説明

超音波ガスメーター

【課題】従来のようなS字状に屈曲するガス流通路を設けることなく計測性能を確保でき、しかもガスメーター本体の設計の自由度が増し、部品点数及び組立て工数を削減し、コストダウンを図ることができる超音波ガスメーターを提供する。
【解決手段】ガスメーター本体1にガス流入通路3とガス流出通路5を左右対称的に設け、ガス流入通路3から流入するガスを計測流路7に導き、計測流路7に設置した超音波センサ11,12によって超音波の伝搬時間の変化を検知してガス流量を計測した後、ガス流出通路5に導く超音波ガスメーターにおいて、ガス流入通路3及びガス流出通路5に、計測流路7の流入部7a及び流出部7bに向かって突出し、ガスの流れを整流する突起部28a,28bを左右対称的に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波センサによって超音波の伝搬時間の変化を検知してガス流量を計測する超音波ガスメーターに関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭用のガスメーターとしての超音波ガスメーターは、例えば、特許文献1で知られている。この超音波ガスメーターは、既設の膜式ガスメーターが取付けられている配管に対して互換性を持たせるために、一般に、図4に示すように構成されている。
【0003】
すなわち、ガスメーター本体1の上部には左右方向に離間してガス流入口2を有するガス流入通路3とガス流出口4を有する形成するガス流出通路5が左右対称的に設けられている。ガス流入通路3とガス流出通路5とは平行で、しかも上下方向に貫通して設けられている。ガス流入通路3とガス流出通路5の下端はガスメーター本体1の計測部本体6と接続されている。
【0004】
計測部本体6にはガス流入通路3及びガス流出通路5と直角方向、つまり水平方向に計測流路7が設けられている。この計測流路7の上流側は流入側連通部8を介してガス流入通路3と連通し、この計測流路7の下流側は流出側連通部9を介してガス流出通路5と連通している。さらに、計測流路7には内部に複数枚の整流板を有する角筒状の整流管10が設けられ、ガスを整流するようになっている。また、計測流路7にはガスの流れる方向に対して角度を持って対向する一対の超音波センサ(図示しない)が設置されている。
【0005】
ガス流入通路3には、その上流側と下流側を左右方向に仕切る仕切り壁13が設けられ、この仕切り壁13には上流側と下流側を連通する連通孔14が左右方向に貫通して設けられている。そして、ガスメーター本体1には連通孔14に対向して遮断弁15が横方向に設けられている。
【0006】
ガス流入通路3の連通孔14より下流側にはガス流入通路3を形成する内壁より横方向に突出する隔壁16が設けられ、この隔壁16の一部にはガス流入通路3と計測流路7とを連通させる連通口17が設けられている。連通口17は隔壁16の偏った位置に設けられ、略S字状に屈曲するガス流通路18が形成されている。つまり、ガス流通路18は、略L字状の上流側屈曲通路18aと逆方向に略L字状に屈曲する下流側屈曲管路18bとが連続して形成されている。
【0007】
前記計測流路7の下流側の流出側連通部9も基本的に同一構造で、ガス流出通路5と隔壁19によって区画され、この隔壁19の一部にはガス流出通路5と計測流路7とを連通させる連通口20が設けられている。連通口20は隔壁19の偏った位置に設けられ、略S字状に屈曲するガス流通路21、すなわち、略L字状の上流側屈曲通路21aと逆方向に略L字状に屈曲する下流側屈曲管路21bとが連続して形成されている。
【0008】
計測流路7の上流側及び下流側の略S字状に屈曲するガス流通路18,21は、計測流路7の内部でガスの乱れを抑制し、ガスが安定した流れの中で計測されるようにしたものである。
【0009】
前述のように構成された超音波ガスメーターは、ガス供給源から配管を介して供給されたガスはガス流入口2からガス流入通路3に流入し、連通孔14を経てガス流入通路3から略S字状に屈曲するガス流通路18を介して計測流路7の整流管10の内部を流れる。このとき、ガスの流速分布の乱れは整流管10によって整流される。ガスが整流管10の内部を流れる間に、超音波センサ(図示しない)によって超音波の伝搬時間の変化を検知してガス流量を計測し、積算流量を積算指示部(図示しない)に指示する。計測流路7で計測されたガスはガス流通路21を介してガス流出通路5に導かれ、ガス流出口4から配管を介してガス需要側へ流れる。
