説明

車両用シート

【課題】リクライニング装置の操作軸にロックの回転方向への附勢力をかけるトーションスプリングが、操作軸に軸方向のガタ付きがあっても、操作軸との掛着から外れにくくなるようにする。
【解決手段】リクライニング装置4の操作軸4aにロックの回転方向への附勢力をかけるトーションスプリング7は、操作軸4aのシート外側に突出する外側の端部と、同外側に位置するシートクッションフレーム3aに固定されたバネ掛片3b1と、の間に掛着されている。このトーションスプリング7は、操作軸4aの外側の端部にシート外側から軸方向に挿通されて巻装され、その挿通先となるシート内側の端部7aが操作軸4aに掛着され、シート外側の端部7bがバネ掛片3b1に掛着されて設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。詳しくは、シートバックが回転ロック機能を備えたリクライニング装置を介してシートクッションに背凭れ角度調節可能な状態に連結された車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、シートクッションの車両外側の側部に設けられた解除レバーの引き操作によって、シートバックの背凭れ角度の固定状態を解除して、背凭れ角度の調節操作を行えるようにした構成が知られている(特許文献1)。上記解除レバーは、シートバックとシートクッションとを連結しているリクライニング装置の中心部に挿通されたロック解除操作用の操作軸に一体的に連結されて設けられている。上記解除レバーは、常時は、上記操作軸の車両外側の端部とシートクッションの車両外側のフレーム部との間に掛着されたトーションスプリングによって、リクライニング装置をロック状態にして保持する下げの回転方向に附勢された状態とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−95432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の従来技術では、トーションスプリングが、リクライニング装置の操作軸に設定された軸方向の隙間によるガタ付きにより、操作軸との掛着が外れやすい構成となっている。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、リクライニング装置の操作軸にロックの回転方向への附勢力をかけるトーションスプリングが、操作軸に軸方向のガタ付きがあっても、操作軸との掛着から外れにくくなるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートは次の手段をとる。
第1の発明は、シートバックが回転ロック機能を備えたリクライニング装置を介してシートクッションに背凭れ角度調節可能な状態に連結された車両用シートである。リクライニング装置のロック状態を解除するための操作軸が、リクライニング装置に軸方向に挿通されて組み付けられている。操作軸は、そのリクライニング装置からシート外側に突出する外側の端部と、同外側に位置するシートバック又はシートクッションを構成するフレーム部と、の間にトーションスプリングが掛着され、常時はこのトーションスプリングによりリクライニング装置をロックさせる回転方向に附勢された状態とされている。トーションスプリングは、操作軸の外側の端部にシート外側から軸方向に挿通されて巻装され、その挿通先となるシート内側の端部が操作軸に掛着され、シート外側の端部がフレーム部に掛着されて設けられている。
【0006】
この第1の発明によれば、トーションスプリングは、操作軸がシート内側(軸方向)にガタ付いても、そのシート内側の端部と操作軸のシート外側の端部との間に巻装された軸方向のラップ長があることにより、操作軸との掛着から外れにくくなる。また、トーションスプリングは、その内外の端部が互いに相反する軸方向位置に設定された形状となっているため、操作軸がシート内側(軸方向)にガタ付いても、軸方向に延伸される変形態様となり、押し窄められて操作軸の端部から外されるような変形態様とはならなくなる。このように、トーションスプリングを、操作軸に設定された軸方向の隙間によるガタ付きがあっても、操作軸との掛着から外れにくくなるようにすることができる。
【0007】
