説明

貯湯式給湯装置

【課題】給湯量のバラツキが大きい場合に、多量の湯が余ってしまう日があった。
【解決手段】特定時間帯に貯湯タンク1内の湯水を沸き上げるよう加熱手段29を制御する制御手段40を備え、制御手段40は、給湯量記憶手段41の記憶内容に基づき過去の所定期間における平均給湯量と給湯量のバラツキ度合を算出し、平均給湯量が貯湯タンク1の満タン容量より多い所定量以上、または平均給湯量が所定量未満かつバラツキ度合が所定値未満の場合には、特定時間帯外に貯湯量検出手段22が所定の第1沸き増し開始貯湯量未満を検出すると沸き増すよう加熱手段29を制御し、平均給湯量が所定量未満かつバラツキ度合が所定値より大きい場合には、特定時間帯外に貯湯量検出手段22が第1沸き増し開始貯湯量よりも少ない所定の第2沸き増し開始貯湯量未満を検出すると沸き増すよう加熱手段29を制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定時間帯に貯湯タンク内の湯水を沸き上げ、特定時間外に湯切れしないように貯湯タンク内の湯水を沸き増すようにした貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の貯湯式給湯装置においては、湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンクに給水する給水管と、貯湯タンクから出湯する出湯管と、貯湯タンクの湯水を加熱する加熱手段と、過去所定期間の一日ごとの給湯量を記憶する給湯量記憶手段と、貯湯タンク内の貯湯量を検出する貯湯量検出手段と、特定時間帯に貯湯タンク内の湯水を沸き上げるよう加熱手段を制御する制御手段とを備え、所定期間における平均給湯量と標準偏差とから目標貯湯量を算出し、深夜時間帯に沸き上げきれなかった分があった場合、昼間時間帯に残湯量が沸き増し開始貯湯量まで減少すると沸き増すようにしたもので、沸き増し開始貯湯量を標準偏差が大きい場合に多い値とし、標準偏差が小さい場合に少ない値としたものがあった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−89208号公報(段落0039、0040)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来のものでは、一日の給湯量のバラツキ(標準偏差)が大きく沸き増し開始貯湯量が多い値に設定されている状況では、浴槽への湯張りが行われなかった日など給湯量が平均給湯量未満の場合は多量の湯が余ってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は上記課題を解決するため、請求項1では、湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンクに給水する給水管と、前記貯湯タンクから出湯する出湯管と、前記貯湯タンクの湯水を加熱する加熱手段と、過去所定期間の一日ごとの給湯量を記憶する給湯量記憶手段と、前記貯湯タンク内の貯湯量を検出する貯湯量検出手段と、特定時間帯に前記貯湯タンク内の湯水を沸き上げるよう前記加熱手段を制御する制御手段とを備えたものにおいて、前記制御手段は、前記給湯量記憶手段の記憶内容に基づき過去の所定期間における平均給湯量と給湯量のバラツキ度合を算出し、前記平均給湯量が前記貯湯タンクの満タン容量より多い所定量以上、または前記平均給湯量が前記所定量未満かつ前記バラツキ度合が所定値未満の場合には、特定時間帯外に前記貯湯量検出手段が所定の第1沸き増し開始貯湯量未満を検出すると前記貯湯タンク内の湯水を沸き増すよう前記加熱手段を制御し、前記平均給湯量が前記所定量未満かつ前記バラツキ度合が前記所定値以上の場合には、特定時間帯外に前記貯湯量検出手段が前記第1沸き増し開始貯湯量よりも少ない所定の第2沸き増し開始貯湯量未満を検出すると前記貯湯タンク内の湯水を沸き増すよう前記加熱手段を制御するようにした。
