説明

車両用オットマン装置

【課題】配置スペースの制約をより緩和することができる車両用オットマン装置を提供する。
【解決手段】調整機構20は、オットマン6が格納状態にあるときにこれを保持し、オットマン6の最大展開状態までの調整領域でその展開方向への作動を許容するとともに格納方向への作動を係止し、オットマン6が最大展開状態から展開方向に更に作動した際にその格納方向への作動を許容するように動作が切り替わり、オットマン6の格納状態へ復帰自在となるように動作が切り替わる。ブラケット61に回動自在に連結されたフックと、主回動リンク64に固定されオットマン6の格納状態でフックが掛止されてオットマン6の展開方向への作動を係止するストライカピンとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに設けられるオットマンを調整するための車両用オットマン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用オットマン装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。図15に示すように、この装置では、シートクッション91側部の前端部にブラケット92が固着されるとともに、該ブラケット92にリンク機構93を介してオットマン94が連結されている。リンク機構93は、いわゆるパンタグラフリンクを構成するもので、シート前方に突き出されることでオットマン94が展開され、シート後方に折り畳まれることでオットマン94が格納される。
【0003】
そして、リンク機構93は、操作ノブの操作力が、いわゆる2ウェイロータリークラッチ機構からなるブレーキ装置95と、ピニオン96及びセクタギヤ97からなる伝達機構とを介して伝達されることで、オットマン94が展開・格納されるように作動する。従って、オットマン94の姿勢は、操作ノブの回転操作によって調整可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−240350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、操作ノブをシートクッション91側(ブラケット92側)のリンク機構93の連結部側面に配置せざるを得ず、シート幅方向において配置スペースの制約を余儀なくされる。
【0006】
本発明の目的は、配置スペースの制約をより緩和することができる車両用オットマン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、シートクッション及びオットマン間に介設され、前記オットマンが格納状態にあるときに該オットマンを保持し、前記オットマンの最大展開状態までの調整領域で該オットマンの展開方向への作動を許容するとともに格納方向への作動を係止し、前記オットマンが最大展開状態から展開方向に更に作動した際に該オットマンの格納方向への作動を許容するように動作が切り替わり、前記オットマンの格納状態へ復帰自在となるように動作が切り替わる調整機構と、前記シートクッション及び前記オットマン間の前記シートクッション側の第1部材及び前記オットマン側の第2部材のいずれか一方に回動自在に連結されたフックと、前記第1部材及び前記第2部材のいずれか他方に固定され、前記オットマンの格納状態で前記フックが掛止されて前記オットマンの展開方向への作動を係止するストライカピンと、前記ストライカピンが固定される前記第1部材又は前記第2部材に設けられた当接部材とを備え、前記フックは、前記オットマンの格納状態で該オットマンが格納方向に更に作動した際に前記ストライカピンに案内されて前記オットマンの展開方向への作動を許容するように前記ストライカピンを解放可能なアンロック位置へと回動し、前記オットマンの展開方向への作動に伴い前記当接部材に案内されて前記オットマンの格納状態で前記ストライカピンを掛止可能なロック位置へと回動し、前記調整機構により許容される前記オットマンの格納方向への作動に伴い前記オットマンの格納状態で前記ストライカピンを掛止することを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、前記オットマンの調整領域では、前記調整機構により最大展開状態までの前記オットマンの展開方向への作動が許容されるとともに格納方向への作動が係止される。従って、前記オットマンを展開方向に作動させることで該オットマンを調整することができる。これにより、例えば前記オットマンを調整するための操作ノブを不要化することができ、配置スペースの制約をより緩和することができる。
【0009】
また、前記オットマンの格納状態は、前記調整機構に加えて、前記ロック位置にある前記フックが前記ストライカピンを掛止することでも保持される。従って、前記オットマンの格納状態を、これらの協働によってより堅固に保持することができる。
【0010】
そして、前記オットマンの格納状態で該オットマンを格納方向に更に作動させると、前記ストライカピンに案内される前記フックが、前記オットマンの展開方向への作動を許容するように前記ストライカピンを解放可能な前記アンロック位置へと回動する。これにより、前記調整機構による前記オットマンの調整領域での調整が可能となる。
【0011】
前記オットマンが展開方向に作動すると、前記当接部材に案内される前記フックが、前記オットマンの格納状態で前記ストライカピンを掛止可能な前記ロック位置へと回動する。従って、その後、前記調整機構により許容される格納方向に前記オットマンを作動させると、前記ロック位置にある前記フックが前記オットマンの格納状態で前記ストライカピンを掛止して、前記オットマンの展開方向への作動を係止する。これにより、前記オットマンの格納状態を前記フック及び前記ストライカピンによって再び保持することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用オットマン装置において、前記オットマンの格納状態で前記フックを前記ロック位置に回動付勢し、前記オットマンの格納状態で該オットマンが格納方向に更に作動した際に前記ストライカピンに案内される前記フックの回動に伴ってターンオーバーして前記フックを前記アンロック位置へと回動付勢し、前記オットマンの展開方向への作動に伴い前記当接部材に案内される前記フックの回動に伴ってターンオーバーして前記フックを前記ロック位置へと回動付勢する反転用スプリングとを備えたことを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、前記オットマンの格納状態では、前記反転用スプリングは、前記ストライカピンを掛止する前記フックを前記ロック位置に回動付勢することで、前記オットマンの格納状態をより安定した状態で保持することができる。そして、前記オットマンの格納状態で該オットマンを格納方向に更に作動させると、前記反転用スプリングは、ターンオーバーして前記フックを前記アンロック位置へと回動付勢する。これにより、前記オットマンの展開方向への作動をより安定した状態で開始することができる。その後、前記オットマンを展開方向に作動させると、前記反転用スプリングは、ターンオーバーして前記フックを前記ロック位置へと回動付勢する。従って、その後、前記調整機構により許容される格納方向に前記オットマンを作動させた際に、該オットマンの格納状態で前記フックを前記ストライカピンに、より円滑に掛止することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用オットマン装置において、前記オットマンは、前記シートクッションに固定された取付部材に回動自在に連結されたアーム部材を介して前記シートクッションに支持されており、前記第1部材は、前記取付部材であり、前記第2部材は、前記アーム部材であることを要旨とする。
