説明

車両、車両の発進制御方法、および運転者記録装置

【課題】過去の運転者を特定することができる車両、および車両の発進制御方法の提供を目的とする。また、車両に搭載しておくことにより、当該車両において過去の運転者を特定することができるようにする運転者記録装置の提供を目的とする。
【解決手段】運転者が所持する個人特定データ記録体1から個人特定データをデータ取得するデータ取得部2と、
データ取得部2により取得された個人特定データの記録を条件に操作許可信号を出力するデータ記録判定部3と、
データ記録判定部3からの操作許可信号の入力を条件に運転者による車両の発進操作可能モードに遷移する発進操作部4とを有して車両を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両、車両の発進制御方法、および運転者記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の発進操作を制御するものとしては、従来、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、車両にはカード処理機が搭載されており、カード処理機により書き込みが行われるICカードにイグニッションキーの役割を兼用させ、ICカードによりエンジンを始動させる。また、上記車両には能動制御装置とセンサが搭載され、能動制御装置やセンサからの出力により運転者が危険な運転を行っていないかを判断し、危険な運転があった際にこれを上記ICカードに記録する。運転者毎にICカードを用意することで運転者を特定することができ、例えば、複数の営業用車を保有する事業所においては、車両の運行管理者により、個々の社員が安全運転を行っているかを確認することができるとしている。
【0003】
また、上記ICカードとしてICカード化した運転免許証を用い、運転免許証がカード処理機に挿入されない限り、イグニッションキーのみでは始動できないようにしたり、あるいは、運転免許証に免許が有効であるか否かの情報、例えば行政処分による免許停止期間の情報を保持させ、運転免許証が有効でない場合には車両がイグニッションキーのみでは始動できないようにしたり、さらには、運転免許証への情報の書き込みが不可能な場合に、危険な運転の情報を免許情報センタに送信したりすることもできるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-69434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例においては、車両の発進操作をするため、あるいは発進操作を可能にするための条件が、ICカードのカード処理機への挿入であることから、ICカードの所有者でさえあれば誰でも車両を発進させることができてしまう。データ記録の対象は危険な運転の情報に過ぎないために、危険な運転がなされなければデータ記録、あるいは免許情報センタへのデータ送信もなされないことから、したがって上記従来例は、過去の運転者を特定することができないという欠点がある。
【0006】
本発明は以上の欠点を解消すべくなされたものであって、過去の運転者を特定することができる車両、および車両の発進制御方法の提供を目的とする。また、本発明は、車両に搭載しておくことにより、当該車両において過去の運転者を特定することができるようにする運転者記録装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記目的は、
運転者が所持する個人特定データ記録体1から個人特定データをデータ取得するデータ取得部2と、
データ取得部2により取得された個人特定データの記録を条件に操作許可信号を出力するデータ記録判定部3と、
データ記録判定部3からの操作許可信号の入力を条件に運転者による車両の発進操作可能モードに遷移する発進操作部4とを有する車両を提供することにより達成される。
【0008】
図1に示すように、車両Aは、駆動装置Bと運転者記録装置Cとを有し、駆動装置Bの駆動部20の駆動により車輪21に動力を与えて走行する。上記駆動装置Bは、駆動部20の駆動を制御する駆動制御部22を有し、運転者による駆動部20の始動は、駆動制御部22が備える発進操作部4を介した運転者の始動操作によりなされる。
【0009】
