説明

車両のシフトディテント装置

【課題】シフトチェンジに応じた最適な操作力で滑らかにシフトチェンジを行う。
【解決手段】シフトレバー10の操作により軸方向に摺動自在で、少なくともニュートラル位置に対応して形成した第1の切り欠き部21と該第1の切り欠き部21と隣接して所定の変速段位置に対応して形成した第2の切り欠き部22、23とから成る切り欠き部20とを有するシフトロッド1と、シフトロッド1の切り欠き部20に向けて押圧されて切り欠き部20の形状に沿って切り欠き部20と当接されるボール5とを備えた車両のシフトディテント装置において、シフトロッド1の切り欠き部20の形状を第1の変化点P1からは小径な円形状の曲面を連続して形成し、第2の変化点P2からは大径な円形状の曲面を連続して形成し、第1の変化点P1からピーク荷重発生点P0までの距離L1を、第2の変化点Pからピーク荷重発生点P0までの距離L2よりも短く形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニュアルトランスミッション車両おいて、ドライバが円滑なシフトチェンジを行うことができる車両のシフトディテント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マニュアルトランスミッション車両のシフトディント装置においては、シフトチェンジの際にシフトレバーの操作により摺動自在で、少なくともニュートラル位置に対応して形成した第1の切り欠き部と該第1の切り欠き部と隣接して所定の変速段位置に対応して形成した第2の切り欠き部とから成る切り欠き部とを有するシフトロッドと、シフトロッドの切り欠き部に向けて押圧されて切り欠き部の形状に沿って切り欠き部と当接される押圧部材とを備えて構成されている。このようなシフトディテント装置として、例えば、実開平3−94464号公報(以下、特許文献1)では、スチール製のシフトロッドの外周に樹脂で成形された外径部と切り欠き部(チェック溝)を有し、該チェック溝とシフトロッドの外径部の接点をアール形状で滑らかに形成したシフトロッドを用いたシフトディテント装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−94464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような車両のシフトディテント装置では、ドライバがシフトレバーを操作してニュートラル位置から所定の変速段位置にシフトチェンジする際、或いは、所定の変速段位置からニュートラル位置にシフトチェンジする際には、ニュートラル位置の第1の切り欠き部と変速段位置の第2の切り欠き部との間の最も突出した位置でピーク荷重が発生するため、ドライバは、シフトチェンジの際に、このピーク荷重を感じながらシフト操作することになる。このような、シフトチェンジの際にドライバが感じる操作力を適切に設定することは重要であるが、特に、所定の変速段位置からニュートラル位置にシフトチェンジする際に、ドライバがシフト操作を重く感じるような場合には、シフトチェンジに過大な操作力が加えられ、シフトレバーは、ニュートラル位置に到達しても停止されずに、更に、反対側の変速段位置にシフトチェンジされてしまう虞がある。上述の特許文献1は、単に、チェック溝と外径部の接点を適切なアール形状でなめらかに形成するようにして、押圧部材(チェックボール)がチェック溝のコーナ部を乗り越えるとき、ピーク荷重が発生しないようにしてシフトフィーリングを向上させるものであり、ドライバのシフトチェンジの違いに応じた円滑なシフトフィーリングの向上を図るものではないという課題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ドライバがシフトチェンジに応じた最適な操作力で滑らかにシフトチェンジを行うことができる車両のシフトディテント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両のシフトディテント装置の一態様は、シフトチェンジの際にシフトレバーの操作により軸方向に摺動自在で、少なくともニュートラル位置に対応して形成した第1の切り欠き部と該第1の切り欠き部と隣接して所定の変速段位置に対応して形成した第2の切り欠き部とから成る切り欠き部とを有するシフトロッドと、上記シフトロッドの上記切り欠き部に向けて押圧されて上記切り欠き部の形状に沿って上記切り欠き部と当接される押圧部材とを備えた車両のシフトディテント装置において、上記シフトレバーを操作して上記ニュートラル位置から該シフトレバーの操作力のピーク荷重発生点を通過して上記所定の変速段位置に上記シフトロッドを移動させる際に、上記ピーク荷重発生点に向けて上昇する上記操作力の上昇の変化率が変化させられる第1の変化点から上記ピーク荷重発生点までの距離を、上記シフトレバーを操作して上記所定の変速段位置から上記ピーク荷重発生点を通過して上記ニュートラル位置に上記シフトロッドを移動させる際に、上記ピーク荷重発生点に向けて上昇する上記操作力の上昇の変化率が変化させられる第2の変化点から上記ピーク荷重発生点までの距離よりも短く形成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明による車両のシフトディテント装置によれば、ドライバがシフトチェンジに応じた最適な操作力で滑らかにシフトチェンジを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の一形態に係るシフトレバー近傍の斜視図である。
