超音波モータ

【課題】 超音波モータのステータとロータの圧接面での癒着を解消し、モータ始動時の立ち上がり特性を改善する。
【解決手段】 互いに圧接面で圧接するステータとロータとを備える超音波モータであって、ステータに設けられて円周方向に沿って分極した圧電体13に駆動用の高周波電圧を印加する駆動回路4の構成として、超音波モータの始動時に少なくとも周波数をランダムに変化させた高周波電圧を所定時間だけ生成する手段を備える。始動時にタイマー433によりセレクタ431でランダム発振器422の出力を選択し、出力器434からランダム高周波電圧RAMA,RAMBを圧電体13に印加する。圧電体13に不規則な振動が生起され、ステータとロータの圧接面間に当該不規則な振動が作用することになり、両圧接面の癒着を効果的に解消し、モータの回転立ち上がり特性が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波モータに関し、特に回転始動時の立ち上がり特性を改善した超音波モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波モータは、複数に分極した圧電体を円周配置したステータと、このステータに所定の圧力で当接した回転可能な円板状あるいは円環状のロータとで構成され、ステータの圧電体に高周波電圧を印加して圧電体を振動させ、この振動を圧電体と一体的に設けた櫛歯体によって円周方向に拡大させて櫛歯体を円周方向に向けて進行波動作させることで、圧電体に摩擦係合しているロータを軸回り方向に回転動作させるものである。例えば、特許文献1に記載がある。ステータの櫛歯体は振幅を拡大する機能を有しているが、通常振幅は1〜3μmなのでロータの回転効率(ステータの振動エネルギに対するロータの回転エネルギ)を高めるためには、ステータの櫛歯体に対してロータを円周方向及び径方向に偏りなく密接させ、かつ櫛歯体とロータの両密接面に所要の圧接力を加えて圧接面として構成することが必要である。そのため、超音波モータを長時間駆動させない状態が続くと、当該圧接力によって櫛歯体とロータの圧接面が界面接着(癒着)の状態になって、いわゆる静摩擦力が大きくなり、超音波モータを始動する際にロータを回転させるのに大きなトルクが必要になり、回転のスムーズな立ち上げができなくなり立ち上がり特性が低下し、あるいは極端な場合にはモータの回転が不能になることがある。
【0003】
このようなモータ回転始動時における問題を満たすために、櫛歯体とロータの圧接面のいずれか一方に両圧接面間での静摩擦力を抑制するために低摩擦係数の樹脂層を形成することが考えられている。この樹脂層としては、例えばPTFE(四フッ化エチレン)等のフッ素樹脂が考えられる。特許文献2ではロータの表面に高分子樹脂からなるスライダを接着する技術が提案されており、この特許文献2の技術でも当該スライダによって櫛歯体とロータの圧接面での界面接着を抑制し、静摩擦力を低減することが可能であると考えられる。しかし、この種の樹脂はモータ駆動に伴って温度が上昇したときに摩擦係数が低下して櫛歯体とロータの両圧接面が滑り易い状態となり、櫛歯体の進行波動作が効率良くロータに伝わりにくくなって超音波モータの回転効率が低下してしまう。
【特許文献1】特開2000−60154号公報
【特許文献2】特開平9−98587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、櫛歯体とロータの圧接面に低摩擦係数の樹脂層を形成することは超音波モータの回転効率が低下するおそれがあり、必ずしも有効ではない。そこで、樹脂層は設けなくとも回転始動時にのみ超音波モータに高電圧を印加し、あるいは、回転始動時における高周波電圧の周波数を高めて回転トルクを高め、この回転トルクによって癒着を解消することが考えられる。しかし、静止状態にある癒着を解消するためには櫛歯体とロータとの間に極めて大きな回転トルクを加える必要があり、超音波モータに印加する高電圧や高周波数の値も極めて大きなものにする必要がある。これは前記した静摩擦係数の場合と同様に、互いに静止状態で密着されている物体間での密着状態を解除するための力は、相互に微細動されている状態の密着状態を解消するよりも大きな力が必要とされるためである。そのため、超音波モータの駆動回路に極めて高い電圧を発生する高電圧発生回路を設ける必要があり、駆動回路が複雑化、高価格になる。また、一時的にでも高電圧を印加することで圧電体に対してダメージを与えることになり、超音波モータの回転始動の都度高電圧を印加することによって超音波モータが劣化し易く、寿命が短くなるという問題が生じる。さらに、高電圧を与えた状態では、癒着を解消した直後に超音波モータが高速で回転を開始することになり、その際の衝撃振動や衝撃音が問題になるおそれもある。
