説明

超音波内視鏡の先端部

【課題】ゼリー状の充填材を必要に応じ即座に且つ容易に超音波プローブの表面に向かって吐出させることができる超音波内視鏡の先端部を提供すること。
【解決手段】超音波プローブ3の表面と体内粘膜100との間に空気層をなくす目的で充填されるゼリー状の充填材20を通すための充填材供給管路6が、処置具挿通チャンネル5と並列に挿入部1内に挿通配置されていて、充填材供給管路6の出口である充填材吐出口6oが、処置具突出口5oより超音波プローブ3寄りの位置に開口形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は超音波内視鏡の先端部に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は空気中の伝播性が低い。そのため、超音波内視鏡においては超音波プローブの表面と体内粘膜との間に空気層をなくす必要がある。
そこで、消化管用超音波内視鏡では超音波プローブを囲む膨縮自在なバルーンを設けてバルーン内に脱気水を充填する構成をとっているが、バルーンを膨らませると気道が塞がってしまう気管支用超音波内視鏡等では、処置具挿通チャンネルを利用して超音波プローブの表面と体内粘膜との間にゼリー状の充填材を充填するようにしている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−276074
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図7は、上述のような従来の超音波内視鏡の先端部を示しており、挿入部91の最先端部分に超音波プローブ92が配置され、挿入部91内には全長にわたって処置具挿通チャンネル93が挿通配置されている。
【0004】
そのような超音波内視鏡において超音波プローブ92の表面と体内粘膜100との間にゼリー状の充填材94を充填する際は、処置具挿通チャンネル93に充填材供給チューブ95を通して、充填材供給チューブ95の先端から超音波プローブ92の表面に向かって充填材94を吐出させている。
【0005】
しかしそのような操作では、充填材94を超音波プローブ92の表面に吐出させる操作が必要になる度に、処置具挿通チャンネル93に挿通されている処置具類を処置具挿通チャンネル93から一旦抜去し、充填材供給チューブ95を処置具挿通チャンネル93に通して充填材94を吐出させた後、その充填材供給チューブ95を抜去して再び処置具類を処置具挿通チャンネル93に入れ直さなければならないので、操作に時間がかかって操作者及び被検者の双方にとって大きな負担になる場合があった。
【0006】
そこで本発明は、ゼリー状の充填材を必要に応じ即座に且つ容易に超音波プローブの表面に向かって吐出させることができる超音波内視鏡の先端部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の超音波内視鏡の先端部は、処置具類を案内するための処置具挿通チャンネルが挿入部内に挿通配置され、超音波走査を行うための超音波プローブと光学観察を行うための観察窓と処置具挿通チャンネルを通った処置具類の先端部分を超音波プローブによる超音波走査範囲に突出させるための処置具突出口とが挿入部の先端に配置された超音波内視鏡の先端部において、超音波プローブの表面と体内粘膜との間に空気層をなくす目的で充填されるゼリー状の充填材を通すための充填材供給管路が、処置具挿通チャンネルと並列に挿入部内に挿通配置されていて、充填材供給管路の出口である充填材吐出口が、処置具突出口より超音波プローブ寄りの位置に開口形成されているものである。
【0008】
なお、充填材供給管路内に充填材を注入するための充填材注入口が挿入部の基端より手元側位置に設けられているとよい。そして、充填材吐出口が超音波プローブの後端側縁部に沿う偏平な形状に形成されていてもよく、その場合、充填材吐出口が超音波プローブの後端側縁部の全幅に沿って開口していてもよい。また、充填材供給管路が、先端近傍において充填材吐出口側に近づくにしたがって次第に偏平になる断面形状に形成されていてもよい。
【0009】
