説明

超臨界流体抽出による低バースト特性の生分解性ポリエステルの調製

本発明は、精製生分解性ポリ(ラクチド-グリコリド)(PLG)などの精製生分解性ポリエステルを得るために効果的な超臨界流体で生分解性ポリエステルを抽出する方法を提供する。超臨界流体は、高圧の二酸化炭素であってもよく、もしくは一種以上の共溶媒を有する二酸化炭素であってもよい。多様な圧力もしくは多様な温度、もしくはその両方で生分解性ポリエステルの段階的精製を実行するための方法もまた提供される。ポリエステルがPLGである際は、非精製ポリエステルに対して狭い分子量分布を持つ精製PLGコポリマーが得られる。精製PLGコポリマーは約1.7未満の多分散度で、約2%未満のモノマーと、約10%未満のオリゴマーとを持ち得る。精製PLGコポリマーは、生体組織内に挿入されるように構成された流動性インプラントなどの放出制御製剤に組み込まれる際、初期バースト効果の減少を示し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への参照]
本出願は2006年10月11日出願の米国仮出願No. 60/850,744の優先権を主張し、その全容を引用により本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
溶媒抽出および沈殿などの方法は、現在、生体組織内への注入用の放出制御製剤で使用される生分解性ポリエステルなど、様々な種類のポリマーを精製するために利用されている。有利な特性を持つ物質を調製するために、ポリエステル試料を溶媒に溶解すること、および特定の画分を混和性非溶媒で沈殿させることが使用されてきた。例えば、選択的溶媒沈殿を含む特定の精製方法は、非精製ポリエステルを用いて観察される場合と比べて“初期バースト効果”(生体組織内への注入の際、ポリエステルに組み込まれた医薬化合物の放出初速度が極端に高いこと)が減少した生分解性ポリエステルをもたらすことができることがわかっている。
【0003】
例えば米国特許No. 4,728,721は、生物活性剤が中に組み込まれるマイクロカプセルを形成するために使用されるコポリマー内の水溶性未反応モノマーと水溶性低分子量オリゴマーの存在について論じている。その中で発明者らの言うところによれば、これらの不純物の存在は初期バースト効果を増加する傾向がある。この特許は、固形のポリエステルを水で洗浄すること、もしくはポリエステルを水溶性有機溶媒に溶解してその溶液を水に加えることによって、これらの不純物のいくらかを除去するための方法を提供している。
【0004】
米国特許No. 5,585,460は、マイクロカプセルの調製用に使用されるポリエステルの処理について論じており、ここではポリエステルを水溶性有機溶媒に溶解し、水中で沈殿させて、分子量1,000(1 kDa)未満の構成成分が約3%未満であると記載されているポリエステルをもたらす。
【0005】
米国特許No. 4,810,775は、結晶質もしくは非晶質のポリエステルを部分的に精製するためのプロセスを記載し、ここでは、ポリエステルの微粒子が得られるように、ポリエステルが水などの沈殿剤と接触する時に高いせん断力が印加される。この特許は、そのような処理によって、残存するモノマーと触媒がポリエステルから除去されることを記載している。
【0006】
米国特許No. 7,019,106は、重量平均分子量15,000から50,000の乳酸ポリエステルを製造するためのプロセスについて論じており、その中で重量平均分子量が約5,000以下のポリエステル物質の含有量は、重量で約5%以下である。このプロセスは、高分子量の乳酸ポリエステルの加水分解と、加水分解生成物の沈殿を特徴とし、バースト効果の減少をもたらすと記載されている。
【0007】
本願発明者らによって2007年2月15日に出願された米国特許出願Ser. No. 60/901,435は、初期バースト効果の減少に関して有利なポリ(ラクチドグリコリド)ポリエステル画分("PLGp")を製造するための溶媒沈殿プロセスについて論じている。
【0008】
溶媒抽出もしくは沈殿のプロセスの欠点は、通常、取扱や廃棄が困難な、有害な有機溶媒を比較的大量に必要とすることである。塩化メチレンやクロロホルムを含む典型的な有機溶媒は、ヒトに有害であり(すなわち毒性もしくは発癌性である)、かつ環境に有害である。工業用の量(例えばキログラムもしくはトン)のポリマーを提供するために、工業規模で抽出プロセスを実行する必要があることを考慮すれば、大量の有機溶媒が必要となる。有機溶媒の廃棄コストが高いことは、現在の抽出法のさらなる欠点である。
【0009】
超臨界流体抽出とは、流体がその臨界点を超える温度と圧力で利用される、もしくは圧力に関わらずその臨界温度を超える流体が利用される、抽出のことをあらわす。臨界点以下では、流体は気相と液相の両方に共存することができるが、臨界点を超えると一つの相しか存在しない。超臨界流体抽出を実行するための装置、技術、手順、溶媒、および条件(例えば時間、温度、および圧力)は当業者に周知である。例えばSupercritical Fluid Science and Technology, ACS Symposium Series: 406, K.P. Johnston, et al., editor, American Chemical Society, (1989), pp. 1-550; Supercritical Fluid Extraction-Principals and Practice, Second Edition, M.A. McHugh, et al., editors, Butterworth-Heinemann, (1994), pp. 1-512; Johnston, K.P. et al., "Supercritical Fluid Science and Technology", ACS Symposium Series 406, American Chemical Society, (1989), 1-550; McHugh, Mark J., Supercritical Fluid Science and Technology, ACS Symposium Series: 406, K.P. Johnston, et al., editor, American Chemical Society, (1989), pp. 1-550; McHugh, M., et al., Supercritical Fluid Extraction-Principles and Practice, Second Edition, M.A. McHugh, et al., editors, Butterworth-Heinemann, (1994), pp. 1-512; McHugh, M., et al., Supercritical Fluid Extraction, 2nd Edition, (1994); Taylor, L.T., "Properties of Supercritical Fluids", Supercritical Fluid Extraction. Chapter 2, John Wiley & Sons, New York, (1996), pp. 7-27; and Vilegas, J.H., et al., "Extraction of Low-polarity Compounds with Emphasis on Coumarin and Kaurenoic Acid from Mikania glomerata (Guaco) Leaves", Phytochem. Anal., 8, Abstract Obtained from CAPLUS, Document No. 127:316461, (1997), pp. 266-270を参照。
【0010】
