説明

赤外線反射材料及びその製造方法並びにそれを含有した塗料、樹脂組成物

【課題】黒色を有するとともに、優れた赤外線反射能を有する赤外線反射材料を提供する。
【解決手段】ストロンチウム元素と、マンガン元素と、チタン元素とを含み、必要に応じてアルミニウム元素を含む複合酸化物は、黒色であり、優れた赤外線反射材料である。また、これらの材料は、ストロンチウム化合物とマンガン化合物とチタン化合物と、更に必要に応じてアルミニウム化合物等を所定量混合し、焼成するなどの方法で製造することができ、得られた複合酸化物は粉末状であるため塗料や樹脂組成物に配合して、種々の用途、例えば建造物の屋根や外壁に塗装したり、道路や歩道に塗装したりして、ヒートアイランド現象の緩和等に利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合酸化物系赤外線反射材料及びその製造方法に関する。また、その赤外線反射材料を含有した塗料、樹脂組成物、更には、前記の塗料を用いた赤外線反射材に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線反射材料は、太陽光等に含まれる赤外線を反射する材料である。この材料を用いることで、アスファルトやコンクリート等で覆われた地表面、建造物等が吸収する赤外線量を減少させることができるため、ヒートアイランド現象の緩和や夏場の建造物の冷房効率の向上等に利用されている。
赤外線反射材料としては例えば、黒色系材料としてCr、Cu−Cr複合酸化物、Fe−Cr複合酸化物、Co−Fe−Cr複合酸化物、Cu−Cr−Mn複合酸化物などのクロムを含有する化合物が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−72990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
黒色系赤外線反射材料の多くは、銅、クロム、コバルト等の重金属を含有しているが、このような重金属を含む材料の使用を控える傾向が強くなっている。特にクロムの安全性への懸念から、クロムを使用しない材料の開発が急務である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らは、黒色系の新規赤外線反射材料の開発を進めたところ、ストロンチウム元素と、マンガン元素と、チタン元素と、を含む複合酸化物が、黒色を有し、しかも、優れた赤外線反射能を有する材料であることを見出した。
【0006】
また、更にアルミニウム元素を含むことが、赤外線反射能を向上させる点で、好ましい。
【0007】
また、前記マンガン元素の含有量をαモルとし、前記チタン元素の含有量をβモルとした場合、α/βの値が、0.43<α/β<999であることが、優れた黒色度を確保することができる点で好ましい。
【0008】
また、本発明者らは、ストロンチウム化合物と、マンガン化合物と、チタン化合物と、を含む前駆体を600℃〜1500℃において焼成する工程により、上記複合酸化物系赤外線反射材料を製造できることを見出した。
【0009】
また、前記加熱する工程は、順に、600℃〜1000℃において前駆体を仮焼きする第一の工程と、1000℃〜1500℃において前駆体を焼成する第二の工程と、を有することが、赤味の少ない赤外線反射材料を製造する上で好ましい。
【0010】
また、前記チタン化合物には、アルミニウム元素を含むことが、優れた赤外線反射能を有する赤外線反射材料を製造する上で好ましい。
【0011】
また、前記前駆体は、フラックスを含むことが、前駆体の固相反応を促進させることができる点で好ましい。
【0012】
また、本発明者らは、上記赤外線反射材料のいずれかを塗料や樹脂組成物に配合して、種々の用途に用いることができることを見出した。
【0013】
また、本発明者らは、基材上に上記塗料を塗布することで、優れた赤外線反射材となることを見出した。
【発明の効果】
【0014】
本発明の赤外線反射材料は、ストロンチウム元素と、マンガン元素と、チタン元素と、を含む赤外線反射材料であって、黒色を有し、しかも、優れた赤外線反射能を有する。
【0015】
