説明

車両の巻込み防止装置

【課題】巻込み防止装置の空力特性、意匠性及び汎用性を向上するとともに、被接触物等に接触する可能性が高い上縁部分及び/又は下縁部分に衝撃緩衝手段又は衝撃吸収構造を配設可能にする。
【解決手段】巻込み防止装置は、上下の枠部材(11,12)及び前後の終端部材(13,14)とから構成される枠体にパネル部材(16)を組込んだ構造を有する。枠部材は、上下方向に開口したパネル保持用レール部分(21,22,25)と、車体側に開口したボルト接続用レール部分(24)とを有し、ボルト接続用レール部分は、ボルトヘッド(52)を保持する溝を形成し、ボルトの螺子部(51)が、ステー(6)に向かって突出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の巻込み防止装置に関するものであり、より詳細には、巻込み防止装置の空力特性、意匠性及び汎用性を向上するとともに、被接触物等に接触する可能性が高い上縁部分及び/又は下縁部分に衝撃緩衝手段又は衝撃吸収構造を配設することができる車両の巻込み防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
右左折時に歩行者、自転車等を巻込む事故を防止するために車体に装着される巻込み防止装置が知られている。巻込み防止装置は、ボティサイドに取付けられることから、サイドガードとも呼ばれている。
【0003】
巻込み防止装置は、上述のような巻込み事故の発生を未然に防止すべく、道路運送車両法の保安基準に基づき、1979年以降、大型トラック等に装着することが義務付けられており、巻込み防止装置のサイズ及び取付け位置等に関しては、比較的詳細な基準が定められている。
【0004】
一般に、巻込み防止装置は、金属管や、金属帯板等の棒状又は帯状部材を組合せた構造を有する。棒状又は帯状部材は、車体に支持されたステーに固定され、前後輪の間に水平に延びる。このような構造の巻込み防止装置は、車両の空力性能及び燃費を格別に考慮したものではないことから、走行時に比較的大きな空気抵抗を受け、これは、燃費向上を妨げる要因ともなる。また、このような構造の巻込み防止装置においては、車体の意匠性を向上する上でも限界が生じている。
【0005】
巻込み防止装置として、一体的な金属製又は合成樹脂製のパネルをステーに固定した構造のものが知られている。この構造の巻込み防止装置は、巻込み防止装置を一体的な面材で形成したものであり、空力特性及び意匠性等の面では上述の課題を克服し得るが、反面、面材及びステーの溶接部や、面材同士の溶接部等における発錆、大型面材の成形困難性、大型成形機の必要性、初期投資の高額化、面材の面剛性と関連した面材自重の高重量化、面材の組付け又は取付け構造の複雑化、車種間の非互換性等の問題が指摘されている。
【0006】
巻込み防止装置の空力特性、意匠性及び汎用性を向上すべく、金属押出型材及び板金加工部材の組立体として構成し、板金加工部材をステーにボルト接合した構造のものが、登録実用新案第3122053号公報(特許文献1)に記載されている。
【特許文献1】登録実用新案第3122053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
巻込み防止装置の上縁部分及び下縁部分は、被接触物等を巻込む状態が発生した際に被接触物等に初期的に衝合し易い部分であることから、衝撃緩衝手段又は衝撃吸収構造を備えることが望まれる。しかしながら、上記特許文献1に記載された巻込み防止装置は、板金加工部材をステーに固定するためのボルトのボルトヘッド部分が、上下の押出型材に埋入した構造を備えることから、被接触物等に接触する可能性が高い部分、即ち、上下の押出型材の部分に衝撃緩衝手段又は衝撃吸収構造を設けることが困難な構成を有する。