第2の発明は、上述した第1の発明において、次の構成となっているものである。すなわち、トーションスプリングは、そのシート内側の端部が操作軸に形成された角張った断面形状部に合致するように軸方向に挿し込まれて掛着され、シート外側の端部がフレーム部に捩り込まれて掛着されて設けられるようになっている。
【0008】
この第2の発明によれば、トーションスプリングを、操作軸に対して、シート外側から軸方向に挿通することにより、そのシート内側の端部を操作軸の角張った断面形状部に合致させた状態に掛着させることができる。また、トーションスプリングのシート内側の端部が操作軸に掛着する両者の軸方向のラップ長を、上記操作軸の角張った断面形状部を軸方向に延長することで簡便に長く設定することができる。
【0009】
第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、次の構成となっているものである。リクライニング装置が、シートバックの左右両側部とシートクッションの左右両側部との間にそれぞれ設定されている。各リクライニング装置のそれぞれに操作軸が設定されており、各操作軸は、ロッドにより互いに一体的に回動するように連結されている。各操作軸のうちの一方に、各リクライニング装置のロック状態を解除するための操作レバーが繋がれている。トーションスプリングが各リクライニング装置自体に個別に設定された各操作軸をロックさせる回転方向に附勢するためのロックスプリングとは別途に、各操作軸のシート外側の端部と同外側に位置する各フレーム部との間にそれぞれ掛着されて設けられており、操作レバーの操作前の初期位置に遊びを設定したことによる操作レバーの初期位置でのガタ付きを押さえるための附勢部材として機能するようになっている。
【0010】
この第3の発明によれば、リクライニング装置及び操作軸が左右両側部に設定される構成において、各操作軸がロッドを介して軸方向に1つに組み付けられることで設定される軸方向の組み付け隙間をガタ付いても、各トーションスプリングを外れにくくすることができる。トーションスプリングを左右両側部に設定することで、操作レバーの初期位置でのガタ付きを押さえるための附勢を、左右で偏ることなくバランスよくかけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の車両用シートの概略構成を示した斜視図である。
【図2】車両用シートの側面図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【図4】操作軸が軸方向に動いた状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
始めに、実施例1の車両用シート1の構成について、図1〜図4を用いて説明する。本実施例の車両用シート1は、図1に示すように、自動車の助手席シートとして構成されており、着座乗員の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を有する。シートバック2は、その左右両側の下端部が、車両のフロア上に設置されたシートクッション3の左右両側の各後端部に対して、それぞれ、回転止め可能な回転軸装置として機能するリクライニング装置4を間に介して連結された構成となっている。
【0014】
上記各リクライニング装置4は、詳しくは、シートバック2の骨格を成すシートバックフレーム2aの左右両側の下端部と、シートクッション3の骨格を成すシートクッションフレーム3aの左右両側の後端部と、の間にそれぞれ介設され、これらを互いに同軸回りに相対回転可能な状態となるように連結している。これにより、シートバック2が、シートクッション3に対して、シート前後方向に背凭れ角度調節可能な状態に連結された状態とされている。上記各リクライニング装置4は、それらの内部に備えられた回転止め構造(ロック構造)によって、シートバック2の背凭れ角度を変化させられる状態(アンロック状態)とロックした状態とに切り替えられるようになっている。
【0015】
詳しくは、上記各リクライニング装置4は、それらの中心部に挿通された各操作軸4aの軸回転操作に伴って、ロック・アンロックの各状態に切り替えられるようになっており、各操作軸4aがロッド4bによって互いに一体的に連結されていることにより、互いのロック・アンロックの切替え操作が左右で同期して一斉に行われるようになっている。
【0016】