【0005】
本発明の目的は、回転効率を低下することなくモータに生じる癒着を解消して立ち上がり特性を改善した超音波モータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、円周方向に沿って分極した圧電体を一体に有するステータと、ステータの表面に圧接される圧接面を有する回転可能なロータと、圧電体に駆動用の高周波電圧を印加する駆動回路とを備える超音波モータにおいて、駆動回路は超音波モータの始動時に少なくとも周波数をランダムに変化させた高周波電圧を所定時間だけ生成する手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、超音波モータの始動時に周波数がランダムな高周波電圧を圧電体に印加することにより、圧電体及びこれと一体のステータ(櫛歯体)に不規則な振動が生起される。そのため、ステータとロータの圧接面間に当該不規則な振動が作用することになり、超音波モータを駆動していないときにステータとロータとの圧接面に癒着が生じていた場合でも、周波数が一定の高周波電圧を圧電体に印加する場合よりも容易に両圧接面の癒着を解消することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の好ましい第1の形態の駆動回路は、安定した周波数の高周波電圧を生成する第1の高周波電圧生成手段と、ランダムな周波数の高周波電圧を生成する第2の高周波電圧生成手段と、超音波モータの始動時に所定時間だけ第2の高周波電圧生成手段の出力を選択し、その後は第1の高周波電圧生成手段の出力を選択して圧電体に印加する選択手段を備える構成とする。選択手段で第1又は第2の高周波電圧生成手段の出力を選択するだけで、超音波モータの始動時にランダムな高周波電圧を圧電体に印加して癒着を解消し、その後は安定した高周波電圧を圧電体に印加して超音波モータの安定な駆動を確保する。
【0009】
本発明の好ましい第2の形態の駆動回路は、周波数が安定な第1の高周波電圧と、少なくとも周波数がランダムに変化する第2の高周波電圧とを生成可能な高周波電圧生成手段と、高周波電圧生成手段において超音波モータの始動時に所定時間だけ第2の高周波電圧を生成し、その後は第1の高周波電圧を生成する制御を行う制御手段とを備える構成とする。制御手段で第1又は第2の高周波電圧を選択的に発生させるだけで、超音波モータの始動時にランダムな高周波電圧を圧電体に印加して癒着を解消し、その後は安定した高周波電圧を圧電体に印加して超音波モータの安定な駆動を確保する。
【実施例1】
【0010】
次に、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例1の超音波モータの外観斜視図、図2はその縦断面図である。また、図3は部分分解斜視図である。これらの図において、モータ取付用の取付穴111を有する円板状の台座11の下側に円周方向に複数の櫛歯121を配列した短円筒容器状の櫛歯体12が一体に設けられており、この櫛歯体12の上面には前記櫛歯121に対応して円周方向に複数に分極された円環薄板状の圧電体13が一体的に搭載され、これら圧電体13と櫛歯体12とでステータ1が構成される。前記圧電体13にはフレキシブル基板14を介して後述する駆動回路から高周波電圧が印加されるようになっている。前記台座11の中心には軸穴112が開口され、内周面に円筒状の軸受筒15が固定されている。また、この軸受筒15内の上端部には玉軸受17が内装され、この玉軸受17によって回転軸3が軸支され、ワッシャ31により抜け止めされる。この回転軸3の下端部にはロータ2が取着されている。ロータ2は周壁部21の上端面、すなわちロータ2の圧接面2aは前記櫛歯121の表面、換言すれば櫛歯体12の圧接面12aに圧接すべく短円筒状に形成されている。また、軸受筒15の下端部と前記玉軸受17との軸方向の間に圧縮コイルスプリング16が内挿されており、この圧縮コイルスプリング16の軸方向の弾性力によって玉軸受17及びこれを支持している回転軸3を上方向に付勢し、ロータ2の圧接面21aをステータ1の櫛歯体12の圧接面12aに向けて圧接させている。
