説明

車両灯具の点灯制御回路

【課題】環境温度が一定温度以下ではLEDの明るさを一定に保ち、環境温度が一定温度以上では故障の発生を極力抑制しつつLEDを発光させることのできる車両用灯具の点灯制御回路を提供する。
【解決手段】本発明に係る車両灯具の点灯制御回路は、ゲートに印加される電位によりLEDに流れる電流を制御するFET、ゲートに印加する電位を生成するOP、直列抵抗体からなる分圧回路W、分圧回路Wに並列に接続されかつ直流抵抗値が温度によって変化する抵抗値変化回路VR、直流抵抗同士の接続間と抵抗値変化回路VRとの間に設けられた整流素子D1を備える。分圧回路WはOPの入力端に入力される電位V1を生成する。整流素子D1は、分圧回路Wの電位V1と抵抗値変化回路VRの電位V2との関係により温度Tが一定値に達するまで分圧回路Wから抵抗値変化回路VRに向かって電流I2が流れるのを阻止し、温度Tが一定値を超えると分圧回路Wから抵抗値変化回路VRに向かって電流I2が流れるのを許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具の点灯制御回路の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用灯具には、発光ダイオード(LED)の直列体により構成された発光源の点灯を制御する点灯制御回路が設けられている。
その車両用灯具の点灯制御回路には、環境温度の変化を検出するのに温度の上昇に伴ってその直流抵抗値が減少するという負の特性を有するサーミスタを用いたものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図1は、そのサーミスタを有する車両灯具の点灯制御回路の一例を示している。
その図1において、符号Raは直流抵抗、符号TH1 はサーミスタ、符号OPは演算増幅器(オペレーショナルアンプリファイア)、符号Q1は電界効果型トランジスタ(FET)、符号LED1〜LED3は発光ダイオード、Rbは電流制限用の負荷抵抗である。
【0004】
直流抵抗Raの一端は端子X1に接続され、端子X1には安定化電源(図示を略す)から電圧Vaが印加されている。
直流抵抗Raの他端はサーミスタTH1の一端に接続され、サーミスタTH1の他端はアースされている。
【0005】
直流抵抗Raの他端とサーミスタTH1の一端との接続間X2は演算増幅器OPの非反転入力端子(+)に接続されている。
演算増幅器OPの出力端子は、電界効果型トランジスタ(FET)Q1のゲートGに接続されている。
【0006】
発光ダイオードLED1〜LED3はこの順に直列に接続され、発光ダイオードLED1のアノードは端子X3に接続され、端子X3には車両用電源電圧+Vcが印加されている。
【0007】
発光ダイオードLED3のカソードは電界効果型トランジスタQ1のドレインDに接続され、発光ダイオードLED3のソースSは負荷抵抗Rbを介してアースされている。演算増幅器OPの反転入力端子(−)は、電界効果型トランジスタQ1のソースSと負荷抵抗Rbの接続間X4に接続されている。
【0008】
その直流抵抗Ra、サーミスタTH1、演算増幅器OP、電界効果型トランジスタQ1、負荷抵抗Rbによって、発光ダイオードLED1〜LED3に流れる電流を制御する点灯制御回路が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−114279号公報(段落番号「0031」参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
その図1に示す従来の車両用灯具の点灯制御回路によれば、環境温度の上昇によって、発光ダイオードLED1〜LED3に流れる電流を減少させることができ、夏場の暑い日には発光ダイオードLED1〜LED3に流れる電流を少なくすることにより、発光ダイオードLED1〜LED3の温度上昇に伴う故障を防止することができる。
【0011】
ところが、その図1に示す従来の車両用灯具の点灯制御回路では、電界効果型トランジスタQ1の非反転入力端子(+)に印加される電位V2と直流抵抗Raとの間には、V2=Va・(RTH1/(RTH1+Ra))の関係があって、電位V2はサーミスタTH1の抵抗温度変化特性に直接依存する。このため、発光ダイオードLED1〜LED3に流れる電流I1は、サーミスタTH1の抵抗温度変化特性に直接的に依存する。ここで、RTH1は、サーミスタTH1のある温度の時の抵抗値である。
