車両用シートスライド装置
【課題】車両フロアに固定されるロアレールに対しシートに固定されるアッパレールが後側に向かうに従い該アッパレールの移動軌跡の接線方向が水平方向に対して急峻に傾斜するようにこれらロアレール及びアッパレールがそれぞれ曲成されている車両用シートスライド装置において、違和感を与えることなくシートを前方に移動させる際の操作性を向上できる車両用シートスライド装置を提供する。
【解決手段】収容部材11内のコイルスプリング30は、ロアレール4に対するアッパレール5の可動範囲である該アッパレール5の最前方位置及び最後方位置間において、アッパレール5の所定中間位置から最後方位置までの範囲で、アッパレール5が後側に向かうに従い増加する付勢力にてシートの前方への移動を助勢する。
【解決手段】収容部材11内のコイルスプリング30は、ロアレール4に対するアッパレール5の可動範囲である該アッパレール5の最前方位置及び最後方位置間において、アッパレール5の所定中間位置から最後方位置までの範囲で、アッパレール5が後側に向かうに従い増加する付勢力にてシートの前方への移動を助勢する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートスライド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートスライド装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。図10に示すように、この車両用シートスライド装置は、車両フロアに固定されるロアレール91及びシート90に固定されるアッパレール92を備えて構成されている。これらロアレール91及びアッパレール92は、側面視で上向きに凸になるように曲成されている。そして、シート90を前方に移動させるとシート座面が上昇するとともにシート座面が水平に近くなるようにシート座面角が減少し、反対に、シート90を後方に移動させるとシート座面が下降するとともにシート座面角が増加する。これにより、運転者の体格が異なっても、運転姿勢を略同等の条件にできるように工夫している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2 174 828 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、ロアレール4に対しアッパレール5が後方に移動するに従って、シート座面角が急激に増加することになる。このため、乗員体重及びシート自重からなる荷重の後方分力成分が増加することになる。具体的には、図11に模式的に示すように、シート座面角の変動が前述の特性を有するシート90(アッパレール92)の移動軌跡L90上において、アッパレール92等に加わる体重等の荷重をWで表すと、該荷重Wが前側寄りの位置Pfに加わるときの移動軌跡L90に沿う後方分力成分Ffに比べて、荷重Wが後側寄りの位置Prに加わるときの移動軌跡L90に沿う後方分力成分Frの方が著しく増加することが確認される。従って、シート90を前方に移動させるために要する力は、該シート90が後側寄りに配置されているほど増加してしまい、その際の操作性の悪化を余儀なくされる。
【0005】
なお、シート90の前方への移動を助勢するための適宜の付勢手段を設けた装置も知られている。しかしながら、シート90が前側寄りに配置又は移動されて体重等の後方分力成分が僅少になっているにも関わらず、シート90の前方への移動を助勢してしまうと、シート90の移動速度が増加して利用者に違和感を与えるという別の問題が生じてしまう。
【0006】
本発明の目的は、車両フロアに固定されるロアレールに対しシートに固定されるアッパレールが後側に向かうに従い該アッパレールの移動軌跡の接線方向が水平方向に対して急峻に傾斜するようにこれらロアレール及びアッパレールがそれぞれ曲成されている車両用シートスライド装置において、違和感を与えることなくシートを前方に移動させる際の操作性を向上できる車両用シートスライド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両フロアに固定されるロアレールと、シートに固定され前記ロアレールに対し前後方向に移動可能に連結されたアッパレールとを備え、前記アッパレールが後側に向かうに従い該アッパレールの移動軌跡の接線方向が水平方向に対して急峻に傾斜するように前記ロアレール及び前記アッパレールがそれぞれ曲成されている車両用シートスライド装置において、前記ロアレールに対する前記アッパレールの可動範囲である該アッパレールの最前方位置及び最後方位置間において、前記最前方位置及び前記最後方位置間の所定中間位置から前記最後方位置までの範囲で、前記アッパレールが後側に向かうに従い増加する付勢力にて前記シートの前方への移動を助勢する付勢手段を備えたことを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、前記アッパレールが後側に向かうに従い該アッパレールの移動軌跡の接線方向が水平方向に対して急峻に傾斜することで、前記アッパレール等に加わる荷重の後方分力成分は、該アッパレールが前記最後方位置に近いほど増加する。一方、前記アッパレールが前記所定中間位置から前記最後方位置までの範囲にあるとき、即ち前記アッパレール等に加わる荷重の後方分力成分が大きいとき、前記シートの前方への移動を助勢する前記付勢手段の付勢力は、前記アッパレールが前記最後方位置に近いほど増加する。従って、前記アッパレール等に加わる荷重の後方分力成分が増加したとしても、前記付勢手段の付勢力の増加分で補うことで、前記シートを前方に移動させるために要する力の増加を抑えることができ、その際の操作性を向上できる。また、前記シートの前方への移動を助勢する前記付勢手段の付勢力は、前記アッパレールが前記最前方位置から前記所定中間位置までの範囲にあるとき、即ち前記アッパレール等に加わる荷重の後方分力成分が小さいときにゼロとなる。従って、前記シートが前方に移動する際の移動速度が増加して利用者に違和感を与えたりすることも解消できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートスライド装置において、前記付勢手段は、前記ロアレール側及び前記アッパレール側のいずれか一方に連結された有底筒状の収容部材と、前記収容部材に前後方向に移動可能に収容され一側端面が前記収容部材の底面に当接することで前後方向への移動が係止されるコイル部と、該コイル部の他側端面から前後方向に折り返す折返し部と、該折返し部に連続して前後方向に延出されて前記コイル部及び前記収容部材を貫通し前記ロアレール側及び前記アッパレール側のいずれか他方に連結される脚部とを有するコイルスプリングとを備え、前記アッパレールが前記所定中間位置から前記最後方位置までの範囲にあるとき、前記収容部材の前記底面及び前記折返し部間で前記コイル部を圧縮することで前記付勢力を発生し、前記アッパレールが前記所定中間位置にあるとき、前記コイル部を弾性復帰させることを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、前記付勢手段は、前記アッパレールが前記所定中間位置から前記最後方位置までの範囲にあるとき、前記アッパレールが前記最後方位置に近いほど前記コイル部の圧縮長を増加して前記付勢力を増加する。一方、前記付勢手段は、前記アッパレールが前記所定中間位置にあるとき、前記コイル部を弾性復帰させる。従って、前記アッパレールが前記最前方位置から前記所定中間位置までの範囲にあるとき、前記付勢手段は、前記コイル部を弾性復帰状態のまま前記収容部材内を移動させることで、前記付勢力をゼロにする。