説明

路上設置形変圧器装置

【課題】路上設置形変圧器装置の外箱の大きさを保持した状態で、変圧器のさらなる大容量化に対応させる。
【解決手段】変圧器1を収容した変圧器タンク3が外箱2内に配置され、変圧器からの熱を逃がすための通気口6b,7を外箱に設ける。外箱2の大きさを保持した状態で変圧器の容量増加に対し、外箱の天井板6の表面温度と外箱の天井板に設けた通気口6bより排気される排気温度とが所定値を越えないように、変圧器タンク3の放熱面積を減らして構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器のさらなる大容量化に対応させるようにした路上設置形変圧器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の路上設置形変圧器装置では、例えば、図4及び図5に示すように、変圧器1が図示しない開閉器等と共に外箱2内に配置されている。変圧器1は、図示しない変圧器本体が絶縁油と共に変圧器タンク3内に収容されて構成されている。変圧器タンク3の側面には、放熱器4が取り付けられている。外箱2は、向かい合う広面5a,5bと向かい合う狭面5c,5dとで四角筒状をなす側壁筒5と、この側壁筒5の上部の開口を塞ぐように取り付けられた天井板6とで構成されている。広面5a,5bと狭面5cとには、変圧器1からの熱を逃がすためのルーバーからなる通気口7が複数設けられており、通気口7は斜め下向きとなるように配置されている。天井板6の周縁には下向きに鍔6aが設けられ、側壁筒5の上端部に嵌めてネジ等により固定されている。なお、天井板6には吊り上げ用ボルト穴8が複数設けられている。
【0003】
放熱器4(4a,4b,4c)は、図6に示すように、変圧器タンク3の1つの側板3d以外の他の3つの側板3a,3b及び3cにそれぞれ取り付けられる。例えば、変圧器タンク3の側板3a、側板3b及び側板3cをそれぞれ構成する鋼板のほぼ全体に亘って波付け加工が施されて、側板3a、側板3b及び側板3cにそれぞれ多数の放熱フィン4a1,4b1及び4c1が形成され、これらの放熱フィンによりそれぞれ放熱器4a,4b,4cが構成されている。なお、側板3dに放熱器がないのは、ここに開閉器等が取り付けられているためである。
【0004】
放熱フィン4a1,4b1及び4c1の油道間隔、数、高さ、長さ(上下方向)、放熱フィンの山部間ピッチ、山部間隔及び山部頂部と外箱2との間隔の各寸法は適宜の値になっており、山部頂部と外箱2との間隔は極力小さくし、また、長さ(上下方向)は極力大きくしている。
【0005】
このような路上設置形変圧器装置においては、変圧器1からの熱気を外箱2の側壁筒5に設けられた通気口7から外部に放出していた。
【0006】
ところで近年、都市部の電力需要の増大に伴って、また、設備の低コスト化のニーズに応えるために、路上設置形変圧器装置の変圧器容量の増大を図ることが求められている。
【0007】
一方、路上設置形変圧器装置に対しては、自治体条例により、その外形寸法に対して厳しい制約が設けられているため、外箱2の大きさを保持した状態で変圧器容量の増加を図ることが必要になる。
【0008】
このように、外箱2の大きさを保持した状態で変圧器容量の増加を図った路上設置形変圧器装置では、変圧器1からの発生熱量の増加に伴い、外箱2の通気口7から放出されないで上昇した熱気により天井板6の温度が上昇し、人が直接触れても火傷等の危害を与えない温度の上昇限度(例えば、JEAC 7001-1999 125-9(2)項により、人が接触する虞れがある部分の外箱2の表面温度の限度は所定値(80℃)以下と規定されている。また、電力会社から、外箱2の通気口7より排気される排気温度についても、それに準じるとされている。)を超えてしまう問題があった。
【0009】
そこで、この問題を回避するために、図7に示すようにに示されるように、外箱2の天井板6には、通気口6bが設けられている。この通気口6bは、図6に示す外箱2の広面5aと変圧器タンク3の側板3aとで形成される空間、外箱2の広面5bと変圧器タンク3の側板3bとで形成される空間、及び外箱2の狭面5cと変圧器タンク3の側板3cとで形成される空間のそれぞれの上方に位置させた状態で、上から見てコの字形を呈する形で複数設けられている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−80836号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の路上設置形変圧器装置に対して、外箱2の大きさを保持した状態で変圧器容量のさらなる増大を図ることが求められており、このような路上設置形変圧器装置では、外箱2の例えば天井板6の表面温度と、外箱2の例えば通気口6bより排気される排気温度との片方または両方が上記所定値を超えてしまう問題がある。
