説明

貯湯式給湯装置

【課題】 浴室への入室を音で判断して浴槽水の保温動作を開始する貯湯式給湯装置を提供する。
【解決手段】 浴槽17に設定量の湯水を流入する湯張り動作が終了して保温時間を開始したら、浴室36に設置された風呂リモコン35のマイク40で周囲の音を検知する集音動作を行い、水位センサ22によって浴槽17の水位変化が検知される所定時間前に集音された音を分析して学習し、所定期間中に学習した音と比較することで浴室36への入室音を判断して保温動作を行うことが可能となるので、浴室36の広さや風呂リモコン35の設置場所に関わらず、正確に浴室36への入室を検知して保温動作をおこなうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯湯タンク内に貯湯された湯水を加熱して給湯や風呂に使用する貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものにおいて、浴室に設置された風呂リモコンに浴室内の人の存在を検知する人感センサを備え、人感センサによって浴室内に人が存在することを検知したら、浴槽内に貯められた浴槽水を設定温度となるまで加熱して保温する保温動作を開始するものがあった。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−210136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のものでは、浴室の広さや構造から人感センサを設置する場所は制限されるため、人感センサの設置場所によっては人の検知感度が弱まり、浴室への入室を正確に検知できず浴槽水の保温動作が開始されない可能性があり、また、人感センサを新規の部品として設置する必要があったのでコストアップする問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では湯水を貯える貯湯タンクと、該貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段と、前記貯湯タンク内の高温水と熱交換することで浴槽内に貯められた浴槽水を加熱する風呂熱交換器と、前記浴槽と前記風呂熱交換器とを配管で接続する風呂循環回路と、該風呂循環回路に設置され前記浴槽内の浴槽水を前記風呂熱交換器へ流入させる風呂循環ポンプと、該風呂循環ポンプを駆動させ前記浴槽内の浴槽水を加熱する保温動作を開始させる制御部とを備えた貯湯式給湯装置において、浴室で発生した音を検知する音検知手段を設置し、前記制御部は、前記音検知手段で浴室へ入室した際に発生した音を検知したら保温動作を行うものである。
【0006】
また、請求項2では前記浴槽の水位を検知する水位センサを設置し、前記制御部は、前記水位センサで検知された水位の変化と前記音検知手段で検知された音とを関連させて学習し、学習された音と比較して浴室へ入室した際に発生した音を判断するものである。
【0007】
また、請求項3では前記音検知手段は浴室内に設置された風呂リモコンのマイクであるものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明の請求項1によれば、浴室で発生した音を検知する音検知手段を設置し、音検知手段で浴室へ入室した際に発生した音を検知したら保温動作を行うので、浴室の広さや構造に関わらず浴室への入室を正確に判断して保温動作を開始することができる。
【0009】
また、請求項2によれば、水位センサで検知した浴槽の水位変化と音検知手段で検知した音とを関連させて学習し、学習された音と比較して浴室へ入室した際に発生した音を判断するので、浴室へ入室した際に発生した音を正確に判別して保温動作を開始することができる。
【0010】
また、請求項3によれば、風呂リモコンに設置されたマイクを音検知手段としているので、浴室への入室を判断するために新たな機器を設置する必要がなくコストアップを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態を示す概略構成図
【図2】同発明の制御ブロック図
【図3】同発明の風呂自動運転を説明するフローチャート
【図4】同発明の保温動作を説明するフローチャート
【図5】同発明の音学習期間における保温動作の説明図
【図6】同発明の音学習期間後における保温動作の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明を適用した一実施形態を図に基づいて説明する。
