説明

車両用アウトサイドミラー装置

【課題】運転者からの視認性の向上を、見栄えを損なわずに、また低コストで実現させることができる車両用アウトサイドミラー装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る車両用アウトサイドミラー装置は、車両後方を写すミラーと、該ミラーを取り付ける凹部を有したミラーハウジングを備える車両用アウトサイドミラー装置において、前記ミラーハウジングは、車両前輪付近の視界を確保する光学部材を取り付け可能な切り欠き部を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用アウトサイドミラー装置に関するものであり、特に、自動車等の車両における前輪付近の視界を確保できるようにするための車両用アウトサイドミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のアウトサイドミラーでは、特に助手席側の前輪付近が運転者の死角になっていた。そのため、障害物に車体を接触する等して事故を起こす虞があった。
【0003】
そこで、その対策として、フロントミラーの下側に補助ミラーを設けて、車両前輪付近の視界を確保するようにしたアウトサイドミラー装置(例えば、特許文献1参照)や、車両前輪付近の状態を写すカメラモジュールをミラーハウジング内に設けたカメラ内蔵型のバックミラー装置(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭55−42691号公報。
【特許文献2】特開2009−93882号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のアウトサイドミラー装置では、補助ミラーを、フロントミラーの下側に突出させて設けた構造を有しているため、体裁が悪く、意匠性等の面で問題点があった。
【0006】
一方、特許文献2に記載のカメラ内蔵型のバックミラー装置では、意匠性の面での問題は解決できるが、ミラーハウジングにカメラモジュールを内蔵させ、またカメラで写した映像を車内で確認するためのモニター装置を必要とする。このため、システム構成が複雑化してコスト的に高くなるという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、運転者からの視認性の向上を、見栄えを損なわずに、また低コストで実現することができる車両用アウトサイドミラー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用アウトサイドミラー装置は、車両後方を写すミラーと、該ミラーを取り付ける凹部を有したミラーハウジングを備える車両用アウトサイドミラー装置において、前記ミラーハウジングは、車両前輪付近の視界を確保する光学部材を取り付け可能な切り欠き部を設けてなる。
【0009】
この構成によれば、仮にオプション等により、車両用アウトサイドミラー装置に車両前輪付近の視界を確保する機能を持たせる場合には、ミラーハウジングの切り欠き部の部分に車両前輪付近の視界を確保可能な光学部材を取り付け、機能を必要としない場合には、カバー部を取り付けて切り欠き部を塞ぐ、等の選択使用が可能になる。これにより、同じミラーハウジングを、上記何れの場合にも使用することができ、ミラーハウジングの汎用化が図れる。また、光学部材を取り付けた車両用アウトサイドミラー装置として構成した場合でも、従来の車両用アウトサイドミラー装置とさほど変わることのない位置に取り付けて使用することができる。さらに、上記光学部材を取り付ける場合も、ミラーハウジングの切り欠き部に光学部材を収容させて、この切り欠き部を塞ぐようにして取り付けることができるので、ミラーハウジングの形状を大きく変えることなく取り付けることができる。
【0010】
上記構成において、前記光学部材は、フレネルレンズである、構成を採用できる。
【0011】
この構成によれば、フレネルレンズで視界を広げ、車両前輪付近の視界を十分に確保することができる。
【0012】
上記構成において、前記ミラーハウジングは、前記切り欠き部を閉塞する着脱可能なカバー部を備え、前記光学部材は前記カバー部を取り外した後の箇所に取り付けられる、構成を採用できる。
【0013】
この構成によれば、ミラーハウジングの汎用化が図れる。
【0014】
上記構成において、前記ミラーハウジングの前記切り欠き部は、ターンシグナルランプと一体化された前記光学部材を取り付け可能なスペースを有してなる、構成を採用できる。
【0015】