上記各リクライニング装置4は、常時は、後述するバネの附勢構造によってロックした作動状態に保持されており、シートバック2の背凭れ角度を固定した状態となって保持されている。そして、このシートバック2の背凭れ角度の固定状態は、シートクッション3の車両外側(図1の紙面右側)の側部に設けられた解除レバー5を引き上げる操作によって、各操作軸4aが一斉に軸回転操作されて解除されるようになっている。この解除操作により、シートバック2がその背凭れ角度位置を自由に調節することができる状態となる。また、上記の解除操作をやめることにより、各リクライニング装置4が再びそれらのバネ附勢構造によってロックした状態に戻されて、シートバック2の背凭れ角度が固定された状態に戻される。
【0017】
ここで、上記シートバックフレーム2aの左右両側部とシートクッションフレーム3aの左右両側部との間には、シートバック2を常時シート前方側に向かって回転附勢する渦巻きバネ6が掛着されている。これら渦巻きバネ6は、図2に示すように、それらの内側の端部6aが、シートクッションフレーム3aの左右両外側の側部に結合されたL字板3bの両外側に張り出す板部の前縁部に掛着されて固定されており、外側の端部6bが、シートバックフレーム2aの左右両外側の側部に結合されたL字板2bの両外側に張り出す板部の後縁部にそれぞれ掛着されて固定されている。
【0018】
これら渦巻きバネ6の附勢力により、シートバック2は、その背凭れ角度の固定状態が解かれると、着座乗員の背部に当たる位置まで起こし上げられて、着座乗員の背部が前後に傾動される動きに追従してその背凭れ角度位置を自由に変動させられるようになっている。なお、上記シートバック2の回転可能領域は、上述したシートバックフレーム2aの左右両外側の側部に結合されたL字板2bの前縁部又は後縁部が、シートクッションフレーム3aの左右両側部の前部又は後部に突出して形成された前倒れストッパ3d1又は後倒れストッパ3d2と当たる位置間の領域として設定されている。
【0019】
ところで、上述した各リクライニング装置4は、図3に示すように、円盤形状のラチェット10及びガイド20と、これらの間に挟まれて配設される図示しないロック部品と、ロック部品をロック・アンロック作動させるヒンジカム30と、ヒンジカム30を常時ロック作動させる方向に回転附勢するロックスプリング40と、ラチェット10とガイド20とを組み付けた状態に保持する外周リング50と、を有する構成となっている。ラチェット10は、その円盤部11の外周部に、板厚方向(軸方向)に円筒状に突出する円筒部12が形成された構成となっている。このラチェット10の中心部には、丸孔状の貫通孔13が板厚方向に貫通して形成されている。ガイド20は、上記ラチェット10よりもひとまわり大きな円盤形状に形成されており、その円盤部21の外周部には、ラチェット10への組み付け方向となる板厚方向(軸方向)に円筒状に突出する円筒部22が形成された構成となっている。このガイド20の中心部にも、丸孔状の貫通孔23が板厚方向に貫通して形成されている。
【0020】
上記ラチェット10とガイド20とは、互いの円筒部12,22同士を軸方向に嵌め込むように組み付けられることにより、互いの円筒部12,22同士が径方向の内外に緩やかに嵌まり合った状態となって、互いに相対回転可能に内外に支え合った状態となって組み付けられる。そして、この組み付けたラチェット10とガイド20との外周部間に、外周リング50を跨らせて組み付けることにより、ラチェット10とガイド20とが互いに軸方向に外れ止めされた状態となって保持されている。上記ラチェット10は、その外側の板面が、シートバックフレーム2aの外側の板面に一体的に結合されて組み付けられており、ガイド20は、その外側の板面が、シートクッションフレーム3aの内側の板面に一体的に結合されて組み付けられている。これにより、各リクライニング装置4が、シートバックフレーム2aの各側部をシートクッションフレーム3aの各側部に対して、互いに同軸まわりに回転可能となるように軸支した状態として、これらを連結した状態となって組み付けられている。
【0021】
