説明

車両の装着部品

【課題】車両の装着部品に並列的に設けた爪有突起と爪無突起を、支持板に設けた第1取付孔に着脱する際に、第1取付孔のエッジ部が爪有突起の爪部を擦って乗り越えることを防止すること。
【解決手段】車両の装着部品(11)では、爪有突起11bと爪無突起11cが並列的に設けられていて、爪有突起の爪部11b1が爪無突起11cに対して離反側に設けられており、爪有突起11bと爪無突起11cが支持板(17)に設けた第1取付孔17bに挿入されることにより、支持板の第1取付孔17bに対して、爪有突起の爪部11b1が抜け止めされて、位置決めと抜け止めがなされている。爪無突起11cが爪有突起11bに比して厚みが薄くて(小さくて)撓み易い形状とされていて、爪有突起11bと爪無突起11cが支持板の第1取付孔17bに着脱されるときには、爪無突起11cが爪有突起11bに向けて撓んで傾動するように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の装着部品、例えば、車両用ドアのインナーパネル(支持板)に装着されるインナーハンドルベース(装着部品)に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の装着部品を支持板に取付ける場合において、支持板に設けた取付孔に対して、装着部品に並列的に設けた爪有突起と爪無突起を挿入して、位置決めと抜け止めを行うように構成したものがあり、例えば、下記特許文献1の図5に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−126050号公報
【0004】
上記した特許文献1の図5には、装着部品(アームレスト)に並列的に設けた爪有突起と爪無突起を、支持板(屈曲プレート)に設けた取付孔に挿入することにより、装着部品(アームレスト)が、支持板(屈曲プレート)の取付孔に対して、位置決めと抜け止めがなされている。
【発明の概要】
【0005】
(発明が解決しようとする課題)
上記した従来の構成では、本願における図6の(a)、(b)にて模式的に示したように、爪有突起1の爪部1aが爪無突起2に対して離反側に設けられており、爪有突起1と爪無突起2が支持板3に設けた取付孔3aに挿入されることにより、支持板3の取付孔3aに対して、爪有突起1の爪部1aが抜け止めされて、位置決めと抜け止めがなされている。
【0006】
ところで、従来の構成では、爪無突起2が爪有突起1に比して厚み(太さ)が大きくて(剛性が高くて)撓み難い形状とされていて、爪有突起1と爪無突起2が支持板3の取付孔3aに着脱されるときには、図6(a)、(b)の仮想線にて示したように爪有突起1が爪無突起2に向けて撓んで傾動するようになっている。このため、爪有突起1と爪無突起2が支持板3の取付孔3aに組付けられるときには、図6の(a)に示したように、取付孔3aのエッジ部(図示左方端部)が爪部1aを上側から下側に向けて擦って乗り越えることとなり、また、爪有突起1と爪無突起2が支持板3の取付孔3aから取り外されるとき(このときには、図6(b)の仮想線にて示した状態で爪有突起1と爪無突起2が支持板3に対して所要量右回転される)には、図6の(b)に示したように、取付孔3aのエッジ部(図示左方端部)が爪部1aを下側から上側に向けて擦って乗り越えることとなって、爪部1aの先端が削られて破損するおそれがある。
【0007】
また、従来の構成では、爪有突起1が爪無突起2に比して厚みが薄い形状であるため、車両の振動等で取付孔3aのエッジ部により爪有突起1の爪部1aより下方部位(爪部基端部)が削られて弱く(薄く)なる場合があり、当該装着部品の取り外し時に、爪有突起1が爪部1aの下方部位にて折損するおそれがある。
【0008】
(課題を解決するための手段と作用効果)
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、
爪有突起と爪無突起が並列的に設けられていて、前記爪有突起の爪部が前記爪無突起に対して離反側に設けられており、前記爪有突起と前記爪無突起が支持板に設けた第1取付孔に挿入されることにより、前記支持板の第1取付孔に対して、前記爪有突起の爪部が抜け止めされて、位置決めと抜け止めがなされている車両の装着部品であって、
前記爪無突起が前記爪有突起に比して厚みが薄くて(小さくて)撓み易い形状とされていて、前記爪有突起と前記爪無突起が前記支持板の第1取付孔に着脱されるときには、前記爪無突起が前記爪有突起に向けて撓んで傾動するように設定されている車両の装着部品
に特徴がある。
【0009】
