説明

資料提示装置

【課題】より利便性の高いズーム操作を行うことが可能な資料提示装置を提供する。
【解決手段】資料提示装置100は、被写体を撮影して原画像を生成する撮影部と、所定の指示部材が原画像内に含まれているか否かを解析し、この指示部材が原画像内に含まれている場合に、指示部材が指し示した被写体上の位置および方向を検出する検出部と、こうして検出された位置から、検出された方向に応じて決定される領域抽出方向に向かう側に存在する所定の大きさの拡大対象領域を、原画像から抽出する抽出部と、抽出された拡大対象領域を拡大して拡大画像を生成する拡大画像生成部と、拡大画像を出力する出力部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、資料を撮影して画像を生成し、この画像を外部の表示装置に表示する資料提示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
資料提示装置には、撮影した画像を拡大表示させるズーム機能が備えられているものが多い。このようなズーム機能に関し、特許文献1,2に記載の資料提示装置は、レーザポインタによって資料中の任意の位置が指定されると、その指定された位置を中心とした拡大画像を表示する機能を備えている。しかし、これらの特許文献に記載の技術では、レーザポインタによる光の照射によって輝度が高められた部分が、拡大表示された画像の中心に表示されるため、拡大された資料の要部の視認性が低下する場合があった。
【0003】
また、特許文献3に記載の資料提示装置は、資料上に載置されたカラーマーカの位置を検出し、このカラーマーカの位置を左上隅とする矩形領域を拡大して表示する機能を備えている。この装置では、前述した矩形領域を拡大表示する際に、カラーマーカ自体が画面に表示されないように倍率の調整を行っている。しかし、特許文献3に記載の技術では、拡大表示の中心位置(つまり、矩形領域の中心位置)がカメラの撮影範囲の中心に一致しているため、資料の任意の位置を拡大表示させることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−17504号公報
【特許文献2】特開2002−330315号公報
【特許文献3】特開2002−300432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの問題を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、より利便性の高いズーム操作を行うことが可能な資料提示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]資料提示装置であって、被写体を撮影して原画像を生成する撮影部と、所定の指示部材が前記原画像内に含まれているか否かを解析し、前記指示部材が前記原画像内に含まれている場合に、前記指示部材が指し示した前記被写体上の位置および方向を検出する検出部と、前記検出された位置から、前記検出された方向に応じて決定される領域抽出方向に向かう側に存在する所定の大きさの拡大対象領域を、前記原画像から抽出する抽出部と、前記拡大対象領域を拡大して拡大画像を生成する拡大画像生成部と、前記拡大画像を出力する出力部とを備える資料提示装置。
【0008】
このような構成では、指示部材によって指し示された位置から、指示部材によって指し示された方向に応じて決定される領域抽出方向に存在する拡大対象領域が拡大表示される。そのため、資料上の任意の位置を拡大表示させることが可能になり、さらに、指示部材が指し示す方向に応じて、拡大表示させる領域(拡大対象領域)の位置を変更することが可能になる。この結果、利便性の高いズーム操作を行うことが可能になる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の資料提示装置であって、前記原画像の縦方向をY軸方向としたときに、前記検出部は、前記検出された方向のY成分が正の場合には、前記領域抽出方向をプラスYの方向と決定し、前記検出された方向のY成分が負の場合には、前記領域抽出方向をマイナスYの方向と決定する、資料提示装置。
【0010】
このような構成では、例えば、指示部材によって、資料の下側から資料上の位置が指し示された場合には、指示部材の上側の領域が拡大表示され、資料の上側から指し示された場合には、指示部材の下側の領域が拡大表示される。そのため、拡大表示しようとする被写体の要部が指示部材によって隠れてしまうことを抑制することが可能になる。
【0011】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載の資料提示装置であって、前記抽出部は、前記原画像に含まれる前記指示部材の端部の少なくとも一部を、前記拡大対象領域の周縁部に含ませて前記抽出を行う、資料提示装置。