【0015】
同構成によれば、前記フック及び前記ストライカピンは、前記シートクッションに直近の前記取付部材又は前記アーム部材に配設されることで、前記シートクッションに対する組付誤差が抑制される分、より高精度に動作することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用オットマン装置において、前記第1部材及び前記第2部材のいずれか一方に設けられた係止部材と、前記第1部材及び前記第2部材のいずれか他方に設けられ、一方の脚部が当該第1又は第2部材に係止され、他方の脚部が前記オットマンの格納状態で前記係止部材に当接又は近接され、前記オットマンが格納方向に更に作動した際に前記係止部材に前記他方の脚部が押圧されることで前記オットマンを展開方向に作動させる付勢力を発生する付勢手段とを備えたことを要旨とする。
【0017】
同構成によれば、前記オットマンの格納状態でこれを展開する際、当該作動を許容するように前記フックを前記アンロック位置へと回動させる前記オットマンの作動(格納方向への更なる作動)に合わせて、前記付勢手段において前記オットマンを展開方向に作動させる付勢力を発生することができる。従って、前記フック等による前記オットマンの展開方向への作動係止の解除に合わせて、前記オットマンの展開方向への作動を前記付勢手段で助勢することができ、前記オットマンを円滑に展開方向に作動させることができる。
【0018】
また、前記付勢手段の前記他方の脚部は、前記オットマンの格納状態で前記係止部材に当接又は近接するため、例えば車両振動などの影響で格納状態にある前記オットマンが格納方向に作動しようとすると、前記付勢手段においてこれに抗する付勢力を発生する。従って、前記フックと前記ストライカピンとの掛止が外れる可能性を低減できる。あるいは、前記オットマンが格納状態にあるときに、前記付勢手段において前記オットマンを展開方向に作動させる付勢力が徒に発生することを回避できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、配置スペースの制約をより緩和することができる車両用オットマン装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明が適用されるシートの斜視図。
【図2】本発明の一実施形態の動作を説明する側面図。
【図3】同実施形態を示す斜視図。
【図4】同実施形態を示す斜視図。
【図5】(a)は(b)のA−A線に沿った断面図であり、(b)は(a)のB−B線に沿った断面図。
【図6】同実施形態の調整機構を示す分解斜視説明図。
【図7】(a)は同実施形態のロック機構を示すシート幅方向内側から見た側面図であり、(b)は(a)のC−C線に沿った断面図。
【図8】(a)は同実施形態の反発スプリングを示すシート幅方向外側から見た側面図であり、(b)は(a)のD−D線に沿った断面図。
【図9】(a)(b)は、オットマンが格納状態から格納方向に更に作動した際のロック機構及び調整機構の動作を示す説明図。
【図10】(a)(b)は、オットマンが調整領域にあるときのロック機構及び調整機構の動作を示す説明図。
【図11】調整機構の反転開始時の動作を示す説明図。
【図12】調整機構の反転完了時の動作を示す説明図。
【図13】(a)(b)は、オットマンが格納中のときのロック機構及び調整機構の動作を示す説明図。
【図14】(a)(b)は、オットマンが格納状態に復帰する直前のロック機構及び調整機構の動作を示す説明図。
【図15】従来形態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図14を参照して本発明の一実施形態について説明する。図1に示すように、車両フロアには、乗員の着座部を形成するシート1が設置されている。このシート1は、座面を形成するシートクッション2と、該シートクッション2の後端部に傾動(回動)自在に支持されたシートバック3と、該シートバック3の上端部に支持されたヘッドレスト4と、シートバック3の高さ方向中間部においてそのシート幅方向両側に配設された一対のアームレスト5と、シートクッション2の前端部に傾動(回動)自在に支持されたオットマン6とを備えて構成される。そして、シート1は、シートクッション2に対するシートバック3の傾斜角度が調整可能であるとともに、該シートバック3に対する両アームレスト5の傾斜角度が調整可能である。また、シート1は、シートクッション2に対するオットマン6の傾斜角度が調整可能である。これにより、当該シート1の着座者は、例えばその求める快適性に合わせて着座姿勢を調整可能である。
【0022】
次に、オットマン6及びその周辺構造について説明する。図2に示すように、シートクッション2側部の骨格をなす、例えば金属板からなるシートクッションサイドフレーム2aの前端部には、例えば金属板からなる第1部材及び取付部材としてのブラケット61が固着されている。そして、オットマン6を支持する、例えば金属板からなる支持ブラケット62は、リンク機構63を介してブラケット61に連結されている。リンク機構63の各支持軸は、シート幅方向に延びる軸線を有する。
【0023】
リンク機構63は、いわゆるパンタグラフリンクを構成するもので、第2部材及びアーム部材としての主回動リンク64と、副回動リンク65と、第1揺動リンク66と、第2揺動リンク67とを備える。主回動リンク64は、一方の端部がブラケット61の上端部に回動自在に連結されており、他方の端部が第1揺動リンク66の一方の端部に回動自在に連結されている。そして、第1揺動リンク66の他方の端部は、支持ブラケット62の先端部に回動自在に連結されている。
【0024】
副回動リンク65は、一方の端部がブラケット61の下端部に回動自在に連結されており、他方の端部が第2揺動リンク67の一方の端部に回動自在に連結されている。そして、第2揺動リンク67の他方の端部は、支持ブラケット62の基端部に回動自在に連結されている。なお、主回動リンク64の長手方向中間部には、第2揺動リンク67の長手方向中間部が回動自在に連結されている。
【0025】
そして、例えば主回動リンク64が略下方に延在する状態から図示時計回りに回動すると、図示2点鎖線で描画したように、第1及び第2揺動リンク66,67がシート前方に突き出され、支持ブラケット62に支持されたオットマン6が展開される。一方、オットマン6の展開状態(主回動リンク64が略前方に延在する状態)から主回動リンク64が図示反時計回りに回動すると、第1及び第2揺動リンク66,67がシート後方に折り畳まれ、支持ブラケット62に支持されたオットマン6が格納される。
【0026】
