説明

走行式高圧空気注入機

【課題】走行しながら深層部に高圧空気を注入することができる走行式高圧空気注入機の提供。
【解決手段】後部に車輪を有し前部がトラクターに連結可能であり内部に取り込んだ空気を圧縮してタンクに蓄積するトレーラーと、トレーラーに搭載したタンクからホースを介して送られた高圧空気を先端に空けた噴射口から噴射するプローブと、プローブを接続したトロリーを水平移動させるスライド機構を備えたアーム部と、アーム部を上下移動させる昇降機構を備えたタワー部とからなり、トレーラーを走行させながらアーム部を下降させてプローブを土壌に突き刺し、トレーラーの走行に伴いアーム部のトロリーを後方に移動させながら高圧空気の噴射を行い、アーム部を上昇させてプローブを土壌から引き抜いたらアーム部のトロリーを前方に戻すことにより、連続して土壌の改良を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行しながら深層部に高圧空気を注入することができる走行式高圧空気注入機に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ場などの芝生は、管理が不十分であると透水性が悪くなり芝根が腐ったりするため、エアレーションにより土壌の通気を良くし活性化する必要がある。芝生の土壌をエアレーションする装置としては、灌注機などが従来技術として知られている。
【0003】
特許文献1に記載されているように、効率良くエアレーションを行うことのできる土壌改良装置の発明も公開されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術は、高圧水を噴射することにより芝土に対し一定間隔毎に一定の深さの穴を形成するものであり、深層部に問題を抱える土壌に対しては効果が得られないという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、走行しながら深層部に高圧空気を注入することができる走行式高圧空気注入機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、後部に車輪を有し前部がトラクターに連結可能であり内部に取り込んだ空気を圧縮してタンクに蓄積するトレーラーと、前記トレーラーに搭載したタンクからホースを介して送られた高圧空気を先端に空けた噴射口から噴射するプローブと、前記プローブを接続したトロリーを水平移動させるスライド機構を備えたアーム部と、前記アーム部を上下移動させる昇降機構を備えたタワー部とからなり、前記トレーラーを走行させながら前記アーム部を下降させて前記プローブを土壌に突き刺し、前記トレーラーの走行に伴い前記アーム部のトロリーを後方に移動させながら高圧空気の噴射を行い、前記アーム部を上昇させて前記プローブを土壌から引き抜いたら前記アーム部のトロリーを前方に戻すことにより、連続して土壌の改良を行うことを特徴とする走行式高圧空気注入機の構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、土壌深くに高圧空気を注入して固まった土壌を破砕し立体的に連絡した空隙を形成することで、深層部に問題を抱える土壌を改良することができる。また、走行しながら効率的に作業することができる。
【0008】
地面に高圧空気等を噴射して穴を空ける訳ではなく、プローブを瞬時に深い位置まで打ち込むので、芝生への損傷を少なくすることができ、さらに、土壌へのエアレーション効果も大きい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明である走行式高圧空気注入機の後方斜視図である。
【図2】本発明である走行式高圧空気注入機のトラクターを分離した状態における前方斜視図である。
【図3】本発明である走行式高圧空気注入機の各部を分離した状態を示す図である。
【図4】本発明である走行式高圧空気注入機の注入機の斜視図である。
【図5】本発明である走行式高圧空気注入機のアーム部の斜視図である。
【図6】本発明である走行式高圧空気注入機のプローブの正面図である。