本発明において、上記発進操作部4は発進操作可能モードを有し、この発進操作可能モードにおいて運転者による駆動部20の始動操作を可能にする。発進操作可能モードへのモード遷移(S-3)は、上述した運転者記録装置Cにより管理されており、この運転者記録装置Cは、データ記録判定部3とデータ取得部2とを有して構成される。データ記録判定部3は、個人特定データの記録(S-2)を条件に操作許可信号を出力し、上述した発進操作部4は、データ記録判定部3からの操作許可信号の入力を条件に発信操作可能モードに遷移(S-3)する。データ記録判定部3により記録される個人特定データはデータ取得部2により運転者から取得され(S-1)、したがって運転者は、個人特定データのデータ取得部2による取得(S-1)を条件に発信操作部による駆動部20の始動操作が可能になる。
【0010】
したがって本発明によれば、駆動部20の始動、これによる車両Aの発進は、運転者からの個人特定データの記録が条件になるために、かかる記録内容によって運転者を特定することができる。
【0011】
上述した駆動部20は例えばエンジンやギア、ブレーキなどにより、発進操作部4はイグニッションスイッチやギアレバー、ブレーキレバーあるいはブレーキペダルなどにより構成することが可能である。また、発進操作部4のモード移行は、例えば、車載コンピュータに対応するモードを設け、操作許可信号の入力を受けることにより、発進操作部4からの入力が伝達されるように構成することが可能である。
【0012】
また、上述したデータ取得部2による運転者からの個人特定データの取得は、個人特定データを記録した個人特定データ記録体1からのデータ取得により行うことが可能で、このため運転者は、個人特定データ記録体1を利用することにより駆動部20を始動操作することができる。個人特定データとしては、名前や住所などのほか、個人を特定可能なものであれば足り、例えばクレジットカードのカード番号等を使用することもできる。
【0013】
個人特定データ記録体1は、個人特定データを記録したものであれば足り、適宜の記録媒体、データ記録可能な携帯電話、ICカードなど携帯性等を考慮して適宜のものを利用することができる。この場合において、運転免許証を使用した場合には、運転時の運転免許証の不携帯を防止することができる上に、この運転免許証として近年ICカード化されたものを用いることにより、偽変造が困難なために運転者の特定についての信頼性を高めることができる。この場合、データ取得部2は、ICカード化された運転免許証の記録データを読み取り可能なカードリーダとして構成することが可能である。
【0014】
また、データ記録判定部3による個人特定データの記録は、記録データの複数を蓄積できるようにして行うことにより、過去の運転者特定の利便性を高めることができる。この場合、日付や時刻の時計データを各個人特定データに対応付けて記録、蓄積することにより、履歴を管理することができる。
【0015】
さらに、上述したようにICカード化された運転免許証を個人特定データ記録体1として使用する場合、運転免許証の有効期限もチェックすることにより、無効な運転免許による運転を防ぐことができる。この場合、データ取得部2に、運転免許証からの取得データから個人特定データを抽出する個人特定データ抽出部7と、有効期限に関するデータを取得する有効期限データ抽出部8を設ければ、運転免許証から必要なデータを抽出して取得することができる。
【0016】
このように無効な運転免許の場合にも、個人特定データ抽出部7により抽出した個人特定データを個人特定データ記録部6により記録することで、車両Aへのアクセス履歴を網羅することができる。無効な運転免許による運転の防止は、操作許可信号の出力を禁止するほか、警告を発するのみ、さらには、単に運転履歴が記録されることによっても効果をあげることができる。この場合において、操作許可信号の出力を禁止するときには、運転免許の有効判定は、有効期限データ抽出部8による抽出データを上述した時計データと比較して有効を確認する免許有効判定部9を設けるとともに、この免許有効判定部9から運転免許の有効判定時に出力する免許有効信号の入力により上述した操作許可信号を出力する操作許可判定部10を設ければ足りる。
【0017】
また、本発明によれば、上述した目的は、
運転者の個人特定データを取得して該個人特定データを記録した後、
発進操作部4を運転者による車両の発進操作可能モードに遷移させる車両の発進制御方法を提供することにより達成される。
【0018】
さらに、上述した運転者記録装置Cは、
運転者による発進操作部4への発進操作により駆動部20を発進駆動させて発進する車両に搭載される運転者記録装置であって、
運転者が所持する個人特定データ記録体1から個人特定データをデータ取得するデータ取得部2と、