このように、前記付勢手段を、前記収容部材及び前記コイルスプリングからなる極めて簡易な構造にできる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用シートスライド装置において、前記アッパレールが前記最前方位置にあるとき、弾性復帰状態にある前記コイル部の少なくとも一部は、前記収容部材に収容されることを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、前記アッパレールが前記最前方位置にあっても、前記コイル部が前記収容部材から完全に抜け出すことがないため、その後、前記アッパレールが後側に移動する際に前記コイル部を前記収容部材に円滑に収容することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の車両用シートスライド装置において、前記収容部材及び前記脚部は、前記ロアレール側及び前記アッパレール側のいずれか一方及び他方にそれぞれ回動自在に連結されていることを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、前記収容部材及び前記脚部は、前記ロアレール側及び前記アッパレール側のいずれか一方及び他方にそれぞれ回動自在に連結されていることで、前記アッパレールが前記曲成された移動軌跡で移動する際に、前記収容部材又は前記脚部の揺動でこれを吸収して前述の付勢力の発生等ができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートスライド装置において、前記ロアレール及び前記アッパレールは、シート幅方向両側に一対で配設されており、前記付勢手段は、前記両ロアレール間及び前記両アッパレール間のいずれか一方に橋渡しされ、前後方向に延在する長穴を有する支持部材と、前記長穴に挿通されて、前記両ロアレール間及び前記両アッパレール間のいずれか他方に橋渡しされる弾性部材とを備え、前記アッパレールが前記所定中間位置から前記最後方位置までの範囲にあるとき、前記長穴の先端面で前記弾性部材を引っ張ることで前記付勢力を発生し、前記アッパレールが前記所定中間位置にあるとき、前記弾性部材を弾性復帰させることを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、前記付勢手段は、前記アッパレールが前記所定中間位置から前記最後方位置までの範囲にあるとき、前記アッパレールが前記最後方位置に近いほど前記弾性部材の引っ張り長を増加して前記付勢力を増加する。一方、前記付勢手段は、前記アッパレールが前記所定中間位置にあるとき、前記弾性部材を弾性復帰させる。従って、前記アッパレールが前記最前方位置から前記所定中間位置までの範囲にあるとき、前記付勢手段は、前記弾性部材を弾性復帰状態のまま前記長穴内を移動させることで、前記付勢力をゼロにする。このように、前記付勢手段を、前記支持部材及び前記弾性部材からなる極めて簡易な構造にできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、車両フロアに固定されるロアレールに対しシートに固定されるアッパレールが後側に向かうに従い該アッパレールの移動軌跡の接線方向が水平方向に対して急峻に傾斜するようにこれらロアレール及びアッパレールがそれぞれ曲成されている車両用シートスライド装置において、違和感を与えることなくシートを前方に移動させる際の操作性を向上できる車両用シートスライド装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用されるシートの側面図。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す分解斜視図。
【図3】同実施形態を示す側面図。
【図4】図3のA−A線に沿った断面図。
【図5】図3のB−B線に沿った断面図。
【図6】同実施形態の動作を示す縦断面図であって、(a)中間位置、(b)最後方位置、(c)最前方位置での縦断面図。
【図7】本発明の第2の実施形態を示す斜視図。
【図8】同実施形態の動作を示す側面図であって、(a)中間位置、(b)最後方位置、(c)最前方位置での側面図。
【図9】アッパレールの位置と付勢力との関係を示すグラフ。
【図10】従来形態を示す側面図。
【図11】アッパレールの移動軌跡と後方分力成分との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
図1〜図6を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。図1に示すように、略水平に広がる車両フロア1には、前後方向に並設された台座部1a,1bが上向きに突設されている。前側の台座部1aの上方への突出長は、後側の台座部1bの上方への突出長よりも大きく設定されている。そして、前側の台座部1aには、例えば金属板からなる側面視略クランク状の足ブラケット2がその下端部において締結されている。同様に、後側の台座部1bには、例えば金属板からなる側面視略クランク状の足ブラケット3がその下端部において締結されている。なお、前側の足ブラケット2の上方への突出長は、後側の足ブラケット3の上方への突出長よりも大きく設定されている。
【0020】
両足ブラケット2,3の上端部には、これらの間に橋渡しされる態様で、前後方向に延在するロアレール4の前端部及び後端部がそれぞれ締結されている。そして、ロアレール4には、アッパレール5がロアレール4に対し前後方向に相対移動可能に装着されている。従って、ロアレール4及びアッパレール5は、両足ブラケット2,3間の高低差によって、前側に向かうに従って上昇し、反対に、後側に向かうに従って下降するように傾斜している。特に、ロアレール4及びアッパレール5は、該アッパレール5の移動軌跡の接線方向が後側に向かうに従い水平方向に対して急峻に傾斜するようにそれぞれ曲成されている。具体的には、ロアレール4及びアッパレール5は、該アッパレール5の移動軌跡が上向きに凸になるように所定曲率半径にて円弧状にそれぞれ曲成されている。この曲率半径は、ロアレール4等の長さに比べて十分に大きく設定されている。
【0021】
なお、両足ブラケット2,3、ロアレール4及びアッパレール5は、シート幅方向(図1において紙面に直交する方向)でそれぞれ対をなして配設されており、ここでは前方に向かって左側に配置されたものを示している。そして、両アッパレール5には、乗員の着座部を形成するシート6が固定・支持されている。従って、両アッパレール5の前後方向への移動に伴って、シート6が一体で前後方向に移動する。
【0022】
そして、例えばアッパレール5を前方に移動させるとその傾斜分でシート6が上昇し、反対に、アッパレール5を後方に移動させるとその傾斜分でシート6が下降するようになっている。特に、アッパレール5等は、前述の態様で上向きに凸になるように曲成されていることで、例えばシート6(アッパレール5)を前方に移動させる場合にはシート座面角が減少し、反対に、シート6を後方に移動させる場合にはシート座面角が増加するようになっている。図1では、シート6(アッパレール5)がその可動範囲の最後端位置から最前端位置まで移動した際の、想定される乗員の尻部(座骨)の軌跡L1を併せて描画している。この軌跡L1が、アッパレール5の移動軌跡と同心の円弧であることはいうまでもない。なお、ロアレール4に対するアッパレール5の可動範囲は、これらの間に介設される適宜の係止手段(ストッパなど:図示略)により規定されものである。また、ロアレール4及びアッパレール5の相対移動は、ロック部材(図示略)により通常は規制されており、該ロック部材に操作力を付与することでその規制が解除される。
【0023】
図2に示すように、前側の足ブラケット2は、その長手方向全長に延在する長尺状の底壁部2a及び該底壁部2aのシート幅方向両端から内向きに突設された一対のフランジ2bを有して断面略U字形状を呈しており、台座部1aに載置される底壁部2a下端部において台座部1aに締結される。また、足ブラケット2は、ロアレール4前端部を支持する底壁部2a上端部においてロアレール4に締結されている。なお、足ブラケット2の片側(シート幅方向内側)のフランジ2b上端部には、シート幅方向に貫通する円形の支持孔2cが形成されている。
【0024】
図5に示すように、ロアレール4は、板材からなり、断面形状が上向きに開いた略U字形状を呈する。一方、アッパレール5は、同じく板材からなり、断面略逆T字形状を呈する。ロアレール4及びアッパレール5は、それらの断面形状が上下方向及び幅方向に互いに係合する態様で、前後方向に移動可能に連結されている。
【0025】
なお、ロアレール4及びアッパレール5間には、それらの上下方向の距離を一定に保ちつつロアレール4に対するアッパレール5の前後方向の移動を可能とする転動体(図示略)が前後方向に一対設けられている。つまり、これら転動体は、上向きに凸になる円弧状のアッパレール5の移動軌跡を配慮して設置されている。
【0026】
ロアレール4の上向きの開口に合わせてアッパレール5のシート幅方向中央部に起立する縦壁部5aには、ロアレール4の上側でシート幅方向に貫通する円形の支持孔5bが形成されている。この支持孔5bは、図2に示すように、縦壁部5aの前端部に配設された前後の一対、後端部に配設された前後の一対の合計4個が存在する。
【0027】