1は内部に貯湯タンク2を収納した貯湯タンクユニット、3は貯湯タンク2上部の高温水を出湯する出湯管、4は貯湯タンク2に市水を供給する給水管、5は加熱手段としてのヒートポンプユニットである。
【0013】
6は貯湯タンク2下部とヒートポンプユニット5とを配管で接続するヒーポン往き管、7はヒートポンプユニット5と貯湯タンク2上部とを配管で接続するヒーポン戻り管、8はヒーポン往き管6とヒーポン戻り管7から成るヒーポン循環回路である。
【0014】
9は給水管4から分岐した給水バイパス管、10は出湯管3と給水バイパス管9内を流動する湯水を所定の比率で混合して設定された給湯温度に調節する給湯混合弁、11は出湯管3と給水バイパス管9内を流動する湯水を所定の比率で混合して設定された風呂温度に調節する風呂混合弁である。
【0015】
12は給湯混合弁10で所定の比率で混合された湯水が流動する給湯管、13は洗面所等に設置され給湯混合弁10で給湯温度に調節された湯水を開栓することで出湯可能な給湯栓、14は給湯管12内を流動する湯水の流量を検知する給湯流量センサ、15は給湯管12内を流動する湯水の温度を検知する給湯温度センサである。
【0016】
16は貯湯タンク2内の高温水と熱交換して浴槽17内に貯められた浴槽水を加熱する風呂熱交換器、18は浴槽水を風呂熱交換器16に送る風呂戻り管、19は風呂熱交換器16で加熱された浴槽水を浴槽17内に戻す風呂往き管、20は風呂往き管19と風呂熱交換器16と風呂戻り管18とで形成された風呂循環回路、21は風呂循環回路20内の浴槽水を流動させる風呂循環ポンプである。
【0017】
22は浴槽17内にある浴槽水の水位を検知する水位センサ、23は風呂熱交換器16で加熱された浴槽水の温度を検知する風呂温度センサであり、風呂戻り管18途中にそれぞれ設置されている。
【0018】
24は風呂混合弁11で混合された湯水を風呂戻り管18に搬送する湯張り管であり、配管途中には、風呂混合弁11で混合された湯水の温度を検知する湯張り温度センサ25と、電動弁を開閉して浴槽17への湯張り開始及び停止を行う湯張り電磁弁26と、配管内を流動する湯水の流量から浴槽17への湯張り量を検知する湯張り流量センサ27と、浴槽17の湯水が逆流するのを防止する逆止弁28とが設置されている。
【0019】
29は貯湯タンク2の上下方向に複数配置された貯湯温度センサで、この実施形態では貯湯温度センサ29a、29b、29c、29d、29eの5つが設置されており、この貯湯温度センサ29が検知する温度情報によって貯湯タンク2内の残熱量と、貯湯タンク2内の上下方向の温度分布が確認できる。
【0020】
30は貯湯タンク2上部に連通した逃し弁、31は給水管4途中に備えられ管内を流動する給水の温度を検知する給水温度センサ、32は給水管4に備えられ水道からの圧力を減圧する減圧弁、33は栓を開栓することで給水管4へ水道水を流入させる給水栓、34は貯湯タンク2の底部に接続され湯水を外部に排水する排水弁である。
【0021】
35は浴室36内に設置され使用者が操作することで各種設定が可能な操作部を有した風呂リモコンであり、浴槽17内に図示しない湯張り量設定スイッチで設定された湯張り量の湯水を流入し設定温度で所定時間保温する風呂自動スイッチ37と、浴槽水の設定温度を変更する温度変更スイッチ38と、浴槽17へ流入する湯水の設定温度等を音声で報知するスピーカ39と、浴室36内で発生した音を検知する集音動作が可能な音検知手段としてのマイク40とが設けられ、更に、ドットマトリクス型の蛍光表示管よりなる表示部41が設けられていることで使用者が設定状況を目視可能としている。
【0022】
42はマイコン等からなる制御部であり、使用者が設定した湯張り量の湯水を温度変更スイッチ38での設定温度で浴槽17に流入する湯張り動作を行う湯張り開始手段43と、水位センサ22で検知された浴槽17の水位の変化や所定時間等で保温動作の開始条件を満たしたか判断し、保温動作の開始条件を満たしていれば風呂循環ポンプ21を駆動させ風呂熱交換器16で浴槽水を設定温度まで加熱する保温手段44と、湯張り動作完了後の保温時間中にマイク40による集音動作を開始し、水位センサ22で水位の変化が検知された際の音を分析して学習する音学習手段45と、該音学習手段45で学習した浴室36への入室音と比較し浴室36への入室を検知する入室音比較手段46とが設けられている。