このような赤外線反射材料は、熱に安定な無機系成分を使用していることから、熱安定性、耐熱性にも優れ、クロム等の重金属を含有していないことから、安全性、環境問題に懸念がない。また、このような赤外線反射材料を混合した塗料を作製する場合は、塗布作業中における人体への安全性を確保できる。さらに、この塗料を基材等に塗布してなる赤外線反射材は、安全性に優れるとともに、環境に対する負荷も軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1乃至3で得られた各試料の赤外線反射率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の赤外線反射材料は、ストロンチウム元素と、マンガン元素と、チタン元素とを含ませており、その粉体色は黒色である。また、本発明の赤外線反射材料は、近赤外領域(800〜2500nmの波長領域)における赤外線反射能が優れている。
【0018】
この赤外線反射材料としては、例えば、ストロンチウム元素、マンガン元素、チタン元素及び酸素で構成される酸化物群が挙げられる。この酸化物群の一例として、ペロブスカイト型複合酸化物が挙げられる。このようなペロブスカイト型構造としては、ABO型構造(本明細書中において、Aサイトはストロンチウム元素、Bサイトはチタン元素及びマンガン元素、Oサイトは酸素元素である。)や、層状ペロブスカイト型の(n(ABO)・AO構造(当該層状ペロブスカイト型構造におけるAサイト、Bサイト、Oサイトに位置する元素群は前記ABO型構造に対応する元素群と同じである。)が挙げられる。層状ペロブスカイト型構造は、An+13n+1と表すこともでき、2つのABOユニットの間にAO層が入る構造である。上記酸化物群の具体的な例として(SrTiO:Mn)では、ABO型構造において、そのBサイトに、マンガン元素とチタン元素が、所定の割合で固溶している。なお、上記酸化物群については、所望の組成及び結晶構造に適宜調整することができる。
【0019】
本発明の赤外線反射材料は、マンガン元素の含有量をαモルとし、チタン元素の含有量をβモルとした場合、α/βの値が、0.43≦α/β≦999であることが、優れた黒色度を確保することができる点で好ましく、0.66≦α/β≦99が、より好ましい。
【0020】
また、本発明の赤外線反射材料は、ストロンチウム元素と、マンガン元素と、チタン元素と、を含む赤外線反射材料において、更に、アルミニウム元素を含ませてもよい。これにより、近赤外領域における赤外線反射能を向上させることができる。
【0021】
この赤外線反射材料としては、例えば、ストロンチウム元素、マンガン元素、チタン元素、アルミニウム元素及び酸素で構成される酸化物群が挙げられる。この酸化物群の一例として、ペロブスカイト型複合酸化物が挙げられる。このようなペロブスカイト型構造としては、上述したABO型構造や(n(ABO)・AO型構造において、そのBサイトに、マンガン元素とチタン元素とアルミニウム元素が、所定の割合で固溶している。なお、上記酸化物については、所望の組成及び結晶構造に適宜調整することができる。
【0022】
本発明の赤外線反射材料は、チタン元素の含有量をβモルとし、アルミニウム元素の含有量をγモルとした場合、γ/βの値が、0.0001≦γ/β≦1.0であることが、優れた黒色度を確保することができる点で好ましく、0.001≦γ/β≦0.1が、より好ましい。
【0023】
また、上記赤外線反射材料は、製造の際に使用したフラックスの残留物を含んでいてもよい。上記フラックスの残留物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、イットリウム等の元素が挙げられる。
【0024】
また、本発明に係る赤外線反射材料の性能に著しく悪影響を与えない程度の十分な量において、様々なドーパントを添加することができる。ドーパントとしては、例えば、周期表における1族、3族、4族、5族、6族、7族、8族、9族、10族、11族、12族、13族、14族、15族、16族、17族から選択される元素、ランタノイド元素及びアクチノイド元素が挙げられる。
【0025】
本発明の赤外線反射材料において、その実施例に含まれるストロンチウム元素、マンガン元素、チタン元素、あるいは必要に応じて含まれるアルミニウム元素やフラックスの残留物に起因する各元素の量は、蛍光X線分析から求められる。この蛍光X線分析で得られる各成分の価数から、電荷バランスを維持するのに必要な酸素の量を算出する。また、結晶構造はX線回折により確認することができる。
【0026】