【0012】
このような構成であれば、拡大表示された画像の周縁部に、指示部材の端部の少なくとも一部が表示される。そのため、現在表示されている画像が拡大表示された画像であることを容易に判別することが可能になる。
【0013】
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか一項に記載の資料提示装置であって、前記抽出部は、前記原画像から抽出しようとする前記拡大対象領域の少なくとも一部が前記原画像の範囲を超える場合には、前記拡大対象領域の位置を、前記原画像の内側の端に接する位置に変更する、資料提示装置。
【0014】
このような構成であれば、指示部材が被写体の端部を指し示したとしても、画面全体に拡大画像を表示させることが可能になる。
【0015】
[適用例5]適用例1ないし適用例4のいずれか一項に記載の資料提示装置であって、前記出力部は、前記検出部によって前記指示部材が前記原画像から検出されなかった場合には、前記拡大画像に替えて前記原画像を出力する、資料提示装置。
【0016】
このような構成であれば、指示部材によって被写体上の位置が指し示されなかった場合に、拡大された画像ではなく、撮影された画像がそのまま表示される。換言すれば、指示部材によって被写体上の位置を指し示すだけで、画面の表示モードを通常の表示モードから拡大表示モードに切り換えることができる。そのため、操作ボタン等の操作を行うことなく、被写体上の任意の位置を容易に拡大表示させることが可能になる。
【0017】
[適用例6]適用例1ないし適用例5のいずれか一項に記載の資料提示装置であって、前記検出部は、前記指示部材が前記原画像内に含まれている場合に、前記位置および前記方向に加えて、更に、前記指示部材によって示される拡大率を検出し、前記抽出部は、前記拡大対象領域の大きさを、前記拡大率に応じて変更する、資料提示装置。
【0018】
このような構成であれば、異なる拡大率を示す指示部材を使い分けることで、容易に拡大率を指定することが可能になる。
【0019】
[適用例7]適用例6に記載の資料提示装置であって、前記指示部材には、少なくとも該指示部材の表面および裏面に、異なる拡大率を識別するための拡大率識別部材が設けられている、資料提示装置。
【0020】
このような構成であれば、1つの指示部材を裏返す動作を行うだけで、異なる拡大率を指定することが可能になる。
【0021】
なお、本発明は、上述した資料提示装置としての構成のほか、資料提示装置の制御方法や使用方法、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを記録した記録媒体などとしても構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例としての資料提示装置100の外観図である。
【図2】資料提示装置100の内部構成を示すブロック図である。
【図3】拡大表示処理のフローチャートである。
【図4】原画像データM1内に指し棒PRが含まれている様子を示す説明図である。
【図5】指定位置と領域抽出方向の決定方法を示す説明図である。
【図6】領域抽出方向が上向きの場合の拡大対象領域MAの位置および範囲を示す説明図である。
【図7】指し棒PRが資料STの上側から斜めに指し示された場合を示す図である。
【図8】領域抽出方向が下向きの場合の拡大対象領域MAの位置および範囲を示す説明図である。
【図9】拡大画像M2が液晶ディスプレイ200に表示された例を示す図である。
【図10】端部処理の概念を示す説明図である。
【図11】拡大率を5倍にした場合の拡大対象領域MAの位置と範囲を示す説明図である。
【図12】ハイライト領域の表示例を示す説明図である。
【図13】ピクチャーインピクチャー領域の表示例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づき次の順序で説明する。
A.資料提示装置の構成:
B.拡大表示処理:
C.他の実施例:
D.変形例:
【0024】
A.資料提示装置の構成:
図1は、本発明の実施例としての資料提示装置100の外観図である。資料提示装置100は、机などに設置される本体102と、本体102から上側に伸びた屈曲可能な支柱104と、支柱104の先端に取り付けられたカメラヘッド106と、を備える。カメラヘッド106にはCCDカメラが内蔵されており、机などに載置された資料ST(被写体)を撮影する。本体102の背面には、映像出力端子190とUSBインタフェース195とが備えられている。映像出力端子190には、液晶ディスプレイ200や、プロジェクタ、テレビ等が接続される。USBインタフェース195には、コンピュータ(図示せず)が接続される。映像出力端子190やUSBインタフェース195からは、カメラヘッド106によって撮影された資料STの映像が出力される。
