説明

超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置

【課題】ユースポイントで高純度液化炭酸ガスを精製して、直接超高純度の液化炭酸ガス使用装置へ供給できる超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置を提供する。
【解決手段】液化炭酸ガスが充填された容器あるいは液化炭酸ガス使用装置より回収された液化炭酸ガスを供給する液化炭酸ガス供給部3と、この液化炭酸ガス供給部3から供給された液化炭酸ガスを気化して高沸点の液体や固体の不純物を残留させ、気相部から気体状炭酸ガスを排出する気化器7と、該気体状炭酸ガスを液化する液化器9、この液化器9からの液化炭酸ガスを気液に分離し低沸点の不純物を系外へ排出する排出弁10を備える排出管11を有する気液分離器12とからなる気液分離装置13と、この気液分離装置13で分離、精製された超高純度の液化炭酸ガスを、超高純度の液化炭酸ガス使用装置へ供給弁15を介して供給する供給通路16とで超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置1を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は99.9999vo1.%以上の超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス精製・高純度化に関する技術は、炭酸ガスに限らず、多くの技術がこれまでに報告されている。特に、炭酸ガスに限っては石油精製プロセスから発生するガスを回収し、精製するような一般的に知られているものから、用途を明確にした、例えば、半導体プロセスのような高純度精製法まで、その精製技術は目的に応じ、多岐にわたる。
これまでに超高純度液化炭酸ガスの精製・製造方法では、吸着方法、除去方法、蒸留方法、吸収方法を用いることにより、品質レベルを向上させる技術が多く紹介されている。
昨今の急激な半導体市場の成長に伴い、超高純度液化炭酸ガスを用いた光学部品、マイクロデバイスなどの精密洗浄、超臨界炭酸ガスを用いた半導体ウエハー洗浄およびその乾燥など、超高純度液化炭酸ガスに求められる品質要求ならびにその用途、需要は多くなってきている。
【0003】
現状、市販されている最高グレードの炭酸ガスは、純度99.999vo1.%程度であり、必ずしも半導体プロセス用途を目的としてのものではなく、微細かつ精密なこれらプロセス管理には、現行以上の更なる精製レベルを高めた製造技術とともに、プロセス管理、供給方法、容器充填技術、分析技術が求められるところである。
これまで、半導体対応の炭酸ガス精製技術の紹介はあるが、上記にあげた純度以上に、水分、油分(不揮発性炭化水素)、パーティクル管理までを盛り込んだ製法、管理、容器充填技術の公知技術は知られていない。
【0004】
また、提案されている超高純度液化炭酸ガスの精製充填装置は液化炭酸ガスの製造工場に設置されるものであるので、精製された超高純度液化炭酸ガスは高圧容器に充填し、ユースポイントに高圧容器を移動して超高純度液化炭酸ガスを使用していた。
このため、超高純度液化炭酸ガス専用の高圧容器を必要としたり、通常の純度の炭酸ガスと分別して扱う必要があり、管理が大変で、高コストとなる欠点があった。
また、運搬中に高圧容器接続部が汚染される等の欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−263421
【特許文献2】特開2004−35346
【特許文献3】特開2001−180924
【特許文献4】特開2006−347842
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような点に鑑み、ユースポイントで高純度液化炭酸ガスを精製して、直接超高純度の液化炭酸ガス使用装置へ供給できるようにすることにより、専用の高圧容器が不要で、通常の純度の炭酸ガスと分別して扱う必要がなく、管理が容易で、汚染される心配がなく、低コストで精製できるとともに、気化器で高沸点の液体や固体の不純物を残留させて除去し、気液分離装置で低沸点の不純物を除去して、効率よく超高純度液化炭酸ガスを精製することができる超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置を提供することを目的としている。
【0007】
また、本発明は除湿装置、有機物の除去や脱臭を行なう活性炭塔、サブミクロンオーダーでのパーティクルを除去する精密フィルター、過冷却器、ヒーター、ポンプおよび内部循環路を用いることにより、効率よくかつ、簡易的に超高純度液化炭酸ガスの精製供給を行なうことのできる超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置を提供することを目的としている。
【0008】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は液化炭酸ガスが充填された容器や貯槽あるいは液化炭酸ガスの使用装置より回収された液化炭酸ガスを供給する液化炭酸ガス供給部と、この液化炭酸ガス供給部から供給された液化炭酸ガスを気化して高沸点の液体や固体の不純物を残留させ、気相部から気体状の炭酸ガスを排出する気化器と、この気化器から排出された気体状の炭酸ガスが供給され、該気体状の炭酸ガスを液化する液化器、この液化器からの液化炭酸ガスを気液に分離し低沸点の不純物を系外へ排出する排出弁を備える排出管を有する気液分離器とからなる気液分離装置と、この気液分離装置で分離、精製された、超高純度の液化炭酸ガスを超高純度の液化炭酸ガス使用装置へ供給弁を介して供給する供給通路とで超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置を構成している。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1により、超高純度の液化炭酸ガスを使用する超高純度の液化炭酸ガス使用装置(ユースポイント)へ供給通路の供給弁を介して供給することができる。