【0023】
次に、浴室36への入室音学習時における風呂自動運転の実施例について図3のフローチャートに基づいて説明する。
まず、使用者が風呂リモコン35の風呂自動スイッチ37を操作したら、湯張り開始手段43が湯張り電磁弁26を開状態にし、湯張り温度センサ25で検知された温度に基づいて風呂混合弁11の弁開度を調節して浴槽水の設定温度となるようにして、湯張り流量センサ27で検知された湯水の流量に基づいて設定された湯張り量の湯水を浴槽17に流入する(S101)。
【0024】
S101で湯張り流量センサ27での検知結果に基づいて設定された湯張り量の湯水が浴槽17に流入して湯張り動作が完了したら(S102)、湯張り電磁弁26を閉止して浴槽水を設定温度に保温する保温時間に入り、音学習手段45は、風呂リモコン35に設置されたマイク40による集音動作を開始する(S103)。
【0025】
S103で集音動作を開始したら、制御部42は、水位センサ22で浴槽17の水位変化が検知されたか判断し(S104)、水位変化が検知されたら、音学習手段45は、水位変化を検知する前にマイク40で集音した音の音圧値をメモリに記憶する(S105)。
【0026】
S104で浴槽17の水位変化が検知されなかったら、保温手段44は、湯張り動作が完了してから40分経過したか判断し(S106)、40分経過していなければ再度S104で浴槽17の水位変化を確認し、40分経過してれば、風呂循環ポンプ21を駆動させ浴槽水を風呂熱交換器16に流入して設定温度に到達するまで加熱する保温動作を開始する(S107)。
【0027】
S107で保温動作を開始したら、保温手段44は、風呂温度センサ23で検知された温度が設定温度に到達したか判断し(S108)、設定温度に到達していれば、風呂循環ポンプ21を停止して保温動作を終了する(S109)。
【0028】
S105もしくはS109の動作が終了したら、保温手段44は、保温時間の継続時間である2時間が経過したか判断し(S110)、2時間経過していればマイク40での集音動作を終了させ(S111)風呂自動運転を終了し、2時間経過していなければ再度S104で浴槽17の水位を確認する。
【0029】
次に、浴室36への入室音学習後における浴槽水の保温動作について図4のフローチャートに基づいて説明する。
浴槽17への湯張り動作が完了したら保温時間を開始し、マイク40による集音動作を開始して(S201)、入室音比較手段46は、制御部42のメモリに記憶した音から浴室36への入室音と類似する範囲の音圧値と比較して浴室36への入室音が検知されたか判断する(S202)。
【0030】
S202で入室音比較手段46によって浴室36への入室音と類似する範囲の音圧値が検知されたと判断したら、保温手段44は、浴槽水の保温動作を開始し(S203)、入室音と類似する範囲の音圧値が検知されていなければ、湯張り動作もしくは保温動作から40分経過したか判断し(S204)、40分経過していればS203で保温動作を開始する。
【0031】
S203で保温動作を開始したら、保温手段44は、風呂温度センサ23で検知された温度が設定温度に到達したか判断し(S205)、設定温度に到達していれば、風呂循環ポンプ21を停止させ保温動作を終了する(S206)
【0032】
S204もしくはS206の動作が終了したら、保温手段44は、所定の継続時間である2時間が経過したか判断し(S207)、2時間経過していればマイク40での集音動作を終了させて(S208)、2時間経過していなければ再度S202で入室音比較手段46で浴室36への入室音の検知を判断する。
【0033】
ここで、湯張り動作完了後に行う集音動作について詳述する。
図5で示すように、浴槽17の湯張り動作が完了したら、マイク40によってリモコン35の周囲で発生した音の音圧値の検知を開始し、入浴者が浴槽17に入り水位が上昇したことを水位センサ22が検知したら、水位の上昇が検知されるまでにマイク40で検知された音圧値の時間変化を制御部42のメモリに記憶する。
【0034】
前記マイク40での音圧値の時間変化を所定の学習期間(例えば一週間)継続して検知し、音学習手段45は、制御部42のメモリに記憶した一週間における音圧値の時間変化を分析して、浴室36へ入室の際に発生した入室音と類似する範囲の音圧値である学習音圧範囲を決める。そして、学習期間である一週間が経過したら図6で示すように、保温時間の開始後にマイク40で音圧値の検知を開始し、入室音比較手段46は、学習音圧範囲の音圧値を所定時間検知したら、風呂循環ポンプ21を駆動させ浴槽水の保温動作を開始する。
