説明

赤外線反射材料

【課題】近赤外域の赤外線反射性能に優れた赤外線反射材料を提供する。
【解決手段】アルミニウム含有マンガン酸カルシウムを含み、該アルミニウム含有マンガン酸カルシウムはマンガン(IV)酸カルシウム(Ca2MnO4)におけるMnの一部がAlで置換されており、Ca2AlpMn1-pO4(pは、0.03以下の正数)の組成式で表される層状ペロブスカイト型結晶構造とCa2AlqMn2-qO5(qは、2未満の正数)と表すことができるブラウンミラライト型結晶構造とを有する赤外線反射材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線反射材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線反射材料としては、様々なものが知られており、具体的には、例えば、カルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属と、マンガン(Mn)と、アルミニウム(Al)とを含有する複合酸化物(アルミニウム含有マンガン酸カルシウム)を含むものが知られている(特許文献1)。
【0003】
この種の赤外線反射材料は、上記の複合酸化物がペロブスカイト型結晶構造を有しており、例えば、波長780〜2500nmの近赤外域の赤外線を反射する性能を有する。この種の赤外線反射材料は、具体的には例えば、直射日光を受ける建築物の外壁などに塗布され、日光に含まれる近赤外域の赤外線による外壁の温度上昇を抑制するために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−231935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のごとく複合酸化物が層状ペロブスカイト型結晶構造のみを有する赤外線反射材料においては、近赤外域の赤外線を反射する性能が必ずしも十分でないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点等に鑑み、近赤外域の赤外線反射性能に優れた赤外線反射材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明に係る赤外線反射材料は、アルミニウム含有マンガン酸カルシウムを含み、該アルミニウム含有マンガン酸カルシウムが層状ペロブスカイト型結晶構造とブラウンミラライト型結晶構造とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る赤外線反射材料は、近赤外域の赤外線反射性能に優れているという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】アルミニウム含有マンガン酸カルシウムにおけるAl/Mn比と粉末X線回折パターンのピークシフト値との関係を表すグラフ。
【図2】比較例1の赤外線反射材料、並びに、マンガン酸カルシウム及び酸化カルシウム標準物質の粉末X線回折パターン。
【図3】赤外線反射材料の粉末X線回折パターン。
【図4】赤外線反射材料の日射反射率を表すグラフ。
【図5】赤外線反射材料の近赤外域における日射反射率を表すグラフ。
【図6】赤外線反射材料の近赤外域の高波長側(2000〜2500nm)における日射反射率を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る赤外線反射材料の実施形態について説明する。
【0011】
本実施形態の赤外線反射材料は、アルミニウム含有マンガン酸カルシウムを含み、該アルミニウム含有マンガン酸カルシウムが層状ペロブスカイト型結晶構造とブラウンミラライト型結晶構造とを有するものである。
【0012】
前記アルミニウム含有マンガン酸カルシウムは、前記層状ペロブスカイト型結晶構造、及び、前記ブラウンミラライト型結晶構造の両方を有している。即ち、アルミニウム含有マンガン酸カルシウムには、それぞれの結晶構造の結晶相が混在している。
【0013】
前記アルミニウム含有マンガン酸カルシウムにおける前記層状ペロブスカイト型結晶構造では、マンガン(IV)酸カルシウム(Ca2MnO4)におけるMnの一部がAlで置換されている。従って、該アルミニウム含有マンガン酸カルシウムの組成式は、Ca2AlpMn1-p4と表すことができる(pは、0.03以下の正数)。なお、pが0.03以下の正数であることについては、後述する。
【0014】