【0006】
また、請求項2では、請求項1のものにおいて、前記貯湯量検出手段は、前記貯湯タンクの側面上下に複数設けられた貯湯温度センサを備え、前記複数の貯湯温度センサのうち予め定められた第1貯湯温度センサが第1所定温度未満を検出すると前記第1沸き増し開始貯湯量未満であると判別し、前記複数の貯湯温度センサのうち前記第1貯湯温度センサよりも高い位置にある予め定められた第2貯湯温度センサが第2所定温度未満を検出すると前記第2沸き増し開始貯湯量未満であると判別するようにした。
【0007】
ここで、第1所定温度と第2所定温度の関係は、第2沸き増し開始貯湯量が第1沸き増し開始貯湯量未満となるように定めればよいものである。
【0008】
また、請求項3では、請求項1または2のものにおいて、前記制御手段は、前記平均給湯量が前記貯湯タンクの満タン容量以下の場合は、前記バラツキ度合に関係なく特定時間帯外に前記貯湯量検出手段が前記第2沸き増し開始貯湯量未満を検出すると沸き増すよう前記加熱手段を制御するようにした。
【0009】
また、請求項4では、請求項1〜3のいずれかのものにおいて、前記加熱手段は、前記貯湯タンク下部から取り出した湯水を前記貯湯タンク上部に戻す加熱循環回路と、この加熱循環回路途中に設けられたヒートポンプ式加熱器と、前記加熱循環回路途中に設けられた加熱循環ポンプによって構成されているものとした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、平均給湯量が貯湯タンクの満タン容量より多い所定量未満かつ満タン容量以上で、かつバラツキ度合が所定値より大きい場合、日々の給湯量のバラツキが大きい使い方をされており沸き増しが不要な程度しか給湯されない日があるが、そのような場合は、所定の沸き増し開始貯湯量を少ない値(第2沸き増し開始貯湯量)としているため、不要な沸き増しを極力行わずに湯余りを防止できる。また、平均給湯量が所定量未満でバラツキ度合が所定値以下の場合は、日々安定して平均給湯量程度の給湯を行っているため、沸き増し開始貯湯量を多い値(第1沸き増し開始貯湯量)として、平均給湯量を早めに沸き上げて湯切れの発生を確実に防止することができる。さらに、平均給湯量が所定量以上の場合は、バラツキ度合に関係なく沸き増し開始貯湯量を多い値(第1沸き増し開始貯湯量)としているので、貯湯量が減ると素早く沸き増しが開始されて湯切れの発生を防止することができる。
【0011】
また、平均給湯量が貯湯タンクの満タン容量よりも少ない場合は、所定の沸き増し開始貯湯量を少ない値(第2沸き増し開始貯湯量)とするため、不要な沸き増しを極力行わずに湯余りを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成図
【図2】同一実施形態の沸き上げ動作を説明するフローチャート
【図3】同一実施形態の沸き増し動作を説明するフローチャート
【図4】同一実施形態の過去所定期間の給湯量とバラツキ度合の関係を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の一実施形態の貯湯式給湯装置を図面に基づいて説明する。
1は湯水を貯湯する貯湯タンク(ここではタンク容積185L)、2は貯湯タンク1に給水する給水管、3は給水管2に設けられ給水圧を減圧する減圧弁、4は貯湯タンク1上部から出湯する出湯管、5は出湯管4に設けられ過圧を逃がす過圧逃がし弁、6は減圧弁3の下流側の給水管2から分岐した給水バイパス管、7は出湯管4からの湯水と給水バイパス管6からの水とを混合する給湯混合弁、8は給湯混合弁7からの湯水を給湯する給湯管、9は給湯管8に設けられた給湯温度センサ、10は給湯管8を流れる流量を検出する給湯流量センサ、11は給水温度を検出する給水温度センサ、12は給湯栓である。
【0014】
