説明

足伸式簡易浴槽

【課題】肩まで湯に浸り、足を水平に伸ばした状態でリラックスして入浴でき、しかも入浴介護容易で安全な足伸式簡易浴槽を提案する。
【解決手段】浴槽の底部高さを利用者が利用する車椅子の高さとすると共に、利用者の幅より大なる長さの短辺及び利用者が足を水平に伸ばして着座可能の長辺並びに利用者が足を伸ばして着座した状態で肩まで浸ることができる深さの浴槽を有し、前記浴槽の側面の内少なくとも1面を開放可能に構成し、この開放面を開放した状態で、そこに前記車椅子を横づけし、前記車椅子を利用する利用者を前記浴槽の底部に移乗させるようにしたことを特徴とする足伸式簡易浴槽。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お年寄りや身体障害者等入浴介護を必要とする利用者が、車椅子又はベットの高さにおいて移動容易な上、尚且つ足を水平方向に伸ばしてゆったりとお湯に浸ることができ、簡易な構成で重量も軽く、安価に製作でき、そのときの入浴介護を容易、安全に行うことができるようにした足伸式簡易浴槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の介護浴槽の例としては、実開昭51−24089号公報(シャワーを使用し得るベッド)、特開平7−246226号公報(身体障害者用或いは寝たきり老人用浴槽)、実用新案登録第3082875号公報(省介護型簡易入浴装置)、特開2003−19179号公報(車椅子用バスタブ)等の例がある。
【0003】
実開昭51−24089号公報に示されるベッドは、脚台上に矩形の枠体を載せ、その中に防水シートを張ってプールを作り、その中でシャワーを浴びることができるようにしたプール状の浴槽である。防水シートを用いて簡易に構成できるが、ベッドと兼用するための特殊仕様であって、シャワーを浴びる以外の一般の浴槽としては利用し難い。
【0004】
特開平7−246226号公報に示される浴槽は、寝たきり老人等の利用者を寝かせた状態で入浴可能とするため、舟形を為し長尺で底の浅い槽本体をフレーム支持し、槽内に流体封入により膨脹し、その高さを変更可能の膨脹体を投入し、その膨脹体の上下動作によって利用者を昇降し、介護の容易性を図ったものである。この公報に示されるように、寝たきり老人や身障者を槽内にゆっくりと入れてあげるには相当の労力を要する。槽が深い場合にはとても大変で、通常は被介護に3人を必要とし、うっかりと手を外すと大事に至る。膨脹体はこれら大変さを解消するものではあるが、寝たきり老人であること及び槽が浅いことが条件とされる。
【0005】
実用新案登録第3082875号公報に示される入浴装置は、車椅子に乗ったままで入浴できる箱形の浴槽で、一方の面を開閉窓とした浴槽フレームと、その全体を取り囲むことのできるシートから成り、シートを広げてその上に浴槽フレームを置き、箱内に窓を開いて車椅子ごと利用者を入れて閉じ、その後シートで浴槽外周を巻き、肩まで浸れる状態で入浴できるようにしたものである。通常車椅子を温湯に漬け込むことには機械油が浮遊する等の問題が有る。従って、衛生的な車椅子を用いることを条件として本案の実現は可能である。しかし、シートをフレーム外方から取り囲む場合、温湯圧力でシートが膨らみ使いものにならない。このためには、囲いを更に何かで縛る等の大掛かりが必要となる。
【0006】
特開2003−19179号公報に示される車椅子用バスタブは、車椅子に座った状態で入浴できる車椅子用タブであって、一方が開放できる窓を備えた浴槽フレームと、このフレームに内張りされる浴槽シートとを有し、前記窓を開いて車椅子ごと利用者を入れ、その後窓を閉じ、温湯を注ぎ、肩まで浸った状態で入浴できるようにしたものである。シート式であるため簡易に構成でき、内張り式であるのでシートの膨脹が問題にならず、実用的である。なお、車椅子部分を単なる椅子とすると共に、その部分をシートで内張りして温湯量を節約できるようにした改善案も出されている。深さは腰から肩までの深さと足の長さの和となり、1m強ほどの深さとなる。