データ取得部2により取得された個人特定データの記録を条件に前記発信操作部に操作許可信号を出力し、該発信操作部を発進操作可能モードに遷移させて運転者による発進操作部4への発進操作により駆動部20を発進駆動可能にするデータ記録判定部3とを有して構成することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、過去の運転者を特定することができるために、車両を利用した犯罪の抑制や早期解決に寄与することができる。また、カーシェアリングにおいて共同利用される車両を良好に管理することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を示す図で、(a)は発明の概要を示すブロック図、(b)は発明の概要を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態に係るブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るフローチャートで、操作許可信号の出力に係るものである。
【図4】本発明の実施の形態に係るフローチャートで、(a)は駆動部の始動に係るもの、(b)は車両の発進に係るものである。
【図5】本発明の実施の形態に係るフローチャートで、(a)は駆動部の停止に係るもの、(b)は車両の停止に係るものである。
【図6】本発明の他の実施の形態を示す図で、(a)はブロック図、(b)は操作許可信号の出力に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図2に本発明の実施の形態に係るブロック図を示す。この実施の形態において、車両Aに搭載される運転者記録装置Cは、データ取得部2と、認証コード入力部23と、データ記録判定部3とを有する。データ取得部2はICカード化された運転免許証(個人特定データ記録体1)に記録されたデータを読み取り可能なICカードリーダであり、運転免許証1のICチップに記録された氏名、住所、免許証番号、有効期間の末日に関するデータ、およびそのほかのデータを読み取り可能に形成される。このデータ読み取り部は、全ての読み取りデータの中から氏名、住所、免許証番号に関するデータを個人特定データとして抽出する個人特定データ抽出部7と、有効期間の末日に関するデータを抽出する有効期限データ抽出部8とを有し、データ記録判定部3の後述するCPUに従って動作することにより個人特定データ、有効期限データを抽出して取得できるようにされる。データの抽出は、例えば、タグなどの各データの付加情報を利用して行ったり、あるいはイメージデータの領域指定による文字認識など記録フォーマットに応じて適宜に行うことが可能である。
【0022】
なお、上述したICカード化された運転免許証1は、データの読み取りを制限する暗証番号などが設定されていないものであるが、運転者からの暗証番号の入力を求めることによって暗証番号等が設定された運転免許証1からデータの読み取りをすることも可能である。
【0023】
認証コード入力部23は、運転者による後述する認証コードの入力を行うためのものであり、例えば認証コードを数字の組み合わせにより設定する場合には数字を入力するための複数の数字キーを備えたテンキーなどにより構成される。
【0024】
データ記録判定部3は、所定のプログラムに従って動作するCPU、メモリを備えたコンピュータであり、個人特定データ記録部6と、免許有効判定部9と、認証コード判定部24と、操作許可判定部10とを有する。
【0025】
個人特定データ記録部6は、上記データ取得部2により取得されて個人特定データ抽出部7により抽出された個人特定データを記憶するもので、この個人特定データを構成する氏名、住所、免許証番号に関する3データは同一個人の個人特定データとして相互に関連づけられて格納される。また、個人特定データ記録部6は、日付や時刻に関する時計データを保持する時計部5を備え、個人特定データの記憶時における日付や時刻を表す時計データを個人特定データに一対一対応させて格納する。個人特定データの記憶容量は以上の個人特定データや時計データを多数記憶可能な程度の大きさにされており、個人特定データ等が多数蓄積できるようにされる。
【0026】
免許有効判定部9は、上述したデータ取得部2により取得されて有効期限データ抽出部8により抽出された有効期限データと、上述した時計部25に保持される日付データとを比較することにより運転免許の有効を判定するもので、例えば、年、月、日の順に個別に数値の比較を行い、有効期限データが時計データよりも大きいことが確認されることにより免許有効信号を出力する。反対に例えば有効期限データの年に関する数値が時計データの年に関する数値よりも小さいことが判定された場合などには、免許無効信号を出力する。