【0011】
本発明の目的は、外箱の大きさを保持した状態で、変圧器のさらなる大容量化に対応させるようにした路上設置形変圧器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、変圧器を収容した変圧器タンクが外箱内に配置され、変圧器からの熱を逃がすための通気口が外箱に設けられている路上設置形変圧器装置を対象とし、外箱の大きさを保持した状態で変圧器の容量増加に対し、外箱の表面温度と外箱より排気される排気温度とが所定値を越えないように、変圧器タンクの放熱面積を減らして構成したものである。
【0013】
第2の発明は、絶縁材の耐熱性を上げて変圧器を構成したものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、第1の発明によれば、変圧器タンクの放熱面積を減らすことにより、放熱器からの放熱量が減り、かつ、外箱と変圧器タンクとで形成される空間が広がり、この空間を上昇する空気の流れに対する抵抗が減ずるために、空気の流れが速くなり、また、外箱の側壁筒に設けられた通気口から吸引される空気の量が多くなるので、外箱の表面温度上昇が引き下げられると共に、外箱より排気される排気温度上昇が低減され、外箱の大きさを保持した状態で外箱の表面温度と外箱より排気される排気温度とが所定値を越えないようにすることができる。
【0015】
第2の発明によれば、変圧器に使用される絶縁材の耐熱性を上げることにより、変圧器のさらなる大容量化に対応させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明に係わる路上設置形変圧器装置の実施形態1を示す概略上面図であり、図4に示される外箱2の天井板6を外してその内部の構造を示している。
【0017】
外箱2の大きさを保持した状態で、図4と同じ通気口7(図示せず)と、図7と同じ通気口6b(図示せず)とを設け、変圧器容量をさらに増加、例えば、250kVAから300kVAに増加させる場合、図示するように、本実施形態では変圧器1に設けられる放熱器4(4a,4b,4c)の放熱面積を減らし、外箱2の表面温度と外箱2より排気される排気温度とを低下させるために、放熱フィン4a1,4b1及び4c1の油道間隔、数、長さ(上下方向)及び放熱フィンの山部間ピッチ寸法は全て従来を示す図6と同じとし、その高さa寸法のみを変化させており、例えば、放熱フィンの山部間ピッチbを48.8mm、山部間隔c42.4mmとし、従来よりも高さaを約40%減らした。すなわち、従来では、例えば、高さaが40mm(外箱2と山部頂部との間隔dが3.6mm)に対し、本実施形態では高さaを25mm(外箱2と山部頂部との間隔dを18.6mm)とした。
【0018】
このような構成において、放熱器4からの放熱量が減り、かつ、外箱2と変圧器タンク3とで形成される空間が広がり、この空間を上昇する空気の流れに対する抵抗が減ずるために、空気の流れが速くなり、外箱2の側壁筒5に設けられた通気口7から吸引される空気の量が多くなるので、外箱2の例えば天井板6(図示せず)の表面温度と外箱2の例えば通気口6b(図示せず)より排気される排気温度とが所定値(80℃)以下になるが、変圧器ケース3内に熱源を閉じ込めることになるので、変圧器1に使用される絶縁材、例えば、変圧器タンク3内に充填されている絶縁油と、変圧器1を構成する巻線等に使用される絶縁材との耐熱性を上げる必要がある。この場合、絶縁油は鉱油からシリコン油に、また、絶縁材はその耐熱クラスをF種からH種に変更する。
【0019】
図2は、本発明に係わる路上設置形変圧器装置の実施形態2を示す概略上面図であり、図4に示される外箱2の天井板6を外してその内部の構造を示している。
【0020】
外箱2の大きさを保持した状態で、図4と同じ通気口7(図示せず)と、図7と同じ通気口6b(図示せず)とを設け、変圧器容量を250kVAから300kVAに増加させる場合、図示するように、本実施形態では変圧器1に設けられる放熱器4の放熱面積を減らし、外箱2の表面温度と外箱2より排気される排気温度とを低下させるために、放熱フィン4a1,4b1及び4c1の油道間隔、長さ(上下方向)及び高さ寸法は全て従来を示す図6と同じとし、その山部間ピッチbのみを変化させており、例えば、放熱フィンの高さaを40mm(外箱2と山部頂部との間隔dが3.6mm)とし、従来よりも山部間ピッチbを2倍にした。すなわち、従来では、例えば、山部間ピッチbが48.8mmに対し、本実施形態では山部間ピッチbを97.6mmとした。
【0021】