【0007】
これら従来よりの介護用浴槽にあっては、ベッド上でシャワーを浴びれることや、寝たきり老人を寝た状態で、或いは車椅子等椅子に座った状態で入浴させることができることが示されている。また、フレーム及び内張りシートの組合わせにより、装置全体を簡易に構成できること等が示唆されている。介護用浴槽では、風呂場に固定されるとは限らず、患者の部屋、家庭の座敷に持ち込んだり、部屋の移動をせねばならぬことがあり、利用者の都合に応じての移動性が要求される。
【特許文献1】実開昭51−24089号公報、第1頁、図1
【特許文献2】特開平7−246226号公報、第1頁、図1
【特許文献3】実用新案登録第3082875号公報、第1頁、図1
【特許文献4】特開2003−19179号公報、第1頁、図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の介護浴槽にあっては、利用者が老人であったり、身障者であることを想定し、利用者にシャワーを浴びせたり、車椅子ごと浴槽に浸らせるというものであった。そして、利用者の安全と介護の容易性、介護用品の移動性等を考慮したものであった。因みに、車椅子を浴槽内に入れるタイプでは、肩まで浸らせることはできるが、足を水平に伸ばしてリラックスさせることはできず、かつ槽が深く椅子に座った利用者の足先を洗ってあげること等ができない。体を起こしての入浴は、身体機能を高めるための大事な入浴方法であるが、湯量が必要となるため、安価には製作できなかった。
【0009】
ところで、利用者が寝たきりとまでは行かず、リハビリの必要な病人、健康回復を望める一時的身体障害者等の場合、単に身体を洗ってあげるという目的ではなく、肩又はその近くまで温湯に入れてあげ、かつ足を水平に伸ばした状態でゆったりとくつろがせ、リハビリを兼ねて真に入浴を楽しませてあげることができ、それでいて介護者が足の先まで洗ってあげることまでが可能の足伸式簡易浴槽が実現できなかった。従来からある安価なものは、寝かせた状態でのものである。
【0010】
本発明は、利用者をして、浴槽内で足を水平に伸ばせて肩又はその近くまで浸らせることができ、最もリラックスした状態でゆったりと入浴を楽しませてあげることができると共に、介護容易で、しかも構成簡易にして移動設置が容易な足伸式簡易浴槽を提供することを目的とする。
【0011】
また、浴槽フレームにシートを内張りした構造として、介護者1人でも安全に入浴介護でき、折り畳みによる収納までができ、安価に製作でき、家庭でも利用可能な足伸式簡易浴槽を提供することを目的とする。
【0012】
さらに、浴槽フレームにシートを内張りした構造とするに際し、開放面に対しては接合によるシール構造とせず、1枚物のシートを用いて処理することにより、シール破壊により生ずる水漏れ事故を未然に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明の足伸式簡易浴槽は、浴槽の底部高さを利用者が利用する車椅子の座席高さやベットの高さとすると共に、利用者の幅より大なる長さの短辺及び利用者が足を水平に伸ばして着座可能の長辺並びに利用者が足を伸ばして着座した状態で肩又はその近くまで浸ることができる深さの浴槽を有し、前記浴槽の側面の内少なくとも1面を開放可能に構成し、この開放面を開放した状態で、そこに前記車椅子を横づけし、又はベットの横に設置し、前記車椅子を利用する利用者を前記浴槽の底部に移乗させ、その後前記開放面を閉じ、前記利用者が肩又はその近くまで浸れるだけの温湯を注ぎ、前記利用者が足を伸ばした状態で肩又はその近くまでゆったり浸ることができるようにしたことを特徴とする。
【0014】