また、赤外線反射材料の赤外線反射能及び色味については、一例として、下記の方法で測定することができる。具体的には、まず、得られた試料をメノウ乳鉢で十分に粉砕した後、白色度計NW−1(日本電色工業社製)で粉体色を測定する。次に、得られた試料を専用セルに入れ、紫外可視近赤外分光光度計V−670(日本分光社製、標準反射板としてスペクトラロン(Labsphere社製)を使用)で分光反射率(波長350〜2500nmの光の反射率)を測定する。更に、JIS R 3106に準じて日射反射率を計算した。
【0027】
上記粉体色は、Lab表色系の指数(L値、a値、b値)で表される。L値は明度指数であり、L値が大きいほど白色度が強いことを示し、L値が小さいほど黒色度が強いことを示す。色相彩度を表す指数であり、a値が正側に大きくなるほど赤味が強く負側に大きくなるほど緑味が強いことを示し、b値が正側に大きくなるほど黄味が強く負側に大きくなるほど青味が強いことを示す。黒色度はL値で表して30以下が好ましい。このように本発明の赤外線反射材料は、明度指数L値を低くすることができるため、黒色系顔料として用いることができる。
【0028】
以下、本発明の製造方法について、説明する。
【0029】
ストロンチウム化合物と、マンガン化合物と、チタン化合物と、必要に応じてアルミニウム化合物やフラックスを混合し、そうして得た前駆体を焼成する製造方法としては、例えば、固相反応法、ゾルゲル法、噴霧熱分解等の種々の方法が挙げられる。ここで本明細書における前駆体とは、赤外線反射材料の原料となる各化合物の混合物を言い、粉末混合、水系あるいは水溶液系での合成等、各種方法を用いて得られる。
【0030】
上記方法のうち、各原料化合物を混合した前駆体を焼成する固相合成法が、適度な粒子径を有する赤外線反射材料を得られるため好ましい。固相合成法において、ストロンチウム化合物としては、酸化物、水酸化物、炭酸塩等を用いることができ、マンガン化合物としては、酸化物、水酸化物、炭酸塩等を用いることができ、チタン酸化物としては酸化物、水酸化物、炭酸塩等を用いることができ、アルミニウム化合物としては、酸化物、水酸化物、炭酸塩等を用いることができる。次に、前記のそれぞれの原料化合物を秤量し、混合する。混合方法は、粉体の状態で混合する乾式混合、スラリーの状態で混合する湿式混合のいずれでもよく、撹拌混合機等の従来の混合機を用いて行うことができる。また、各種の粉砕機、噴霧乾燥機、造粒機、成形機等を用いて、粉砕、乾燥、造粒、成形と同時に混合することもできる。
【0031】
次に、得られた前駆体を、必要に応じて造粒、成形した後、焼成する。焼成の温度は少なくとも前駆体が固相反応する温度であればよく、600℃〜1500℃の範囲の温度であればよい。600℃〜900℃の比較的低温の領域において焼成する場合には、前駆体にフラックスを含ませることが、前駆体の固相反応を促進させることができる点で、好ましい。焼成時はいずれの雰囲気下でも行えるが、十分な赤外線反射能を保持するためには大気中で焼成するのが好ましい。
【0032】
前駆体にアルミニウム元素を含ませる他の方法として、チタン化合物の粒子表面及び/又は粒子内部に予め存在させたものを用いることができる。上記原料を用いる場合は、アルミニウム化合物とチタン化合物を混合する場合に比べて、単一相を得易く、また、赤外線反射能も向上する等の点で、好適である。
【0033】
本発明の赤外線反射材料の製造方法において、前記の焼成する工程は、600℃〜1000℃において前駆体を仮焼きする第一の工程と、第一の工程の後に1000℃〜1500℃において前駆体を焼成する第二の工程とを有することが好ましい。
【0034】
第一の工程の温度が、600℃より低い場合は、前駆体に含まれる炭酸等の離脱が進みにくく、また、1000℃より高い場合は、炭酸等の離脱が不十分のまま、複合酸化物の合成が進むため、好ましくない。第一の工程のより好ましい温度領域は850℃〜950℃である。
【0035】
第一の工程における所定温度の焼成時間は、1時間以上であること好ましい。1時間より短い場合は、前駆体からの炭酸や硝酸等の離脱が十分でない場合があるため、好ましくない。
【0036】
第二の工程の温度が1500℃より高い場合は、得られた複合酸化物の赤外線反射能が低下し易いため、好ましくない。第二の工程のより好ましい温度領域は1100℃〜1400℃であり、複合酸化物の合成が促進される点で、1200℃〜1400℃が更に好ましい。
【0037】