超臨界流体抽出で有用な適切な溶媒は例えば下記に開示されている。Supercritical Fluid Science and Technology, ACS Symposium Series: 406, K.P. Johnston, et al., editor, American Chemical Society, (1989), pp. 1-550; Supercritical Fluid Extraction-Principals and Practice, Second Edition, M.A. McHugh, et al., editors, Butterworth-Heinemann, (1994), pp. 1-512; Johnston, K.P. et al., "Supercritical Fluid Science and Technology", ACS Symposium Series 406, American Chemical Society, (1989), 1-550; McHugh, Mark J., Supercritical Fluid Science and Technology, ACS Symposium Series: 406, K.P. Johnston, et al., editor, American Chemical Society, (1989), pp. 1-550; McHugh, M., et al., Supercritical Fluid Extraction-Principles and Practice, Second Edition, M.A. McHugh, et al., editors, Butterworth-Heinemann, (1994), pp. 1-512; McHugh, M., et al., Supercritical Fluid Extraction, 2nd Edition, (1994); Taylor, L.T., "Properties of Supercritical Fluids", Supercritical Fluid Extraction. Chapter 2, John Wiley & Sons, New York, (1996), pp. 7-27; and Vilegas, J.H., et al., "Extraction of Low-polarity Compounds with Emphasis on Coumarin and Kaurenoic Acid from Mikania glomerata (Guaco) Leaves", Phytochem. Anal., 8, Abstract Obtained from CAPLUS, Document No. 127:316461, (1997), pp. 266-270。標準温度および標準圧力の条件下では溶媒として使用することができない、そのような超臨界流体の一つは、二酸化炭素である。二酸化炭素は、生物によって産生される、自然に存在する大気の成分であり、地球温暖化に関して大気中の過剰レベルの二酸化炭素の懸念はあるかもしれないが、一般的には二酸化炭素は、例えばクロロホルムのように毒性であったり環境を破壊するものとは全く見なされない。従って、製品に所望の特性を与える生分解性ポリエステルなどのポリマーの精製プロセスにおいて、毒性の強いハロカーボンなどを、抽出溶媒として比較的非毒性の二酸化炭素に置き換えることができる工業プロセスが必要とされる。
【発明の概要】
【0011】
本発明にかかる一実施形態は、二酸化炭素を含む超臨界流体でポリエステルを抽出することによって、例えば精製ポリ(ラクチドグリコリド)(以下PLGコポリマーと称する)などの精製生分解性ポリエステルを調製するための方法に向けられる。そのようにして得られる精製生分解性ポリエステルは、出発試料よりも狭い分子量分布を持ち得る。生物活性物質用の放出制御製剤の中に組み込まれると、精製コポリマーは生物活性物質の初期バースト効果の減少をもたらし得る。
【0012】
本発明の一実施形態は、精製生分解性ポリエステルを得るための方法を提供し、この方法は、精製生分解性ポリエステルを得るために、二酸化炭素を含む超臨界流体で生分解性ポリエステルを抽出することを含む。
【0013】
本発明の一実施形態は、生分解性ポリエステルがポリ(DL-ラクチド-グリコリド)(PLG)であり、精製生分解性ポリエステルが精製PLGコポリマーである方法を提供する。生分解性ポリエステルはまた、PLGpなど、溶媒沈殿プロセスによって予め精製されたPLGであってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態では、PLGなどの生分解性ポリエステルを分画するために、異なる温度もしくは圧力で抽出を繰り返し行うことができる。
【0015】
本発明の一実施形態は、精製PLGコポリマーを得るために、約15 kDaから約45 kDaの平均分子量(Mw)を持つポリ(DL-ラクチド-グリコリド)物質を、約40℃より高い温度と約1,000 psiより高い圧力で、二酸化炭素を含む超臨界流体で抽出することによって、精製ポリ(DL-ラクチド-グリコリド)(PLG)を得るための方法を提供する。ここで精製PLGコポリマーはPLGよりも狭い分子量分布(多分散度:polydispersity index)を持つ。精製PLGコポリマーの多分散度は約1.7未満であり得る。
【0016】
別の実施形態は、本発明の方法によって得られる精製ポリエステル、もしくはより具体的には、本発明の方法に従う精製PLGコポリマーを提供する。SFE-精製PLGコポリマーは、個々のポリマー鎖の分子量分布が狭く、オリゴマー含有量が減少し、モノマー含有量が減少する可能性がある。
【0017】
本発明の別の実施形態は、SFE-精製生分解性PLGコポリマーもしくはポリエステルを含む流動性組成物、体液に少なくともいくらかの溶解性を持つ有機溶媒、および生物活性物質を含む、放出制御製剤を提供する。生物活性物質は、例えばオクトレオチド、GHRP-1、もしくはリスペリドンであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の実施形態は、そのような実施形態を説明する以下の記載と添付の図面を参照することによって最もよく理解され得る。本明細書に含まれる図の番号付けのやり方は、図中のある参照番号の一番目の番号が、その図の番号と関連するようになっている。
【図1】本発明の方法に従う、超臨界流体抽出に適切な装置の概略図である。
【図2】超臨界流体抽出(SFE)分画ポリ(DL-ラクチド-グリコリド)画分のガラス転移温度のグラフを図示する。
【図3】非精製PLGコポリマー(PLGH)、溶媒沈殿精製PLGコポリマー(PLGHp)、ならびに、本発明の方法に従う超臨界流体抽出(SFE)精製PLGコポリマーの画分5および6(表1より)を含む放出制御製剤から得られた、ラットにおける酢酸オクトレオチドの24時間の放出特性のグラフを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで本発明の特定の請求項について詳細に言及し、その実施例は添付の構造式および化学式で説明される。本発明は列挙された請求項と併せて説明されるが、それらの請求項に本発明を限定することを意図しないことが理解される。むしろ、本発明は、請求項によって規定される本発明の範囲内に含まれ得る全ての変更、変形、および均等物を包含することを意図する。
【0020】
明細書中の“一実施形態”(“one embodiment”、“an embodiment”、“an example embodiment”など)という用語は、記載された実施形態が特定の特徴、構造、もしくは特性を含み得ることを示すが、全ての実施形態は必ずしも特定の特徴、構造、もしくは特性を含んでいなくてもよい。さらに、こうした用語は必ずしも同じ実施形態をあらわすとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、もしくは特性が一実施形態に関連して説明される際は、明記されているかどうかに関わらず、他の実施形態に関連して、そうした特徴、構造、もしくは特性に影響を与えることは当業者の知識の範囲内であることが思量される。
【0021】
本発明はポリエステルの精製法に関する。ポリエステルの精製法を説明する際には、他に指定のない限り、以下の用語は以下の意味を持つ。
【0022】
[定義]
他に指定のない限り、本明細書で使用される以下の語句と用語は以下の意味を持つものとする。
【0023】
“超臨界流体抽出”とは、流体がその“臨界点”を超える温度と圧力で利用される、もしくは圧力に関わらずその臨界温度を超える流体が利用される、抽出のことをあらわす。流体の“臨界点”とは、温度、もしくは温度と圧力の組み合わせによって規定される点であり、臨界点以下では、流体は気相と液相の両方に共存することができるが、臨界点を超えると一つの相しか存在しない。超臨界流体抽出では、超臨界流体の熱力学的特性および輸送特性は密度の関数であり、流体の圧力と温度に強く依存する。密度は気体状(gas-like)の値0.1 g/mlから液状(liquid-like)の値1.2 g/mlまで調節され得る。さらに、状態が臨界点に近づくにつれ、密度に対する温度と圧力の影響はより重大になる。例えば、超臨界溶媒(例えば二酸化炭素)の密度を0.2 g/mlから0.5 g/mlに増加すると、158°F(70℃)では85 atmから140 atm(8.6メガパスカルから14.2メガパスカル)の圧力増加が必要であるが、95°F(35℃)では必要な変化はたった65 atmから80 atm(6.61 Mpaから8.1 Mpa)である。
【0024】