縦壁部5aの前端部には、両支持孔5bにそれぞれ挿通・抜け止めされる一対のピン21により、例えば金属板からなるブラケット22が締結されている。また、縦壁部5aの後端部には、前側の支持孔5bに挿通・抜け止めされるピン23及び後側の支持孔5bに挿通・抜け止めされるピン24により、例えば金属板からなるブラケット25が締結されている。そして、図3に示すように、両ブラケット22,25の上端部には、これらの間に橋渡しされる態様で、シート6の座面側部の骨格をなす例えば金属板からなるシートクッションフレーム26の前端部及び後端部がそれぞれ締結されている。なお、図2及び図5に示すように、最後部のピン24は、他のピン21,23よりもシート幅方向内側への突出長が大きく設定されている。そして、ピン24の先端部には、周溝状の掛止溝24aが形成されている。
【0028】
図2に示すように、足ブラケット2には、支持孔2cに挿通・抜け止めされるピン10により、有底筒状の収容部材11が回動可能に連結されている。詳述すると、この収容部材11は、前後方向に連通する略円筒状の筒部材12と、該筒部材12の後端を閉塞する略丸盆状のカバー13とを備える。そして、筒部材12の前端部上面には、例えば金属板からなる断面略逆J字状のブラケット14が固着されている。図3及び図4に併せ示すように、このブラケット14の下向きに延びる延設部には、前記支持孔2cと同心でシート幅方向に貫通する円形の軸受孔14aが形成されている。収容部材11は、支持孔2cと共に軸受孔14aに挿通されるピン10によりブラケット14が軸支されることで、足ブラケット2に回動自在に連結されている。なお、筒部材12の中心Oのシート幅方向における位置は、前記掛止溝24aのシート幅方向における位置と概ね合致するように設定されている。
【0029】
図3に示すように、収容部材11には、コイルスプリング30が設けられている。このコイルスプリング30は、収容部材11に前後方向に移動可能に収容され後端面が収容部材11の底面(カバー13の前端面)に当接することで後側への移動が係止されるコイル部31と、該コイル部31の前端面から後側に折り返す折返し部32と、該折返し部32に連続して後側に延出される脚部33とを一体的に有する。なお、脚部33は、コイル部31及び収容部材11(カバー13)の中央部を貫通しており、その後端部に形成された環状の掛止部33aは、ピン24の前記掛止溝24aに回動可能に掛止されている。従って、収容部材11内でのコイル部31の状態は、ロアレール4に対するアッパレール5の前後方向の位置に応じて変化する。収容部材11、ブラケット14及びコイルスプリング30は付勢手段を構成する。
【0030】
ここで、ロアレール4に対するアッパレール5の可動範囲である該アッパレール5の最前方位置FMP及び最後方位置RMP間において、アッパレール5が最前方位置FMP及び最後方位置RMP間の所定中間位置MPにあるとき、図6(a)に示すように、コイル部31は、その後端面が収容部材11の底面に当接又は近接する状態で自由状態に弾性復帰している。この自由状態でのコイル部31の長さは、収容部材11(筒部材12)の軸線方向の長さと同等に設定されている。
【0031】
従って、アッパレール5が最後方位置RMPへと移動すると、図6(b)に示すように、収容部材11の底面及び折返し部32間でコイル部31が圧縮されることで、掛止部33a(即ちアッパレール5)を前方に引っ張る付勢力を発生する。このコイル部31の圧縮長、即ちコイルスプリング30の付勢力は、所定中間位置MPから最後方位置RMPまでの範囲で、アッパレール5が最後方位置RMPに近いほど大きくなるように比例的に変化する。この付勢力により、シート6と一体でのアッパレール5の前方への移動が助勢される。
【0032】
一方、アッパレール5が最前方位置FMPへと移動すると、図6(c)に示すように、コイル部31は、自由状態(弾性復帰状態)のままその前端部を収容部材11(筒部材12)の前方に突出させる。従って、アッパレール5の所定中間位置MPから最前方位置FMPまでの範囲では、コイルスプリング30は、コイル部31を弾性復帰状態のまま収容部材11内を移動させることで、コイル部31に発生する付勢力はゼロである。なお、所定中間位置MPから最前方位置FMPまでのアッパレール5の移動量は、自由状態でのコイル部31の長さ(収容部材11の軸線方向の長さ)よりも短く設定されている。従って、アッパレール5が最前方位置FMPにあっても、自由状態にあるコイル部31の後端部が収容部材11内に収まるようになっている。
【0033】
図9は、上述のロアレール4に対するアッパレール5の可動範囲におけるコイルスプリング30の付勢力を示すグラフである。同図に示すように、コイルスプリング30の付勢力は、アッパレール5の位置が最前方位置FMPから所定中間位置MPまでの範囲でゼロとなり、所定中間位置MPから最後方位置RMPまでの範囲で該最後方位置RMPに近付くに従い比例的に増加する特性を有している。そして、コイルスプリング30の付勢力は、アッパレール5の最後方位置RMPで最大値FMとなっている。
【0034】
次に、本実施形態の動作について説明する。
既述のように、アッパレール5の移動軌跡の接線方向は、該アッパレール5が後側に向かうに従い水平方向に対して急峻に傾斜する。従って、アッパレール5等に加わる荷重の後方分力成分は、該アッパレール5が最後方位置RMPに近いほど増加する。一方、アッパレール5が所定中間位置MPから最後方位置RMPまでの範囲にあるとき、即ちアッパレール5等に加わる荷重の後方分力成分が大きいとき、シート6の前方への移動を助勢するコイルスプリング30の付勢力は、アッパレール5が最後方位置RMPに近いほど増加する。従って、アッパレール5等に加わる荷重の後方分力成分が増加したとしても、コイルスプリング30の付勢力の増加分で補うことで、シート6を前方に移動させるために要する力の増加が抑えられる。
【0035】
コイルスプリング30は、アッパレール5が所定中間位置MPにあるときにコイル部31を自由状態に弾性復帰させる。そして、シート6の前方への移動を助勢するコイルスプリング30の付勢力は、アッパレール5が最前方位置FMPから所定中間位置MPまでの範囲にあるとき、即ちアッパレール5等に加わる荷重の後方分力成分が小さいときにゼロとなる。従って、シート6が前方に移動する際の移動速度の増加が抑えられる。
【0036】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、アッパレール5が所定中間位置MPから最後方位置RMPまでの範囲にあるとき、アッパレール5等に加わる荷重の後方分力成分が増加したとしても、コイルスプリング30の付勢力の増加分で補うことで、シート6を前方に移動させるために要する力の増加を抑えることができ、その際の操作性を向上できる。また、アッパレール5が最前方位置FMPから所定中間位置MPまでの範囲にあるとき、コイルスプリング30の付勢力がゼロになることで、シート6が前方に移動する際の移動速度が増加して利用者に違和感を与えたりすることも解消できる。
【0037】
(2)本実施形態では、シート6の前述の助勢等に係る構造を、収容部材11及びコイルスプリング30等からなる極めて簡易なものにできる。
(3)本実施形態では、アッパレール5が最前方位置FMPにあるとき、弾性復帰状態にあるコイル部31の後端部が収容部材11に収容される。従って、アッパレール5が最前方位置FMPにあっても、コイル部31が収容部材11から完全に抜け出すことがないため、その後、アッパレール5が後側に移動する際にコイル部31を収容部材11に円滑に収容することができる。
【0038】
(4)本実施形態では、収容部材11及び脚部33は、ロアレール4側(足ブラケット2)及びアッパレール5側(ピン24)にそれぞれ回動自在に連結されていることで、アッパレール5が前記曲成された移動軌跡で移動する際に、収容部材11又は脚部33の揺動でこれを吸収して前述の付勢力の発生等ができる。また、コイルスプリング30のコイル部31が、収容部材11内で曲がってその弾性変形が阻害されることを回避できる。
【0039】
(5)本実施形態では、収容部材11及びコイルスプリング30等を、各ロアレール4等のシート幅方向内側に配置したことで、例えば着座者等の手がこれらに触れることを抑制できる。
【0040】
(第2の実施形態)
図7〜図8を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態のシート6の助勢等に係る付勢手段の構造を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明は省略する。