また、充填材吐出口が超音波プローブの後端側縁部に隣接して配置されると共に、超音波プローブの後端寄りの部分の側縁部に土手状の突出壁が形成されていてもよく、その場合、突出壁が超音波プローブの後端寄りの部分の側縁部のみに形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゼリー状の充填材を通すための充填材供給管路が、処置具挿通チャンネルと並列に挿入部内に挿通配置され、充填材供給管路の出口である充填材吐出口が処置具突出口より超音波プローブ寄りの位置に開口形成されていることにより、処置具挿通チャンネルに挿通されている処置具を抜去することなく、充填材を必要に応じ即座に且つ容易に超音波プローブの表面に向かって吐出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
処置具類を案内するための処置具挿通チャンネルが挿入部内に挿通配置され、超音波走査を行うための超音波プローブと光学観察を行うための観察窓と処置具挿通チャンネルを通った処置具類の先端部分を超音波プローブによる超音波走査範囲に突出させるための処置具突出口とが挿入部の先端に配置された超音波内視鏡の先端部において、超音波プローブの表面と体内粘膜との間に空気層をなくす目的で充填されるゼリー状の充填材を通すための充填材供給管路が、処置具挿通チャンネルと並列に挿入部内に挿通配置されていて、充填材供給管路の出口である充填材吐出口が、処置具突出口より超音波プローブ寄りの位置に開口形成されている。
【実施例】
【0012】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は超音波内視鏡の挿入部の全体構成を示しており、可撓性の挿入部1の先端に連結された先端部本体2の先側半部に超音波プローブ3が設けられ、挿入部1の基端には操作部4が連結されている。
【0013】
挿入部1内には処置具類を挿通案内するための処置具挿通チャンネル5が全長にわたって挿通配置されていて、その入口である処置具挿入口金5iが挿入部1と操作部4との連結部付近に配置され、出口である処置具突出口5oが先端部本体2に配置されている。
【0014】
また、超音波プローブ3の表面と体内粘膜との間に空気層をなくす目的で充填されるゼリー状の充填材を通すための充填材供給管路6が、処置具挿通チャンネル5と並列に挿入部1内に全長にわたって挿通配置されていて、その入口である充填材注入口6iが挿入部1と操作部4との連結部付近に配置され、出口である充填材吐出口6oが先端部本体2に配置されている。
【0015】
図1は、そのような超音波内視鏡の挿入部1の先端部分の斜視図、図3は側面断面図、図4は平面図、図5は図3におけるV−V断面図であり、その中の図4には、例えば注射針等のような処置具50が処置具突出口5oから突出された状態が示されている。
【0016】
超音波プローブ3は、いわゆるコンベックスタイプの電子走査式のものであり、先端部本体2の側方を扇状に超音波走査して体内組織等の超音波断層像を得ることができるように構成された公知のものである。
【0017】
超音波プローブ3の後側に隣接して先端部本体2に形成された斜面10の中央部分には処置具突出口5oが配置されて、その左右両側に光学的な観察窓11と照明窓12とが配置されている。
【0018】
それによって、超音波プローブ3による超音波走査方向の光学観察を行うことができると共に、超音波プローブ3による超音波走査範囲に処置具50の先端部分を突出させて、光学観察下に各種の内視鏡的処置を行うことができる。
【0019】
充填材吐出口6oは処置具突出口5oより超音波プローブ3寄りに位置していて、超音波プローブ3の後端側縁部の全幅に沿って開口するように、超音波プローブ3の後端側縁部の表面に沿う偏平な形状に形成されている。
【0020】
そのような充填材吐出口6oは、図5に示されるように、充填材供給管路6に連通して先端部本体2に形成されている充填材通過孔6aが、充填材吐出口6oに近づくにしたがって次第に幅広の偏平状になるような断面形状に形成されている。したがって、充填材20が超音波プローブ3の表面に一様に塗布される状態に吐出される。
【0021】
また先端部本体2には、超音波プローブ3の表面の後側半部の左右両側縁部に土手状の突出壁13が形成されていて、充填材吐出口6oから超音波プローブ3の表面に向かって吐出されたゼリー状の充填材が外方に漏れ出さないようになっている。
【0022】
ただし、超音波プローブ3の先側半部は突出壁13があると体内粘膜に対する密着のためにかえって邪魔な場合もあるので、超音波プローブ3が設けられているのは超音波プローブ3の後側半部のみである。