【0025】
本実施例の資料提示装置100は、指示部材としての指し棒PRによって資料ST上の任意の位置が指し示された場合に、指し棒PRが指し示す位置と方向とに応じた領域を拡大して表示する機能を備えている。以下、かかる機能を実現するための構成および処理について詳細に説明する。
【0026】
図2は、資料提示装置100の内部構成を示すブロック図である。資料提示装置100は、撮影部120と、フレームメモリ130と、指し棒検出部140と、拡大領域抽出部150と、拡大画像生成部160と、画像出力部170と、画像符号化部180と、を備えている。これらのうち、指し棒検出部140と、拡大領域抽出部150と、拡大画像生成部160と、画像出力部170と、画像符号化部180とは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)によってハードウェア的に実現されている。
【0027】
撮影部120は、カメラヘッド106に内蔵されたCCDカメラや、CCDカメラから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログフロントエンド回路を備えている。撮影部120は、1秒間あたりに15フレームの画像を撮影し、撮影した画像を、原画像データとしてフレームメモリ130に逐次記録する。
【0028】
指し棒検出部140は、フレームメモリ130に記録された原画像データの中に、指し棒PRを表す画像が含まれるか否かを解析し、指し棒PRが含まれている場合には、その指し棒PRが指し示す位置と方向とを検出する。さらに、指し棒検出部140は、指し棒PRが指し示す方向に応じて、拡大表示する領域を抽出する方向を決定する。以下では、指し棒PRが指し示す位置のことを、「指定位置」といい、拡大表示する領域を抽出する方向のことを「領域抽出方向」という、なお、領域抽出方向の決定方法については後で詳しく説明する。
【0029】
拡大領域抽出部150は、前述した指定位置から領域抽出方向に存在する所定の大きさの領域(以下、「拡大対象領域」という)を、フレームメモリ130に記憶された原画像データから抽出する。拡大対象領域の大きさは、本実施例では、原画像データの大きさの縦横それぞれ1/4の大きさである。
【0030】
拡大画像生成部160は、拡大領域抽出部150によって抽出された拡大対象領域を予め設定された倍率で拡大して拡大画像データを生成する。本実施例では、縦横それぞれ4倍の倍率で拡大対象領域を拡大する。この拡大処理は、いわゆる電子ズームによって行われる。
【0031】
画像出力部170は、フレームメモリ130に記録された原画像データもしくは拡大画像生成部160で生成された拡大画像データをD/A変換およびフレームレート変換し、アナログRGB信号として映像出力端子190から出力する。画像出力部170は、指し棒検出部140によって原画像データの中に指し棒PRが検出されたか否かに応じて、出力する画像データを選択する。具体的には、原画像データの中に指し棒PRが検出された場合には、拡大画像データを出力し、指し棒PRが検出されなかった場合には、原画像データを出力する。
【0032】
画像符号化部180は、フレームメモリ130に記録された原画像データもしくは拡大画像生成部160で生成された拡大画像データをJPEGデータにエンコード(符号化)し、USBインタフェース195から出力する。画像符号化部180は、画像出力部170と同様に、指し棒検出部140によって原画像データの中に指し棒PRが検出されたか否かに応じて、出力する画像データを選択する。なお、画像符号化部180は、USBインタフェース195にコンピュータが接続されている場合にのみ、JPEGデータへのエンコードやJPEGデータの出力を行うこととしてもよい。
【0033】
B.拡大表示処理:
図3は、図2に示した各ブロックが協同して実行する拡大表示処理のフローチャートである。この拡大表示処理は、資料提示装置100の電源がオンにされている間、繰り返し実行される。この拡大表示処理が実行されると、撮影部120は、資料STを撮影して原画像データを生成し、フレームメモリ130に記録する(ステップS10)。
【0034】
原画像データがフレームメモリ130に記録されると、指し棒検出部140は、原画像データを解析し(ステップS12)、原画像データの中に指し棒PRを表す画像が検出されたかを判断する(ステップS14)。
【0035】
