説明

踏切しゃ断機

【課題】2段腕木式の踏切しゃ断機において投影設置面積が小さく、しゃ断かんがふらつき難く、既設の1段式から変更する場合にも交換部品が少なくて移設も伴わずに工事負担を小さく抑える。
【解決手段】本発明の踏切しゃ断機は、第1しゃ断かん4aと、第1しゃ断かん回転軸3aと、駆動機構部1と、駆動機構部上に立設された筐体7aと、筐体に支持され、第1しゃ断かん回転軸の上方に配置された第2しゃ断かん回転軸3bと、第2しゃ断かん回転軸に取り付けられる第2しゃ断かん4bと、第2しゃ断かんが第1しゃ断かんに同期して動作するように、駆動機構部の駆動力を第2しゃ断かん回転軸に伝動する同期伝動機構8a,8b,9,10とを備える。第1しゃ断かんの中心軸の第1しゃ断かん回転軸の中心軸に対する偏在方向と、第2しゃ断かんの中心軸の第2しゃ断かん回転軸の中心軸に対する偏在方向とが同方向又は逆方向にされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道と道路の交差する踏切を遮断する踏切しゃ断機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、腕木式踏切しゃ断機は1本のしゃ断かんを昇降させて鉄道に交差する道路の交通を遮断するようになっており、踏切遮断時のしゃ断かん高さは、通行人や乗用車の運転手から見えやすい高さに決められている。
したがって、トラックやバス等の大型車両のように運転席が高い車両の運転手からはしゃ断かんによる遮断状態が見え難い。
そのため、このような大型車両が誤って発進したり見切り発進したりして、しゃ断かんを折損することがよく起こっている。
【0003】
従来、かかる問題を解決するために2台の踏切しゃ断機を設置して、1台は通行人や乗用車から見えやすい高さに、もう1台は運転席が高い大型車両から見えやすい高さに踏切遮断時のしゃ断かん高さを設定することがある。
しかし、この方法によると2台の踏切しゃ断機が必要となるから、2台分の設置場所の確保が困難又は不可となる場合があるし、設置できても踏切しゃ断機の保守・点検負担や設備費が2倍となるという問題がある。
【0004】
そこで、特許文献1記載の発明にあっては、1台の踏切しゃ断機の1つのしゃ断かんホルダ(10)に2本のしゃ断かんを水平時に上下2段のとなるように取り付けて、下段しゃ断かん(3)を通行人や乗用車から見えやすい高さに、上段しゃ断かん(4)を運転席が高い大型車両から見えやすい高さに踏切遮断時のしゃ断かん高さを設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−81860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の考案にあっても次のような問題があった。
図7(a)に特許文献1記載の2段式の腕木式踏切しゃ断機40が示される。図7(b)に従来の一般的な1本のしゃ断かんを昇降する腕木式踏切しゃ断機50を示す。
踏切しゃ断機40は、支持台41と、支持台41に支持された駆動機構部42と、駆動機構部42により駆動されるしゃ断かん回転軸43と、しゃ断かん回転軸43に結合するしゃ断かんホルダ44と、しゃ断かんホルダ44に固定された2本のしゃ断かん45,46及びバランスウエイト47,47とを備える。
踏切しゃ断機50は、支持台51と、駆動機構部52と、しゃ断かん回転軸53と、しゃ断かんホルダ54と、1本のしゃ断かん55と、バランスウエイト57とを備える。
【0007】
この両者を比較すると、踏切遮断時において下段しゃ断かん45の高さと、1段式の方のしゃ断かん55の高さとを、同じ高さA1としなければならない。通行人や乗用車から見えやすい高さとするためである。
一方、上段しゃ断かん46の踏切遮断時の高さA2を、大型車両から見えやすい高さにしなければならないから、図7に示すようにしゃ断かんホルダ44が長大化する。
その結果、図7に示すようにしゃ断かん垂直状態における2段式の踏切しゃ断機40の最大幅W1は、1段式の踏切しゃ断機50の最大幅W2に比較して大きくなる。したがって、しゃ断かん垂直状態における2段式の踏切しゃ断機40の投影設置面積は、1段式の踏切しゃ断機50のそれに比較して大きくなり、設置には不利となる。
【0008】
また、2段式の踏切しゃ断機40にあっては、しゃ断かん昇降時の負荷トルク軽減の観点から、しゃ断かんホルダ44に対するしゃ断かん回転軸43及びバランスウエイト47の位置が決定される。