本明細書で使用される超臨界流体抽出は、分画超臨界流体抽出を含む。本明細書で使用される“分画超臨界流体抽出”(以下“FSFE”と称する)とは、超臨界流体抽出がある温度と圧力で一定期間実行され、その後一以上の他の温度および/または一以上の圧力で実行される、多段階手順をあらわす。これらの温度および/または圧力は、連続する一連の抽出において漸進的に増加させることができる。“連続”で、とは、ポリエステルがある条件下で抽出され、超臨界流体内の溶質画分の溶液が、例えばろ過もしくは遠心などによって除去され、その後残存ポリエステルが第二、第三などの条件下で抽出され、この操作を繰り返すことを意味する。連続抽出において増加する温度および/または圧力が利用される際は、通常は異なるポリエステル画分が様々な連続抽出物から回収される。このために連続抽出物は互いに別々にしておくことができる。
【0025】
本明細書で使用される“共溶媒”とは、二酸化炭素に加えて、超臨界流体抽出(SFE)で利用できる任意の溶媒(例えば水性溶媒、有機溶媒、もしくは気体)をあらわす。共溶媒の例は、下記でより詳細に述べるように、炭化水素、アルコール、不活性気体、およびその他の比較的揮発性の化合物を含む。
【0026】
本明細書で使用される“放出制御製剤”という用語は、含有生物活性物質を生体組織内にある期間にわたって放出するように構成された製剤をあらわす。本明細書の意味における放出制御製剤の例は、“液体送達系”もしくは“流動性送達系”であり、Atrigel(登録商標)システムなどにおける生分解性ポリエステル、生物活性剤、および有機溶媒の組み合わせである。有機溶媒は、水と体液に少なくともいくらかの溶解性を持つ。一例としてN-メチルピロリドン(NMP)がある。組織内に流動性物質を挿入する際には、溶媒が組織中に分散し、投与されたボーラスの中に体液が拡散し、その結果、ポリエステルが固体もしくは半固体の塊へ凝固する。液体もしくは流動性の送達系用として本発明のポリエステルと共に使用可能な溶媒は、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、トリアセチン、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、もしくはメトキシポリエチレングリコール350を含み、これら全ては水と体液に少なくともいくらかの溶解性を持つ。例えば米国特許No. 6,773,714; 6,630,155; 6,565,874; 6,528,080; RE37,950; 6,461,631; 6,395,293; 6,261,583; 6,143,314; 5,990,194; 5,744,153; 5,702,716; 5,324,519; 4,938,763およびその中の引用文献を参照のこと。これらは本明細書に引用により組み込まれる。
【0027】
塊からの溶媒の初期分散は、溶媒と共に生物活性剤を周辺組織中に運ぶことが多いため、バースト効果を生じる。モノリシック型もしくは微粒子型の固体インプラントもバースト効果を示すが、これは、インプラントの表面上および表面付近に生物活性剤が存在するため、ならびに、体液との初期相互作用の結果として、インプラント内に形成するマイクロチャネルおよびメソ細孔内に容易に浸出した生物活性剤が存在するためである。
【0028】
本明細書で使用される“ポリエステル”もしくは“コポリマー”という用語は、実質的に直鎖ポリエステルをあらわし、本明細書では“PLGコポリマー”とも称され、モノマーの乳酸およびグリコール酸などのヒドロキシ酸、もしくはラクチドおよびグリコリドなどの二量体のヒドロキシ酸から主に形成され、当技術分野でポリ(乳酸-グリコール酸)、ポリ(乳酸(コ)グリコール酸)、ポリ(ラクチド-グリコリド)、ポリ(ラクチド(コ)グリコリド)、PLG、PLGHなどと称される組成物を含む。なお、本明細書で指定された意味から逸脱することなく、実質的に直鎖のポリエステル分子鎖を架橋する基を含む、中心基/開始基(例えばジオール、トリオール、ポリオール、ヒドロキシ酸など)、キャッピング基(例えば末端カルボキシル基のエステルなど)、および、共有結合した、もしくはポリエステル骨格内にある他のペンダント基もしくは鎖延長基、などの追加部分が含まれてもよい。本明細書で使用されるPLGコポリマーという用語は、末端ヒドロキシル基、末端カルボキシル基(すなわち酸末端、時にPLGHと呼ばれる)、および末端エステル基(すなわちキャップされた)を持つ分子鎖を含む。
【0029】
本明細書で使用される“ポリエステル物質”もしくは“コポリマー物質”という用語は、それぞれある試料中における、複数の個々のポリエステルもしくはPLGコポリマーの分子(分子鎖)の物理的集合もしくは複合体をあらわし、その分子(分子鎖)の各々は、通常の化学的な意味において固有の規定された分子量を持つ。本明細書で使用される“ポリエステル物質”もしくは“PLGコポリマー物質”は、通常は、様々な異なる個々の分子量を持つ、個々のポリエステルもしくはPLGコポリマーの分子のセットから構成される。従って、そのようなポリエステル物質もしくはコポリマー物質の分子量とは、平均分子量のことである。さらなる特徴付けをすることなく、そのような平均分子量とは、本明細書では重量平均分子量のことである。完全な記載として、重量平均分子量は同義的に使用され得る。平均分子量が数平均分子量のことをあらわす場合は、本明細書に明記される。構成成分の個々の分子(分子鎖)の個々の分子量をあらわす際には、本明細書では“個別分子量”という用語が使用される。重量平均分子量は、当技術分野で周知の通り、ポリスチレン標準を基準にしたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて決定される。
【0030】
本明細書で使用される“多分散度”という用語は、ポリエステル物質の試料の重量平均分子量を、ポリエステル物質の試料の数平均分子量で割ったものと定義される。“重量平均分子量”および“数平均分子量”という用語の定義は当業者に周知である。多分散度は、ポリエステル内の分子量の分布を特徴づけることでよく知られている。多分散度の値が高いほど、ポリエステル物質を構成するポリエステル分子鎖の個別分子量の広がりが広い。多分散度の値が低いほど、当該ポリエステル物質を構成する個々のポリエステル分子の個別分子量がより均一で密にグループ化されている。ポリエステル物質内の全ポリエステル分子が同一であるという、起こりそうにない場合においては、重量平均分子量と数平均分子量は同一となるため、多分散度(“PDI”)は1となる。
【0031】
本明細書で使用される“乳酸”および“グリコール酸”という用語は、文脈に応じて、それぞれヒドロキシ酸、乳酸、およびグリコール酸のいずれか、もしくはその塩(乳酸塩およびグリコール酸塩)をあらわし、これらは本発明のコポリマーの調製において試薬として使用される。本明細書で使用される“乳酸”および“グリコール酸”という用語は、あるいは、本発明のポリエステル分子鎖にエステル結合を介して組み込まれる残基として、これらの部分をあらわす。コポリマーが乳酸(乳酸塩)とグリコール酸(グリコール酸塩)の重合によって形成される際は、各分子鎖は、コポリマー分子鎖に組み込まれる個々の乳酸およびグリコール酸のモノマー単位から構成される。本明細書で使用される“ラクチド”および“グリコリド”という用語は、文脈に応じて、本発明のコポリマーの調製で使用される試薬をあらわす際には、それぞれ乳酸およびグリコール酸の環状二量体エステルのいずれかをあらわし、あるいは、形成されるポリエステル分子鎖に組み込まれた開環二量体としてこれらの部分をあらわす。従って、ラクチドおよびグリコリドの重合についての記載は、環状二量体エステルの重合反応をあらわし、コポリマー分子鎖内のラクチド残基もしくはグリコリド残基についての記載は、コポリマー鎖に組み込まれた開環構造の原子団をあらわす。コポリマーがラクチドおよびグリコリドの重合によって形成される際は、組み込まれたラクチド残基もしくはグリコリド残基の各々は、それぞれ乳酸もしくはグリコール酸のモノマー単位のペアから構成されると考えられる。コポリマー分子鎖内のラクチド残基およびグリコリド残基をあらわす際は、ラクチドおよびグリコリドの重合から生じると考えられるように、分子鎖内の二つの乳酸残基(L-L)、もしくは二つのグリコール酸残基(G-G)の二つの単位(二量体)をそれぞれ意味することが理解される。コポリマー分子鎖内の乳酸残基(L)もしくはグリコール酸残基(G)をあらわす際は、分子鎖内の単一の乳酸残基(L)もしくはグリコール酸残基(G)をそれぞれ意味し、これらは、コポリマー分子鎖の調製に使用される方法に関わらず、ある乳酸もしくはグリコール酸が別の乳酸残基もしくはグリコール酸残基に隣接する場合は、それぞれラクチド残基(L-L)もしくはグリコリド残基(G-G)内にあってもよい。ほとんどのポリマー系と同様、この残基の配列は全か無かではない。むしろこの配列は支配的なものである。従って、ラクチドおよびグリコリドのコポリマーでは、いくつかの(単一の)L残基およびG残基も存在しながら、L-L残基およびG-G残基の優位性が存在する。この特性の背後にある化学的理由は、重合プロセスである。重合中、成長するポリエステル鎖は破壊され、再形成される。この切断は二量体残基を分断し、単一の残基を再結合し得る。乳酸およびグリコール酸のコポリマーでは、(単一の)L残基およびG残基の優位性が存在する。この種のポリエステルは、エントロピー因子のために、二量体残基の繰り返しを含む比較的少数の配列を持つ。