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、巻込み防止装置の空力特性、意匠性及び汎用性を向上するとともに、被接触物等に接触する可能性が高い上縁部分及び/又は下縁部分に衝撃緩衝手段又は衝撃吸収構造を配設することができる車両の巻込み防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明は、車体の前後方向に延び且つ車体側の部材にボルト接続される上下の枠部材と、該枠部材の前端部同士及び後端部同士を相互連結する車体前側及び後側の終端部材と、前記枠部材及び終端部材によって形成される枠体に組込まれたパネル部材とから構成され、前記枠部材は、パネル保持用レール部分を有し、上側の枠部材のレール部分は、前記パネル部材の上縁部分が嵌挿される下面開口形の溝を形成し、下側の枠部材のレール部分は、前記パネル部材の上縁部分が嵌挿される頂部開口形の溝を形成する車両の巻込み防止装置において、
前記枠部材は、パネル保持用レール部分の裏側に配置されたボルト接続用レール部分を更に有し、ボルト接続用レール部分は、前記車体側部材に前記枠部材をボルト接続するためのボルトのヘッド部分を収容する溝を形成するとともに、車体の前後方向に延び且つ前記車体側部材に向かって開口し、前記ボルトのヘッド部分は、前記パネル部材の車体側において前記溝内に保持され、前記ボルトの螺子部分は、前記車体側部材に向かって突出することを特徴とする車両の巻込み防止装置を提供する。
【0010】
本発明の巻込み防止装置は、枠部材及び終端部材からなる枠体にパネル部材を組込んだ構造を有し、全体的に面材として構成される。従って、本発明の巻込み防止装置によれば、棒状又は帯状部材を組合せた構造を有する従来の巻込み防止装置と異なり、空力特性及び意匠性を向上することができる。
【0011】
本発明の巻込み防止装置は又、パネル保持用レール部分とボルト接続用レール部分とを有する。枠部材の裏面に配置されたボルト接続用レール部分は、ボルトヘッドを保持し、ボルトの螺子部は、ボルト接続用レール部分から車体側に突出し、車体に支持したステー等の車体側部材に接合される。このような構成によれば、接合用ボルトのボルトヘッドは、パネル部材の面外(車体側)に配置されるので、パネル部材の上端部及び下端部は、ボルトヘッドと干渉せず、従って、被接触物等に接触する可能性が高いパネル部材の上端部及び下端部に衝撃緩衝手段又は衝撃吸収構造を設け、被接触物等や、自車両に作用する衝撃を確実に吸収することが可能となる。
【0012】
また、上記構成の巻込み防止装置は、上下の枠部材、前後の終端部材及びパネル部材により構成されるので、部品点数や、構成部品の種類又は種別が比較的少なく、製造・組立の簡素化を図る上で有利である。
【0013】
更に、本発明の巻込み防止装置によれば、ボルト接続用レール部分の溝と、ボルトヘッドとの相対位置を車体前後方向に変更することにより、巻込み防止装置のボルト接続位置を適宜設定変更することができる。従って、本発明の巻込み防止装置は、枠部材及びパネルの長さ(車体前後方向の寸法)の調整又は設定変更により、異なる車種に適合する。かくして、本発明によれば、異なる車型又は車種に共通する構成の巻込み防止装置を設計し、車体部品を共通化することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の巻込み防止装置によれば、巻込み防止装置の空力特性、意匠性及び汎用性を向上するとともに、被接触物等に接触する可能性が高い上縁部分及び/又は下縁部分に衝撃緩衝手段又は衝撃吸収構造を配設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
好ましくは、ボルト接続用レール部分の溝幅は、溝内におけるボルトヘッド部分の回転を拘束するようにボルトヘッド部分の口径よりも所定寸法だけ大きな寸法に制限される。このような構成によれば、ボルトヘッド部分は、ボルト接続用レール部分に沿って車体の前後方向に移動するが、ナットの締結トルクによるボルトヘッドの回転は、ボルト接続用レール部分によって規制され又は禁止されるので、ナットをボルトの螺子部に比較的容易に締結することができる。
【0016】
更に好ましくは、上下の枠材は、アルミニウム合金等の軽量合金の金属成形品からなり、パネル部材の上縁裏面又は下縁裏面に当接する垂直プレート部分を有する。パネル保持用レール部分は、パネル部材の側において垂直プレートの上部又は下部に一体的に形成される。ボルト接続用レール部分は、パネル部材と反対の側において垂直プレートに一体的に形成され且つ車体側に開口したC形又はチャンネル形部分からなる。