上記ラチェット10とガイド20との間には、これらの相対回転をロックしたり解除したりする図示しないロック部品が設けられている。具体的には、上記図示しないロック部品は、ガイド20に対して、半径方向の内外方にしか移動できないように円周方向に支えられた状態としてセットされている。上記ロック部品は、ガイド20の中心部に回転可能に軸支されたヒンジカム30の一方向又は他方向の回動により、半径方向の外側に押し出されてラチェット10の円筒部12の内周面(歯面)に押し付けられて噛合されたり、半径方向の内側に引き戻されて噛合状態から外されたりするように操作されるようになっている。
【0022】
上記ヒンジカム30の回転により上記ロック部品がラチェット10の円筒部12の内周面に噛合することにより、リクライニング装置4は、そのラチェット10とガイド20との相対回転が規制されたロック状態となる。すなわち、上記ロック部品は、ガイド20との関係においては、半径方向の内外方にしか移動できないように円周方向に支持された状態となっており、このようなロック部品がラチェット10と噛合して回転方向に一体的な状態となることにより、ラチェット10とガイド20とが上記ロック部品を介して互いの相対回転がロックされた状態となる。
【0023】
上述したヒンジカム30は、その一部が、ガイド20の中心部に貫通形成された丸孔状の貫通孔23内に挿通されて、ガイド20に対して回転可能に軸支された状態として設けられている。そして、上記ヒンジカム30は、ガイド20との間に掛着されたロックスプリング40の附勢力によって、常時、一の回転方向に附勢された状態とされており、この附勢による回動によって、上述した図示しないロック部品を半径方向の外側に押し出してリクライニング装置4をロックさせた状態に保持した状態となっている。
【0024】
上記ヒンジカム30は、その軸心部に挿通された操作軸4aが、前述した解除レバー5の引き上げ操作によって、上記ロックスプリング40の附勢力に抗した方向に回動操作されることにより、上記図示しないロック部品をラチェット10との噛合状態から外して、リクライニング装置4のロック状態を解除するようになっている。ここで、上述した各操作軸4aは、上述した各リクライニング装置4の中心部に対して、シートバックフレーム2aのシート内側の各側部からそれぞれシート外側に向かって軸方向に差し込まれて挿通されている。詳しくは、各操作軸4aは、シートバックフレーム2aに形成された貫通孔2cと、リクライニング装置4のラチェット10の中心部に形成された貫通孔13と、ヒンジカム30の貫通孔31(ガイド20の貫通孔23)と、シートクッションフレーム3aに形成された貫通孔3cと、に貫通してシート外側に突出した状態として挿通されている。
【0025】
各操作軸4aは、それらのシート内側の端部に、各軸の軸径よりも太い円筒状の頭部4a1が形成されている。各頭部4a1には、ロッド4bの各端部が嵌め込まれて一体的に結合されている。これにより、各操作軸4aは、上記ロッド4bを介して互いに一体的に回動するように連結された状態とされている。各操作軸4aは、上述した各頭部4a1の太径形状によって、それぞれ、各リクライニング装置4からシート外側には抜け落ちない構成となっている。上記各操作軸4aのうち、車両外側(図3の外側)に配された操作軸4aには、そのシートクッションフレーム3aからシート外側に突出した部位箇所に、解除レバー5のフレームが一体的に溶着されて結合されている。
【0026】
この解除レバー5の引き上げ操作を行うことにより、各操作軸4aが各リクライニング装置4のロックスプリング40の附勢力に抗した方向に一斉に回動操作されて、各リクライニング装置4のロック状態が一斉に解除される。また、上記解除レバー5の引き上げ操作をやめることにより、各操作軸4aが、上記各リクライニング装置4のロックスプリング40の附勢力によってヒンジカム30と共にロックの回転方向に回動し、各リクライニング装置4が一斉にロック状態に戻される。
【0027】
ここで、上記各操作軸4aと各ヒンジカム30との連結は、各ヒンジカム30が各リクライニング装置4をロックさせる位置まで回動した状態から、各操作軸4aが更に同方向に一定量単独で空振り回転することのできる遊び角Tdが設定された連結とされている。この遊び角Tdは、図2に示すように、解除レバー5が初期位置から一定量引き上げ操作されても、各操作軸4aを回動させないようにして、操作感を高めるものとして設定されている。具体的には、図3に示すように、上記遊び角Tdは、各操作軸4aが断面矩形状の形に形成されており、各ヒンジカム30の貫通孔31が、上記各操作軸4aを一定の角度範囲内で空転させることのできる蝶羽状の孔形状に形成されており、各操作軸4aが各ヒンジカム30の貫通孔31の各側面31aと当たる間の範囲内で空転することのできる角度領域として設定されている。