なお、図3及び図4に示すように、シートクッションサイドフレーム2aに固定等されるブラケット61、支持ブラケット62及びリンク機構63(主回動リンク64、副回動リンク65、第1及び第2揺動リンク66,67)は、シート幅方向両側に対をなして配設されている。そして、両側の主回動リンク64は、シート幅方向にこれらを橋渡しする略円筒状の連結棒68によって一体作動するように連結されるとともに、両側の第1揺動リンク66は、シート幅方向にこれらを橋渡しする略円筒状の連結棒69によって一体作動するように連結されている。
【0027】
図3に示すように、片側(シート前方に向かって右側)の主回動リンク64(以下、「主回動リンク64R」ともいう)の一方の端部と当該側のブラケット61(以下、「ブラケット61R」ともいう)の上端部との間には、円盤状の調整機構20が介設されている。つまり、当該主回動リンク64Rの一方の端部は、調整機構20を介してブラケット61Rの上端部に回動自在に連結されている。
【0028】
また、図4に示すように、反対側(シート前方に向かって左側)の主回動リンク64(以下、「主回動リンク64L」ともいう)と当該側のブラケット61(以下、「ブラケット61L」ともいう)との間には、ロック機構70が設けられている。
【0029】
ここで、シートクッション2に対するオットマン6の傾斜角度について説明する。図2に示すように、シートクッション2に対するオットマン6の傾斜角度θ1に相関する主回動リンク64の回動位置には、支持ブラケット62(オットマン6)と共に主回動リンク64が略下方に延在する所定の格納位置B0から主回動リンク64が前方斜め下方に延在する所定の第1境界位置B1までの助走範囲Z11と、第1境界位置B1から主回動リンク64が略前方に延在する所定の第2境界位置B2までの調整範囲Z12と、第2境界位置B2から主回動リンク64が略斜め上方に延在する所定の反転位置B3までの空走範囲Z13と、格納位置B0から主回動リンク64が後方斜め下方に延在する所定の解除位置B4までの解除範囲Z14とが設定されている。
【0030】
調整範囲Z12では、調整機構20により、主回動リンク64が第1境界位置B1から第2境界位置B2に向かう図示時計回りの回動、即ちオットマン6の上動が許容されるとともに、逆回り(図示反時計回り)の回動、即ちオットマン6の下動が係止される。そして、主回動リンク64の回動位置、即ちオットマン6の傾斜角度θ1が、所定角度ごとに多段階(本実施例では7段階)で調整・保持可能となっている。つまり、主回動リンク64の調整範囲Z12は、オットマン6の傾斜角度θ1を調整可能な調整領域に相当する。
【0031】
一方、助走範囲Z11では、調整機構20により、主回動リンク64の両方向の回動、即ちオットマン6の上下動が許容される。同様に、空走範囲Z13では、調整機構20により、主回動リンク64の両方向の回動、即ちオットマン6の上下動が許容される。特に、主回動リンク64が反転位置B3に到達した後は、調整機構20により、調整範囲Z12でのオットマン6の下動も許容されるようにその動作が切り替えられる。また、解除範囲Z14では、調整機構20により、主回動リンク64の両方向の回動が許容される。
【0032】
なお、主回動リンク64の格納位置B0は、オットマン6の格納状態に相当し、第2境界位置B2は、オットマン6の最大展開状態に相当する。オットマン6の格納状態では、ロック機構70により、オットマン6の展開方向への作動(主回動リンク64の第1境界位置B1に向かう回動)が係止されている。このロック機構70は、オットマン6を格納方向(押し込み方向)に更に作動させるべく、主回動リンク64を解除位置B4に向けて回動させることで解除されるようになっている。
【0033】
次に、調整機構20について説明する。図5(a)(b)に示すように、調整機構20は、シート幅方向に中心線(軸線)O1の延びる円盤状の第1ブラケット21及び第2ブラケット31を備えている。第1ブラケット21は、例えば主回動リンク64R(オットマン6側)に固定され、第2ブラケット31は、ブラケット61R(シートクッション2側)に固定される。
【0034】
第1ブラケット21は、例えば金属板の半抜き(ハーフブランキング)により成形されたもので、中心線O1を中心とする円形の外周面22を有するとともに、第2ブラケット31側に開口する略円形の凹部23を有している。この凹部23は、中心線O1に関して点対称(回転対称)に成形されており、中心線O1を挟む内壁面の両側に一対の解除壁部51、該解除壁部51に連続する円弧面状の助走壁部52、該助走壁部52に連続するラチェット内歯部24、該ラチェット内歯部24に連続する円弧面状の空走壁部25、及び解除壁部51と反対側の空走壁部25との間で中心線O1側に突出する切替壁部26を一体的に有する。また、第1ブラケット21は、中心線O1を含むその周辺で第2ブラケット31側に突設された略円柱状のスプリング押さえ壁部27を有する。
【0035】
なお、解除壁部51は、助走壁部52から離隔する図示時計回りに向かうに従い径方向外側に向かうように傾斜する。また、切替壁部26の解除壁部51に隣接する側の壁面は、基端部が中心線O1に向かう方向よりも解除壁部51寄りに直線状に延びるように突出してブラケット側復帰用壁部28を形成する。一方、切替壁部26の空走壁部25に隣接する側の壁面は、基端部が中心線O1に向かう方向よりも空走壁部25寄りに曲線状に延びるように突出してブラケット側反転用壁部29を形成する。
【0036】
第2ブラケット31は、例えば金属板の半抜きにより成形されたもので、図6に示すように、第1ブラケット21側に開口する円形の凹部32を有している。凹部32は、第1ブラケット21の外周面22の外径と同等の内径の内周面33を有する。この凹部32内は、中心線O1に関して点対称(回転対称)に成形されており、第2ブラケット31は、凹部32の中央部から第1ブラケット21の反対側に凹設された略小判形のスプリング収容部34を有する。そして、スプリング収容部34内には、中心線O1と略平行に延びる一対のブラケット側スプリング係止穴35が形成されるとともに、スプリング収容部34の外側縁部には、一対の略円柱状のポール軸部36が突設され、更に該ポール軸部36に隣接して一対の略円柱状のポール支持部37が突設されている。なお、ポール軸部36及びポール支持部37の突出方向は、中心線O1と略平行に設定されている。
【0037】
図5(b)に示すように、第1ブラケット21は、その外周面22で、第2ブラケット31の内周面33と摺接するように嵌合されている。そして、第1及び第2ブラケット21,31の外周部には、第1ブラケット21の外周面22と第2ブラケット31の内周面33とが嵌合された状態で、金属板からなるリング状の保持部材30が装着されている。第1及び第2ブラケット21,31は、この保持部材30によって相対回動が許容された状態で軸線方向に抜け止めされており、それらの間に収容空間Sを形成する。つまり、この収容空間Sは、第1ブラケット21の凹部23の内壁面及びスプリング押さえ壁部27の外壁面、第2ブラケット31の凹部32の内壁面及びスプリング収容部34の内壁面によって区画されている。なお、第2ブラケット31のポール軸部36及びポール支持部37は、第1及び第2ブラケット21,31の相対回動範囲内(オットマン6の傾斜角度θ1に相関する主回動リンク64の回動位置が解除位置B4から反転位置B3までの範囲に相当)で、第1ブラケット21の凹部23内に収まるように配置されている。
