説明

車上装置

【課題】車庫から出庫する車両について、人手に頼ることなく、かつ、車輪径の変動分の累積を回避しながら車輪径を測定し得る車上装置を提供すること。
【解決手段】車庫1から出庫してゆく車両3について、特定された距離Lを走行したとき、車輪35の回転に応じたパルスを発生するパルス発生器34から供給されるパルス数を計測し、計測されたパルス数に基づいて、車輪35の径を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に搭載される車上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、軌道上を走行する鉄道車両においては、走行距離を計測して自車の走行位置を検知する手法が知られている。走行距離を計測するには、車両に搭載される車上装置に、予め、車輪径から定まる車輪1回転当りの走行長を乗算係数として設定しておき、この乗算係数に車軸の回転量を乗算する。ところが、車輪は走行に応じて摩耗するため、車輪径が変化(縮小)し、計測した走行距離には常に誤差が含まれる。
【0003】
そこで、従来は、車庫を出庫していく車両について、定期検査などにより、手動によって車両径を測定し、その測定値を車上装置に車輪径の乗算係数として設定する等の手法を採用していた。
【0004】
しかし、上述した従来の手法は、人手による煩わしい車輪径測定作業が必要になるうえ、測定値を車上装置に手動で設定しなければならないという煩わしさも加わる。
【0005】
特許文献1は、列車の車軸に取り付けたタコジェネレータ、速度発電機のパルス積算値を用い、線路上の連続した位置を追跡する技術を開示している。しかし、特許文献1は、走行距離算出システムを開示するものであって、車庫から出庫される車両について、その車輪径を測定するものではない。特許文献2には、車輪径の自動補正については記載があるが、振子制御式鉄道車両の走行時車輪径補正方法を開示するものであって、車庫から出庫される車両について、その車輪径を補正するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−322593号公報
【特許文献2】特開2001−106070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、車庫から出庫する車両について、人手に頼ることなく、車輪径を測定する車上装置を提供することである。
【0008】
本発明のもう一つの課題は、車輪径の変動分の累積を回避しながら、車輪径を測定し得る車上装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を達成するため、本発明に係る車上装置は、出庫してゆく車両について、特定された距離を走行したとき、車輪の回転に応じたパルスを発生するパルス発生器から供給されるパルス数を計測し、計測されたパルス数に基づいて、前記車輪の径を算出する。
【0010】
上述した本発明に係る車上装置によれば、人手を介することなく、車庫から出庫してゆく車両について、その車輪径を算出することができる。当然のことであるが、この場合の車輪径とは、レールの踏み面と接触する車輪周面の直径または半径である。
【0011】
出庫した後、入庫するまでは、このようにして算出された車輪径に基づいて、車両の走行速度、走行距離が算出される。勿論、入庫時の車輪径は、出庫時の車輪径と異なる場合が多いが、次の出庫時に再び車輪径測定がおこなわれ、補正された車輪径が得られるので、車輪径の変動分の累積がない。したがって、車両の走行速度、走行距離の算出の精度を維持することができる。
【0012】
車輪径は、具体的には、車両が、一定距離で設定された地上子間を走行したとき、前記パルス数に基づいて算出された測定距離と、前記地上子間の実際の距離とより算出することができる。
【0013】
車上装置は、計算結果から得られた車輪の径と、設定値とを比較して、規定値内にあれば、計算結果から得られた車輪の径を、設定値とすることができる。車上装置は、このようにして設定された設定値を用いて、計算結果から得られた車輪の径と、設定値とを比較して、比較結果により警告を発することができる。これにより、車輪の交換時期を知ることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(a)車庫から出庫する車両について、人手に頼ることなく、車輪径を測定する車上装置を提供することができる。
(b)車輪径の変動分の累積を回避しながら、車輪径を測定し得る車上装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る車上装置を有する車両と、その車輪径測定を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照すると、車両3は、レール5の上にあって、車庫1に入庫している。車両3には、車上装置31及び表示装置32が搭載されており、車上装置31には、車上アンテナ33及びパルス発生器34等が接続されている。車上アンテナ33は、車庫1の外部において、レール5に沿って間隔Lをおいて配置された地上子71,72と電磁結合する。
【0017】
パルス発生器34は、車輪35の回転に応じたパルスを発生する。このようなパルス発生器34は、周知の速度発電機によって構成することができる。車輪35の回転は、車輪35そのものの回転として検出することができるし、車輪35の車軸の回転として検出することもできる。
【0018】
車両3が、レール5上を、車庫1から矢印F1で示す方向に出庫してゆき、特定された距離Lを走行したとき、車両3に備えられた車上装置31は、車輪35の回転に応じたパルスを発生するパルス発生器34から供給されるパルス数を計測し、計測されたパルス数に基づいて、車輪35の径を算出する。この実施の形態では、特定された距離は、地上子71−72の間に設定された距離Lである。この距離Lは、例えば150mというように、予め定められている。車両3が、地上子71−72の間に設定された距離Lを走行したことは、地上子71,72と車上アンテナ33との間の電気的・磁気的な結合によって生じる信号を、車上装置31によって処理することによって判定される。次に、車輪径算出について、具体的に説明する。
【0019】
パルス発生器34の出力パルス数:n/1回転
算出される車輪径:D(m)
地上子71−72間の間隔:L(m)
L(m)を走行したとき車上装置31が認識した累積パルス数:N(回)
とすると、
L=πD・(N/n)
となる。この式を変形すると、車輪35の外径D(m)は、
D=(n・L)/(π・N)
として求まる。なお、車輪径測定のため、地上子71−72の間を、車両3が走行するとき、その走行速度は、空転や滑走が生じないような値に設定される。
【0020】
上述した本発明に係る車上装置31によれば、人手を介することなく、車庫1から出庫してゆく車両3について、その車輪35の径を算出することができる。出庫した後、入庫するまでは、このようにして算出された車輪径に基づいて、車両3の走行速度、走行距離が算出される。勿論、入庫時の車輪径は、出庫時の車輪径と異なる場合が多いが、次の出庫時に再び車輪径測定がおこなわれ、補正された車輪径が得られるので、営業日を跨いだ車輪径の変動分の累積がない。したがって、車両3の走行速度、走行距離の算出の精度を維持することができる。
【0021】
車上装置31は、計算結果から得られた車輪35の径と、設定値とを比較して、規定値内にあれば、計算結果から得られた車輪35の径を、設定値とすることができる。車上装置31は、このようにして設定された設定値を用いて、計算結果から得られた車輪35の径と、設定値とを比較して、比較結果により、運転台等の表示装置32に警告を発することができる。これにより、車輪35の交換時期を知ることができる。
【0022】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0023】
1 車庫
3 車両
31 車上装置
32 表示装置
33 車上アンテナ
34 パルス発生器
35 車輪


【特許請求の範囲】
【請求項1】
出庫してゆく車両について、特定された距離を走行したとき、車輪の回転に応じたパルスを発生するパルス発生器から供給されるパルス数を計測し、計測されたパルス数に基づいて、前記車輪の径を算出する、車上装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車上装置であって、一定距離で設定された地上子間を走行したとき、前記パルス数に基づいて算出された測定距離と、前記地上子間の実際の距離とより、前記車輪の径を算出する、車上装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された車上装置であって、計算結果から得られた車輪の径と、設定値とを比較して、比較結果により警告を発する、車上装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された車上装置であって、計算結果から得られた車輪の径と、設定値とを比較して、規定値内にあれば、計算結果から得られた車輪の径を、設定値とする、車上装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−104679(P2013−104679A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246526(P2011−246526)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】