【0028】
したがって、上記遊び角Tdの設定により、解除レバー5が引き上げ操作される前の初期位置においては、各リクライニング装置4をロックの回動方向に附勢する各ロックスプリング40の附勢力は、もっぱら、各ヒンジカム30をロック位置まで回動させてその位置に係止させる力として作用し、各操作軸4a及び解除レバー5は、上記ロック位置に係止されたヒンジカム30に対して、上記遊び角Tdの設定範囲内において空転することのできる状態(バタ付く状態)とされる。そこで、上記各操作軸4aと、シートクッションフレーム3aとの間には、各操作軸4a及び解除レバー5を、上記初期位置にてバタ付かせないように、これらを初期位置に押さえ付けるように回転附勢するトーションスプリング7が掛着されている。
【0029】
これらトーションスプリング7は、各操作軸4aにシート外側から軸方向に挿通されて巻装された状態として組み付けられている。各トーションスプリング7は、それらの各操作軸4aへの挿通先となるシート内側の端部7aが、各操作軸4aの断面矩形状の角張った断面形状部に合致する形に曲げられた形に形成されており、上記挿通により、それらの内側の端部7aが、各操作軸4aに対して回転方向に一体的な状態となって掛着されるようになっている(図2参照)。また、各トーションスプリング7のシート外側に巻き出された外側の端部7bは、上記内側の端部7aの掛着の後、捩り込まれて、前述したシートクッションフレーム3aの各外側の側部に結合された各L字板3bの先から下方側に折り曲げられた各バネ掛片3b1の前縁部に掛着されて固定されている。ここで、バネ掛片3b1が、本発明の「フレーム部」に相当する。
【0030】
これらトーションスプリング7の掛着により、各操作軸4aには、左右で均等に作用するバネ附勢力がかけられた状態とされており、これら均等に左右するバネ附勢力を受けて、解除レバー5が初期位置にてバタ付かないように保持された状態とされている。なお、各トーションスプリング7の附勢方向は、図3において前述した各リクライニング装置4のロックスプリング40の附勢方向と同じ方向となっているため、これらトーションスプリング7も、各操作軸4aを通して各ヒンジカム30にロックの回動方向への附勢力をかける附勢部材として機能するようになっている。
【0031】
ところで、上述した各操作軸4aは、ロッド4bを介して軸方向にひとつに組み付けられる構成となっていることから、それらの頭部4a1と各側のリクライニング装置4のラチェット10の側面との間に、軸方向の組み付け性を担保するための隙間Clが設定されている。これにより、各操作軸4aとロッド4bの一体構造物は、上記隙間Clの範囲内で軸方向にガタ付きを生じる構成とされている(図4参照)。このガタ付きにより、各操作軸4aのシート外側の端部に掛着されている各トーションスプリング7が、各操作軸4aから抜けて脱落するおそれが考えられる。例えば、図4に示すように、各操作軸4aが図示左側にガタ付いて移動すると、図示右側のトーションスプリング7が操作軸4aから抜けて脱落するおそれが考えられる。逆のガタ付きの場合には、その逆側のトーションスプリング7が脱落するおそれが考えられる。
【0032】
しかし、本実施例における各トーションスプリング7は、各操作軸4aのシート外側に突出する端部にシート外側から軸方向に挿通されて巻装され、その挿通先となるシート内側の端部7aが、各操作軸4aに掛着され、シート外側の端部7bが、シートクッションフレーム3aに結合された各バネ掛片3b1に掛着されて設けられている。これにより、各トーションスプリング7は、その取り付けられた側の操作軸4aがシート内側(軸方向)にガタ付いても、そのシート内側の端部7aと操作軸4aのシート外側の端部との間に巻装された軸方向のラップ長Raがあることにより、操作軸4aとの掛着から外れにくくなっている。また、各トーションスプリング7は、それらの内側の端部7aと外側の端部7bとが互いに相反する軸方向位置に設定された形状のバネとなっているため、その取り付けられた側の操作軸4aがシート内側(軸方向)にガタ付いても、軸方向に延伸される変形態様となり(図4参照)、押し窄められて操作軸4aの端部から外されるような変形態様とはならなくなる。このように、トーションスプリング7を、操作軸4aに設定された軸方向の隙間Clによるガタ付きがあっても、操作軸4aとの掛着から外れにくくなるようにすることができる。