【0032】
“乳酸”、“乳酸塩”、もしくは“ラクチド”という用語が本明細書で使用される際には、その化合物の任意の全キラル型が用語に含まれることが理解される。従って、“乳酸”はD-乳酸、L-乳酸、DL-乳酸、もしくはそれらの任意の組み合わせを含み、“ラクチド”はDD-ラクチド、DL-ラクチド、LD-ラクチド、LL-ラクチド、もしくはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0033】
本明細書で使用される“ラクチド”という用語は、モノマーの試薬をあらわす際には、下記に示す乳酸の環状二量体である。
【0034】
【化1】

【0035】
本明細書で使用される“グリコリド”という用語は、モノマーの試薬をあらわす際には、下記に示すグリコール酸の環状二量体である。
【0036】
【化2】

【0037】
ポリエステルを“ポリ(ラクチド-グリコリド)”もしくは“PLGコポリマー”と称する際には、開環反応を介して直鎖ポリエステル鎖に組み込まれる直鎖ラクチド単位および直鎖グリコリド単位の両方を含むコポリマーは、下記の二つの構造を含むドメインを含む。
【0038】
【化3】

【0039】
これらのセグメントは、PLGコポリマー鎖の長さに沿って不規則に分布し得る。PLGコポリマーは乳酸とグリコール酸の重合によって調製され得ることもまた理解され、この場合、個々の乳酸単位とグリコール酸単位は鎖に沿って不規則に分布し得る。しかしながら、環状二量体ラクチドおよびグリコリドの開環共重合によって調製されるPLGコポリマーが、本発明の方法を実行する上では好ましい。
【0040】
本明細書での使用にかかるPLGコポリマーは、当技術分野で周知の通り、約5 kDaから約55 kDaの重量平均分子量を持つ。分子量約5 kDa未満のポリエステル鎖は、本明細書では“オリゴマー”と称する。“モノマー”という用語は、乳酸とグリコール酸、およびラクチドとグリコリド、すなわち上記の環状二量体の両方を包含する。
【0041】
本出願では、“バースト効果”もしくは“初期バースト効果”という用語は、液体送達系の固化の最中、および/または、モノリシックもしくは微粒子のインプラントなど、予め作成された固体インプラントの注入後の初期の最中に、放出制御製剤から最適速度よりも高い生物活性剤の拡散が起こるという、バースト効果をあらわすために使用される。本発明にかかるコポリマーは、特にこの初期バーストを制御するために適している。
【0042】
“低バーストコポリマー物質”など、本明細書で使用される“低バースト”という用語は、所望の長期間の放出特性を維持しながら、このバースト効果が最小限に抑えられるか、もしくは同等の従来のコポリマー組成物から観察される程度に比べて低減される現象をあらわす。“初期バースト効果の減少”もしくは“生体組織内への注入の際に生物活性物質の初期バーストが減少する”というフレーズが使用される際は、生体組織内への注入後、SFE-精製ポリエステルもしくはSFE-精製PLGコポリマーを含む流動性組成物を含む放出制御製剤の初期バースト効果が、非精製ポリエステルもしくは非精製PLGコポリマーを用いる同等の製剤に対して減少することをあらわす。
【0043】
本明細書において“生分解性”という用語は、本発明のポリエステルが、生体組織内に注入され、生物の体液に晒されるか、もしくは哺乳類の生体内に通常存在する酵素の作用を受ける際に、加水分解と脱重合が起こり、最終的にはポリエステルの塊が徐々に浸食され、溶解し、消散し、非物質化することを意味する。分解産物は非毒性で水溶性であることが好ましい。
【0044】
[SFEを利用するポリエステルの精製方法]
図1を参照すると、超臨界流体抽出(SFE)を用いて生分解性ポリエステルを精製する本発明の方法を実践するために適切な装置が示される。PLGなどの開始ポリエステルは、上の開いた蓋を通して、抽出容器とも称される供給タンク(1)に導入され得る。ポリエステルは超臨界条件下の溶媒(例えば二酸化炭素、もしくは二酸化炭素を含む溶媒)内で高圧で加熱される。流体内に溶解したポリエステル画分の溶液は、産物貯蔵器(2)に移される。流体は蒸発などで溶液から除去され、抽出されたポリエステル画分を残し、これを回収することができる。蒸発した流体は凝縮器(3)を通過し、その後再利用器(4)を通して抽出容器(1)に再利用される。抽出容器に残った固体の非溶解ポリエステルは、例えば連続する一連の抽出において、高圧下、高温保持下、もしくはその両方において超臨界流体を用いて、その後随意に再抽出することができる。前述同様、流体を蒸発によって除去できる際は、再度、溶解しているポリエステル画分を産物貯蔵器内の溶液に移すことができ、低温/低圧の抽出で得られた最初のポリエステル画分と異なる特性(重量平均分子量(Mw)および多分散度など)を持ち得るポリエステルをもたらすことができる。このプロセスは反復して繰り返すことができ、例えばPLGコポリマーなどの生分解性ポリエステルの一連の画分をもたらすことができる。多回連続抽出で得られる各画分の重量平均分子量、多分散度、および分子構成が異なるので、各画分は固有の特性を持ち得る。
【0045】
本明細書に記載の通り、任意の生分解性ポリエステルを精製することができる。適切な生分解性ポリエステルの例は、例えば米国特許No. 6,773,714;6,630,155;6,565,874;6,528,080;RE37,950;6,461,631;6,395,293;6,261,583;6,143,314;5,990,194;5,744,153;5,702,716;5,324,519;4,938,763、およびその中の引用文献に見られる。
【0046】
本明細書に記載の通り精製可能な生分解性ポリエステルは、本発明の超臨界流体抽出を実行する前に溶媒沈殿のステップによって精製されているPLGであってもよい。例えば、本願発明者らによって2007年2月15日に出願された米国特許出願No. 60/901,435に記載の通り、溶媒への溶解および非溶媒での沈殿によって精製されているPLG(以下“PLG(p)”もしくは“PLGp”と称する)は、本明細書に記載の本発明の方法によってさらに精製することができる。精製は、溶媒および/または非溶媒の残留物の除去を含み得る。
【0047】
超臨界流体抽出を利用する本発明の方法に従って、ポリエステルを精製することができる。超臨界流体抽出は、圧力と温度に関して特定の流体成分毎に定められた超臨界状態の流体を利用する。あらゆる流体物質は、上記の通り“臨界点”と呼ばれる圧力と温度の特性の組み合わせを持ち、これらのパラメータを超えると、流体は超臨界状態に存在することになる。超臨界流体抽出で利用される流体もしくは溶媒は、単一の化合物であってもよいし、もしくは複数の化合物の混合物であってもよい。適切な共溶媒の例は、キセノン(Xe)、フロン-23、エタン、N2O、SF6、プロパン、アンモニア、エチレン、n-C4H10、塩化メチレン、クロロホルム、C6H5CF3、p-Cl-C6H4CF3、低級アルコール(例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、および1-ヘキサノール)、2-メトキシエタノール、エーテル(例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、および1,4-ジオキサン)、置換炭化水素(例えばアセトニトリル)、炭酸プロピレン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、カルボン酸(例えばギ酸)、水、二硫化炭素、低級ケトン(例えばアセトン)、非置換炭化水素(例えばヘキサンおよびペンタン)、非置換芳香族(ベンゼン)、および置換芳香族(例えばトルエン)を含む。共溶媒は任意の適切な量で存在し得る。典型的には、共溶媒は溶媒系の少なくとも約1 wt.%、約1 wt.%から約50 wt.%、約1 wt.%から約30 wt.%、もしくは約1 wt.%から約10 wt.%で存在し得る。
【0048】