【0012】
そのサーミスタTH1の抵抗温度変化特性は、温度上昇に伴ってその抵抗値が連続的に変化するという曲線を描くため、この図1に示す従来の車両用灯具の点灯制御回路の場合には、発光ダイオードLED1〜LED3に流れる電流I1が、図2に示すように、環境温度Tの上昇に伴って、連続的に減少するという温度・電流変化特性Q2を描く。
【0013】
従って、この図1に示す従来の車両用灯具の点灯制御回路では、発光ダイオードLED1〜LED3の温度上昇に伴う故障を防止できるという長所はあるが、環境温度Tの低い冬場では発光ダイオードLED1〜LED3に流れる電流I1が大きくなり、環境温度Tの高い夏場では発光ダイオードLED1〜LED3に流れる電流I1が小さくなり、環境温度Tの変化に応じて発光ダイオードLED1〜LED3の明るさが変動するという不都合がある。
【0014】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、環境温度が一定温度以下では発光ダイオードの明るさを一定に保ち、環境温度が一定温度以上では故障の発生を極力抑制しつつ発光ダイオードを発光させることのできる簡単な回路構成の車両用灯具の点灯制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る車両用灯具の点灯制御回路は、車両用電源電圧が供給されて発光ダイオードと負荷抵抗との間のドレイン・ソース間に流れる電流をゲートに印加される電位により制御する電界効果型トランジスタ、前記ゲートに接続されて該ゲートに印加される電位を生成する演算増幅器、直列抵抗体を構成する直流抵抗同士の接続間が前記演算増幅器の入力端に接続されかつ前記直列抵抗体の両端に電源電圧が印加されて前記直流抵抗同士の接続間に分圧電位を生成する分圧回路、両端が前記分圧回路に接続されかつ直流抵抗値が温度によって変化する抵抗値変化回路、前記直流抵抗同士の接続間と前記抵抗値変化回路との間に設けられかつ前記分圧回路の分圧電位と前記抵抗値変化回路の電位との関係により前記温度が一定値に達するまでは前記分圧回路から前記抵抗値変化回路に向かって電流が流れるのを阻止ししかも前記温度が一定値を超えると前記分圧回路から前記抵抗値変化回路に向かって電流が流れるのを許可する整流素子を備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、環境温度が一定値に達するまでは、発光ダイオードに流れる電流を一定に保つことができるので、冬の寒い時期から夏の暑い時期に渡って発光ダイオードの明るさを一定に保つことができ、環境温度が一定値を超えた場合には発光ダイオードに流れる電流を制限することにより、発光ダイオードが故障するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は従来の車両用灯具の点灯制御回路の一例を示す回路図である。
【図2】図2は図1に示す車両用灯具の点灯制御回路により発光ダイオードに流れる電流と環境温度との関係を示す温度・電流変化特性図である。
【図3】図3は本発明に係る車両用灯具の点灯制御回路の一例を示す回路図である。
【図4】図4は図3に示す車両用灯具の点灯制御回路により発光ダイオードに流れる電流と環境温度との関係を示す温度・電流変化特性図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0018】
図3は本発明に係る車両用灯具の制御回路の一例を示す回路図である。
この図3において、従来例に示す回路要素と同一の回路要素については、従来例に使用した符号と同一の符号を使用して説明することとする。
【0019】
図3において、直流抵抗Raの一端は端子X1に接続され、端子X1には安定化電源(図示を略す)から電圧Vaが印加されている。直流抵抗Raの他端はサーミスタTH1の一端に接続され、サーミスタTH1の他端はアースされている。
【0020】