一般的に、前記層状ペロブスカイト型結晶構造は、AをMg以外のアルカリ土類金属元素とし、BをMn元素、Oを酸素元素とすると、n(ABO3)・AO、又はAn+1n3n+1の組成式で表すことができるものである。斯かる層状ペロブスカイト型結晶構造は、ABO3のペロブスカイト単位の間に、AO層が配された構造である。
【0015】
前記アルミニウム含有マンガン酸カルシウムが層状ペロブスカイト型結晶構造を有することは、粉末X線回折により確認できる。具体的には、Cu/Kα線を用いてスキャンスピード4.0°/分の測定条件にて粉末X線回折パターンを得て、得られたX線回折パターンをRigaku社製の解析ソフトウェア「PDXL」により解析し、無機材料のデータベース(JCPDSカード)から、所定の結晶構造(Ca2MnO4の層状ペロブスカイト型結晶構造)であることを特定することにより確認できる。
【0016】
前記アルミニウム含有マンガン酸カルシウムにおける前記ブラウンミラライト型結晶構造では、マンガン(III)酸カルシウム(Ca2Mn25)におけるMnの一部がAlで置換されている。従って、該アルミニウム含有マンガン酸カルシウムの組成式は、Ca2AlqMn2-q5と表すことができる(qは、2未満の正数)。
【0017】
一般的に、前記ブラウンミラライト型結晶構造は、Qをアルカリ土類金属元素とし、Rを3価の金属元素、Oを酸素元素とすると、Q225の組成式で表すことができるものである。斯かるブラウンミラライト型結晶構造は、八面体(RO6)と四面体(RO4)とからなる層状構造を有している。
【0018】
前記アルミニウム含有マンガン酸カルシウムがブラウンミラライト型結晶構造を有することは、粉末X線回折により確認できる。具体的には、Cu/Kα線を用いてスキャンスピード4.0°/分の測定条件で測定した粉末X線回折パターンにおいて、上述した結晶構造の特定方法と同様の方法により、得られたX線回折パターンから無機材料のデータベース(JCPDSカード)を用いて特定の結晶構造を特定することにより確認できる。
【0019】
前記アルミニウム含有マンガン酸カルシウムにおいては、マンガン(Mn)に対するアルミニウム(Al)のモル比が0.03を超えている。即ち、Al/Mn>0.03である。Al/Mnが0.03を超えているため、アルミニウム含有マンガン酸カルシウムが、層状ペロブスカイト型結晶構造とブラウンミラライト型結晶構造とを有している。
【0020】
前記アルミニウム含有マンガン酸カルシウムにおけるMnに対するAlのモル比、即ち、Al/Mnの値は、より確実にブラウンミラライト型結晶構造が生じ、赤外線反射材料の近赤外域の反射性能がより優れたものになるという点で、0.035以上(Al/Mn≧0.035)であることが好ましく、0.05以上(Al/Mn≧0.05)であることがより好ましく、0.08以上(Al/Mn≧0.08)であることがさらに好ましい。また、赤外線反射材料の近赤外域の反射性能がより優れたものになるという点で、0.50以下(Al/Mn≦0.50)であることが好ましく、0.30以下(Al/Mn≦0.30)であることがより好ましく、0.20以下(Al/Mn≦0.20)であることがさらに好ましく、0.15以下(Al/Mn≦0.15)であることがよりさらに好ましく、0.10以下(Al/Mn≦0.10)であることが最も好ましい。
また、前記Al/Mnの値は、近赤外域の長波長側(波長2000〜2500nm)における反射性能がより優れたものになるという点で、0.50を超えている(Al/Mn>0.50)ことが好ましい。また、同様の理由により、1.50以下(Al/Mn≦1.50)であることが好ましく、1.00以下(Al/Mn≦1.00)であることがより好ましく、0.80以下(Al/Mn≦0.80)であることがさらに好ましい。
【0021】
前記アルミニウム含有マンガン酸カルシウムは、通常、粒子状の形状を有している。該形状としては、特に限定されず、例えば、球状、針状、板状などが挙げられる。
【0022】
前記アルミニウム含有マンガン酸カルシウムの粒子は、大きさが特に限定されるものではなく、通常、0.1〜5.0μmである。
【0023】
次に、前記赤外線反射材料の製造方法について説明する。
【0024】
前記赤外線反射材料は、Caを含むカルシウム原料とMnを含むマンガン原料とAlを含むアルミニウム原料とを混合する混合工程と、混合工程により混合した混合物を焼成する焼成工程とを実施し、
前記混合工程では、Mnに対するAlのモル比がAl/Mn≧0.035となるように前記カルシウム原料と前記マンガン原料と前記アルミニウム原料とを混合することにより製造することができる。
【0025】