図4は、原画像データM1内に指し棒PRが含まれている様子を示す説明図である。本実施例では、指し棒PRの先端には、矩形の枠FR内に矢印ARが配置された図柄を有する部材が設けられている。そのため、指し棒検出部140は、まず、周知のパターンマッチング法に基づいて、原画像データM1の中から、矩形の枠FRの検出を行う。矩形の枠FRが原画像データM1内から検出されれば、指し棒検出部140は、原画像データM1内に指し棒PRが検出されたと判断する。一方、矩形の枠FRが原画像データM1内から検出されなければ、指し棒検出部140は、原画像データM1内に指し棒PRが検出されなかったと判断する。
【0036】
ステップS14において、原画像データM1内に指し棒PRが検出されたと判断された場合には、指し棒検出部140は、指定位置と領域抽出方向の決定を行う(ステップS18)。
【0037】
図5は、指定位置と領域抽出方向の決定方法を示す説明図である。この図5には、図4に示した矩形の枠FRと矢印ARとを簡略化して表している。指し棒検出部140は、上記ステップS18において、まず、矩形の枠FR内に配置された矢印ARを周知のパターンマッチング法に基づいて検出する。そして、この矢印ARと所定の相対的な位置関係にある指定位置を決定する。具体的には、例えば、矢印ARの先端PTから、後端PEに向けて、所定の距離DT(例えば、3mmに相当する距離)だけ離れた位置を、指定位置P1(x,y)として決定する。更に、指し棒検出部140は、原画像データM1の左上隅を原点(0,0)として、原画像データM1の横方向をX軸方向、縦方向をY軸方向としたときに、矢印ARが向く方向のY成分の方向を求める。そして、そのY成分の方向が、図5に示すように、負の方向の場合には、領域抽出方向を、上向きの方向(マイナスYの方向)と決定する。逆に、Y成分の方向が正の方向の場合には、領域抽出方向を、下向きの方向(プラスYの方向)と決定する。つまり、本実施例では、指し棒PRを資料STの上側のいずれかの方向に向けて指し示した場合には、領域抽出方向は上向きの方向となり、指し棒PRを資料STの下側のいずれかの方向に向けて指し示した場合には、領域抽出方向は下向きの方向となる。なお、指し棒PRが真横から指し示された場合には、矢印ARのY成分はゼロになるため、この場合には、本実施例では、領域抽出方向を上向きの方向と一律に決定する。
【0038】
図3に示すように、ステップS18において、指定位置P1と領域抽出方向の決定が行われると、拡大領域抽出部150は、決定された指定位置P1と領域抽出方向とに応じて、拡大対象領域の位置および範囲を特定する(ステップS20)。
【0039】
図6は、領域抽出方向が上向きの場合の拡大対象領域MAの位置および範囲を示す説明図である。領域抽出方向が上向きの場合には、拡大領域抽出部150は、指定位置P1を下辺の中点とし、高さが、原画像データの高さYmの4分の1、幅が、原画像データの幅Xmの4分の1の矩形領域を拡大対象領域MAとして特定する。このように特定された拡大対象領域MAの左上隅の座標P2は、(x−Xm/8,y−Ym/4)となり、右下隅の座標P3は、(x+Xm/8,y)となる。
【0040】
図7は、指し棒PRが、資料STの下側に向けて斜め方向に指し示された場合を示す図であり、図8は、この場合の拡大対象領域MAの位置および範囲を示す説明図である。上述したように、本実施例では、指し棒PRを資料STの下側のいずれかの方向に向けて指し示した場合には、領域抽出方向は下向きの方向になる。そのため、この場合には、拡大領域抽出部150は、指定位置P1を上辺の中点とし、高さが、原画像データの高さYmの4分の1、幅が、原画像データの幅Xmの4分の1の矩形領域を拡大対象領域MAとして特定する。このように特定された拡大対象領域MAの左上隅の座標P2は、(x−Xm/8,y)となり、右下隅の座標P3は、(x+Xm/8,y+Ym/4)となる。
【0041】
図3に示すように、ステップS20において、拡大対象領域MAの位置および範囲を特定すると、拡大領域抽出部150は、フレームメモリ130に記録された原画像データの中から、拡大対象領域MAを抽出する(ステップS22)。本実施例では、指し棒PRによって指し示された指定位置P1は、矢印ARや矩形の枠FRの先端ではなく、矢印ARの内側の位置である。そのため、ステップS22で抽出される拡大対象領域MAには、指し棒PRの先端に設けられた矩形の枠FRおよび矢印ARの少なくとも一部が含まれることになる(図6、図8参照)。
【0042】
拡大領域抽出部150によって、拡大対象領域MAが原画像データから抽出されると、拡大画像生成部160は、抽出された拡大対象領域MAを、縦横それぞれ4倍の倍率で拡大して拡大画像を生成する(ステップS24)。そして、画像出力部170は、こうして生成された拡大画像を映像出力端子190から出力する(ステップS26)。また、これと同時に、画像符号化部180では、拡大画像生成部160によって生成された拡大画像が、JPEG形式でエンコードされ、USBインタフェース195を介して出力される。
