説明

赤外線センサ装置および赤外線センサの制御方法

【課題】太陽光による誤動作を少なくすることができる赤外線センサ装置および赤外線センサの制御方法を提供する。
【解決手段】ナビゲーション部6から取得した日時・時刻情報と車両の走行方向に基づいて、早朝で西向き走行の場合か夕方で東向き走行の場合は、マイコン8が、PD4b1の受光回数を増加させるか発光LED2の発光量を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などの移動体に設けられ、発光素子から出射された赤外光が物体に反射した反射光を受光素子が受光して、その受光素子が受光した反射光に基づいて物体の接近を検出する赤外線センサ装置および赤外線センサの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車などにおいて、オーディオやエアコン等の操作の事前検出のために赤外線センサ装置が用いられることがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
赤外線センサ装置は、赤外線(赤外光)を出射するLED(発光ダイオード)などの発光素子と、発光素子が出射した赤外光が手などの物体に反射した反射光を受光するフォトダイオードなどの受光素子と、その受光素子が受光した結果から手などの物体の接近を検出する検出回路等を備えている。
【0004】
この種の赤外線センサ装置は、出射した赤外光の反射光に基づいて手の接近を検出し、特許文献1に記載されている車両のスイッチ照明装置のように自動車のオーディオやエアコンの照明等を点灯したりして、機器の操作性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−113098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、赤外線センサ装置は、赤外光を利用して物体の接近を検出しているため、受光素子に太陽光が入射すると、その太陽光を反射光と誤って検出してしまい、誤動作してしまうという問題があった。特に車両などの移動体に赤外線センサ装置が設けられる場合は、受光素子の向きが移動体の移動方向(走行方向)によって変化するため、太陽光の入射を避けることが困難な場合もあり、太陽光による誤動作の対策が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、例えば、太陽光による誤動作を少なくすることができる赤外線センサ装置および赤外線センサの制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の赤外線センサ装置は、移動体に設けられ、赤外光を出射する発光素子と、前記発光素子が出射した前記赤外光が物体に反射した反射光を受光する受光素子と、前記受光素子が受光した前記反射光に基づいて前記物体の接近を検出する検出手段と、を備えた赤外線センサ装置において、太陽光の入射方向を取得する太陽光入射方向取得手段と、前記太陽光入射方向取得手段が取得した前記太陽光の入射方向が、前記受光素子に向いているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が前記太陽光の入射方向が前記受光素子に向いていると判定した場合は、前記発光素子または前記受光素子のうちの少なくともいずれか一方の動作量を増加させるように変更する制御手段と、を備えていることを特徴としている。
【0009】
請求項6に記載の赤外線センサの制御方法は、移動体に設けられた発光素子から出射された赤外光が物体に反射した反射光を前記移動体に設けられた受光素子が受光して、前記受光素子が受光した反射光に基づいて前記物体の接近を検出する赤外線センサの制御方法において、太陽光の入射方向を取得する太陽光入射方向取得ステップと、前記太陽光入射方向取得ステップで取得した前記太陽光の入射方向が、前記受光素子に向いているか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップで前記太陽光の入射方向が前記受光素子に向いていると判定された場合は、前記発光素子または前記受光素子のうちの少なくともいずれか一方の動作量を増加させるように変更する制御ステップと、を備えていることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施例にかかる赤外線センサ装置のブロック図である。
【図2】図1に示された赤外線センサ装置の物体検出動作のフローチャートである。
【図3】図1に示された赤外線センサ装置の反射光の検出処理の説明図である。
