説明

貯湯式給湯装置

【課題】昼間時間帯の無駄な沸き増しを抑制する。
【解決手段】給湯使用量に応じた目標貯湯量を加熱手段9を駆動して特定時間帯に沸き上げる沸き上げ制御手段25と、特定時間帯に沸き上げた湯量を目標貯湯量から減算した残り沸き増し量を加熱手段9を駆動して特定時間帯外に沸き増す沸き増し制御手段26とを備え、沸き増し制御手段26は、貯湯量検出手段23が検出する現在の貯湯量が沸き増し開始湯量未満となると沸き増しを開始すると共に、特定時間帯外に沸き増した量を残り沸き増し量から減算して残り沸き増し量を更新し、残り沸き増し量が所定量未満となると、沸き増し開始湯量を少なくするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱手段で加熱されて貯湯タンクに貯湯された湯水を給湯する貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の貯湯式給湯装置においては、湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンクへ給水する給水管と、前記貯湯タンクから給湯する出湯管と、前記貯湯タンクの湯水を加熱する加熱手段と、給湯に今日された給湯使用量を算出する給湯使用量算出手段と、前記貯湯タンクの貯湯量を検出する貯湯量検出手段とを備え、給湯使用量に応じた目標貯湯量を加熱手段を駆動して深夜時間帯に沸き上げ、深夜時間帯で沸き上げられなかった残り分を昼間時間帯に沸き増すようにしたもので、沸き増し開始湯量を目標貯湯量に基づいて変更するようにしたものがあった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−156254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところがこの従来のものでは、目標貯湯量が多い場合には沸き増し開始貯湯量も多くなるため、当日の給湯使用量が目標貯湯量よりも大幅に少ない日は大量の残湯が発生してしまうものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、請求項1では、湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンクへ給水する給水管と、前記貯湯タンクから給湯する出湯管と、前記貯湯タンクの湯水を加熱する加熱手段と、給湯に供された給湯使用量を算出する給湯使用量算出手段と、前記貯湯タンクの貯湯量を検出する貯湯量検出手段と、前記給湯使用量に応じた目標貯湯量を特定時間帯に前記加熱手段を駆動して沸き上げる沸き上げ制御手段と、特定時間帯に沸き上げた湯量相当分を前記目標貯湯量から減算した残り沸き増し量を特定時間帯外に前記加熱手段を駆動して沸き増す沸き増し制御手段とを備え、前記沸き増し制御手段は、前記貯湯量検出手段が検出する現在の貯湯量が沸き増し開始湯量未満となると沸き増しを開始すると共に、特定時間帯外に沸き増した量を残り沸き増し量から減算して残り沸き増し量を更新し、残り沸き増し量が所定量未満となると、沸き増し開始湯量を少なくするようにした。
【0006】
また、請求項2では、請求項1のものにおいて、前記沸き増し制御手段は、現在貯湯量が沸き増し停止湯量以上となると沸きましを停止するようにし、残り沸き増し量が所定量未満となると、沸き増し停止湯量を少なくなるようにした。
【0007】
また、請求項3では、請求項2のものにおいて、前記沸き増し制御手段は、現在貯湯量が沸き増し停止湯量以上となると沸きましを停止するようにし、残り沸き増し量が所定量未満となると、沸き増し停止湯量を少なくなるようにした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、残り沸き増し量が多い状態では、沸き増し開始湯量を多くしているため湯切れを防止できると共に、当日の給湯使用量が徐々に増える等して残り沸き増し量が少ない状態では、沸き増し開始湯量も少なくなるため、当時の給湯使用量が目標貯湯量に比べて少ない日でも無駄な沸き増しを抑制して残湯量を少なくすることができ、電気代を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態のヒートポンプ式給湯装置の概略構成図