【0011】
図4は前記圧電体に高周波電圧を印加する駆動回路4の回路図である。前記圧電体13は前記櫛歯体12の上面に搭載されており、円環状をして円周方向に複数に分極されている。図4では模式的に円周方向に12の領域が交互に正極、負極に分極されている。そして、前記駆動回路4から圧電体13の右側の複数の分極領域にはA高周波電圧RFVAとして正弦高周波電圧〔Vo・sinωt〕を印加し、同じく圧電体13の左側の複数の分極領域にはこれとπ/2(1/4波長)だけ位相がずれたB高周波電圧RFVBとして余弦高周波電圧〔Vo・cosωt=Vo・sin(ωt−π/2)〕を印加している。このように位相のずれた高周波電圧を印加することで圧電体13を振動させ、この振動を圧電体13と一体的に設けた櫛歯体12によって円周方向に拡大させて櫛歯体12を円周方向に向けて進行波動作させることで、櫛歯体12に圧接して摩擦係合しているロータ2を軸回り方向に回転動作させることになる。
【0012】
ここで、前記駆動回路4は外部から入力される駆動信号DSに基づいて前記圧電体13に高周波電圧を出力するように構成されており、電源部41と、電源部41から供給される電力に基づいて高周波信号を発生する発振部42と、発振部43で発生した高周波信号に基づいて前述のように位相の異なるA高周波電圧RFVAとB高周波電圧RFVBを生成して出力するドライバ部43とを備えている。また、この駆動回路4によって駆動される超音波モータの消費電流が圧電体13の振動周波数、すなわち櫛歯体12での共振周波数で最大になることを利用して圧電体13に適切な周波数電圧を供給するために、圧電体13での消費電流を検出する電流検出部44を備え、この電流検出部44で検出した電流が最大になるように発振部42での発振周波数をフィードバック制御するように構成されている。
【0013】
前記発振部42は、実施例1では一定の周波数、振幅、位相のメイン周波数信号を発生するメイン発振器421と、周波数、振幅及び位相が一定ではないランダムな周波数信号を発生するランダム発振器422とを備えている。前記メイン発振器421は図示は省略するが前記電流検出部44で検出した電流の値を基準電流と比較し、比較結果が最大となるようにメイン発振器421での発振周波数をフィードバック制御するための制御部を内蔵している。前記ランダム発振器422は、例えばCPUで発生されるランダム値に対応した周波数信号を生成するランダム発振器で構成されており、それぞれ独自の周波数、位相、振幅のランダム周波数信号を発生するAランダム発振器422AとBランダム発振器422Bとで構成される。ここで、各ランダム発振器422A,422Bで発生する周波数信号は、圧電体13が振動可能な周波数、換言すれば超音波モータの応答周波数範囲内で周波数が変動する周波数信号であることが肝要である。
【0014】
前記ドライバ部43は、前記メイン発振器421からのメイン周波数信号と前記ランダム発振器422からのランダム周波数信号を選択するためのセレクタ431を備えている。このセレクタ431は2ポート型セレクタで構成されており、第1ポートPAでは前記メイン発振器421からのメイン周波数信号と前記Aランダム発振器422AからのAランダム周波数信号とを選択し、第2ポートPBでは前記メイン発振器421からのメイン周波数信号の位相をπ/2だけ移相器432で移相した移相メイン周波数信号と前記Bランダム発振器422BからのBランダム周波数信号とを選択してそれぞれ出力する。また、前記駆動回路4に起動信号DSが入力されたときに所定の時間、ここでは約100μSを計時する間は前記セレタク431においてランダム周波数信号を選択し、その後はメイン周波数信号を選択するためのセレクト制御を行うためのタイマー433を備えている。さらに、前記セレクタ431の第1ポートPAと第2ポートPBで選択された周波数信号を入力し、これらの周波数信号に基づいてA高周波電圧RFVAとB高周波電圧RFVBを生成して出力する出力器434を備えている。これら出力されたA高周波電圧RFVAとB高周波電圧RFVBは入力された周波数信号の周波数、位相、振幅に対応した周波数、位相、電圧の電圧信号として生成されることになる。