浴槽の深さは、具体的には55〜60cm程度とする。この浴槽に温湯を注ぎ深さを定めるので、利用者の背丈に応じ、肩まで、或いは肩近くまで温湯を貯め、利用者が好む深さを調節することができる。車椅子での利用の場合、介護は浴槽の底部高さを車椅子の座席高さとしているので、開放面に横づけした車椅子から、まず足を浴槽の後方へ移動させ、次いで利用者の肩を持ち上げて腰部を浴槽前方へ移動させ、その後前記開放面を閉じれば良い。従来は利用者を浴槽に沈める、又は引き上げるのに大変な労力を必要としていたのに対し、利用者が通常体重の者であれば1人の介護で容易に対処できる。開放面からの移乗で、高く持ち上げることもないので、安全である。ベットの場合には、底部高さをベットの高さに合わせる。因みに、本簡易浴槽は家庭で用いられることも多く、介護者が1人の場合が多い。即ち、このように介護者が1人しか居ない家庭でも十分に対応できる。
【0015】
温湯は蛇口にホースを取付けて注入してもよいが、水中ポンプを用いて迅速に注入できる。排水は排水プラグを抜き、排水を排水口に捨てれば良い。別途排水タンクを設け、これに排水することもできる。給湯ホース等で注入される温湯をシャワーとして、シャワー入浴できることは勿論である。
【0016】
排水後、開放面を開き、利用者を車椅子へ容易に移乗できる。ベットの場合、ベットへ移乗できる。即ち、浴槽底部の高さを車椅子の座席高さやベットの高さと一致させているので、車椅子を開放面に横づけし、又はベットの横に設置し、タイヤロックした車椅子の座席やベットに利用者の腰部を移乗させ、次いで、足部を車椅子やベットに対して移乗させれば良い。1人の介護者で容易、安全に対応できる。
【0017】
本発明のシート内張り式の足伸式簡易浴槽は、利用者の幅より大なる長さの短辺及び利用者が足を水平に伸ばして着座可能の長辺を備えた断面矩形の立方フレームを設け、前記立方フレームの中間高さで利用者が利用する車椅子の座席高さやベットの高さに台座を設けると共に、フレーム全高を利用者が前記台座上で前記長辺に沿って足を水平に伸ばして座った状態で肩の高さ程度とし、前記立方フレームの前記台座より上の部分を浴槽フレームとして、その側面の内少なくとも1面を開放可能に構成し、かつ前記浴槽フレームの内側に前記開放可能の面を開放した状態で各面を内張りすると共に、開放面に対してはそれを閉じた状態でその内面及びその両端面と相隣り合う面とをしわ寄せによって塞ぐことができる形の防水シートを設け、前記しわ寄せの部分は、前記開放面を構成するフレームの内側で折り畳み、その後前記開放面を構成するフレームで押え込むよう構成したことを特徴とする。
【0018】
前記立方フレームは、前記防水シート及び前記台座を外した状態でその断面が直線状となるよう折り畳み可能に構成することができる。
【0019】
各浴槽の四面を夫々支持する各フレームは、その中に内張りされる防水シートからの圧力に耐えるよう、格子状に、又は網を張り、或いは耐圧シートを張り構成できる。軽く、強く構成する最良の方法としては、1辺の長さが50cm以下位の幅で格子状に組まれたフレームに高張力で耐引裂性に強いシートを強く張り詰めたものを用いるのが好ましい。具体的には、この水圧受けシートに内張りシートから圧力が加わっても、張り出し量は1cm以下であり、かつ内部より利用者が押圧しても何ら問題がなく、復元性もある。
【0020】
各浴槽フレームに内張りする防水シートは1枚物とし、開放面に対しては、それを閉じた状態でその内面及びその両端面と相隣り合う面とをしわ寄せによって塞ぐことができるようにする。この1枚物の防水シートは、樹脂製シートを適宜溶着することにより製造できる。しわ寄せの部分は、開放面を構成するフレームの内側で折り畳み、その後その開放面を構成する水圧受けシートを張ったフレームで押え込むことにより内圧に対して強固な浴槽構造とすることができる。
【0021】
入浴介護の方法については、前述の通りである。ただし、シート内張り式では、浴槽内部に防水シートが張られるので、防水シートのしわ寄せ部分を折り畳み、その後開放フレームで押え込む処理が必要である。これらの手続きは1人の介護者で容易、安全に対応できる。
【0022】