【0017】
本発明の好適な実施形態によれば、枠部材は、ヒートプロテクタ接合用ボルトのヘッド部分を収容可能な溝を形成する第2レール部分を更に有し、第2レール部分は、ボルト接続用レール部分(第1レール部分)と平行に上記枠部材の裏面に配設される。このような構成によれば、ヒートプロテクタを巻込み防止装置の背後に配置し、パネル部材がエンジン排気から熱害を被るのを防止することができるので、比較的耐熱温度が低い緩衝材をパネル部材の素材として用いることが可能となる。所望により、ヒートプロテクタ接合用ボルトの首下寸法をボルト接続用ボルトの首下寸法よりも長く設定し、第2レール部分とヒートプロテクタとの間にスペーサを介挿しても良い。スペーサは、例えば、第2レール部分と同一の断面形状を有するレール部品からなる。必要に応じて、エンジン排気の出口位置の設計変更等の他の熱害防止手段を併せて採用しても良い。
【0018】
好ましくは、第2レール部分は、パネル部材と反対の側において前述の垂直プレートに一体的に形成されたC形又はチャンネル形部分からなり、第1レール部分を構成する前述のC形又はチャンネル形部分と平行に延びる。
【0019】
本発明の他の好適な実施形態において、上記枠部材には、パネル部材を取外し可能に支持するためのブラケットが固定される。好ましくは、取外し可能なパネル部材は、金属板の加工品からなり、車両の外側から工具等によって締付け可能又は解放可能な螺子、ボルト、ビス等の留め具によってブラケットに固定される。このような構成によれば、全パネル部材をレール部分から取外すことなく、巻込み防止装置の一部のパネル部材のみを取外し、巻込み防止装置を部分的に開放することができるので、車両下部の点検等を比較的容易に実施することができる。好ましくは、固定式パネル部材及び着脱式パネル部材には、同一又は同等の表面仕上げが施され、両パネル部材の表面位置は、実質的に同一(面一)に設定され、巻込み防止装置全体の意匠的統一又は整合が図られる。
【0020】
本発明の更に好適な実施形態によれば、耐熱性を要する巻込み防止装置のパネル部材として、耐熱パネル材が使用される。耐熱パネル材として、フェノールフォーム材、アルミニウム合金製ハニカム材等の耐熱性衝撃吸収材を好ましく使用し得る。本発明の巻込み防止装置は、パネル部材を上下の枠部材のレール部分に保持する構造を有するので、パネル部材を分割し、巻込み防止装置の各部に要求される性能に適した物性のパネル部材を適宜配置することができる。耐熱パネル材を部分的に使用した上記構成の巻込み防止装置によれば、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム等の比較的安価な衝撃吸収材をコア材として用いたパネル部材を全体的に使用し、耐熱性を要する部分のみに、フェノールフォーム材、アルミニウム合金製ハニカム材等の耐熱性衝撃吸収材をコア材として用いたパネル部材を使用し、巻込み防止装置全体としての製造コストを高額化することなく、耐熱性の要求を充足することができる。
【実施例1】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
図1は、本発明の巻込み防止装置を備えた大型車両の全体構成を示す概略側面図である。
【0022】
図1に示す車両1は、キャブオーバ型のキャブ2と、バン型のリアボディ(荷台)3とから構成される大型トラックである。前輪4と後輪5との間には、巻込み防止装置を構成するサイドガード10が配設される。複数のステー6が、車体フレームのサイドメンバ7に固定され、ステー6は、サイドガード10を支持する。
【0023】
図2は、サイドガード10の正面図である。
【0024】
サイドガード10は、上下の枠部材11、12、前後の終端部材13、14及びパネル部15から構成される。パネル部15には、固定式パネル部材16及び着脱式パネル部材17が組込まれる。上枠部材11及び下枠部材12は、ステー6にボルト接続され、ステー6に固定される。