上記した本発明に係る車両の装着部品においては、前記爪無突起が前記爪有突起に比して厚みが薄くて(小さくて)撓み易い形状とされていて、前記爪有突起と前記爪無突起が前記支持板の第1取付孔に着脱されるときには、前記爪無突起が前記爪有突起に向けて撓んで傾動するように設定されている。このため、当該装着部品では、その着脱時に、支持板に設けた第1取付孔のエッジ部が爪有突起の爪部を擦らないようにすることが可能である。したがって、当該装着部品の着脱に際して、第1取付孔のエッジ部が爪有突起の爪部を擦って乗り越えることを防止することができて、爪部先端の破損を防止することが可能である。
【0010】
また、本発明に係る車両の装着部品においては、爪有突起の厚みを必要十分に大きく(太く)することが可能である。このため、車両の振動等で装着部品が支持板に対して振動して、第1取付孔のエッジ部により爪有突起の爪部基端部が擦られて削られても、爪有突起の爪部基端部における強度は十分に確保することが可能である。したがって、上記した作用(当該装着部品の着脱時に、支持板に設けた第1取付孔のエッジ部が爪有突起の爪部を擦らないこと)と相まって、当該装着部品の着脱時における、爪有突起の爪部基端部での折損を防止することが可能である。
【0011】
上記した本発明の実施に際して、前記爪有突起と前記爪無突起が設けられている部位から所定量離れた箇所には、前記支持板に設けた第2取付孔に着脱可能な係合突起が設けられていて、前記爪有突起と前記爪無突起が前記第1取付孔に着脱されるときには、前記係合突起が前記第2取付孔に着脱されるように設定されていることも可能である。この場合には、当該装着部品が支持板に対して、爪有突起と爪無突起により位置決めと抜け止めが可能であるとともに、係合突起にて少なくとも位置決めが可能であるため、当該装着部品が支持板に対して爪無突起と爪有突起を中心として回転しない状態で、当該装着部品を支持板に組付ける(固定する)ことが可能である。
【0012】
また、上記した本発明の実施に際して、当該装着部品には、所定位置に向けて付勢される操作部材が回動可能に支持されていることも可能である。この場合には、操作位置に操作された操作部材が操作を解除されて付勢部材の付勢力によって所定位置に戻される際に、車両の振動等と同様に、装着部品が支持板に対して振動して、第1取付孔のエッジ部により爪有突起の爪部基端部が擦られて削られても、爪有突起の爪部基端部における強度は十分に確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による車両の装着部品であるインナーハンドルベースと、このインナーハンドルベースの車両内側に組付けたインナーハンドルレバーとロックノブとドアトリムの一部等を車両の内側から見た側面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】図1および図2に示したインナーハンドルベースとこれに組付けたインナーハンドルレバーとロックノブ等を車両の内側から見た側面図である。
【図4】図3のB−B線に沿った断面図である。
【図5】図4のR部の拡大図である。
【図6】従来の構成を模式的に示した拡大図であって、(a)は組付け時の状態を仮想線にて示した図であり、(b)は取り外し時の状態を仮想線にて示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明による車両の装着部品の一実施形態を示している。この実施形態の装着部品は、図1〜図5に示した樹脂製のインナーハンドルベース11であり、インナーハンドルベース11の車両内側は、インナーハンドルレバー12とロックノブ13が回転可能に組付けられている部位を除いて、樹脂製のドアトリム14によって被覆されている。なお、図1では、ドアトリム14の一部が矩形形状で図示されているとともに、操作部材であるインナーハンドルレバー12とロックノブ13の動きをドアロック装置(図示省略)に伝達するための操作ケーブル21、22の一部がそれぞれ図示されている。
【0015】
インナーハンドルベース11は、図1および図2に示したように、ドアトリム14がその取付凹部14aにて樹脂製のグロメット15と金属製のネジ16によって金属製のドアインナーパネル17に固定されることで、ドアトリム14と共に支持板としてのドアインナーパネル17に固定されている。なお、グロメット15は、ドアインナーパネル17の組付孔17aに挿入されていて、ネジ16によって軸部15aを拡径されることにより、ドアインナーパネル17に対して抜け止め固定されている。
【0016】
また、インナーハンドルベース11は、上記した取付凹部14a、グロメット15、ネジ16等を組付けるための組付孔11a(図2、図3参照)を有するとともに、ドアトリム14がドアインナーパネル17に固定される前に、インナーハンドルレバー12とロックノブ13を組付けたインナーハンドルベース11をドアインナーパネル17に対して位置決めと抜け止めをするための爪有突起11bおよび爪無突起11cと上下一対の係合突起11d、11eを有している。