その結果、2段式の方のしゃ断かん回転軸43と、1段式の方のしゃ断かん回転軸53との間に落差Bが生じる。
したがって、特許文献1記載の方式を採用して既設の1段式を2段式に変更する場合には、しゃ断かん及びしゃ断かんホルダのみならず、支持台51の交換も要して交換部品が多くなり、駆動機構部42の取り外しも要して交換工事に大きな負担が生じる。
【0009】
また、しゃ断かん垂直状態における2段式の方のしゃ断かんホルダ44の道路側Cへの張り出し長さは、1段式のそれに比較して長くなる(図7の場合ほぼ寸法Dだけ長くなる)。
したがって、特許文献1記載の方式を採用して既設の1段式を2段式に変更する場合には、踏切しゃ断機と道路との間にある安全柵からしゃ断かんホルダ44がはみ出さないように安全柵を道路側に移設するか、踏切しゃ断機の設置位置を道路に対して後退させる必要が生じてさらに工事負担が増大するし、そもそも移設するスペースが無ければ2段式への変更が不可となる。
【0010】
さらに、しゃ断かんホルダ44の長大化はその表面積を増大させているから、列車風や自然風などの風の影響を受けやすく、しゃ断かんのふらつきが大きくなるという問題もある。
【0011】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、2段腕木式の踏切しゃ断機において、投影設置面積が小さく、しゃ断かんがふらつき難く、既設の1段式から変更する場合にも交換部品が少なくて移設も伴わずに工事負担を小さく抑えることができる踏切しゃ断機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、第1しゃ断かんと、
前記第1しゃ断かんが取り付けられる第1しゃ断かん回転軸と、
前記第1しゃ断かん回転軸を回転駆動して前記第1しゃ断かんを昇降させる駆動機構部と、
前記駆動機構部上に立設された筐体と、
前記筐体に支持され、前記第1しゃ断かん回転軸の上方に配置された第2しゃ断かん回転軸と、
前記第2しゃ断かん回転軸に取り付けられる第2しゃ断かんと、
前記第2しゃ断かんが前記第1しゃ断かんに同期して動作するように、前記駆動機構部の駆動力を前記第2しゃ断かん回転軸に伝動する同期伝動機構とを備える踏切しゃ断機である。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記同期伝動機構は、前記第1しゃ断かん回転軸と前記第2しゃ断かん回転軸との間に掛けられるタイミングベルト又はチェーンによる伝動機構であり、当該タイミングベルト又はチェーンが前記筐体に内装されてなる請求項1に記載の踏切しゃ断機である。
【0014】
請求項3記載の発明は、前記第1しゃ断かんの中心軸の前記第1しゃ断かん回転軸の中心軸に対する偏在方向と、前記第2しゃ断かんの中心軸の前記第2しゃ断かん回転軸の中心軸に対する偏在方向とが、同方向にされた請求項1に記載の踏切しゃ断機である。

【0015】
請求項4記載の発明は、前記第1しゃ断かんの中心軸の前記第1しゃ断かん回転軸の中心軸に対する偏在方向と、前記第2しゃ断かんの中心軸の前記第2しゃ断かん回転軸の中心軸に対する偏在方向とが、逆方向にされた請求項1に記載の踏切しゃ断機である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1しゃ断かんを下段、第2しゃ断かんを上段とした2段腕木式の踏切しゃ断機を構成することができる。
本発明によれば、駆動機構部の上方に第2しゃ断かん回転軸やこれを支持する筐体が配置されるから投影設置面積が小さくて済むという効果がある。
本発明によれば、しゃ断かんホルダを第1しゃ断かんと第2しゃ断かんのそれぞれに設ければよいから、これらを一体化してしゃ断かんホルダが長大化することはなく、そのため、しゃ断かんのふらつきは生じ難いという効果がある。
本発明によれば、第1しゃ断かん、第1しゃ断かん回転軸及びその駆動機構部として、既設の1段式の踏切しゃ断機を利用することができ、既設の1段式の踏切しゃ断機の駆動機構部上に第2しゃ断かん回転軸、同期伝動機構及びこれらを保持する筐体等を増設することにより構成できる。
したがって、本発明によれば、既設の1段式から変更する場合にも交換部品が少なくて移設も伴わずに工事負担を小さく抑えることができるという効果がある。
【0017】