【図4】本発明の第2の実施例にかかる赤外線センサ装置の物体検出動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態にかかる赤外線センサ装置を説明する。本発明の一実施形態にかかる赤外線センサ装置は、太陽光入射方向取得手段が太陽光の入射方向を取得し、判定手段が、太陽光入射方向取得手段が取得した太陽光の入射方向が、受光素子に向いているか否かを判定し、判定手段が前記太陽光の入射方向が受光素子に向いていると判定した場合は、制御手段が、発光素子または受光素子のうちの少なくともいずれか一方の動作量を増加させるように変更するので、太陽光の影響により誤動作となる可能性が高い場合にのみ発光素子または受光素子のうちの少なくともいずれか一方を太陽光による誤動作を避けるように動作量を変更することができる。
【0012】
また、制御手段は、判定手段が太陽光の入射方向が受光素子に向いていると判定した場合に、受光素子の受光回数を増加させてもよい。このようにすることにより、太陽光が入射する可能性がある場合は、受光素子の受光回数を増加させて発光素子から出射した赤外光の反射光を検出する精度を高めることができ、太陽光による誤動作を少なくことができる。また、判定手段が、太陽光の入射方向が受光素子に向かっていると判定した場合にのみ、受光回数を増加させることから、受光回数を増加させたことによる反応速度の低下を特定の状態のみとすることができ、反応速度に対する悪影響を最小限に留めることができる。
【0013】
また、制御手段は、判定手段が太陽光の入射方向が受光素子に向いていると判定した場合に、発光素子の発光量を増加させてもよい。このようにすることにより、太陽光が入射する可能性がある場合は、より強い光を出射して、太陽光を反射光と誤認識しにくくすることができる。また、強い光を出射することで、太陽光との区別が付きやすくなるために、受光素子の受光回数を少なくすることができ、反応速度を短縮することができる。
【0014】
また、太陽光入射方向取得手段が、現在の日時を取得する日時取得手段と、現在の移動体の走行方向を取得する走行方向取得手段と、を備え、制御手段は、日時取得手段が取得した現在の日時が早朝かつ走行方向取得手段が取得した現在の移動体の走行方向が西向きであった場合、または、日時取得手段が取得した現在の日時が夕方かつ走行方向取得手段が取得した現在の移動体の走行方向が東向きであった場合に、発光素子または受光素子のうちの少なくともいずれか一方の動作量を増加させるように変更してもよい。このようにすることにより、日付と時刻から太陽に位置を特定して、移動体の走行方向と組み合せた結果、早朝で西向きの走行の場合または夕方で東向きの走行の場合は太陽光が受光素子に入射しやすいと判定することができる。
【0015】
また、受光素子近傍の照度を検出する照度検出手段を備え、制御手段は、照度検出手段が検出した照度が予め定めた所定の照度以上の場合に、発光素子または受光素子のうちの少なくともいずれか一方の動作量を増加させるように変更してもよい。このようにすることにより、受光素子の近傍に太陽光が入射してある程度明るい場合、つまり、天候が晴れなどの場合にのみ発光素子または受光素子の動作量を増加させ、曇りや雨など太陽光が入射する可能性が低い場合は、発光素子または受光素子の動作量を増加させる必要がなくなる。
【0016】
本発明の一実施形態にかかる赤外線センサの制御方法は、太陽光入射方向取得ステップで太陽光の入射方向を取得し、判定ステップで太陽光入射方向取得手段が取得した太陽光の入射方向が、受光素子に向いているか否かを判定し、判定ステップで前記太陽光の入射方向が受光素子に向いていると判定した場合は、制御ステップで、発光素子または受光素子のうちの少なくともいずれか一方の動作量を増加させるように変更するので、太陽光の影響により誤動作となる可能性が高い場合にのみ発光素子または受光素子のうちの少なくともいずれか一方を太陽光による誤動作を避けるように動作量を変更することができる。
【実施例1】
【0017】
本発明の第1の実施例にかかる赤外線センサ装置を備えたナビゲーション装置1を図1乃至図3を参照して説明する。ナビゲーション装置1は、移動体としての自動車のインストルメントパネルに装着される。ナビゲーション装置1は、図1に示すように、発光LED2と、電流制御回路3と、赤外センサ部4と、GPS受信機5と、ナビゲーション部6と、照度センサ7と、マイコン8と、を備えている。また、ナビゲーション装置1は、図示しないが、地図情報などが格納されるハードディスクなどの記録装置と、地図情報など各種情報が表示される表示手段なども備えている。
【0018】
