説明

車両のミラーシステム

【課題】視線の移動回数が少なくしかも僅かな視線の移動によって助手席側の側方の下部の死角を視認することのできる車両のミラーシステムを提供する。
【解決手段】車両の助手席側の側方の下部の死角を映す車両のミラーシステム20であって、車室内に助手席側の三角窓13の前側位置に設けた前方ミラー21と、車室内に三角窓13の後側位置に設けるとともに、助手席側の前輪の側方の死角を映す後方ミラー30とを有し、前方ミラー21は、後方ミラー30が映した前輪の側方の死角の像をドライバーに向けて反射させる第1ミラー部21Aと、車両の助手席側の側方の死角を映す第2ミラー部21Bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の助手席側の側方の下部の死角を映すようにした車両のミラーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のミラーを用いて車両の助手席側の側方の下部の死角を映すようにした車両のミラー構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる車両のミラー構造は、助手席側の三角窓の窓枠に設けたトリムに複数のミラーを設け、このミラーによって助手席側の側方の下部の死角を映すようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−55316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような車両のミラー構造にあっては、三角窓の各辺の窓枠にそれぞれミラーを設け、助手席側の側方の下部の死角の全体を3つのミラーで映すようにしている。このため、ドライバーは3つのミラーを見る必要があり、三角窓は所定の大きさを有していることにより、一度で3つのミラーを同時に視認することはできない。
【0006】
このため、ドライバーは視線を3回移動させなければならず、また、三角窓は所定の大きさを有していることによりその視線の移動も大きなものになってしまうという問題があった。
【0007】
この発明の目的は、視線の移動回数が少なくしかも僅かな視線の移動によって助手席側の側方の下部の死角を視認することのできる車両のミラーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、車両の助手席側の側方の下部の死角を映す車両のミラーシステムであって、
車室内に助手席側の三角窓の前側位置に設けた前方ミラーと、
車室内に前記三角窓の後側位置に設けるとともに、助手席側の前輪の側方の死角を映す後方ミラーとを有し、
前記前方ミラーは、前記後方ミラーが映した前輪の側方の死角の像をドライバーに向けて反射させる第1ミラー部と、車両の助手席側の側方の死角を映す第2ミラー部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、視線の移動回数が少なく、しかも僅かな視線の移動によって助手席側の側方の下部の死角を視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明に係るミラーシステムを搭載した車両を示す外観図である。
【図2】ミラーシステムの構成を示した説明図である。
【図3】ミラーシステムの前方ミラーと後方ミラーとドライバーとの位置関係を示した説明図である。
【図4】第2実施例の前方ミラーの構成を示した分解斜視図である。
【図5】第2実施例のミラーシステムの構成を示した説明図である。
【図6】第3実施例のミラーシステムの構成を示した説明図である。
【図7】(A)は第1ミラー部が映す領域と車両との位置関係を表示する表示部を示し、(B)は第2ミラー部が映す領域と車両との位置関係を表示する表示部を示す。
【図8】第4実施例のミラーシステムの構成を示した説明図である。
【図9】図8に示すミラーシステムの前方ミラーの構成を示した説明図である。
【図10】複合ミラーを示した説明図である。
【図11】第4実施例の他の例のミラーシステムの構成を示した説明図である。
【図12】車両の側方に仮想のポールを配置した説明図である。
【図13】前方ミラーに映される図12の仮想のポールの像を示した説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明に係る車両のミラーシステムの実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0012】
[第1実施例]
図1はこの発明に係るミラーシステムの実施例を搭載した車両10を示す。この車両10は、フロントピラー11と、このフロントピラー11から延設されたサブピラー12と、このサブピラー12とフロントピラー11とで区画された三角窓13とを有している。サブピラー12には、外側にドアミラー14が装着されている。
【0013】
車両10の室内には、図2に示すように、助手席側の三角窓13の近傍にミラーシステム20が設けられている。
【0014】
ミラーシステム20は、前方ミラー21と後方ミラー30とを有している。前方ミラー21はフロントピラー11またはダッシュボード16に取り付けられ、後方ミラー30はサブピラー12またはダッシュボード16に取り付けられている。
【0015】
前方ミラー21は、図3に示すように、後方ミラー30が映し出した像を反射させる第1ミラー部21Aと、車両10の助手席側の側方の死角となっている領域Bを映す第2ミラー部21Bとを有している。
【0016】
第1,第2ミラー部21A,21Bは凸面鏡となっており、第1ミラー部21Aの曲率半径は第2ミラー部21Bの曲率半径より小さく設定されている。なお、第2ミラー部21Bやその第1,第2ミラー部21A,21Bのどちらも平面鏡であってもよい。