本件請求項4に記載の発明によれば、しゃ断かんが2本になることにより負荷トルクが単純に2倍にならずにその増大量を小さく抑えることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る踏切しゃ断機の踏切遮断時の正面図(a)、同踏切しゃ断機の踏切開放時の正面図(b)及び側面図(c)である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る踏切しゃ断機の踏切遮断時の側面視断面図(a)及び正面視断面図(b)であって、内装される同期伝動機構を示した。
【図3】本発明の第2実施形態に係る踏切しゃ断機の踏切遮断時の正面図(a) 及び側面図(c)、同踏切しゃ断機の踏切開放時の正面図(b)である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る踏切しゃ断機の踏切遮断時の側面視断面図(a)及び正面視断面図(b)であって、内装される同期伝動機構を示した。
【図5】本発明の第1実施形態に係る踏切しゃ断機と、本発明の第2実施形態に係る踏切しゃ断機との高さを比較した各正面図である。
【図6】しゃ断かんの角度に対するしゃ断かんの負荷トルクの変化を示すグラフである。
【図7】従来例に係る2段式の踏切しゃ断機の踏切開放時の正面図(a)及び従来の一般的な1本のしゃ断かんを昇降する踏切しゃ断機の踏切開放時の正面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0020】
〔第1実施形態〕
まず、図1及び図2を参照して本発明の第1実施形態につき説明する。
図1に示すように本実施形態の踏切しゃ断機60Aは、従来の一段式の踏切しゃ断機と同様の構成として、駆動機構部1と、第1しゃ断かんホルダ2aと、第1しゃ断かん回転軸3aと、第1しゃ断かん4aと、バランスウエイト5と、支持台6とを備える。
【0021】
駆動機構部1は、支持台6上に固定される。
駆動機構部1は、モータと減速機構及び駆動制御部とを備え、第1しゃ断かん回転軸3aを回転駆動する。
第1しゃ断かん回転軸3aに第1しゃ断かんホルダ2aが結合され、第1しゃ断かんホルダ2aに第1しゃ断かん4aの基端部が固定されることにより、第1しゃ断かん4aが第1しゃ断かん回転軸3aに取り付けられる。第1しゃ断かんホルダ2aにバランスウエイト5も取り付けられる。
第1しゃ断かん4aは、第1しゃ断かん回転軸3aに対して垂直に配置されるとともに、その中心軸が第1しゃ断かん回転軸3aの中心軸に対して一定距離偏在するように保持されて、第1しゃ断かんホルダ2aにより取り付けられている。図1(a)に示すように、第1しゃ断かん4aは、その水平時において第1しゃ断かん回転軸3aの下側に偏在するように第1しゃ断かんホルダ2aにより取り付けられている。
【0022】
周知の従来技術と同様に駆動機構部1によって第1しゃ断かん回転軸3aが90度回転させられることにより、第1しゃ断かん4aが図1(a)に示す水平状態から図1(b)(c)に示す垂直状態まで上昇し、これとは逆方向に第1しゃ断かん回転軸3aが90度回転させられることにより、第1しゃ断かん4aが図1(b)(c)に示す垂直状態から図1(a)に示す水平状態まで下降する。第1しゃ断かん4aが水平状態で踏切遮断状態であり、第1しゃ断かん4aが垂直状態で踏切開放状態である。このように駆動機構部1は、第1しゃ断かん回転軸3aを回転駆動して第1しゃ断かん4aを昇降させる。
【0023】
さらに本実施形態の踏切しゃ断機60Aは、筐体7aと、第2しゃ断かんホルダ2bと、第2しゃ断かん回転軸3bと、第2しゃ断かん4bと、同期伝動機構とを備える。
筐体7aは、その下端が駆動機構部1の上面に固定されて、駆動機構部1上に立設されている。
第2しゃ断かん回転軸3bは、筐体7aの上端部に回転自在に支持されている。第2しゃ断かん回転軸3bは、第1しゃ断かん回転軸3aの上方に配置されている。また、第2しゃ断かん回転軸3bは、第1しゃ断かん回転軸3aと平行に配置されている。
第2しゃ断かん回転軸3bに第2しゃ断かんホルダ2bが結合され、第2しゃ断かんホルダ2bに第2しゃ断かん4bの基端部が固定されることにより、第2しゃ断かん4aが第2しゃ断かん回転軸3bに取り付けられる。
第2しゃ断かん4bは、第2しゃ断かん回転軸3bに対して垂直に配置されるとともに、その中心軸が第2しゃ断かん回転軸3bの中心軸に対して一定距離偏在するように保持されて、第2しゃ断かんホルダ2bにより取り付けられている。図1(a)に示すように、第2しゃ断かん4bは、その水平時において第2しゃ断かん回転軸3bの下側に偏在するように取り付けられている。
