説明

超音波連続溶着溶断装置

【課題】超音波連続溶着および溶断時に、薄く長いワークにシワが発生し仕上がり風合いが低下する。
【解決手段】相対するホーン22と回転ローラ60間に薄く長いワーク70が連続的に送られ、前記ホーン22が空気圧シリンダ50から付与された押え圧力Pによってワーク70に押し付きながら超音波振動を該ワーク70に連続的に付与し、該ワーク70を超音波振動と加圧力Pによって連続的に溶着または溶断する超音波連続溶着溶断装置であって、溶着または溶断時にホーン押え用電磁弁55を介して空気圧シリンダ50に印加した空気圧力P1を一定周期で開放するホーン押え圧力開放用電磁弁59を設け、ワーク70に印加する加圧力Pを一定周期で変化させる。これによりシワの発生が積算されず抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動を利用して薄く長い生地やシートなどを連続的に溶着または溶断する超音波連続溶着溶断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に超音波溶着装置は、振動子と該振動子に連結されたホーンとを有する超音波ユニットを備え、該超音波ユニットがアクチュエータによって昇降自在に支持され、ホーンが被加工物を載置する受け冶具の真上に対向配置される。また、発振器で増幅された所定周波数の電気信号が振動子へと伝えられ、そこで機械振動エネルギーに変換され、その振動エネルギーが振動子からホーンに伝達され、ホーンを振動させる。
【0003】
特許文献1には、アクチュエータに空気圧シリンダを用いた超音波溶着装置が示されている。該超音波溶着装置によって受け冶具に載置した例えば2つの熱可塑性樹脂パーツの溶着を行う場合、空気圧シリンダを駆動制御して超音波ユニットを下降させ、ホーンを熱可塑性樹脂パーツに押し付け、熱可塑性樹脂パーツに所定の加圧力を印加しながら、ホーンから熱可塑性樹脂パーツに超音波振動を付与する。これにより、2つの熱可塑性樹脂パーツの接合面では強力な摩擦熱が発生し、樹脂の溶融温度にまで瞬時に上昇し、溶着される。
【0004】
また、超音波溶着によって薄く長い生地やシートなどを連続的に溶着または溶断する超音波連続溶着溶断装置では、例えば特許文献2〜5に示されているように、上述した超音波溶着装置の受け冶具に回転ローラを用い、相対するホーンと回転ローラ間に薄く長い生地やシートなどの被加工物を所定の送り速度で連続的に送り、ホーンが空気圧シリンダから付与された押え圧力によって被加工物に押し付きながら、超音波振動を該被加工物に連続的に付与することにより、該被加工物を超音波振動と加圧力によって連続的に溶着する。なお、一般的な超音波連続溶着溶断装置の場合、発振周波数10kHz〜50kHz、振幅10μm〜100μm、超音波出力数10W〜数kW、印加圧力10N〜1000N、送り速度1m/min〜50m/minである。
【特許文献1】特開平7−266421号公報
【特許文献2】特開平11−207824号公報
【特許文献3】特開2000−246817号公報
【特許文献4】特開2002−367454号公報
【特許文献5】特開2003−331664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5は上述した従来の超音波連続溶着溶断装置の溶着溶断部を示す部分拡大図であり、図中の1がホーン、2が回転ローラ、3が薄く長い生地やシートなどの被加工物、つまりワーク、4はワーク3に発生したシワである。また、図6は上述した従来の超音波連続溶着溶断装置の動作チャートである。図5に示したシワ4は、ワーク3を加熱することでそのほとんどの素材に生じる伸びと、ホーン1がワーク3を押え付けていることで生じるワーク3両面の摩擦抵抗差によって発生し、特にワーク3が加熱されやすい素材または伸縮性が高い素材の場合には多く発生し、超音波連続溶着または溶断の仕上がり風合いを低下させることが確認されている。しかも図6に示すように、ワーク3に対する印加圧力Pを一定に保った状態で超音波連続溶着または溶断を行うために、その超音波連続溶着または溶断開始からの経過時間に比例してシワ4の発生が積算され、ワーク3の長さが長くなるに連れて仕上がり風合いの低下の度合いが大きくなる。ワーク3に対する印加圧力Pを低下させることで、そのシワ4を抑制することは可能であるが、その場合、ワーク3に付与される振動エネルギーも低下するために、適正な溶着強度または溶断が得られない。