【0043】
図9は、拡大画像M2が液晶ディスプレイ200に表示された例を示す図である。この図9には、領域抽出方向が上向きの場合の拡大画像M2を示している。上述したように、拡大対象領域MAには、指し棒PRの先端に設けられた矩形の枠FRおよび矢印ARの一部が含まれるため、液晶ディスプレイ200に表示される拡大画像M2にも、指し棒PRの先端に設けられた矩形の枠FRおよび矢印ARの一部が含まれる。なお、図9には、領域抽出方向が上向きの例を示しているため、枠FRと矢印ARとは、拡大画像M2の下縁部に含まれているが、領域抽出方向が下向きの場合には、枠FRと矢印ARとは、拡大画像M2の上縁部に含まれることになる。
【0044】
上述したステップS18〜S26の処理は、ステップS14において、原画像データの中から指し棒PRが検出されたと判断された場合に実行される処理である。これに対して、ステップS14において、原画像データの中に指し棒PRが検出されなかったと判断された場合には、画像出力部170は、フレームメモリ130に記憶された原画像データを、映像出力端子190から出力する(ステップS16)。また、これと同時に、画像符号化部180は、フレームメモリ130に記憶された原画像データをJPEG形式にエンコードし、USBインタフェース195を介して出力する。
【0045】
資料提示装置100は、上述した拡大表示処理を、電源がオンにされている間、繰り返し実行する。そのため、資料ST上(より詳しくは、カメラヘッド106の撮影範囲)に指し棒PRが進入すると、即座に、拡大画像M2が液晶ディスプレイ200等に出力される。また、指し棒PRが資料ST上で移動すると、その移動に応じて、拡大対象領域MAも移動する。そのため、液晶ディスプレイ200等に出力される拡大画像M2も、指し棒PRの移動に追従してスクロール表示されることになる。
【0046】
なお、上述したステップS20において、ステップS18で決定された指定位置P1と領域抽出方向とに応じて特定しようとする拡大対象領域MAの少なくとも一部が、原画像データM1の範囲を超える場合には、拡大領域抽出部150は、拡大対象領域MAの位置を、原画像データM1の内側の端に接する位置に変更する端部処理を行う。
【0047】
図10は、端部処理の概念を示す説明図である。図10には、指し棒PRの指定位置に応じて特定しようとする拡大対象領域MA’が、原画像データM1の右上隅からはみ出る場合を示している。この場合には、拡大領域抽出部150は、拡大対象領域MAの位置を原画像データM1の右上隅に変更する。こうすることで、指し棒PRが資料ST上の端部を指し示したとしても、液晶ディスプレイ200等にはその表示領域全体に拡大画像が表示されることになる。
【0048】
この端部処理では、領域抽出方向が上向きの場合において、指定位置P1のY座標がYm/4未満の場合には、拡大対象領域MAの左上隅の座標P2のY座標が、ゼロに固定される。これに対して、領域抽出方向が下向きの場合において、指定位置P1のY座標がYm−Ym/4を超える場合には、拡大対象領域MAの左上隅の座標P2のY座標が、Ym−Ym/4に固定される。また、領域抽出方向が上向き、下向きのいずれかにかかわらず、指定位置P1のX座標がXm/8未満の場合には、拡大対象領域MAの左上隅の座標P2のX座標がゼロに固定される。また、指定位置P1のX座標がXm−Xm/8を超える場合には、拡大対象領域MAの左上隅の座標P2のX座標は、Xm−Xm/4に固定される。
【0049】
以上で説明した本実施例の資料提示装置100によれば、指し棒PRを用いて資料ST上の任意の位置を指し示すと、その指し示された位置と方向とに応じて、拡大対象領域MAが、画面全体に拡大して表示される。このとき、指し棒PRの指し示す方向が、上側のいずれかの方向を向く場合には、指し棒PRの上部に存在する領域が拡大して表示され、下側のいずれかの方向を向く場合には、指し棒PRの下部に存在する領域が拡大して表示される。そのため、指し棒PRの存在によって、拡大表示される資料STの要部が隠されてしまうことを抑制することができる。
【0050】
また、本実施例によれば、指し棒PRが斜め方向から指し示されても、領域抽出方向が上向きあるいは下向きに固定されるため、拡大対象領域MAが傾くことがない。そのため、視聴者に対して見やすい拡大画像を表示することができる。
【0051】
また、本実施例では、指し棒PRの先端に設けられた矩形の枠FRと矢印ARの一部が、拡大画像M2の上端あるいは下端に表示されることになるので、現在表示されている画像が、原画像なのか拡大画像なのかを容易に判別することが可能になる。
【0052】