二酸化炭素はその物理特性から、超臨界流体抽出用の溶媒として特に魅力的である。二酸化炭素は大気の主要成分であるため、比較的安全で豊富である。加えて、二酸化炭素は比較的安価である。他の適切な溶媒のほとんどと比較して、二酸化炭素は環境に優しく、本発明の方法で使用される量において大気を害することがない。さらに、二酸化炭素は不燃性で非爆発性である。さらに、二酸化炭素は蒸発の際にほとんど残留物や残余物を残さない。
【0049】
二酸化炭素はまた、超臨界流体抽出で通常利用される温度範囲と圧力範囲にわたって極性を変えることができるという物理特性も持つ。その結果、二酸化炭素はある温度と圧力では非極性溶媒となり得るが、別の温度と圧力では極性溶媒となり得る。温度と圧力を変えることによって、溶媒特性が変更され得る。これにより、例えば温度および/または圧力を増加させる多回連続抽出を用いて、単一の溶媒系を用いて一種以上の化合物の分離が可能になる。
【0050】
共溶媒はいくつかの実用的な理由から利用され得る。共溶媒は溶媒の物理特性を変更することができる。例えば、共溶媒は溶媒の極性、臨界温度、臨界圧力などを変更するために有用であり得る。共溶媒は抽出に必要な時間を削減することができ、これは抽出プロセスにかかるコストを削減し、抽出プロセスの効率を増加する。加えて、少なくとも一つの共溶媒の使用は、二酸化炭素などの高揮発性溶媒の蒸発の際に所望のポリエステルが結晶化する、もしくはゴム状に分泌(gum out)する可能性を減少し得る。超臨界流体抽出装置が取り除かれ、所望のポリエステルが得られると、溶媒(例えば二酸化炭素)は通常は急速に蒸発し、固体もしくはゴム状のタールとして所望のポリエステルを残す。このように、共溶媒の使用は、その後の回収もしくは取り扱いのために、所望のポリエステルが溶媒系に可溶なままであるようにする。
【0051】
本発明の実施形態では、精製生分解性ポリエステルは、超臨界流体での抽出後に残る固体残留物である。超臨界流体抽出は、低い初期バーストを阻害する傾向がある、すなわち高い初期バーストを引き起こす、開始非精製ポリエステルの画分を除去することができる。超臨界流体に溶解しないポリエステルは、こうした望ましくない構成成分の含有量が少なく、その結果狭い分子量分布を持ち得る。
【0052】
本発明の別の実施形態では、精製生分解性ポリエステルは超臨界流体に溶解し、そこから回収される。例えば一連の多回連続抽出において、連続過程で得られる特定の画分は、例えば狭い分子量分布を持ち、低バーストに関して望ましい特性を持ち得る。より具体的には、一回以上の初期の抽出後、一連の多回抽出の後期に得られる画分は、Atrigel(登録商標)のような流動性送達系などの放出制御製剤に組み込まれた場合、低い初期バーストに関して優れた特性を持ち得る。一連の多回抽出の後期に得られるこれらの画分はまた、超臨界流体に溶解するため、約55 kDaを超える個別分子量を持つポリマー分子など、過度に高い分子量を持つ構成成分の含有量が少なくなり得る。こうした高分子量成分は不溶性の残留物として残るので、所望の分子量特性を持つポリエステル分子を含む画分には存在しない。
【0053】
このようにして、所望の精製生分解性ポリエステルは、ある規定条件下の超臨界流体抽出媒体に溶解する物質からか(“画分”)、もしくは他のある規定条件下の超臨界流体抽出媒体に溶解しない物質から得ることができる(“残留物”)。
【0054】
[圧力]
本明細書に記載のポリエステル精製法では、超臨界流体抽出は約750 psiから約12,000 psiの圧力で都合よく実行することができる。当然のことながら、圧力が高いほどより速いもしくはより完全な抽出を可能にし得ることが当業者に理解される。加えて、圧力が高いほど、明確かつ比較的狭い分子量範囲を持つポリエステルの抽出が可能になり得る。具体的には、超臨界流体抽出は約1,000 psiから約10,000 psiの圧力で都合よく実行することができる。より具体的には、超臨界流体抽出は約4,000 psiから約9,000 psiの圧力で都合よく実行することができる。
【0055】
超臨界流体抽出(SFE)が、多回連続抽出によって実行される分画超臨界流体抽出(FSFE)である際は、個々の超臨界流体抽出の各々は約750 psiから約12,000 psi、約1,000 psiから約10,000 psi、もしくは約4,000 psiから約9,000 psiの圧力で独立して実行することができる。多様な圧力で分画超臨界流体抽出(FSFE)を実行することにより、各々が独立して明確かつ比較的狭い分子量範囲を持つ、一種以上のポリエステルを分離もしくは精製することが可能になる。一連の連続抽出の各抽出は、超臨界流体の試料を順次用いて、すなわち超臨界流体の新しい試料を用いて実行することができる。あるいは、連続抽出は異なる組成の超臨界流体の試料を用いて実行することができる。例えば、一連の連続抽出を超臨界二酸化炭素で実行し、各連続抽出は規則的に含有量が増加する共溶媒を含むようにすることができる。
【0056】
[温度]
本明細書に記載のポリエステル精製法では、超臨界流体抽出は任意の適切な温度で都合よく実行することができる。当然のことながら、温度が高いほどより速いもしくはより完全な抽出を可能にし得ることが当業者に理解される。加えて、温度が高いほど、明確かつ比較的狭い分子量範囲を持つポリエステルの抽出が可能になり得る。例えば、超臨界流体抽出は少なくとも約25℃の温度で実行することができる。具体的には、超臨界流体抽出は約40℃から約200℃の温度で都合よく実行することができる。より具体的には、超臨界流体抽出は約50℃から約100℃の温度で都合よく実行することができる。
【0057】
一連の連続抽出の各抽出は、超臨界流体の試料を順次用いて、すなわち超臨界流体の新しい試料を用いて実行することができる。あるいは、連続抽出は異なる組成の超臨界流体の試料を用いて実行することができる。例えば、一連の連続抽出を超臨界二酸化炭素で実行し、各連続抽出は規則的に含有量が増加する共溶媒を含むようにすることができる。
【0058】
超臨界流体抽出(SFE)が分画超臨界流体抽出(FSFE)である際は、連続する個々の超臨界流体抽出の各々は任意の適切な温度で独立して実行することができる。例えば、個々の超臨界流体抽出の各々は少なくとも約25℃、約40℃から約200℃、もしくは約50℃から約100℃の温度で独立して実行することができる。多様な温度で分画超臨界流体抽出(FSFE)を実行することにより、各々が独立して明確かつ比較的狭い分子量範囲を持つ、一種以上のポリエステルの分離もしくは精製が可能になる。
【0059】
[放出制御製剤]
本発明のSFE法によって精製されたPLGコポリマーなどのポリエステルは、PLGコポリマー、水もしくは体液に少なくともいくらかの溶解性を持つ有機溶媒、および生物活性物質を含む、Atrigel(登録商標)タイプの流動性組成物などの放出制御製剤の調製に使用することができる。そのような組成物と、その中で使用されているポリマーの例は、例えば米国特許No. 6,773,714;6,630,155;6,565,874;6,528,080;RE37,950 ;6,461,631;6,395,293;6,261,583;6,143,314;5,990,194;5,744,153;5,702,716;5,324,519;4,938,763およびその中の引用文献に記載されている。
【0060】
本発明の方法によって精製されたPLGコポリマーの使用は、そのような精製を行っていないPLGコポリマーを使用する放出制御製剤と比較して、注入後最初の約24時間内に好ましくない多量の生物活性物質が生体組織に放出される初期バースト効果の減少を示す、Atrigel(登録商標)タイプのような放出制御製剤を提供するのに役立つ可能性がある。
【0061】
水もしくは体液に少なくともいくらかの溶解性を持つ有機溶媒は、例えばN-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、もしくはジメチルスルホキシド(DMSO)であり得る。
【0062】
生体組織内への注入用に構成された流動性組成物内に含まれる生物活性物質は、例えばオクトレオチド、GHRP-1、もしくはリスペリドンであり得る。
【0063】
[具体的な範囲、値、および実施形態]
一実施形態では、ポリエステルポリマーは生分解性である。
【0064】
別の実施形態では、ポリエステルはD-ラクチド、L-ラクチド、DL-ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸、およびe-カプロラクトンのうちの一つ以上から製造されるポリマーである。
【0065】
別の実施形態では、ポリエステルは水性媒体もしくは体液に少なくとも実質的に不溶性である。
【0066】
別の実施形態では、ポリエステルは熱可塑性であり、すなわち温度の上昇により軟化もしくは融解する。
【0067】