第二の工程における所定温度の焼成時間は、2時間以上であることが好ましい。2時間より短い場合は、目的相の合成が不十分となり易いため、好ましくない。このように、第一の工程で前駆体に含まれる炭酸等を十分に離脱させることにより、第二の工程で複合酸化物の合成を十分に促進させ、赤味を抑制することができる。
【0038】
第一の工程と第二の工程を、所定の温度勾配(例えば、300℃/h)で連続的に、又はステップ状(900℃で所定の時間温度を保持し、その後、1200度に昇温し、所定の時間温度を保持する等)に変化させてもよい。また、第一の工程後、仮焼きされた前駆体を炉から取り出し、粉砕後、再度炉へ戻し、1000℃〜1500℃に昇温して所定の時間温度を保持し焼成する場合は、得られる複合酸化物粉末の品質を、より均一に保つことができる点で、好ましい。焼成工程中に粉末をかき混ぜる作用を有する炉を使用する場合も、同様の効果を得ることができる。
【0039】
また、上記赤外線反射材料は、フラックスを含んだ前駆体を焼成することにより製造するのが好ましい。このようにして製造された赤外線反射材料は、フラックスを含まない前駆体を焼成したものに比べて、優れた赤外線反射能を有し、しかも、単相が得られ易く、また、結晶性が向上する。上記フラックスとしては、例えば、NaClやKCl、LiCl,MgCl、CaC1、SrC1、BaC1、ZnC1、YC1等が挙げられる。フラックスの含有量は適宜設定することができる。
【0040】
本発明の赤外線反射材料は、粉末、成形体等種々の形態で使用することができるが、粉末として用いる場合には、必要に応じて適宜粉砕して粒度を整えてもよく、成形体として用いる場合は、粉末を適当な大きさ、形に成形してもよい。粉砕機は例えば、ハンマーミル、ピンミル等の衝撃粉砕機、ローラーミル、パルベライザー等の摩砕粉砕機、ジェットミル等の気流粉砕機を用いることができる。成形機は例えば押出し成形機等の汎用の成形機、造粒機を用いることができる。
【0041】
また、本発明の赤外線反射材料は、十分な赤外線反射能を有するが、その他の赤外線反射能を有する化合物又は赤外線遮蔽(吸収)能を有する化合物を混合すると、より一層赤外線反射能を高めることができ、あるいは、特定波長の反射能を補完することができる。赤外線反射能を有する化合物又は赤外線遮蔽(吸収)能を有する化合物としては、従来から使用されているものを用いることができ、具体的には、アゾ系、多環式系(ペリレン系、フタロシアニン系)等の有機化合物や、二酸化チタン、アンチモンドープ酸化スズ、酸化タングステン、ホウ化ランタン等の無機化合物や、金属銀粉、金属銅粉等の金属粉などが挙げられ、二酸化チタン、金属粉がより好ましい。赤外線反射能を有する化合物又は赤外線遮蔽(吸収)能を有する化合物の種類、混合割合は、その用途に応じて適宜選定することができる。
【0042】
なお、本発明の赤外線反射材料を用いた塗料とは、前記の赤外線反射材料を含有する塗料である。本発明の塗料には、インキやインクといわれる組成物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
また、上記の塗料、インキ、或いは樹脂組成物には、樹脂に対して赤外線反射材料を任意の量を含有することができ、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは10重量%以上である。また、そのほかにそれぞれの分野で使用される組成物形成材料を配合し、更に各種の添加剤を配合してもよい。
【0044】
具体的には、塗料やインキとする場合、塗膜形成材料又はインキ膜形成材料のほかに、溶剤、分散剤、顔料、充填剤、骨材、増粘剤、フローコントロール剤、レベリング剤、硬化剤、架橋剤、硬化用触媒などを配合することができる。塗膜形成材料としては例えば、アクリル系樹脂、アルキド系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ系樹脂などの有機系成分や、オルガノシリケート、オルガノチタネート、セメント、石膏などの無機系成分を用いることができる。インキ膜形成材料としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩酢ビ系樹脂、塩素化プロピレン系樹脂などを用いることができる。これらの塗膜形成材料、インキ膜形成材料には、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂など各種のものを制限なく用いることができ、モノマーやオリゴマーの紫外線硬化性樹脂を用い、光重合開始剤や光増感剤を配合し、塗布後に紫外光を照射して硬化させると、基材に熱負荷を掛けず、硬度や密着性の優れた塗膜が得られるので好ましい。