このように従来の超音波連続溶着溶断装置では、シワが発生し仕上がり風合いが低下することを抑制できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の超音波連続溶着溶断装置は、相対するホーンと回転ローラ間に薄く長いワークが連続的に送られ、前記ホーンが空気圧シリンダから付与された押え圧力によってワークに押し付きながら超音波振動を該ワークに連続的に付与し、該ワークを超音波振動と加圧力によって連続的に溶着または溶断する超音波連続溶着溶断装置であって、溶着または溶断時にホーン押え用電磁弁を介して前記空気圧シリンダに印加した空気圧力を一定周期で開放するホーン押え圧力開放用電磁弁を設けたことを特徴とする。
【0007】
本発明の超音波連続溶着溶断装置によれば、溶着または溶断時にホーン押え圧力開放用電磁弁の駆動信号を一定周期でON/OFFさせることで、ホーン押え用電磁弁を介して前記空気圧シリンダに印加した空気圧力を一定周期で加圧/開放を繰り返す。これにより、ワークに印加される加圧力Pが一定周期で変化する(P→P2→P→P2→・・・、但し、P=P1+P2、P1:空気圧シリンダによりワークに印加される圧力、P2:空気圧シリンダにより支えられるホーンを含む超音波ユニットの荷重)。このようにワークに印加される加圧力Pが一定周期で変化するため、シワの発生が積算されず、空気圧シリンダに印加する空気圧力P1が開放される度に、発生したシワが減少する。つまりシワが発生/減少を繰り返すことで、シワの発生が積算されず抑制することができ、良好な仕上がり風合いを得ることができる。また、ワークに対する印加圧力を一定周期で変化させると、適正溶着/未溶着または適正溶断/未溶断が繰り返されるように感じるが、加圧時間と開放時間を適正な時間に設定することで、未溶着部分または未溶断部分を限りなくゼロにすることができ、実用上問題のない適正な溶着強度または溶断を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、超音波連続溶着または溶断時に、ワークにシワが発生し仕上がり風合いが低下することを適正に抑制することができるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る超音波連続溶着溶断装置の外観を示す概略図、図2は同超音波連続溶着溶断装置の溶着溶断部を示す部分拡大図、図3は同超音波連続溶着溶断装置に用いる空気圧シリンダの空気圧回路図、図4は同超音波連続溶着溶断装置の動作チャートである。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の超音波連続溶着溶断装置10は、超音波ユニット20と、図示しない発振器と、支持フレーム30と、スライド機構40と、アクチュエータとしての空気圧シリンダ50と、受け冶具としての回転ローラ60と、装置全体を制御する図示しないコントローラとを備えて構成される。
【0011】
超音波ユニット20は、振動子21と、該振動子21の下側に連結されるホーン22とを有して構成され、発振器で増幅された所定周波数の電気信号が振動子21へと伝えられ、そこで機械振動エネルギーに変換され、その振動エネルギーが振動子21からホーン22に伝達され、ホーン22を振動させる。
【0012】
スライド機構40は、支持フレーム30に垂直に取り付けるガイド棒41と、ガイド棒41に摺動自在に取り付ける上下一対の摺動子42と、上下の摺動子42を一体に連結する連結板43と、連結板43から一体に延出された超音波ユニット取り付けフレーム44とを有して構成され、超音波ユニット取り付けフレーム44に取り付けた前記超音波ユニット20をガイド棒41に沿って上下にスライド移動自在に支持フレーム30に取り付ける。
【0013】
空気圧シリンダ50は、支持フレーム30の上部に垂直に取り付ける円筒状の本体部51と、該本体部51の下面から下向きに突出させて、突出端部を上側の摺動子42に連結するロッド52とを有して構成され、空気圧シリンダ50の伸縮運動によって前記超音波ユニット20を昇降させる。
【0014】
回転ローラ60は、生地やシートなどの薄く長いワーク70の送り方向と直交する水平な駆動軸61を介して前記超音波ユニット20の真下に軸支される。
【0015】