【0038】
収容空間Sには、例えば鋼材からなる一対のポール41が収容されている。すなわち、両ポール41は、軸線方向において主に凹部32の範囲を利用して収容空間Sに収容されている。図6に示すように、このポール41は、ポール軸部36に軸支される円形の軸受孔42を有するとともに、該軸受孔42を中心とする互いに略相反する径方向に延びる爪状のポール側復帰用壁部としての歯止め部43及びポール側反転用壁部44を有する。なお、ポール41の歯止め部43及びポール側反転用壁部44の中間の角度位置から径方向に延出する延出部41aには、中心線O1と略平行に延びるポール側スプリング係止穴45が形成されている。
【0039】
また、収容空間Sには、例えば捩りばねからなる一対のポール反転用スプリング46がスプリング収容部34の空間を利用して収容されている。このポール反転用スプリング46は、中心線O1と略平行に軸線方向の延びるコイル部47を有する。また、ポール反転用スプリング46は、コイル部47の第2ブラケット31から離隔する側の端末から中心線O1と略平行に屈曲してブラケット側スプリング係止穴35に嵌入される第1脚部48を有するとともに、コイル部47のポール41から離隔する側の端末から中心線O1と略平行に屈曲してポール側スプリング係止穴45に嵌入される第2脚部49を有する。つまり、第1及び第2脚部48,49は、コイル部47の外周部に被さってブラケット側スプリング係止穴35及びポール側スプリング係止穴45にそれぞれ固定されている。
【0040】
従って、図5(a)に示すように、収容空間Sには、ポール41及びポール反転用スプリング46を1組とする複数組(2組)が、収容空間S内で回転対称に配置されている。なお、スプリング収容部34に配置されたコイル部47は、第1ブラケット21のスプリング押さえ壁部27が当接又は近接することで、軸線方向に規制されている。
【0041】
次に、ロック機構70について説明する。図7(a)(b)に示すように、ロック機構70は、前記副回動リンク65の一方の端部の支持軸Ax1周りにブラケット61Lに回動自在に連結された、例えば金属板からなるフック71を備える。このフック71は、支持軸Ax1を挟んでその前方及び後方にそれぞれ延出する第1延出部72及び第2延出部73を有する。第1延出部72の下端には、鉤爪状のフック部72aが形成されている。そして、第1延出部72は、フック部72a後方の下面を直線状に傾斜させて第1反転カム面72bを形成する。また、第1延出部72は、フック部72aの上面を直線状に延在させて第2反転カム面72cを形成する。さらに、第1延出部72は、フック部72aに繋がるその先端面を直線状に傾斜させてロック用カム面72dを形成する。一方、第2延出部73の先端部には、支持軸Ax1を中心とする周方向に延在する長孔状の係止孔73aが形成されている。
【0042】
第2延出部73の係止孔73aには、支持軸Ax1と平行にブラケット61Lに突設された略円柱状の係止ピン74が挿通されている。従って、ブラケット61Lに対する支持軸Ax1周りのフック71の回動範囲は、係止孔73aの下面が係止ピン74に当接する回動位置(以下、「フック71のロック位置」ともいう)から、係止孔73aの上面が係止ピン74に当接する回動位置(以下、「フック71のアンロック位置」ともいう)までの範囲に制限されている。
【0043】
第1延出部72の先端部には、支持軸Ax1と平行に略円柱状の係止ピン75が突設されている。そして、係止ピン74の係止孔73aを貫通する先端部及び係止ピン75には、例えば引っ張りコイルスプリングからなる反転用スプリング76の一方の脚部及び他方の脚部がそれぞれ係止されている。この反転用スプリング76は、フック71がロック位置にあるときに支持軸Ax1の下側に延在することで、該フック71がロック位置に保持されるようにこれを回動付勢する。一方、反転用スプリング76は、フック71がアンロック位置にあるときにターンオーバーして支持軸Ax1の上側に延在することで、該フック71がアンロック位置に保持されるようにこれを回動付勢する。
【0044】
主回動リンク64Lには、支持軸Ax1と平行に略円柱状のストライカピン77が突設されている。このストライカピン77は、オットマン6が図7に示す格納状態にあるとき、ロック位置にあるフック71のフック部72aに嵌入する。つまり、オットマン6の格納状態では、フック71がストライカピン77に掛止されることで、オットマン6の展開方向への作動が係止されている。なお、主回動リンク64Lの支持軸Ax2近傍には、主回動リンク64Lが第2境界位置B2に向かって図示反時計回りに回動する際に第2反転カム面72cに当接可能な当接部材としての爪状の反転カム部78が形成されている。
【0045】
図8(a)(b)に示すように、主回動リンク64Lの一方の端部の支持軸Ax2周りには、例えば渦巻きばねからなる付勢手段としての反発スプリング81が巻回されている。この反発スプリング81の内周側の脚部82は、支持軸Ax2と平行にブラケット61Lに突設された円弧壁状の係止部86に係止されている。一方、主回動リンク64Lには、支持軸Ax2と平行に係止部材としての略円柱状の係止ピン87が突設されている。そして、反発スプリング81の外周側の脚部83は、オットマン6が図8に示す格納状態にあるときに係止ピン87に当接又は近接しており、主回動リンク64Lが解除位置B4に向かう図示反時計回りの回動軌跡を遮るように配置されている。従って、オットマン6の格納状態でこれを格納方向に更に作動させると、主回動リンク64Lの図示反時計回りの回動に伴って係止ピン87に外周側の脚部83の押圧される反発スプリング81が締め付けられ、該反発スプリング81に主回動リンク64Lを図示時計回りに回動させる付勢力、即ちオットマン6を展開方向に作動させる付勢力が発生する。換言すれば、反発スプリング81は、オットマン6が格納状態にあるとき、該オットマン6が格納方向に更に作動することをその付勢力の範囲で抑制している。
【0046】
このような構成にあって、オットマン6が格納状態にあり、主回動リンク64が格納位置B0にあるときの第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置は、図5(a)に示す状態となっている。このとき、ポール41は、前記ポール反転用スプリング46によりポール軸部36(軸受孔42)を中心に図示反時計回り(以下、「正方向」ともいう)に回動付勢されて、その歯止め部43を解除壁部51及び助走壁部52の境界位置付近に当接する。また、このときのロック機構70の状態は、図7に示すように、反転用スプリング76に回動付勢されてロック位置に保持されるフック71にストライカピン77が掛止される状態となっている。さらに、このときの反発スプリング81の状態は、図8に示すように、その外周側の脚部83が係止ピン87に当接又は近接する状態となっている。
【0047】
従って、オットマン6の格納状態での姿勢保持(主回動リンク64の格納位置B0での保持)は、展開方向に関しては第1及び第2ブラケット21,31間の摩擦力とロック機構70の掛止力との協働で実現しており、格納方向に関しては第1及び第2ブラケット21,31間の摩擦力と反発スプリング81の付勢力との協働で実現している。