この構成によれば、ターンシグナルランプと車両前輪付近の視界を確保する光学部材を一体化した状態でミラーハウジングに組み込み、ターンシグナルランプと光学部材付きの車両用アウトサイドミラー装置が得られる。
上記構成において、運転者が前記ミラーを通して車両の後方を目視できる状態にある車両用アウトサイドミラー装置にあって、
前記光学部材は、前記運転者が目視できる側面側から車両前方側へ延在されるようにして設けられてなる、構成を採用できる。
この構成によれば、光学部材の面積を充分に大きく構成でき、運転者が該光学部材を通して得られる車両前輪付近の視界像を大きな領域で認識できる車両用アウトサイドミラー装置が得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両前輪付近の視界を確保する機能を持たせた車両用アウトサイドミラー装置と上記機能を必要としない車両用アウトサイドミラー装置の、両方の装置に同じミラーハウジングを使用することができるので、ミラーハウジングの汎用化が図れ、コスト低減が可能になる。また、ミラーハウジングに光学部材を取り付けるだけで、車両前輪付近の視界を十分に確保することができるので、車両前輪付近の視界を十分に確保できる機能を有した車両用アウトサイドミラー装置を低コストで実現することが可能になる。
【0017】
さらに、上記光学部材は、切り欠き部において、ミラーハウジング内に収容させ、切り欠き部を塞ぐようにして取り付けることができるので、ミラーハウジングの見栄えを損なうことなく取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両用アウトサイドミラー装置の光学部材による視野範囲を概略的に示す側面模式図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る車両用アウトサイドミラー装置の光学部材による視野範囲を概略的に示す平面模式図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る第1実施例の車両用アウトサイドミラー装置を車両に取り付けた状態で示す斜視図である。
【図4】同上第1実施例に係る車両用アウトサイドミラーの背面図である。
【図5】図4のA−A断面模式図である。
【図6】同上第1実施例に係る車両用アウトサイドミラーの要部分解図である。
【図7】同上第1実施例に係る車両用アウトサイドミラーの要部斜視図である。
【図8】同上第1実施例に係る車両用アウトサイドミラー装置における係止構造の一例を示す分解斜視図である。
【図9】同上第1実施例に係る車両用アウトサイドミラー装置における電気コネクタ構造の一例を模式的に示す斜視図である。
【図10】本発明の実施形態1に係る第2実施例の車両用アウトサイドミラーを説明する説明図で、(a)は光学部材を取り付けた使用状態を示し、(b)は光学部材に変えてカバー部を取り付けた使用状態を示す。
【図11】同上第2実施例に係る車両用アウトサイドミラーの要部分解図である。
【図12】光学部材を取り付けた状態で示す図11のB−B断面模式図である。
【図13】同上第2実施例に係る車両用アウトサイドミラーの一変形例を説明する図である。
【図14】同上変形例に係る車両用アウトサイドミラーの係止構造の一例を示す斜視図で、(a)は係止前の図、(b)は係止後の図である。
【図15】本発明の実施形態2の車両用アウトサイドミラーを運転者側から観た斜視図である。
【図16】車両を上方から観た図で、運転者の前方への視界がピラーによって妨げられ、この視界の妨げが本発明の車両用アウトサイドミラーによって解消されていることを示す図である。
【図17】本発明の実施形態3の車両用アウトサイドミラーの構成を締めた図で、(a)は背面図、(b)は(a)のb−b線における断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)について詳細に説明する。
【0020】
(実施形態1)
図1及び図2は本発明の実施形態に係る車両用アウトサイドミラー装置の第1実施例を自動車の車体に取り付け、その光学部材による視野範囲を概略的に示すものである。同図に示すように、本実施形態に係る車両用アウトサイドミラー装置11は、運転者に対して、車両である自動車の車体12の助手席側外部における視野を拡大するために、その助手席側のドア側部に取り付けられたアウトサイドミラー13(以下、「ドアミラー13」という)の一部に光学部材14を設けてなる。そして、運転者からは、ドアミラー13を介して助手席側のドア側部後方を視認できるとともに、光学部材14を介して助手席側の車両前輪付近(図中に斜線を付して示す部分)を視認できるようにしたものである。