そして、図2にも示すように、上部に前記ホーン22を有し、下部に前記回転ローラ60を有し、これら相対するホーン22と回転ローラ60間に前記ワーク70が連続的に送られ、前記ホーン22が空気圧シリンダ50から付与された押え圧力によってワーク70に押し付きながら超音波振動を該ワーク70に連続的に付与し、該ワーク70を超音波振動と加圧力によって連続的に溶着または溶断する溶着溶断部を形成している。
【0016】
また、図3に示すように、ポンプ(コンプレッサー)などの空気圧力源53からフィルタ54aおよび減圧弁54bを有する空気圧調整ユニット54を通して供給される圧縮空気を、空気圧シリンダ50の本体部51ヘッド側および本体部51ロッド側に択一的に送り込む2位置5ポートの電磁弁であるホーン押え用電磁弁55を設けており、ホーン押え用電磁弁55のソレノイド55aがOFFになった状態(図3に示す状態)で、下降側の速度制御弁(チェック弁付き絞り弁)56を通して空気圧シリンダ50の本体部51ロッド側に圧縮空気を送り込み、空気圧シリンダ50のロッド52を上向きに後退させて、空気圧シリンダ50を縮小させ、超音波ユニット20を上昇させる。このとき空気圧シリンダ50の本体部51ヘッド側から押し出される空気を上昇側の速度制御弁(チェック弁付き絞り弁)57を通して大気に放出させ、メータアウトにて超音波ユニット20の上昇速度を一定に保つ。このように超音波ユニット20を上昇させることで、ホーン22をワーク70に対し離反保持するように構成している。一方、ホーン押え用電磁弁53のソレノイド53aがONになった状態(図3に示す状態)で、上昇側の速度制御弁57を通して空気圧シリンダ50の本体部51ヘッド側に圧縮空気を送り込み、空気圧シリンダ50のロッド52を下向きに前進させて、空気圧シリンダ50を伸長させ、超音波ユニット20を下降させる。このとき空気圧シリンダ50の本体部51ロッド側から押し出される空気を下降側の速度制御弁56を通して大気に放出させ、メータアウトにて超音波ユニット20の下降速度を一定に保つ。このように超音波ユニット20を下降させることで、ホーン22をワーク70に押し付け、ワーク70に対し所定の加圧力Pを印加するように構成している。このときのワーク70に対する印加圧力Pは、図4に示すように、空気圧シリンダ50の本体部51ヘッド側に印加された空気圧力、つまり空気圧シリンダ50によりホーン22に加えられる押え圧力P1と、超音波ユニット20の荷重P2とを合算したものである(P=P1+P2)。
【0017】
ここで、ホーン押え用電磁弁55と上昇側の速度制御弁57との間に、空気圧シリンダ50によりホーン22に加える押え圧力P1を設定するための圧力制御弁(減圧弁またはチェック弁付き減圧弁)58を設け、空気圧シリンダ50を超音波ユニット20の上昇時に高圧で用い、下降時に上昇時より低圧で用いる。つまり圧力制御弁58によって余剰圧力を逃がし(大気開放)、予め設定された空気圧力(押え圧力P1)を空気圧シリンダ50の本体部51ヘッド側に印加し、空気圧シリンダ50によりホーン22に押え圧力P1を加えるように構成している。なお、この押え圧力P1の調整は圧力制御弁58にバネ圧を調整できる減圧弁またはチェック弁付き減圧弁を用いることで容易に行うことができる。
【0018】
また、前記圧力制御弁と上昇側の速度制御弁57との間に、ホーン押え用電磁弁55および圧力制御弁58を通じて空気圧シリンダ50の本体部51ヘッド側に印加する所定の空気圧力(押え圧力P1)を一定周期で開放するための2位置3ポートの電磁弁であるホーン押え圧力開放用電磁弁59を設けており、ホーン押え圧力開放用電磁弁59の駆動信号を一定周期でON/OFFさせることで、ホーン押え圧力開放用電磁弁59のソレノイド59aがOFFになった状態(図3に示す状態)で、空気圧シリンダ50の本体部51ヘッド側に所定の空気圧力を印加し、空気圧シリンダ50によりホーン22に押え圧力P1を加える一方、ホーン押え圧力開放用電磁弁59のソレノイド59aがONになった状態で、空気圧シリンダ50の本体部51ヘッド側に印加する空気圧力(押え圧力P1)を遮断し、同時に空気圧シリンダ50の本体部51ヘッド側を大気に開放して、空気圧シリンダ50によりホーン22に加える押え圧力P1をなくす。このように空気圧シリンダ50の本体部51ヘッド側に印加した空気圧力(押え圧力P1)を一定周期で加圧/開放を繰り返すことにより、図4に示すように、ワーク70に印加する加圧力Pを一定周期で変化(P→P2→P→P2→・・・)させるように構成している。この際、加圧時間(ホーン押え圧力開放用電磁弁59の駆動信号ON時間)t2と開放時間(ホーン押え圧力開放用電磁弁59の駆動信号OFF時間)t1を適正な時間(例えば加圧時間t1を開放時間t2よりも十分に長くする、つまりデューティを大きくする)に設定することで、未溶着部分または未溶断部分を限りなくゼロにすることができ、実用上問題のない適正な溶着強度または溶断を得ることができる。