立方フレームを防水シート及び台座を外した状態でその断面が直線状となるよう折り畳み収納することができる。断面を直線状とすると、浴槽本体を1枚の板状とすることができるので、これを建物壁面に沿って省スペースにて収納できる。防水シートは折り畳んで収納できる。
【発明の効果】
【0023】
以上示した通り本発明は、特許請求の範囲に記載の通りの足伸式簡易浴槽であるので、車椅子よりの移乗が容易であり、利用者をして足を水平に伸ばした状態で温湯に肩又はその近くまで浸らせ、最もリラックスした状態で入浴を楽しませてあげることができる。場所を取らず何処にでも設置でき、シートを内張りとしているので簡単な構造で水圧を吸収できる。安価に製造できる点にも大きな特徴がある。浴槽深さは60cm程度又はそれ以下であるので、介護者が足の先をマッサージしたり洗ってあげることもできる。開放面に車椅子を横づけし、利用者の足及び腰部を順次浴槽底部へ移乗させるので、介護は一人で十分安全にできる。利用者の入浴したいという欲望を十分に満足させてあげることができる。
【0024】
折り畳み可能に構成できるので、省スペースにて収納でき、必要に応じ容易に組立て安全に利用できる。車椅子は、浴槽内に入れないので、浴槽側の肘掛けを外すことができるものであれば一般的な車椅子をそのまま利用することができる。
【0025】
本発明のシート内張り式の足伸式簡易浴槽によれば、浴槽フレーム内に防水シートを内張りする方式であるので、軽くて丈夫に構成でき、収納性に優れる。
【0026】
また、防水シートは、開放面に対しては、開放面を閉じた状態でその内面及びその両端面と相隣り合う面とをしわ寄せによって塞ぐことができる形であるので、水漏れの恐れがなく、かつその外周面を浴槽フレームで押え込むので防水性が破壊される恐れもなく、安心して安全に利用できる。防水シートは折り畳んで収納できるので、省スペースで容易に収納でき、病院や家庭で便利に利用できる。介護に限らず、足を悪くしただけの健常者等にも利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。車椅子からの移乗について示すが、ベットからの移乗にも適用できることは勿論である。図1〜図4は、本発明のシート内張り式の足伸式簡易浴槽の一実施形態を示す説明図である。図1は各構成部材を示す斜視図である。図2はその組立て方を示す説明図、図3は組立後の介護の仕方を示す説明図、図4は介護しながらの給湯及び入浴状態を示す説明図である。
【0028】
図1に示すように、本発明のシート内張り式の足伸式簡易浴槽は、本体フレーム1と、側面フレーム2と、座板3と、手すり部材4と、浴槽シート5とで構成されている。浴槽フレーム1には、排水受槽6が付属されている。浴槽シート5には、排水ホース7とプラグ8が付属されている。図示しないが、給湯のためには、給湯ホース又は水中ポンプ等が付属される。
【0029】
図1の本体フレーム1において、正面を前面、紙面裏面を後面、右方を右面、左方を左面とする。本体フレーム1は、断面矩形と為す形で4本の支柱9、10、11、12を立設し、前後の中間段には座板支持フレーム13、14を架け渡し、その上部で前面部分を除いて各面に高強度シートを張って作った水圧受け面15、16、17、18を固定して成る。各水圧受け面15、16、17、18は、耐圧力を確実とするため、1辺の長さが50〜60cm程度の面とすべく、パイプ材を用いて格子状に形成し、後面の水圧受け面16、17は、中柱19を用いて格子を2分割して構成している。各座板支持フレーム13、14の下方には、これと平行して補強パイプ20、21を架け渡し、右面又は左面の側部支柱間にも補強パイプ22、23を架け渡し、前後面の中間位置には中間支柱24、25を設けている。
【0030】
各支柱9、10、11、12及び中間支柱24、25の下方に夫々キャスター26を設けた例で示す。各キャスター26には夫々ロック装置が設けられている。従って、本体フレーム1は、キャスター26のロック装置を外した状態で任意の位置に移動可能であり、キャスター26のロック装置を掛けて、任意の位置で使用できる。キャスター26は、設置の状況で設けられるものであり、家庭の使用では、これを外し、ゴム足等として座敷や風呂場の近くに設置可能とすることができる。