【0048】
この状態で、オットマン6を格納方向に作動させて(押し込んで)、反発スプリング81の付勢力に抗して主回動リンク64を解除位置B4に向けて回動させたとする。この場合、図9(a)に示すように、第1反転カム面72bにおいてストライカピン77に案内されるフック71が支持軸Ax1を中心に図示反時計回りに回動し、反転用スプリング76がターンオーバーする。これにより、フック71は、反転用スプリング76によりアンロック位置を保持するように回動付勢される。このとき、フック71のフック部72aは、支持軸Ax2を中心とするストライカピン77の図示反時計回りの回動軌跡から外れるように設定されている。これにより、主回動リンク64の図示反時計回りの回動が許容されて、オットマン6の展開方向への作動が可能となる。なお、オットマン6が展開方向への作動を開始する際には、当該作動が反発スプリング81の付勢力によって助勢される。
【0049】
一方、主回動リンク64が解除位置B4にあるときの第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置は、図9(b)に示す状態となっている。すなわち、第2ブラケット31に対する第1ブラケット21の図示反時計回りの回動に伴って、ポール反転用スプリング46により回動付勢されるポール41の歯止め部43が解除壁部51の終端付近に当接する。つまり、格納状態にあるオットマン6の格納方向への更なる作動が、調整機構20によって阻害されることはない。
【0050】
オットマン6の展開方向への作動が可能になると、当該作動に伴い主回動リンク64は、ストライカピン77をフック71から離脱させつつ、助走範囲Z11を経て調整範囲Z12にその回動位置が到達する。このとき、係止ピン87から脚部83の解放された反発スプリング81は、弾性復帰して自由状態となっている。特に、主回動リンク64が図10(a)に示す状態に達すると、反転カム部78がフック71の第2反転カム面72cを押圧し始めることで、該第2反転カム面72cにおいて反転カム部78に案内されるフック71が支持軸Ax1を中心に図示時計回りに回動し、反転用スプリング76がターンオーバーする。これにより、フック71は、反転用スプリング76によりロック位置を保持するように回動付勢される。
【0051】
一方、主回動リンク64の回動位置が調整範囲Z12にあるとき、第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置は、図10(b)に示すように、ポール41の歯止め部43がラチェット内歯部24に噛合可能な状態となっている。従って、第1ブラケット21は、ポール反転用スプリング46により正方向に回動付勢されるポール41の歯止め部43がラチェット内歯部24の初段の歯部24aに歯合する相対回転位置から終段の歯部24bに歯合する相対回転位置までの範囲では、第2ブラケット31に対して図示時計回りに回動可能であるとともに、図示反時計回りに回動不能である。
【0052】
つまり、第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置は、歯止め部43がラチェット内歯部24の初段の歯部24aに歯合する相対回転位置から終段の歯部24bに歯合する相対回転位置までの範囲で段階的に調整・保持可能である。そして、主回動リンク64の回動位置も、これに合わせて段階的に調整・保持可能である。ポール41の歯止め部43がラチェット内歯部24の初段の歯部24aに歯合するときの第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置は、主回動リンク64の第1境界位置B1に相当する。また、ポール41の歯止め部43がラチェット内歯部24の終段の歯部24bに歯合するときの第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置は、主回動リンク64の第2境界位置B2に相当する。
【0053】
主回動リンク64が第2境界位置B2から反転位置B3に向かって更に回動し、第2ブラケット31に対して第1ブラケット21が図示時計回りに更に回動すると、図11に示すようにポール41の歯止め部43がラチェット内歯部24の終段の歯部24bを乗り越えて空走壁部25を摺動しようとする。同時に、ポール41は、ポール側反転用壁部44が切替壁部26のブラケット側反転用壁部29に押圧され始めることで、ポール反転用スプリング46の付勢力に抗して図示時計回りに回動し始める。
【0054】
そして、主回動リンク64が第2境界位置B2から反転位置B3に向かって更に回動し、第2ブラケット31に対して第1ブラケット21が図示時計回りに更に回動すると、図12に示すようにポール41の図示時計回りへの更なる回動に伴いポール反転用スプリング46がターンオーバーする。これにより、ポール反転用スプリング46によりポール41がポール軸部36(軸受孔42)を中心に図示時計回り(以下、「逆方向」ともいう)に回動付勢される。つまり、ポール41は、ポール反転用スプリング46により前記逆方向に回動付勢されるように反転する。
【0055】
ポール41が反転すると、そのポール側反転用壁部44がポール支持部37に保持されて回り止めされる。このようにポール41の反転した状態では、該ポール41は凹部23等(第1ブラケット21)から離脱しており、ポール41によって第1ブラケット21に対する第2ブラケット31の図示時計回りの回動(戻り回動)が阻害されることはない。ポール41が反転するときの第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置は、主回動リンク64の反転位置B3に相当する。
【0056】
なお、主回動リンク64が第2境界位置B2及び反転位置B3間(空走範囲Z13)を回動する際、反転用スプリング76に付勢されるフック71はロック位置に保持されたままであり、反発スプリング81も自由状態を維持する。
【0057】
ポール41の反転した状態で、主回動リンク64が格納位置B0に向かって回動(戻り回動)すると、図13(a)に示すように、主回動リンク64の反転カム部78は、ロック位置にあるフック71の第2反転カム面72cをそのまま通過する。そして、主回動リンク64のストライカピン77は、ロック位置にあるフック71のロック用カム面72dに当接する。このとき、図13(b)に示すように、ポール41は、凹部23等(第1ブラケット21)から離脱する反転状態のままである。
【0058】
そして、主回動リンク64が格納位置B0に向かって更に回動(戻り回動)すると、図14(a)に示すように、ロック用カム面72dにおいてストライカピン77に案内されるフック71が反転用スプリング76をターンオーバーさせない範囲で支持軸Ax1を中心に図示反時計回りに揺動する。そして、ストライカピン77がロック用カム面72dを通過すると、フック部72aにストライカピン77を嵌入させつつ、反転用スプリング76に回動付勢されるフック71がロック位置に復帰する(図7(a)参照)。
【0059】
