受信した前記処理方法選択情報及び前記金額情報に基づいて、前記テラーの管理する貨幣の在高を更新することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記発明において、前記入力装置は、前記テラーから、入出金処理に係る金額情報の入力を受け付けて前記管理装置へ送信し、前記管理装置は、前記入力装置に前記金額情報が入力された後、所定時間内に前記テラーが前記貨幣処理装置を利用しなかった場合には、前記入出金処理が前記テラーの管理する貨幣を利用して行われたと判定して、前記入力装置から受信した前記金額情報に基づいて前記テラーの管理する貨幣の在高を更新することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記発明において、前記管理装置は、前記入力装置に前記金額情報が入力された後、前記テラーが前記貨幣処理装置を利用することなく別の入出金処理に係る金額情報の入力操作を行った場合には、先に入力された前記金額情報に係る前記入出金処理は前記テラーの管理する貨幣を利用して行われたと判定することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上記発明において、前記入力装置は、前記貨幣処理装置と通信接続されるオンライン端末であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、貨幣処理方法であって、貨幣処理装置を利用するテラーを識別するための利用者識別情報が、前記テラーの管理する貨幣の在高及び出納員の管理する貨幣の在高を管理する管理手段に入力される利用者識別情報入力工程と、前記テラーによる入金処理が行われる入金処理工程と、前記管理手段が、前記利用者識別情報入力工程で入力された前記利用者識別情報から前記テラーにより前記貨幣処理装置を利用して前記入金処理工程における前記入金処理が行われたことを認識して、前記貨幣処理装置に入金された入金貨幣の金額情報に基づいて前記出納員の管理する貨幣の在高を更新する入金時在高更新工程とを含んだことを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、上記発明において、前記テラーによる出金処理が行われる出金処理工程と、前記管理手段が、前記利用者識別情報入力工程で入力された前記利用者識別情報から前記テラーにより前記貨幣処理装置を利用して前記出金処理工程における前記出金処理が行われたことを認識して、前記貨幣処理装置から出金された出金貨幣の金額情報に基づいて前記出納員の管理する貨幣の在高を更新する出金時在高更新工程とをさらに含んだことを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、上記発明において、前記出金処理工程における前記出金処理が、顧客への出金処理又は前記テラーの管理する貨幣の補充処理のいずれであるかを示す情報が前記管理手段へ入力される出金情報入力工程をさらに含み、前記出金時在高更新工程は、前記管理手段が、前記出金情報入力工程で入力された情報から前記出金処理が前記補充処理であることを認識して、前記貨幣処理装置から出金された前記出金貨幣の金額情報に基づいて前記テラーの管理する貨幣の在高を更新する工程を含んだことを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、上記発明において、前記管理手段と接続された出納員専用の貨幣処理装置を利用して、前記出納員による入出金処理が行われる入出金工程と、前記管理手段が、前記利用者識別情報入力工程で入力された前記利用者識別情報から前記出納員により前記出納員用貨幣処理装置を利用して前記入出金処理工程における前記入出金処理が行われたことを認識して、前記出納員用貨幣処理装置に入出金された貨幣の金額情報に基づいて前記出納員の管理する貨幣の在高を更新する入出金時在高更新工程とをさらに含んだことを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、上記発明において、前記テラーにより該テラーの管理する貨幣の一部が前記貨幣処理装置に入金されるテラー入金工程と、前記管理手段が、前記テラー入金工程で前記貨幣処理装置に入金された入金貨幣の金額を前記テラーの管理する貨幣の在高から減ずると共に前記出納員の管理する貨幣の在高に加えるテラー入金時在高更新工程とをさらに含んだことを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、上記発明において、前記入金処理又は前記出金処理に係る金額情報が前記管理手段に入力される金額情報入力工程と、前記入金処理又は前記出金処理が前記テラーの管理する貨幣を利用して行われることを示す処理方法選択情報が入力される処理方法選択工程と、前記管理手段が、前記処理方法選択情報及び前記金額情報入力工程で入力された前記金額情報に基づいて、前記テラーの管理する貨幣の在高を更新する工程をさらに含んだことを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、上記発明において、前記入金処理又は前記出金処理に係る金額情報が前記管理手段に入力される金額情報入力工程と、前記管理手段が、前記金額情報入力工程で前記金額情報が入力された後、所定時間内に前記テラーが前記貨幣処理装置を利用しなかった場合に、前記入出金処理が前記テラーの管理する貨幣を利用して行われたと判定して、前記金額情報入力工程で入力された前記金額情報に基づいて前記テラーの管理する貨幣の在高を更新する工程をさらに含んだことを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、上記発明において、前記管理手段が、前記金額情報入力工程で前記金額情報が入力された後、前記テラーが前記貨幣処理装置を利用することなく別の入出金処理に係る金額情報の入力操作を行った場合に、先に入力された前記金額情報に係る前記入出金処理は前記テラーの管理する貨幣を利用して行われたと判定する工程をさらに含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、テラー用貨幣処理装置に収納された貨幣は出納員の管理する貨幣として処理されるので、複数のテラーが1台のテラー用貨幣処理装置を利用する場合でも、各テラーが管理する貨幣の範囲が明確となり、各テラーの行った処理内容と手持ち貨幣の在高とが一致するか否かを確認することができる。
【0029】
また、本発明によれば、出納員は、出納員用の貨幣処理装置を利用して、テラー用貨幣処理装置に対する貨幣の回収や貨幣の補充を行うことができる。また、このときテラー用貨幣処理装置と出納員用貨幣処理装置との間を移動する貨幣を管理端末によって管理することができる。
【0030】
また、本発明によれば、テラーが手持ち貨幣の一部をテラー用貨幣処理装置に入金するだけで、この貨幣を出納員管理下の貨幣とすることができる。テラーは出納員の元へ出向いて貨幣を手渡す必要がなく、出納員もテラーから貨幣を受け取って計数したり、貨幣処理装置へ入金する必要がないので、テラー及び出納員の負担を軽減することができる。
【0031】
また、本発明によれば、テラーが、自身の管理する手持ち貨幣を利用して顧客から受け付けた入出金を処理した場合でも、管理端末によってテラーの手持ち貨幣の在高を管理することができる。また、テラーが端末に入出金金額を入力した後、予め設定された判定時間内にこのテラーがテラー用貨幣処理装置を利用しない場合に手持ち貨幣を利用して処理が行われたと判定される。また、テラーがテラー用貨幣処理装置を利用することなく別処理に係る入出金金額を端末に入力すると、判定時間を経過していない場合でも先に入力された入出金金額が手持ち貨幣を利用して処理されたと判定される。このため、テラー用紙幣処理装置を利用する全テラーについて、手持ち貨幣を利用して処理を行ったか否かを正しく判定することができる。また、テラーは、判定時間の経過を待たずに入出金処理を行うことができるので、各人の処理効率を低下させることがない。
【0032】