発光素子としての発光LED2は、図1に示したように発光LED21〜発光LED2nまでのn個で構成され、図示しないナビゲーション装置1のケースの使用者と相対する面(正面)にそれぞれ設けられている。発光LED2は、電流制御回路3と赤外センサ部4の制御により赤外光を出射する。また、n個の発光LED2は、例えば発光LED21、発光LED22、・・・、発光LED2nの順で1つずつ順次点灯される。
【0019】
電流制御回路3は、マイコン8の制御により、発光LED2に対して発光するための電流を供給する。
【0020】
赤外センサ部4は、発光処理部4aと受光処理部4bとを備えている。発光処理部4aは、各発光LED2の発光順など発光タイミングの制御を行っている。検出手段としての受光処理部4bは、受光素子としての赤外光を受光するフォトダイオード(PD)4b1を含み、所定のタイミングでPD4b1に受光させている。また、PD4b1は、図示しないナビゲーション装置1のケースの正面に設けられている。そして、発光処理部4aから発光LED2の発光タイミングを取得し、PD4b1が受光した信号レベルが発光LED2の反射光によるものか、太陽光によるものかを判定して、反射光によるものであった場合は、その反射光の信号レベルに基づいて物体の接近を判定する。
【0021】
太陽光入射方向取得手段、日時取得手段としてのGPS受信機5は、複数のGPS(Global Positioning System)衛星から、現在地の緯度及び経度情報や日付・時刻情報等の測位用データを含む電波を定期的に受信してナビゲーション部6に出力する。
【0022】
太陽光入射方向取得手段、走行方向取得手段としてのナビゲーション部6は、GPS受信機5が受信した測位用データと図示しないハードディスクなどの記録手段に記録されている地図情報から現在地から目的地までの経路を算出している。また、ナビゲーション部6はジャイロセンサを備え、現在の自車の走行方向を算出している。算出された経路や走行方向等の情報は、図示しない液晶ディスプレイでなどの表示手段に表示して目的地までの案内を行う。また、GPS受信機5が受信した日付・時刻情報とジャイロセンサが取得した走行方向の情報をマイコン8に出力する。
【0023】
照度検出手段としての照度センサ7は、受光処理部4bのPD4b1の近傍に設けられ、PD4b1近傍の照度(明るさ)を検出しマイコン8に出力している。
【0024】
判定手段、制御手段としてのマイコン8は、CPUやメモリなどを内蔵したマイクロコンピュータであり、ナビゲーション部6から取得する日付・時刻情報や車両の走行方向の情報および照度センサ7から取得するPD4b1近傍の照度に基づいて赤外センサ部4にPD4b1の受光回数を増加させるように制御する。
【0025】
本実施例では、上述した発光LED2と、電流制御回路3と、赤外センサ部4と、GPS受信機5と、ナビゲーション部6と、照度センサ7と、マイコン8と、で本発明の第1の実施例にかかる赤外線センサ装置10を構成している。
【0026】
次に、上述した構成の赤外線センサ装置10の物体検出動作を図2のフローチャートを参照して説明する。図2に示したフローチャートはマイコン8で実行される。
【0027】
まず、ステップS101において、常に発光LED2の発光を開始させてステップS102に進む。本ステップの常に発光LED2の発光を開始させるとは、全ての発光LED2が発光し続けるのではなく、各発光LED2を1つずつ所定間隔で順次発光させる動作を繰り返すことを意味する。
【0028】
次に、ステップS102において、照度センサ7が検出した明るさ(照度)が予め定めた一定以上か否かを判断し、一定以上である場合(yesの場合)はステップS103に進み、一定未満である場合(noの場合)はステップS109に進む。即ち、照度検出手段が検出した照度が予め定めた所定の照度以上の場合に、以降の処理、つまり、受光素子の受光回数を増加させている。
【0029】
次に、ステップS103において、ナビゲーション部6から取得した日時・時刻情報が早朝であるか否かを判断し、早朝である場合(yesの場合)はステップS104に進み、早朝でない場合(noの場合)はステップS107に進む。早朝か否かの判定は、太陽が低い位置にあり、車両のインストルメントパネル正面に設けられているPD4b1に太陽光が入射し易い時間帯かを判定している。なお、太陽の位置は季節(日付)によって変動するため、例えば、1年間における早朝と判定する時間帯を日ごとにテーブルなどで予め設定してそれを参照すればよい。
【0030】