また、本実施例では、指し棒PRを資料ST上に配置するだけで、資料STが拡大表示される。そのため、指し棒PRによって資料ST上の位置を指し示すだけで、画面の表示モードを通常の表示モードから拡大表示モードに切り換えることができる。また、指し棒PRを資料ST上に移動させると、それに応じて拡大対象領域MAも移動し、拡大画像M2がスクロール表示される。そのため、本体102に設けられたボタン等の操作を必要とせず、利便性の高いズーム操作を実現することが可能になる。
【0053】
C.他の実施例:
(1)上述した実施例では、画像の拡大率を4倍に固定したが、拡大率はこれに限られない。例えば、2倍ないし5倍の拡大率とすることができる。また、拡大率は、本体102に設けられたボタンの操作に応じて変更可能としてもよい。図11には、拡大率を5倍にした場合の拡大対象領域MAの位置と範囲を示した。このように、拡大率を5倍にすれば、拡大対象領域MAの大きさは、拡大率が4倍のときよりも小さなサイズになる。
【0054】
(2)拡大率は他の方法によって可変させることも可能である。例えば、指し棒検出部140が、指し棒PRの先端に設けられた部材中の矩形の枠FRや矢印ARの形状、大きさ、色等を認識することで、その形状や大きさ、色等に応じて拡大率を変更してもよい。例えば、指し棒PRの表面と裏面とに異なる大きさの矢印を設け、その矢印の大きさに応じて拡大率を変更することとしてもよい(例えば、表面は4倍、裏面は5倍など)。こうすれば、ユーザは、指し棒PRを裏返す動作を行うだけで、容易に拡大率を変更することが可能になる。もちろん。異なる拡大率を示す指し棒PRを複数用意し、これらの指し棒PRを使い分けることでも、容易に拡大率を変更することが可能である。
【0055】
(3)上述した実施例では、拡大画像M2の上縁部や下縁部に、指し棒PRの矩形の枠FRや矢印ARの一部が表示されることとしたが、これらは表示しないこととしてもよい。具体的には、フレームメモリ130に、指し棒PRが含まれていない状態の原画像データと、指し棒PRが含まれる原画像データとを別々に記憶させる。そして、指し棒PRが含まれる原画像データから指定位置P1と領域抽出方向とを決定し、実際に拡大表示する拡大対象領域MAは、指し棒PRが含まれていない状態の原画像データから抽出する。こうすることで、指し棒PRの矩形の枠FRや矢印ARが含まれない拡大画像を表示することが可能になる。その他にも、例えば、指定位置から十分に離れた位置から拡大対象領域MAを抽出することでも、指し棒PRの矩形の枠FRや矢印ARが含まれない拡大画像を表示することが可能になる。
【0056】
(4)上述した実施例では、領域抽出方向を上向きあるいは下向きの2方向に限定したが、左向きあるいは右向きの方向を領域抽出方向として決定してもよい。具体的には、矢印ARが向く方向のX成分の大きさとY成分の大きさとを比較して、Y成分の方が大きければ、上向きあるいは下向きと決定することができ、X成分の方が大きければ、左向きあるいは右向きと決定することができる。このとき、X成分の方向が正の方向であれば、領域抽出方向を右向きと、負の方向であれば、領域抽出方向を左向きと特定することができる。
【0057】
D.変形例:
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができる。例えば、以下のような変形が可能である。
【0058】
・変形例1:
上述した実施例では、指し棒PRが指し示した位置と方向とに応じて拡大対象領域MAの位置と範囲を特定し、この拡大対象領域MAを拡大表示している。これに対して、上述した拡大対象領域MAに相当する領域をハイライト領域とし、このハイライト領域以外の領域を表示させないか、あるいは、輝度を低下させることとしてもよい。
【0059】
図12は、ハイライト領域の表示例を示す説明図である。この図に示すように、本変形例では、液晶ディスプレイ200等に、ハイライト領域HAのみが表示され、他の領域は暗く表示される。ハイライト領域HAは、指し棒PRの移動に追従して画面上を移動する。このような表示を行えば、資料ST上の任意の位置に視聴者の注目を集めることが可能になる。
【0060】
・変形例2:
上述した変形例1では、拡大対象領域MAに相当する領域をハイライト領域としたが、この領域をピクチャーインピクチャー領域としてもよい。このピクチャーインピクチャー領域に対しては、コンピュータや他の映像機器から入力した映像あるいは画像を表示させることができる。
【0061】
図13は、ピクチャーインピクチャー領域の表示例を示す説明図である。この図に示すように、本変形例では、資料STを表す原画像データに重畳させてピクチャーインピクチャー領域PPが表示される。ピクチャーインピクチャー領域PPは、指し棒PRの移動に追従して画面上を移動する。このような表示を行えば、資料ST上の任意の位置に、資料STとは異なる(あるいは資料STに関連した)他の資料や、映像、画像等を表示させることが可能になる。