【図2】本発明の実施の一形態に係る車両のシフトディテント装置の要部拡大断面図である。
【図3】本発明の実施の一形態に係るシフトロッドの切り欠き部の形状を示す断面図である。
【図4】図3のA部拡大断面図である。
【図5】本発明の実施の一形態に係るシフトロッドの切り欠き部の形状の具体的な形状の説明図である。
【図6】本発明の実施の一形態に係るシフトチェンジした際の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1において、符号1は、シフトロッドを示し、このシフトロッド1は、トランスミッションケース2に軸方向に摺動自在に支承されている。
【0010】
シフトロッド1の中途部には、例えば、変速装置のスリーブ3等と係合するシフトフォーク4が突設されている。
【0011】
シフトロッド1の前端側には、3つの切り欠き部(中央の第1の切り欠き部21、第1の切り欠き部21の前方に隣接する一方の第2の切り欠き部22、第1の切り欠き部21の後方に隣接する他方の第2の切り欠き部23)から成る切り欠き部20が形成されており、この切り欠き部20に向けてトランスミッションケース2から付勢された押圧部材としてのボール5が押圧されて当接されている。
【0012】
また、シフトロッド1のシフトフォーク4の後方には、シフトレバー10の動きと連動するシフトアーム6が連結されている。
【0013】
シフトレバー10は、図2に示すように、フロアパネルの開口部11を挿通されて上端部が運転席の側方に突出され、下端部がシフトアーム6に接続されている。シフトレバー10とフロアパネルの開口部11との間は、ブーツ12等により遮蔽されている。
【0014】
本発明の実施の形態によるマニュアルトランスミッション車両においては、シフトレバー10のシフト位置がニュートラル位置の際には、ボール5は、切り欠き部20の第1の切り欠き部21内に係止される(図1の状態)。
【0015】
そして、図2において、最も左側のレーンをセレクトし、シフトレバー10をニュートラル位置から前方に倒してシフトチェンジした際には、シフトロッド1が後退されて、ボール5は、切り欠き部20の一方の第2の切り欠き部22内に係止され、1速が選択される。このレーンで、逆に、シフトレバー10をニュートラル位置から後方に倒してシフトチェンジした際には、シフトロッド1が前進されて、ボール5は、切り欠き部20の他方の第2の切り欠き部23内に係止され、2速が選択される。
【0016】
このレーンから右側に隣接するレーンをセレクトし、シフトレバー10をニュートラル位置から前方に倒してシフトチェンジした際には、シフトロッド1が後退されて、ボール5は、切り欠き部20の一方の第2の切り欠き部22内に係止され、3速が選択される。このレーンで、逆に、シフトレバー10をニュートラル位置から後方に倒してシフトチェンジした際には、シフトロッド1が前進されて、ボール5は、切り欠き部20の他方の第2の切り欠き部23内に係止され、4速が選択される。
【0017】
更に、このレーンから右側に隣接するレーンをセレクトし、シフトレバー10をニュートラル位置から前方に倒してシフトチェンジした際には、シフトロッド1が後退されて、ボール5は、切り欠き部20の一方の第2の切り欠き部22内に係止され、5速が選択される。このレーンで、逆に、シフトレバー10をニュートラル位置から後方に倒してシフトチェンジした際には、シフトロッド1が前進されて、ボール5は、切り欠き部20の他方の第2の切り欠き部23内に係止され、6速が選択される。
【0018】
更に、このレーンから右側に隣接するレーンをセレクトし、シフトレバー10をニュートラル位置から後方に倒してシフトチェンジした際には、後退が選択される。
【0019】
このように本発明の実施の形態の車両は、前進6速、後退1速のマニュアルトランスミッション車両に構成されている。
【0020】
次に、図3、図4において、シフトロッド1の切り欠き部20の形状について説明する。
【0021】