次に、ステップS104において、ナビゲーション部6から取得した車両の走行方向が西向きに走行しているか否かを判断し、西向きに走行している場合(yesの場合)はステップS105に進み、西向きに走行していない場合(noの場合)はステップS109に進む。本ステップでは、ステップS103で早朝と判定されたので、車両のインストルメントパネル正面に太陽光が入射し易い方向に走行しているかを判定している。つまり、朝日は東から射し込むので、西向きに走行している場合は、車両の後方から太陽光が入射し易い。したがって、インストルメントパネル正面に設けられているPD4b1に太陽光が入射し易い状態であると言える。即ち、ステップS103とS104で太陽光の入射方向を取得する太陽光入射方向取得ステップと、太陽光の入射方向が、受光素子に向かって入射するか否かを判定する判定ステップとを行っている。
【0031】
次に、ステップS105において、PD4b1の受光回数を通常よりも増加させてステップS106に進む。即ち、太陽光の入射方向が受光素子に向かって入射すると判定したので、受光素子の受光回数を増加させる制御ステップとなる。つまり、本実施例では動作量として受光回数を増加するように変更している。
【0032】
赤外線センサ装置10における受光動作の例を図3を参照して説明する。図3は、横軸に時間、縦軸にPD4b1が受光した光の信号レベル(受光レベル)を示したグラフである。受光レベルが高いほどより強い光を受光したことを意味する。図3の場合M1、M2、M3の3回受光している。3回の受光のうち、M2では直前に発光LED2が発光している。つまり、M2は太陽光と発光LED2の反射光の双方を含む受光レベルであり、M1とM3は太陽光のみの受光レベルである。受光処理部4bでは、発光処理部4aからの信号により発光LED2がいつ発光したかを把握しているので、M2の受光レベルは発光LED2の反射光が含まれている可能性があることを把握できる。つまり、M2のタイミングは発光LED2の発光タイミングに合わせて設定されている。
【0033】
ここで、M2の時点における発光LED2の反射光の受光レベルは、次の(1)式で算出することができる。
反射光の受光レベル=M2レベル−(M1レベル+M3レベル)/2・・・(1)
【0034】
(1)式は、M2の前後のタイミングであるM1とM3で太陽光のレベルを測定し、発光LED2の反射光のレベルを含むM2では、M2で受光したレベルから太陽光のレベルを減算することで、発光LED2の反射光のレベルを算出している。より正確に太陽光と発光LED2の反射光とを区別するためには、前記した(1)式を繰り返すことが必要となる。即ち、図3に示した動作を何度も繰り返すことが必要となる。つまり、ステップS103で受光回数を増加させるとは、図3に示した動作を繰り返して(1)式を算出する回数を増加させることを意味する。
【0035】
次に、ステップS106において、ステップS105または後述するステップS109で設定した受光回数でPD4b1に受光させて受光処理部4bに物体の有無(接近)を判定させる。この判定は、例えば、反射光が検出されたら物体の接近としてもよいし、反射光レベルが予め定めた所定レベル以上であった場合は物体の接近としてもよい。
【0036】
一方、ステップS107においては、ステップS103において、ナビゲーション部6から取得した日時・時刻情報が夕方であるか否かを判断し、夕方である場合(yesの場合)はステップS108に進み、夕方でない場合(noの場合)はステップS109に進む。夕方か否かの判定は、ステップS103と同様に、太陽が低い位置にあり、車両のインストルメントパネル正面に設けられているPD4b1に太陽光が入射し易い時間帯かを判定している。なお、太陽の位置は季節(日付)によって変動するため、例えば、早朝と同様に1年間における夕方と判定する時間帯を日ごとにテーブルなどで予め設定して参照すればよい。
【0037】
次に、ステップS108において、ナビゲーション部6から取得した車両の走行方向が東向きに走行しているか否かを判断し、東向きに走行している場合(yesの場合)はステップS105に進み、東向きに走行していない場合(noの場合)はステップS109に進む。本ステップでは、ステップS107で夕方と判定されたので、車両のインストルメントパネル正面に太陽光が入射し易い方向に走行しているかを判定している。つまり、夕日は西から射し込むので、東向きに走行している場合は、車両の後方から太陽光が入射し易い。したがって、インストルメントパネル正面に設けられているPD4b1に太陽光が入射し易い状態であると言える。即ち、ステップS107とS108も太陽光入射方向取得ステップ、判定ステップとなる。
【0038】
次に、ステップS109において、PD4b1の受光回数を通常の受光回数としてステップS106に進む。
【0039】
本実施例によれば、ナビゲーション部6から取得した日時・時刻情報と車両の走行方向に基づいて、早朝で西向き走行の場合か夕方で東向き走行の場合は、マイコン8が、PD4b1の受光回数を増加させているので、太陽光の影響により誤動作となる可能性が高い場合にのみ受光回数を増加させて発光LED2から出射した赤外光の反射光を検出する精度を高めることができ、太陽光による誤動作を少なくことができる。