具体的には、前記赤外線反射材料は、前記混合工程において、例えば、炭酸カルシウム(CaCO3)などの無機カルシウム原料と、酸化マンガン(MnO2)などの無機マンガン原料と、酸化アルミニウム(Al23)などの無機アルミニウム原料とを粉砕混合し、次に、前記焼成工程において、上記のごとく粉砕混合した混合物を、1000℃以上の温度にて所定時間をかけて焼成することにより製造することができる。
【0026】
前記混合工程においては、乳鉢及び乳棒を用いた粉砕混合、乾式ボールミルを用いた粉砕混合などを採用することができる。
【0027】
前記カルシウム原料、前記マンガン原料、又は、前記アルミニウム原料としては、それぞれCa、Mn、又はAlの金属を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩などを用いることができる。
【0028】
具体的には、前記カルシウム原料としては、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムなどのカルシウム含有無機化合物を用いることができる。
前記マンガン原料としては、酸化マンガン、水酸化マンガン、炭酸マンガンなどのマンガン含有無機化合物を用いることができる。
前記アルミニウム原料としては、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウムなどのアルミニウム含有無機化合物を用いることができる。
【0029】
前記混合工程においては、ブラウンミラライト型結晶構造を有するアルミニウム含有マンガン酸カルシウムを調製すべく、マンガン(Mn)及びアルミニウム(Al)のモル比が、Al/Mn>0.03となるように、マンガン原料、アルミニウム原料、及びカルシウム原料を粉砕混合する。
【0030】
ここで、Al/Mn>0.03となるように、マンガン原料、アルミニウム原料、及びカルシウム原料を混合することにより、ブラウンミラライト型結晶構造が生じることについて、詳細を説明する。
【0031】
層状ペロブスカイト型結晶構造を有するアルミニウム含有マンガン酸カルシウムは、層状ペロブスカイト型結晶構造を有するマンガン酸カルシウム(Ca2MnO4)におけるMnサイトの一部がAlで置換されたものである。MnサイトにどれだけのAlが置換し得るかについては、下記のようにして調査する。
即ち、原料としての炭酸カルシウム(CaCO3)及び酸化マンガン(MnO2)を、CaCO3:MnO2=2:1のモル比となるように混合し、さらに上述した焼成によって金属元素としてCa及びMnを含むベース酸化物(Ca2MnO4)を作製する。斯かるベース酸化物は、粉末X線回折により、層状ペロブスカイト型結晶構造を有することが確認される。
一方、原料としての炭酸カルシウム(CaCO3)及び酸化マンガン(MnO2)の他、さらに原料としての酸化アルミニウム(Al23)を、Al/Mn比が0を超え0.3以下の範囲でそれぞれ加え、同様にして複数種のAl含有酸化物を作製する。
そして、ベース酸化物、及び、各Al含有酸化物について、粉末X線回折により結晶構造を評価する。
【0032】
Al含有酸化物においては、Al/Mn比が少なくとも所定値までは、Al/Mn比が大きくなることに伴い、ベース酸化物のCa2MnO4に関わるX線回折ピークが、低角度側へシフトする。一方、Al/Mn比が所定値を超えると、Al/Mn比が大きくなっても、上記のピークのシフトが認められなくなる。
また、Al/Mn比が所定値以下であると、層状ペロブスカイト型結晶構造に特有のX線回折ピークのみが認められるものの、Al/Mn比が所定値を超えると、層状ペロブスカイト型結晶構造に特有のX線回折ピークの他に、ブラウンミラライト型結晶構造に特有のX線回折ピークも認められるようになる。
【0033】
このことから、層状ペロブスカイト型結晶構造を有する上記のベース酸化物においては、Al/Mn比が少なくとも所定値以下であれば、層状ペロブスカイト型結晶構造を保ちつつMnがAlと置換でき、層状ペロブスカイト型結晶構造においてAlが固溶して存在することから、層状ペロブスカイト型結晶構造のみが存在する。一方、Al/Mn比が所定値を超えると、Al含有酸化物が層状ペロブスカイト型結晶構造の他に、ブラウンミラライト型結晶構造を有するようになる。
【0034】
上述したAl/Mn比の所定値は、後述する実施例においても示すように0.03である。従って、Al/Mnの値が0.03を超えることにより、確実にブラウンミラライト型結晶構造が生じる。Al/Mn比の所定値については、後述する実施例においても詳細を説明する。
【0035】