【0041】
図7に示すように、両アッパレール5の縦壁部5a間には、それらの後端部において支持部材41が橋渡しされている。この支持部材41は、ロアレール4の上側でシート幅方向に延在する円筒状の連結棒42と、該連結棒42の長手方向中央部から前側に延出する長尺状の支持部43とを有して平面視略T字形状を呈する。なお、支持部43の前端部には、シート幅方向に開口する長穴43aが前後方向に延設されている。
【0042】
一方、両ロアレール4間には、ロープ状の弾性部材46が橋渡しされている。すなわち、両ロアレール4の前端部下面には、互いに対向するシート幅方向に突設された略L字状のブラケット45が固着されている。そして、シート幅方向に延在する弾性部材46は、長穴43aに挿通されてその両端部が両ブラケット45の上向きの延設部にそれぞれ回動自在に係止されている。支持部材41、両ブラケット45及び弾性部材46は付勢手段を構成する。
【0043】
ここで、アッパレール5が前記所定中間位置MPにあるとき、図8(a)に示すように、弾性部材46は、長穴43aの前端面に当接又は近接してシート幅方向に直線状に延びている。つまり、弾性部材46は、前後方向において自由状態に弾性復帰している。
【0044】
従って、アッパレール5が前記最後方位置RMPへと移動すると、図8(b)に示すように、長穴43aの前端面で弾性部材46が後側に引っ張られて伸長されることで、長穴43a(即ちアッパレール5)を前方に引っ張る付勢力を発生する。この弾性部材46の引っ張り長、即ち弾性部材46の付勢力は、所定中間位置MPから最後方位置RMPまでの範囲で、アッパレール5が最後方位置RMPに近いほど大きくなるように比例的に変化する。この付勢力により、シート6と一体でのアッパレール5の前方への移動が助勢される。
【0045】
一方、アッパレール5が前記最前方位置FMPへと移動すると、図8(c)に示すように、弾性部材46は、前後方向において自由状態(弾性復帰状態)のまま長穴43aの後端面に当接又は近接する。従って、アッパレール5の所定中間位置MPから最前方位置FMPまでの範囲では、弾性部材46は前後方向において弾性復帰状態のまま長穴43a内を移動することで、該長穴43aを前方に引っ張る付勢力はゼロである。
【0046】
以上により、本実施形態においても、ロアレール4に対するアッパレール5の可動範囲における弾性部材46の付勢力は、図9に示す特性を有している。
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)(5)の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
【0047】
(1)本実施形態では、シート6の前述の助勢等に係る構造を、支持部材41及び弾性部材46等からなる極めて簡易なものにできる。
(2)本実施形態では、弾性部材46は、長穴43aにおいて支持部材41(両アッパレール5側)に対し回動自在であり、両端部が両ブラケット45(両アッパレール5側)に対し回動自在であることで、アッパレール5が前記曲成された移動軌跡で移動する際に、弾性部材46の揺動でこれを吸収して前述の付勢力の発生等ができる。
【0048】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記第1の実施形態において、アッパレール5の前記曲成された移動軌跡での移動を阻害しないのであれば、ブラケット14(収容部材11)及び脚部33は、ロアレール4側及びアッパレール5側にそれぞれ回動不能に固定されていてもよい。
【0049】
・前記第1の実施形態において、アッパレール5が後側に移動した際に収容部材11内に再び収まるのであれば、アッパレール5が最前方位置FMPにあるときにコイル部31が収容部材11から完全に抜け出ていてもよい。
【0050】
・前記第1の実施形態において、収容部材11は、ロアレール4の前端部に連結されていてもよいし、車両フロア1(例えば台座部1a)に連結されていてもよい。
・前記第1の実施形態において、コイルスプリング30の脚部33(掛止部33a)は、シート6に連結されていてもよい。
【0051】
・前記第1の実施形態において、収容部材11及び脚部33と、ロアレール4側及びアッパレール5側の固定関係は逆であってもよい。この場合、収容部材11及びコイルスプリング30を前後逆向きに配置して、アッパレール5の後端部に収容部材11を回動自在に連結し、足ブラケット2又はロアレール4の前端部に脚部33を回動自在に連結すればよい。
【0052】
・前記第2の実施形態において、弾性部材46は、伸長するように弾性変形可能な適宜のワイヤやゴムひもなどであればよい。
・前記第2の実施形態において、弾性部材46は、両足ブラケット2に連結されていてもよいし、車両フロア1(例えば台座部1a)に連結されていてもよい。
【0053】
・前記第2の実施形態において、支持部材41(連結棒42)は、シート6に連結されていてもよい。
・前記第2の実施形態において、弾性部材46及び支持部材41と、ロアレール4側及びアッパレール5側の固定関係は逆であってもよい。この場合、支持部材41を前後逆向きに配置して、両アッパレール5の後端部間に弾性部材46を橋渡しし、両ロアレール4の前端部間に支持部材41を橋渡しすればよい。
【符号の説明】
【0054】
1…車両フロア、4…ロアレール、5…アッパレール、6…シート、11…収容部材(付勢手段)、12…筒部材、13…カバー、14…ブラケット、30…コイルスプリング(付勢手段)、31…コイル部、32…折返し部、33…脚部、41…支持部材(付勢手段)、43a…長穴、45…ブラケット、46…弾性部材(付勢手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートスライド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートスライド装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。図10に示すように、この車両用シートスライド装置は、車両フロアに固定されるロアレール91及びシート90に固定されるアッパレール92を備えて構成されている。これらロアレール91及びアッパレール92は、側面視で上向きに凸になるように曲成されている。そして、シート90を前方に移動させるとシート座面が上昇するとともにシート座面が水平に近くなるようにシート座面角が減少し、反対に、シート90を後方に移動させるとシート座面が下降するとともにシート座面角が増加する。これにより、運転者の体格が異なっても、運転姿勢を略同等の条件にできるように工夫している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2 174 828 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、ロアレール4に対しアッパレール5が後方に移動するに従って、シート座面角が急激に増加することになる。このため、乗員体重及びシート自重からなる荷重の後方分力成分が増加することになる。具体的には、図11に模式的に示すように、シート座面角の変動が前述の特性を有するシート90(アッパレール92)の移動軌跡L90上において、アッパレール92等に加わる体重等の荷重をWで表すと、該荷重Wが前側寄りの位置Pfに加わるときの移動軌跡L90に沿う後方分力成分Ffに比べて、荷重Wが後側寄りの位置Prに加わるときの移動軌跡L90に沿う後方分力成分Frの方が著しく増加することが確認される。従って、シート90を前方に移動させるために要する力は、該シート90が後側寄りに配置されているほど増加してしまい、その際の操作性の悪化を余儀なくされる。
【0005】
なお、シート90の前方への移動を助勢するための適宜の付勢手段を設けた装置も知られている。しかしながら、シート90が前側寄りに配置又は移動されて体重等の後方分力成分が僅少になっているにも関わらず、シート90の前方への移動を助勢してしまうと、シート90の移動速度が増加して利用者に違和感を与えるという別の問題が生じてしまう。
【0006】