【0040】
また、太陽光入射方向取得手段であるナビゲーション部6が取得した太陽光の入射方向が、PD4b1に向いている場合にのみ、受光回数を増加させることから、受光回数を増加させたことによる反応速度の低下を特定の状態のみとすることができ、反応速度に対する悪影響を最小限に留めることができる。
【0041】
また、照度センサ7が検出するPD4b1近傍の明るさが一定以上の場合に、日時・時刻情報と車両の走行方向を行っているので、PD4b1の近傍に太陽光が入射してある程度明るい場合、つまり、天候が晴れなどの場合にのみPD4b1の受光回数を増加させ、曇りや雨など太陽光が入射する可能性が低い場合は、PD4b1の受光回数を増加させる必要がなくなる。
【実施例2】
【0042】
次に、本発明の第2の実施例にかかる赤外線センサ装置10を図4を参照して説明する。なお、前述した第1の実施例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
本実施例では、構成は第1の実施例(図1)と同様であるが、物体検出動作が異なる。本実施例の赤外線センサ装置10の物体検出動作を図4のフローチャートを参照して説明する。
【0044】
まず、ステップS201において、常に発光LED2の発光を開始させてステップS202に進む。本ステップの常に発光LED2の発光を開始させるとは、全ての発光LED2が発光し続けるのではなく、各発光LED2を1つずつ所定間隔で順次発光させる動作を繰り返すことを意味する。
【0045】
次に、ステップS202において、照度センサ7が検出した明るさ(照度)が予め定めた一定以上か否かを判断し、一定以上である場合(yesの場合)はステップS203に進み、一定未満である場合(noの場合)はステップS209に進む。即ち、照度検出手段が検出した照度が予め定めた所定の照度以上の場合に、以降の処理、つまり、受光素子の受光量を増加させている。
【0046】
次に、ステップS203において、ナビゲーション部6から取得した日時・時刻情報が早朝であるか否かを判断し、早朝である場合(yesの場合)はステップS204に進み、早朝でない場合(noの場合)はステップS207に進む。早朝か否かの判定は、太陽が低い位置にあり、車両のインストルメントパネル正面に設けられたPD4b1に太陽光が入射し易い時間帯かを判定している。なお、太陽の位置は季節(日付)によって変動するため、例えば、1年間における早朝と判定する時間帯を日ごとにテーブルなどで予め設定して参照すればよい。
【0047】
次に、ステップS204において、ナビゲーション部6から取得した車両の走行方向が西向きに走行しているか否かを判断し、西向きに走行している場合(yesの場合)はステップS205に進み、西向きに走行していない場合(noの場合)はステップS209に進む。本ステップでは、ステップS203で早朝と判定されたので、車両のインストルメントパネル正面に太陽光が入射し易い方向に走行しているかを判定している。つまり、朝日は東から射し込むので、西向きに走行している場合は、車両の後方から太陽光が入射し易い。したがって、インストルメントパネル正面に設けられたPD4b1に太陽光が入射し易い状態であると言える。即ち、ステップS203とS204で太陽光の入射方向を取得する太陽光入射方向取得ステップと、太陽光の入射方向が受光素子に向かって入射するか否かを判定する判定ステップとを行っている。
【0048】
次に、ステップS205において、発光LED2の発光量を増加させてステップS206に進む。本ステップでは、電流制御回路3に発光LED2の電流を増加させている。即ち、太陽光の入射方向が受光素子に向かって入射すると判定した場合に、発光素子の発光量を増加させている(制御ステップ)。つまり、本実施例では動作量として発光量を増加するように変更している。
【0049】
第1の実施例では、太陽光が入射し易い状態の場合にPD4b1の受光回数を増加させていたが、本実施例の場合は、発光LED2の発光量を増加させる点が異なっている。つまり、発光LED2の発光量を増加させることで、その反射光の受光レベルも高くなるために、太陽光との区別が付き易くなる。要するに反射光であると判断する閾値レベルを高く設定することができるので、太陽光の影響を排除しやすくすることができる。
【0050】
次に、ステップS206において、ステップS205または後述するステップS209で設定した発光量で発光LED2を発光させて受光処理部4bに物体の有無(接近)を判定させる。この判定は、例えば、反射光が検出されたら物体の接近としてもよいし、反射光レベルが予め定めた所定レベル以上であった場合は物体の接近としてもよい。