【0021】
そのドアミラー13は、図3に示すように、ミラーベース15を介してフロントサイドドア16の外側面に取り付けられている。また、ミラーベース15とドアミラー13は互いに回動可能に構成されており、駐車時等、運転者が運転をしない場合等には、ドアミラー13を格納できるように構成されている。なお、ドアミラー13の格納方法は手動あるいは電動にて格納可能に構成されている。
【0022】
図4乃至図7にドアミラー13の構造を模式的に示す。そのドアミラー13は、図5に示すように車両後方を写すミラー部材17と、このミラー部材17を収容して取り付ける内部空間を設けた凹部18を前面側に有して概略ドーム状に形成してなる樹脂成形品のミラーハウジング19と、このミラーハウジング19の後面側に露出して取り付けられた光学部材14及びターンシグナルランプ20等を備えている。
【0023】
前記ミラーハウジング19の凹部18内に取り付けられたミラー部材17は、傾き角度を調整可能で、その傾動調整により運転者による車両後方の視界を調整できるようになっている。なお、ミラー部材17の傾動調整は手動あるいは電動にて調整可能に構成されている。
【0024】
前記ミラーハウジング19の後面側には、切り欠き部21が前後方向に貫通して設けられており、この切り欠き部21を閉塞するようにしてミラーハウジング19の内面側(車両後方側)から、前記光学部材14及び前記ターンシグナルランプ20が取り付けられるようになっている。したがって、切り欠き部21の大きさ及び形状は、前記光学部材14及び前記ターンシグナルランプ20の取り付けに適合するようにして設けられている。
【0025】
そして、ミラーハウジング19の内面側には、図6に示すように切り欠き部21の上外周縁近傍に1個と下外周縁近傍に2個の、合計3個の第1ランス22aがミラーハウジング19と一体に形成されている。
【0026】
一方、前記光学部材14及び前記ターンシグナルランプ20は、互いに一体化されて車幅方向に細長く横長状に延ばされた状態にして形成されている。また、ターンシグナルランプ20の上下外周面には、3個の第2ランス22bが、それぞれミラーハウジング19側の前記第1ランス22aに対応して形成されている。さらに、ターンシグナルランプ20の後面には、このターンシグナルランプ20内に運転席からターンシグナル信号用の電流供給を受けるための雌型コネクタ30aが設けられている。この雌型コネクタ30aは、図9に示すように、運転席からターンシグナル信号用の電流を供給するハーネス側の雄型コネクタ30bが挿入されて結合される構造になっている。
【0027】
前記光学部材14は、運転席からの視野を拡大して車両前輪付近の視界を確保する機能を持たせるためのフレネルレンズ、メニスカレンズ、プリズムレンズ等であり、通常、透明性のアクリル樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明性合成樹脂から構成される。なお、ここでのメニスカレンズは、例えば片面が凸レンズでもう一方の片面が凹レンズをしたものであり表面が滑らかなので、表面がギザギザのものよりも視認し易い効果がある。また、光学部材14は、運転者が運転席から光学部材14を見たときに、より均一な視野を確保できるようにするために、レンズの屈折率を下方に行くに従って大きくなるように設定されているのが好ましい。
【0028】
前記第1ランス22aと前記第2ランス22bは、光学部材14及びターンシグナルランプ20とミラーハウジング19とを互いに固定結合するための係止固定手段23を形成しているものである。
【0029】
その係止固定手段23の詳細構造は図8に示す。すなわち、第1ランス22aは、ミラーハウジング19の内面から後方に向かって突設され、かつ中心に位置決め孔24を有した中空管状の支軸25と、この支軸25を挟んだ左右の位置に、それぞれミラーハウジング19の内面から後方に向かって突出した状態で設けられた左右1対の弾性係止片26とより成り、各弾性係止片26の先端部には、それぞれ内側に向かって突設されてなる係止爪26aが一体に形成されている。
【0030】
一方、第2ランス22bは、ターンシグナルランプ20の側面から上下方向に突設された板状のベース部27と、このベース部27の中央から前方に向かって突設された中実軸状の支軸28と、ベース部27の左右端部からそれぞれ前方に向かって突設された左右1対の弾性係合片29とより成る。なお、支軸28は、第1ランス22a側の支軸25の位置決め孔24に嵌合可能に形成されている。また、左右1対の弾性係合片29は、それぞれ第1ランス22a側の支軸25と弾性係止片26との間に挿入可能に形成されおり、さらに各弾性係合片29には、第1ランス22a側の支軸25と弾性係止片26との間に所定の位置まで挿入されると、弾性係止片26の係止爪26aが掛け止めされる係合孔29aが形成されている。