【図2】同一実施形態の作動を説明するためのタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の一実施形態のヒートポンプ式給湯装置を図面に基づいて説明する。
1は湯水を貯湯する貯湯タンク、2は貯湯タンク1下部へ給水する給水管、3は貯湯タンク1上部から出湯する出湯管、4は給水管2から分岐された給水バイパス管、5は出湯管3からの湯と給水バイパス管4からの水とを給湯設定温度に混合する給湯混合弁、6は給湯混合弁5で混合された湯水を給湯栓(図示せず)に供給する給湯管、7は給湯管6から流出する給湯の流量をカウントする給湯流量カウンタ、8は給湯管6から給湯される湯水の温度を検出する給湯温度センサである。
【0011】
9は貯湯タンク1内の湯水を加熱する加熱手段としてのヒートポンプ式加熱手段で、冷媒を圧縮する圧縮機10と、圧縮された高温冷媒と貯湯タンク1からの湯水とを熱交換する冷媒水熱交換器11と、冷媒水熱交換器11で放熱された冷媒を減圧する膨張弁12と、低温低圧の冷媒を蒸発される蒸発器13とを環状に接続して構成され、一定の加熱能力で作動するように制御されるもので、貯湯タンク1下部から取り出した湯を加熱して貯湯タンク1上部に戻すようにしているため沸き上げる湯量を自在にコントロールできるものである。
【0012】
14は貯湯タンク1下部の湯水を冷媒水熱交換器11へ循環させて貯湯タンク1上部に戻す加熱循環回路、15は加熱循環回路14途中に設けられた加熱循環ポンプ、16は冷媒水熱交換器11へ入水する湯水の温度を検出する入水温度センサ、17は冷媒水熱交換器11で加熱された湯水の温度を検出する沸き上げ温度センサである。
【0013】
18は貯湯タンク1の外周側面上下に複数設けられ、貯湯タンク1内の湯水の温度を検出し、貯湯量を検出する貯湯量検出手段としての貯湯温度センサで、ここでは、頂部貯湯温度センサ18a、上部貯湯温度センサ18b、中間貯湯温度センサ18c、下部貯湯温度センサ18dの4個の貯湯温度センサ18が設けられており、下部貯湯温度センサ18dは給湯があった際の最低温度を検出することで給水管2からの給水温度を検出する給水温度検出手段を兼ねているものである。
【0014】
19はリモコンで、給湯装置に関する各種の情報(給湯設定温度、残湯量、給湯装置の作動状態、沸き上げモード等)を表示する表示部20と、給湯設定温度を設定操作するための増減設定スイッチ21とを備えている。
【0015】
22は給湯流量センサ7、給湯温度センサ8、入水温度センサ16、沸き上げ温度センサ17、貯湯温度センサ18の検出値が入力され、給湯混合弁5、圧縮機10、膨張弁12、加熱循環ポンプ15の作動を制御すると共に、リモコン19と通信可能に接続された制御手段である。この制御手段22は、予め給湯装置の作動を制御するためのプログラムが記憶されていると共に、演算、比較、記憶機能、時計機能を有しているものである。
【0016】
23は貯湯温度センサ18a〜dの検出温度と、予めそれぞれの貯湯温度センサ18a〜dごとに割り当てられた貯湯容量と、記憶していた給水温度とから貯湯タンク1内の貯湯量を検出する貯湯量検出手段、24は頂部貯湯温度センサ18aで検出する貯湯温度と、記憶されていた給水温度と、リモコン19で設定された給湯設定温度とから1日の給湯に供された給湯使用量を算出する給湯使用量算出手段である。
【0017】
25は給湯使用量算出手段24で算出された給湯使用量に応じた目標貯湯量を特定時間帯である深夜時間帯に沸き上げるようヒートポンプ式加熱手段9を制御する沸き上げ制御手段で、給湯使用量を過去数日分記憶に基づいて目標貯湯量を算出し、次いで目標貯湯量をヒートポンプ式加熱手段9の一定の加熱能力で除して沸き上げ必要時間を算出し、深夜時間帯の終了時刻(昼間時間帯の開始時刻)から逆算して沸き上げ開始時刻を算出し、沸き上げ開始時刻となるとヒートポンプ式加熱手段9と加熱循環ポンプ15を駆動制御して沸き上げ運転を開始し、目標貯湯量を沸き上げるか、深夜時間帯の終了時刻となると目標貯湯量を沸き上げ終わっていなくともヒートポンプ式加熱手段9と加熱循環ポンプ15を駆動停止して沸き上げ運転を停止するものである。