一方、フック71が反転用スプリング76をターンオーバーさせない範囲で揺動するとき、図14(b)に示すように、第2ブラケット31に対する第1ブラケット21の図示反時計回りへの回動に伴って、ポール41の歯止め部43が切替壁部26のブラケット側復帰用壁部28に押圧され始める。そして、ポール41は、ポール反転用スプリング46の付勢力に抗して図示反時計回りに回動し始める。そして、第2ブラケット31に対して第1ブラケット21が図示反時計回りに更に回動(戻り回動)すると、ポール41の図示反時計回りへの更なる回動に伴いポール反転用スプリング46がターンオーバーして、該ポール反転用スプリング46によりポール41が前記正方向に回動付勢される(図5(a)参照)。このときの第1及び第2ブラケット21,31の相対回転位置が主回動リンク64の格納位置B0に相当することはいうまでもない。
【0060】
次に、主回動リンク64が最下端の格納位置B0に配置されるオットマン6の格納状態にあるものとして、その動作を説明する。
既述のように、主回動リンク64が格納位置B0にあるとき、反転用スプリング76に回動付勢されてロック位置に保持されるフック71にストライカピン77が掛止されている。このとき、ポール反転用スプリング46により正方向に回動付勢されるポール41は、その歯止め部43を解除壁部51及び助走壁部52の境界位置付近に当接する。
【0061】
この状態で、オットマン6を格納方向に作動させて、反発スプリング81の付勢力に抗して主回動リンク64を解除位置B4に向けて回動させると、ストライカピン77に案内されるフック71の揺動に伴って反転用スプリング76がターンオーバーする。そして、反転用スプリング76によりアンロック位置を保持するように回動付勢されるフック71とストライカピン77との掛止が外れる。これにより、主回動リンク64の調整範囲Z12に向かう回動が許容されて、オットマン6の展開方向への作動が可能となる。このとき、ポール反転用スプリング46により正方向に回動付勢されるポール41の歯止め部43は、解除壁部51を摺動する。なお、オットマン6が展開方向への作動を開始する際には、当該作動が反発スプリング81の付勢力によって助勢される。
【0062】
この状態で、オットマン6を展開方向に作動(上動)させて、主回動リンク64を第1境界位置B1に向けて回動させると、ポール反転用スプリング46により正方向に回動付勢されるポール41の歯止め部43は、助走壁部52を摺動する。これにより、反発スプリング81による助勢との協働でオットマン6を速やかに上動させる(跳ね上げる)ことが可能となる。
【0063】
オットマン6を展開方向に作動させて、主回動リンク64を調整範囲Z12に向けて回動させると、ポール反転用スプリング46により正方向に回動付勢されるポール41の歯止め部43は、助走壁部52からラチェット内歯部24に進入・噛合する。そして、主回動リンク64が調整範囲Z12内にある範囲でオットマン6を上動させると、ポール41の歯止め部43がラチェット内歯部24の歯部に順次歯合する。これにより、主回動リンク64が調整範囲Z12内にある範囲での、オットマン6の傾斜角度θ1の段階的な調整・保持が可能となる。なお、主回動リンク64が調整範囲Z12内を回動する際に、反転カム部78に案内されるフック71の揺動に伴って、反転用スプリング76がターンオーバーする。そして、フック71は、反転用スプリング76によりロック位置を保持するように回動付勢される。
【0064】
オットマン6の傾斜角度θ1を調整・保持する展開状態において、オットマン6を展開方向に作動させると、主回動リンク64が反転位置B3へと回動することで、ポール41は、ポール反転用スプリング46により前記逆方向に回動付勢されるように反転する。そして、ポール41が第1ブラケット21から離脱する。これにより、例えばオットマン6を格納方向に速やかに作動(下動)させることが可能となる。
【0065】
オットマン6の格納方向への作動に伴い、主回動リンク64が格納位置B0に達すると、ストライカピン77に案内されるフック71の反転用スプリング76をターンオーバーさせない範囲での揺動に伴って、フック71がストライカピン77と掛止する。これにより、オットマン6の展開方向への作動が係止される。同時に、ポール41は、ポール反転用スプリング46により前記正方向に回動付勢されるように反転(復帰)する。
【0066】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、オットマン6の調整領域(主回動リンク64の調整範囲Z12)では、調整機構20により最大展開状態までのオットマン6の展開方向への作動が許容されるとともに格納方向への作動が係止される。従って、オットマン6を展開方向に作動させることで該オットマン6を調整することができる。これにより、例えばオットマン6を調整するための操作ノブを不要化することができ、配置スペースの制約をより緩和することができる。
【0067】
また、オットマン6の格納状態は、調整機構20における摩擦力に加えて、ロック位置にあるフック71がストライカピン77を掛止することでも保持される。従って、オットマン6の格納状態を、これらの協働によってより堅固に保持することができ、例えば車両振動などの影響でオットマン6が展開する可能性を低減することができる。
【0068】
そして、オットマン6の格納状態で該オットマン6を格納方向に更に作動させると、ストライカピン77に案内されるフック71が、オットマン6の展開方向への作動を許容するようにストライカピン77を解放可能なアンロック位置へと回動する。これにより、調整機構20によるオットマン6の調整領域での調整が可能となる。
【0069】
オットマン6が展開方向に作動すると、反転カム部78に案内されるフック71が、オットマン6の格納状態でストライカピン77を掛止可能なロック位置へと回動する。従って、その後、調整機構20により許容される格納方向にオットマン6を作動させると、ロック位置にあるフック71がオットマン6の格納状態でストライカピン77を掛止して、オットマン6の展開方向への作動を係止する。これにより、オットマン6の格納状態をフック71及びストライカピン77によって再び保持することができる。
【0070】
(2)本実施形態では、オットマン6の格納状態では、反転用スプリング76は、ストライカピン77を掛止するフック71をロック位置に回動付勢することで、オットマン6の格納状態をより安定した状態で保持することができる。そして、オットマン6の格納状態で該オットマン6を格納方向に更に作動させると、反転用スプリング76は、ターンオーバーしてフック71をアンロック位置へと回動付勢する。これにより、オットマン6の展開方向への作動をより安定した状態で開始することができる。その後、オットマン6を展開方向に作動させると、反転用スプリング76は、ターンオーバーしてフック71をロック位置へと回動付勢する。従って、その後、調整機構20により許容される格納方向にオットマン6を作動させた際に、該オットマン6の格納状態でフック71をストライカピン77に、より円滑に掛止することができる。
【0071】
(3)本実施形態では、フック71及びストライカピン77は、シートクッション2に直近のブラケット61及び主回動リンク64に配設されることで、シートクッション2に対する組付誤差が抑制される分、より高精度に動作することができる。
【0072】