13は浴槽、14は貯湯タンク1内の上部に設けたふろ熱交換器、15は浴槽13とふろ熱交換器14とを浴槽水が循環可能に接続しているふろ循環回路、16はふろ循環回路15途中に設けられたふろ循環ポンプ、17は浴槽13からふろ熱交換器14へ戻る浴槽水の温度を検出するふろ戻り温度センサ、18はふろ熱交換器14から浴槽13へ往く浴槽水の温度を検出するふろ往き温度センサ、19は浴槽13内の水位を圧力により検出する水位センサ、20は給湯管8から分岐されてふろ循環回路15へ接続された湯張り管、21は湯張り管20の開閉を行う湯張り電磁弁である。
【0015】
22は貯湯タンク1の側面上下に複数設けられ各部の貯湯温度を検出して貯湯量を検出する貯湯量検出手段としての貯湯温度センサであり、ここでは、貯湯温度センサ22aは20L、貯湯温度センサ22bは60L、貯湯温度センサ22cは100L、貯湯温度センサ22dは140L、貯湯温度センサ22eは180Lの容積位置の貯湯温度を検出するものである。
【0016】
23は冷媒を圧縮する圧縮機、24は冷媒と湯水を熱交換する給湯熱交換器、25は冷媒を減圧膨張する膨張弁、26は低温冷媒を蒸発させる蒸発器としての空気熱交換器、27は空気熱交換器26に外気を送風する送風ファンであり、これら圧縮機23、給湯熱交換器24、減圧手段25、空気熱交換器26を冷媒配管28で環状に接続し、ヒートポンプ式加熱器29を構成している。
【0017】
30は貯湯タンク1の下部と給湯熱交換器24の入口とを接続し、給湯熱交換器24の出口と貯湯タンク1の上部とを接続する加熱循環回路、31は給湯熱交換器24入口側の加熱循環回路30に設けられ貯湯タンク1下部から取り出した湯水を給湯熱交換器24を介して貯湯タンク1上部に循環させる加熱循環ポンプ、32は給湯熱交換器24に流入する湯水の温度を検出する入水温度センサ、33は給湯熱交換器24から流出する湯水の温度を検出する沸き上げ温度センサ、34は外気温度を検出する外気温度センサである。
【0018】
そして、ヒートポンプ式加熱器29と加熱循環回路30と加熱循環ポンプ31とで貯湯タンク1内の湯水をに沸き上げる加熱手段を構成しており、予め定められた一定の加熱能力W(ここでは4.5kW)で作動するように圧縮機23、減圧手段25、送風ファン27、加熱循環ポンプ31が制御されるもので、貯湯タンク1下部から取り出した湯を目標沸き上げ温度Tsまで加熱して貯湯タンク1上部に積層状に戻すようにしているため沸き上げる湯量を自在にコントロールできるものである。
【0019】
35は給湯温度や各種必要な設定を行うためのリモートコントローラで、給湯設定温度やふろ設定温度を表示する表示部36と、給湯設定温度およびふろ設定温度を設定する温度設定スイッチ37と、浴槽13への所定湯量の湯張りに続いて所定の保温時間だけ保温運転を行わせるふろスイッチ38と、浴槽水を加熱する追焚き動作を行わせる追焚きスイッチ39とを備えている。
【0020】
40はこの貯湯式給湯装置の作動を制御する制御手段で、予め作動を制御するためのプログラムが記憶されていると共に、演算、比較、記憶機能、カウント機能を有し、給湯温度センサ9、給湯流量センサ10、給水温度センサ11、ふろ戻り温度センサ17、ふろ往き温度センサ18、水位センサ19、貯湯温度センサ22a〜e、入水温度センサ32、沸き上げ温度センサ33、外気温センサ34にて検出される値が入力され、給湯混合弁7、ふろ循環ポンプ16、湯張り電磁弁21、圧縮機23、膨張弁25、送風ファン27、加熱循環ポンプ31の駆動を制御し、沸き上げ動作、給湯動作やふろ加熱動作等を制御するもので、リモートコントローラ35と通信可能に接続されているものである。さらに、制御手段40には、貯湯タンク1からの給湯量を積算記憶する給湯量記憶手段41が設けられているものである。
【0021】
<給湯動作>