【0015】
この実施例1の超音波モータでは、駆動回路4の出力器434から出力されるA高周波電圧RFVAとB高周波電圧FRVBをそれぞれフレキシブル基板14を通して図4に示したように圧電体13の各分極領域に印加すると、図2を参照すると圧電体13が振動し、これと一体の櫛歯体12が振動し、円周方向に配列されている複数の櫛歯121が円周方向に変位され、進行波動作される。圧縮コイルスプリング16の付勢力によってロータ2の圧接面2aは櫛歯体12の圧接面12aに圧接されているため、この圧接によってロータ2の圧接面4aと櫛歯体12の圧接面12aに生じる摩擦力によってロータ2が円周方向に移動され、ロータ2及びこれを支持している回転軸3が回転される。回転軸3の回転力は回転軸3に取着された図には表れない歯車を介して外部に伝達される。
【0016】
すなわち、超音波モータの定常回転時には、セレクタ431はメイン発振器421で発生されたメイン周波数信号と、このメイン周波数信号を移相器432でπ/2だけ移相させた移相メイン周波数信号を選択してそれぞれを出力器434に入力する。これにより出力器434ではメイン周波数信号と移相メイン周波数信号とから図5(a)に波形を示すように、それぞれ周波数と電圧がほぼ同じで位相がπ/2だけ相違するA高周波電圧RFVAとB高周波電圧RFVBを生成し、それぞれを圧電体13に入力することで前述のようにロータ2が回転駆動される。また、これと並行して電流検出部44は圧電体13における電流を検出してメイン発振器421に入力し、メイン発振器421ではこの検出電流に基づいて発振周波数のフィードバック制御を行うことにより、メイン発振器421で発生されるメイン周波数信号は櫛歯体12での共振周波数に適合した周波数となり、超音波モータの回転効率を高めることが可能なA高周波電圧とB高周波電圧が出力される。
【0017】
一方、超音波モータの始動時には、駆動回路4では起動信号DSが入力されると、先ずタイマー433が100μSの間だけセレクタ431を制御し、セレクタ431の第1及び第2ポートPA,PBを切り替え、Aランダム周波数信号とBランダム周波数信号を選択し、これを出力器434に出力する。出力器434はこれらAランダム周波数信号とBランダム周波数信号の周波数、位相、振幅に対応したランダムな周波数、位相、電圧のAランダム高周波電圧RAMAとBランダム高周波電圧RAMBを出力し圧電体13に印加する。図5(b)はそのときのAランダム高周波電圧RAMAとBランダム高周波電圧RAMBの一例を示す波形である。これにより、圧電体13はランダムな周波数、位相、電圧で振動され、櫛歯体12にはランダムな進行波動作が発生する。すなわち、櫛歯体12に生じる振動の周波数と強度が時間と共にランダムに変化される。そのため、このランダムな櫛歯体12での振動によって櫛歯体12とロータ2の両圧接面12a,2aの間に周波数と振幅(強度)が微細に変動する振動が加えられることになり、結果としてこの櫛歯体の振動の変動によってロータ2に対する櫛歯体12の進行波動作の方向が変化され、櫛歯体12が回転方向に対して前後方向に微細に振動されたような状態となる。この微細な振動により櫛歯体12とロータ2の両圧接面12a,2aにおいては静摩擦状態から動摩擦状態となり、これまでのように櫛歯体12がロータ2に対して一定の周波数、位相、電圧で振動される場合に比較すると両圧接面12a,2aでの癒着が解消され易くなり、ロータ2の始動が容易になる。
【0018】