【0031】
本体フレーム1は、前面部分及び後面部分を夫々剛体として構成し、かつ前面を後面に対し平行移動可能とすべく旋回可能の軸を用いて固定している。従って、図示円形矢印で示す部分の軸は支柱10、11又は9、12に対し旋回自在であり、前面を後面に対し平行移動して、図2の平面図で示すように直線状に折り畳み可能である。組立てが部品単位でないので、とても容易である。
【0032】
図1で示した本体フレームの矩形形状において、前後の幅は、利用者がゆったりと入浴できるだけの幅55〜65cm程度とする。左右の面間の長さは、利用者が足を水平に伸ばしてゆったりと座ることができる長さ110〜120cm程度とする。座板支持フレーム13、14の上面の高さは、一般の車椅子の座席の高さ(40〜50cm)に合わせる。支柱9、10、11、12の全体高さは、座板支持フレーム13、14より上に、利用者の肩の高さ(55〜65cm)を加えた高さ(合計1m〜1m20cm)程度とする。立った介護者(図示せず)の胸ないし肩の高さ程度であるので、介護容易である。
【0033】
前記本体フレーム1の前面に位置する支柱9、12の座板支持フレーム13の上方は開放面とし、ここに側面フレーム2を装脱可能な形としている。このため、前面支柱9、12の開放面の下方位置には側面フレーム受部27を設け、その穴28内に側面フレーム2の両端支持フレーム29、30の下端を装入可能に構成している。
【0034】
側面フレーム2は、中間に中柱31を有し、全体を剛性体として形成している。また、両端支持フレーム29、30の上方には後方に支柱9、12の径より大径の穴を明けたリング部材32が設けられており、側面フレーム2を本体フレーム1の開放面に合わせて装着するとき、リング部材32の穴に支柱9、12の上端を装入できるようになっている。従って、本体フレーム1に対し側面フレーム2はその下端を側面フレーム受部27に装入すると共に、リング部材32を支柱9、12の上端に装入することにより、側面フレーム2を本体フレーム1に対し、確実、安全、強固に固定できる。パイプ及びシートの組合わせであるので、軽く、容易に装脱できる。
【0035】
前記本体フレーム1の後面の中柱19と、側面フレーム2の中柱31の上端には孔部33を開放して設け、その上方から手すり部材4の両端に設けた足部44を装入可能となっている。従って、本体フレーム1の開放面に側面フレーム2を装着し、孔部33に足部44を装入することにより、座板支持フレーム13、14上に形成される浴槽フレーム15、16、17、18、2において、その中間位置に手すりを形成できる。この手すりは、利用者の手すりとして利用できる他、中柱19、31間を固定し、フレーム強化する機能も有する。
【0036】
座板3は前方両端に一対の穴34L、34Rを有し、右方の穴34Rは後述する浴槽シート5の排水口5Hに対応する位置に明けられている。また、前後に曲げ部35を有し、この曲げ部35を本体フレーム1の座板支持フレーム13、14に股げて嵌合固定できるようになっている。従って、座板3を座板支持フレーム13、14上に支持し、浴槽底部を形成し、その上に浴槽シート5を配置することができる。
【0037】
浴槽シート5は、本体フレーム1に座板35を乗せ、その上に載置できるよう、後面BK、右面RT、左面LT、底面BMを有し、底面BMは、座板35の幅を越えて、この位置で上方に折り返せば開放面を覆うことができる寸法とされている。そして、底面BMの端部には前面支柱9、12に固定するための金具36が添設され、その端部と右又は左面LT、RTとの間は、金具36を支柱9、12に架け渡した状態でしわ寄せ可能なしわ寄せ部37が形成されている。金具36は、浴槽シート5の上端を固定するものであるため、添設でなく、パイプ材等で別途準備しておいても良い。防水シート材としては、高強度で耐引裂性の強いFRP等を用いることができるが、折り曲げ及び折り畳み可能のよう、十分柔軟な材料が用いられる。これらの防水シート材としては、例えば関西帆布化学防水株式会社のポリ塩化ビニルUS500(商品名)を用いることができる。各合わせ面は溶着し、1枚物に仕上げる。