【0027】
認証コード判定部24は、上述した認証コード入力部23から入力された認証コードの認証を行うもので、正規の認証コードを記憶する認証コード記憶部26を備えて構成される。認証は、認証コード入力部23から入力された認証コードと、認証コード記憶部26に記憶された認証コードとを比較して行い、両認証コードの一致を確認したときに認証成立信号を出力する。反対に両認証コードが一致しないときには認証不成立信号を出力する。
【0028】
操作許可判定部10は、上述した個人特定データ記録部6による個人特定データの記録の完成、免許有効判定部9からの免許有効信号の入力、および認証コード判定部24からの認証成立信号の入力を条件に操作許可信号を出力する。この操作許可信号は車両Aに設けられる駆動制御部22に出力される。なお、個人特定データ記録部6による記録の完成は、個人特定データ記録部6の記録動作を検知するなどして行うことが可能である。
【0029】
操作許可信号が入力される駆動制御部22は、車両Aの駆動部20の駆動を制御するもので、発進操作部4を備え、この発進操作部4への運転者の操作により駆動部20を動作させるコンピュータ等により構成される。具体的には、駆動制御部22は、発進操作部4としてのイグニッションスイッチの操作により該イグニッションスイッチ4から電気信号を出力させ、この電気信号をエンジンとしての駆動部20に入力させてエンジン20を始動させる。
【0030】
駆動制御部22に操作許可信号が入力されるこの実施の形態において、発進操作部4は、初期状態において運転者による操作ができない状態、例えば上述した電気信号を送信するための電気回線をリレー等により電気的に遮断された状態にされる。運転者による操作ができない状態は、上述した操作許可信号が入力されることによりリレーが切り替えられるなどして解除可能であり、操作ができない状態が解除されて発進操作可能モードに遷移した発進操作部4は、運転者による操作を受けることにより電気信号を送信してエンジン20を始動させることができるようになる。また、以上の駆動制御部22は、エンジン20の回転数や車両Aの速度を検知し、車両Aの仕様に応じてこれをインストルメントパネルに表示させたり、ギアチェンジをも行わせるもので、この駆動制御部22の保持するエンジン20の回転数や車両Aの速度の変化を記録するために、上述したデータ記録判定部3には、駆動監視部27とドライブレコーダ28とが設けられる。
【0031】
駆動監視部27は、上述しエンジン20の回転数、車両Aの速度に関するデータを駆動制御部22から取得するもので、操作許可解除部29を有し、該操作許可解除部29から操作許可解除信号を出力して発進操作部4に入力させることにより、発進操作部4を操作許可信号が入力される前の状態に復帰させる。操作許可解除部29からの操作許可解除信号の出力は、エンジン20の回転が検知されなくなったり、車両Aの速度が検知されない状態が所定時間継続したときになされる。
【0032】
ドライブレコーダ28は、駆動監視部27が取得したエンジン20の回転数、車両Aの速度を記録するもので、駆動監視部27からエンジン20の回転数等に関するデータを取得して蓄積記録する。この記録に際しては、上述した時計部25の時計データを関連づけて行うことも望ましい。また、ドライブレコーダ28には後述するナビゲーション装置30から出力される運行経路データもあわせて記録される。
【0033】
また車両Aには、以上に加えてナビゲーション装置30と通知部31が設けられる。ナビゲーション装置30は市販されるものであり、運転中に運行経路をナビゲーションするほか、この実施の形態においては上述したドライブレコーダ28に運行経路を出力する。
【0034】
通知部31は、運転者に音声や表示によりエラー通知を行うもので、この通知は上述した免許無効信号、認証不成立信号が入力されることによりなされる。また、後述するように、認証コードの入力が所定時間なされない場合にも通知を行う。
【0035】
以上の車両Aにおけるエンジン20の始動について、図3を参照しつつ以下に説明する。エンジン20の始動に際し、先ず、車両Aに搭乗した運転者は、ICカード化した運転免許証1に記録されたデータをカードリーダに読み込ませる。読み込み操作はICカードやカードリーダの規格に応じてカードリーダにICカードを接触させたり、あるいはカードリーダの近傍にICカードを移動させて行うことができる。ICカードの読み込みによりデータ取得部2がデータを取得する(S1-1)と、個人特定データ抽出部7により個人特定データの抽出、有効期限データ抽出部8による有効期限データの抽出がなされ、抽出が完了して読み込みデータに個人特定データや有効期限データが含まれることが確認される(S1-2)と、次いで、抽出された個人特定データは個人特定データ記録部6に記録され(S-2)、有効期限データは免許有効判定部9による運転免許が有効判定に利用される。