【0031】
このように構成されたドアミラー13において、光学部材14及びターンシグナルランプ20をミラーハウジング19の切り欠き部21に取り付ける場合は、互いに一体化された光学部材14とターンシグナルランプ20をミラーハウジング19の内側から切り欠き部21に向かわせ、第1ランス22aと第2ランス22bを互いに突き合わせて押し付ける。この押し付けにより、第2ランス22bの支軸28が第1ランス22aの支軸25の位置決め孔24内に嵌合されるとともに、第2ランス22bの弾性係合片29が第1ランス22aの支軸25と弾性係止片26との間に挿入される。また、図7に示すように、それぞれ所定の位置まで挿入されると、弾性係止片26の係止爪26aが係合孔29a内に掛け止めされ、この掛け止めにより、光学部材14及びターンシグナルランプ20とミラーハウジング19の間が固定されて一体化される。図4及び図5、図7は、このようにして光学部材14及びターンシグナルランプ20がミラーハウジング19に固定された状態を示している。また、この固定状態では、ミラーハウジング19を外側から見た場合、光学部材14及びターンシグナルランプ20はミラーハウジング19の外表面とほぼ面一状態になる。
【0032】
その後、雌型コネクタ30aにハーネス側の雄型コネクタ30bを結合させるとともに、ミラーハウジング19内にミラー部材17及びその他必要な部品を組み込み、さらに、このミラーハウジング19をミラーベース15と共に車体12側に組み付けるとドアミラー13として使用することができる。
【0033】
このようにしてなるドアミラー13では、上述したように運転者からはドアミラー13のミラー部材17を介して助手席側のドア側部後方を視認できるとともに、光学部材14を介して助手席側の車両前輪付近を視認することができる。
【0034】
したがって、この第1実施例のドアミラー13によれば、従来のドアミラーの形状及び取付位置をさほど変えることなく車体に取り付けて使用することができる。また、光学部材14及びターンシグナルランプ20は、ミラーハウジング19の切り欠き部21に収容させるようにして取り付けているので、ミラーハウジング19の外形も従来のミラーハウジングの意匠性を損なう程、大きく変えたりしなくても済むことになる。
【0035】
なお、この第1実施例において、ミラーハウジング19を、光学部材14及びターンシグナルランプ20を設けないドアミラー13として使用する場合には、一体化された前記光学部材14及びターンシグナルランプ20とほぼ同じ形状をし、かつ第2ランス22bを同じ位置に設けてなるカバー部(図示せず)を用意して、このカバー部でミラーハウジング19の切り欠き部21を閉塞するようにすれば、光学部材14とターンシグナルランプ20を設けたドアミラー13と、光学部材14とターンシグナルランプ20を設けないドアミラー13の両方に、同じミラーハウジング19を使用することができる。これにより、ミラーハウジング19の汎用化が可能になる。
【0036】
また、上記第1実施例のドアミラー13では、光学部材14とターンシグナルランプ20を一体化して組み込む構造を開示したが、光学部材14だけを組み込む構造、あるいは光学部材14とターンシグナルランプ20を別体にして組み込む構造にすることも可能である。さらに、係止固定手段23の構造、及び、雌型コネクタ30aと雄型コネクタ30bの構造も、これ以外の構造にすることも可能である。また、さらに光学部材14とターンシグナルランプ20を一体成形してなる構造としてもよい。
【0037】
図10乃至図12は、本発明の実施形態に係る車両用アウトサイドミラー装置の第2実施例を示すものである。この第2実施例では、ミラーハウジングの切り欠き部にターンシグナルランプは設けず、光学部材だけを設けてなるドアミラー構造としたものであって、また光学部材を設けない場合にはミラーハウジングの切り欠き部をカバー部で塞いで使用するようにして、ミラーハウジングの汎用化を図れるようにしたドアミラー構造であり、図1乃至図9と同じ部材には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0038】