別の実施形態では、ポリエステルは少なくとも一つの分子鎖末端上に一つ以上の官能基を含み、官能基はカルボン酸、ヒドロキシル基、アルキル基、アクリロイル基、エステル、ポリエチレングリコール(PEG)、マレイン酸、コハク酸、およびクエン酸から選択される。
【0068】
別の実施形態では、ポリエステルはポリエステル分子鎖に結合した一つ以上の官能基を含み、官能基はカルボン酸、ヒドロキシル基、アルキル基、アクリロイル基、エステル、ポリエチレングリコール(PEG)、マレイン酸、コハク酸、およびクエン酸から選択される。
【0069】
別の実施形態では、ポリエステルはラクチド、グリコリド、もしくはカプロラクトンのホモポリマーであるか、またはラクチド、グリコリド、およびカプロラクトンの任意の組み合わせのコポリマーである。
【0070】
別の実施形態では、ポリエステルはポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)(PLG)である。
【0071】
別の実施形態では、ポリエステルは約50/50から約99/1の乳酸対グリコール酸のモル比を持つPLGである。
【0072】
別の実施形態では、ポリエステルは100% PLAである。
【0073】
別の実施形態では、ポリエステルはカルボキシ末端基を持つ50/50ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)である。
【0074】
別の実施形態では、ポリエステルはカルボキシ末端基を持たない75/25ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)である。
【0075】
別の実施形態では、ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)の末端基はヒドロキシル基、カルボキシル基、もしくはエステルのいずれかであり得る。
【0076】
別の実施形態では、ポリエステルは約15 kDaから約45 kDaの平均分子量(Mw)を持つ。
【0077】
一実施形態では、超臨界流体は二酸化炭素を含む。
【0078】
別の実施形態では、超臨界流体は少なくとも約99 wt.%の二酸化炭素を含む。
【0079】
別の実施形態では、超臨界流体は実質的に純粋な二酸化炭素である。
【0080】
別の実施形態では、超臨界流体は少なくとも約99 wt.%の純度である二酸化炭素である。
【0081】
別の実施形態では、超臨界流体は少なくとも約1 wt.%の共溶媒を含む二酸化炭素である。
【0082】
別の実施形態では、超臨界流体は少なくとも約5 wt.%の共溶媒を含む二酸化炭素である。
【0083】
別の実施形態では、超臨界流体はキセノン(Xe)、フロン-23、エタン、N2O、SF6、プロパン、アンモニア、エチレン、n-C4H10、(C2H5)2O、THF、塩化メチレン、クロロホルム、C6H5CF3、p-Cl-C6H4CF3、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、炭酸プロピレン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ギ酸、水、二硫化炭素、アセトン、プロパン、トルエン、ヘキサン、およびペンタンのうちの少なくとも一つを共溶媒として含む二酸化炭素である。
【0084】
一実施形態では、ポリエステルはおよそ室温で超臨界流体で抽出される。
【0085】
別の実施形態では、ポリエステルはおよそ室温未満で超臨界流体で抽出される。
【0086】
別の実施形態では、ポリエステルは高温で(すなわち室温より上で)溶媒で抽出される。
【0087】
別の実施形態では、ポリエステルは高温の単一温度で超臨界流体で抽出される。
【0088】
別の実施形態では、ポリステルは、温度を連続的に増加させる抽出など、多様な高温で超臨界流体で連続的に抽出される。
【0089】
一実施形態では、高温とは少なくとも約50℃を超える。
【0090】
一実施形態では、ポリエステルは高圧の単一圧力で超臨界流体で抽出される。
【0091】
別の実施形態では、ポリエステルは、圧力を連続的に増加させる抽出など、多様な高圧で超臨界流体で連続的に抽出される。
【0092】
一実施形態では、高圧とは約1,000 psiを超える。
【0093】
一実施形態では、精製生分解性ポリエステルは、超臨界流体での抽出前のポリエステルよりも狭い分子量分布を持つ。
【0094】
一実施形態では、精製生分解性ポリエステルは約1.7未満の多分散度を持つ。
【0095】
一実施形態では、精製ポリエステルは最大で約5 kDaの分子量を持つ約10 wt.%未満のオリゴマーを含む。
【0096】
一実施形態では、精製ポリエステルは約2 wt.%未満のモノマーを含む。
【0097】
一実施形態では、生体組織内への注入用に構成された放出制御製剤は、本発明に従うSFE-精製PLGコポリマーと、水もしくは体液に少なくともいくらかの溶解性を持つ有機溶媒と、生物活性物質とを含む。有機溶媒はNMPであり得る。生物活性物質はオクトレオチド、もしくはGHRP-1、もしくはリスペリドンであり得る。放出制御製剤はほぼ一定の割合である期間にわたって各生物活性物質を放出するように構成される。このタイプの放出制御製剤に本発明のPLGコポリマーを使用することで、本発明の精製方法を行っていない生分解性ポリマーを用いる放出制御製剤と比較して、生物活性物質の初期バースト効果を減少することができる。
【0098】
引用された出版物、特許、および特許出願の全ては、引用により本明細書に組み込まれ、本発明の一部を成す。前述の明細書において本発明はその特定の好ましい実施形態に関して記載されており、例示を目的として多くの詳細が説明されているが、本発明は追加の実施形態を含み、本明細書に記載の詳細のいくつかは本発明の基本的本質から逸脱することなく相当に変更されてもよいということが、当業者には明らかだろう。本発明は以下の限定されない実施例によって説明することができる。
【0099】
実施例
[実施例1:分画方法と結果]
PLGコポリマーの超臨界流体抽出(SFE)は、Atrigel(登録商標)などの放出制御製剤において初期バースト効果が減少したPLGコポリマー画分を得るために、このポリエステルの分子量分布を狭めるための方法として検討された。プロセス開発や最適化を行わずに、一般的SFE処理条件を用いて1ロットのポリエステルを分画した。実験で検討したポリエステルは、25 kDaの重量平均分子量(Mw)を持つ85:15ラクチド/グリコリドPLG(品番01280、ロット2137)であり、図1に図示された装置を用いた。
【0100】
20.4 gのPLGポリエステルの試料を抽出容器に入れ、7個の連続画分(下記表1参照)にポリエステルを分画するために、CO2圧力特性を用いて、純粋な超臨界二酸化炭素の多回連続抽出によって処理した。回収した第一画分は比較的低圧での超臨界抽出から得られ、回収した各連続画分は、連続的な高圧での超臨界抽出から得られた。各可溶性画分は、CO2を大気圧で蒸発させ、減圧弁から下流のガラスU字管に沈殿させて回収した。抽出容器内に入れた全てのポリエステルは7個の画分に回収され、103%の質量回収率で、質量の大部分は画分5と6に回収された。
【0101】
表1は、7個のSFE画分の各々、元の対照物質、および標準的な溶媒沈殿精製後の対照物質について、各画分から得られたPLGのGPC Mwと、核磁気共鳴(NMR)から導き出したモノマーとコポリマーの含有量を示す。表2と図2は、対照(ロット2137)、7個のSFE画分のうちの5個、および標準的な溶媒沈殿精製後の対照(ロット2137A)について、DSCガラス転移温度(Tg)の開始温度、中間温度、および終了温度を示す。表3は重量平均分子量、多分散度、<1 kDa、<3 kDa、<5 kDaおよび<10 kDaの重量平均分子量を持つポリマー(オリゴマー)のwt%、これらの値の合計、モノマーのwt%、ならびにラクチドとグリコリドのモル%を示す。
【0102】
データは、ポリエステルが分子量に従ってうまく分画されたことを示し、画分が概して対照の開始物質よりも狭い分子量分布を持っていたことを示す。また、画分は、ラクチドとグリコリドのモノマーの残留量が元の対照物質よりも少なく、溶媒沈殿精製物質と同様のレベルであった。ポリエステル内の乳酸対グリコール酸のモル比は分画によって有意に変化しなかったが、図2に示すように、画分のTgは対照と有意に異なった。
【0103】