したがって、専用の高圧容器が不要で、通常の純度の炭酸ガスと分別して扱う必要がなく、管理が容易で、高圧容器の運搬中に接続口が汚染される心配がなく、低コストで精製することができる。
(2)前記(1)によって、気化器で高沸点の液体や固体の不純物を残留させて除去し、気液分離装置で低沸点の不純物を除去して、効率よく超高純度の液化炭酸ガスの精製をすることができる。
(3)前記(1)により、気化器、液化器を備えた気液分離装置で構成されているので、構造が簡単で、容易に超高純度の液化炭酸ガスを使用する場所(ユースポイント)に設置することができる。
(4)請求項2により、前記(1)〜(3)と同様な効果が得られるとともに、気化器で高沸点の液体や固体の不純物を系外へ排出管より排出することができる。
(5)請求項3により、前記(1)〜(3)と同様な効果が得られるとともに、気化器からの気体状の炭酸ガス中の水分や有機物の除去や脱臭を行なうことができ、かつサブミクロンオーダーのパーティクルを除去することができる。
(6)請求項4により、前記(1)〜(3)と同様な効果が得られるとともに、超高純度の液化炭酸ガスを供給する供給通路で、超高純度の液化炭酸ガスからサブミクロンオーダーのパーティクルを除去することができる。
(7)請求項5により、前記(1)〜(3)と同様な効果が得られるとともに、供給通路のポンプで、液化炭酸ガス供給部の圧力よりも高い圧力で超高純度の液化炭酸ガスを供給することができ、ユースポイントの必要に応じた温度、圧力、相状態(液体、気体、超臨界)にして供給することができる。
(8)請求項6によって、前記(1)〜(3)と同様な効果が得られるとともに、液化器と気液分離器とが一体に構成された気液分離装置を用いることで、設置作業が容易にできる。
(9)請求項7によって、前記(1)〜(3)と同様な効果が得られるとともに、供給通路の供給弁を閉じて温度装置付バッファータンクの温度を調整することにより、所定の圧力でユースポイントに超高純度の液化炭酸ガスを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を実施するための第1の形態の概略説明図。
【図2】本発明を実施するための第2の形態の概略説明図。
【図3】本発明を実施するための第3の形態の概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0013】
図1に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は超高純度の液化炭酸ガスを使用する装置(ユースポイント)がある場所に設置する本発明の超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置で、この超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置1は液化炭酸ガスが充填された容器や貯槽2あるいは液化炭酸ガスの使用装置より回収された液化炭酸ガスを供給する液化炭酸ガス供給部3と、この液化炭酸ガス供給部3から供給された液化炭酸ガスを、フィルター4を通過させた後、気化して高沸点の液体や固体の不純物を排出弁5を有する排出管6より外部へ排出できる気相部からの気体状の炭酸ガスを排出する気化器7と、この気化器7から排出された気体状の炭酸ガスを気化器からの供給通路8で供給され、該気体状の炭酸ガスを液化する液化器9および、この液化器9と別体に設けられた該液化器9
からの液化炭酸ガスを気液に分離し、低沸点の不純物を排出弁10を備える排出管11より系外へ排出する気液分離器12とからなる気液分離装置13と、この気液分離装置13で分離、精製された超高純度の液化炭酸ガスを超高純度の液化炭酸ガスの使用装置(ユースポイント)14へ供給弁15を介して供給する供給通路16とで構成されている。
【0014】
前記気化器からの供給通路8には気化器7からの気体状の炭酸ガス中の水分を除去する除湿装置17と、気体状の炭酸ガス中に溶解している有機物の除去や脱臭を行なう活性炭塔18と、サブミクロンオーダーのパーティクルを除去する精密フィルター19とのいずれか1個以上、本発明の実施の形態ではすべて介装されている。
【0015】
前記供給通路16の供給弁15の前後、本発明の実施の形態では供給弁15の前に、前記気液分離装置13からの超高純度の液化炭酸ガスを前記液化炭酸ガス供給部3の圧力よりも高い圧力で供給することができるポンプ20と、超高純度の液化炭酸ガスからサブミクロンオーダーでのパーティクルを除去する精密フィルター21、過冷却器22あるいはヒーター23、気液を分離するバッファータンク24あるいは気液を分離する温調装置付バッファータンク25のうちの1個以上が介装されている。
【0016】
上記構成の超高純度の液化炭酸ガスの精製供給装置1は液化炭酸ガスが充填された容器や貯槽2あるいは液化炭酸ガスの使用装置より回収された液化炭酸ガスを液化炭酸ガス供給部3より気化器7へ供給し、該気化器7で液化炭酸ガスを気化して、高沸点の液体や固体の不純物を除去し、液化器9を備える気液分離装置13へ供給して低沸点の不純物を除去して、気液分離装置13の気液分離器12から供給通路16で超高純度の液化炭酸ガスを直接超高純度の液化炭酸ガスの使用装置14へ供給する。
【0017】
このため、超高純度の液化炭酸ガスの使用装置14へ直接、その場で超高純度の液化炭酸ガスを精製して供給することができる。
【0018】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図2および図3に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0019】
図2に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、液化炭酸ガスを気化して高沸点の液体や固体の不純物を残留させる気化器7Aを用いるとともに、液化器9と気液分離器12とを一体に構成した気液分離装置13Aを用いた点で、このような気化器7Aと気液分離装置13Aを用いて構成した超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られるとともに、気液分離装置13Aの取付け作業を容易に行なうことができる。