【0017】
後方ミラー30は、車両10の助手席側の前輪17の側方の死角となっている領域Aを映すものであり、平面鏡で構成されている。そして、前方ミラー21と後方ミラー30とで車両10の助手席側の側方の下部の死角の全領域を映すようになっている。
【0018】
図3に示すように、車両10の助手席側の前輪17の側方の領域Aが後方ミラー30によって映され、この映された領域Aの像が前方ミラー21の第1ミラー部21Aによって運転席へ向けて反射される。このため、ドライバーは、助手席側の前輪17の側方の死角となっている領域Aを視認することができることになる。
【0019】
すなわち、ドライバーは図3に示す位置P(ドライバーの眼の位置)から前方ミラー21の第1ミラー部21Aと後方ミラー30とを介して死角となる領域Aを視認することができることになる。
【0020】
また、車両10の助手席側の側方の領域Bは、前方ミラー21の第2ミラー部21Bによって映され、ドライバーは前方ミラー21の第2ミラー部21Bによって車両10の助手席側の側方の死角となっている領域Bを視認することができることになる。
【0021】
ドライバーは、視線Q1から視線Q2へあるいは視線Q2から視線Q1へ移動させれば、領域Aから領域Bあるいは領域Bから領域Aを視認することができ、前方ミラー21の第1,第2ミラー部21A,21Bの中心間距離は短いので、その視線移動は僅かなものとなる。つまり、僅かな視線移動で領域A,Bを視認することができる。しかも、視線Q1と視線Q2とのなす角度θは小さいので、同時に領域A,Bを視認することが可能となり、運転中に1回の視線移動で死角である領域A,Bの確認を行うことができる。
【0022】
また、前方ミラー21および後方ミラー30を車室内に設けたものであるから、ドライバーから前方ミラー21および後方ミラー30までの距離が近く、このため、前方ミラー21の第1,第2ミラー部21A,21Bに映される像は見易いものとなる。さらに、前方ミラー21の第1ミラー部21Aに映る像は、後方ミラー30で反射された像であることにより正像となっており、このため見易いものとなる。
[第2実施例]
図4は、第2実施例のミラーシステム120(図5参照)の前方ミラー121の構成を示す。ミラーシステム120は、図5に示すように、前方ミラー121と後方ミラー30とを有する。
【0023】
前方ミラー121は、第1実施例と同様に後方ミラー30が映し出した像を反射させる第1ミラー部121Aと、領域Bを映す第2ミラー部121Bとを有している。第1,第2ミラー部121A,121Bは凸面鏡で構成され、第1ミラー部121Aの曲率半径は大きく例えば2000mm以上に設定され、第2ミラー部121Bの曲率半径は小さく例えば100〜200mmに設定されている。
【0024】
そして、第1ミラー部121Aと第2ミラー部121Bとの間に段部122が形成され、この段部122によって第1ミラー部121Aが第2ミラー部121Bより車両10の後方側へ所定距離だけ突出している。
【0025】
前方ミラー121は、ブラケット130の当接板131,132に両面テープ140,141を介して接着される。当接板131と当接板132は断面コ字状の連結部133により連結され、当接板132は当接板131より車両10の後方側へ所定距離だけ突出している。当接板131,132の裏面にはネジボス131B,132Bが形成されている。
【0026】
一方、フロントピラー11の下部に凹部18が形成され、この凹部18の奥壁部18Aにネジ穴18a,18bが形成されている。
【0027】
そして、フロントピラー11の凹部18にブラケット130が挿入され、ブラケット130のネジボス131B,132Bに奥壁部18Aのネジ穴18a,18bを介してネジNが螺合されることにより、ブラケット130がその凹部18に固定される。前方ミラー121は、凹部18の開口を塞ぐように配置される。
【0028】
この第2実施例によれば、図5に示すように、領域B(図1)を映す第2ミラー部121Bの段部122の近傍の範囲Sには領域Aの一部が映り込むが、この範囲Sに映る領域Aの一部の像は段部122によって遮光されるので、ドライバーは第2ミラー部121Bで映す領域Bのみを視認することができる。この結果、第2ミラー部121Bに映される像は見易くなり、第2ミラー部121Bに映された像の一部が後方ミラー30の像が映り込んだものかどうかを判断する必要がなく、煩わしさがないものとなる。また、段部122を設けたことにより、第1ミラー部121Aと第2ミラー部121Bとの間にその煩わしさをなくすためのマスクやスペーサなどを設けなくてよいことになる。
【0029】
また、第2実施例によれば、ブラケット130をフロントピラー11の凹部18に挿入したことにより、前方ミラー121を設けるための必要なスペースを低減することができる。また、前方ミラー121は、第1ミラー部121Aと第2ミラー部121Bとを一体にした1つの部材となっていることにより、フロントピラー11への組み付け工数およびコストを削減することができる。
[第3実施例]
図6は第3実施例のミラーシステム220を示す。このミラーシステム220は、前方ミラー221と後方ミラー30とを有する。
【0030】
前方ミラー221は、後方ミラー30が映した像を反射させる第1ミラー部221Aと車両10の助手席側の側方の領域B(図1参照)を映す第2ミラー部221Bとを有している。この第1ミラー部221Aと第2ミラー部221Bとは左右方向に所定距離隔ててフレーム223に取り付けられている。第1ミラー部221Aおよび第2ミラー部221Bの右側下部には、表示部224A,224Bが設けられている。
【0031】