【0051】
一方、ステップS207においては、ステップS203において、ナビゲーション部6から取得した日時・時刻情報が夕方であるか否かを判断し、夕方である場合(yesの場合)はステップS208に進み、夕方でない場合(noの場合)はステップS209に進む。夕方か否かの判定は、ステップS203と同様に、太陽が低い位置にあり、車両のインストルメントパネル正面に設けられたPD4b1に太陽光が入射し易い時間帯かを判定している。なお、太陽の位置は季節(日付)によって変動するため、例えば、早朝と同様に1年間における夕方と判定する時間帯を日ごとにテーブルなどで予め設定して参照すればよい。
【0052】
次に、ステップS208において、ナビゲーション部6から取得した車両の走行方向が東向きに走行しているか否かを判断し、東向きに走行している場合(yesの場合)はステップS205に進み、東向きに走行していない場合(noの場合)はステップS209に進む。本ステップでは、ステップS207で夕方と判定されたので、車両のインストルメントパネル正面に太陽光が入射し易い方向に走行しているかを判定している。つまり、夕日は西から射し込むので、東向きに走行している場合は、車両の後方から太陽光が入射し易い。したがって、インストルメントパネル正面に設けられたPD4b1に太陽光が入射し易い状態であると言える。即ち、ステップS207とS208も太陽光入射方向取得ステップ、判定ステップとなる。
【0053】
次に、ステップS209において、発光LED2の発光量、即ち、発光LEDの電流を通常の値としてステップS206に進む。
【0054】
本実施例によれば、ナビゲーション部6から取得した日時・時刻情報と車両の走行方向に基づいて、早朝で西向き走行の場合か夕方で東向き走行の場合は、発光LED2の発光量を増加させているので、太陽光の影響により誤動作となる可能性が高い場合にのみ発光量を増加させて太陽光を反射光と誤認識しにくくすることができる。
【0055】
また、太陽光入射方向取得手段であるナビゲーション部6が取得した太陽光の入射方向が、PD4b1に向いている場合はより強い光を出射するので、通常よりも強い反射光が得られるために、PD4b1の受光回数を少なくすることができる。具体的には、上述した(1)式の算出回数を例えば2回行っていたのを1回にすることが可能となる。したがって、赤外線センサ装置10の反応速度を短縮することも可能となる。
【0056】
なお、上述した2つの実施例を組み合わせてもよい。つまり、発光LED2の発光量を増加させて、受光素子の受光回数を増加させてもよい。このようにすることで、より正確に発光LED2が出射した赤外光の反射光を検出することができる。
【0057】
前述した実施例によれば、以下の赤外線センサ装置10および赤外線センサの制御方法が得られる。
【0058】
(付記1)車両に設けられ、赤外光を出射する発光LED2と、が出射した赤外光が物体に反射した反射光を受光するPD4b1と、PD4b1が受光した反射光に基づいて物体の接近を検出する受光処理部4bと、を備えた赤外線センサ装置10において、
太陽光の入射方向を取得するGPS受信機5、ナビゲーション部6と、
ナビゲーション部6が取得した太陽光の入射方向が、PD4b1に向いているか否かを判定するマイコン8と、
マイコン8が太陽光の入射方向がPD4b1に向いていると判定した場合は、発光LED2の発光量またはPD4b1の受光回数うちの少なくともいずれか一方を増加させるように変更するマイコン8と、
を備えていることを特徴とする赤外線センサ装置10。
【0059】
(付記2)車両に設けられた発光LED2から出射された赤外光が物体に反射した反射光を車両に設けられたPD4b1が受光して、PD4b1が受光した反射光に基づいて物体の接近を検出する赤外線センサの制御方法において、
太陽光の入射方向を取得するステップS203、S204と、
ステップS203で取得した太陽光の入射方向が、PD4b1に向かっているか否かを判定するステップS203、S204と、
ステップS203、S204で取得した太陽光の入射方向が、PD4b1に向かっていると判定した場合は、発光LED2の発光量またはPD4b1の受光回数うちの少なくともいずれか一方を増加させるように変更するステップS205と、
を備えていることを特徴とする赤外線センサの制御方法。
【0060】
これらの赤外線センサ装置10および赤外線センサの制御方法によれば、太陽光の影響により誤動作となる可能性が高い場合にのみ発光LED2またはPD4b1のうちの少なくともいずれか一方の太陽光による誤動作を避けるように発光量または受光回数を変更することができる。