【0024】
筐体7aは中空の柱状であり、図2に示すように機械要素8a,8b,9,10による同期伝動機構を内装している。
一方の伝動歯車8aは第1しゃ断かん回転軸3aに固定され、他方の伝動歯車8bは第2しゃ断かん回転軸3bに固定されている。伝動歯車8aと伝動歯車8bとは同歯数である。
伝動歯車8aと伝動歯車8bとにタイミングベルト又はチェーンである伝動部材9が掛けられている。伝動部材9はテンション調整ローラ10,10によってガイドされている。
本同期伝動機構は駆動機構部1の駆動力を、第1しゃ断かん回転軸3aを介して第2しゃ断かん回転軸3bに伝動する。本同期伝動機構により第1しゃ断かん回転軸3aの回転が一対一で第2しゃ断かん回転軸3bに伝動される。
したがって、第2しゃ断かん4bが第1しゃ断かん4aに同期して動作する。すなわち、第1しゃ断かん4a及び第2しゃ断かん4bは、図1(a)に示すように踏切遮断時において水平状態であり、駆動機構部1の発動により、同じ方向に互いに同じ角度を保ちながら変角し図1(b)(c)に示す垂直状態まで上昇し、下降するときも同期して動作する。
【0025】
〔第2実施形態〕
次に、図3及び図4を参照して本発明の第2実施形態につき説明する。
上記第1実施形態の踏切しゃ断機60Aにあっては、第1しゃ断かん4aの中心軸の第1しゃ断かん回転軸3aの中心軸に対する偏在方向と、第2しゃ断かん4bの中心軸の第2しゃ断かん回転軸3bの中心軸に対する偏在方向とが同方向にされた。
図3に示すように本実施形態の踏切しゃ断機60Bは、これらの偏在方向が逆方向にされたものであり、その他は上記第1実施形態の踏切しゃ断機60Aと同様の構成を有する。但し、本実施形態の筐体7bは、上記第1実施形態の筐体7aより低くされている。
図5に示すように上記第1実施形態の踏切しゃ断機60Aと、本実施形態の踏切しゃ断機60Bとにおいて、しゃ断かん4a,4bの水平時高さは同じとされる。しかし、踏切しゃ断機60Aにおいては、上段の第2しゃ断かん4bの上方に第2しゃ断かん回転軸3bが位置するのに対し、本実施形態の踏切しゃ断機60Bにおいては、上段の第2しゃ断かん4bの下方に第2しゃ断かん回転軸3bが位置する。
したがって、その分、図上で落差Eだけ本実施形態の筐体7bは上記第1実施形態の筐体7aより低くすることができる。
【0026】
また、本実施形態の踏切しゃ断機60Bは、上記第1実施形態の踏切しゃ断機60Aに比較してしゃ断かん負荷トルクを軽減できる。
図6に示す負荷トルク変化曲線11は従来の1段式の踏切しゃ断機のものであり、負荷トルク変化曲線12は踏切しゃ断機60Aのものであり、負荷トルク変化曲線13は踏切しゃ断機60Bのものである。これらは、同じしゃ断かんを同じ位置で取付け、同じ条件で比較したものである。
【0027】
踏切しゃ断機60Aの負荷トルク変化曲線12を見ると、従来の1段式の踏切しゃ断機の負荷トルク変化曲線11に対してどの角度においても約2倍に増加している。
これに対し踏切しゃ断機60Bの負荷トルク変化曲線13を見ると、しゃ断かん水平時(グラフで角度0度)においては負荷トルク変化曲線12と同じ値であるものの、しゃ断かんが上昇するにつれてしゃ断かん負荷トルクは減少し、しゃ断かん垂直時(グラフで90度)においてほぼゼロとなる。
これは、踏切しゃ断機60Bの第2しゃ断かん4bは水平時から起き上がって回転する時に、踏切しゃ断機60Aの第2しゃ断かん4bよりも、その重心が回転軸3bに早く近づいて負荷トルクが早く減少するとともに、その重心が回転軸3b上を超えて逆側に至り、第1しゃ断かん4aとは逆方向の負荷トルクを同期伝動機構に入力し、第1しゃ断かん4aの負荷トルクと第2しゃ断かん4bの負荷トルクとが相殺されるからである。
さらに、踏切しゃ断機60Bにバランスウエイトを適用するか、又はしゃ断かん回転軸に補助トルクを与えるバネを利用した補助機構を内臓した駆動機構部を適用することにより残留トルク14に示すように、90度の変角過程でほぼ一定で低いレベルに残留トルクを調整することが可能である。
【0028】