【0035】
なお、マイク40による集音動作は保温時間のみに行うものであり、保温時間ではない時に学習音圧範囲となる音が発生しても保温動作は開始しないので誤作動を防止できる。
【0036】
また、マイク40で検知して学習する音の要素は音圧値に限らず、例えば音の周波数分布や音の高低、あるいはこれらの時間変化であってもよく、更には、音圧を含めてこれらの要素のいずれかを組み合わて検知した結果から保温動作を開始する制御であってもよいものであり、浴槽17の水位が上昇するまでに検知された周波数分布や音の高低の変化を所定期間学習して、浴室36への入室音と類似する周波数分布や音の高低の範囲を決めて、浴室36への入室音を判断して保温動作を開始することが可能である。
【0037】
以上のように、保温時間の際に浴室36に設置された風呂リモコン35のマイク40で集音動作を行い、浴槽17の水位変化が検知される前に集音された音を分析し、所定期間中に分析して学習した音と比較することで浴室36への入室音を判断して保温動作を行うため、浴室36の広さや風呂リモコン35の設置場所に関わらず、正確に浴室36への入室を検知して保温動作をおこなうことができる。
【0038】
また、本発明では浴室36へ入室した際に保温動作を開始する制御となっているため、例えば、外気温が低い時における保温動作開始時において風呂循環回路20の配管内にある低温水が浴槽17に流入し、入浴者にこの低温水が接触することで不快感を与えることがあったが、浴槽17へ入浴する前に保温動作を開始するので使用者が低温水に接触することがなく快適に入浴可能となる。
【0039】
また、音検知手段を風呂リモコン35に設置されたマイク40とする内容だが、使用者が浴室36に入室したことを音で検知可能な構成であればよいものであり、例えば、浴室36内の風呂リモコン35とは別位置に音検知手段を設置したものや、浴室36に隣接する脱衣所等の部屋に音検知手段を設置したものであってもよい。
【0040】
また、本発明では加熱手段をヒートポンプユニット5としているが、これに限らず、貯湯タンク2内に電熱ヒータを備えた電気温水器や、セミ貯湯式の石油給湯機、ガスバーナまたは石油バーナを加熱源とした瞬間式給湯機等でもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 貯湯タンクユニット
2 貯湯タンク
5 ヒートポンプユニット
16 風呂熱交換器
17 浴槽
20 風呂循環回路
21 風呂循環ポンプ
22 水位センサ
35 リモコン
36 浴室
40 マイク
42 制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯える貯湯タンクと、該貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段と、前記貯湯タンク内の高温水と熱交換することで浴槽内に貯められた浴槽水を加熱する風呂熱交換器と、前記浴槽と前記風呂熱交換器とを配管で接続する風呂循環回路と、該風呂循環回路に設置され前記浴槽内の浴槽水を前記風呂熱交換器へ流入させる風呂循環ポンプと、該風呂循環ポンプを駆動させ前記浴槽内の浴槽水を加熱する保温動作を開始させる制御部とを備えた貯湯式給湯装置において、浴室で発生した音を検知する音検知手段を設置し、前記制御部は、前記音検知手段で浴室へ入室した際に発生した音を検知したら前記保温動作を行うことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
前記浴槽の水位を検知する水位センサを設置し、前記制御部は、前記水位センサで検知された水位の変化と前記音検知手段で検知された音とを関連させて学習し、学習された音と比較して浴室へ入室した際に発生した音を判断することを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。
【請求項3】
前記音検知手段は浴室内に設置された風呂リモコンのマイクであることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の貯湯式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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