【0061】
なお、前述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
2 発光LED(発光素子)
4 赤外センサ部
4b 受光処理部(検出手段)
4b1 PD(受光素子)
5 GPS受信機(太陽光入射方向取得手段、日時取得手段)
6 ナビゲーション部(太陽光入射方向取得手段、走行方向取得手段)
7 照度センサ(照度検出手段)
8 マイコン(判定手段、制御手段)
S203 時刻が早朝か判定(太陽光入射方向取得ステップ、判定ステップ)
S204 西向きに走行か判定(太陽光入射方向取得ステップ、判定ステップ)
S205 発光回数増加(制御ステップ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設けられ、赤外光を出射する発光素子と、前記発光素子が出射した前記赤外光が物体に反射した反射光を受光する受光素子と、前記受光素子が受光した前記反射光に基づいて前記物体の接近を検出する検出手段と、を備えた赤外線センサ装置において、
太陽光の入射方向を取得する太陽光入射方向取得手段と、
前記太陽光入射方向取得手段が取得した前記太陽光の入射方向が、前記受光素子に向いているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が前記太陽光の入射方向が前記受光素子に向いていると判定した場合は、前記発光素子または前記受光素子のうちの少なくともいずれか一方の動作量を増加させるように変更する制御手段と、
を備えていることを特徴とする赤外線センサ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記判定手段が前記太陽光の入射方向が前記受光素子に向いていると判定した場合に、前記受光素子の受光回数を増加させることを特徴とする請求項1に記載の赤外線センサ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記判定手段が前記太陽光の入射方向が前記受光素子に向いていると判定した場合に、前記発光素子の発光量を増加させることを特徴とする請求項1または2に記載の赤外線センサ装置。
【請求項4】
前記太陽光入射方向取得手段は、現在の日時を取得する日時取得手段と、現在の前記移動体の走行方向を取得する走行方向取得手段と、を備え、
前記制御手段は、前記日時取得手段が取得した現在の日時が早朝かつ前記走行方向取得手段が取得した現在の前記移動体の走行方向が西向きであった場合、または、前記日時取得手段が取得した現在の日時が夕方かつ前記走行方向取得手段が取得した現在の前記移動体の走行方向が東向きであった場合に、前記発光素子または前記受光素子のうちの少なくともいずれか一方の動作量を増加させるように変更する
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の赤外線センサ装置。
【請求項5】
前記受光素子近傍の照度を検出する照度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記照度検出手段が検出した照度が予め定めた所定の照度以上の場合に、前記発光素子または前記受光素子のうちの少なくともいずれか一方の動作量を増加させるように変更する
ことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の赤外線センサ装置。
【請求項6】
移動体に設けられた発光素子から出射された赤外光が物体に反射した反射光を前記移動体に設けられた受光素子が受光して、前記受光素子が受光した反射光に基づいて前記物体の接近を検出する赤外線センサの制御方法において、
太陽光の入射方向を取得する太陽光入射方向取得ステップと、
前記太陽光入射方向取得ステップで取得した前記太陽光の入射方向が、前記受光素子に向いているか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで前記太陽光の入射方向が前記受光素子に向いていると判定された場合は、前記発光素子または前記受光素子のうちの少なくともいずれか一方の動作量を増加させるように変更する制御ステップと、
を備えていることを特徴とする赤外線センサの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−113698(P2013−113698A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259786(P2011−259786)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】