また、本発明によれば、貨幣在高を管理する管理手段を貨幣処理装置内や貨幣処理装置に接続された操作用端末内に備えることにより小規模システムを実現することができる。貨幣処理装置、又は貨幣処理及び操作用端末からなる小規模システムとすれば設置面積が限られた場所でも貨幣処理システムを設置して上記効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明に係る貨幣処理システムの構成概略を示すブロック図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るテラー用紙幣処理装置の内部構成概略を説明する図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る出納員用紙幣処理装置の内部構成概略を説明する図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る紙幣処理装置の機能構成概略を示すブロック図である。
【図5】図5は、本実施形態に係るテラー及び出納員によって行われる入出金処理の内容を説明する図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る管理端末内で金融機関内の貨幣の在高を管理するために利用される管理テーブルを説明する図である。
【図7】図7は、本実施形態に係るテラーによって行われる入出金処理と管理テーブル内のデータとの関係を説明する図である。
【図8】図8は、本実施形態に係る出納員によって行われる入出金処理と管理テーブル内のデータとの関係を説明する図である。
【図9】図9は、本実施形態に係る出納員用紙幣処理装置内で行われる紙幣の結束処理と管理テーブル内のデータとの関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る貨幣処理システム及び貨幣処理方法の好適な実施例を詳細に説明する。貨幣処理システムは、銀行等の金融機関で利用されるシステムである。貨幣処理システムは、窓口で顧客から受け付けた入出金処理を行うテラー(窓口係)及び後方で管理業務を行う出納員によって利用される複数の貨幣処理装置やオンライン端末によって構成される。
【0035】
貨幣処理装置には、紙幣のみを処理対象とするものや紙幣に加えて硬貨を処理対象とするものがあるが、以下では、紙幣のみを処理対象とする紙幣処理装置が、銀行に設置された貨幣処理システムで利用される場合を例に説明を行う。また、多数の装置及び端末を接続して貨幣処理システムを構成することができるが、以下では、本実施形態に係る貨幣処理システムの機能及び動作を説明するために必要な構成に留めて説明を行うこととする。
【0036】
図1は、貨幣処理システム1の構成概略を示すブロック図である。貨幣処理システム1は、複数のテラー(テラーA及びテラーB)によって利用される紙幣処理装置10と、各テラーに割り当てられたオンライン端末30A及び30Bと、出納員によって利用される紙幣処理装置210と、出納員用のオンライン端末230とを含んでいる。オンライン端末30A、30B及び230と、紙幣処理装置10及び210とは、ネットワーク2に接続されている。このネットワーク2には、図1に破線で示したように、銀行の行員が利用する端末や装置に加えて、顧客の利用する両替機160やATM170等の装置が接続される場合もある。
【0037】
ネットワーク2には、該ネットワーク2に接続された端末や装置によって行われる入出金処理の内容を管理する管理端末(管理装置)180が接続されている。管理端末180は、例えば、コンピュータ装置によって構成され、銀行内の貨幣管理や銀行外の装置や端末とのデータ通信を行う機能を有している。管理端末180では、銀行内での紙幣の流れを管理するために、紙幣処理装置10及び210に収納された紙幣の管理に加えて、各テラーが利用する紙幣収納箱40A及び40Bと、出納員が利用する紙幣収納箱内240に収納された紙幣の管理も行われる。なお、本実施形態では、管理端末180と、出納員が利用する出納員用オンライン端末230とを別々に示しているが、出納員用オンライン端末230が管理端末180の機能を兼ねる態様であってもよい。また、管理端末180の機能及び動作が紙幣処理装置10及び210によって実現される態様であっても構わない。
【0038】
紙幣収納箱40A及び40Bは、金種別に紙幣を収納するための容器である。テラーA及びBは、各自に割り当てられた紙幣収納箱40A及び40Bを管理している。テラーA及びBは、自分の紙幣収納箱40A及び40B、又はテラー用紙幣処理装置10を利用して入出金処理を行う。テラーAがテラーBの紙幣収納箱40Bにより入出金処理を行うことはなく、テラーBがテラーAの紙幣収納箱40Aを利用して入出金処理を行うこともない。
【0039】
テラー用紙幣処理装置10は、窓口でテラーA及びテラーBの間に設置され、2人のテラーによって利用される。すなわち、テラーAは、自身の管理する紙幣収納箱40A及び紙幣処理装置10を利用して顧客への入出金処理を行い、テラーBも同様に紙幣収納箱40B及びテラー用紙幣処理装置10を利用して入出金処理を行う。
【0040】
各テラー用に設けられたオンライン端末30A及び30Bは、例えば、ネットワーク2に接続されたコンピュータ装置によって構成され、顧客から受け付けた入出金の処理内容を入力するための入力装置として利用される。具体的には、顧客が入出金処理を依頼する際に記入する入金伝票や出金伝票のデータが端末に入力される。入力されるデータには入出金される紙幣に係る金額情報が含まれている。各テラーA及びBの処理内容を区別して管理することができるように、各テラーに専用のオンライン端末30A及び30Bが割り当てられている。オンライン端末30A及び30Bに入力された入金額や出金額を含む情報は、管理端末180に送信され管理される。なお、端末上で各テラーの入力を区別して管理することができれば、1台の端末を複数テラーで利用する態様であってもよい。また、オンライン端末30A及び30Bの機能及び動作が紙幣処理装置10によって実現される態様であっても構わない。
【0041】
出納員用の紙幣処理装置210及び紙幣収納箱240は、出納員が、例えば、テラー用紙幣処理装置10へ補充するための紙幣を出金したり、渉外担当者が銀行外から持ち帰った紙幣を入金したりする場合に利用される。出納員用紙幣収納箱240には、テラー用紙幣収納箱40A及び40Bと同様に、金種別に紙幣を収納できるようになっている。テラー用紙幣処理装置10及び出納員用紙幣処理装置210の詳細については後述する。
【0042】
出納員用のオンライン端末230は、テラー用オンライン端末30A及び30Bと同様にコンピュータ装置によって構成され、出納員によって行われる入出金の処理内容を入力するために利用される。また、出納員用オンライン端末230は、テラー用紙幣処理装置10の管理等にも利用される。オンライン端末230に入力された情報は、管理端末180に送信され管理される。
【0043】
銀行内では、ネットワーク2に接続された両替機160やATM170が利用される場合もある。これらの装置160及び170で行われる入出金処理や両替処理の内容も管理端末180によって管理される。両替機160及びATM170については従来装置を利用することができるため、その構成及び機能に関する詳細な説明は省略する。
【0044】
次に、テラー用紙幣処理装置10及び出納員用紙幣処理装置210の機能及び構成について説明する。
【0045】
図2はテラー用紙幣処理装置10の内部構成概略を示す図であり、図3は出納員用紙幣処理装置210の内部構成概略を示す図である。テラー用紙幣処理装置10は、顧客から受け付けた紙幣の入金処理及び顧客へ払い出す紙幣の出金処理を行うための機能を有する。出納員用紙幣処理装置210は、上部にテラー用紙幣処理装置10の構成を有しており、その下部に所定数の紙幣を結束して紙幣束を作成する紙幣結束部200を有している。
【0046】
図2に示すテラー用紙幣処理装置10は、上部ユニット17と下部ユニット18とを有する。上部ユニット17は、主に、入金された紙幣の識別計数や出金紙幣の投出等を行うユニットである。上部ユニット17には、入金口12と、識別計数部13と、出金口14と、一時保留部15と、これらの各部12〜15を接続する搬送路16とが含まれる。
【0047】
識別計数部13は、搬送路16によって搬送される紙幣を識別して計数する機能を有する。具体的には、識別計数部13は、搬送路16によって搬送される紙幣の金種判定、真偽判定、正損判定、表裏判定あるいは天地判定といった各種の識別処理を行う。また、識別計数部13は、識別した紙幣を金種別に計数する計数処理を行う。なお、真偽判定とは紙幣が本物か偽物かを判定する処理であり、正損判定とは本物の紙幣であると判定された紙幣が状態のよい紙幣(正券)であるか汚れや損傷がある紙幣(損券)であるかを判定する処理である。
【0048】