【0062】
・変形例3:
上述した実施例では、図3に示した拡大表示処理を、ASICにより構成された指し棒検出部140や、拡大領域抽出部150、拡大画像生成部160、画像符号化部180、画像出力部170によって実行することとした。これに対して、拡大表示処理は、CPUやRAM、ROMを備えるマイクロコンピュータによって、ソフトウェア的に実行されることとしてもよい。
【0063】
・変形例4:
上述した実施例では、指し棒PRの先端に、矩形の枠FR内に矢印ARが配置された図柄を有する部材が設けられていることとした。しかし、この図柄は任意であり、位置と方向とが検出可能な図柄であればよい。
【符号の説明】
【0064】
100…資料提示装置
102…本体
104…支柱
106…カメラヘッド
120…撮影部
130…フレームメモリ
140…指し棒検出部
150…拡大領域抽出部
160…拡大画像生成部
170…画像出力部
180…画像符号化部
190…映像出力端子
195…USBインタフェース
200…液晶ディスプレイ
ST…資料
PR…指し棒
FR…枠
AR…矢印
P1…指定位置
M1…原画像データ
M2…拡大画像
MA…拡大対象領域
HA…ハイライト領域
PP…ピクチャーインピクチャー領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
資料提示装置であって、
被写体を撮影して原画像を生成する撮影部と、
所定の指示部材が前記原画像内に含まれているか否かを解析し、前記指示部材が前記原画像内に含まれている場合に、前記指示部材が指し示した前記被写体上の位置および方向を検出する検出部と、
前記検出された位置から、前記検出された方向に応じて決定される領域抽出方向に向かう側に存在する所定の大きさの拡大対象領域を、前記原画像から抽出する抽出部と、
前記拡大対象領域を拡大して拡大画像を生成する拡大画像生成部と、
前記拡大画像を出力する出力部と
を備える資料提示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の資料提示装置であって、
前記原画像の横方向をX軸方向、該原画像の縦方向をY軸方向としたときに、
前記検出部は、前記検出された方向のY成分が正の場合には、前記領域抽出方向をプラスYの方向と決定し、前記検出された方向のY成分が負の場合には、前記領域抽出方向をマイナスYの方向と決定する、資料提示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の資料提示装置であって、
前記抽出部は、前記原画像に含まれる前記指示部材の端部の少なくとも一部を、前記拡大対象領域の周縁部に含ませて前記抽出を行う、資料提示装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の資料提示装置であって、
前記抽出部は、前記原画像から抽出しようとする前記拡大対象領域の少なくとも一部が前記原画像の範囲を超える場合には、前記拡大対象領域の位置を、前記原画像の内側の端に接する位置に変更する、資料提示装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の資料提示装置であって、
前記出力部は、前記検出部によって前記指示部材が前記原画像から検出されなかった場合には、前記拡大画像に替えて前記原画像を出力する、資料提示装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の資料提示装置であって、
前記検出部は、前記指示部材が前記原画像内に含まれている場合に、前記位置および前記方向に加えて、更に、前記指示部材によって示される拡大率を検出し、
前記抽出部は、前記拡大対象領域の大きさを、前記拡大率に応じて変更する、
資料提示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の資料提示装置であって、
前記指示部材には、少なくとも該指示部材の表面および裏面に、異なる拡大率を識別するための拡大率識別部材が設けられている、資料提示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−23997(P2011−23997A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167529(P2009−167529)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000000424)株式会社エルモ社 (104)
【Fターム(参考)】