前述のように癒着が解消され、起動から100μSが経過するとタイマー433がタイムアップし、セレクタ431は出力がA,Bの両ランダム周波数信号からメイン周波数信号と移相メイン周波数信号に切り替わるため、出力器434からは定常的なほぼ一定の周波数、位相、電圧のA高周波電圧RFVAとB高周波電圧RFVBが出力されて圧電体13に印加され、超音波モータの安定した回転動作が行われる。また、これと同時に前述したようにフィードバック制御によって回転効率の高い超音波モータの定常回転動作が保持される。
【0019】
このように、実施例1では、超音波モータの始動時の極短時間だけ圧電体13に周波数、位相、電圧がランダムなAランダム高周波電圧RAMAとBランダム高周波電圧RAMBを印加するので、圧電体13に不規則な振動が生起され、この不規則な振動によって櫛歯体12とロータ2の圧接面12a,2aの間に一定しない相対力が発生し、両圧接面の癒着を効果的に解除することが可能になる。そのため、圧電体13に高電圧や極めて高い周波数の電圧を印加して癒着を解除する必要がなく、圧電体13ないし超音波モータにおけるダメージを防止する。また、癒着が解除されたときに超音波モータに生じる衝撃振動や衝撃音の発生を防止する。超音波モータの癒着が解除された後は、定常の高周波電圧が印加されるので、超音波モータは高い回転効率での回転が確保される。
【実施例2】
【0020】
ここで、Aランダム高周波電圧RAMAとBランダム高周波電圧RAMBは圧電体13、すなわち櫛歯体12に不規則な振動を生じさせる電圧信号であればよいので、両高周波電圧は必ずしも独立した周波数、位相、電圧の高周波電圧でなくてもよい。図6に示すように、実施例2の駆動回路4Aでは発振部42には単一の発振器420のみを備え、この発振器420の発振周波数をタイマー433によって定常周波数信号とランダム周波数信号を発生させるように構成している。すなわち、超音波モータの起動時から100μSの間は発振器420によって周波数、位相、振幅が一定しないランダム周波数信号を発生させ、その後は周波数、位相、振幅が一定な定常のメイン周波数信号を発生させるように構成する。したがって、この実施例2の場合には実施例1のような複数の発振器は不要であり、またセレクタ431も不要となる。すなわち、発振器420で発生される周波数信号を一方はそのまま、他方はπ/2の移相器432を通してそれぞれ出力器434に入力し、出力器434で各周波数信号の周波数、位相、振幅に対応した周波数、位相、電圧の高周波電圧を生成して出力する。なお、この構成では、ランダム周波数信号に基づいて生成されるA,Bの各ランダム高周波電圧RAMA,RAMBは互いに周波数と電圧が同じで位相がπ/2だけずれた高周波電圧となる。
【0021】
実施例2でも超音波モータの始動時の所定時間の間はランダム周波数信号に基づいて生成された周波数、位相、電圧がランダムなAランダム高周波電圧RAMAとBランダム高周波電圧RAMBが圧電体13に印加されるので、圧電体13ないし櫛歯体12には周波数と振幅(強度)がランダムに変化する振動が生じることになり、この櫛歯体12でのランダム振動によって実施例1と同様に櫛歯体12とロータ2の両圧接面12a,2aの間に微細に変動する振動が加えられることになり、結果として櫛歯体12が回転方向に対して前後方向に微細に振動されたような状態となり、櫛歯体12とロータ2の両圧接面12a,2aでの癒着が解除され易くなり、ロータの始動が容易になる。
【0022】
ここで、実施例1,2では始動時におけるランダム高周波電圧として、周波数、位相、電圧を全てがランダムに変化させた例を説明したが、櫛歯体に不規則な振動を生じさせることが可能で、しかも圧電体の応答周波数範囲内で周波数をランダムに変化させた高周波電圧であれば、位相、電圧の変化は必ずしも必要ではない。また、場合によっては、Aランダム高周波電圧とBランダム高周波電圧のいずれか一方のみについて、少なくとも周波数、好ましくは位相や電圧をランダムに変化させるようにすればよく、他方については安定した周波数、位相、電圧の高周波電圧であってもよい。
【0023】