表3は、予想外に、非精製PLGに対して二つの精製画分5および6の特性の改良を示すには、オリゴマーの含有量の減少が十分ではないことを示す。例えば、画分5は非精製ポリマーとほぼ同じオリゴマー含有量、すなわち<3 kDa、<5 kDa、および<10 kDaのポリマーのwt%、を持つように見えるが、画分6はこれらのオリゴマー物質の含有量が少ない。しかし、画分5と6の両方は、初期バーストについて改良された特性を示す。これは、様々な精製PLGコポリマーの初期バースト特性の改良がオリゴマー含有量の減少によるものであるという、背景技術の章で記載した文献に反するように見える。これらの画分5および6の初期バースト特性の改良の理由は完全にはわからないが、その狭い分子量分布(多分散度)に関連しているのかもしれない。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

これらの結果のグラフ表示である図2も参照のこと。
【0106】
【表3】

【0107】
[実施例2:ポリエステルの分子量(Mw)の測定方法]
1.予め作成された標準スパチュラAおよびBを、別々のバイアル中で5.0 mLのTHFに溶解することによって、Polyester Laboratories PS-2 EasiCal狭範囲ポリスチレン標準AおよびBを調製する。
【0108】
2.各対照の約0.5% w/v溶液を作成するために、各原料ポリエステルをTHFに溶解することによって、必要な全ての対照を調製する。
【0109】
3.各試料の約0.5% w/v溶液を作成するために、各試料をTHFに溶解することによって、全てのポリエステル原料試料を調製する。
【0110】
4.分析用に、標準、対照、試料溶液、およびいくつかのブランクTHFをそれぞれ別々のオートサンプラーバイアルに移す。
【0111】
5.次のパラメータを用いて、安定なベースラインを得るためにHPLCシステムを調節する。
カラム‐Polyester Laboratories PLgel MIXED-D、5ミクロンx 30 cm x 7.5 mm GPCカラム、もしくは同等のもの
ガードカラム‐PLgel 5ミクロンガードカラム、もしくは同等のもの
HPLC‐温度制御した示差屈折率検出器、温度制御カラムコンパートメント、およびGPC計算可能なソフトウェアを備えるもの、もしくは同等のもの
移動相‐THF
流速‐1.0 mL/分
カラム温度‐40℃
検出器温度‐40℃
【0112】
6.下記のパラメータを用いて、次の順番でバイアルを試験する分析順序を作成する。ブランク、標準AおよびB、対照、試料(毎20試料後、および順序の最後にブランクと対照を再分析する)。
注入量‐50マイクロリットル
分析時間‐15分
【0113】
7.三次回帰を用いて標準AおよびBで較正し、重量平均分子量と数平均分子量(それぞれMwとMn)、および多分散度(Mw/Mn)を決定するためにGPC計算ソフトウェアを用いて対照と試料を処理する。
【0114】
各ポリスチレン標準を5.0 mLのTHFに溶解する。全ての対照と試料を約0.5% w/vの濃度になるようにTHFに溶解する。
【0115】
標準、対照、試料、およびブランクTHFを別々のオートサンプラーバイアルに移す。
【0116】
安定なベースラインを得るために、上述のパラメータに従って設定されたHPLCシステムを調節する。
【0117】
前述のパラメータを用いて次の順番でバイアルを試験する分析順序を作成する。ブランク、標準、対照、試料(毎20試料後、および順序の最後にブランクと対照を再分析する)。
【0118】
三次回帰を用いて標準で較正し、重量平均分子量と数平均分子量(それぞれMwとMn)、および多分散度(Mw/Mn)を決定するために、GPC計算ソフトウェアを用いて対照と試料を処理する。
【0119】
標準AおよびBは各標準毎に0.1% w/vの総物質量になるように調製されたことに注意されたい。これらの標準の各々は異なるMwの5個のピークを持ち、個々のピークの各々が濃度で0.02% w/v(すなわち200ppm)であることを意味する。
【0120】
試験した対照のうちの一つは、標準AおよびBを製造した会社と同じ会社によって製造された、Mid-Range Broad-Range(MRBR)ポリスチレン標準であることに注意されたい。この特定の対照は0.1% w/vの濃度であるが、試験する自社製の他の対照は0.5% w/vである。
【0121】
[実施例3:ラットにおける、精製生分解性PLG流動性放出制御組成物の初期バースト効果の減少]
下記の表4および図3は、精製および非精製の、85/15の比のラクチド/グリコリドPLG試料を全て同じ重量百分率で含む流動性放出制御製剤から得られたオクトレオチドの24時間の放出をラットにおいて実験した結果を示す。各送達系は50%ポリマーと50% N-メチルピロリドン(NMP)であり、18-28 kGrayでガンマ線を照射した。送達系は注入の直前に薬物注射器の内容物と混合した。各薬物注射器は、2007年5月9日出願の米国特許出願No. 11/667,443(本明細書に引用により組み込まれる)に記載の通り、酢酸オクトレオチドとクエン酸の水溶液の凍結乾燥製品を含む。この実験では、オクトレオチドを含む流動性組成物をラットに注入し、注入後24時間内に放出される含有オクトレオチドの量を測定した。従って、この期間内の初期放出割合が高いほど、初期バースト効果が高いことを示し、割合が低いほど、望ましい低い初期バースト効果を示す。グループIは非精製の標準PLGコポリマー、ロット2137を使用し、5個体に注入した。注入後最初の24時間におけるオクトレオチドの平均放出割合は41.9%であり、標準偏差は8.0%であることがわかった。グループIIは溶媒沈殿精製PLG(ロット2137 PLGをジクロロメタンに溶解し、メタノール沈殿した)を使用し、標準偏差8.6%で30.8%のオクトレオチドの平均初期放出割合を示した。グループIIIおよびIVは、さらに二つの溶媒沈殿精製PLG試料を使用し、それぞれ22.7%(SD 3.5%)、28.2%(SD 7.7%)の初期放出割合を示した。グループVは、実施例1に記載の通り調製されたSFE精製PLGポリエステルである画分5を使用し、19.5%(SD 4.6%)の初期放出割合を示した。グループVIは実施例1の連続SFE法の画分6を使用し、26.8%(SD 5.8%)の初期放出割合を示した。
【0122】
図3では、黒四角はロット2137 PLG(“PLGH”)の照射後のMwと24時間のオクトレオチド放出割合を示し、黒菱形は溶媒沈殿精製ロット2137 PLGのMwと24時間のオクトレオチド放出割合を示し、黒三角と黒丸は、SFE精製ロット2137 PLGの実施例1(上記)の画分5および6のMwと24時間のオクトレオチド放出割合をそれぞれ示す。白三角と白丸は、二つの他の溶媒沈殿精製85/15 PLG試料のMwと24時間のオクトレオチド放出割合を示す。
【0123】
【表4】

【0124】
[実施例4:GHRP-1もしくはリスペリドンを含む精製生分解性PLG流動性放出制御組成物の初期バースト効果の減少]
流動性組成物は比が85/15であるラクチド/グリコリドPLGコポリマーから調製する。つまり、実施例3に記載したように、SFE-精製したものを同量のN-メチルピロリドンに溶解し、注射器内で放射線滅菌する。GHRP-1(成長ホルモン放出ペプチド-1)の凍結乾燥試料もしくはリスペリドンの凍結乾燥試料をそれぞれ含む薬物注射器を、二つの注射器の内容物の往復交換(reciprocating exchange)により、SFE-精製PLGコポリマーのN-メチルピロリドン溶液と混合する。その後、放出制御製剤を生きた哺乳類の生体組織に注入する。GHRP-1もしくはリスペリドンは、約30日間、もしくは約60日間、もしくは約90日間など、ある期間にわたってほぼ一定の割合で放出される。非精製PLGコポリマーを含む放出制御製剤と比較して、注入後最初の約24時間以内において、減少した初期バースト効果、すなわち即時放出量の減少が観察される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製生分解性ポリエステルを得るために、二酸化炭素を含む超臨界流体でポリエステルを抽出するステップを含む、精製生分解性ポリエステルを得るための方法。
【請求項2】