【0025】
図3は、サイドガード10の端部構造を示す分解斜視図及び部分拡大断面図である。
【0026】
枠部材11、12は、アルミニウム合金等の軽量合金の押出し成形品からなり、上下対称な構造及び断面形状を有する。枠部材11、12は夫々、水平プレート21及び垂直プレート22を有する。水平プレート21は、外側の縁部が下方又は上方に屈曲し、下方又は上方に開口したパネル係止溝25を形成する。枠部材11のパネル係止溝25は、パネル部材16の上縁部分が嵌挿される下面開口形の溝からなり、他方、枠部材12のパネル係止溝25は、パネル部材16の下縁部分が嵌挿される頂部開口形の溝からなる。垂直プレート22は、固定式パネル部材16の上縁裏面又は下縁裏面に当接する。水平プレート21は、固定式パネル部材16の上下の端縁を被覆し、固定式パネル部材16の小口面を保護する。水平プレート21及び垂直プレート22は、パネル係止溝25を形成するパネル保持用レール部分を構成する。
【0027】
垂直プレート22の背面(車体側の面)には、一対のボルトヘッド係留用レール部分23、24が一体的に形成される。レール部分24は、ボルト接続用レール部分を構成し、ステー6に対するボルト接続用のボルトヘッド部分を収容する溝を形成する。他方、レール部分23は、ヒートプロテクタ接合用ボルトのヘッド部分を収容可能な溝を形成する。レール部分23、24は、車体側に開口するC形断面又はチャンネル形断面を有する。
【0028】
前後の終端部材13、14は、パネル部15に対して対称な構造及び形状を有する。終端部材13、14は夫々、上下方向に延びる中空本体31と、中空本体31の上端開口及び下端開口を夫々閉塞する頂部キャップ32及び底部キャップ33とから構成される。中空本体31は、先端部が全体的に車体側に湾曲した横断面形状を有する。上下のキャップ32、33は、中空本体31の上端部及び下端部に夫々嵌着する弾力的に変形可能な合成ゴム又は樹脂成形品からなる。一対の垂直プレート36が、本体31の垂直端面34に突設される。垂直プレート36は、固定式パネル部材16を嵌挿可能な垂直溝35を形成する。
【0029】
枠部材11、12の端部は、垂直プレート36に突付けられる。上下の枠部材11、12及び前後の終端部材13、14に形成されたパネル係止溝25及び垂直溝35は、固定式パネル部材16を嵌挿可能な連続溝をパネル部15の外周帯域に形成する。パネル係止溝25及び垂直溝35の内側面には、固定式パネル部材16の縁部外面に係合し又は摩擦接触する凹凸又はセレーション27、37が形成される。
【0030】
各パネル部材16は、樹脂フォーム又は軽量合金製ハニカム材等の衝撃吸収材のコア16aをアルミニウム合金又はスタンレス合金製の金属板16bによって被覆してなるサンドイッチパネルからなる。耐熱性を要しない部位のパネル部材16として、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム等の比較的安価な衝撃吸収材をコア材16aとして採用し得る。他方、耐熱性を要する部位のパネル部材16においては、フェノールフォーム材、アルミニウム合金製ハニカム材等の耐熱性衝撃吸収材をコア材16aとして採用することが望ましい。
【0031】
図4は、サイドガード10の平面図及び部分拡大断面図である。
【0032】
図4に示す如く、固定式パネル部材16の端縁部分は、垂直溝35に挿入される。固定式パネル部材16の端縁部分は、所望により、リベット39によって垂直プレート36に固定される。裏当て板38が、枠部材11、12と終端部材13、14との連接部に配置される。裏当て板38は、ボルト40、60及びナット43、63によって枠部材11、12及び終端部材13、14に固定される。
【0033】
図5は、サイドガード10の背面図及び部分拡大断面図である。
【0034】