【0038】
前記浴槽シート5の排水口5Hには、排水ホース7を取付け、プラグ8をセットした状態で使用する。即ち、排水ホースを座板3の穴34Rに通し、浴槽シート5の底面BMを座板3の上に載せ、各面LT、BK、RTを本体フレーム1の各面15、16、17、18に合わせて、浴槽シート5を本体フレーム1に取付けることができる。各面を合わせた後、各面の上端に設けた折り曲げ面38をフレーム上端の外側に折り返し、その上からU字状に曲げて作った複数の固定具39を嵌合させることにより固定できる。塩化ビニルの場合、各面が相互に接触すると摩擦力が高いので、上下に滑りずれるようなことがない。
【0039】
次に、以上の如く構成された本体フレーム1、側面フレーム2、座板3、手すり部材4、浴槽シート5から成る足伸式簡易浴槽について、その組み立て及び使用方法を説明する。
【0040】
図2(a)に正面図(a−1)、平面図(a−2)で示すように、本体フレーム1は、常時は平面図(a−2)で見て直線状に折り畳んで省スペースにて収納されている。側面フレーム2は、図示しないが、本体フレーム1に沿って重ねて収納することができる。浴槽シート5は折り畳んで収納できる。
【0041】
浴槽使用時の準備開始では、所要の場に移動し、(a)図に示す状態から、後面16、17に対し、左右の面15、18をずらし、ひし形を開き、(b)図に示す形とする。(b)図において、(b−1)は正面図を、(b−2)は(b−3)に示す座板3を取付けての本体フレーム1の平面図を示す。座板3は、本体フレーム1を開き、座板3を座板支持フレーム13、14上に載せる形で組み立てることができる。
【0042】
次に、(c)図に示すように、座板3を取付けた後、浴槽シート5を取付ける。(c)図において(c−1)は右側面図、(c−2)はその平面図で示している。既に示したように、座板3を取付けた本体フレーム1に対する浴槽シート5の取付けでは、浴槽シート5の底面BMの外側部分5Dを外に張り出した状態とするが、実際には浴槽シート5は柔軟であり、外側部分5Dは下方に垂れ下った形となる。
【0043】
浴槽シート5を取付けた後の手順を図3に示す。図3において、(d)図は浴槽シート5の外側部分5Dの処理の仕方を、(e)図は利用者の着座のさせ方を夫々右側面図で示している。(f)図は利用者を浴槽内に移乗終了させた状態を示している。
【0044】
図3の(d)図に示すように、浴槽シート5の外側部分5Dを開放面の下方で前面フレームの下部に沿わせる。次いで(e)図に示すように移乗介護を行う。(e)図に示すように、車椅子(図示せず)に着座させた利用者40を本体フレーム1の開放面に対して横づけし、車椅子の本体フレーム1側の肘掛けを外し、移乗開始する。移乗操作はとても簡単である。即ち、例えば(e)図において、まず利用者40の足41を浴槽内に移動させ、次いで利用者40の背部側に回って腋42に手を掛け、浴槽内に腰を移動させてあげることができる。自分で移動できる場合には、できるだけ自分でさせてあげれば良い。いずれの場合でも、介護者は1人で十分であり、容易に移乗させることができる。移乗により、(f)図に正面図で示すように、利用者40は、足41を水平に伸ばした状態で浴槽内に着座できる。
【0045】
浴槽内への移乗終了後の手順を図4に示す。(g)図は、浴槽シート5の折り畳みを、(h)図は手すり部材4の取付け及び給湯及び入浴処理を、(i)図は入浴終了後の排水処理を示している。
【0046】