一時保留部15は、例えばテープ式の収納繰出部によって構成され、搬送される紙幣を一時的に保留した後、保留した紙幣を所定タイミングで繰り出す機能を有する。また、一時保留部15は、搬送路16を搬送される紙幣を一旦取り込んですぐに繰り出すスイッチバック搬送を行って紙幣の表裏を反転させるために利用される。
【0049】
下部ユニット18は前面に施錠可能な開閉扉を備えた金庫になっており、その内部には、金種別に紙幣を収納する複数のスタッカ21a〜21eと、カセット21fとを有している。どのスタッカにどの金種の紙幣を収納するかはユーザによって設定される。カセット21fは下部ユニット18に対して脱着可能な現金カセットである。スタッカ21a〜21e及びカセット21fは、紙幣を収納するとともに収納した紙幣を繰り出せるようになっている。カセット21fは、大量の紙幣を、スタッカ21a〜21eから回収したり、スタッカ21a〜21eへ補充する際に利用される。また、カセット21fは、紙幣詰まりなどが原因でスタッカ21a〜21e内の収納枚数が不確定となった場合に、そのスタッカ21a〜21eの収納枚数を精査するために利用される。
【0050】
入金処理を行うテラーA又はBは、紙幣を入金口12に投入して所定の操作ボタンを操作する。この操作を受けた紙幣処理装置10は、入金口12の紙幣を1枚ずつ繰り出して搬送路16によって識別計数部13へ搬送し、識別計数部13によって識別計数処理を行い、識別結果に応じて対応するスタッカ21a〜21eへ搬送して収納する。このとき、識別計数部13によって偽券等のリジェクト紙幣と判定された紙幣は、スタッカ21a〜21eには収納されず出金口14から排出される。
【0051】
なお、入金口12で受け付けた紙幣を、入金時に一時保留部15を利用して処理する場合もある。一時保留部15を利用する場合には、識別した紙幣が一時保留部15に一時的に保留された状態で、識別計数の結果が紙幣処理装置10の備える表示部やオンライン端末30A又は30Bに表示される。テラーA又はBが、この表示を確認して承認すると、一時保留部15内の入金紙幣が繰り出されて搬送路16によって搬送され、対応するスタッカ21a〜21eへ収納される。
【0052】
出金処理を行うテラーA又はBは、出金する合計金額を指定したり、出金する紙幣の金種と枚数又は金額とを指定した後、所定の操作ボタンを操作する。この操作を受けた紙幣処理装置10は、指定に応じた紙幣をスタッカ21a〜21eから繰り出して搬送路16によって搬送して出金口14から投出する。なお、スタッカ21a〜21eから繰り出された紙幣は、搬送される途中で識別計数部13によって識別され、出金に適さない紙幣であると判定された場合には、一時保留部15やカセット21fへ搬送され、出金口14から出金されないようになっている。出金されなかった紙幣は、その後、元のスタッカ21a〜21eやカセット21fへ戻される。
【0053】
図3に示す出納員用紙幣処理装置210は、テラー用紙幣処理装置10の下部にさらに紙幣結束部200を有している。紙幣結束部200は、金庫部分である下部ユニット18内に納められているが、金庫前面の扉には結束した紙幣束を装置外へ投出するための紙幣束投出口209が設けられている。また、下部ユニット18の背面側にも、紙幣結束部200の位置する部分に施錠可能な開閉扉が設けられており、紙幣結束部200内の紙幣束収納部213に収納された紙幣束を装置外へ取り出せるようになっている。
【0054】
紙幣結束部200は、所定枚数(通常100枚)の紙幣に結束帯を巻回させ帯封を行う機能を有する。入金口12に投入された紙幣やスタッカ21a〜21eに集積された紙幣が、紙幣結束部200内の結束用紙幣集積部22に搬送されて集積される。そして、集積された紙幣枚数が所定枚数に達すると、この紙幣が紙幣把持部201によって挟持され、結束帯を巻回するための所定位置へ搬送される。
【0055】
紙幣結束部200には、紙幣把持部201によって挟持された複数紙幣上の所定位置に結束帯を巻回させるための回転機構202が設けられており、結束帯204を結束帯収納部203から引き出して、その先端をテープ止め205で掴んで紙幣の周囲を回転させることにより紙幣を結束する。紙幣結束部200には、結束した後の結束帯の先端を切断するためのカッタ206と、その先端部を熱接着するためのヒータ207も設けられている。
【0056】
結束後の紙幣束は紙幣把持部201によって紙幣束搬送部208まで搬送される。その後、紙幣束は紙幣束搬送部208によって装置前面に向けて搬送され、紙幣束投出口209から装置外へ投出される。また、紙幣把持部201は、結束後の紙幣束を装置背面に向けて搬送し、紙幣束収納部213に収納することもできる。紙幣束を紙幣束投出口209から投出するか、紙幣束収納部213に収納するかは、出納員によって予め設定されている。
【0057】
紙幣束搬送部208によって搬送される途中には、紙幣束の結束帯上に情報を印字可能な2つのスタンプ220及び221が設けられている。2つのスタンプによって、例えば、紙幣を結束した金融機関情報と、損券等の所定の紙幣であることを示す情報とが結束帯上に押印される。また、結束帯204の繰り出し部には、処理日付、処理時刻、装置番号、担当者番号等の中から選択された情報を印字できる印字部212が設けられている。
【0058】
次に、紙幣処理装置10及び210の機能構成について説明する。図4は、紙幣処理装置10及び210の機能構成を示すブロック図である。なお、同図には、紙幣処理装置10及び210の特徴を説明するために必要な構成要素のみを示している。
【0059】
図4に示すように、テラー用紙幣処理装置10は、通信インターフェイス(通信I/F)110と、操作部111と、識別計数部112と、分岐部113と、表示部114と、制御部120と、記憶部130とを備えている。また、出納員用紙幣処理装置210は、これに加えて、図4に破線で示した紙幣結束部200を有している。
【0060】
通信インターフェイス110は、入出金した紙幣の識別計数結果に関する情報を、オンライン端末30A、30B及び230や、管理端末180へ送信する機能を有する。
【0061】
操作部111は、テラーA又はBや出納員からの各種操作を受け付ける入力装置である。具体的には、操作部111では、動作モードの切替指示や識別計数の対象となる紙幣の選択といった操作を受け付ける。また、操作部111は、装置内への入金や装置内からの出金を指示する操作を受け付ける。
【0062】
操作部111は、左右のテラーA及びBのいずれによって入出金の処理がなされたかを判定できるように設けられている。具体的には、入出金処理を指示するボタンが、テラーA及びBの間に設置された装置上面の左右、又は装置の左右側面に、独立して設けられている。これにより、左右いずれのボタンが操作されたかによって、テラーA及びBのいずれによる操作であるかを認識する。
【0063】
なお、テラーA及びBのいずれによってボタンが操作されたかを認識する方法はこれに限定されず、例えば、入出金処理の操作を行うボタンが1つであっても構わない。この場合には、例えば、中間位置のオフ位置にあるレバーが左右のいずれかへ倒れたときにオンとなる可倒式のボタンを設けて、レバーが倒れた方向から、テラーA及びBのいずれによる操作であるかを認識してもよい。また、通常のプッシュ式のボタンと、該ボタンの左右の明るさを検知可能な光センサを設けて、ボタンが操作されたときの左右のセンサの検知結果を比較することによりボタンに手が伸びた方向を判定して、テラーA及びBのいずれによる操作であるかを認識してもよい。
【0064】
識別計数部112は、図2及び図3に示した識別計数部13であり、搬送路16を搬送される紙幣の金種判定、真偽判定、正損判定等の識別処理および識別した紙幣の計数処理を行う。また、識別計数部112は、紙幣の識別計数処理を行うごとに、識別結果および計数結果を記憶部130へ保存する。
【0065】
分岐部113は、搬送路16の各分岐点に設けられた経路切替部である。搬送路16によって搬送される紙幣の搬送先を、識別計数部13による識別結果に応じて振り分けるために利用される。
【0066】
表示部114は、識別計数部112による紙幣の識別結果や計数結果を表示するためのディスプレイである。
【0067】
制御部120は、動作モードの切り替えや識別された紙幣の振り分けあるいは一時保留部15に一時的に保留された紙幣の繰り出しといった処理を制御する処理部である。制御部120は、識別計数部112から紙幣の識別結果を受け取ると、受け取った識別結果に応じて分岐部113を揺動させることによって紙幣の搬送先を制御する。また、出納員用紙幣処理装置210では、制御部120が、所定枚数の紙幣を結束するために、結束用紙幣集積部22に集積された紙幣枚数の判定と紙幣結束部200の制御とを行う。