レール部分23、24は、ボルト40、50の螺子部41、51を挿通可能な水平スリットをサイドガード10の裏面に形成する。ボルト40、50のボルトヘッド42、52が、レール部分23、24に収容され、ボルト40、50の螺子部41、51が、レール部分23、24のスリットを貫通する。レール部分23、24は、ボルトヘッド42、52の口径h1、h2に対して所定寸法だけ大きく設定された溝幅S1、S2を有する。溝幅S1、S2及び口径h1、h2の寸法差は、レール部分23、24内のボルトヘッド42、52の自由な回転をレール部分23、24によって規制し又は禁止するように設定される。従って、レール部分23、24は、ボルトヘッド42、52を水平移動可能に保持するが、ボルトヘッド42、52の回転は、レール部分23、24によって拘束される。
【0035】
図5のA部及びB部拡大断面図に示すように、ボルト40の螺子部41は、裏当て板38のボルト孔を貫通し、ナット43が螺子部41に螺合する。所望により、座金44が、ナット43と裏当て板38との間に介挿される。ボルト40及びナット43は、スパナ等の回転工具を用いたナット43の締付けにより、締結する。締付け時に生じ得るボルト40の回転は、レール部分23の内壁面によって規制又は禁止されるので、ボルト40は、ナット43の回転につれ回りすることなく、従って、ナット43は、ボルト40に締着し、裏当て板38は、レール部分23に堅固に固定される。
【0036】
図5のE部及びF部拡大断面図に示すように、ボルト60の螺子部が、裏当て板38及び中空本体31のボルト孔を貫通する。ボルト60の螺子部は、中空本体31の内壁面に固定されたナット63に螺入し、ボルト60及びナット63は、スパナ等の回転工具の締付けトルクによって締付けられる。この結果、裏当て板38は、終端部材13、14の中空本体31に固定される。かくして、枠部材11、12及び終端部材13、14は、裏当て板38を介して枠部材11、12に一体的に接合される。
【0037】
図5のC部及びD部拡大断面図には、ステー6と枠部材11、12との接合構造が示されている。ボルト40、50の螺子部41、51は、ステー6のボルト孔(図示せず)を貫通し、ナット43、53が螺子部41、51に夫々螺合する。所望により、座金44、54が、ナット43、53とステー6との間に介挿される。ボルト40、50及びナット43、53は、スパナ等の回転工具を用いたナット43、53の締付けにより締結し、枠部材11、12は、ステー6に固定される。なお、締付け時に生じ得るボルト40、50の回転は、レール部分23、24の内壁面によって規制又は禁止されるので、ボルト40、50は、ナット43の回転につれ回りすることなく、従って、ナット43、53は、スパナ等の回転工具の締付けトルクによって締付けられる。かくして、枠部材11、12は、ステー6に堅固に固定される。
【0038】
サイドガード10は又、エンジンの高温排ガスがサイドガード10に作用するのを防止する遮熱用ヒートプロテクタ18を備える。ヒートプロテクタ18は、ボルト70によって枠部材11、12に固定された垂直な板体からなる。
【0039】
図6は、図5のI−I線におけるサイドガード10の断面図であり、ヒートプロテクタ18の支持構造が図6に示されている。
【0040】
ボルト70のボルトヘッド72がレール部分23内に収容される。ボルト70は、ボルト40及び50の首下寸法よりも大きな首下寸法を有する。C形断面を有するレール部品19が、レール部分23に並列に配置される。レール部品19は、レール部分23と実質的に同じ断面形状を有し、スリットを車体側に向けた状態で水平に延在する。ボルト70の螺子部71が、レール部品19のボルト孔及びスリットを貫通する。ヒートプロテクタ18の上端部及び下部が、レール部品19の開口面に着座する。螺子部71は、ヒートプロテクタ18のボルト孔(図示せず)を貫通し、ナット73が、螺子部71に螺合する。所望により、座金74が、ナット73とヒートプロテクタ18との間に介挿される。ボルトヘッド72は、レール部分23の内壁面によって自由回転を拘束されているので、ボルト70及びナット73は、スパナ等の回転工具を用いたナット73の締付けによって締結し、ヒートプロテクタ18は、スペーサとして働くレール部品19を介してレール部分23に堅固に固定される。
【0041】
図7は、サイドガード10の正面図及び部分拡大断面図であり、図8は、着脱式パネル部材17の支持構造を示す拡大断面図である。