【特許文献1】特開2004−333202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述した超音波ガスメーターのように、計測流路7の上流側及び下流側に形成した略S字状に屈曲するガス流通路18,21は、計測流路7の内部でガスの乱れを抑制し、ガスの流れを安定化させるものであるが、略S字状のガス流通路18,21で、外側を流れるガスの流速分布が速くなる。
【0011】
さらに、略S字状に屈曲するガス流通路18,21を確保するために、従来はガスメーター本体1に対して遮断弁15を横方向から取り付けている。従って、遮断弁15をガスメーター本体1に対して取付ける際の取付け作業性が悪く、また部品点数が多くなり、組立て工数がかかってコストアップの原因となっている。
【0012】
この発明は、前記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、計測性能を確保でき、しかもガスメーター本体の設計の自由度が増し、部品点数及び組立て工数を削減し、コストダウンを図ることができる超音波ガスメーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、前記目的を達成するために、請求項1は、ガスメーター本体にガス流入通路とガス流出通路を左右対称的に設け、前記ガス流入通路から流入するガスを計測流路に導き、前記計測流路に設置した超音波センサによって超音波の伝搬時間の変化を検知してガス流量を計測した後、前記ガス流出通路に導く超音波ガスメーターにおいて、前記ガス流入通路及び前記ガス流出通路に、前記計測流路の流入部及び流出部に向かって突出し、ガスの流れを整流する突起部を左右対称的に設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項2は、請求項1の前記突起部は、前記計測通路の流入部及び流出部における上下方向の中間部に向かって突出していることを特徴とする。
【0015】
請求項3は、請求項1の前記突起部は、前記計測通路の流入部における上流側及び流出部における下流側に、前記計測通路の流入部及び流出部に向かって突出して設けられているとともに、前記突起部の先端部と前記計測通路の流入部及び流出部の開口部とはオーバーラップしていることを特徴とする。
【0016】
請求項4は、請求項1〜3のいずれかの前記ガス流入通路には、その上流側と下流側を仕切る仕切り壁を設け、この仕切り壁に前記ガスメーター本体の前後方向に貫通して前記上流側と下流側を連通する連通孔を設け、前記ガスメーター本体には前記連通孔に対向して遮断弁を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、計測流路の流入部及び流出部に向かって突出する突起部を設け、ガスの流れを整流することにより、計測性能を確保できる。従って、ガスメーター本体のガス流通路の形状及び遮断弁を取付ける位置等の設計の自由度が増すため、部品点数及び組立て工数を削減してコストダウンを図ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明するが、従来と同一構成部分は同一番号を付す。図1及び図2は第1の実施形態を示し、ガスメーター本体1の上部には左右方向に離間してガス流入口2を有するガス流入通路3とガス流出口4を有する形成するガス流出通路5が左右対称的に設けられている。ガス流入通路3とガス流出通路5とは平行で、しかも上下方向に貫通して設けられている。
【0019】
ガス流入通路3には、ガスメーター本体1の前後方向を2分し、ガス流入通路3の上流側3aと下流側3bを仕切る仕切り壁22が設けられている。この仕切り壁22にはガスメーター本体1の前後方向に貫通して上流側3aと下流側3bを連通する連通孔23が設けられている。さらに、ガスメーター本体1の前部側には弁取付け部1aが設けられ、この弁取付け部1aにはガスメーター本体1の前部側から取付けねじ24によって遮断弁25が固定されている。そして、緊急時に連通孔23を遮断弁25によって遮断できるようになっている。
【0020】
ガス流入通路3及びガス流出通路5の下端部は直角に屈曲する屈曲部26a,26bを介して計測部本体6と連通している。屈曲部26a,26bの内部にはガスメーター本体1とは別部材の筒状ピース27a,27bが内挿され、この筒状ピース27a,27bを介してガス流入通路3及びガス流出通路5が計測流路7と連通している。従って、計測流路7の流入部7aを形成する整流管10の先端部10a及び計測流路7の流出部7bを形成する整流管10の後端部10bは筒状ピース27a,27bの内部の略中間部まで突出している。整流管10の両側部には計測流路7を流れるガスの方向に対して角度を持って対向する一対の超音波センサ11,12が設置されている。