【0017】
爪有突起11bと爪無突起11cは、図3〜図5に示したように、並列的に設けられていて、爪有突起11bの爪部11b1が爪無突起11cに対して離反側(図示左側で車両前方側)に設けられている。また、爪有突起11bと爪無突起11cは、ドアインナーパネル17に設けた第1取付孔17bに挿入されることにより、ドアインナーパネル17の第1取付孔17bに対して、爪有突起11bの爪部11b1が抜け止めされていて、インナーハンドルベース11のドアインナーパネル17に対する位置決めと抜け止めがなされている。なお、爪有突起11bの先端部図示左側には、傾斜面11b2が形成されている。また、爪無突起11cの先端部図示右側には、傾斜面11c1が形成されている。
【0018】
ところで、この実施形態においては、爪無突起11cが爪有突起11bに比して厚み(特に、車両前後方向(図示左右方向)の厚み)が薄くて(小さくて)車両前後方向に撓み易い形状とされていて、爪有突起11bと爪無突起11cがドアインナーパネル17の第1取付孔17bに着脱(挿入・抜き出し)されるときには、図5の仮想線で着脱途中を示したように、爪無突起11cが爪有突起11bに向けて撓んで傾動するように設定されている。このため、爪有突起11bと爪無突起11cの第1取付孔17bへの着脱は、図5の仮想線で例示したように、第1取付孔17bのエッジ部(図示右方端部)が爪無突起11cの一側面を擦るものの、第1取付孔17bのエッジ部(図示左方端部)が爪有突起11bの爪部11b1を擦らない状態で行うことが可能である。
【0019】
上方の係合突起11dは、図3および図4に示したように、ドアインナーパネル17に設けた第2取付孔17cに挿入されて図示左方にスライドされることにより、ドアインナーパネル17の第2取付孔17cに対して、抜け止めされていて、インナーハンドルベース11のドアインナーパネル17に対する位置決めと抜け止めがなされている。なお、上方の係合突起11dには、ドアインナーパネル17が嵌合するスリット11d1が形成されている。
【0020】
下方の係合突起11eは、上方の係合突起11dと同様に、ドアインナーパネル17に設けた第3取付孔(図示省略)に挿入されて図示左方にスライドされることにより、ドアインナーパネル17の第3取付孔(図示省略)に対して、抜け止めされていて、インナーハンドルベース11のドアインナーパネル17に対する位置決めと抜け止めがなされている。なお、下方の係合突起11eにも、上方の係合突起11dと同様に、ドアインナーパネル17が嵌合するスリット(図示省略)が形成されている。
【0021】
インナーハンドルレバー12は、インナーハンドルベース11に、支持軸(図示省略)を介して組付けられていて、所定位置(図1に示した復帰位置)と操作位置間にて回動可能に支持されている。また、インナーハンドルレバー12は、リターンスプリング(図示省略)によって所定位置に向けて付勢されており、所定位置にてストッパ(図示省略)によって保持されるように構成されている。ロックノブ13は、インナーハンドルベース11に、支持軸(図示省略)を介して組付けられていて、図1に示したアンロック位置とロック位置(図1のアンロック位置から所定量回動された位置)間にて回動可能に支持されている。また、ロックノブ13は、アンロック位置とロック位置にてそれぞれ保持されるように構成されている。
【0022】
上記のように構成したこの実施形態のインナーハンドルベース11においては、爪無突起11cが爪有突起11bに比して厚みが薄くて(小さくて)撓み易い形状とされていて、爪有突起11bと爪無突起11cがドアインナーパネル17の第1取付孔17bに着脱されるときには、爪無突起11cが爪有突起11bに向けて撓んで傾動する。このため、インナーハンドルベース11では、その着脱時に、ドアインナーパネル17に設けた第1取付孔17bのエッジ部が爪有突起11bの爪部11b1を擦らないようにすることが可能である。したがって、インナーハンドルベース11の着脱に際して、第1取付孔17bのエッジ部が爪有突起11bの爪部11b1を擦って乗り越えることを防止することができて、爪部11b1先端の破損を防止することが可能である。
【0023】