本発明の目的は、車両フロアに固定されるロアレールに対しシートに固定されるアッパレールが後側に向かうに従い該アッパレールの移動軌跡の接線方向が水平方向に対して急峻に傾斜するようにこれらロアレール及びアッパレールがそれぞれ曲成されている車両用シートスライド装置において、違和感を与えることなくシートを前方に移動させる際の操作性を向上できる車両用シートスライド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両フロアに固定されるロアレールと、シートに固定され前記ロアレールに対し前後方向に移動可能に連結されたアッパレールとを備え、前記アッパレールが後側に向かうに従い該アッパレールの移動軌跡の接線方向が水平方向に対して急峻に傾斜するように前記ロアレール及び前記アッパレールがそれぞれ曲成されている車両用シートスライド装置において、前記ロアレールに対する前記アッパレールの可動範囲である該アッパレールの最前方位置及び最後方位置間において、前記最前方位置及び前記最後方位置間の所定中間位置から前記最後方位置までの範囲で、前記アッパレールが後側に向かうに従い増加する付勢力にて前記シートの前方への移動を助勢する付勢手段を備えたことを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、前記アッパレールが後側に向かうに従い該アッパレールの移動軌跡の接線方向が水平方向に対して急峻に傾斜することで、前記アッパレール等に加わる荷重の後方分力成分は、該アッパレールが前記最後方位置に近いほど増加する。一方、前記アッパレールが前記所定中間位置から前記最後方位置までの範囲にあるとき、即ち前記アッパレール等に加わる荷重の後方分力成分が大きいとき、前記シートの前方への移動を助勢する前記付勢手段の付勢力は、前記アッパレールが前記最後方位置に近いほど増加する。従って、前記アッパレール等に加わる荷重の後方分力成分が増加したとしても、前記付勢手段の付勢力の増加分で補うことで、前記シートを前方に移動させるために要する力の増加を抑えることができ、その際の操作性を向上できる。また、前記シートの前方への移動を助勢する前記付勢手段の付勢力は、前記アッパレールが前記最前方位置から前記所定中間位置までの範囲にあるとき、即ち前記アッパレール等に加わる荷重の後方分力成分が小さいときにゼロとなる。従って、前記シートが前方に移動する際の移動速度が増加して利用者に違和感を与えたりすることも解消できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートスライド装置において、前記付勢手段は、前記ロアレール側及び前記アッパレール側のいずれか一方に連結された有底筒状の収容部材と、前記収容部材に前後方向に移動可能に収容され一側端面が前記収容部材の底面に当接することで前後方向への移動が係止されるコイル部と、該コイル部の他側端面から前後方向に折り返す折返し部と、該折返し部に連続して前後方向に延出されて前記コイル部及び前記収容部材を貫通し前記ロアレール側及び前記アッパレール側のいずれか他方に連結される脚部とを有するコイルスプリングとを備え、前記アッパレールが前記所定中間位置から前記最後方位置までの範囲にあるとき、前記収容部材の前記底面及び前記折返し部間で前記コイル部を圧縮することで前記付勢力を発生し、前記アッパレールが前記所定中間位置にあるとき、前記コイル部を弾性復帰させることを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、前記付勢手段は、前記アッパレールが前記所定中間位置から前記最後方位置までの範囲にあるとき、前記アッパレールが前記最後方位置に近いほど前記コイル部の圧縮長を増加して前記付勢力を増加する。一方、前記付勢手段は、前記アッパレールが前記所定中間位置にあるとき、前記コイル部を弾性復帰させる。従って、前記アッパレールが前記最前方位置から前記所定中間位置までの範囲にあるとき、前記付勢手段は、前記コイル部を弾性復帰状態のまま前記収容部材内を移動させることで、前記付勢力をゼロにする。このように、前記付勢手段を、前記収容部材及び前記コイルスプリングからなる極めて簡易な構造にできる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用シートスライド装置において、前記アッパレールが前記最前方位置にあるとき、弾性復帰状態にある前記コイル部の少なくとも一部は、前記収容部材に収容されることを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、前記アッパレールが前記最前方位置にあっても、前記コイル部が前記収容部材から完全に抜け出すことがないため、その後、前記アッパレールが後側に移動する際に前記コイル部を前記収容部材に円滑に収容することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の車両用シートスライド装置において、前記収容部材及び前記脚部は、前記ロアレール側及び前記アッパレール側のいずれか一方及び他方にそれぞれ回動自在に連結されていることを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、前記収容部材及び前記脚部は、前記ロアレール側及び前記アッパレール側のいずれか一方及び他方にそれぞれ回動自在に連結されていることで、前記アッパレールが前記曲成された移動軌跡で移動する際に、前記収容部材又は前記脚部の揺動でこれを吸収して前述の付勢力の発生等ができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の車両用シートスライド装置において、前記ロアレール及び前記アッパレールは、シート幅方向両側に一対で配設されており、前記付勢手段は、前記両ロアレール間及び前記両アッパレール間のいずれか一方に橋渡しされ、前後方向に延在する長穴を有する支持部材と、前記長穴に挿通されて、前記両ロアレール間及び前記両アッパレール間のいずれか他方に橋渡しされる弾性部材とを備え、前記アッパレールが前記所定中間位置から前記最後方位置までの範囲にあるとき、前記長穴の先端面で前記弾性部材を引っ張ることで前記付勢力を発生し、前記アッパレールが前記所定中間位置にあるとき、前記弾性部材を弾性復帰させることを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、前記付勢手段は、前記アッパレールが前記所定中間位置から前記最後方位置までの範囲にあるとき、前記アッパレールが前記最後方位置に近いほど前記弾性部材の引っ張り長を増加して前記付勢力を増加する。一方、前記付勢手段は、前記アッパレールが前記所定中間位置にあるとき、前記弾性部材を弾性復帰させる。従って、前記アッパレールが前記最前方位置から前記所定中間位置までの範囲にあるとき、前記付勢手段は、前記弾性部材を弾性復帰状態のまま前記長穴内を移動させることで、前記付勢力をゼロにする。このように、前記付勢手段を、前記支持部材及び前記弾性部材からなる極めて簡易な構造にできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、車両フロアに固定されるロアレールに対しシートに固定されるアッパレールが後側に向かうに従い該アッパレールの移動軌跡の接線方向が水平方向に対して急峻に傾斜するようにこれらロアレール及びアッパレールがそれぞれ曲成されている車両用シートスライド装置において、違和感を与えることなくシートを前方に移動させる際の操作性を向上できる車両用シートスライド装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用されるシートの側面図。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す分解斜視図。
【図3】同実施形態を示す側面図。
【図4】図3のA−A線に沿った断面図。
【図5】図3のB−B線に沿った断面図。
【図6】同実施形態の動作を示す縦断面図であって、(a)中間位置、(b)最後方位置、(c)最前方位置での縦断面図。
【図7】本発明の第2の実施形態を示す斜視図。
【図8】同実施形態の動作を示す側面図であって、(a)中間位置、(b)最後方位置、(c)最前方位置での側面図。
【図9】アッパレールの位置と付勢力との関係を示すグラフ。
【図10】従来形態を示す側面図。
【図11】アッパレールの移動軌跡と後方分力成分との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