【0036】
有効期限データによって免許有効判定部9により免許の有効判定がなされる(S3-1)と、免許有効信号が出力され、次に、認証コード入力部23による認証コードの入力が受け付けられる(S3-2)。認証コードを入力するための時間として設定される所定時間が経過する前(S3-3)に認証コードの入力がなされる(S3-4)と、認証コード判定部24により認証処理がなされる(S3-5)。認証コード判定部24により認証がなされると、認証成立信号が出力される。なお、上述した認証コードの入力が可能になったことを運転者に知らせるために、認証コードの入力が可能になったタイミングでその旨を表示等して通知することが望ましい。
【0037】
上述した個人特定データ記録部6による記録処理がなされ、また、免許有効信号、認証成立信号が出力されると、操作許可判定部10は操作許可信号を出力する(S3-6)。この操作許可信号の入力を受けた発進操作部4は、発進操作可能モードに遷移する(S3-7)。したがってこの後、運転者が発進操作部4を操作することにより、発進操作部4から駆動部20を駆動操作し、車両Aを発進させることができる。
【0038】
また、上述した個人特定データ抽出部7による個人特定データの抽出や、有効期限データ抽出部8による有効期限データの抽出ができない場合、すなわちICカードからの読み込みデータに個人特定データや有効期限データが含まれないことが確認されたり、免許判定部により運転免許の無効が確認されて免許無効信号が出力されたり、認証コードの入力がその受け付け開始から所定時間なされなかったり、あるいは認証判定部により認証がされずに認証不成立信号が出力されたときには、通知部31により発進操作が不能になった旨を運転者に通知する(S-4)。
【0039】
上述したように発進操作部4が発進操作可能モードに遷移した後は、図4(a)に示すように、モード遷移(S3-7)後、発進操作部4への発進操作のために設定した所定時間内(S-5)に発進操作部4の発進操作がなされる(S-6)と、駆動部20が始動し、このときの始動時刻がドライブレコーダ28に記録される'(S-7)。この場合において、上記所定時間内に発進操作部4が操作なされないときには、運転者に運転の意思がなくなったと考えられるため、発進操作部4の発進操作可能モードが解除される(S-8)。
【0040】
また、駆動部20が駆動した後も同様で、図4(b)に示すように、駆動部20が駆動した(S-9)後は、車両Aの発進操作のために設定した所定時間内(S-10)に車両Aの発進をすることができ、車両Aが発進する(S-11)と、このときの発進時刻がドライブレコーダ28に記録される(S-12)。この場合において、上記所定時間内に車両Aが発進されないときには、運転者に運転の意思がなくなったと考えられるため、発進操作部4の発進操作可能モードが解除される(S-13)。なお、発進操作部4はエンジン20の始動を規制するものであるため、この場合、発進操作可能モードの解除に伴ってエンジン20も停止される。なお、ギアを発進操作部4として構成した場合には、このようにエンジン20を停止することなく、発進操作可能モードの解除のみを行えば足りる。
【0041】
さらに、駆動部20が駆動した(S-9)後、運転者の操作によって駆動部20の駆動が停止された(S-14)場合には、図5(a)に示すように、運転者による運転の意思がなくなったことが明らかであるため、駆動停止時刻がドライブレコーダ28に記録され、また、発進操作部4の発進操作可能モードが解除される(S-15)。
【0042】
同様に、車両Aが走行した(S-16)後、車両Aが停止し(S-17)、一時的と思われる所定時間を超えて(S-18)その停止状態が継続、すなわち車両の始動が検知されない(S-19)場合には、運転者による運転の意思が実質的になくなっていると考えられるため、停車時刻がドライブレコーダ28に記録され、また、発進操作部4の発進操作可能モードが解除される(S-20)。
【0043】