次に、給湯栓12が開かれ、給湯流量センサ10が給湯開始と見なせる量以上の流量を検出すると、制御手段40は給湯温度センサ9で検出する給湯温度がリモートコントローラ35で設定した給湯設定温度となるように給湯混合弁7の開度を調節し、出湯管4からの湯と給水バイパス管6からの水とを混合して給湯設定温度の湯を給湯する。
【0022】
このとき、制御手段40は、給水温度センサ11で検出する給水温度と、給湯流量センサ11で検出する給湯流量と、給湯設定温度とから、一定温度(ここでは43℃)に換算された貯湯タンク1からの給湯量を積算記憶する。ここで、給湯量は一日単位で積算して過去所定期間(ここでは7日間)にわたり記憶を行うものとしている。
【0023】
そして、給湯栓12が閉じられる等して給湯流量センサ10が検出する流量が給湯停止と見なせる量未満の流量まで低下すると、制御手段40は給湯混合弁7の開度調節を終了し、給湯を終了する。
【0024】
<湯張り動作>
また、リモートコントローラ35のふろスイッチ38がオンされた場合について説明すると、制御手段40は湯張り電磁弁21を開き、給湯温度センサ9で検出する給湯温度がリモートコントローラ35で設定したふろ設定温度となるように給湯混合弁7の開度を調節してふろ設定温度の湯を湯張りし、給湯流量センサ10が検出する湯張り電磁弁21を開いてからの流量積算値が予めリモートコントローラ35等で設定した湯張り湯量に達すると湯張り電磁弁21を閉じる。
【0025】
このとき、制御手段40は、給水温度センサ11で検出する給水温度と、給湯流量センサ11で検出する給湯流量と、ふろ設定温度とから、一定温度(ここでは43℃)に換算された貯湯タンク1からの浴槽13への給湯量を先の給湯量に加算するようにして積算記憶する。
【0026】
<保温動作>
そして、湯張り運転を完了すると制御手段40は所定の保温時間(例えば2時間)の保温運転を行う。この保温運転では、定期的にふろ循環ポンプ16を駆動して浴槽水温度をチェックし、ふろ設定温度未満であればふろ加熱要求ありとしてふろ循環ポンプ16の駆動を継続して浴槽水をふろ設定温度まで加熱するようにしている。そして、ふろ加熱要求ありとされてふろ加熱動作が行われると、制御手段40は、ふろ加熱実績ありの旨を記憶し、そして、湯張り運転の完了から所定の保温時間が経過すると、浴槽水の保温運転を行わないようにしている。
【0027】
<追い焚き動作>
また、リモートコントローラ35の追い焚きスイッチ39がオンされると、制御手段40は、ふろ加熱要求ありとしてふろ設定温度まで加熱する追い焚き運転を行うようにしており、追い焚き運転によってふろ加熱要求が発生すると、制御手段40は、ふろ循環ポンプ16を駆動開始し、浴槽水をふろ熱交換器14に循環させて、貯湯タンク1内の貯湯熱によって浴槽水を加熱するふろ加熱動作を開始すると共にふろ加熱実績ありの旨を記憶し、そして、ふろ戻り温度センサ17がふろ設定温度以上を検出すると、ふろ循環ポンプ16を駆動停止してふろ加熱動作を終了する。
【0028】
<沸き上げ動作>
次に、電力料金単価の安価な特定時間帯である深夜時間帯の沸き上げ動作について、図2のフローチャートに基づいて説明する。ここでは、23時から翌朝7時までの深夜時間帯がそれ以外の昼間時間帯よりも電力料金単価が安価な料金制度に基づいて説明するが、これに限られず、例えば22時から翌朝8時までを安価な深夜時間帯とする料金制度でもよいものである。
【0029】
現在時刻が23時になり深夜時間帯の開始時刻となると(ステップS1でYes)、制御手段40は、記憶している過去所定期間の給湯量から平均給湯量を算出し(ステップS2)、さらに、一日ごとの給湯量のバラツキ度合を示す値として標準偏差を算出し(ステップS3)、平均給湯量と標準偏差に基づいて一定温度(43℃)換算の必要貯湯量Qを算出、決定する(ステップS4)。
【0030】
次に、制御手段40は、外気温度センサ34で検出する外気温度Taに応じ、予め記憶されている外気温度Taに応じたテーブルデータから目標沸き上げ温度Tsを決定する(ステップS5)。ここでは、目標沸き上げ温度Tsを外気温度Taが10℃未満で75℃、外気温度Taが10℃以上では70℃とする。