【0023】
図6は、上記実施例の超音波内視鏡の先端部の使用状態を示しており、充填材注入口6iに接続した注射器等から充填材供給管路6にゼリー状の充填材20を注入することにより、充填材吐出口6oから超音波プローブ3の表面と体内粘膜100との間に充填材20を吐出させてその空間内に充填させ、体内粘膜100より奥に位置する体内組織の良好な超音波断層像を得ることができる。
【0024】
そのような際に、処置具挿通チャンネル5に処置具50が挿入されていても、処置具50を処置具挿通チャンネル5から抜去することなく、図6に示されるように、処置具50の先端を処置具挿通チャンネル5内に引っ込めるだけで(或いは、必要であれば処置具50の先端を処置具突出口5oから突出させたままの状態で)、必要に応じて何時でも適宜に充填材吐出口6oから充填材20を吐出させる操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例の超音波内視鏡の先端部の斜視図である。
【図2】本発明の実施例の超音波内視鏡の挿入部の全体構成を示す側面図である。
【図3】本発明の実施例の超音波内視鏡の先端部の側面断面図である。
【図4】本発明の実施例の超音波内視鏡の先端部の平面図である。
【図5】本発明の実施例の超音波内視鏡の先端部の図3におけるV−V断面図である。
【図6】本発明の実施例の超音波内視鏡の先端部の使用状態の側面断面図である。
【図7】従来の超音波内視鏡の先端部の使用状態の側面断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 挿入部
2 先端部本体
3 超音波プローブ
5 処置具挿通チャンネル
5o 処置具突出口
6 充填材供給管路
6a 充填材通過孔
6i 充填材注入口
6o 充填材吐出口
11 観察窓
13 突出壁
20 充填材
50 処置具
100 体内粘膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置具類を案内するための処置具挿通チャンネルが挿入部内に挿通配置され、超音波走査を行うための超音波プローブと光学観察を行うための観察窓と上記処置具挿通チャンネルを通った処置具類の先端部分を上記超音波プローブによる超音波走査範囲に突出させるための処置具突出口とが上記挿入部の先端に配置された超音波内視鏡の先端部において、
上記超音波プローブの表面と体内粘膜との間に空気層をなくす目的で充填されるゼリー状の充填材を通すための充填材供給管路が、上記処置具挿通チャンネルと並列に上記挿入部内に挿通配置されていて、上記充填材供給管路の出口である充填材吐出口が、上記処置具突出口より上記超音波プローブ寄りの位置に開口形成されていることを特徴とする超音波内視鏡の先端部。
【請求項2】
上記充填材供給管路内に上記充填材を注入するための充填材注入口が上記挿入部の基端より手元側位置に設けられている請求項1記載の超音波内視鏡の先端部。
【請求項3】
上記充填材吐出口が上記超音波プローブの後端側縁部に沿う偏平な形状に形成されている請求項1又は2記載の超音波内視鏡の先端部。
【請求項4】
上記充填材吐出口が上記超音波プローブの後端側縁部の全幅に沿って開口している請求項3記載の超音波内視鏡の先端部。
【請求項5】
上記充填材供給管路が、先端近傍において上記充填材吐出口側に近づくにしたがって次第に偏平になる断面形状に形成されている請求項3又は4記載の超音波内視鏡の先端部。
【請求項6】
上記充填材吐出口が上記超音波プローブの後端側縁部に隣接して配置されると共に、上記超音波プローブの後端寄りの部分の側縁部に土手状の突出壁が形成されている請求項1ないし5の何れかの項に記載の超音波内視鏡の先端部。
【請求項7】
上記突出壁が、上記超音波プローブの後端寄りの部分の側縁部のみに形成されている請求項6記載の超音波内視鏡の先端部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−325780(P2006−325780A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151698(P2005−151698)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】