また、ランダムな周波数、位相、電圧の高周波電圧を印加する時間は、実施例1,2の100μSに限られるものではなく、これよりも短くても、若干長くてもよい。短くすれば超音波モータの回転速度が所定の速度に達するまでの時間は短くなるが癒着を解除する際の確実性が低下し、結果として立ち上がり特性が低下する。長くすれば癒着を確実に解除することができるが超音波モータを正常回転させるまでの時間が長くなり立ち上がり特性が低下する。そのため、個々の超音波モータの特性に対応させて、癒着を解除するのに必要な時間を測定し、その最短時間に決めることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1の超音波モータの外観斜視図である。
【図2】図1の超音波モータの軸方向の断面図である。
【図3】図1の超音波モータの部分分解斜視図である。
【図4】実施例1の駆動回路の回路構成図である。
【図5】定常時の高周波電圧と始動時のランダム高周波電圧の波形図である。
【図6】実施例2の駆動回路の回路構成図である。
【符号の説明】
【0025】
1 ステータ
2 ロータ
2a 圧接面(ロータ)
3 回転軸
4,4A 駆動回路
11 台座
12 櫛歯体
12a 圧接面(櫛歯体)
13 圧電体
14 フレキシブル基板
15 軸受筒
16 圧縮コイルスプリング
17 玉軸受
21 周壁部
31 ワッシャ
41 電源部
42 発振部
43 ドライバ部
420,421,422A,422B 発振器
431 セレクタ
432 移相器
433 タイマー
434 出力器
RFVA A高周波電圧
RFVB B高周波電圧
RAMA Aランダム高周波電圧
RAMB Bランダム高周波電圧



【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周方向に沿って分極した圧電体を一体に有するステータと、前記ステータの表面に圧接される圧接面を有する回転可能なロータと、前記圧電体に駆動用の高周波電圧を印加する駆動回路とを備える超音波モータにおいて、前記駆動回路は超音波モータの始動時に少なくとも周波数をランダムに変化させた高周波電圧を所定時間だけ生成する手段を備えることを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記駆動回路は安定した周波数の高周波電圧を生成する第1の高周波電圧生成手段と、ランダムな周波数の高周波電圧を生成する第2の高周波電圧生成手段と、超音波モータの始動時に所定時間だけ前記第2の高周波電圧生成手段の出力を選択し、その後は前記第1の高周波電圧生成手段の出力を選択して前記圧電体に印加する選択手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記駆動回路は、周波数が安定な第1の高周波電圧と、少なくとも周波数がランダムに変化する第2の高周波電圧とを生成可能な高周波電圧生成手段と、前記高周波電圧生成手段において超音波モータの始動時に所定時間だけ前記第2の高周波電圧を生成し、その後は前記第1の高周波電圧を生成する制御を行う制御手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記第1の高周波電圧は周波数と電圧が同一で位相がπ/2だけ異なる2種類の高周波電圧を含み、前記第2の高周波電圧は少なくとも一方の周波数がランダムに変化する2種類の高周波電圧を含むことを特徴とする請求項3に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記高周波電圧生成手段は周波数と共に位相、電圧の少なくとも一方をランダムに変化させた高周波電圧を生成可能であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の超音波モータ。
【請求項6】
前記所定時間は超音波モータの始動開始から約100μSであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の超音波モータ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−154304(P2008−154304A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336539(P2006−336539)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】