【0068】
次に、貨幣処理システム1を利用して行われる各種の入出金処理と貨幣在高の管理方法について説明する。
【0069】
図1に示した破線150は、出納員によって管理される貨幣の範囲を示している。すなわち、出納員は、自身に割り当てられた出納員用紙幣処理装置210及び紙幣収納箱240に加えて、テラーA及びBによって利用されるテラー用紙幣処理装置10の管理も行っている。
【0070】
これに対し、テラーAは紙幣収納箱40Aのみを管理し、テラーBは紙幣収納箱40Bのみを管理する。すなわち、テラーは自身に割り当てられた紙幣収納箱のみを管理している。
【0071】
テラーA及びBは、自身の管理する紙幣収納箱40A及び40Bに加えて、窓口に設置されたテラー用紙幣処理装置10を利用して顧客から受け付けた入出金の処理を行う。しかし、テラー用紙幣処理装置10に収納された紙幣は、出納員の管理する貨幣の在高として管理される点が本実施例の一つの特徴である。
【0072】
まず、貨幣処理システム1を利用して行われる入出金処理の種類について説明する。図5は、貨幣処理システム1によって銀行内で行われる各種入出金処理を説明する図である。
【0073】
まず、テラーA及びBは、テラー用紙幣処理装置10の利用を開始するにあたり、自身に割り当てられたIDナンバー(利用者識別情報)をオンライン端末30A及び30Bに入力する。IDナンバーは、紙幣処理装置10及び210の利用者を識別するための情報である。管理端末180は、IDナンバーを管理権限と対応付けて管理しており、紙幣処理装置10及び210の利用者からIDナンバーを受信すると、この利用者を識別してテラーであるか出納員であるかを判断することができる。入力したIDナンバーが管理端末180によって承認されると、テラーA及びBが、オンライン端末30A及び30Bや、テラー用紙幣処理装置10を利用して入出金処理を行える状態となる。なお、IDナンバー及び管理権限の対応については、管理端末180によって管理される態様に限定されず、これに代えて又はこれに加えて、オンライン端末30A及び30Bやテラー用紙幣処理装置10によって管理される態様であっても構わない。
【0074】
テラーA及びBは、顧客から入金又は出金の依頼を受け付けると、入出金される紙幣の金種や金額に関する情報をオンライン端末30A及び30Bに入力すると共に、この処理を紙幣収納箱40A及び40Bを利用して行うか、又はテラー用紙幣処理装置10を利用して行うかを選択して端末30A及び30Bに入力する。
【0075】
入出金処理を紙幣収納箱40A及び40Bを利用して入出金処理を行うことを選択したテラーA及びBは、入金処理である場合には入金紙幣を自身の管理する紙幣収納箱40A及び40Bに収納し、出金処理である場合には出金紙幣を自身の管理する紙幣収納箱40A及び40Bから取り出して処理を完了する。
【0076】
一方、テラー用紙幣処理装置10を利用して入出金処理を行うことを選択したテラーA及びBは、テラー用紙幣処理装置10を操作して入出金処理を完了する。
【0077】
オンライン端末30A及び30Bに入力された入出金に係る金額情報を含むデータや、テラー用紙幣処理装置10で行われた入出金紙幣に係る金額情報を含む識別計数結果等のデータは、管理端末180へ送信される。管理端末180では、受信したデータから、入出金処理に係る金額情報及び入出金処理を行うテラーを認識する。これに加えて、テラー用紙幣処理装置10の利用が選択された場合には、利用されたテラー用紙幣処理装置10、このテラー用紙幣処理装置10を操作したテラー及び入出金された紙幣の金種や金額を認識する。
【0078】
管理端末180では、オンライン端末30A及び30Bから受信したデータに基づいて、入出金処理が紙幣収納箱40A及び40Bを利用して行われたことを認識すると、受信した入出金金額に応じてテラーの管理する貨幣の在高を更新する。
【0079】
一方、入出金処理がテラー用紙幣処理装置10を利用して行われた場合には、これを認識した管理端末180は、テラー用紙幣処理装置10から受信したデータに基づいて出納員の管理する貨幣の在高を更新する。すなわち、テラー用紙幣処理装置10内の紙幣は出納員が管理するものとされ、テラーが入金した紙幣であっても、テラー用紙幣処理装置10へ入金されたことをもって出納員管理の紙幣として扱う。このとき、オンライン端末30A及び30Bに入力された入出金データと、テラー用紙幣処理装置10によって識別計数された入出金紙幣に係るデータとを比較照合し、両者が一致しない場合には、オンライン端末30A及び30Bや紙幣処理装置10によって、利用者にこれを報知することができる。この場合、エラーを修正するための所定の対応が行われる。例えば、オンライン端末30A及び30Bへ入力したデータを再確認して必要に応じてデータの修正を行ったり、テラー用紙幣処理装置10の投入口13に紙幣が残っていないかを確認して紙幣が残っていればこれを装置へ投入する。
【0080】
なお、入出金に係るデータ入力のタイミングや、貨幣在高の更新に利用されるデータが上述した態様に限定されるものではない。例えば、データ入力が、入出金処理を行った後に行われる態様であってもよい。また、入出金された紙幣の金種や金額に関する情報をオンライン端末30A及び30Bに入力して、テラー用紙幣処理装置10による識別計数結果を利用することなく、端末30A及び30Bに入力された情報を利用して貨幣在高を更新する態様であっても構わない。
【0081】
入出金処理が紙幣収納箱40A及び40Bを利用して行われたのか又はテラー用紙幣処理装置10を利用して行われたのかを認識する方法については、管理端末180がテラーA及びBによる選択操作を認識して行う態様に限定されるものではない。例えば、管理端末180が、紙幣収納箱40A及び40Bの利用を自動的に判定する態様であっても構わない。以下では、管理端末180が、紙幣収納箱40A及び40Bの利用を判定する処理の詳細について説明する。
【0082】
顧客から入金又は出金の依頼を受け付けたテラーA及びBは、入出金される紙幣の金種や金額に関するデータをオンライン端末30A及び30Bに入力する。そして、テラーA及びBは、自身の管理する紙幣収納箱40A及び40Bを利用して、依頼された入出金処理301A及び301Bを行う。また、テラーA及びBは、テラー用紙幣処理装置10を利用して依頼された入出金処理302A及び302Bを行う場合もある。
【0083】
テラー用オンライン端末30A及び30Bに入力された入出金に係る金額情報を含むデータは、管理端末180へ送信される。例えば、テラーAが、入金金額等、入金処理を行うことを示すデータをオンライン端末30Aに入力すると、このデータが管理端末180へ送信される。その後、テラーAがテラー用紙幣処理装置10を利用して入金処理302Aを行うと、入金紙幣の金額情報を含む識別計数結果が管理端末180へ送信される。
【0084】
管理端末180は、オンライン端末30A及びテラー用紙幣処理装置10から受信したデータに基づいて、テラーAによって紙幣処理装置10を利用した入金処理302Aが行われたことを認識する。
【0085】
また、管理端末180は、テラーAによってオンライン端末30Aに入力された入金金額と、テラー用紙幣処理装置10によって識別計数された金額とを比較する。そして、両者が一致しない場合には、オンライン端末30A及び紙幣処理装置10によって、これをエラーとして報知する。この場合、テラーAは、エラーを修正するための所定の対応を行う。例えば、オンライン端末30Aへ入力したデータを再確認して必要に応じてデータの修正を行ったり、紙幣処理装置10の投入口13に紙幣が残っていないかを確認して紙幣が残っていればこれを装置へ投入する。
【0086】
こうして、オンライン端末30Aで入力された入金金額と、テラー用紙幣処理装置10によって識別計数された金額とが一致すると、管理端末180は、オンライン端末30A及び紙幣処理装置10によって、エラーが無いことを報知する。そして、入金金額に基づいてテラー用紙幣処理装置10内の在高を更新する。
【0087】
これに対し、管理端末180は、テラーAの利用するオンライン端末30Aから入金処理を行うことを示すデータを受信しながら、その後、所定時間内にテラーAによって紙幣処理装置10を利用した入金処理302Aが行われなかった場合には、テラーAによって紙幣収納箱40Aを利用した入金処理301Aが行われたことを認識する。そして、入金金額に基づいてテラーの手持ち貨幣の在高を更新する。