本実施の形態においては、ニュートラル位置に対応した第1の切り欠き部21に隣接して形成される一方の第2の切り欠き部22と他方の第2の切り欠き部23とは、第1の切り欠き部21の中央を中心として略線対象に形成されている。従って、一方の第2の切り欠き部22と他方の第2の切り欠き部23の同じ形状の部位には同じ符号を記して以下説明する。
【0022】
ドライバが、シフトレバー10を操作してニュートラル位置から所定の変速段位置にシフトロッド1を移動させる際、次第に高くなる斜面部21aによりボール5の押圧力に抗してシフトレバー10を操作することにより、操作力が大きくなる。そして、最も突出高さが高く、ボールを押し上げる力が最も高くなるピーク荷重発生点P0に到達すると、その後は、所定の変速段位置までは斜面部22aが次第に低くなるため、ボール5の押圧力にも支援されて、ドライバのシフトレバー10の操作力は小さくなる。
【0023】
逆に、ドライバが、シフトレバー10を操作して所定の変速段位置からニュートラル位置にシフトロッド1を移動させる際には、次第に高くなる斜面部22aによりボール5の押圧力に抗してシフトレバー10を操作することにより、操作力が大きくなる。そして、最も突出高さが高く、ボールを押し上げる力が最も高くなるピーク荷重発生点P0に到達すると、その後は、所定の変速段位置までは斜面部21aが次第に低くなるため、ボール5の押圧力にも支援されて、ドライバのシフトレバー10の操作力は小さくなる。尚、このシフトレバー10の操作力の変化の詳細については、後述する。
【0024】
このような、シフトチェンジの操作を行うにあたり、本実施の形態では、シフトレバー10を操作してニュートラル位置から所定の変速段位置にシフトロッド1を移動させる際、ピーク荷重発生点P0に向けて上昇する操作力の上昇の変化率が始めに低下させられる第1の変化点P1が設定されている。また、所定の変速段位置からニュートラル位置にシフトロッド1を移動させる際、ピーク荷重発生点P0に向けて上昇する操作力の上昇の変化率が始めに低下させられる第2の変化点P2が設定されている。
【0025】
そして、第1の変化点P1からは小径な円形状の曲面(半径Rs)を連続して形成し、第2の変化点P2からは大径な円形状の曲面(半径Rl:>Rs)を連続して形成して、第1の変化点P1からピーク荷重発生点P0までの距離L1を、第2の変化点Pからピーク荷重発生点P0までの距離L2よりも短く形成している。尚、図4中、点Pcは、第1の変化点P1からの小径な円形状の曲面と第2の変化点P2からの大径な円形状の曲面との接続点(接点)であり、従って、点P1から点Pcは、半径Rsの円形状の曲面で形成され、点P2から点Pcは、半径Rlの円形状の曲面で形成されている。本発明の実施の形態では、第1の変化点P1から接続点Pcまでを曲面21bとし、第2の変化点P2から接続点Pcまでを曲面22bとしており、ピーク荷重発生点P0は、曲面21b上に設定される形状となっている。
【0026】
次に、本実施の形態による、シフトロッド1の切り欠き部20の形状の、より具体的な形状を、図5により説明する。
【0027】
一方の第2の切り欠き部22から第1の切り欠き部21へと向かう斜面部22aと他方の第2の切り欠き部23から第1の切り欠き部21へと向かう斜面部22aとに、それぞれ第2の変化点P2、P2で接する予め設定した大径の半径Rlの円を形成する。
【0028】
そして、第1の切り欠き部21から一方の第2の切り欠き部22へと向かう斜面部21aと大径の半径Rlとが交わる突出部を予め設定した小径の半径Rsで形成し、小径の半径Rsの円と斜面部21aとが接する点を第1の変化点P1として設定し、小径の半径Rsの円と大径の半径Rlの円とが接する点を接続点Pcとして設定する。
【0029】
他方の第2の切り欠き部23も同様に、第1の切り欠き部21から他方の第2の切り欠き部23へと向かう斜面部21aと大径の半径Rlとが交わる突出部を予め設定した小径の半径Rsで形成し、小径の半径Rsの円と斜面部21aとが接する点を第1の変化点P1として設定し、小径の半径Rsの円と大径の半径Rlの円とが接する点を接続点Pcとして設定する。このようにシフトロッド1の切り欠き部20の形状を形成することにより、一方の第2の切り欠き部22も他方の第2の切り欠き部23も共に、第1の変化点P1からは小径な円形状の曲面(半径Rs)を連続して形成し、第2の変化点P2からは大径な円形状の曲面(半径Rl)を連続して形成して、第1の変化点P1からピーク荷重発生点P0までの距離L1を、第2の変化点Pからピーク荷重発生点P0までの距離L2よりも短く形成するのである。
【0030】
次に、本発明の実施の形態の作用について、図6を基に説明する。