(4)本実施形態では、オットマン6の格納状態でこれを展開する際、当該作動を許容するようにフック71をアンロック位置へと回動させるオットマン6の作動(格納方向への更なる作動)に合わせて、反発スプリング81においてオットマン6を展開方向に作動させる付勢力を発生することができる。従って、フック71等によるオットマン6の展開方向への作動係止の解除に合わせて、オットマン6の展開方向への作動を反発スプリング81で助勢することができ、オットマン6を円滑に展開方向に作動させることができる。
【0073】
また、反発スプリング81の脚部83は、オットマン6の格納状態で係止ピン87に当接又は近接するため、例えば車両振動などの影響で格納状態にあるオットマン6が格納方向に作動しようとすると、反発スプリング81においてこれに抗する付勢力を発生する。従って、フック71とストライカピン77との掛止が外れる可能性を低減できる。あるいは、オットマン6が格納状態にあるときに、反発スプリング81においてオットマン6を展開方向に作動させる付勢力が徒に発生することを回避できる。
【0074】
(5)本実施形態では、第1ブラケット21のラチェット内歯部24に歯止め部43が噛合するポール41は、保持部材30により軸線方向に規制された第1及び第2ブラケット21,31間に形成される収容空間Sに配置される。このため、これらラチェット内歯部24及び歯止め部43が軸線方向に位置ずれすることを規制でき、オットマン6の傾斜角度θ1(主回動リンク64の回動位置)をより安定した状態で保持することができる。また、オットマン6の傾斜角度θ1を調整・保持するための構造を、収容空間Sに配置されるポール41及びポール反転用スプリング46等からなる極めて簡易なものにできる。
【0075】
(6)本実施形態では、ポール反転用スプリング46のコイル部47は、軸線方向が第1及び第2ブラケット21,31の軸線方向(中心線O1)と平行であることで、例えばコイル部の径方向が第1及び第2ブラケット21,31の軸線方向と平行である場合に比べて当該方向によりコンパクトに配置することができる。
【0076】
(7)本実施形態では、ポール41及びポール反転用スプリング46を1組とする複数組(2組)が、収容空間S内で回転対称(点対称)に配置されている。従って、例えばオットマン6の傾斜角度θ1の調整・保持を、複数組のポール41等でより堅固に行うことができる。また、複数組のポール41等は、軸線方向において主に凹部32の範囲を利用する態様で、収容空間S内で回転対称に配置されていることで、オットマン6の傾斜角度θ1を調整・保持する際に回転方向に均等に荷重を分散することができる。
【0077】
(8)本実施形態では、第1ブラケット21のスプリング押さえ壁部27は、第2ブラケット31のスプリング収容部34との間でポール反転用スプリング46のコイル部47を軸線方向に押さえることで、該コイル部47の浮き上がりを抑えることができる。
【0078】
(9)本実施形態では、ポール反転用スプリング46の第1及び第2脚部48,49は、コイル部47の外周部に被さるように屈曲していることで、該コイル部47の倒れを抑制することができる。
【0079】
(10)本実施形態では、主回動リンク64が格納位置B0から調整範囲Z12に向かうようにオットマン6を格納状態から上動させる際に、助走範囲Z11でこれに勢いを付けることができ、オットマン6の展開を円滑に行うことができる。
【0080】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態においては、副回動リンク65の支持軸Ax1をフック71の回転軸として兼用したが、それらを個別に設けてもよい。また、この場合、フック71の回転軸を副回動リンク65の支持軸Ax1と必ずしも同軸に配置する必要はない。
【0081】
・前記実施形態において、ロック機構70のフック71及びストライカピン77は、ブラケット61、支持ブラケット62、主回動リンク64、副回動リンク65、第1揺動リンク66及び第2揺動リンク67のいずれか2部材に配設すればよい。
【0082】
・前記実施形態において、反発スプリング81及び係止ピン87は、ブラケット61、支持ブラケット62、主回動リンク64、副回動リンク65、第1揺動リンク66及び第2揺動リンク67のいずれか2部材に配設すればよい。
【0083】
・前記実施形態では、反転カム部78を主回動リンク64に一体形成したが、該主回動リンク64とは別体の当接部材であってもよい。
・前記実施形態において、反転用スプリング76は、例えば板ばねなどであってもよい。要は、フック71がロック位置・アンロック位置間で反転するようにターンオーバーできればよい。また、例えば摩擦力のみでフック71をロック位置・アンロック位置に保持できるのであれば、反転用スプリング76を割愛してもよい。
【0084】
・前記実施形態において、第1ブラケット21をシートクッション2側に固定し、第2ブラケット31をオットマン6側に固定してもよい。
・前記実施形態において、調整機構20は、ブラケット61及び主回動リンク64間、ブラケット61及び副回動リンク65間、主回動リンク64及び第1揺動リンク66間、主回動リンク64及び第2揺動リンク67間、副回動リンク65及び第2揺動リンク67間、第1揺動リンク66及び支持ブラケット62間、第2揺動リンク67及び支持ブラケット62間のいずれか一箇所の連結部に設ければよい。ただし、シートクッション2側となるブラケット61及び主回動リンク64間又はブラケット61及び副回動リンク65間の連結部に配置することがより好ましい。
【0085】
・前記実施形態では、歯止め部43をポール側復帰用壁部として兼用したが、歯止め部43とは別にポール側復帰用壁部を設けてもよい。
・前記実施形態において、ポール反転用スプリング46は、例えば板ばねなどであってもよい。要は、ポール41が反転するようにターンオーバーできればよい。
【0086】
・前記実施形態において、調整機構20の構造は一例である。例えば調整機構として、いわゆるスプリングカプラを採用してもよい。要は、オットマン6の作動に伴ってこれを調整・保持できる構成であればよい。
【0087】
・前記実施形態において、シートクッション2側へのオットマン6の支持構造は一例である。例えば、シートクッション2側(ブラケット61)に対して調整機構を介して回動自在に連結される片持ち支持のアームによってオットマン6を上下動させてもよい。
【0088】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用オットマン装置において、
前記調整機構は、
解除壁部、ラチェット内歯部、ブラケット側反転用壁部及びブラケット側復帰用壁部を一体的に有する第1ブラケットと、
前記第1ブラケットとの間に収容空間を形成して該第1ブラケットに軸支され、前記第1ブラケットに対する相対回動に伴って前記オットマンを調整可能な第2ブラケットと、
前記第1及び第2ブラケットを軸線方向に規制する保持部材と、
前記収容空間内で前記第1及び第2ブラケットの軸線方向と平行な軸線周りに前記第2ブラケットに軸支されたポールと、
前記収容空間内で前記第2ブラケットに一方の脚部が係止され、前記ポールに他方の脚部が係止されたポール反転用スプリングとを備え、
前記ポールは、