直流抵抗Raの他端とサーミスタTH1の一端との接続間X2は、整流素子D1を介して演算増幅器OPの非反転入力端子(+)に接続されている。
演算増幅器OPの出力端子は、電界効果型トランジスタ(FET)Q1のゲートGに接続されている。
【0021】
サーミスタTH1には温度上昇に伴って抵抗値が減少するという負の特性を有するものが用いられる。その直流抵抗RaとサーミスタTH1とは直列抵抗体を構成し、この直列抵抗体は温度上昇に伴って抵抗値が変化する抵抗値変化回路VRとして機能する。
【0022】
発光ダイオードLED1〜LED3はこの順に直列に接続されて発光ダイオードの直列体からなる発光源を構成している。発光ダイオードLED1のアノードは端子X3に接続され、端子X3には車両用電源電圧+Vcが印加されている。
【0023】
発光ダイオードLED3のカソードは電界効果型トランジスタQ1のドレインDに接続され、発光ダイオードLED3のソースSは負荷抵抗Rbを介してアースされている。
【0024】
演算増幅器OPの反転入力端子(−)は、電界効果型トランジスタQ1のソースSと負荷抵抗Rbの接続間X4に接続されている。
その発光ダイオードの直列体と電界効果型トランジスタQ1と負荷抵抗Rbとにより発光ダイオードの直列体に電流を供給する電流供給回路が構成される。
【0025】
演算増幅器OPは電界効果型トランジスタQ1のゲートGに印加される電位V3を生成し、電界効果型トランジスタQ1は、車両用電源電圧+Vcが供給されて発光ダイオードLED1〜LED3と負荷抵抗Rbとの間のドレインD・ソースS間に流れる電流I1をゲートGに印加される電位V3により制御する。
【0026】
ここでは、電界効果型トランジスタQ1はモス型であり、ドレインD側が高電位とされ、ソースS側が低電位とされているが、電界効果型トランジスタQ1の特性によっては、逆の電位とすることもできる。
【0027】
端子X1とアースとの間には分圧回路Wが設けられている。この分圧回路Wは直流抵抗R1と直流抵抗R2との直列抵抗体から構成されている。ここでは、この直流抵抗R1と直流抵抗R2との直流抵抗同士の接続間X5は演算増幅器OPの非反転入力端子(+)に接続されている。しかしながら、電源電圧+Vaを逆の電位とすることによって、反転入力端子(−)に接続する構成とすることもできる。
【0028】
その分圧回路Wは、直流抵抗R1と直流抵抗R2との直列抵抗体の両端に電源電圧+Vaが印加されて直流抵抗同士の接続間X5に分圧電位V1を生成する機能を有する。抵抗値変化回路VRは、その両端が分圧回路Wの両端に接続されて、抵抗値変化回路VRと分圧回路Wとは並列回路を構成している。
【0029】
整流素子D1は、直流抵抗同士の接続間X5と抵抗値変化回路VRとの間に設けられかつ分圧回路Wの分圧電位V1と抵抗値変化回路VRの電位V2との関係により環境温度T(図4参照)が一定値に達するまでは分圧回路Wから抵抗値変化回路VRに向かって電流I2が流れるのを阻止ししかも環境温度Tが一定値を超えると分圧回路Wから抵抗値変化回路VRに向かって電流I2が流れるのを許可する機能を有する。
【0030】
ここでは、整流素子D1はその一側としてのカソードが抵抗値変化回路VRを構成する直流抵抗RaとサーミスタTH1との接続間X2に接続され、整流素子D1の他側としてのアノードが分圧回路Wを構成する直流抵抗同士の接続間X5に接続されている。
【0031】
その抵抗値変化回路VRを構成する直流抵抗RaとサーミスタTH1との接続間X2の電位V2は、ここでは、環境温度Tが一定値T1(図4参照)以下のときには分圧回路Wの分圧電位V1よりも高電位に維持され、かつ、環境温度Tが一定値T1を超えると分圧回路Wの分圧電位V1よりも低電位となり、環境温度Tが一定値T1を超えると整流素子D1を介して分圧回路WからサーミスタTH1に向かって電流I2が流れる。
【0032】
その結果、この実施例の車両用灯具の点灯制御回路の場合には、図4に示すように、環境温度Tが低温から一定値T1までの間は、発光ダイオードLED1〜LED3の直列体に流れる電流I1は一定値I0となり、環境温度Tが一定値T1を超えると、発光ダイオードLED1〜LED3の直列体に流れる電流I1は環境温度Tが高温になるに伴ってリニアに減少するという温度・電流変化特性Q3を描く。
【0033】