図4の(g)図に正面図(g−1)及びその平面図(g−2)で示すように、浴槽シート5の外側部分5Dを上に持ち上げ、金具36等を前面支柱9、12の上端に架け渡して、しわ寄せ部37を外側に引き出し、折り目を付けて綺麗に折り畳み、シート本体側に重ね、その上端を小型の固定具43で固定する。その後、側面フレーム2をその外側から取り付ける。従って、浴槽シート5の外側部分5Dは、折り畳まれて、その外方から側面フレーム2で押え付けられた形となる。次いで、手すり部材4の足部44を孔部33に入れ、組立て完成する。組立て容易であり、多くの時間を必要としない。
【0047】
温湯は、給湯ホースを用いて給湯できる。水中ポンプを用いて通常浴槽から迅速に給湯しても良い。シャワーをかけてあげることもできる。シャワーの場合、排水ホース7を用いて排水しながら行うこともできる。排水ホース7は、排水しない間は、(h−1)図に示すように、端部を上方に引掛けている。通常カランから給湯ホースで給湯すると、浴槽いっぱいに温湯を溜めるのに10分位の時間を要する。そこで、オプション設置の水中ポンプを用いれば、3〜5分程度で満杯にすることができる。オーバーフローさせないためには、水中ポンプに手元スイッチを設けておくのが良い。また、通常浴槽に所要量の温湯のみを溜めておく等とする。
【0048】
以上により、利用者40は、足を水平に伸ばし、肩またはその近くまで温湯に浸り、ゆったりとリラックスして入浴でき、リハビリできる。入浴中は、水平に伸ばした足を伸ばし切り、又は少し手前にひいて、少し運動させてあげた方が健康に良い。温湯の深さは30〜60cm程度に調整できるので、介護者は、この間、浴槽上方から手を入れて、足や体を洗ってあげることもできる。一端排水し、シャワー洗浄することもできる。
【0049】
入浴終了後、(i)図に正面図で示すように、排水ホース7を排水受槽6にセットし、排水することができる。長いホースを用いれば排水受槽は省略して直接排水することもできる。全温湯を排水後、側面フレーム2を上に持ち上げて外し、(g)図に示す小型の固定具43を外し、浴槽シート5の外側部分5Dを開いて、入浴終了後の利用者40を図示しない車椅子に移乗させることができる。この手順は、図3の(e)、(f)に示した手順と全く逆にして容易に行うことができる。
【0050】
入浴終了後、続けて利用する予定が有る場合には、浴槽シート5を洗浄して後に次の利用者に対して利用できる。暫くの間利用する予定が無い場合には、図2、図3で示した手順の全く逆の手順により、図2の(a)に示した状態で収納することもできる。
【0051】
以上のように、利用者に対し被介護は1人で十分であり、従来例のように3人必要とするようなことはない。また、浴槽上から落し込む形でなく、かつ機械的運動を与えないので、誤って利用者に損傷を与えるような恐れもない。利用者は常時外方を見ながら入浴できるので、介護者と対話できる。
【0052】
以上示した実施形態では、本体フレーム1に対し側面フレーム2を側面フレーム受部27及びリング部材32を介して一括装脱する例で示したが、側面フレーム2の上端を前面の座板支持するフレーム13に蝶番で固定し、上下開閉操作で取付けるようにすることもできる。
【0053】
ベットからの移乗については、座板高さの変更を行うのみで同様である。ベットへの横づけは相対関係にあるので、キャスター取付けしているものを他方に横づけすれば良い。
【0054】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計的変更を加えることも可能であり、各種態様で実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係るシート内張り式の足伸式簡易浴槽の各構成部材を示す斜視図である。
【図2】図1に示した足伸式簡易浴槽の組立て方を示す説明図で、(a)図は収納時の状態、(b)図は組立て及び座板取付け状態、(c)図は浴槽シートの取付け状態を示す。
【図3】組立後の介護の仕方を示す説明図で、(d)図は浴槽シートの開放面での処理の仕方、(e)図は移乗開始、(f)図は移乗終了の状態を示す。