【0045】
本発明の塗料を基材上に塗布して赤外線反射材を製造することができる。この赤外線反射材は赤外線の遮蔽材として、更には遮熱材としても用いることができる。基材としては、種々の材料、材質のものを用いることができる。具体的には各種建材や土木材料等を使用することができ、製造された赤外線反射材は、家屋や工場等の屋根材、壁材又は床材、あるいは、道路や歩道を構成する舗装材などとして使用することができる。赤外線反射材の厚みは、各種の用途に応じて任意に設定でき、例えば、屋根材として用いる場合には、概ね0.1〜0.6mm、好ましくは0.1〜0.3mmとし、舗装材として用いる場合には、概ね0.5〜5mm、好ましくは1〜5mmとする。基材上に塗布するには、塗布、吹き付けによる方法や、コテによる方法が可能であり、塗布後必要に応じて乾燥したり、焼付けしたり、養生したりしてもよい。
【0046】
また、樹脂組成物とする場合、樹脂のほかに、顔料、染料、分散剤、滑剤、酸化防止材、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、難燃剤、殺菌剤などを本発明の赤外線反射材料とともに練り込み、フィルム状、シート状、板状などの任意の形状に成形する。樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ乳酸系樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール系樹脂、ウレタン系樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができる。このような樹脂組成物は、フィルム、シート、板等の任意の形状に成形して、工業用、農業用、家庭用等の赤外線反射材として用いることができる。また、赤外線を遮蔽して遮熱材としても用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0048】
実施例1
炭酸ストロンチウムSrCO(レアメタリック製、純度99.99%)3.95g、超微粒子酸化チタン(石原産業製PT−401M)1.11g、二酸化マンガンMnO(高純度化学研究所製、純度99.99%)1.16gを、メノウ乳鉢で十分に混合した後、アルミナるつぼに入れ、800℃で4時間仮焼きをし、一旦炉から取り出して混合し、再度炉に入れて、1300℃で4時間焼成した。次に、得られた粉末(試料A)を、測定試料用ホルダーに載せ、それを株式会社リガク製X線回折装置「RINT1200」にセットし、Cu/Kα線、スキャンスピード3.0°/分の条件で測定を行った。これにより、得られた粉末が、ABOで表されるペロブスカイト型構造であることが確認された。また、蛍光X線測定(RIX2100、リガク製)により、得られた粉末中におけるマンガン元素の含有量とチタン元素の含有量のモル比α/βが、1.0であることが確認された。
【0049】
実施例2
炭酸ストロンチウムSrCO(レアメタリック製、純度99.99%)3.95g、超微粒子酸化チタン(石原産業製TTO−55A、酸化チタンの粒子表面に水酸化アルミニウムを被覆処理したもの)1.08g、二酸化マンガンMnO(高純度化学研究所製、純度99.99%)1.16gを所定量、メノウ乳鉢で十分に混合した後、アルミナるつぼに入れ、900℃で4時間仮焼きをし、一旦炉から取り出して混合し、再度炉に入れて、1300℃で4時間焼成した。得られた粉末(試料B)を、実施例1と同様の方法によりX線及び蛍光X線で測定した。これにより、得られた粉末が、ABOで表されるペロブスカイト型構造であることが確認された。また、得られた粉末中におけるマンガン元素の含有量とチタン元素の含有量のモル比α/βが1.0であり、粉末中におけるアルミニウム元素の含有量をγモルとした場合、γ/βが0.014であることが確認された。
【0050】
実施例3