【0031】
なお、外気温度Taと目標沸き上げ温度Tsの関係テーブルデータの代わりに、給水温度Twと目標沸き上げ温度Tsのテーブルデータを制御手段40に予め記憶し、ステップS3では、給水温度センサ11、最下部の貯湯温度センサ22eあるいは入水温度センサ32で検出される給水温度Twに基づいて目標沸き上げ温度Tsを決定する構成としてもよい。
【0032】
そして、制御手段40は、必要貯湯量Qを熱量に再換算した値を目標沸き上げ温度Tsから給水温度Twを引いた値で除して、目標沸き上げ量Vを算出する(ステップS6)。このとき、目標沸き上げ量Vは、貯湯温度センサ22a〜eの位置との関係に応じて補正され、算出された値が、100L以下では100L、100L超140L以下では140L、140L超180L未満では180Lを目標沸き上げ量Vとなるように補正して決定していると共に、決定された目標沸き上げ量Vに対応する貯湯温度センサ22c〜eのいずれか一つを沸き上げ完了を判定する貯湯温度センサとする。
【0033】
次に、制御手段40は、貯湯温度センサ22a〜eの検出温度に基づき、残湯判定温度(例えば50℃)以上の残湯量Vzを算出し(ステップS7)、目標沸き上げ量Vから残湯量Vzを減じて沸き上げ必要量Vpを算出する(ステップS8)。
【0034】
そして、制御手段40は、沸き上げ必要量Vpをヒートポンプ式加熱器29の一定の加熱能力(ここでは4.5kW)で除して沸き上げ時間を算出し、深夜時間帯の終了時刻から逆算して沸き上げ開始時刻(ピークシフト時刻)を算出する(ステップS9)。
【0035】
現在時刻がピークシフト時刻となると(ステップS10でYes)、前記ステップS5で決定した目標沸き上げ温度Tsでの沸き上げ動作を開始すべく、ヒートポンプ式加熱器29および加熱循環ポンプ31を駆動開始し、貯湯タンク1下部から取り出した水を目標沸き上げ温度Tsの湯に加熱して貯湯タンク1上部から戻して積層状に貯湯する(ステップS11)。
【0036】
前記ステップS6で決定した目標沸き上げ量Vに対応する貯湯温度センサ22c〜eが規定の沸き上げ完了温度(例えば65℃)を検出するか、または入水温度センサ32が加熱上限温度(例えば55℃)以上を検出するかして沸き上げが完了されるか(ステップS12)、現在時刻が深夜時間帯の終了時刻である7時に到達すると(ステップS13)、ヒートポンプ式加熱器29および加熱循環ポンプ31を駆動停止して沸き上げ動作を終了し(ステップS14)、沸き上げ動作のフローを終了するようにしている(ステップS15)。
【0037】
<沸き増し動作>
次に、電力料金単価が深夜時間帯に比べて高価な特定時間帯外である昼間時間帯に、湯切れを防止するために貯湯タンク1内の湯水を沸き増す沸き増し動作について図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0038】
深夜時間帯が終了して昼間時間帯が開始されると(ステップS21)、制御手段40は、貯湯温度センサ22a〜eの検出温度とそれぞれの貯湯温度センサ22a〜eに割り当てられた貯湯容積とから深夜時間帯の沸き上げ動作で沸き上げた結果となる沸き上げ貯湯熱量Qeを算出する(ステップS22)。
【0039】
次に、制御手段40は、図2のステップS4で求めた必要貯湯量Qを熱量に再換算した値から沸き上げ貯湯熱量Qeを減算して、必要貯湯量Qのうち深夜時間帯で沸き上げ切れずに昼間時間帯で沸き増す必要のある熱量(沸き増し必要熱量Qm)を算出し(ステップS23)、沸き増し必要熱量Qmをヒートポンプ式加熱器29の一定の加熱能力Wで除して熱量を沸き増し時間に換算して沸き増し必要時間tmを算出する(ステップS24)。
【0040】