【図7】本発明である走行式高圧空気注入機の注入手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明である走行式高圧空気注入機は、後部に車輪を有し前部がトラクターに連結可能であり内部に取り込んだ空気を圧縮してタンクに蓄積するトレーラーと、前記トレーラーに搭載したタンクからホースを介して送られた高圧空気を先端に空けた噴射口から噴射するプローブと、前記プローブを接続したトロリーを水平移動させるスライド機構を備えたアーム部と、前記アーム部を上下移動させる昇降機構を備えたタワー部とからなり、前記トレーラーを走行させながら前記アーム部を下降させて前記プローブを土壌に突き刺し、前記トレーラーの走行に伴い前記アーム部のトロリーを後方に移動させながら高圧空気の噴射を行い、前記アーム部を上昇させて前記プローブを土壌から引き抜いたら前記アーム部のトロリーを前方に戻すことにより、連続して土壌の改良を行うことを特徴とする。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明である走行式高圧空気注入機の後方斜視図である。走行式高圧空気注入機1は、トレーラー2、注入機3、タンク4、外部ホース5等からなり、トラクター6で引くことにより走行させることができる。
【0012】
トレーラー2は、外部から空気を取り込んで圧縮するためのコンプレッサーを備える。尚、コンプレッサーを稼働するためのエンジン、燃料タンク、バッテリ等も内蔵する。また、注入機3とタンク4が接続され、トラクター6に連結することが可能である。
【0013】
注入機3は、タンク4から高圧空気の供給を受けて、芝生をエアレーションするための機器であり、走行しながらでも土壌の深層部に対し高圧空気を送り込むことを可能にする機構を有する。
【0014】
タンク4は、トレーラー2で圧縮した空気を蓄積するための密閉容器であり、外部ホース5を介して注入機3に高圧空気を供給する。内部の気圧が高くなることから金属などが用いられる。
【0015】
外部ホース5は、タンク4と注入機3を繋ぎ、タンク4の高圧空気を注入機3に送るための管状の部材である。ゴム、樹脂、金属などが用いられるが、気体が漏れないように気密性が要求される。
【0016】
トラクター6は、単独で自力走行できない車両を牽引及び制御するための車両である。トレーラー2の後部には車輪2jがあるが、走行するための動力は搭載していないので、前部をトラクター6で牽引する。
【0017】
図2は、本発明である走行式高圧空気注入機のトラクターを分離した状態における前方斜視図である。トレーラー2は、収容部2aに注入機3が収容可能で、搭載部2bにタンク4を搭載可能である。
【0018】
トレーラー2は、カバー2c、クーラー2d、燃料導入口2e、制御パネル2f、送風口2g、連結具2h、支脚2i、車輪2j等を備える。また、タンク4は、計器4a、接続部4b等を備える。
【0019】
収容部2aは、トレーラー2の後面から前面側に向かって中央に大きく凹状に空間を確保したもので、その空間に注入機3が収容される。尚、保護チェーン3aにより外部ホース5を挟み込まないようにする。
【0020】
搭載部2bは、トレーラー2の前面にタンク4を搭載するために設けられた部分である。尚、本例においては、2本のタンク4を搭載することができ、各タンク4をトレーラー2にネジ留め等する。
【0021】
カバー2cは、トレーラー2の側面に設けた蓋である。カバー2cを開けることにより、内部に設置されたコンプレッサー、エンジン、燃料タンク、バッテリ等をメンテナンスすることができる。
【0022】
クーラー2dは、トレーラー2の内部に設置されたコンプレッサーを空冷等により冷却する機器である。燃料導入口2eは、燃料タンクに燃料を補給するための通路であり、補給時以外はキャップで塞がれる。
【0023】
制御パネル2fは、エンジンを始動しコンプレッサーを稼動したり、停止する等の指示を出す操作盤である。送風口2gは、コンプレッサーで圧縮する空気を外部から取り込むための穴である。
【0024】
連結具2hは、トラクター6と連結するために前面下部の2箇所を突出させ、軸を設けた部分である。支脚2iは、トラクター6と連結していないとき、前側左右を支えるための伸縮可能な金属等の棒材である。
【0025】
車輪2jは、金属等のホイールにゴム等のタイヤを被せたもので、トレーラー2の後部両側にキャスターを用いて回転可能にかつ左右に旋回可能に取り付ける。動力とは繋がっていないので、自力走行はできない。
【0026】
計器4aは、タンク4の上部に設置され、タンク4内に蓄積された高圧空気の圧力などを表示する。接続部4bは、外部ホース5の一端を接続する部分であり、タンク4から外部ホース5に高圧空気(約1秒で約120リットル)を送り出す。