【0088】
管理端末180は、テラーAによってオンライン端末30Aに入力された入出金金額を受信した後、予め設定された判定時間内に、このテラーAによって入出金が行われたテラー用紙幣処理装置10から識別計数結果を受信した場合に、入出金処理がテラー用紙幣処理装置10を利用して行われたと判定する。そして、判定時間内にテラーAの操作による識別計数結果を受信できなかった場合には、入出金処理が紙幣収納箱40Aを利用して行われたと判定する。
【0089】
また、管理端末180は、これに加えて、テラーAによってオンライン端末30Aに入力された入出金金額を受信した後、このテラーAの操作による識別計数結果を受信しないまま、さらにテラーAによって入力された別の処理に係る入出金金額をオンライン端末30Aから受信した場合には、先に受信した入出金額に関する処理が紙幣収納箱40Aを利用してなされたと判定する。
【0090】
例えば、テラーBがオンライン端末30Bへのデータ入力から紙幣処理装置10での入出金処理を行うまでに30秒の時間が必要であるとする。この場合、テラーAが同じ処理を10秒で行えるとしても、判定時間を例えば15秒に設定すると、テラーBは15秒の間に紙幣処理装置10による入出金処理を行うことができず、テラーBによる入出金処理が紙幣処理装置10を利用して行われたか否かを正確に判定できない可能性がある。このため、判定時間はテラーBに合わせて例えば35秒に設定され、管理端末180は、その間、テラーA及びBによって紙幣処理装置10が利用されるか否かを監視する。なお、判定時間は、管理端末180上で、紙幣処理装置毎に任意の値に設定することができる。
【0091】
テラーAによるオンライン端末30Aへのデータ入力が行われた場合も、判定時間として設定された35秒間は、テラーAによって紙幣処理装置10が行われるか否かが監視される。監視を開始してすぐにテラーAによって紙幣処理装置10が利用されると、管理端末180は、テラーAによる処理が紙幣処理装置10を利用して行われたと判定して監視を終了する。35秒の間にテラーAによって紙幣処理装置10が利用されない場合には、管理端末180は、テラーAによる処理が紙幣収納箱40Aを利用して行われたと判定する。
【0092】
これに加えて、監視を開始した後、テラーAが紙幣収納箱40Aを利用して先の入出金処理を完了し、さらに次の入出金処理を行うための入出金金額をオンライン端末30Aに入力した場合にも、管理端末180は、先の処理が紙幣収納箱40Aを利用して行われたと判定して、先の監視を完了する。そして、新たに入力された入出金金額に係る35秒間の監視を開始する。
【0093】
管理端末180がこのように動作することで、テラーA及びテラーBの処理時間に差がある場合でも、入出金処理が紙幣収納箱40A及び40Bを利用してなされたのか、或いは紙幣処理装置10を利用してなされたのかを正しく判定することができる。また、判定時間中も次の処理に係るデータを受け付けることができるので、テラーの処理効率を低下させることなく判定処理を行うことができる。
【0094】
図5に示したように、テラーA及びBは、自身の管理する紙幣収納箱40A及び40Bに収納された紙幣をテラー用紙幣処理装置10へ入金する入金処理303A及び303Bを行う。
【0095】
例えば、テラーAの紙幣収納箱40Aが満杯になった場合に、一部の紙幣を紙幣収納箱40Aから紙幣処理装置10へ入金したり、業務時間が終了した場合に紙幣収納箱40A及び40Bの全ての紙幣を紙幣処理装置10へ入金する。テラーA及びBは、オンライン端末30A及び30B、又は操作部111により、紙幣収納箱40A及び40Bからの入金であることを示す所定の操作を行ってから入金処理303A及び303Bを行う。
【0096】
そして、紙幣収納箱40A又は40Bから入金されたことを示す情報が、オンライン端末30A及び30B、又は紙幣処理装置10から、管理端末180に送信される。また、入金紙幣の金額情報を含む識別計数結果が、紙幣処理装置10から管理端末180へ送信される。
【0097】
テラー用紙幣処理装置10は出納員の管理下にあるため、入金金額に基づいて、テラーの手持ち貨幣の在高と、テラー用紙幣処理装置10の在高とが更新される。これらの情報は、出納員用のオンライン端末230に送信され、出納員へ通知される。出納員は、オンライン端末230上で、紙幣収納箱40A又は40Bからテラー用紙幣処理装置10に紙幣を入金する処理303A及び303Bが行われたことを認識する。
【0098】
図5に示したように、出納員は、テラー用紙幣処理装置10から紙幣を回収して出納員用の紙幣処理装置210又は紙幣収納箱240へ収納する回収処理304を行う。例えば、テラー用紙幣処理装置10で、千円札の収納に割り当てられたスタッカ21aが満杯に近い状態になると、紙幣処理装置10からこれを通知する信号が出納員用オンライン端末230へ送信される。出納員用オンライン端末230では、信号を受信すると、千円札の回収が必要であることを示す情報を端末上に表示すると共に、音を発して出納員へこれを報知する。出納員は、オンライン端末230によって千円札の回収が必要であることを認識すると、テラー用紙幣処理装置10が設置された窓口へ向かい、テラー用紙幣処理装置10から千円札を回収する。そして、回収した紙幣を、出納員用紙幣処理装置210又は紙幣収納箱240へ収納する。これにより、テラー用紙幣処理装置10と、出納員用紙幣処理装置210又は出納員用紙幣収納箱240との在高が更新される。
【0099】
図5に示したように、出納員は、出納員用の紙幣処理装置210又は紙幣収納箱240からテラー用紙幣処理装置10へ紙幣を補充する補充処理305を行う。回収処理の場合と同様に、テラー用紙幣処理装置10で、ある金種の紙幣が不足すると、これが出納員へ報知される。出納員は、報知された情報に基づいて必要な紙幣の金種及び枚数を認識し、これを出納員用の紙幣処理装置210又は紙幣収納箱240から出金して、テラー用紙幣処理装置10へ補充する。
【0100】
出納員によって行われる回収や補充の処理も、テラーA及びBによる入出金処理の場合と同様に判定される。
【0101】
具体的には、出納員は、出納員用紙幣処理装置210の利用を開始するにあたり、自身に割り当てられたIDナンバー等の識別情報をオンライン端末230に入力する。入力したIDナンバーが管理端末180によって承認されると、出納員が、オンライン端末230や出納員用紙幣処理装置210を利用して回収や補充に係る入出金処理を行える状態となる。
【0102】
出納員は、回収や補充を行う際に、入出金する紙幣の金種や金額に関する情報をオンライン端末230に入力すると共に、この処理を紙幣収納箱240を利用して行うか、又は出納員用紙幣処理装置210を利用して行うかを選択して端末230に入力する。
【0103】
出納員は、紙幣収納箱240を利用することを選択した場合には、自身の管理する紙幣収納箱240Aから紙幣の入出金を行う。一方、出納員用紙幣処理装置210を選択した場合には、装置210を利用して紙幣の入出金を行う。
【0104】
オンライン端末230で入力されたデータや、出納員用紙幣処理装置210で行われた入出金紙幣に係る識別計数結果等のデータは、管理端末180へ送信される。
【0105】
テラーによる入出金処理の場合と同様に、管理端末180では、オンライン端末230から受信したデータに基づいて、入出金処理が紙幣収納箱240を利用して行われたことを認識すると、受信した金額情報に応じて出納員の管理する貨幣の在高を更新する。
【0106】
一方、入出金処理が出納員用紙幣処理装置210を利用して行われた場合には、出納員用紙幣処理装置210から受信した金額情報に基づいて出納員の管理する貨幣の在高を更新する。このとき、オンライン端末230に入力された入出金データと、出納員用紙幣処理装置210によって識別計数された入出金紙幣に係るデータとを比較照合し、一致しない場合には、オンライン端末230や紙幣処理装置210によって、これを出納員に報知することができる。
【0107】
なお、テラーによる入出金処理の場合と同様に、入出金に係るデータ入力が入出金処理を行った後に行われてもよいし、出納員用紙幣処理装置210による識別計数結果を利用することなく、オンライン端末230に入力された入出金紙幣の金種や金額に関する情報を利用して貨幣在高を更新する態様であっても構わない。
【0108】