これにより、発光ダイオードLED1〜LED3の明るさは、冬場の寒いときから夏場の暑いときまでの一定期間に渡って明るさが一定に保たれ、環境温度Tが一定値T1を超えると、発光ダイオードLED1〜LED3の直列体に流れる電流I1を減少させることにより、発光ダイオードLED1〜LED3の故障を防止できる。
【0034】
また、この実施例によれば、環境温度が一定温度以下では発光ダイオードの明るさを一定に保ち、環境温度が一定温度以上では故障の発生を極力抑制しつつ発光ダイオードを発光させることのできる簡単な回路構成の車両用灯具の点灯制御回路を構成できる。
【0035】
以上実施例においては、3個の発光ダイオードLED1〜LED3について説明したが、発光ダイオードLED1〜LED3は少なくとも1個以上であれば良い。
【符号の説明】
【0036】
LED…発光ダイオード
Q1…電界効果型トランジスタ(FET)
OP…演算増幅器
W…分圧回路
VR…抵抗値変化回路
D1…整流素子
V1…分圧電位
V2…電位
T…環境温度
I1、I2…電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用電源電圧が供給されて発光ダイオードと負荷抵抗との間のドレイン・ソース間に流れる電流をゲートに印加される電位により制御する電界効果型トランジスタと、
前記ゲートに接続されて該ゲートに印加される電位を生成する演算増幅器と、
直列抵抗体を構成する直流抵抗同士の接続間が前記演算増幅器の入力端に接続されかつ前記直列抵抗体の両端に電源電圧が印加されて前記直流抵抗同士の接続間に分圧電位を生成する分圧回路と、
両端が前記分圧回路に接続されかつ直流抵抗値が温度によって変化する抵抗値変化回路と、
前記直流抵抗同士の接続間と前記抵抗値変化回路との間に設けられかつ前記分圧回路の分圧電位と前記抵抗値変化回路の電位との関係により前記温度が一定値に達するまでは前記分圧回路から前記抵抗値変化回路に向かって電流が流れるのを阻止ししかも前記温度が一定値を超えると前記分圧回路から前記抵抗値変化回路に向かって電流が流れるのを許可する整流素子とを備えていることを特徴とする車両用灯具の点灯制御回路。
【請求項2】
前記発光ダイオードの直列体が前記電界効果型トランジスタのドレインに接続され、前記負荷抵抗が前記電界効果型トランジスタのソースに接続されて前記発光ダイオードの直列体に前記車両用電源電圧を印加することにより前記発光ダイオードの直列体に電流を供給する電流供給回路が構成され、
前記分圧回路の分圧電位は前記演算増幅器の非反転入力端に印加され、該演算増幅器の反転入力端は前記電界効果型トランジスタのソースと前記負荷抵抗との接続間に接続され、
前記抵抗値変化回路は、温度上昇に伴って抵抗値が減少するサーミスタと直流抵抗との直列抵抗体からなり、前記整流素子はその一側が該抵抗値変化回路を構成する前記直流抵抗と前記サーミスタとの接続間に接続され、前記整流素子はその他側が前記分圧回路を構成する前記直流抵抗同士の接続間に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具の点灯制御回路。
【請求項3】
前記電界効果型トランジスタはモス型であり、前記ドレイン側が高電位で前記ソース側が低電位とされ、前記抵抗値変化回路を構成する前記直流抵抗と前記サーミスタとの接続間の電位は、前記温度が一定値以下のときには前記分圧回路の分圧電位よりも高電位に維持され、かつ、前記温度が一定値を超えると前記分圧回路の分圧電位よりも低電位となり、前記温度が一定値を超えると前記整流素子を介して前記分圧回路から前記サーミスタに向かって電流が流れることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具の点灯制御回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−240492(P2012−240492A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110520(P2011−110520)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】