図10の(a)に示すようにミラーベース15を介して車体12に取り付けられるドアミラー31は、図12に示すように車両後方を写すミラー部材17と、このミラー部材17を収容して取り付ける内部空間を設けた凹部18を前面側に有して概略ドーム状に形成してなる樹脂成形品のミラーハウジング32と、このミラーハウジング32の後面側に露出して取り付けられた光学部材33等を備えている。
【0039】
前記ミラーハウジング32の後面側には、図11及び図12に示すように切り欠き部34が前後方向に貫通して設けられており、また図10(a)及び図11と図12に示すように、切り欠き部34を閉塞するようにして前記光学部材33が取り付けられ、あるいは図10(b)に示すように、光学部材の機能は持たないが、光学部材33とほぼ同じ大きさ及び形状をしてなるカバー部35が取り付けられるようになっている。したがって、切り欠き部34の大きさ及び形状は、前記光学部材33及び前記カバー部35の取り付けに適合するようにして設けられている。
【0040】
そして、ミラーハウジング32の内面側には、図11に示すように切り欠き部34の外周縁近傍に合計3個の取付孔36が形成されている。
【0041】
一方、前記光学部材33は、運転席からの視野を拡大して車両前輪付近の視界を確保する機能を持たせるためのフレネルレンズ、メニスカレンズ、プリズムレンズ等であり、通常、透明性のアクリル樹脂、塩化ビニール樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明性合成樹脂から構成される。また、運転席から運転者が見たときに、より均一な視野を確保するために、レンズの屈折率が下方に行くに従って大きくなるように設定されているのが好ましい。この光学部材33は、切り欠き部34に取り付けられた状態で、ミラーハウジング32を外側から見た場合、光学部材33はミラーハウジング32の外表面とほぼ面一状態になるようにして形成されている。また、光学部材33の一部には、それぞれミラーハウジング32側の取付孔36に対応する取付孔37を有した3個の取付片38が一体に形成されている。
【0042】
なお、図示しないが前記カバー部35にも、光学部材33とそれぞれ対応した位置に、取付孔37を有する取付片38が設けられている。
【0043】
そして、このように構成されたドアミラー31において、光学部材33をミラーハウジング32の切り欠き部34に取り付ける場合は、光学部材33をミラーハウジング32の内側から切り欠き部34に向かわせるとともに、ミラーハウジング32側の取付孔36の位置に光学部材33側における取付片38の取付孔37の位置を合わせる。次いで、光学部材33の外側から取付片38側の取付孔37を通して、タッピングスクリュー39を取付孔36にねじ込み、取付片38をミラーハウジング32に固定すると取り付けることができる。
【0044】
一方、ミラーハウジング32の切り欠き部34にカバー部35を取り付ける場合は、光学部材33を取り付ける場合と同様に、カバー部35をミラーハウジング32の内側から切り欠き部34に向かわせるとともに、ミラーハウジング32側の取付孔36に取付片38の取付孔37を合わせ、かつタッピングスクリュー39を取付孔36に取付片38側の取付孔37を通してねじ込み、取付片38をミラーハウジング32に固定すると取り付けることができる。
【0045】
したがって、この第2実施例のドアミラー31の構造でも、オプション等により、ドアミラー装置に車両前輪付近の視界を確保する機能を持たせたい場合には、ミラーハウジング32の切り欠き部34に光学部材33を取り付け、機能を必要としない場合にはミラーハウジング32にカバー部35を取り付けて切り欠き部34を塞ぐ、等の選択使用が可能になり、光学部材33を設けたドアミラー31と光学部材33を設けていないドアミラー31の両方に、同じミラーハウジング32を使用することができ、これによりミラーハウジング32の汎用化を図ることができる。また、従来の車両用アウトサイドミラー装置を取り付けている位置とさほど変わることのない位置に取り付けることができる。さらに、光学部材33を取り付ける場合も、ミラーハウジング32の切り欠き部34に光学部材33を収容させるようにして取り付けることができるので、ミラーハウジング32の見栄えを損なう程、外形を大きく変えたりしなくても取り付けることができることになる。
【0046】
なお、第2実施例のドアミラー31の構造では、ミラーハウジング32と光学部材33またはミラーハウジング32とカバー部35の固定を、タッピングスクリュー39で固定する構造を開示したが、例えば図13及び図14に示すように、ミラーハウジング32側に、光学部材33及びカバー部35側の取付片38に対応させてランス42を設け、取付片38とランス42との係合により互いに取り付け固定するようにすると、タッピングスクリュー39を使用しないで固定することができる。