先ず、ニュートラル位置から1速にシフトチェンジする場合には、シフトレバー10をニュートラル位置から前方に倒してシフトロッド1を後退させていく。すると、次第に高くなる斜面部21aにより、第1の切り欠き部21に押圧されていたボール5の押圧力に抗してシフトレバー10を操作することにより、操作力が大きくなる。そして、第1の変化点P1からは曲面21bに沿って、操作力の上昇の割合が弱くなり、そのまま、最も突出高さが高く、ボールを押し上げる力が最も高くなるピーク荷重発生点P0に到達する。このピーク荷重発生点P0からは、1速までは、曲面21b、曲面22b、及び、斜面部22aが次第に低くなるため、ボール5の押圧力にも支援されて、ドライバのシフトレバー10の操作力は小さくなり、ボール5は一方の第2切り欠き部22に到達されてスムーズに1速へとシフトチェンジが行われる。
【0031】
次いで、1速からニュートラル位置にシフトチェンジする場合には、シフトレバー10を1速から後方に戻してシフトロッド1を前進させていく。すると、次第に高くなる斜面部22aにより、一方の第2の切り欠き部22に押圧されていたボール5の押圧力に抗してシフトレバー10を操作することにより、操作力が大きくなる。そして、第2の変化点P1からは曲面22bに沿って、操作力の上昇の割合が弱くなり、接続点Pcを通過し、曲面21bに沿って、最も突出高さが高く、ボールを押し上げる力が最も高くなるピーク荷重発生点P0に到達する。このピーク荷重発生点P0からは、ニュートラル位置までは、曲面21b、斜面部21aが次第に低くなるため、ボール5の押圧力にも支援されて、ドライバのシフトレバー10の操作力は小さくなり、ボール5は第1の切り欠き部21に到達されてスムーズにニュートラル位置へとシフトチェンジが行われる。
【0032】
次に、ニュートラル位置から2速にシフトチェンジする場合には、シフトレバー10をニュートラル位置から後方に倒してシフトロッド1を前進させていく。すると、次第に高くなる斜面部21aにより、第1の切り欠き部21に押圧されていたボール5の押圧力に抗してシフトレバー10を操作することにより、操作力が大きくなる。そして、第1の変化点P1からは曲面21bに沿って、操作力の上昇の割合が弱くなり、そのまま、最も突出高さが高く、ボールを押し上げる力が最も高くなるピーク荷重発生点P0に到達する。このピーク荷重発生点P0からは、2速までは、曲面21b、曲面22b、及び、斜面部22aが次第に低くなるため、ボール5の押圧力にも支援されて、ドライバのシフトレバー10の操作力は小さくなり、ボール5は他方の第2切り欠き部22に到達されてスムーズに2速へとシフトチェンジが行われる。
【0033】
次いで、2速からニュートラル位置にシフトチェンジする場合には、シフトレバー10を2速から前方に戻してシフトロッド1を後退させていく。すると、次第に高くなる斜面部22aにより、他方の第2の切り欠き部23に押圧されていたボール5の押圧力に抗してシフトレバー10を操作することにより、操作力が大きくなる。そして、第2の変化点P1からは曲面22bに沿って、操作力の上昇の割合が弱くなり、接続点Pcを通過し、曲面21bに沿って、最も突出高さが高く、ボールを押し上げる力が最も高くなるピーク荷重発生点P0に到達する。このピーク荷重発生点P0からは、ニュートラル位置までは、曲面21b、斜面部21aが次第に低くなるため、ボール5の押圧力にも支援されて、ドライバのシフトレバー10の操作力は小さくなり、ボール5は第1の切り欠き部21に到達されてスムーズにニュートラル位置へとシフトチェンジが行われる。
【0034】
他の変速段からニュートラル位置へのシフトチェンジ、或いは、ニュートラル位置から他の変速段へのシフトチェンジも同様に行われる。
【0035】
この際、本実施の形態では、シフトロッド1の切り欠き部20の形状を第1の変化点P1からは小径な円形状の曲面(半径Rs)を連続して形成し、第2の変化点P2からは大径な円形状の曲面(半径Rl)を連続して形成しているので、ピーク荷重を低く設定してピーク荷重の発生を滑らかなものとすることができる。
【0036】
また、第1の変化点P1からピーク荷重発生点P0までの距離L1を、第2の変化点Pからピーク荷重発生点P0までの距離L2よりも短く形成して、ピーク荷重発生点P0をニュートラル位置に近いところに形成するため、ニュートラル位置から所定の変速段位置にシフトチェンジする場合の方が、所定の変速段位置からニュートラル位置にシフトチェンジする場合よりもピーク荷重までの荷重の変化が大きくなるため、ピーク荷重を低めに設定しても、ドライバは、ニュートラル位置における適切なホールド感を維持することができる。
【0037】