前記混合工程においては、層状ペロブスカイト型結晶構造、及び、ブラウンミラライト型結晶構造をより確実にアルミニウム含有マンガン酸カルシウムに生じさせることができるという点で、カルシウム(Ca)及びマンガン(Mn)の量の比が、好ましくは1.0≦Ca/Mn≦3.0となるように、より好ましくは1.5≦Ca/Mn≦2.5となるように、マンガン原料、アルミニウム原料、及びカルシウム原料を混合する。
【0036】
前記焼成工程においては、通常、1000℃以上の温度で焼成し、より確実に層状ペロブスカイト型結晶構造、及び、ブラウンミラライト型結晶構造を有するアルミニウム含有マンガン酸カルシウムを生じさせることができるという点で、1200℃以上の温度で焼成することが好ましい。また、必要以上の加熱を要さないという点で、通常、1500℃以下の温度で焼成する。
【0037】
また、前記焼成工程においては、より確実に層状ペロブスカイト型結晶構造、及び、ブラウンミラライト型結晶構造を有するアルミニウム含有マンガン酸カルシウムを生じさせることができるという点で、焼成前の混合物を1時間以上かけて焼成することが好ましい。また、通常、1200℃以上の温度にて24時間以下焼成する。
【0038】
前記赤外線反射材料は、上述したアルミニウム含有マンガン酸カルシウムの他に、必要に応じて、溶媒、界面活性剤などの分散安定剤、又は、塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの融剤等を含み得る。
【0039】
前記赤外線反射材料は、具体的には例えば、液状塗料又は粉体塗料などの塗料と混合することにより調製したコーティング剤に配合され、該コーティング剤が建築物の外壁や道路表面などに塗装されることにより使用され得る。また、樹脂と混合することにより調製した樹脂組成物に配合され、該樹脂組成物が所望の形状に成形されることにより使用され得る。
【0040】
前記赤外線反射材料は、波長780nm〜2500nmの近赤外線を反射する性能に優れており、例えば、太陽光が照射される条件下において、赤外線を反射する用途で好適に使用される。
【0041】
本実施形態の赤外線反射材料は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の赤外線反射材料に限定されるものではない。
また、一般の赤外線反射材料において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において採用することができる。
【実施例】
【0042】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
以下に示すようにして、赤外線反射材料を製造した。
即ち、炭酸カルシウムCaCO3(和光純薬社製、純度99.5%)5.20g、二酸化マンガンMnO2(和光純薬社製、純度99.5%)2.23g、酸化アルミニウムAl23(和光純薬社製、純度98%)0.07gを、乳鉢及び乳棒で十分に撹拌及び混合した後、アルミナ坩堝に入れ、モトヤマ社製「超高速昇温電気炉」を用いて、大気雰囲気下で1300℃の温度にて4時間(1300℃までの昇温速度200℃/h)の焼成を行い、その後室温まで冷却して赤外線反射材料を製造した。
【0044】
(実施例2〜8)
炭酸カルシウムCaCO3、二酸化マンガンMnO2、及び、酸化アルミニウムAl23を表1に示す量にて混合した点以外は、それぞれ実施例1と同様にして赤外線反射材料を製造した。
【0045】
(比較例1〜3)
炭酸カルシウムCaCO3、二酸化マンガンMnO2、及び、酸化アルミニウムAl23を表1に示す量にて混合した点以外は、それぞれ実施例1と同様にして赤外線反射材料を製造した。
【0046】
【表1】

【0047】
<層状ペロブスカイト型結晶構造を有するCa2MnO4のMnサイトへのAl置換可能量>
ここで、層状ペロブスカイト型結晶構造を有するアルミニウム含有マンガン酸カルシウムにおいて、Mnと置換し得るAlの量を測定すべく、下記の測定を行った。
即ち、実施例1及び4、比較例1及び3の赤外線反射材料2gに対して、純度99.9%のケイ素(Si)(和光純薬社製)を0.1g加え、乳鉢及び乳棒を用いて十分に粉砕混合し、測定用サンプルを得た。
各測定用サンプルを測定機器(リガク製社 製品名「RINT2500VHF」)の試料ホルダーに載せてセットし、Cu/Kα線を用いて、スキャンスピード4.0°/分の測定条件で粉末X線回折測定を行った。
各測定用サンプルにおいて得られたX線回折パターンにおいて、ケイ素の(111)面に基づくピークの位置を基準として、層状ペロブスカイト型結晶構造における(116)面に基づくピークの位置を補正した。