表示部224Aには、図7(A)に示すように、車両10を示す車両マークMjと第1ミラー部221Aが映す領域A位置を示すマークMaとが車両10と領域Aの位置関係に対応させて付されている。同様に、表示部224Bには、図7(B)に示すように、車両マークMjと領域B位置を示すマークMbとが車両10と領域Aの位置関係に対応させて付されている。
【0032】
この第3実施例では、第1ミラー部221Aおよび第2ミラー部221Bに映される像が車両10のどの位置かが一目で分かることになり、このため、回避対象物がある位置を瞬時に確認することができ、すぐに回避行動に移せることになる。また、回避対象物の位置認識の間違いを防止することができる。
[第4実施例]
図8は第4実施例のミラーシステム320を示す。このミラーシステム320は、前方ミラー321と後方ミラー30とを有する。
【0033】
前方ミラー321は、図9に示すように、後方ミラー30が映した像を反射させる第1ミラー部321Aと領域B(図1参照)を映す第2ミラー部321Bとを有し、この第1ミラー部321Aと第2ミラー部321Bとの間に段部122を設け、第1ミラー部321Aを例えば曲率半径500mm以上の凹面鏡にしたものである。
【0034】
第4実施例によれば、第1ミラー部321Aを凹面鏡にしたので後方ミラー30を小さくすることができ、このため、ドライバーの直接の視界を妨げてしまうことを防止することができる。
【0035】
また、第1ミラー部321Aが凹面鏡であることにより、第1ミラー部321Aに映し出される像は、第1ミラー部321Aの右端部側が車両の前方側となり、その左端部側が車両の後方となるように映し出され、第2ミラー部321Bに映し出される像の向きとが同じになり、第1ミラー部321Aおよび第2ミラー部321Bに映し出される像は見易いものとなる。
【0036】
第1ミラー部321Aが平面鏡あるいは凸面鏡の場合、第2ミラー部321Bを図10に示すように複合凹面鏡421B(左右方向が凹面鏡で上下方向が凸面鏡)にすれば、この複合凹面鏡である第2ミラー部421Bの右端部が車両の前方側となり、その左端部側が車両の後方側となる像が映し出され、第1ミラー部321Aに映し出される像の向きとが同一となり、第1ミラー部321Aおよび第2ミラー部421Bに映し出される像は見易いものとなる。
【0037】
すなわち、図11に示すように、前方ミラー421の第1ミラー部421Aを平面鏡に、第2ミラー部421Bを複合ミラーとし、第2ミラー部421Bをドライバー側に傾けてあることにより、図12に示す車両10の側方に沿って仮想のポールK1〜K6をこの順序で車両10の前側から後へ立てた場合、前方ミラー421の第1,第2ミラー部421A,421Bには、図13に示すようにポール像K1′〜K6′がこの順序で右から左側へ映し出される。なお、第1,第2ミラー部421A,421Bに映し出されるEa,Ebは三角窓13の底辺の縁部像である。
【0038】
このように、前方ミラー421の第1,第2ミラー部421A,421Bには、車両10の側方の前側から後側にかけての死角の領域が連続して映し出されることになり、ドライバーにとってその死角が大変見易いものとなる。なお、図11に示す420はミラーシステム、422は段部である。
【0039】
この発明は、上記実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0040】
10 車両
13 三角窓
20 ミラーシステム
21 前方ミラー
21A 第1ミラー部
21B 第2ミラー部
30 後方ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の助手席側の側方の下部の死角を映す車両のミラーシステムであって、
車室内に助手席側の三角窓の前側位置に設けた前方ミラーと、
車室内に前記三角窓の後側位置に設けるとともに、助手席側の前輪の側方の死角を映す後方ミラーとを有し、
前記前方ミラーは、前記後方ミラーが映した前輪の側方の死角の像をドライバーに向けて反射させる第1ミラー部と、車両の助手席側の側方の死角を映す第2ミラー部とを有することを特徴とする車両のミラーシステム。
【請求項2】
前記第1,第2ミラー部のそれぞれの隣接位置に、第1,第2ミラーが映し出す死角の領域位置を示すマークを付すことを特徴とする請求項1に記載の車両のミラーシステム。
【請求項3】
前記前方ミラーの第1ミラー部と第2ミラー部との間に段差を設け、第1ミラー部を第2ミラー部に対して前方へ突出させるとともに、第1ミラー部と第2ミラー部とを一体にしたことを特徴とする請求項1に記載の車両のミラーシステム。
【請求項4】
前記前方ミラーをフロントピラーに取り付け、前記後方ミラーをフロントピラーに延設されたサブピラーに取り付けることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の車両のミラーシステム。
【請求項5】
前記第1ミラー部を凹面鏡で構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の車両のミラーシステム。
【請求項6】
前記第2ミラー部を複合凹面鏡で構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の車両のミラーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−35337(P2013−35337A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170877(P2011−170877)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)