前記ポール反転用スプリングにより正方向に回動付勢されるとき、前記解除壁部を摺動することで前記第1及び第2ブラケットの両方向への相対回動を許容して前記オットマンの格納状態で該オットマンが格納方向に更に作動することを許容し、前記ラチェット内歯部に噛合することで前記第1及び第2ブラケットの一方向への相対回動を許容するとともに他方向への相対回動を規制することでする歯止め部と、
前記第1及び第2ブラケットの前記一方向への相対回動時、前記ブラケット側反転用壁部に当接することで前記ポール反転用スプリングにより逆方向に回動付勢されるように反転させて前記第1及び第2ブラケットの前記他方向への相対回動を許容させるポール側反転用壁部と、
前記第1及び第2ブラケットの前記他方向への相対回動時、前記ブラケット側復帰用壁部に当接することで前記ポール反転用スプリングにより前記正方向に回動付勢されるように復帰させるポール側復帰用壁部とを一体的に有していることを特徴とする車両用シート調整装置。
【0089】
同構成によれば、前記第1及び第2ブラケットは、前記ポールが前記ポール反転用スプリングにより前記正方向に回動付勢されるとき、前記歯止め部が前記解除壁部を摺動することで、両方向への相対回動が許容されて前記オットマンの格納状態で該オットマンが格納方向に更に作動することを許容する。また、前記第1及び第2ブラケットは、前記ポールが前記ポール反転用スプリングにより前記正方向に回動付勢されるとき、前記ラチェット内歯部に前記歯止め部が噛合することで前記一方向への相対回動が許容される。従って、前記第1及び第2ブラケットの前記一方向への相対回動に伴って、前記オットマンを段階的に調整・保持することができる。
【0090】
一方、前記第1及び第2ブラケットは、前記一方向への相対回動時、前記ポールの前記ポール側反転用壁部が前記ブラケット側反転用壁部に当接して前記ポールが前記ポール反転用スプリングにより前記逆方向に回動付勢されるように反転することで前記他方向への相対回動が許容される。従って、前記第1及び第2ブラケットの前記他方向への相対回動に伴って、前記オットマンの姿勢を速やかに調整することができる。そして、前記第1及び第2ブラケットの前記他方向への相対回動時、前記ポールの前記ポール側復帰用壁部が前記ブラケット側復帰用壁部に当接して前記ポールが前記ポール反転用スプリングにより前記正方向に回動付勢されるように復帰することで、前記オットマンの格納状態での保持等が再び可能となる。
【0091】
特に、前記第1ブラケットの前記ラチェット内歯部に前記歯止め部が噛合する前記ポールは、前記保持部材により軸線方向に規制された前記第1及び第2ブラケット間に形成される前記収容空間に配置されるため、これらラチェット内歯部及び歯止め部が軸線方向に位置ずれすることを規制でき、前記オットマンをより安定した状態で保持することができる。また、前記オットマンを調整・保持するための構造を、前記収容空間に配置される前記ポール及び前記ポール反転用スプリング等からなる極めて簡易なものにできる。
【符号の説明】
【0092】
2…シートクッション、6…オットマン、20…調整機構、21…第1ブラケット、31…第2ブラケット、24…ラチェット内歯部、28…ブラケット側復帰用壁部、29…ブラケット側反転用壁部、30…保持部材、41…ポール、43…歯止め部、44…ポール側反転用壁部、46…ポール反転用スプリング、51…解除壁部、61…ブラケット(第1部材、取付部材)、64…主回動リンク(第2部材、アーム部材)、70…ロック機構、71…フック、72b…第1反転カム面、72c…第2反転カム面、76…反転用スプリング、77…ストライカピン、78…反転カム部(当接部材)、81…反発スプリング(付勢手段)、82,83…脚部、87…係止ピン(係止部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション及びオットマン間に介設され、前記オットマンが格納状態にあるときに該オットマンを保持し、前記オットマンの最大展開状態までの調整領域で該オットマンの展開方向への作動を許容するとともに格納方向への作動を係止し、前記オットマンが最大展開状態から展開方向に更に作動した際に該オットマンの格納方向への作動を許容するように動作が切り替わり、前記オットマンの格納状態へ復帰自在となるように動作が切り替わる調整機構と、
前記シートクッション及び前記オットマン間の前記シートクッション側の第1部材及び前記オットマン側の第2部材のいずれか一方に回動自在に連結されたフックと、
前記第1部材及び前記第2部材のいずれか他方に固定され、前記オットマンの格納状態で前記フックが掛止されて前記オットマンの展開方向への作動を係止するストライカピンと、
前記ストライカピンが固定される前記第1部材又は前記第2部材に設けられた当接部材とを備え、
前記フックは、前記オットマンの格納状態で該オットマンが格納方向に更に作動した際に前記ストライカピンに案内されて前記オットマンの展開方向への作動を許容するように前記ストライカピンを解放可能なアンロック位置へと回動し、前記オットマンの展開方向への作動に伴い前記当接部材に案内されて前記オットマンの格納状態で前記ストライカピンを掛止可能なロック位置へと回動し、前記調整機構により許容される前記オットマンの格納方向への作動に伴い前記オットマンの格納状態で前記ストライカピンを掛止することを特徴とする車両用オットマン装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用オットマン装置において、
前記オットマンの格納状態で前記フックを前記ロック位置に回動付勢し、前記オットマンの格納状態で該オットマンが格納方向に更に作動した際に前記ストライカピンに案内される前記フックの回動に伴ってターンオーバーして前記フックを前記アンロック位置へと回動付勢し、前記オットマンの展開方向への作動に伴い前記当接部材に案内される前記フックの回動に伴ってターンオーバーして前記フックを前記ロック位置へと回動付勢する反転用スプリングとを備えたことを特徴とする車両用オットマン装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用オットマン装置において、
前記オットマンは、前記シートクッションに固定された取付部材に回動自在に連結されたアーム部材を介して前記シートクッションに支持されており、
前記第1部材は、前記取付部材であり、
前記第2部材は、前記アーム部材であることを特徴とする車両用オットマン装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用オットマン装置において、
前記第1部材及び前記第2部材のいずれか一方に設けられた係止部材と、
前記第1部材及び前記第2部材のいずれか他方に設けられ、一方の脚部が当該第1又は第2部材に係止され、他方の脚部が前記オットマンの格納状態で前記係止部材に当接又は近接され、前記オットマンが格納方向に更に作動した際に前記係止部材に前記他方の脚部が押圧されることで前記オットマンを展開方向に作動させる付勢力を発生する付勢手段とを備えたことを特徴とする車両用オットマン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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