【0019】
次に、上記のように構成された本実施形態の超音波連続溶着溶断装置10によりワーク70(具体的には、重ね合わせた2枚の生地同士またはシート同士)を連続的に溶着またはワーク70(具体的には、1枚の生地またはシート)を連続的に溶断する場合の動作を図4を参照しながら説明する。
【0020】
まず、空気圧シリンダ50により超音波ユニット20を上昇位置に支持した状態で、相対するホーン22と回転ローラ60との間に溶着または溶断するワーク70を通した後、空気圧シリンダ50により超音波ユニット20を下降させ、ホーン22をワーク70に押し付け、ワーク70に対し所定の加圧力Pを印加すると共に、発振器を発振状態にして振動子21を振動させ、その超音波振動をホーン22を通してワーク70に伝達する。この発振状態(図2の状態)で回転ローラ60を回転駆動させ、ホーン22と回転ローラ60との間にワーク70を連続的に送り込み、通常通り溶着または溶断作業を開始する。
【0021】
そして、溶着または溶断作業開始に伴って、ホーン押え圧力開放用電磁弁59の駆動信号を一定周期でON/OFFさせ、空気圧シリンダ50に印加した空気圧力P1を一定周期で開放し、ワーク70に印加する加圧力Pを一定周期で変化(P→P2→P→P2→・・・)させながら、ホーン22と回転ローラ60との間に連続的に送り込まれるワーク70を、超音波振動と一定周期で変化させる加圧力(P→P2→P→P2→・・・)によって連続的に溶着または溶断する。
【0022】
このようにワーク70に印加する加圧力Pを一定周期で変化(P→P2→P→P2→・・・)させることにより、従来のようにシワ4の発生が積算されず、空気圧シリンダ50に印加する空気圧力P1が開放される度に、発生したシワ4が減少する。つまりシワ4が発生/減少を繰り返すことで、シワ4の発生が積算されず抑制することができ、良好な仕上がり風合いを得ることができる。また、加圧時間t2と開放時間t1を適正な時間に設定することで、未溶着部分または未溶断部分を限りなくゼロにすることができ、実用上問題のない適正な溶着強度または溶断を得ることができる。
【0023】
したがって、本実施形態の超音波連続溶着溶断装置10によれば、適正な溶着強度または溶断を得ながら、ワーク70にシワ4が発生し仕上がり風合いが低下することを適正に抑制することができる。また、加圧時間t2と開放時間t1を調整することで、他の条件(発振周波数、振幅、超音波出力、印加圧力、送り速度)を変化させることなく、仕上がり風合いを変化させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係る超音波連続溶着溶断装置の外観を示す概略図である。
【図2】同超音波連続溶着溶断装置の溶着溶断部を示す部分拡大図である。
【図3】同超音波連続溶着溶断装置に用いる空気圧シリンダの空気圧回路図である。
【図4】同超音波連続溶着溶断装置の動作チャートである。
【図5】従来の超音波連続溶着溶断装置の溶着溶断部を示す部分拡大図である。
【図6】従来の超音波連続溶着溶断装置の動作チャートである。
【符号の説明】
【0025】
10 超音波連続溶着溶断装置
22 ホーン
50 空気圧シリンダ
55 ホーン押え用電磁弁
59 ホーン押え圧力開放用電磁弁
60 回転ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対するホーンと回転ローラ間に薄く長いワークが連続的に送られ、前記ホーンが空気圧シリンダから付与された押え圧力によってワークに押し付きながら超音波振動を該ワークに連続的に付与し、該ワークを超音波振動と加圧力によって連続的に溶着または溶断する超音波連続溶着溶断装置であって、溶着または溶断時にホーン押え用電磁弁を介して前記空気圧シリンダに印加した空気圧力を一定周期で開放するホーン押え圧力開放用電磁弁を設けたことを特徴とする超音波連続溶着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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