【0047】
すなわち、図13及び図14に示すランス42は、ミラーハウジング32の内面から上下方向に突設された中空軸状の支軸40と、この支軸40を挟んだ左右の位置にそれぞれミラーハウジング32の内面から後方に向かって突出した状態で設けられた左右1対の弾性係止片41とより成り、各弾性係止片41の先端部には、内側に向かって突設されてなる係止爪41aが各々一体に形成されている。なお、支軸40は、取付片38側の取付孔37に嵌合可能に形成されている。また、左右1対の弾性係止片41は、取付片38を受入れ可能に形成されており、さらに各弾性係止片の係止爪41aは、取付片38が所定の位置まで挿入されると、弾性係止片26の係止爪41aが掛け止めされて係止される構造になっている。
【0048】
したがって、ミラーハウジング32の切り欠き部34に光学部材33(またはカバー部35)を取り付ける場合は、光学部材33(またはカバー部35)をミラーハウジング32の内側から切り欠き部34に向かわせ、取付片38の取付孔37をミラーハウジング32側の支軸40に合わせて押し込むと、それぞれの取付片38が弾性係止片41の係止爪41aに各々掛け止め固定されて取り付けることができる。
【0049】
(実施形態2)
上述した実施形態1に示した光学部材14は、たとえば、図5に示したように、ドアミラー13において、その側面側(図中左側)から車両前方側(図中下側)へほぼ水平に延在するようにして設けられたものとしたものである。
このため、運転者がミラー部材17を通して車両の後方を認識できる配置状態にあるドアミラー13において、運転者は、ミラー部材17とともにドアミラー13の側面側を目視することができるようになっている。図15は、ドアミラー13を運転者側から観た斜視図である。図15に示すように、ドアミラー13は、ミラー部材17とともに、ミラーハウジング19の側面(図中符号19Aで示す)が運転者にとってよく見える位置にあり、光学部材14の一部はこのミラーハウジング19の側面において目視できるようになっている。この場合、運転者が目視できるミラーハウジング19の側面19Aは比較的大きな領域を有することから、それに応じて光学部材14の面積も充分に大きく構成することができる。このことは、運転者が光学部材14を通して得られる車両前輪付近の視界像を大きな領域で認識できる効果を奏するようにできる。また、運転者は、ドアミラー13を目視する場合、光学部材14とミラー部材17は互いに隣接して配置されていることから、視線の大きな移動なく、ミラー部材17および光学部材14にそれぞれ映る視野角像を明瞭に認識することができる効果を奏する。
また、光学部材14は、ドアミラー13の側面側から車両前方側へ延在させるように構成させることによって、車両前方側へ延在された光学部材14の面積も大きくでき、これにより、光学部材14が捉える車両前輪付近の視界を、車両の前後方向および車両の幅方向のいずれにおいても、大幅に拡大できる効果を奏することができる。
【0050】
(実施態様3)
上述した実施形態1、2では、いずれも、運転者が光学部材14を通して確保する視界像は、車両前輪付近として説明したものである。しかし、前述したように、本発明に係るドアミラー13に具備される光学部材14は、該ドアミラー13への上述したような取付態様(配置)によって、視界の大幅な拡大を実現できるものとなっている。このことから、光学部材14が捉える視角範囲を車両前輪付近以外の領域に及んで拡大させるようにしてもよいことはいうまでもない。
図16は、車両を上方から観た図である。図16に示す車両は、まず、運転者の車両前方の視野が車両の前方に取り付けられているピラー40’によって妨げられていることを示している。この場合、運転者から観たピラー40’の死角は、車両前輪付近を含んだ車両前輪付近以外の領域にも及んで形成される。
このため、実施態様3では、たとえば、光学部材14を構成するフレネルレンズ、メニスカスレンズ、プリズムレンズ等の屈折率を適切に設定することによって、光学部材14が捉える視角範囲を車両前輪付近以外の領域に及んで拡大させるようにしている。この場合、光学部材14を、たとえば、ドアミラー13の側面側から車両前方側へ延在させるように構成にすることによって、面積を大きくすることができることから、光学部材14の視角範囲の拡大を容易に行うことができるようになる。したがって、このように構成することによって、ピラー40’によって死角となる領域においても、ドアミラー13の光学部材14を通して充分に目視できる効果を奏する。