そして、ステップS25では、制御手段40は、昼間時間帯開始からの沸き増し運転の積算時間が沸き増し必要時間tm未満かどうかを判別し、ステップS25でYesとなるとステップS26へ進み、図2のステップS2で算出した平均給湯量が貯湯タンク1の満タン容量(ここでは43℃換算で250Lを満タン容量とする)から多少(貯湯タンク1容量の半分程度まで)上回る程度の所定量(ここでは350L)未満で、かつステップS3で算出したバラツキ度合としての標準偏差が所定値以上であるか、または、平均給湯量が貯湯タンク1の満タン以下の所定量(ここでは250L)未満であるかどうかを判別する。
【0041】
ステップS26でYesと判断された場合は、ステップS27へ進み、給湯動作やふろ加熱動作に伴って貯湯温度センサ22a〜eで検出する貯湯量が予め定められた第2沸き増し開始貯湯量(例えば43℃換算で100L)以下まで低下したかどうかを判別する。
【0042】
一方、ステップS26でNoと判断された場合は、ステップS28へ進み、給湯動作やふろ加熱動作に伴って貯湯温度センサ22a〜eで検出する貯湯量が予め定められた第1沸き増し開始貯湯量(例えば43℃換算で200L)以下まで低下したかどうかを判別する。
【0043】
貯湯量が沸き増し開始貯湯量以下となると(ステップS27またはステップS28でYes)、制御手段40は、ヒートポンプ式加熱器29と加熱循環ポンプ31を駆動して、貯湯タンク1下部から取り出した水を目標沸き上げ温度Tsの湯に加熱して貯湯タンク1上部から戻して積層状に貯湯する沸き増し運転を開始する(ステップS29)。また、このとき、制御手段40は、昼間時間帯開始からの沸き増し運転時間を積算して記憶するようにしている。
【0044】
そして、沸き増し運転に伴って貯湯温度センサ22a〜eで検出する貯湯量が予め定められた沸き増し停止貯湯量(例えば43℃換算で50L)以上増加したか(ステップS30)、沸き増し積算時間が沸き増し必要時間tmに達したか(ステップS31)を判別し、それぞれYesとなった時点でヒートポンプ式加熱器29と加熱循環ポンプ31の駆動を停止して沸き増し運転を停止する(ステップS32)。
【0045】
沸き増し運転を停止した後は、ステップS25へ戻り、沸き増し積算時間が沸き増し必要時間tm以上となると(ステップS25でNo)、沸き増し動作のフローを終了し(ステップS33)、当日は沸き増し運転を行わないようにしている。このように、沸き増しが必要な熱量を沸き増しが必要な時間に換算することで、沸き増しが必要な熱量を過不足なく沸き増しすることができ、簡易に沸き増し量をコントロールすることができるものである。
【0046】
このようにして、平均給湯量が貯湯タンク1の満タン容量より多少(貯湯タンク1の半分程度まで)多い所定量未満かつ満タン容量以上で、日々の給湯量のバラツキが大きい使い方をされている場合、沸き増しが不要な程度しか給湯されない日(図4(b)の6日目など)があるが、平均給湯量とバラツキ度合としての標準偏差の値に基づいて所定の沸き増し開始貯湯量を少ない値(第2沸き増し開始貯湯量)とするため、不要な沸き増しを極力行わずに湯余りを防止できる。
【0047】
特に、湯張り動作を頻繁(週に2〜3回程度)に行わないような使い方をされた場合に、湯張り動作を行わなかった日に不要な沸き増しが行われないこととなり、湯余りを防止することができるものである。一方、湯張り動作を行った日には、貯湯量が第2沸き増し開始貯湯量を下回れば沸き増しが行われるため、湯切れを防止することができる。
【0048】
また、同じように平均給湯量が貯湯タンク1の満タン容量より多少(貯湯タンク1の半分程度まで)多い所定量未満かつ満タン容量以上で、バラツキ度合としての標準偏差が非常に大きな値であった場合、図4の(c)に示すように、突出した給湯量の日が存在する使い方をされているが、この場合も、平均給湯量とバラツキ度合としての標準偏差の値に基づいて所定の沸き増し開始貯湯量を少ない値(第2沸き増し開始貯湯量)とするため、不要な沸き増しを極力行わずに湯余りを防止できる。