図1〜図6を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。図1に示すように、略水平に広がる車両フロア1には、前後方向に並設された台座部1a,1bが上向きに突設されている。前側の台座部1aの上方への突出長は、後側の台座部1bの上方への突出長よりも大きく設定されている。そして、前側の台座部1aには、例えば金属板からなる側面視略クランク状の足ブラケット2がその下端部において締結されている。同様に、後側の台座部1bには、例えば金属板からなる側面視略クランク状の足ブラケット3がその下端部において締結されている。なお、前側の足ブラケット2の上方への突出長は、後側の足ブラケット3の上方への突出長よりも大きく設定されている。
【0020】
両足ブラケット2,3の上端部には、これらの間に橋渡しされる態様で、前後方向に延在するロアレール4の前端部及び後端部がそれぞれ締結されている。そして、ロアレール4には、アッパレール5がロアレール4に対し前後方向に相対移動可能に装着されている。従って、ロアレール4及びアッパレール5は、両足ブラケット2,3間の高低差によって、前側に向かうに従って上昇し、反対に、後側に向かうに従って下降するように傾斜している。特に、ロアレール4及びアッパレール5は、該アッパレール5の移動軌跡の接線方向が後側に向かうに従い水平方向に対して急峻に傾斜するようにそれぞれ曲成されている。具体的には、ロアレール4及びアッパレール5は、該アッパレール5の移動軌跡が上向きに凸になるように所定曲率半径にて円弧状にそれぞれ曲成されている。この曲率半径は、ロアレール4等の長さに比べて十分に大きく設定されている。
【0021】
なお、両足ブラケット2,3、ロアレール4及びアッパレール5は、シート幅方向(図1において紙面に直交する方向)でそれぞれ対をなして配設されており、ここでは前方に向かって左側に配置されたものを示している。そして、両アッパレール5には、乗員の着座部を形成するシート6が固定・支持されている。従って、両アッパレール5の前後方向への移動に伴って、シート6が一体で前後方向に移動する。
【0022】
そして、例えばアッパレール5を前方に移動させるとその傾斜分でシート6が上昇し、反対に、アッパレール5を後方に移動させるとその傾斜分でシート6が下降するようになっている。特に、アッパレール5等は、前述の態様で上向きに凸になるように曲成されていることで、例えばシート6(アッパレール5)を前方に移動させる場合にはシート座面角が減少し、反対に、シート6を後方に移動させる場合にはシート座面角が増加するようになっている。図1では、シート6(アッパレール5)がその可動範囲の最後端位置から最前端位置まで移動した際の、想定される乗員の尻部(座骨)の軌跡L1を併せて描画している。この軌跡L1が、アッパレール5の移動軌跡と同心の円弧であることはいうまでもない。なお、ロアレール4に対するアッパレール5の可動範囲は、これらの間に介設される適宜の係止手段(ストッパなど:図示略)により規定されものである。また、ロアレール4及びアッパレール5の相対移動は、ロック部材(図示略)により通常は規制されており、該ロック部材に操作力を付与することでその規制が解除される。
【0023】
図2に示すように、前側の足ブラケット2は、その長手方向全長に延在する長尺状の底壁部2a及び該底壁部2aのシート幅方向両端から内向きに突設された一対のフランジ2bを有して断面略U字形状を呈しており、台座部1aに載置される底壁部2a下端部において台座部1aに締結される。また、足ブラケット2は、ロアレール4前端部を支持する底壁部2a上端部においてロアレール4に締結されている。なお、足ブラケット2の片側(シート幅方向内側)のフランジ2b上端部には、シート幅方向に貫通する円形の支持孔2cが形成されている。
【0024】
図5に示すように、ロアレール4は、板材からなり、断面形状が上向きに開いた略U字形状を呈する。一方、アッパレール5は、同じく板材からなり、断面略逆T字形状を呈する。ロアレール4及びアッパレール5は、それらの断面形状が上下方向及び幅方向に互いに係合する態様で、前後方向に移動可能に連結されている。
【0025】
なお、ロアレール4及びアッパレール5間には、それらの上下方向の距離を一定に保ちつつロアレール4に対するアッパレール5の前後方向の移動を可能とする転動体(図示略)が前後方向に一対設けられている。つまり、これら転動体は、上向きに凸になる円弧状のアッパレール5の移動軌跡を配慮して設置されている。
【0026】
ロアレール4の上向きの開口に合わせてアッパレール5のシート幅方向中央部に起立する縦壁部5aには、ロアレール4の上側でシート幅方向に貫通する円形の支持孔5bが形成されている。この支持孔5bは、図2に示すように、縦壁部5aの前端部に配設された前後の一対、後端部に配設された前後の一対の合計4個が存在する。
【0027】
縦壁部5aの前端部には、両支持孔5bにそれぞれ挿通・抜け止めされる一対のピン21により、例えば金属板からなるブラケット22が締結されている。また、縦壁部5aの後端部には、前側の支持孔5bに挿通・抜け止めされるピン23及び後側の支持孔5bに挿通・抜け止めされるピン24により、例えば金属板からなるブラケット25が締結されている。そして、図3に示すように、両ブラケット22,25の上端部には、これらの間に橋渡しされる態様で、シート6の座面側部の骨格をなす例えば金属板からなるシートクッションフレーム26の前端部及び後端部がそれぞれ締結されている。なお、図2及び図5に示すように、最後部のピン24は、他のピン21,23よりもシート幅方向内側への突出長が大きく設定されている。そして、ピン24の先端部には、周溝状の掛止溝24aが形成されている。
【0028】
図2に示すように、足ブラケット2には、支持孔2cに挿通・抜け止めされるピン10により、有底筒状の収容部材11が回動可能に連結されている。詳述すると、この収容部材11は、前後方向に連通する略円筒状の筒部材12と、該筒部材12の後端を閉塞する略丸盆状のカバー13とを備える。そして、筒部材12の前端部上面には、例えば金属板からなる断面略逆J字状のブラケット14が固着されている。図3及び図4に併せ示すように、このブラケット14の下向きに延びる延設部には、前記支持孔2cと同心でシート幅方向に貫通する円形の軸受孔14aが形成されている。収容部材11は、支持孔2cと共に軸受孔14aに挿通されるピン10によりブラケット14が軸支されることで、足ブラケット2に回動自在に連結されている。なお、筒部材12の中心Oのシート幅方向における位置は、前記掛止溝24aのシート幅方向における位置と概ね合致するように設定されている。
【0029】
図3に示すように、収容部材11には、コイルスプリング30が設けられている。このコイルスプリング30は、収容部材11に前後方向に移動可能に収容され後端面が収容部材11の底面(カバー13の前端面)に当接することで後側への移動が係止されるコイル部31と、該コイル部31の前端面から後側に折り返す折返し部32と、該折返し部32に連続して後側に延出される脚部33とを一体的に有する。なお、脚部33は、コイル部31及び収容部材11(カバー13)の中央部を貫通しており、その後端部に形成された環状の掛止部33aは、ピン24の前記掛止溝24aに回動可能に掛止されている。従って、収容部材11内でのコイル部31の状態は、ロアレール4に対するアッパレール5の前後方向の位置に応じて変化する。収容部材11、ブラケット14及びコイルスプリング30は付勢手段を構成する。
【0030】
ここで、ロアレール4に対するアッパレール5の可動範囲である該アッパレール5の最前方位置FMP及び最後方位置RMP間において、アッパレール5が最前方位置FMP及び最後方位置RMP間の所定中間位置MPにあるとき、図6(a)に示すように、コイル部31は、その後端面が収容部材11の底面に当接又は近接する状態で自由状態に弾性復帰している。この自由状態でのコイル部31の長さは、収容部材11(筒部材12)の軸線方向の長さと同等に設定されている。
【0031】
従って、アッパレール5が最後方位置RMPへと移動すると、図6(b)に示すように、収容部材11の底面及び折返し部32間でコイル部31が圧縮されることで、掛止部33a(即ちアッパレール5)を前方に引っ張る付勢力を発生する。このコイル部31の圧縮長、即ちコイルスプリング30の付勢力は、所定中間位置MPから最後方位置RMPまでの範囲で、アッパレール5が最後方位置RMPに近いほど大きくなるように比例的に変化する。この付勢力により、シート6と一体でのアッパレール5の前方への移動が助勢される。
【0032】