そして、本実施の形態によれば、単に、ピーク荷重発生点P0の位置をニュートラル位置に近づけるのではなく、第1の変化点P1からピーク荷重発生点P0までの距離L1を、第2の変化点Pからピーク荷重発生点P0までの距離L2よりも短く形成しているので、所定の変速段位置からニュートラル位置にシフトチェンジする場合の方が、ニュートラル位置から所定の変速段位置にシフトチェンジする場合よりも早い位置で、シフトレバー10の操作力の低下が生じてピーク荷重までの荷重の変化が低く緩やかになるため、所定の変速段位置からシフトレバー10をニュートラル位置に戻す場合に、過大な操作力でシフトチェンジが行われることが無く、適切な操作力で所定の変速段からニュートラル位置へ戻すシフト操作が行われ、その後のセレクト等を含むシフト操作を連続してスムーズに行うことが可能となる。例えば、(5速)→(ニュートラル位置)→(4速)等のシフトダウン操作を行う場合、過大な操作力で(5速)から(ニュートラル位置)にシフトレバー10を戻した場合、(ニュートラル位置)でシフトレバー10を停止させることができずに、(6速)へと変速してしまう虞があった。本実施の形態によれば、過大な操作力でシフトチェンジが行われることが防止されるので、(5速)から(ニュートラル位置)にシフトレバー10を戻した場合に、この(ニュートラル位置)で適切にシフトレバー10を係止して隣接するレーンをセレクトして、(4速)へとスムーズにシフトダウン操作を行うことが可能となる。
【0038】
尚、本発明の実施の形態では、一方の第2の切り欠き部22と他方の第2の切り欠き部23とは、第1の切り欠き部21を挟んで略線対象に設ける例について説明したが、これらは略対象に設けるものでなくとも良い。
【0039】
また、本発明の実施の形態では、前進6速、後退1速のマニュアルミッション車両に適用した例を説明したが、これに限ることなく、例えば、前進5速、後退1速のマニュアルミッション車両等に対しても適用できることは云うまでもない。
【0040】
更に、本発明の実施の形態では、切り欠き部20の第1の変化点P1と第2の変化点P2との間の形状は、小径の半径Rsの円の曲面21bと大径の半径Rlの円の曲面22bとを接続点Pcで接続して形成するようにしているが、曲面21bと曲面22bとの間に他の形状の曲面や直線を設けて連続するようにしても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 シフトロッド
2 トランスミッションケース
3 スリーブ
4 シフトフォーク
5 ボール(押圧部材)
6 シフトアーム
10 シフトレバー
20 切り欠き部
21 第1の切り欠き部
21a 斜面部
21b 曲面
22 一方の第2の切り欠き部
22a 斜面部
22b 曲面
23 他方の第2の切り欠き部
P0 ピーク荷重発生点
P1 第1の変化点
P2 第2の変化点
Pc 接続点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトチェンジの際にシフトレバーの操作により軸方向に摺動自在で、少なくともニュートラル位置に対応して形成した第1の切り欠き部と該第1の切り欠き部と隣接して所定の変速段位置に対応して形成した第2の切り欠き部とから成る切り欠き部とを有するシフトロッドと、
上記シフトロッドの上記切り欠き部に向けて押圧されて上記切り欠き部の形状に沿って上記切り欠き部と当接される押圧部材とを備えた車両のシフトディテント装置において、
上記シフトレバーを操作して上記ニュートラル位置から該シフトレバーの操作力のピーク荷重発生点を通過して上記所定の変速段位置に上記シフトロッドを移動させる際に、上記ピーク荷重発生点に向けて上昇する上記操作力の上昇の変化率が始めに変化させられる第1の変化点から上記ピーク荷重発生点までの距離を、上記シフトレバーを操作して上記所定の変速段位置から上記ピーク荷重発生点を通過して上記ニュートラル位置に上記シフトロッドを移動させる際に、上記ピーク荷重発生点に向けて上昇する上記操作力の上昇の変化率が始めに変化させられる第2の変化点から上記ピーク荷重発生点までの距離よりも短く形成したことを特徴とする車両のシフトディテント装置。
【請求項2】
上記シフトロッドの切り欠き部の上記第1の変化点と上記第2の変化点の間の軸芯方向の断面形状は、上記第1の変化点から連続する小径の円の曲面と上記第2の変化点から連続する大径の円の曲面とを連続して形成することを特徴とする請求項1記載の車両のシフトディテント装置。
【請求項3】
上記第1の変化点は、上記ピーク荷重発生点に向けて上昇する上記操作力の上昇の変化率が低下させられる変化点であり、上記第2の変化点は、上記ピーク荷重発生点に向けて上昇する上記操作力の上昇の変化率が低下させられる変化点であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両のシフトディテント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113385(P2013−113385A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260687(P2011−260687)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】