また、インナーハンドルベース11においては、爪有突起11bの厚みを必要十分に大きく(太く)することが可能である。このため、操作位置に操作されたインナーハンドルレバー12が操作を解除されてリターンスプリング(付勢部材)の付勢力によって所定位置に戻される際や、車両の振動等によって、インナーハンドルベース11がドアインナーパネル17に対して振動して(インナーハンドルベース11とドアインナーパネル17が相対移動して)、第1取付孔17bのエッジ部により爪有突起11bの爪部11b1基端部が擦られて削られても、爪有突起11bの爪部11b1基端部における強度は十分に確保することが可能である。したがって、上記した作用(インナーハンドルベース11の着脱時に、第1取付孔17bのエッジ部が爪有突起11bの爪部11b1を擦らないこと)と相まって、インナーハンドルベース11の着脱時における、爪有突起11bの爪部11b1基端部での折損を防止することが可能である。
【0024】
また、この実施形態においては、インナーハンドルベース11の爪有突起11bと爪無突起11cが設けられている部位から所定量離れた箇所に、上下一対の係合突起11d、11eが設けられていて、爪有突起11bと爪無突起11cが第1取付孔17bに着脱されるときには、各係合突起11d、11eが第2取付孔17c、第3取付孔(図示省略)に着脱されるように設定されている。このため、インナーハンドルベース11がドアインナーパネル17に対して、爪有突起11bと爪無突起11cにより位置決めと抜け止めが可能であるとともに、各係合突起11d、11eにても位置決めと抜け止めが可能であるため、インナーハンドルベース11がドアインナーパネル17に対して爪有突起11bと爪無突起11cを中心として回転しない状態で、ドアトリム14、グロメット15、ネジ16等を用いて、インナーハンドルベース11をドアインナーパネル17に組付ける(固定する)ことが可能である。
【0025】
上記した実施形態においては、各係合突起11d、11eにても位置決めと抜け止めが可能であるように構成して実施したが、各係合突起(11d、11e)にては位置決め(インナーハンドルベース11がドアインナーパネル17に対して爪有突起11bと爪無突起11cを中心として回転しないように回転規制すること)のみが可能に構成して実施することも可能である。また、上記した実施形態においては、各係合突起11d、11eを設けて実施したが、これらの個数を適宜変更可能であり、各係合突起11d、11eを無くして実施することも可能である。
【0026】
また、上記した実施形態においては、車両の装着部品がインナーハンドルベース11であり、支持板がドアインナーパネル17である実施形態について説明したが、車両の装着部品はインナーハンドルベース11以外の部品であってもよく、また、支持板はドアインナーパネル17以外の部品であってもよい。
【符号の説明】
【0027】
11…インナーハンドルベース(車両の装着部品)、11a…組付孔、11b…爪有突起、11b1…爪部、11c…爪無突起、11d…係合突起、11d1…スリット、11e…係合突起、12…インナーハンドルレバー、13…ロックノブ、14…ドアトリム、14a…取付凹部、15…グロメット、16…ネジ、17…ドアインナーパネル(支持板)、17a…組付孔、17b…第1取付孔、17c…第2取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪有突起と爪無突起が並列的に設けられていて、前記爪有突起の爪部が前記爪無突起に対して離反側に設けられており、前記爪有突起と前記爪無突起が支持板に設けた第1取付孔に挿入されることにより、前記支持板の第1取付孔に対して、前記爪有突起の爪部が抜け止めされて、位置決めと抜け止めがなされている車両の装着部品であって、
前記爪無突起が前記爪有突起に比して厚みが薄くて撓み易い形状とされていて、前記爪有突起と前記爪無突起が前記支持板の第1取付孔に着脱されるときには、前記爪無突起が前記爪有突起に向けて撓んで傾動するように設定されている車両の装着部品。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の装着部品において、前記爪有突起と前記爪無突起が設けられている部位から所定量離れた箇所には、前記支持板に設けた第2取付孔に着脱可能な係合突起が設けられていて、前記爪有突起と前記爪無突起が前記第1取付孔に着脱されるときには、前記係合突起が前記第2取付孔に着脱されるように設定されている車両の装着部品。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両の装着部品において、当該装着部品には、所定位置に向けて付勢される操作部材が回動可能に支持されている車両の装着部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−108323(P2013−108323A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256177(P2011−256177)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)