炭酸ストロンチウムSrCO(レアメタリック製、純度99.99%)3.95g、超微粒子酸化チタン(石原産業製TTO−55A、酸化チタンの粒子表面に水酸化アルミニウムを被覆処理したもの)1.08g、二酸化マンガンMnO(高純度化学研究所製、純度99.99%)1.16gと、フラックスとして塩化ナトリウムNaCl0.25gを、メノウ乳鉢で十分に混合した後、アルミナるつぼに入れ、900℃で4時間仮焼きをし、一旦炉から取り出して混合し、再度炉に入れて、1300℃で4時間焼成した。得られた粉末(試料C)を、実施例1と同様の方法によりX線及び蛍光X線で測定した。これにより、得られた粉末が、ABOで表されるペロブスカイト型構造であることが確認された。また、得られた粉末中におけるマンガン元素の含有量とチタン元素の含有量のモル比α/βが1.0であり、かつ、粉末中におけるアルミニウム元素の含有量をγモルとした場合、γ/βが0.015であることが確認された。
【0051】
(粉体色の測定)
実施例で得た試料(A〜C)をメノウ乳鉢で十分に粉砕した後、白色度計NW−1(日本電色工業社製)で粉体の色を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0052】
(赤外線反射率の測定及び日射反射率の測定)
実施例で得た試料(A〜C)を専用セルに入れ、紫外可視近赤外分光光度計V−670(日本分光社製、標準反射板としてスペクトラロン(Labsphere社製を使用)で、分光反射率(波長350〜2500nm)の光の反射率を測定した。更に、JIS R 3106に準じて日射反射率(700〜2100nm)の計算を行った。試料A〜Cの反射率を図1に示し、日射反射率を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
図1に示すように、試料A〜試料Cは、可視光領域における反射率が低く、近赤外領域における赤外線反射率が高いため、赤外線反射材料として、優れた性能を有することが確認された。
【0055】
アルミニウムを含んだ試料B、試料Cは、アルミニウムを含んでいない試料Aに比べて、日射反射率及び近赤外領域における赤外線反射能が、共に向上していることが確認された。
【0056】
アルミニウムを含んだ試料間において、前駆体にフラックスを含ませて製造した試料Cは、前駆体にフラックスを含ませずに製造した試料Bに比べて、日射反射率及び近赤外領域における赤外線反射能が、共に向上していることが確認された。
【0057】
実施例で得られた試料A〜試料Cを用いて塗料を作製し、これらをガラス基材に塗布することにより、赤外線反射材を作製できることを確認した。
【0058】
以上、本発明について説明したが、本発明は上記実施例によって技術範囲を限定されることは無い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストロンチウム元素と、
マンガン元素と、
チタン元素と、
を含む複合酸化物系赤外線反射材料。
【請求項2】
更にアルミニウム元素を含む請求項1に記載の赤外線反射材料。
【請求項3】
前記マンガン元素の含有量をαモルとし、前記チタン元素の含有量をβモルとした場合、α/βの値が、0.43≦α/β≦999であることを特徴とする請求項1又は2に記載の赤外線反射材料。
【請求項4】
ストロンチウム化合物と、マンガン化合物と、チタン化合物と、を含む前駆体を600℃〜1500℃において焼成する工程を有する複合酸化物系赤外線反射材料の製造方法。
【請求項5】
前記焼成する工程は、順に、
600℃〜1000℃において前駆体を仮焼きする第一の工程と、
1000℃〜1500℃において前駆体を焼成する第二の工程と、
を有する請求項4に記載の複合酸化物系赤外線反射材料の製造方法。
【請求項6】
前記チタン化合物は、アルミニウム元素を含む請求項4又は5に記載の複合酸化物系赤外線反射材料の製造方法。
【請求項7】
前記前駆体は、フラックスを含む請求項4〜6のいずれかに記載の複合酸化物系赤外線反射材料の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載の赤外線反射材料を含む塗料。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれかに記載の赤外線反射材料を含む樹脂組成物。
【請求項10】
基材上に請求項8に記載の塗料が塗布された赤外線反射材。

【図1】
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【公開番号】特開2011−94086(P2011−94086A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252100(P2009−252100)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】