前記精製生分解性ポリエステルは、前記超臨界流体に溶解し、かつ、前記超臨界流体の蒸発によって回収される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記精製生分解性ポリエステルは、前記超臨界流体に溶解せず、かつ、溶解不純物を含む前記超臨界流体がそこから除去される際に回収される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ポリエステルはモノマー単位としてD-ラクチド、L-ラクチド、DL-ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸、もしくはe-カプロラクトン、もしくはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリエステルはポリ(DL-ラクチド-グリコリド)(PLG)であり、前記精製生分解性ポリエステルは精製PLGコポリマーである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリ(DL-ラクチド-グリコリド)は溶媒沈殿のステップによって予め精製されている、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記精製生分解性ポリエステルは、少なくとも一つの分子鎖末端上の一つ以上の官能基、もしくは、前記ポリエステルの前記分子鎖に結合した一つ以上の官能基、もしくはその両方を含み、前記官能基はカルボン酸、ヒドロキシル基、アルキル基、アクリロイル基、エステル、ポリエチレングリコール(PEG)、マレイン酸、コハク酸、もしくはクエン酸基、もしくはそれらの任意の組み合わせである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記精製PLGコポリマーは約50/50から約99/1の乳酸対グリコール酸のモル比を持つ、請求項5もしくは6記載の方法。
【請求項9】
前記精製生分解性ポリエステルはポリラクチドである、請求項4記載の方法。
【請求項10】
前記ポリエステルは約15 kDaから約45 kDaの平均分子量(Mw)を持つ、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記二酸化炭素は少なくとも約99 wt.%の純度である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記二酸化炭素は少なくとも約1 wt.%の共溶媒を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記超臨界流体は、キセノン(Xe)、フロン-23、エタン、N2O、SF6、プロパン、アンモニア、エチレン、n-C4H10、(C2H5)2O、THF、塩化メチレン、クロロホルム、C6H5CF3、p-Cl-C6H4CF3、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、炭酸プロピレン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、ギ酸、水、二硫化炭素、アセトン、トルエン、ヘキサン、もしくはペンタン、もしくはそれらの任意の組み合わせのうちの少なくとも一つを含む共溶媒をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリエステルは単一温度で前記超臨界流体で抽出される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記温度は少なくとも約50℃を超える、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記ポリエステルは温度を多様に増加させながら前記超臨界流体の試料を順次用いて連続的に抽出される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記多様な温度は約50℃から約100℃の範囲である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記ポリエステルは温度を多様に増加させながら前記超臨界流体の試料を順次用いて連続的に抽出され、前記共溶媒の含有量は前記順次用いられる試料によって異なる、請求項13記載の方法。
【請求項19】
前記ポリエステルは単一圧力で前記超臨界流体で抽出される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記圧力は約1,000 psiである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記ポリエステルは圧力を多様に増加させながら前記超臨界流体の試料を順次用いて連続的に抽出される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記多様な圧力は約1,000 psiから約12,000 psiの範囲である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記ポリエステルは圧力を多様に増加させながら前記超臨界流体の試料を順次用いて連続的に抽出され、前記共溶媒の含有量は前記順次用いられる試料によって異なる、請求項13記載の方法。
【請求項24】
前記精製生分解性ポリエステルは前記ポリエステルよりも狭い分子量分布を持つ、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記精製生分解性ポリエステルは約1.7未満の多分散度を持つ、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記精製生分解性ポリエステルが、放出制御製剤に組み込まれると、減少した初期バースト効果をもたらす、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記精製生分解性ポリエステルは最大で約5 kDaの分子量を持つ約10 wt.%未満のオリゴマー、約2 wt.%未満のモノマー、もしくはその両方を含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
約15 kDaから約45 kDaの平均分子量(Mw)を持つPLGを、約40℃を超える温度および約1,000 psiを超える圧力で二酸化炭素を含む超臨界流体で抽出するステップを含み、前記精製PLGコポリマーは前記PLGよりも狭い分子量分布と約1.7未満の多分散度を持ち、前記精製PLGコポリマーは最大で約5 kDaのMwを持つ約10 wt%未満のオリゴマーを含み、前記精製PLGコポリマーは約2 wt%未満のモノマーを含む、請求項5もしくは6記載の方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法によって調製される精製生分解性PLGコポリマー。
【請求項30】
請求項5から27のいずれか一項に記載の方法によって調製される精製生分解性PLGコポリマー。
【請求項31】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法によって調製される精製生分解性ポリエステル。
【請求項32】
前記精製PLGコポリマーは前記PLGと比較して減少した多分散度を持ち、前記精製PLGコポリマーの前記多分散度は約1.7未満である、請求項29もしくは30記載の精製生分解性PLGコポリマー。
【請求項33】
前記精製PLGコポリマーは約10 wt%未満のオリゴマー含有量を持つ、請求項29もしくは30記載の精製生分解性PLGコポリマー。
【請求項34】
前記精製PLGコポリマーは約2 wt%未満のモノマー含有量を持つ、請求項29もしくは30記載の精製生分解性PLGコポリマー。
【請求項35】
前記精製生分解性ポリエステルは前記ポリエステルと比較して減少した多分散度を持つ、請求項31記載の精製生分解性ポリエステル。
【請求項36】
請求項29もしくは30記載の前記精製生分解性PLGコポリマー、もしくは請求項31記載の前記精製生分解性ポリエステル、および体液に少なくともいくらかの溶解性を持つ有機溶媒、および生物活性物質を含む流動性組成物を含む、放出制御製剤。
【請求項37】
生体組織中に注入されると、前記生物活性物質の減少した初期バーストを有する、請求項36記載の放出制御製剤。
【請求項38】
前記生物活性物質はオクトレオチドを含む、請求項36記載の放出制御製剤。
【請求項39】
前記生物活性物質はGHRP-1を含む、請求項36記載の放出制御製剤。
【請求項40】
前記生物活性物質はリスペリドンを含む、請求項36記載の放出制御製剤。
【請求項41】
生体組織内への注入の際に、前記生物活性物質の前記初期バーストが減少する、請求項36記載の放出制御製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−506965(P2010−506965A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532415(P2009−532415)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/021749
【国際公開番号】WO2008/045516
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(505340973)キューエルティー ユーエスエー,インコーポレイテッド. (8)
【Fターム(参考)】