そして、補正したピークの位置と、Mnが置換していない層状ペロブスカイト型結晶構造における(116)面に基づく位置の差からピークのシフト値を求めた。
【0048】
横軸に添加した原料のAl/Mnモル比、縦軸にピークのシフト値をとり、測定用サンプルにおける層状ペロブスカイト型結晶構造の(116)面に基づくピークのシフト値をプロットしたグラフを図1に示す。
図1から把握できるように、Mnに対するAlのモル比、即ち、Al/Mnが0.03を超えると、ピークシフト値が一定になる。従って、アルミニウム含有マンガン酸カルシウムは、Al/Mnが0.03以下となるように、カルシウム原料、アルミニウム原料、及びマンガン原料を配合すれば、層状ペロブスカイト型結晶構造においてAlがMnと置換できる。
【0049】
<赤外線反射材料における結晶構造の確認>
比較例1にて製造した赤外線反射材料の一部を取り出し、粉末X線回折により赤外線反射材料に含まれる結晶構造を確認した。
詳しくは、赤外線反射材料の一部を測定機器(リガク製社 製品名「RINT2500VHF」)の試料ホルダーに載せてセットし、Cu/Kα線を用いて、スキャンスピード4.0°/分の測定条件で測定を行った。
【0050】
比較例1、及び、マンガン酸カルシウム標準サンプル(Ca2MnO4)の測定結果(粉末X線回折パターン)を図2に示す。
図2に示すように、比較例1の材料においては、マンガン酸カルシウムに起因するピークが認められる。また、マンガン酸カルシウムに含まれる層状ペロブスカイト型結晶構造の(116)面に基づく2θ=33.1°付近、及び(200)面に基づく34.6°付近のピークが認められる。
【0051】
比較例1及び3、実施例1〜4の材料の測定結果(粉末X線回折パターン)を図3に示す。
図3に示すように、Al/Mnのモル比が0.03を超えるように、カルシウム原料、アルミニウム原料、及びマンガン原料を配合して赤外線反射材料を製造することにより、アルミニウム含有マンガン酸カルシウムが層状ペロブスカイト型結晶構造の他、ブラウンミラライト型結晶構造を有するようになる。
なお、ブラウンミラライト型結晶構造に特有のピーク位置は、32〜34°付近に認められる。具体的には、ブラウンミラライト型結晶構造に特有のピークについては、例えば、上記の「JCPDSカード」から把握できるように、(200)面に基づく2θ=32.74°付近のピーク、(141)面に基づく2θ=33.74°付近のピーク、(002)面に基づく2θ=34.17°付近のピークなどが知られている。
【0052】
<赤外線反射材料の赤外線反射率の測定>
各実施例及び各比較例にて製造した赤外線反射材料の一部を石英セルにいれ、JIS K5602(塗膜の日射反射率の求め方)に準じて、分光光度計(分解能1nm、島津製作所社製 自記分光光度計 製品名「UV−3150」)を用いて、近赤外域(波長:780〜2500nm)での分光反射率を測定し、この測定値における、JIS K5602の表1の「基準太陽光の重価係数」に記載された各波長における「重価係数」から、JIS K5602の「8 日射反射率の求め方」に記載された数式より、近赤外域(780〜2500nm)における日射反射率を算出した。なお、測定においては、標準白色板としてJIS K5602に規定されたふっ素樹脂系標準白色板に換えて、硫酸バリウムからなる白色板を用いた。
【0053】
実施例1〜8、及び、比較例1〜3の赤外線反射材料の測定結果(波長500〜2500nmにおける日射反射率)を図4に示す。
また、算出した近赤外域における日射反射率を表2に示し、表2における近赤外域の日射反射率をグラフ化したものを図5に示す。また、表2における近赤外域の高波長側(2000〜2500nm)の日射反射率をグラフ化したものを図6に示す。
なお、上記の測定では、硫酸バリウムからなる白色板を標準白色板として用いているため、近赤外域の高波長側の日射反射率において、該標準白色板より反射量が多くなることにより数値が一部100%を超えている。
【0054】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム含有マンガン酸カルシウムを含み、該アルミニウム含有マンガン酸カルシウムが層状ペロブスカイト型結晶構造とブラウンミラライト型結晶構造とを有することを特徴とする赤外線反射材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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