【0051】
(実施態様4)
上述した実施態様1、2、3では、いずれも光学部材14は、フレネルレンズ、メニスカスレンズ、プリズムレンズ等を備えたものとして構成したものである。しかし、これに限定されることはなく、透明部材のみによって構成するようにしてもよい。
図17は、光学部材14を透明部材14’によって構成したドアミラー13を示している。図17(a)は、図4に対応づけて描いた図で、車両用アウトサイドミラーの背面図である。また、図17(b)は、図17(a)のb−b線における断面図である。
まず、図17(a)に示すように、透明部材14’は、ドアミラー13のミラーハウジング19の運転者側の側面19Aに形成されている。この場合、透明部材14’の表面はミラーハウジング19の表面とほぼ面一となっており、透明部材14’はミラーハウジング19の外枠の一部を構成するようになっている。これにより、透明部材14’は意匠的に見映えのよい構成とすることができる。なお、実施態様1、2、3において示したターンシグナルランプ20はこの実施態様4において設けられていないものとして示したが、これに限定されることはなく、ターンシグナルランプ20を設けるようにしてもよい。
そして、透明部材14’の背面には空間部50が設けられ、運転者からの視線に基づく光路αは、透明部材14’の運転者側の側面14A’、空間部50、透明部材14’の車両前方側の側面14B’を通して形成されるようになっている。これにより、運転者はこれまでドアミラー13によって死角になっていたドアミラー13の前方における対象物を、透明部材14’を観ることにより視認できるようになる。
【0052】
なお、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲に限定されるものではなく、上記以外の多様な変更または改良を加えることも可能で、そして本発明に開示されたものにも及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0053】
11 車両用アウトサイドミラー装置
13 アウトサイドミラー(ドアミラー)
14 光学部材
14’ 透明部材
15 ミラーベース
16 フロントサイドドア
17 ミラー部材
18 凹部
19 ミラーハウジング
20 ターンシグナルランプ
21 切り欠き部
31 ドアミラー
32 ミラーハウジング
33 光学部材
34 切り欠き部
35 カバー部
40’ ピラー
50 空間部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後方を写すミラーと、該ミラーを取り付ける凹部を有したミラーハウジングを備える車両用アウトサイドミラー装置において、
前記ミラーハウジングは、車両前輪付近の視界を確保する光学部材を取り付け可能な切り欠き部を設けてなることを特徴とする車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項2】
前記光学部材は、フレネルレンズであることを特徴とする請求項1記載の車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項3】
前記ミラーハウジングは、前記切り欠き部を閉塞する着脱可能なカバー部を備え、前記光学部材は前記カバー部を取り外した後の箇所に取り付けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項4】
前記ミラーハウジングの前記切り欠き部は、ターンシグナルランプと一体化された前記光学部材を取り付け可能なスペースを有してなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用アウトサイドミラー装置。
【請求項5】
運転者が前記ミラーを通して車両の後方を目視できる状態にある車両用アウトサイドミラー装置にあって、
前記光学部材は、前記運転者が目視できる側面側から車両前方側へ延在されるようにして設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用アウトサイドミラー装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−214204(P2012−214204A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170494(P2011−170494)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】