【0049】
また、平均給湯量が貯湯タンク1の満タン容量より多少(貯湯タンク1の半分程度まで)多い所定量未満かつ満タン容量以上で、バラツキ度合が所定値以下の場合は、図4の(a)に示すように日々安定して平均給湯量程度の給湯を行っているため、沸き増し開始貯湯量を多い値(第1沸き増し開始貯湯量)として、平均給湯量を早めに沸き上げて湯切れの発生を確実に防止することができる。
【0050】
さらに、平均給湯量が所定量以上の場合は、バラツキ度合に関係なく沸き増し開始貯湯量を多い値(第1沸き増し開始貯湯量)としているので、貯湯量が減ると素早く沸き増しが開始されて湯切れの発生を防止することができる。
【0051】
一方、平均給湯量が貯湯タンク1の満タン容量とみなす所定量(ここでは250L)未満である場合は、所定の沸き増し開始貯湯量を少ない値(第2沸き増し開始貯湯量)とするため、不要な沸き増しを極力行わずに湯余りを防止できる。
【0052】
なお、この実施形態では、バラツキ度合として給湯量の標準偏差を用いたが、これに限らず、分散を用いてもよい。
【0053】
また、この実施形態では、貯湯タンク1の満タン容量から多少上回る程度の所定量として43℃換算350Lの固定値を用いたが、沸き上げ動作開始時に決定される目標沸き上げ温度Tsで貯湯タンク1の容積全部を沸き上げた場合の熱量を43℃換算した値を満タン容量として設定し、この満タン容量に所定の量(例えば100L)を加算した値を、貯湯タンク1の満タン容量から多少上回る程度の所定量としてもよく、また、貯湯タンク1の満タン容量として43℃換算250Lの固定値を用いたが、沸き上げ動作開始時に決定される目標沸き上げ温度Tsで貯湯タンク1の容積全部を沸き上げた場合の熱量を43℃換算した値を満タン容量として設定し、平均給湯量がこの満タン容量以下の場合に、バラツキ度合に関係なく、所定の沸き増し開始貯湯量を少ない値とするようにしてもよい。
【0054】
このように、目標沸き上げ温度Tsに応じた満タン容量を設定して、この満タン容量と満タン容量に応じた所定量に応じて前記ステップS26の判断を行うことで、平均給湯量とバラツキ度合によって昼間時間帯の沸き増し動作が行われたり行われなかったりする状態にあることを確実に判別し、不要な沸き増し動作を極力回避して湯余りの発生を抑制することができる。
【0055】
また、この実施形態では、貯湯温度センサ22a〜eで検出する貯湯温度に基づき43℃換算の貯湯量が第1沸き増し開始貯湯量および第2沸き増し開始貯湯量未満になったかどうかを判別するようにしているが、これに限らず、貯湯温度センサ22a〜eのうち予め定めた一つの第1貯湯温度センサ(例えば貯湯温度センサ22d)で検出する貯湯温度が第1所定温度(例えば55℃)未満となると第1沸き増し開始貯湯量未満となったと判別し、第1貯湯温度センサよりも上方に位置する予め定めた一つの第2貯湯温度センサ(ここでは貯湯温度センサ22c)で検出する貯湯温度が第2所定温度(例えば55℃)未満となると第2沸き増し開始貯湯量未満となったと判別するようにしてもよい。ここで、第1所定温度と第2所定温度の関係は、同一の温度、あるいはどちらか一方が高くなるようにしてもよく、第2沸き増し開始貯湯量が第1沸き増し開始貯湯量未満となるように定めればよいものである。このように、貯湯温度センサ22a〜eのうち予め定めた貯湯温度センサで検出する貯湯温度で貯湯量が第1沸き増し開始貯湯量または第2沸き増し開始貯湯量未満となったことを検出することで、沸き増し開始の必要性を簡易に判別することができる。
【0056】
また、この実施形態では、ステップS24にて沸き増し必要熱量Qmを沸き増し必要時間tmに換算して、沸き増しを時間でコントロールしているが、ヒートポンプ式加熱器29は一定の加熱能力Wに制御されることから熱量を時間に換算しても実質的に同一で、昼間時間帯に実際に沸き増した沸き増し積算熱量を管理することで、過不足なく沸き増しすることも可能である。