一方、アッパレール5が最前方位置FMPへと移動すると、図6(c)に示すように、コイル部31は、自由状態(弾性復帰状態)のままその前端部を収容部材11(筒部材12)の前方に突出させる。従って、アッパレール5の所定中間位置MPから最前方位置FMPまでの範囲では、コイルスプリング30は、コイル部31を弾性復帰状態のまま収容部材11内を移動させることで、コイル部31に発生する付勢力はゼロである。なお、所定中間位置MPから最前方位置FMPまでのアッパレール5の移動量は、自由状態でのコイル部31の長さ(収容部材11の軸線方向の長さ)よりも短く設定されている。従って、アッパレール5が最前方位置FMPにあっても、自由状態にあるコイル部31の後端部が収容部材11内に収まるようになっている。
【0033】
図9は、上述のロアレール4に対するアッパレール5の可動範囲におけるコイルスプリング30の付勢力を示すグラフである。同図に示すように、コイルスプリング30の付勢力は、アッパレール5の位置が最前方位置FMPから所定中間位置MPまでの範囲でゼロとなり、所定中間位置MPから最後方位置RMPまでの範囲で該最後方位置RMPに近付くに従い比例的に増加する特性を有している。そして、コイルスプリング30の付勢力は、アッパレール5の最後方位置RMPで最大値FMとなっている。
【0034】
次に、本実施形態の動作について説明する。
既述のように、アッパレール5の移動軌跡の接線方向は、該アッパレール5が後側に向かうに従い水平方向に対して急峻に傾斜する。従って、アッパレール5等に加わる荷重の後方分力成分は、該アッパレール5が最後方位置RMPに近いほど増加する。一方、アッパレール5が所定中間位置MPから最後方位置RMPまでの範囲にあるとき、即ちアッパレール5等に加わる荷重の後方分力成分が大きいとき、シート6の前方への移動を助勢するコイルスプリング30の付勢力は、アッパレール5が最後方位置RMPに近いほど増加する。従って、アッパレール5等に加わる荷重の後方分力成分が増加したとしても、コイルスプリング30の付勢力の増加分で補うことで、シート6を前方に移動させるために要する力の増加が抑えられる。
【0035】
コイルスプリング30は、アッパレール5が所定中間位置MPにあるときにコイル部31を自由状態に弾性復帰させる。そして、シート6の前方への移動を助勢するコイルスプリング30の付勢力は、アッパレール5が最前方位置FMPから所定中間位置MPまでの範囲にあるとき、即ちアッパレール5等に加わる荷重の後方分力成分が小さいときにゼロとなる。従って、シート6が前方に移動する際の移動速度の増加が抑えられる。
【0036】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、アッパレール5が所定中間位置MPから最後方位置RMPまでの範囲にあるとき、アッパレール5等に加わる荷重の後方分力成分が増加したとしても、コイルスプリング30の付勢力の増加分で補うことで、シート6を前方に移動させるために要する力の増加を抑えることができ、その際の操作性を向上できる。また、アッパレール5が最前方位置FMPから所定中間位置MPまでの範囲にあるとき、コイルスプリング30の付勢力がゼロになることで、シート6が前方に移動する際の移動速度が増加して利用者に違和感を与えたりすることも解消できる。
【0037】
(2)本実施形態では、シート6の前述の助勢等に係る構造を、収容部材11及びコイルスプリング30等からなる極めて簡易なものにできる。
(3)本実施形態では、アッパレール5が最前方位置FMPにあるとき、弾性復帰状態にあるコイル部31の後端部が収容部材11に収容される。従って、アッパレール5が最前方位置FMPにあっても、コイル部31が収容部材11から完全に抜け出すことがないため、その後、アッパレール5が後側に移動する際にコイル部31を収容部材11に円滑に収容することができる。
【0038】
(4)本実施形態では、収容部材11及び脚部33は、ロアレール4側(足ブラケット2)及びアッパレール5側(ピン24)にそれぞれ回動自在に連結されていることで、アッパレール5が前記曲成された移動軌跡で移動する際に、収容部材11又は脚部33の揺動でこれを吸収して前述の付勢力の発生等ができる。また、コイルスプリング30のコイル部31が、収容部材11内で曲がってその弾性変形が阻害されることを回避できる。
【0039】
(5)本実施形態では、収容部材11及びコイルスプリング30等を、各ロアレール4等のシート幅方向内側に配置したことで、例えば着座者等の手がこれらに触れることを抑制できる。
【0040】
(第2の実施形態)
図7〜図8を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態のシート6の助勢等に係る付勢手段の構造を変更したのみの構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明は省略する。
【0041】
図7に示すように、両アッパレール5の縦壁部5a間には、それらの後端部において支持部材41が橋渡しされている。この支持部材41は、ロアレール4の上側でシート幅方向に延在する円筒状の連結棒42と、該連結棒42の長手方向中央部から前側に延出する長尺状の支持部43とを有して平面視略T字形状を呈する。なお、支持部43の前端部には、シート幅方向に開口する長穴43aが前後方向に延設されている。
【0042】
一方、両ロアレール4間には、ロープ状の弾性部材46が橋渡しされている。すなわち、両ロアレール4の前端部下面には、互いに対向するシート幅方向に突設された略L字状のブラケット45が固着されている。そして、シート幅方向に延在する弾性部材46は、長穴43aに挿通されてその両端部が両ブラケット45の上向きの延設部にそれぞれ回動自在に係止されている。支持部材41、両ブラケット45及び弾性部材46は付勢手段を構成する。
【0043】
ここで、アッパレール5が前記所定中間位置MPにあるとき、図8(a)に示すように、弾性部材46は、長穴43aの前端面に当接又は近接してシート幅方向に直線状に延びている。つまり、弾性部材46は、前後方向において自由状態に弾性復帰している。
【0044】
従って、アッパレール5が前記最後方位置RMPへと移動すると、図8(b)に示すように、長穴43aの前端面で弾性部材46が後側に引っ張られて伸長されることで、長穴43a(即ちアッパレール5)を前方に引っ張る付勢力を発生する。この弾性部材46の引っ張り長、即ち弾性部材46の付勢力は、所定中間位置MPから最後方位置RMPまでの範囲で、アッパレール5が最後方位置RMPに近いほど大きくなるように比例的に変化する。この付勢力により、シート6と一体でのアッパレール5の前方への移動が助勢される。
【0045】
一方、アッパレール5が前記最前方位置FMPへと移動すると、図8(c)に示すように、弾性部材46は、前後方向において自由状態(弾性復帰状態)のまま長穴43aの後端面に当接又は近接する。従って、アッパレール5の所定中間位置MPから最前方位置FMPまでの範囲では、弾性部材46は前後方向において弾性復帰状態のまま長穴43a内を移動することで、該長穴43aを前方に引っ張る付勢力はゼロである。
【0046】
以上により、本実施形態においても、ロアレール4に対するアッパレール5の可動範囲における弾性部材46の付勢力は、図9に示す特性を有している。
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)(5)の効果に加えて以下に示す効果が得られるようになる。
【0047】
(1)本実施形態では、シート6の前述の助勢等に係る構造を、支持部材41及び弾性部材46等からなる極めて簡易なものにできる。
(2)本実施形態では、弾性部材46は、長穴43aにおいて支持部材41(両アッパレール5側)に対し回動自在であり、両端部が両ブラケット45(両アッパレール5側)に対し回動自在であることで、アッパレール5が前記曲成された移動軌跡で移動する際に、弾性部材46の揺動でこれを吸収して前述の付勢力の発生等ができる。
【0048】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記第1の実施形態において、アッパレール5の前記曲成された移動軌跡での移動を阻害しないのであれば、ブラケット14(収容部材11)及び脚部33は、ロアレール4側及びアッパレール5側にそれぞれ回動不能に固定されていてもよい。
【0049】
・前記第1の実施形態において、アッパレール5が後側に移動した際に収容部材11内に再び収まるのであれば、アッパレール5が最前方位置FMPにあるときにコイル部31が収容部材11から完全に抜け出ていてもよい。
【0050】
・前記第1の実施形態において、収容部材11は、ロアレール4の前端部に連結されていてもよいし、車両フロア1(例えば台座部1a)に連結されていてもよい。