【0027】
図3は、本発明である走行式高圧空気注入機の各部を分離した状態を示す図である。走行式高圧空気注入機1は、トレーラー2から注入機3、タンク4、外部ホース5を分離することができる。
【0028】
注入機3は、水平な部分が後方に延びるようにし、垂直な部分がトレーラー2の収容部2aの奥に行くようにして収容され、上部と下部にある突起により取り付けられる。尚、外部ホースを保護するために保護チェーン3aを用いる。
【0029】
タンク4は、トレーラー2の搭載部2bにおいて上部と下部が接続される。外部ホース5の一端は注入機3の接続部3bに接続され、外部ホース5の他端はタンク4の接続部4bに接続される。
【0030】
図4は、本発明である走行式高圧空気注入機の注入機の斜視図である。注入機3は、タワー部7、アーム部8、プローブ9等からなる。アーム部8はタワー部7に取り付け、プローブ9はアーム部8に取り付ける。
【0031】
タワー部7は、前面側をトレーラー2の収容部2aに取り付けることが可能な垂直方向に延びる枠体であり、昇降機構7aを備え、後面側のアーム部8を上下に移動させることができる。
【0032】
昇降機構7aは、タワー部7内に油圧式のシリンダーを設置し、タワー部7の下部と、シリンダーから上方へ伸縮するシャフトと、タワー部7の上部に鎖歯車を取り付け、チェーンを掛けることで、チェーンの終端に連結したアーム部8の昇降を可能にする。
【0033】
アーム部8は、タワー部7から水平方向に延びる枠体で、プローブ9を水平に移動させることができる。プローブ9は、アーム部8に取り付けられた槍状の管であり、内部は中空で高圧空気が送り込まれる。
【0034】
図5は、本発明である走行式高圧空気注入機のアーム部の斜視図である。アーム部8は、スライド機構8cを備え、レール8bに沿ってトロリー8aを水平に移動させることができる。
【0035】
トロリー8aは、レール8bの上側と下側に設けた車体で、上下の車輪でレール8bを挟み込む。また、トロリー8aから下に向けてプローブ9を取り付け、内部ホース8dとプローブ9を連結する。
【0036】
レール8bは、アーム部8の下部に前部から後部に掛けて2本の直線状の軌道を敷いたもので、トロリー8aの車輪を噛み合わせることで、脱輪させずにトロリー8aを走行させることができる。
【0037】
スライド機構8cは、昇降機構7aを横にした構造で、アーム部8の前部と、シリンダーから後方へ伸縮するシャフトと、アーム部8の後部に滑車を取り付け、ワイヤーを掛けることで、ワイヤーの終端に連結したトロリー8aの移動を可能にする。
【0038】
内部ホース8dは、ゴム等の柔軟性のある管状の部材であり、一端が外部ホース5に接続され、他端がプローブ9に接続され、外部ホース5から送られた高圧空気をプローブ9に送り込む。
【0039】
図6は、本発明である走行式高圧空気注入機のプローブの正面図である。プローブ9は、金属等の注入管であり、先端9bは鋭利に尖っており、先端9b付近に複数の噴射口9aが空けられる。
【0040】
タンク4から外部ホース5と内部ホース8dを介して接続口9cに高圧空気が送り込まれ、噴射口9aから勢い良く放出する。周囲の土壌11aに、噴射口9aの大きさに応じて圧力を掛けることができる。
【0041】
プローブ9は交換可能であり、土壌11aによって使い分けることが可能である。例えば、長さは、30cm、43cm、50cm、60cm、70cm等があり、直径は、22mm、25mm等がある。
【0042】
図7は、本発明である走行式高圧空気注入機の注入手順を示す図である。注入手順10は、走行10a、突刺し10b、噴射10c、スライド10d、引抜き10e、リセット10fであり、これを繰り返すことで、連続的に注入を行う。
【0043】
尚、芝11の下にある土壌11aは、浅層部においては適度に空隙が存在し通気性のある状態であるが、深層部においては空隙が潰れて固まってしまった問題土壌11bが層状に存在する状態とする。
【0044】
走行10aは、走行式高圧空気注入機1をトラクター6に連結し、トラクター6で牽引することにより、走行式高圧空気注入機1が芝11の上を定速で走行するようにする。尚、速度は、問題土壌11bの深さ等を考慮して調整する。
【0045】