【0042】
前述の如く、パネル部15は、固定式パネル部材16及び着脱式パネル部材17から構成される。図7(A)に示すように、着脱式パネル部材17は、固定式パネル部材16の一部を置換するように上下の枠部材11、12に取付けられる。図7(B)に示すように、着脱式パネル部材17を固定するための複数のブラケット80が、リベット81によって枠部材11、12の所定位置に固定される。各ブラケット80は、図7(C)に示す如く、車体の外側に向かって中央部が隆起した横断面形状を有する。
【0043】
図8には、着脱式パネル部材17の留付け構造が示されている。着脱式パネル部材17は、外縁部82を車体側に曲げ加工した金属単板からなる。パネル部材17は、留め具90によってブラケット80に固定される。本例では、留め具90は、螺子部91及び螺子頭92を備えた留め螺子からなる。着脱式パネル部材17は、螺子頭92を収容可能な凹所83を留付け位置に有する。螺子部91は、凹所83に配置された螺子孔(図示せず)に挿入され、ブラケット80の螺子孔84に螺入する。所望により、裏当て材85が、着脱式パネル部材17及びブラケット80の間に介挿される。留め具90は、ブラケット80に締付けられ、螺子頭92は、着脱式パネル部材17をブラケット80に堅固に固定する。
【0044】
着脱式パネル部材17は、留め具90の解放により巻込み防止装置1から任意に取外すことができる。着脱式パネル部材17を取外した後に形成される開口部を利用して、車両下部の点検等を比較的容易に実施することができる。好ましくは、着脱式パネル部材17の外面は、固定式パネル部材16と同一の表面仕上げを備え、着脱式パネル部材17の表面位置は、固定式パネル部材16の表面位置と同一(面一)に設定される。
【0045】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0046】
例えば、上記実施例では、耐熱性衝撃吸収材をコア材としたパネル部材が、耐熱性を要する部位に使用されているが、本発明によれば、軽量性を要する部位に軽量なパネル部材を使用し、高い強度を要する部位に高強度のパネル部材を使用し、耐蝕性を要する部位に耐蝕性を向上したパネル部材を使用し、或いは、防火性又は耐火性を要する部位に防火性又は耐火性を向上したパネル部材を使用するなど、各部の要求性能に応じた多様な変形が可能である。
【0047】
また、上記実施例では、枠部材の裏面に上下二列のレール部分を配設しているが、第3のレール部分を枠部材の裏面に更に配設しても良い。
【0048】
更に、図1に破線で示すサイドガード10’の如く、本発明の巻込み防止装置を後輪の後方に配置しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、右折又は左折時に被接触物等の巻込みを防止するためにトラック等の中型又は大型車両の車体に装着される巻込み防止装置に適用される。本発明の巻込み防止装置によれば、巻込み防止装置の空力特性、意匠性及び汎用性を向上するとともに、被接触物等に接触する可能性が高い上縁部分及び/又は下縁部分に衝撃緩衝手段又は衝撃吸収構造を配設することができる。本発明の巻込み防止装置は又、巻込み防止装置の構成要素の規格化を可能にすることから、異なる車型又は車種に共通する構成の巻込み防止装置を設計し、車体部品を共通化することが可能となるので、その実利性は、顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の巻込み防止装置を備えた大型車両の全体構成を示す概略側面図である。
【図2】図1に示すサイドガードの正面図である。
【図3】サイドガードの端部構造を示す分解斜視図及び部分拡大断面図である。
【図4】サイドガードの平面図及び部分拡大断面図である。
【図5】サイドガードの背面図及び部分拡大断面図である。
【図6】図5のI−I線におけるサイドガードの断面図であり、ヒートプロテクタの支持構造が示されている。
【図7】サイドガードの正面図及び部分拡大断面図である。