したがってこの実施の形態においては、駆動部20の駆動操作のために、車両の発進時に運転者が個人特定データ記録部6により強制的に記録されることになり、個人特定データ記録部6の記録内容を確認することで、過去の運転者を特定することができる。なお、個人特定データ記録部6は、記録データを暗号化するなど悪意の者によるデータ取得を適宜困難にすることが望ましく、また、強固に保護するなどして破壊や焼失をしにくくすることが望ましい。
【0044】
図6に本発明の他の実施の形態を示す。なお、この実施の形態において上述した実施の形態と同じ構成要素は図中に同一の符号を付して説明を省略する。この実施の形態において、データ記録判定部3は免許有効判定部9や認証コード判定部24を有さず、発進操作部4の発進操作可能モードへの遷移は、個人特定データの記録のみが条件にされる。したがってこの実施の形態において、駆動部20の始動、車両Aの発進は、個人特定データの記録と引き換えによって実質的に行うことができ、運転者記録装置Cを搭載していない車両Aと比べて、個人特定データの取得、記録のみが付加的に行われるといえる。言い換えれば、駆動部20の始動の条件が上述した認証コードなどのような認証ではなく、単なる個人特定データの記録のみにされる。したがってこの実施の形態においては、発進操作部4操作時の所要時間、手間をより短くすることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 個人特定データ記録体
2 データ取得部
3 データ記録判定部
4 発進操作部
5 時計部
6 個人特定データ記録部
7 個人特定データ抽出部
8 有効期限データ抽出部
9 免許有効判定部
10 操作許可判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が所持する個人特定データ記録体から個人特定データをデータ取得するデータ取得部と、
データ取得部により取得された個人特定データの記録を条件に操作許可信号を出力するデータ記録判定部と、
データ記録判定部からの操作許可信号の入力を条件に運転者による車両の発進操作可能モードに遷移する発進操作部とを有する車両。
【請求項2】
前記データ記録判定部は、
時計データを保持する時計部を備え、データ取得部により取得された個人特定データを蓄積記録するとともに、時計部を参照して各個人特定データ記録時の時計データを各個人特定データに対応付けて記録する個人特定データ記録部を有する請求項1記載の車両。
【請求項3】
前記データ取得部は、ICカードからなる運転免許証に記録されたデータを読み取り可能なカードリーダであり、運転者が所持する運転免許証から個人特定データをデータ取得する請求項2記載の車両。
【請求項4】
前記データ取得部は、運転免許証の記録データから氏名、住所、および免許証番号に関するデータを抽出する個人特定データ抽出部と、有効期間の末日に関するデータを抽出する有効期限データ抽出部とを有し、
前記データ記録判定部は、個人特定データ抽出部により抽出した個人特定データを前記個人特定データ記録部により記録するとともに、
有効期限データ抽出部により抽出した有効期間の末日に関するデータと前記時計部により保持される時計データとを比較して運転免許の有効が確認されることにより免許有効信号を出力する免許有効判定部と、
該免許有効判定部からの免許有効信号の入力を条件に操作許可信号を出力する操作許可判定部とを有する請求項3記載の車両。
【請求項5】
運転者の個人特定データを取得して該個人特定データを記録した後、
発進操作部を運転者による車両の発進操作可能モードに遷移させる車両の発進制御方法。
【請求項6】
運転者による発進操作部への発進操作により駆動部を発進駆動させて発進する車両に搭載される運転者記録装置であって、
運転者が所持する個人特定データ記録体から個人特定データをデータ取得するデータ取得部と、
データ取得部により取得された個人特定データの記録を条件に前記発信操作部に操作許可信号を出力し、該発信操作部を発進操作可能モードに遷移させて運転者による発進操作部への発進操作により駆動部を発進駆動可能にするデータ記録判定部とを有する運転者記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−241287(P2010−241287A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92887(P2009−92887)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000103703)オグラ宝石精機工業株式会社 (5)
【出願人】(508134371)
【出願人】(508134382)