【0020】
図3に示す本発明を実施するための第3の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、ポンプを介装しない供給通路16Aを用いた点で、このような供給通路16Aを用いて構成した超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置1Bにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られる。
【0021】
なお、本発明の実施の形態では過冷却器22と気液を分離する温調装置付バッファータンク25との間の供給通路16に開閉弁29を設置しておくことにより、該開閉弁29を閉じて温調装置付バッファータンク25の温度を調整することにより、所定の圧力でユースポイント14へ超高純度の液化炭酸ガスを供給することもできる。このような使用をする場合、供給通路16Aにポンプ20を設置しても、設置しなくても使用することができる。
【0022】
前記本発明の実施の形態では供給通路16の供給弁15の前にポンプ20、精密フィルター21、過冷却器22あるいはヒーター23、バッファータンク24あるいは温調装置付バッファータンク25を配置した供給通路16を用いるものについて説明したが、本発明はこれに限らず、供給弁15の後に精密フィルター21、過冷却器22あるいはヒーター23、バッファータンク24あるいは温調装置付バッファータンク25を配置した供給通路を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0024】
1、1A、1B:超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置、
2:容器や貯槽、 3:液化炭酸ガス供給部、
4:フィルター、 5:排出弁、
6:排出管、 7、7A:気化器、
8:気化器からの供給通路、 9:液化器、
10:排出弁、 11:排出管、
12:気液分離器、 13、13A:気液分離装置、
14:超高純度液化炭酸ガスの使用装置、
15:供給弁、 16、16A:供給通路、
17:除湿装置、 18:活性炭塔、
19:精密フィルター、 20:ポンプ、
21:精密フィルター、 22:過冷却器、
23:ヒーター、 24:バッファータンク、
25:温調装置付バッファータンク、
29:開閉弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化炭酸ガスが充填された容器や貯槽あるいは液化炭酸ガスの使用装置より回収された液化炭酸ガスを供給する液化炭酸ガス供給部と、この液化炭酸ガス供給部から供給された液化炭酸ガスを気化して高沸点の液体や固体の不純物を残留させ、気相部から気体状の炭酸ガスを排出する気化器と、この気化器から排出された気体状の炭酸ガスが供給され、該気体状の炭酸ガスを液化する液化器、この液化器からの液化炭酸ガスを気液に分離し低沸点の不純物を系外へ排出する排出弁を備える排出管を有する気液分離器とからなる気液分離装置と、この気液分離装置で分離、精製された、超高純度の液化炭酸ガスを超高純度の液化炭酸ガス使用装置へ供給弁を介して供給する供給通路とからなることを特徴とする超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置。
【請求項2】
気化器は高沸点の液体や固定の不純物を系外へ排出する排出弁を有する排出管を備えていることを特徴とする請求項1記載の超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置。
【請求項3】
気化器から気体状の炭酸ガスが供給される通路には気体状の炭酸ガス中の水分を除去する除湿装置、気体状の炭酸ガス中に溶解している有機物の除去や脱臭を行なう活性炭塔、サブミクロンオーダーでのパーティクルを除去する精密フィルターのうちのいずれか1個以上介装されていることを特徴とする請求項1記載の超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置。
【請求項4】
供給弁の前後の供給通路には1個以上の超高純度の液化炭酸ガスからサブミクロンオーダーでのパーティクルを除去する精密フィルターが介装されていることを特徴とする請求項1記載の超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置。
【請求項5】
供給通路には過冷却器、ヒーター、ポンプ、バッファータンク、温調装置付バッファータンクのうちの1個以上介装されていることを特徴とする請求項1記載の超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置。
【請求項6】
気液分離装置は液化器と気液分離器とが一体に構成されていることを特徴とする請求項1記載の超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置。
【請求項7】
供給通路には上流側より下流側へ開閉弁、温調装置付バッファータンク、供給弁が順次介装されていることをことを特徴とする請求項1記載の超高純度液化炭酸ガスの精製供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−240870(P2012−240870A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111008(P2011−111008)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000187149)昭和電工ガスプロダクツ株式会社 (60)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】