また、出納員用紙幣収納箱240の利用を自動的に認識することもできる。具体的には、テラーA及びBによる入出金処理の場合と同様に、出納員が入出金を行うことを示す情報と、その後にテラー用紙幣処理装置10及び出納員用紙幣処理装置210で行われた処理に係る情報とに基づいて、出納員による入出金が出納員用紙幣処理装置210又は出納員用紙幣収納箱240のいずれを利用して行われたかを判定することができる。
【0109】
例えば、オンライン端末230上で、テラー用紙幣処理装置10への紙幣の補充が必要であることが報知され、出納員がこれを確認したことを示す操作を行った後、予め設定された判定時間内に、出納員用紙幣処理装置210から紙幣が出金されずにテラー用紙幣処理装置10への紙幣の補充が行われた場合には、この補充は出納員用紙幣収納箱240を利用して行われたと判定される。また、テラー用紙幣処理装置10から回収された紙幣が、所定の判定時間内に出納員用紙幣処理装置210に入金されなかった場合には、これが出納員用紙幣収納箱240に収納されたと判定する。
【0110】
なお、テラー用紙幣処理装置10からの紙幣の回収や装置への紙幣の補充が必要である場合に、これが紙幣処理装置10によって認識され通知される態様に限らず、紙幣処理装置10内の紙幣の在高を管理する管理端末180によって行われてもよい。紙幣の回収や補充が必要であると判定するための条件は、出納員によって金種別に設定される。テラー用紙幣処理装置10に収納された紙幣枚数が、出納員によって上限枚数として設定された所定枚数に達すると回収が必要であると判定され、下限枚数として設定された所定枚数になると補充が必要であると判定される。
【0111】
このように、窓口で顧客からの入出金処理を受け付けるテラーA及びBは、手元にある紙幣収納箱40A及び40Bと、隣に設置されたテラー用紙幣処理装置10とを利用して入出金処理を完結することができる。従来、紙幣収納箱40A及び40Bのみを利用していた金融機関に、新たに紙幣処理装置10が導入された場合でも、テラーA及びBは、従来の運用通り紙幣収納箱40A及び40Bを利用した入出金処理を行いながら、紙幣処理装置10を利用して従来と同様の処理や手続きを行うことができる。例えば、装置の利用に慣れるまでの間は、入出金処理に係る業務が滞ることのないよう、使い慣れた紙幣収納箱40A及び40Bと、紙幣処理装置10とを併用することができる。
【0112】
また、紙幣収納箱40A及び40B内に収納された紙幣が増えた場合に、テラーA及びBは、紙幣収納箱40A及び40Bから取り出した紙幣をテラー用紙幣処理装置10へ入金するだけで継続して業務を行うことができる。従来、テラーA及びBが後方の出納員の所へ出向いたり、出納員がテラーA及びBの所へ出向いて、テラーA及びBから出納員へ紙幣を手渡していた金融機関に、新たに紙幣処理装置10が導入された場合でも、従来の運用通りに処理を行うことができる。
【0113】
具体的には、テラー用紙幣処理装置10に入金された紙幣は出納員の管理下となることに加えて、テラーA及びBから入金された紙幣の金種や金額をオンライン端末230上で認識することができるので、出納員は、テラーA及びBから紙幣を手渡されていた従来の運用と同様の処理や手続きを行うことができる。また、テラーA又はBから入金された紙幣は紙幣処理装置10によって識別計数されるので、出納員は従来のように受け取った紙幣を計数する必要がなく、出納員の処理負担も軽減されることになる。
【0114】
次に、図5に示したように紙幣の入出金、回収及び補充の処理が行われた場合に、管理端末180で行われる貨幣の管理について説明する。
【0115】
図6は、管理端末180で、金融機関内の貨幣の在高を管理するために利用される管理テーブルの例を示す図である。このように、管理端末180では、貨幣が収納される全ての紙幣処理装置及び紙幣収納箱の紙幣を管理している。
【0116】
具体的には、窓口でテラーA及びBによって利用されるテラー用紙幣処理装置10と、出納員によって利用され出納員用紙幣処理装置210と、各テラーA及びBによって利用される紙幣収納箱40A及び40Bと、出納員によって利用される紙幣収納箱240とに収納される紙幣が区別して管理されている。
【0117】
また、管理端末180は、銀行内で運用される行内運用分の紙幣と、業務終了後に余剰金として処理される余剰分の紙幣とを区別して管理している。テラー用紙幣処理装置10及び出納員用紙幣処理装置210内の紙幣については、識別計数結果に基づいて金種別の紙幣枚数(又は金額)と合計金額とが管理される。これに対し、紙幣収納箱40A、40B及び240内の紙幣については入出金された金額のみが管理される。
【0118】
なお、両替機160及びATM170が利用されている場合には、これらの装置内の紙幣も管理端末180によって管理されるが、これについては説明を省略する。また、紙幣収納箱40A、40B及び240を利用して入出金される紙幣の金種や金額が、オンライン端末30A、30B及び230に入力される場合には、紙幣収納箱40A、40B及び240についても、紙幣処理装置10及び210と同様に、金額に加えて、金種別の紙幣枚数又は金額が管理されるが、ここでは金額のみを管理する場合について説明する。
【0119】
図7は、テラーA又はBが入出金処理を行った場合に管理テーブルが更新される例を説明する図である。
【0120】
図7(a)は、テラーBが紙幣収納箱40Bを利用して、顧客から受け付けた出金処理(図5の301B)を行った場合の例である。この場合には、テラーBによってオンライン端末30Bに入力された出金金額が管理テーブルに反映される。例えば、テラーBによって、オンライン端末30Bから、3万円の出金処理が行われることを示すデータが入力され、管理端末180がこの出金金額が紙幣収納箱40Bを利用して処理されたと判定すると、図7(a)に示すように、この3万円がテラーBの紙幣収納箱の在高データから減額される。同様に、テラーBが顧客から入金処理を受け付けて、これが紙幣収納箱40Bを利用して処理されたと判定された場合には、入金金額分が管理テーブルのテラーBの在高データに加算される。
【0121】
図7(b)は、テラーBが紙幣処理装置10を利用して、顧客から受け付けた入金処理(図5の302B)を行った場合の例である。この場合には、紙幣処理装置10に入金された金額が管理テーブルに反映される。例えば、テラーBによって入金された紙幣が、紙幣処理装置10によって30万円分の一万円札であると識別されると、図7(b)に示すように、管理テーブル内のテラー用紙幣処理装置10の在高データのうち一万円札の枚数と合計金額が更新される。同様に、テラー用紙幣処理装置10を利用して出金処理が行われた場合には、識別計数結果に基づく金種の紙幣枚数と合計金額とが更新される。なお、テラー用紙幣処理装置10の利用者はテラーA及びBであるが、収納される貨幣の管理者は出納員である。
【0122】
図7(c)は、テラーAが、紙幣収納箱40Aから紙幣を出金してテラー用紙幣処理装置10に入金する処理(図5の303A)を行った場合の例である。この場合には、紙幣処理装置10に入金された金額が管理テーブルに反映される。例えば、テラーAによって入金された紙幣が、紙幣処理装置10によって5万円分の千円札であると識別されると、図7(c)に示すように、管理テーブル内のテラー用紙幣処理装置10の在高データのうち千円札の枚数と合計金額とが更新される。また、これと同時に、テラーA用紙幣収納箱の在高データが、紙幣処理装置10へ移した金額分だけ減額される。
【0123】
次に、図8は、出納員が、テラー用紙幣処理装置10からの紙幣の回収及び装置10への紙幣の補充処理を行った場合の管理テーブルの変化の例を説明する図である。
【0124】
図8(a)は、出納員が、テラー用紙幣処理装置10から紙幣を回収して、これを出納員用紙幣処理装置210へ入金した場合の例である。この場合には、テラー用紙幣処理装置10から出金された金額が管理テーブルに反映される。また、出納員用紙幣処理装置210に入金された金額が管理テーブルに反映される。例えば、出納員がテラー用紙幣処理装置10から100枚の千円札を回収した場合には、図8(a)に示すように、これが管理テーブルの千円札の枚数と合計金額に反映され、テラー用紙幣処理装置10の在高データが減じられると共に、出納員用紙幣処理装置210の在高データが増えることになる。
【0125】