このような構成において、放熱器4からの放熱量が減り、かつ、外箱2と変圧器タンク3とで形成される空間が広がり、この空間を上昇する空気の流れに対する抵抗が減ずるために、空気の流れが速くなり、外箱2の側壁筒5に設けられた通気口7から吸引される空気の量が多くるので、外箱2の天井板6(図示せず)の表面温度と外箱2の通気口6b(図示せず)より排気される排気温度とが所定値(80℃)以下になるが、変圧器ケース3内に熱源を閉じ込めることになるので、絶縁油及び絶縁油以外の絶縁材の耐熱性を上げる必要がある。この場合、絶縁油は鉱油からシリコン油に、また、絶縁材はその耐熱クラスをF種からH種に変更する。
【0022】
図3は、本発明に係わる路上設置形変圧器装置の実施形態3を示す一部縦断面図であり、図4に対応する。
【0023】
外箱2の大きさを保持した状態で、図4と同じ通気口7(図示せず)と、図7と同じ通気口6b(図示せず)とを設け、変圧器容量を250kVAから300kVAに増加させる場合、図示するように、本実施形態では変圧器1に設けられる放熱器4の放熱面積を減ら減らし、外箱2の表面温度と外箱2より排気される排気温度とを低下させるために、放熱フィン4a1,4b1の油道間隔、数、高さ及び放熱フィンの山部間ピッチ寸法は全て従来を示す図6と同じとし、その長さ(上下方向)e寸法のみを変化させており、例えば、放熱フィンの高さaを40mmとし、また、山部間ピッチbを48.8mmとし、従来よりも長さeを約1/2にした。すなわち、従来では長さeが98cmに対し、本実施形態では長さを50cmとした。なお、この放熱フィンの配置は上側寄りとした。
【0024】
このような構成において、放熱器4からの放熱量が減り、かつ、外箱2と変圧器タンク3とで形成される空間が広がり、この空間を上昇する空気の流れに対する抵抗が減ずるために、空気の流れが速くなり、外箱2の側壁筒5に設けられた通気口7から吸引される空気の量が多くるので、外箱2の天井板6(図示せず)の表面温度と外箱2の通気口6b(図示せず)より排気される排気温度とが所定値(80℃)以下になるが、変圧器ケース3内に熱源を閉じ込めることになるので、絶縁油及び絶縁油以外の絶縁材の耐熱性を上げる必要がある。この場合、絶縁油は鉱油からシリコン油に、また、絶縁材はその耐熱クラスをF種からH種に変更する。
【0025】
上記の各実施形態では、絶縁油は鉱油からシリコン油に、また、絶縁材はその耐熱クラスをF種からH種に変更するが、変圧器容量の増加の度合いによっては、絶縁油及び絶縁材の耐熱性を上げる必要がない場合がある。
【0026】
また、変圧器容量の増加の度合いによっては、外箱2の天井板6(図示せず)の表面温度と外箱2の通気口6b(図示せず)より排気される排気温度とが所定値(80℃)を越えるような場合には、放熱器4からの放熱量をさらに減らす必要があるために、実施形態1ないし3を適宜組み合わせるか、または、放熱器4を設けない構成にする。この場合、絶縁材の耐熱性を上げる必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係わる路上設置形変圧器装置の実施形態1を示す概略上面図である。
【図2】本発明に係わる路上設置形変圧器装置の実施形態2を示す概略上面図である。
【図3】本発明に係わる路上設置形変圧器装置の実施形態3を示す一部縦断面図である。
【図4】従来の路上設置形変圧器装置の斜視図である。
【図5】図4の一部縦断面図である。
【図6】図4に示される外箱の天井板を外してその内部の構造を示す概略上面図である。
【図7】外箱の天井板に通気口を設けた従来の路上設置形変圧器装置の概略上面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 変圧器
2 外箱
3 変圧器タンク
4 放熱器
6 天井板
6b 通気口
7 通気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器を収容した変圧器タンクが外箱内に配置され、前記変圧器からの熱を逃がすための通気口が前記外箱に設けられている路上設置形変圧器装置において、
前記外箱の大きさを保持した状態で前記変圧器の容量増加に対し、前記外箱の表面温度と前記外箱より排気される排気温度とが所定値を越えないように、前記変圧器タンクの放熱面積を減らして構成される路上設置形変圧器装置。
【請求項2】
前記変圧器は、絶縁材の耐熱性を上げて構成される請求項1に記載の路上設置形変圧器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−49841(P2006−49841A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179010(P2005−179010)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】