【0021】
さらに、ガス流入通路3側の筒状ピース27aの左内側壁及びガス流出通路5側の筒状ピース27bの右内側壁には計測流路7の流入部7a及び流出部7bに向かって突出する突起部28a,28bが一体に設けられている。これら突起部28a,28bは筒状ピース27a,27bの前後方向(ガスメーター本体1の前後方向)の全体に亘って設けられている。そして、これら突起部28a,28bは計測流路7の流入部7a及び流出部7bの上下方向の中間部に向かって突出してガスの流れを整流する役目をしており、左右対称的に設けられている。
【0022】
ここで、突起部28aの突出長について説明すると、図1に示すように、筒状ピース27aの左内側壁と流入部7aとの間隔aが約8mmのとき、突起部28aの突出長bは約5mmであり、突起部28aの先端部と流入部7aとの間隔cが約3mmに設定されている。また、突起部28bの突出長においても同様であり、筒状ピース27bの右内側壁と流出部7bとの間隔aが約8mmのとき、突起部28bの突出長bは約5mmであり、突起部28bの先端部と流出部7bとの間隔cが約3mmに設定されている。
【0023】
すなわち、突起部28aはガス流入通路3から計測流路7に流れ込むガスを整流し、突起部28bは計測流路7の流出部7bからガス流出通路5に流れるガスを整流するようになっており、超音波センサ11,12によってガス流量を計測する際の計測性能を向上させている。
【0024】
前述のように構成された超音波ガスメーターは、ガス供給源から配管を介して供給されたガスはガス流入口2からガス流入通路3に流入し、ガス流入通路3から筒状ピース27aを介して計測流路7の整流管10の内部を流れる。このとき、ガスの流速分布の乱れは突起部28aによって整流され、さらに整流管10によって層流に整流される。ガスが整流管10の内部を流れる間に、超音波センサ11,12によって超音波の伝搬時間の変化を検知してガス流量を計測し、積算流量を積算指示部(図示しない)に指示する。計測流路7で計測されたガスは筒状ピース27bを介してガス流出通路5に導かれ、ガス流出口4から配管を介してガス需要側へ流れる。
【0025】
このとき、ガス流入通路3及びガス流出通路5は略ストレートのガス流通路であるため、内部を流通するガスの圧力損失を低減させることができる。ガスメーターは、最大流量での圧力損失が規定されており、圧力損失を低減するために流路を広げる必要が生じる場合があるが、圧力損失を低減させることができる構造であるため、圧力損失を低減するために流路を広げる必要がなく、超音波ガスメーターの小型化が図れる。
【0026】
また、ガス流入通路3には、ガスメーター本体1の前後方向を2分し、ガス流入通路3の上流側3aと下流側3bを仕切る仕切り壁22が設けられ、この仕切り壁22に上流側3aと下流側3bを連通する連通孔23が設けられている。従って、連通孔23を緊急時に遮断する遮断弁25をガスメーター本体1の前部側から取付けることができ、組立て作業性の向上が図れる。さらに、従来のように、S字状に屈曲するガス流通路を設ける必要がなく、ガスメーター本体1のガス流通路の形状及び遮断弁25を取付ける位置等の設計の自由度が増し、部品点数の削減と相俟ってコストダウンを図ることができる。
【0027】
なお、前記実施形態においては、ガス流入通路3側の筒状ピース27aの左内側壁及びガス流出通路5側の筒状ピース27bの右内側壁に突起部28a,28bを一体に設けたが、ガスメーター本体1の内壁に突起部28a,28bを一体に設けてもよく、突起部28a,28bの形状も限定されるものではない。
【0028】
図3は第2の実施形態を示し、(a)はガスメーター本体の平面図、(b)はB−B線に断面図、(c)はC−C線に断面図であり、第1の実施形態と同一構成部分は同一番号を付して説明を省略する。
【0029】
ガス流入通路3側の筒状ピース27aの左内側壁における流入部7aより上流側(図面上で上側)には突起部31aが一体に設けられている。同様に、ガス流出通路5側の筒状ピース27bの右内側壁における流出部7bより下流側(図面上で上側)には突起部31bが一体に設けられている。これら突起部31a,31bは計測流路7の流入部7a及び流出部7b方向に突出し、先端部は計測通路7の流入部7a及び流出部7bの開口部とはオーバーラップしている。そして、突起部31aは計測流路7の流入部7aに向かうガスの流れを突起部31aの上側で先端側に導き、次いで突起部31aの先端側で折り返して突起部31aの下側に導く。さらに、ガスの一部は計測流路7の下側に回り込んで、計測流路7の周囲から流入部7aに導かれるようになっており、筒状ピース27aの内部においては、ガスが略S字状に屈曲する流れとなる。