以上の第1又は第2実施形態の踏切しゃ断機によれば、第1しゃ断かん4aを下段、第2しゃ断かん4bを上段とした2段腕木式の踏切しゃ断機を構成することができる。踏切遮断時において第1しゃ断かん4aの高さを通行人や乗用車の運転手から見えやすい高さに、第2しゃ断かん4bの高さをトラックやバス等の大型車両の運転手から見えやすい高さに設定することにより、従来の2台の踏切しゃ断機を設置した場合や1台の踏切しゃ断機の1つのしゃ断かんホルダに2本のしゃ断かんを取り付けた構成と同様に、通行人や乗用車のみならず大型車両に対する視認性を確保することができる。
【0029】
また、上記第1又は第2実施形態の踏切しゃ断機によれば、駆動機構部1の上方に第2しゃ断かん回転軸3bやこれを支持する筐体7a(7b)が配置されるから投影設置面積が小さくて済む。
【0030】
さらに、上記第1又は第2実施形態の踏切しゃ断機によれば、しゃ断かんホルダを第1しゃ断かん4aと第2しゃ断かん4bのそれぞれに設ければよいから、これらを一体化してしゃ断かんホルダが長大化することはなく、そのため、しゃ断かんのふらつきは生じ難い。
【0031】
また、上記第1又は第2実施形態の踏切しゃ断機によれば、第1しゃ断かん4a、第1しゃ断かん回転軸3a、その駆動機構部1及び支持台6として、既設の1段式の踏切しゃ断機を利用することができ、既設の1段式の踏切しゃ断機の駆動機構部上に第2しゃ断かん回転軸3b、同期伝動機構及びこれらを保持する筐体7a(7b)等を増設することにより構成できる。
その際、最も道路側に近接する構成品(バランスウエイトを付ける場合はバランスウエイト)の位置が従来の1段式の踏切しゃ断機のそれと変わらないので、安全柵や踏切しゃ断機の設置位置を変更することなく2段式に変更することができる。
したがって、上記第1又は第2実施形態の踏切しゃ断機によれば、既設の1段式から変更する場合にも交換部品が少なくて移設も伴わずに工事負担を小さく抑えることができる。
【0032】
従来の2台の踏切しゃ断機を設置した場合の上段の一台は駆動機構部が高く設置される。また、1台の踏切しゃ断機の1つのしゃ断かんホルダに2本のしゃ断かんを取り付けた構成では駆動機構部が高く設置される。
これに対し上記第1又は第2実施形態の踏切しゃ断機によれば、第1しゃ断かん回転軸及び駆動機構部の高さがが、従来の1段式の踏切しゃ断機のそれと変わらないので、駆動機構やバランスウエイトの調整、駆動機構に内蔵される補助機構の調整に高い位置での作業が強いられることがなくその作業性が良好である。
【符号の説明】
【0033】
1 駆動機構部
2a 第1しゃ断かんホルダ
3a 第1しゃ断かん回転軸
4a 第1しゃ断かん
2b 第2しゃ断かんホルダ
3b 第2しゃ断かん回転軸
4b 第2しゃ断かん
5 バランスウエイト
6 支持台
7a,7b 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1しゃ断かんと、
前記第1しゃ断かんが取り付けられる第1しゃ断かん回転軸と、
前記第1しゃ断かん回転軸を回転駆動して前記第1しゃ断かんを昇降させる駆動機構部と、
前記駆動機構部上に立設された筐体と、
前記筐体に支持され、前記第1しゃ断かん回転軸の上方に配置された第2しゃ断かん回転軸と、
前記第2しゃ断かん回転軸に取り付けられる第2しゃ断かんと、
前記第2しゃ断かんが前記第1しゃ断かんに同期して動作するように、前記駆動機構部の駆動力を前記第2しゃ断かん回転軸に伝動する同期伝動機構とを備える踏切しゃ断機。
【請求項2】
前記同期伝動機構は、前記第1しゃ断かん回転軸と前記第2しゃ断かん回転軸との間に掛けられるタイミングベルト又はチェーンによる伝動機構であり、当該タイミングベルト又はチェーンが前記筐体に内装されてなる請求項1に記載の踏切しゃ断機。
【請求項3】
前記第1しゃ断かんの中心軸の前記第1しゃ断かん回転軸の中心軸に対する偏在方向と、前記第2しゃ断かんの中心軸の前記第2しゃ断かん回転軸の中心軸に対する偏在方向とが、同方向にされた請求項1に記載の踏切しゃ断機。
【請求項4】
前記第1しゃ断かんの中心軸の前記第1しゃ断かん回転軸の中心軸に対する偏在方向と、前記第2しゃ断かんの中心軸の前記第2しゃ断かん回転軸の中心軸に対する偏在方向とが、逆方向にされた請求項1に記載の踏切しゃ断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−235665(P2011−235665A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106131(P2010−106131)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】