【0018】
26は深夜時間帯で沸き上げ切れなかった目標貯湯量の残り分を特定時間帯外の昼間時間帯に沸き増すようヒートポンプ式加熱手段9を制御する沸き増し制御手段で、昼間時間帯において貯湯量検出手段23が検出する現在の貯湯タンク1内の貯湯量が所定の沸き増し開始湯量未満となると、ヒートポンプ式加熱手段9と加熱循環ポンプ15を駆動制御して沸き増し運転を開始し、現在貯湯量が所定の沸き増し停止湯量以上となると、ヒートポンプ式加熱手段9と加熱循環ポンプ15を駆動停止して沸き増し運転を停止するものである。
【0019】
27は目標貯湯量から深夜時間帯に沸き上げた湯量相当分を減算して昼間時間帯に沸き増す残り沸き増し量を算出すると共に、昼間時間帯の沸き増しによって沸き増した量を減算して残り沸き増し量を更新する残り沸き増し量算出手段である。
【0020】
沸き増し制御手段26は、残り沸き増し量算出手段27が算出する残り沸き増し量に応じて沸き増し開始湯量および沸き増し停止湯量を変更するようにしており、残り沸き増し量が予め定められた所定量未満となると、沸き増し開始湯量および沸き増し停止湯量をそれぞれ少なくなるように変更する。
【0021】
次に、このヒートポンプ式給湯装置の作動について図3に示すタイムチャートに基づいて説明すると、深夜時間帯が終了する朝7時になると、残り沸き増し量算出手段27は沸き上げ制御手段25が前日の給湯使用量(ここでは熱量換算値)に応じた目標貯湯量(ここでは熱量換算値)から貯湯量検出手段23で検出する現在貯湯量(ここでは熱量換算値)を減算して残り沸き増し量を算出し(ここでは熱量換算値をさらに時間に換算する)、沸き増し制御手段26は算出された残り沸き増し量が所定量Z(ここでは時間換算値として180分)以上であるかどうかを判別し、所定量Z以上であると、沸き増し開始湯量(ここでは熱量換算値)および沸き増し停止湯量(ここでは熱量換算値)をそれぞれX1、Y1に設定する。
【0022】
そして、給湯に伴って現在貯湯量が沸き増し開始湯量X1未満となったことを検出すると(t1)、沸き増し制御手段26はヒートポンプ式加熱手段9と加熱循環ポンプ15を駆動して沸き増し運転を開始すると共に、残り沸き増し量算出手段27は残り沸き増し量から沸き増した量を減算して残り沸き増し量を随時更新し(ここでは残り沸き増し時間から沸き増し運転を行っている時間を減算して更新する)、沸き増し運転中に残り沸き増し量が所定量Z(180分)未満となると(t2)、沸き増し制御手段26は沸き増し開始湯量をX1より少ないX2に設定する。
【0023】
残り沸き増し量が0になる前に現在貯湯量が沸き増し停止湯量Y1以上となったことを検出すると(t3)、沸き増し制御手段26はヒートポンプ式加熱手段9と加熱循環ポンプ15を駆動して沸き増し運転を停止すると共に、沸き増し制御手段26は残り沸き増し量が所定量Z未満かつ沸き増し運転停止を条件として沸き増し停止湯量をY1より少ないY2に設定する。
【0024】
そして、さらなる給湯に伴って現在貯湯量が沸き増し開始湯量X2未満となったことを検出すると(t4)、沸き増し制御手段26はヒートポンプ式加熱手段9と加熱循環ポンプ15を駆動して沸き増し運転を開始すると共に、残り沸き増し量算出手段27は残り沸き増し量から沸き増した量を減算して残り沸き増し量を随時更新し、残り沸き増し量が0となった時点(t5)で、沸き増し制御手段26はヒートポンプ式加熱手段9と加熱循環ポンプ15を駆動して沸き増し運転を停止し、その後は現在貯湯量が沸き増し開始湯量X2未満となっても(t6)残り沸き増し量が0なので沸き増し運転は行わない。
【0025】
このように、残り沸き増し量が所定量より多い状態では沸き増し開始湯量および沸き増し停止湯量を多くしているため、これから多量の給湯を行うことが予想される状況では沸き増し運転が早期に開始されて湯切れを防止できると共に、残り沸き増し量が所定量より少ない状態では沸き増し開始湯量および沸き増し停止湯量を少なくしているため、当日の給湯使用量が前日までの給湯使用量に応じた目標貯湯量に近づいている状況となっているので、沸き増し開始湯量および沸き増し停止湯量を少なくすることで無駄な沸き増しを抑制して1日の終了時の残湯量を少なくすることができ、昼間の料金単価の高い電気の使用量を抑えることができる。