【図8】着脱式パネル部材の支持構造を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 車両
2 キャブ
3 リアボディ
6 ステー
7 サイドメンバ
10 サイドガード
11、12 上下の枠部材
13、14 前後の終端部材
15 パネル部
16 固定式パネル部材(パネル部材)
17 着脱式パネル部材(パネル部材)
18 ヒートプロテクタ
21 水平プレート
22 垂直プレート
23、24 ボルトヘッド係留用レール(レール部分)
25 パネル係止溝
40、50、60、70 ボルト
41、51、71 螺子部
42、52、72 ボルトヘッド
43、53、63、73 ナット
80 ブラケット
90 留め具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前後方向に延び且つ車体側の部材にボルト接続される上下の枠部材と、該枠部材の前端部同士及び後端部同士を相互連結する車体前側及び後側の終端部材と、前記枠部材及び終端部材によって形成される枠体に組込まれたパネル部材とから構成され、前記枠部材は、パネル保持用レール部分を有し、上側の枠部材のレール部分は、前記パネル部材の上縁部分が嵌挿される下面開口形の溝を形成し、下側の枠部材のレール部分は、前記パネル部材の上縁部分が嵌挿される頂部開口形の溝を形成する車両の巻込み防止装置において、
前記枠部材は、パネル保持用レール部分の裏側に配置されたボルト接続用レール部分を更に有し、ボルト接続用レール部分は、前記車体側部材に前記枠部材をボルト接続するためのボルトのヘッド部分を収容する溝を形成するとともに、車体の前後方向に延び且つ前記車体側部材に向かって開口し、前記ボルトのヘッド部分は、前記パネル部材の車体側において前記溝内に保持され、前記ボルトの螺子部分は、前記車体側部材に向かって突出することを特徴とする車両の巻込み防止装置。
【請求項2】
前記枠部材は、ヒートプロテクタ接合用ボルトのヘッド部分を収容可能な溝を形成する第2レール部分を更に有し、該第2レール部分は、前記ボルト接続用レール部分と平行に前記パネル保持用レール部分の裏側に配設されることを特徴とする請求項1に記載の巻込み防止装置。
【請求項3】
前記枠部材には、パネル部材を取外し可能に支持するブラケットが固定され、前記パネル部材は、留め具によって前記ブラケットに係脱可能に取付けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の巻込み防止装置。
【請求項4】
耐熱性を要する巻込み防止装置の部位に配置される前記パネル部材は、耐熱性パネル材料からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の巻込み防止装置。
【請求項5】
前記ボルト接続用レール部分の溝幅は、溝内におけるボルトヘッド部分の回転を拘束するようにボルトヘッド部分の口径よりも所定寸法だけ大きな寸法に制限されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の巻込み防止装置。
【請求項6】
上下の前記枠部材は、前記パネル部材の上縁裏面又は下縁裏面に当接する垂直プレート部分を有し、前記パネル保持用レール部分は、前記パネル部材の側において前記垂直プレートの上部又は下部に一体的に形成され、前記ボルト接続用レール部分は、前記パネル部材と反対の側において前記垂直プレートに一体的に形成され且つ車体の側に開口したC形又はチャンネル形部分からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の巻込み防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−149795(P2008−149795A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337658(P2006−337658)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【出願人】(596076986)株式会社アイ・シー・エル (3)