【図4】介護しながらの給湯及び入浴の状態を示す説明図で、(g)図は移乗終了後、開放面での浴槽シートの始末の仕方を、(h)図は側面フレーム及び手すりを取付け、利用者がリラックスして入浴できる状態を、(i)図は入浴終了後、排水している状態を示している。
【符号の説明】
【0056】
1 本体フレーム
2 側面フレーム
3 座板
4 手すり部材
5 浴槽シート
5D 浴槽シートの底部外側部分
6 排水受槽
7 排水ホース
8 プラグ
9、10、11、12 支柱
13、14 座板支持フレーム
15、16、17、18 水圧受け面
19、31 中柱
20、21、22、23 補強パイプ
24、25 中間支柱
26 キャスター
27 側面フレーム受部
28、34L、34R 穴
29、30 両端支持フレーム
32 リング部材
33 孔部
35 曲げ部
36 金具
37 しわ寄せ部
38 折り曲げ面
39 固定具
40 利用者
41 利用者の足
42 利用者の腋
44 足部
BK 浴槽シートの後面
RT 浴槽シートの右面
LT 浴槽シートの左面
BM 浴槽シートの底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の底部高さを利用者が利用する車椅子やベットの高さとすると共に、利用者の幅より大なる長さの短辺及び利用者が足を水平に伸ばして着座可能の長辺並びに利用者が足を伸ばして着座した状態で肩又はその近くまで浸ることができる深さの浴槽を有し、
前記浴槽の側面の内少なくとも1面を開放可能に構成し、この開放面を開放した状態で、そこに前記車椅子を横づけし、又はベットの横に設置し、前記車椅子を利用する利用者を又はベットの利用者を前記浴槽の底部に移乗させ、その後前記開放面を閉じ、前記利用者が肩又はその近くまで浸れるだけの温湯を注ぎ、前記利用者が足を伸ばした状態で肩又はその近くまでゆったり浸ることができるようにしたことを特徴とする足伸式簡易浴槽。
【請求項2】
利用者の幅より大なる長さの短辺及び利用者が足を水平に伸ばして着座可能の長辺を備えた断面矩形の立方フレームを設け、
前記立方フレームの中間高さで利用者が利用する車椅子の座席高さやベットの高さに台座を設けると共に、フレーム全高を利用者が前記台座上で前記長辺に沿って足を水平に伸ばして座った状態で肩の高さ程度とし、
前記立方フレームの前記台座より上の部分を浴槽フレームとして、その側面の内少なくとも1面を開放可能に構成し、かつ前記浴槽フレームの内側に前記開放可能の面を開放した状態で各面を内張りすると共に、開放面に対してはそれを閉じた状態でその内面及びその両端面と相隣り合う面とをしわ寄せによって塞ぐことができる形の防水シートを設け、
前記しわ寄せの部分は、前記開放面を構成するフレームの内側で折り畳み、その後前記開放面を構成するフレームで押え込むよう構成したことを特徴とする足伸式簡易浴槽。
【請求項3】
前記立方フレームは、前記防水シート及び前記台座を外した状態でその断面が直線状となるよう折り畳み可能としたことを特徴とする請求項2記載の足伸式簡易浴槽。
【請求項4】
前記立方フレームの各浴槽形成面は、水圧を吸収する為にフレーム面に高強度耐圧シートを張り、その内側に浴槽シートを内張りした形の2重構造とすることにより、内張りされる浴槽シートの保持は簡単に一部を押えるだけで水圧を吸収可能としたことを特徴とする請求項2又は3記載の足伸式簡易浴槽。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−218111(P2006−218111A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34853(P2005−34853)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(302008054)キシホ工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】