・前記第1の実施形態において、コイルスプリング30の脚部33(掛止部33a)は、シート6に連結されていてもよい。
【0051】
・前記第1の実施形態において、収容部材11及び脚部33と、ロアレール4側及びアッパレール5側の固定関係は逆であってもよい。この場合、収容部材11及びコイルスプリング30を前後逆向きに配置して、アッパレール5の後端部に収容部材11を回動自在に連結し、足ブラケット2又はロアレール4の前端部に脚部33を回動自在に連結すればよい。
【0052】
・前記第2の実施形態において、弾性部材46は、伸長するように弾性変形可能な適宜のワイヤやゴムひもなどであればよい。
・前記第2の実施形態において、弾性部材46は、両足ブラケット2に連結されていてもよいし、車両フロア1(例えば台座部1a)に連結されていてもよい。
【0053】
・前記第2の実施形態において、支持部材41(連結棒42)は、シート6に連結されていてもよい。
・前記第2の実施形態において、弾性部材46及び支持部材41と、ロアレール4側及びアッパレール5側の固定関係は逆であってもよい。この場合、支持部材41を前後逆向きに配置して、両アッパレール5の後端部間に弾性部材46を橋渡しし、両ロアレール4の前端部間に支持部材41を橋渡しすればよい。
【符号の説明】
【0054】
1…車両フロア、4…ロアレール、5…アッパレール、6…シート、11…収容部材(付勢手段)、12…筒部材、13…カバー、14…ブラケット、30…コイルスプリング(付勢手段)、31…コイル部、32…折返し部、33…脚部、41…支持部材(付勢手段)、43a…長穴、45…ブラケット、46…弾性部材(付勢手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両フロアに固定されるロアレールと、シートに固定され前記ロアレールに対し前後方向に移動可能に連結されたアッパレールとを備え、前記アッパレールが後側に向かうに従い該アッパレールの移動軌跡の接線方向が水平方向に対して急峻に傾斜するように前記ロアレール及び前記アッパレールがそれぞれ曲成されている車両用シートスライド装置において、
前記ロアレールに対する前記アッパレールの可動範囲である該アッパレールの最前方位置及び最後方位置間において、前記最前方位置及び前記最後方位置間の所定中間位置から前記最後方位置までの範囲で、前記アッパレールが後側に向かうに従い増加する付勢力にて前記シートの前方への移動を助勢する付勢手段を備えたことを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートスライド装置において、
前記付勢手段は、
前記ロアレール側及び前記アッパレール側のいずれか一方に連結された有底筒状の収容部材と、
前記収容部材に前後方向に移動可能に収容され一側端面が前記収容部材の底面に当接することで前後方向への移動が係止されるコイル部と、該コイル部の他側端面から前後方向に折り返す折返し部と、該折返し部に連続して前後方向に延出されて前記コイル部及び前記収容部材を貫通し前記ロアレール側及び前記アッパレール側のいずれか他方に連結される脚部とを有するコイルスプリングとを備え、
前記アッパレールが前記所定中間位置から前記最後方位置までの範囲にあるとき、前記収容部材の前記底面及び前記折返し部間で前記コイル部を圧縮することで前記付勢力を発生し、
前記アッパレールが前記所定中間位置にあるとき、前記コイル部を弾性復帰させることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートスライド装置において、
前記アッパレールが前記最前方位置にあるとき、弾性復帰状態にある前記コイル部の少なくとも一部は、前記収容部材に収容されることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の車両用シートスライド装置において、
前記収容部材及び前記脚部は、前記ロアレール側及び前記アッパレール側のいずれか一方及び他方にそれぞれ回動自在に連結されていることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用シートスライド装置において、
前記ロアレール及び前記アッパレールは、シート幅方向両側に一対で配設されており、
前記付勢手段は、
前記両ロアレール間及び前記両アッパレール間のいずれか一方に橋渡しされ、前後方向に延在する長穴を有する支持部材と、
前記長穴に挿通されて、前記両ロアレール間及び前記両アッパレール間のいずれか他方に橋渡しされる弾性部材とを備え、
前記アッパレールが前記所定中間位置から前記最後方位置までの範囲にあるとき、前記長穴の先端面で前記弾性部材を引っ張ることで前記付勢力を発生し、
前記アッパレールが前記所定中間位置にあるとき、前記弾性部材を弾性復帰させることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項1】
車両フロアに固定されるロアレールと、シートに固定され前記ロアレールに対し前後方向に移動可能に連結されたアッパレールとを備え、前記アッパレールが後側に向かうに従い該アッパレールの移動軌跡の接線方向が水平方向に対して急峻に傾斜するように前記ロアレール及び前記アッパレールがそれぞれ曲成されている車両用シートスライド装置において、
前記ロアレールに対する前記アッパレールの可動範囲である該アッパレールの最前方位置及び最後方位置間において、前記最前方位置及び前記最後方位置間の所定中間位置から前記最後方位置までの範囲で、前記アッパレールが後側に向かうに従い増加する付勢力にて前記シートの前方への移動を助勢する付勢手段を備えたことを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートスライド装置において、
前記付勢手段は、
前記ロアレール側及び前記アッパレール側のいずれか一方に連結された有底筒状の収容部材と、
前記収容部材に前後方向に移動可能に収容され一側端面が前記収容部材の底面に当接することで前後方向への移動が係止されるコイル部と、該コイル部の他側端面から前後方向に折り返す折返し部と、該折返し部に連続して前後方向に延出されて前記コイル部及び前記収容部材を貫通し前記ロアレール側及び前記アッパレール側のいずれか他方に連結される脚部とを有するコイルスプリングとを備え、
前記アッパレールが前記所定中間位置から前記最後方位置までの範囲にあるとき、前記収容部材の前記底面及び前記折返し部間で前記コイル部を圧縮することで前記付勢力を発生し、
前記アッパレールが前記所定中間位置にあるとき、前記コイル部を弾性復帰させることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートスライド装置において、
前記アッパレールが前記最前方位置にあるとき、弾性復帰状態にある前記コイル部の少なくとも一部は、前記収容部材に収容されることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の車両用シートスライド装置において、
前記収容部材及び前記脚部は、前記ロアレール側及び前記アッパレール側のいずれか一方及び他方にそれぞれ回動自在に連結されていることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用シートスライド装置において、
前記ロアレール及び前記アッパレールは、シート幅方向両側に一対で配設されており、
前記付勢手段は、
前記両ロアレール間及び前記両アッパレール間のいずれか一方に橋渡しされ、前後方向に延在する長穴を有する支持部材と、
前記長穴に挿通されて、前記両ロアレール間及び前記両アッパレール間のいずれか他方に橋渡しされる弾性部材とを備え、
前記アッパレールが前記所定中間位置から前記最後方位置までの範囲にあるとき、前記長穴の先端面で前記弾性部材を引っ張ることで前記付勢力を発生し、
前記アッパレールが前記所定中間位置にあるとき、前記弾性部材を弾性復帰させることを特徴とする車両用シートスライド装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−107423(P2013−107423A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251821(P2011−251821)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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