図8(b)は、出納員が、出納員用紙幣処理装置210から紙幣を出金してテラー用紙幣処理装置10へ補充した場合の例である。この場合には、出納員用紙幣処理装置210から出金された金額が管理テーブルに反映される。また、テラー用紙幣処理装置10に入金された金額が管理テーブルに反映される。例えば、出納員がテラー用紙幣処理装置10に250枚の千円札を補充した場合には、図8(b)に示すように、これが管理テーブルの千円札の枚数と合計金額に反映され、テラー用紙幣処理装置10の在高データが増えて、出納員用紙幣処理装置210の在高データが減じられることになる。
【0126】
管理テーブルのデータは、実際に識別計数された結果に基づいて更新されることが望ましい。具体的には、テラー用紙幣処理装置10に関する在高データはテラー用紙幣処理装置10で識別計数された結果に基づいて更新され、出納員用紙幣処理装置210に関する在高データは出納員用紙幣処理装置210で識別計数された結果に基づいて更新されることが望ましい。また、紙幣収納箱40A、40B及び240の在高データについても、紙幣収納箱40A、40B及び240から入出金される紙幣が、その前後にテラー用紙幣処理装置10及び出納員用紙幣処理装置210のいずれか一方又は両方で処理される場合には、識別計数処理の結果に基づいて更新されることが望ましい。
【0127】
次に、図9は、余剰分の紙幣の処理について説明する図である。管理端末180では、銀行での業務に必要な行内運用金が予め金種毎に設定されており、これを超える紙幣が銀行内にある場合には余剰金として管理される。例えば、顧客から受け付けた入出金の処理を続ける間に、千円札に余剰金が生じた場合には、出納員用紙幣処理装置210内に収納されている千円札の一部が余剰分として管理される。
【0128】
具体的には、図9(a)に示すように、管理テーブル内で、余剰分とされた千円札60枚分が、出納員用紙幣処理装置210の行内運用分の紙幣枚数から減算され、余剰分の紙幣枚数に加算される。これに応じて行内運用分の合計金額が減額され、余剰分の合計金額が増額される。
【0129】
図9(a)に示すように、既に余剰分の千円札が60枚であった場合には、新たに加えられた分と合わせた余剰分の紙幣枚数が120枚となる。出納員用紙幣処理装置210では、余剰分の紙幣枚数が予め紙幣束の枚数として設定された100枚を超えると、余剰分の紙幣から紙幣束が作成される。
【0130】
具体的には、図4に示した制御部120が、余剰分紙幣の枚数が100枚に達したことを認識すると、図3に示したスタッカ21a〜21eに収納された余剰分の千円札紙幣を繰り出して、搬送路16によって結束用紙幣集積部22へ搬送する。そして、結束用紙幣集積部22に集積された紙幣の枚数が100枚に達すると、紙幣結束部200によって結束され紙幣束が作成される。作成された紙幣束は、予め出納員によって設定された設定に基づいて、装置前面の紙幣束放出口209から排出されるか、或いは装置背面の紙幣束収納部213へ収納される。作成された紙幣束は、出納員によって管理される。
【0131】
なお、本実施形態では、管理端末180と、オンライン端末30A、30B及び230と、紙幣処理装置10及び210との機能及び動作について説明したが、貨幣処理システム1としての上記機能及び動作を実現することができれば、各機能及び動作が上述した装置とは別の装置によって実現されても構わない。例えば、データ入力装置として動作するオンライン端30A、30B及び230の機能が、紙幣処理装置10及び210によって該装置の備えるデータ入力手段として実現される態様であってもよい。同様に、管理端末180の機能についても、これが紙幣処理装置10及び210によって該装置の備える管理手段として実現される態様であってもよい。また、管理端末180の機能については、これがオンライン端末30A、30B及び230によって実現される態様であっても構わない。
【0132】
例えば、テラー用紙幣処理装置10、又はテラー用紙幣処理装置10とこれに接続された操作用端末によって貨幣処理システム1を実現すれば、貨幣処理システム1を小規模システムとすることができるので、銀行の支店等、設置面積が限られた場所であっても、貨幣処理システムを設置して上記効果を得ることができる。
【0133】
上述してきたように、本実施例によれば、テラーA及びBは、紙幣収納箱40A及び40Bと、テラー用紙幣処理装置10との両方を利用して、顧客から受け付けた入出金の処理を行うことができる。これにより、従来、紙幣収納箱40A及び40Bを利用していた金融機関では、その運用を継続しながら、新たにテラー用紙幣処理装置10を利用した処理を行うことができる。
【0134】
また、紙幣処理装置10は紙幣収納箱40A及び40Bに比べて大量の紙幣を収納することができるので、紙幣処理装置10を導入することによって、テラーA及びBによって取り扱い可能な紙幣を大幅に増やすことが可能となる。また、紙幣処理装置10を利用すれば、紙幣の識別計数が高速に行われる上に紙幣の金種識別や枚数計数に関する人為的ミスが発生しないので、正確かつ迅速に処理を行うことが可能となる。
【0135】
また、テラーA及びBの利用する紙幣収納箱40A及び40B内の紙幣の在高が、管理端末180によって管理されるので、紙幣収納箱40A及び40B内の紙幣の在高を確認することにより、テラーA及びBによる入出金処理が正しく行われたか否かを容易に確認することができる。
【0136】
また、1台のテラー用紙幣処理装置10が複数のテラーA及びBによって利用される場合でも、紙幣処理装置10を利用して行われた入出金処理時に、その処理に問題がないことが確認されるので、テラーA及びBによる紙幣処理装置10を利用した入出金処理を厳正に管理することができる。これにより、装置内の紙幣を出納員の管理下におき、テラーの管理する範囲を紙幣収納箱40A及び40Bに限定することができる。
【0137】
また、テラーA及びBは、紙幣収納箱40A及び40Bが満杯に近い状態となった場合でも、紙幣収納箱40A及び40Bの紙幣をテラー用紙幣処理装置10に入金して、紙幣収納箱40A及び40Bを利用した処理を継続することができる。テラーA及びBが出納員の所へ出向いたり、出納員がテラーA及びBの所へ出向いて、出納員がテラーから紙幣収納箱40A及び40Bの紙幣を回収する必要がないので、テラー及び出納員の貨幣回収に係る処理負担が軽減される。また、紙幣収納箱40A及び40Bからテラー用紙幣処理装置10へ移された紙幣は、装置内で識別計数され、管理端末180によって管理されるので、紙幣計数に係る出納員の処理負担も軽減される。また、テラー用紙幣処理装置10は出納員の管理下にあるので、出納員は、テラーA及びBから紙幣収納箱40A及び40Bの紙幣を受け取って処理していた従来と同様の運用を継続することができる。
【0138】
このように、従来、テラーA及びBが紙幣収納箱40A及び40Bを利用して入出金処理を行っていた金融機関に新たに紙幣処理装置10及び210を導入した場合でも、従来の運用を大幅に変更することなく紙幣収納箱40A及び40Bと紙幣処理装置10を併用することができる。また、テラーA及びBと出納員の双方の処理負担を軽減しながら、行内の貨幣を正確に管理することができる。
【産業上の利用可能性】
【0139】
以上のように、本発明は、紙幣収納箱を利用して入出金処理を行っていた金融機関で紙幣処理装置を利用する場合に有用な技術である。
【符号の説明】
【0140】
1 貨幣処理システム
2 ネットワーク
10 テラー用紙幣処理装置
30A、30B テラー用オンライン端末
40A、40B テラー用紙幣収納箱
110 通信インターフェイス
111 操作部
112 識別計数部
120 制御部
180 管理端末
200 紙幣結束部
209 紙幣束投出口
210 出納員用紙幣処理装置
213 紙幣束収納部
230 出納員用オンライン端末
240 出納員用紙幣収納箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テラー又は出納員による入金操作に応じて貨幣を識別計数して収納すると共に、出金操作に応じて貨幣を出金する貨幣処理装置と、
前記貨幣処理装置を操作する前記テラー又は前記出納員を識別する利用者識別情報を入力するための入力装置と、
前記貨幣処理装置及び前記入力装置と接続されて、前記テラー及び前記出納員と前記利用者識別情報との対応、前記テラーの管理する貨幣の在高及び前記出納員の管理する貨幣の在高を管理する管理装置と
を備え、
前記管理装置は、前記入力装置に入力された前記利用者識別情報から前記テラーにより前記貨幣処理装置を利用して前記入金操作が行われたことを認識して、前記貨幣処理装置に入金された入金貨幣の金額情報に基づいて、前記出納員の管理する貨幣の在高を更新することを特徴とする貨幣処理システム。