突刺し10bは、走行式高圧空気注入機1のアーム部8をタワー部7に沿って下降させ、アーム部8から下垂するプローブ9を芝11の上から土壌11aに突き刺し、先端9bを問題土壌11bまで到達させる。
【0046】
噴射10cは、プローブ9の噴射口9aから高圧空気を噴射し、問題土壌11bを破砕する。空気を注入された問題土壌11b及びその周辺は、空隙が形成され通気性を取り戻した土壌11aになる。
【0047】
スライド10dは、プローブ9が土壌11aに刺さっている間において、走行式高圧空気注入機1の走行に伴い、走行式高圧空気注入機1と逆方向にトロリー8aを移動させることで、プローブ9を刺した位置から移動しないようにする。
【0048】
引抜き10eは、走行式高圧空気注入機1のアーム部8をタワー部7に沿って上昇させ、アーム部8から下垂するプローブ9を土壌11aから引き抜き、先端9bが芝11の上まで出るようにする。
【0049】
リセット10fは、後方に移動したトロリー8aを前方に移動させて、次にプローブ9を突き刺す位置に戻す。尚、走行式高圧空気注入機1の走行速度とは関係なく、即時に移動させる。
【0050】
高圧空気の注入の度に走行式高圧空気注入機1を停車させる必要はなく、常に走行しながら注入できるので、作業効率が向上する。また、空気以外にも水や薬液なども高圧で注入することが可能である。
【0051】
その他の効果として、芝地、グランド、競馬場など踏圧で固くなった場所でも、油圧により瞬時に打ち込むことが可能であり、土壌固結を緩和したり、排水を改良したりすることができる。
【0052】
樹木、芝などの根圏へ空気を打ち込むことにより、根の発育促進に効果があり、また、酸素供給により、早期に収穫できたり、実が大きくなったり、糖度増加するなど果樹の育成にも効果がある。
【符号の説明】
【0053】
1 走行式高圧空気注入機
2 トレーラー
2a 収容部
2b 搭載部
2c カバー
2d クーラー
2e 燃料導入口
2f 制御パネル
2g 送風口
2h 連結具
2i 支脚
2j 車輪
3 注入機
3a 保護チェーン
3b 接続部
4 タンク
4a 計器
4b 接続部
5 外部ホース
6 トラクター
7 タワー部
7a 昇降機構
8 アーム部
8a トロリー
8b レール
8c スライド機構
8d 内部ホース
9 プローブ
9a 噴射口
9b 先端
9c 接続口
10 注入手順
10a 走行
10b 突刺し
10c 噴射
10d スライド
10e 引抜き
10f リセット
11 芝
11a 土壌
11b 問題土壌
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特許第3227501号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後部に車輪を有し前部がトラクターに連結可能であり内部に取り込んだ空気を圧縮してタンクに蓄積するトレーラーと、
前記トレーラーに搭載したタンクからホースを介して送られた高圧空気を先端に空けた噴射口から噴射するプローブと、
前記プローブを接続したトロリーを水平移動させるスライド機構を備えたアーム部と、
前記アーム部を上下移動させる昇降機構を備えたタワー部とからなり、
前記トレーラーを走行させながら前記アーム部を下降させて前記プローブを土壌に突き刺し、
前記トレーラーの走行に伴い前記アーム部のトロリーを後方に移動させながら高圧空気の噴射を行い、
前記アーム部を上昇させて前記プローブを土壌から引き抜いたら前記アーム部のトロリーを前方に戻すことにより、
連続して土壌の改良を行うことを特徴とする走行式高圧空気注入機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−30545(P2011−30545A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183028(P2009−183028)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(309023368)東洋メンテナンス株式会社 (1)
【出願人】(509222268)グワザエ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】GWAZAE LIMITED
【住所又は居所原語表記】61 Aerodrome Road,Mount Maunganui 3116,New Zealand
【Fターム(参考)】