【0026】
さらに、加熱手段としてヒートポンプ式加熱手段9を用いたものでは、1日の終了時の残湯量を少なくすることで、ヒートポンプ式加熱手段9での加熱効率が悪い残湯の沸かし直し量が減り、さらなるエネルギー効率の向上と電気代の抑制を行える。
【0027】
なお、本発明は上記一実施形態に限定されるものではなく、例えば、給湯使用量、目標貯湯量、現在貯湯量、沸き上げ開始湯量および沸き上げ停止湯量を熱量換算値や時間換算値として説明したが、一定温度での湯量換算値としてもよく、また、残り沸き増し量を時間換算値として説明したが、熱量換算値や一定温度での湯量換算値としてもよいもので、熱量、湯量、時間は互いに換算可能な値であって必要な比較できるように任意に用いることができるものである。
【0028】
また、残り沸き増し量算出手段27は、目標貯湯量(熱量)から深夜時間帯終了時の現在貯湯量(熱量)を減算することで残り沸き増し量を算出したが、これに限らず、目標貯湯量を一定の加熱能力で沸き上げるのに必要な時間から深夜時間帯に実際にヒートポンプ式加熱手段9で沸き上げた時間を減算することで残り沸き増し量を算出するようにしてもよい。
【0029】
また、現在貯湯量と沸き増し開始湯量X1、X2および沸き増し停止湯量Y1、Y2の比較の仕方としても上記一実施形態に限定されるものではなく、例えば、中間貯湯温度センサ18cが第1所定温度(例えば48℃)未満となると、現在貯湯量が沸き増し開始湯量X1未満となったと見なし、下部貯湯温度センサ18dが第2所定温度(例えば55℃)以上となると、現在貯湯量が沸き増し停止湯量Y1以上となっと見なし、さらに、上部貯湯温度センサ18bが第1所定温度(例えば48℃)未満となると、現在貯湯量が沸き増し開始湯量X2未満となったと見なし、上部貯湯温度センサ18bが第2所定温度(例えば55℃)以上となると、現在貯湯量が沸き増し停止湯量Y2以上となったと見なすようにすることもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 貯湯タンク
2 給水管
3 出湯管
9 ヒートポンプ式加熱手段(加熱手段)
23 貯湯量検出手段
24 給湯使用量算出手段
25 沸き上げ制御手段
26 沸き増し制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンクへ給水する給水管と、前記貯湯タンクから給湯する出湯管と、前記貯湯タンクの湯水を加熱する加熱手段と、給湯に供された給湯使用量を算出する給湯使用量算出手段と、前記貯湯タンクの貯湯量を検出する貯湯量検出手段と、前記給湯使用量に応じた目標貯湯量を特定時間帯に前記加熱手段を駆動して沸き上げる沸き上げ制御手段と、特定時間帯に沸き上げた湯量相当分を前記目標貯湯量から減算した残り沸き増し量を特定時間帯外に前記加熱手段を駆動して沸き増す沸き増し制御手段とを備え、前記沸き増し制御手段は、前記貯湯量検出手段が検出する現在の貯湯量が沸き増し開始湯量未満となると沸き増しを開始すると共に、特定時間帯外に沸き増した量を残り沸き増し量から減算して残り沸き増し量を更新し、残り沸き増し量が所定量未満となると、沸き増し開始湯量を少なくするようにしたことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
前記沸き増し制御手段は、現在貯湯量が沸き増し停止湯量以上となると沸きましを停止するようにし、残り沸き増し量が所定量未満となると、沸き増し停止湯量を少なくなるようにしたことを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、前記貯湯タンク下部から取り出した湯水を加熱して前記貯湯タンク上部に戻す構成としたことを特徴とする請求項2記載の貯湯式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−215361(P2012−215361A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81822(P2011−81822)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)