【請求項2】
前記管理装置は、前記入力装置に入力された前記利用者識別情報から前記テラーにより前記貨幣処理装置を利用して前記出金操作が行われたことを認識して、前記貨幣処理装置から出金された出金貨幣の金額情報に基づいて、前記出納員の管理する貨幣の在高を更新することを特徴とする請求項1に記載の貨幣処理システム。
【請求項3】
前記入力装置は、前記出金操作が、顧客への出金処理又は前記テラーの管理する貨幣の補充処理のいずれであるかを示す入力を受け付けて前記管理装置へ送信し、
前記管理装置は、前記出金操作が前記補充処理であることを認識した場合には、前記貨幣処理装置から出金された前記出金貨幣の金額情報に基づいて、前記テラーの管理する貨幣の在高を更新することを特徴とする請求項2に記載の貨幣処理システム。
【請求項4】
前記貨幣処理装置は、前記テラーが入出金を行う窓口に設置される貨幣処理装置であって、
前記管理装置と接続されて、前記出納員による入金操作に応じて貨幣を識別計数して収納すると共に、出金操作に応じて貨幣を出金する出納員用貨幣処理装置をさらに備え、
前記管理装置は、前記入力装置に入力された前記利用者識別情報から前記出納員により前記出納員用貨幣処理装置を利用して前記入出金操作が行われたことを認識して、前記出納員用貨幣処理装置に入出金された貨幣の金額情報に基づいて、前記出納員の管理する貨幣の在高を更新することを特徴とすることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の貨幣処理システム。
【請求項5】
前記テラーが、該テラーの管理する貨幣の一部を前記貨幣処理装置に入金した場合には、前記管理装置は、前記貨幣処理装置に入金された入金貨幣の金額を前記テラーの管理する貨幣の在高から減ずると共に前記出納員の管理する貨幣の在高に加えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の貨幣処理システム。
【請求項6】
前記入力装置は、前記テラーから、入出金処理に係る金額情報と、前記入出金処理を前記テラーの管理する貨幣を利用して行うことを示す処理方法選択情報との入力を受け付けて前記管理装置へ送信し、
前記管理装置は、前記入力装置から受信した前記処理方法選択情報及び前記金額情報に基づいて、前記テラーの管理する貨幣の在高を更新することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の貨幣処理システム。
【請求項7】
前記入力装置は、前記テラーから、入出金処理に係る金額情報の入力を受け付けて前記管理装置へ送信し、
前記管理装置は、前記入力装置に前記金額情報が入力された後、所定時間内に前記テラーが前記貨幣処理装置を利用しなかった場合には、前記入出金処理が前記テラーの管理する貨幣を利用して行われたと判定して、前記入力装置から受信した前記金額情報に基づいて前記テラーの管理する貨幣の在高を更新することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の貨幣処理システム。
【請求項8】
前記管理装置は、前記入力装置に前記金額情報が入力された後、前記テラーが前記貨幣処理装置を利用することなく別の入出金処理に係る金額情報の入力操作を行った場合には、先に入力された前記金額情報に係る前記入出金処理は前記テラーの管理する貨幣を利用して行われたと判定することを特徴とする請求項7に記載の貨幣処理システム。
【請求項9】
前記入力装置は、前記貨幣処理装置と通信接続されるオンライン端末であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の貨幣処理システム。
【請求項10】
貨幣処理装置を利用するテラーを識別するための利用者識別情報が、前記テラーの管理する貨幣の在高及び出納員の管理する貨幣の在高を管理する管理手段に入力される利用者識別情報入力工程と、
前記テラーによる入金処理が行われる入金処理工程と、
前記管理手段が、前記利用者識別情報入力工程で入力された前記利用者識別情報から前記テラーにより前記貨幣処理装置を利用して前記入金処理工程における前記入金処理が行われたことを認識して、前記貨幣処理装置に入金された入金貨幣の金額情報に基づいて前記出納員の管理する貨幣の在高を更新する入金時在高更新工程と
を含んだことを特徴とする貨幣処理方法。
【請求項11】
前記テラーによる出金処理が行われる出金処理工程と、
前記管理手段が、前記利用者識別情報入力工程で入力された前記利用者識別情報から前記テラーにより前記貨幣処理装置を利用して前記出金処理工程における前記出金処理が行われたことを認識して、前記貨幣処理装置から出金された出金貨幣の金額情報に基づいて前記出納員の管理する貨幣の在高を更新する出金時在高更新工程と
をさらに含んだことを特徴とする貨幣処理方法。
【請求項12】
前記出金処理工程における前記出金処理が、顧客への出金処理又は前記テラーの管理する貨幣の補充処理のいずれであるかを示す情報が前記管理手段へ入力される出金情報入力工程をさらに含み、
前記出金時在高更新工程は、前記管理手段が、前記出金情報入力工程で入力された情報から前記出金処理が前記補充処理であることを認識して、前記貨幣処理装置から出金された前記出金貨幣の金額情報に基づいて前記テラーの管理する貨幣の在高を更新する工程を含んだことを特徴とする請求項11記載の貨幣処理方法。
【請求項13】
前記管理手段と接続された出納員専用の貨幣処理装置を利用して、前記出納員による入出金処理が行われる入出金工程と、
前記管理手段が、前記利用者識別情報入力工程で入力された前記利用者識別情報から前記出納員により前記出納員用貨幣処理装置を利用して前記入出金処理工程における前記入出金処理が行われたことを認識して、前記出納員用貨幣処理装置に入出金された貨幣の金額情報に基づいて前記出納員の管理する貨幣の在高を更新する入出金時在高更新工程と
をさらに含んだことを特徴とする請求項10、11又は12に記載の貨幣処理方法。
【請求項14】
前記テラーにより該テラーの管理する貨幣の一部が前記貨幣処理装置に入金されるテラー入金工程と、
前記管理手段が、前記テラー入金工程で前記貨幣処理装置に入金された入金貨幣の金額を前記テラーの管理する貨幣の在高から減ずると共に前記出納員の管理する貨幣の在高に加えるテラー入金時在高更新工程と
をさらに含んだことを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載の貨幣処理方法。
【請求項15】
前記入金処理又は前記出金処理に係る金額情報が前記管理手段に入力される金額情報入力工程と、
前記入金処理又は前記出金処理が前記テラーの管理する貨幣を利用して行われることを示す処理方法選択情報が入力される処理方法選択工程と、
前記管理手段が、前記処理方法選択情報及び前記金額情報入力工程で入力された前記金額情報に基づいて、前記テラーの管理する貨幣の在高を更新する工程
をさらに含んだことを特徴とする10〜14のいずれか1項に記載の貨幣処理方法。
【請求項16】
前記入金処理又は前記出金処理に係る金額情報が前記管理手段に入力される金額情報入力工程と、
前記管理手段が、前記金額情報入力工程で前記金額情報が入力された後、所定時間内に前記テラーが前記貨幣処理装置を利用しなかった場合に、前記入出金処理が前記テラーの管理する貨幣を利用して行われたと判定して、前記金額情報入力工程で入力された前記金額情報に基づいて前記テラーの管理する貨幣の在高を更新する工程
をさらに含んだことを特徴とする10〜14のいずれか1項に記載の貨幣処理方法。
【請求項17】
前記管理手段が、前記金額情報入力工程で前記金額情報が入力された後、前記テラーが前記貨幣処理装置を利用することなく別の入出金処理に係る金額情報の入力操作を行った場合に、先に入力された前記金額情報に係る前記入出金処理は前記テラーの管理する貨幣を利用して行われたと判定する工程
をさらに含んだことを特徴とする請求項16に記載の貨幣処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−114355(P2013−114355A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258207(P2011−258207)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】