【0057】
また、この実施形態では、ステップS30にて、沸き増し運転に伴って貯湯量が予め定められた沸き増し停止貯湯量(例えば43℃換算で50L)以上増加したことを貯湯温度センサ22a〜eで検出すると沸き増し停止するようにしているが、これに限らず、平均給湯量あるいは必要貯湯量Qが多い場合は、沸き増し停止貯湯量を多くするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 貯湯タンク
2 給水管
4 出湯管
22 貯湯温度センサ(貯湯量検出手段)
29 ヒートポンプ式加熱器(加熱手段)
30 加熱循環回路(加熱手段)
31 加熱循環ポンプ(加熱手段)
40 制御手段
41 給湯量記憶手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンクに給水する給水管と、前記貯湯タンクから出湯する出湯管と、前記貯湯タンクの湯水を加熱する加熱手段と、過去所定期間の一日ごとの給湯量を記憶する給湯量記憶手段と、前記貯湯タンク内の貯湯量を検出する貯湯量検出手段と、特定時間帯に前記貯湯タンク内の湯水を沸き上げるよう前記加熱手段を制御する制御手段とを備えたものにおいて、前記制御手段は、前記給湯量記憶手段の記憶内容に基づき過去の所定期間における平均給湯量と給湯量のバラツキ度合を算出し、前記平均給湯量が前記貯湯タンクの満タン容量より多い所定量以上、または前記平均給湯量が前記所定量未満かつ前記バラツキ度合が所定値未満の場合には、特定時間帯外に前記貯湯量検出手段が所定の第1沸き増し開始貯湯量未満を検出すると前記貯湯タンク内の湯水を沸き増すよう前記加熱手段を制御し、前記平均給湯量が前記所定量未満かつ前記バラツキ度合が前記所定値以上の場合には、特定時間帯外に前記貯湯量検出手段が前記第1沸き増し開始貯湯量よりも少ない所定の第2沸き増し開始貯湯量未満を検出すると前記貯湯タンク内の湯水を沸き増すよう前記加熱手段を制御するようにしたことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
前記貯湯量検出手段は、前記貯湯タンクの側面上下に複数設けられた貯湯温度センサを備え、前記複数の貯湯温度センサのうち予め定められた第1貯湯温度センサが第1所定温度未満を検出すると前記第1沸き増し開始貯湯量未満であると判別し、前記複数の貯湯温度センサのうち前記第1貯湯温度センサよりも高い位置にある予め定められた第2貯湯温度センサが第2所定温度未満を検出すると前記第2沸き増し開始貯湯量未満であると判別するようにしたことを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記平均給湯量が前記貯湯タンクの満タン容量以下の場合は、前記バラツキ度合に関係なく特定時間帯外に前記貯湯量検出手段が前記第2沸き増し開始貯湯量未満を検出すると沸き増すよう前記加熱手段を制御するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の貯湯式給湯装置。
【請求項4】
前記加熱手段は、前記貯湯タンク下部から取り出した湯水を前記貯湯タンク上部に戻す加熱循環回路と、この加熱循環回路途中に設けられたヒートポンプ式加熱器と、前記加熱循環回路途中に設けられた加熱循環ポンプによって構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の貯湯式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−225601(P2012−225601A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94691(P2011−94691)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)