【0030】
また、突起部31bは計測流路7の流出部7bからガス流出通路5に向かうガスの流れは突起部31bの下側で先端側に導き、次いで突起部31bの先端側で折り返して突起部31bの上側に導かれるようになっており、筒状ピース27bの内部においては、ガスが略S字状に屈曲する流れとなる。
【0031】
ここで、突起部31aの突出長について説明すると、図3に示すように、筒状ピース27aの左内側壁と流入部7aとの間隔aが約8mmのとき、突起部31aの突出長bは約12〜13mmであり、突起部31aの先端部と流入部7aとのラップ幅cが約4〜5mmに設定されている。また、突起部31bの突出長においても同様であり、筒状ピース27bの右内側壁と流出部7bとの間隔aが約8mmのとき、突起部31bの突出長bは約12〜13mmであり、突起部31bの先端部と流出部7bとのラップ幅cが約4〜5mmに設定されている。
【0032】
すなわち、突起部31aはガス流入通路3から計測流路7に流れ込むガスを整流し、突起部31bは計測流路7の流出部7bからガス流出通路5に流れるガスを整流するようになっており、超音波センサ11,12によってガス流量を計測する際の計測性能を向上させている。
【0033】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を組合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の第1の実施形態を示し、超音波ガスメーターの縦断正面図。
【図2】同実施形態を示し、図1のA−A線に沿う断面図。
【図3】この発明の第2の実施形態を示し、(a)はガスメーター本体の平面図、(b)はB−B線に断面図、(c)はC−C線に断面図。
【図4】従来の超音波ガスメーターの縦断正面図。
【符号の説明】
【0035】
1…ガスメーター本体、2…ガス流入口、3…ガス流入通路、4…ガス流出口、5…ガス流出通路、7…計測流路、7a…流入部、7b…流出部、11,12…超音波センサ、25…遮断弁、28a,28b,31a,31b…突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスメーター本体にガス流入通路とガス流出通路を左右対称的に設け、前記ガス流入通路から流入するガスを計測流路に導き、前記計測流路に設置した超音波センサによって超音波の伝搬時間の変化を検知してガス流量を計測した後、前記ガス流出通路に導く超音波ガスメーターにおいて、
前記ガス流入通路及び前記ガス流出通路に、前記計測流路の流入部及び流出部に向かって突出し、ガスの流れを整流する突起部を左右対称的に設けたことを特徴とする超音波ガスメーター。
【請求項2】
前記突起部は、前記計測通路の流入部及び流出部における上下方向の中間部に向かって突出していることを特徴とする請求項1記載の超音波ガスメーター。
【請求項3】
前記突起部は、前記計測通路の流入部における上流側及び流出部における下流側に、前記計測通路の流入部及び流出部に向かって突出して設けられているとともに、前記突起部の先端部と前記計測通路の流入部及び流出部の開口部とはオーバーラップしていることを特徴とする請求項1記載の超音波ガスメーター。
【請求項4】
前記ガス流入通路には、その上流側と下流側を仕切る仕切り壁を設け、この仕切り壁に前記ガスメーター本体の前後方向に貫通して前記上流側と下流側を連通する連通孔を設け、前記ガスメーター本体には前記連通孔に対向して遮断弁を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の超音波ガスメーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−232942(P2008−232942A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75293(P2007−75293)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000142425)株式会社金門製作所 (40)
【Fターム(参考)】