【0033】
また、本実施例の構成では、各トーションスプリング7は、各操作軸4aに対して、シート外側から軸方向に挿通することにより、それらのシート内側の端部7aを各操作軸4aの角張った断面形状部に合致させた状態に掛着させることができ、各トーションスプリング7の掛着を簡便に行うことができる。また、各トーションスプリング7のシート内側の端部7aが各操作軸4aに掛着する両者の軸方向のラップ長Raを、各操作軸4aの角張った断面形状部を軸方向に延長することで簡便に長く設定することができる。なお、各リクライニング装置4の詳細な構成については、特開2011−116303号公報等の文献に開示されたものと同じものとなっているため、その具体的な説明は省略することとする。
【0034】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、上記実施例では、シートバック2がリクライニング装置4を介して連結される対象として、シートクッション3を例示したが、「シートクッション」たる構成の概念は、フロアに対して固定されるベース部材を指すものであり、車体構造物も含まれる。
【0035】
また、上記実施例では、ラチェット10がシートバックフレーム2aに連結され、ガイド20がシートクッションフレーム3aに連結された構成を例示したが、ラチェット10がシートクッションフレーム3aに組み付けられ、ガイド20がシートバックフレーム2aに組み付けられる構成であってもよい。また、本発明の構成は、リクライニング装置がシートバックとシートクッションとの片側の連結部においてのみ設定される構成にも適用することができる。また、トーションスプリングを、操作軸とシートバックのフレーム部との間に掛着させてもよい。また、トーションスプリングを、常時、操作軸をリクライニング装置をロックさせる機能のために(すなわちロックスプリングとして)用いるようにしたものであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 車両用シート
2 シートバック
2a シートバックフレーム
2b L字板
2c 貫通孔
3 シートクッション
3a シートクッションフレーム
3b L字板
3b1 バネ掛片(フレーム部)
3c 貫通孔
3d1 前倒れストッパ
3d2 後倒れストッパ
4 リクライニング装置
4a 操作軸
4a1 頭部
4b ロッド
5 解除レバー
6 渦巻きバネ
6a 内側の端部
6b 外側の端部
7 トーションスプリング
7a 内側の端部
7b 外側の端部
10 ラチェット
11 円盤部
12 円筒部
13 貫通孔
20 ガイド
21 円盤部
22 円筒部
23 貫通孔
30 ヒンジカム
31 貫通孔
31a 側面
40 ロックスプリング
50 外周リング
Cl 隙間
Td 遊び角
Ra ラップ長


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックが回転ロック機能を備えたリクライニング装置を介してシートクッションに背凭れ角度調節可能な状態に連結された車両用シートであって、
前記リクライニング装置のロック状態を解除するための操作軸が、前記リクライニング装置に軸方向に挿通されて組み付けられており、
前記操作軸は、その前記リクライニング装置からシート外側に突出する外側の端部と、同外側に位置する前記シートバック又は前記シートクッションを構成するフレーム部と、の間にトーションスプリングが掛着され、常時は該トーションスプリングにより前記リクライニング装置をロックさせる回転方向に附勢された状態とされており、
前記トーションスプリングは、前記操作軸の前記外側の端部にシート外側から軸方向に挿通されて巻装され、その挿通先となるシート内側の端部が前記操作軸に掛着され、シート外側の端部が前記フレーム部に掛着されて設けられていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記トーションスプリングは、そのシート内側の端部が前記操作軸に形成された角張った断面形状部に合致するように軸方向に挿し込まれて掛着され、シート外側の端部が前記フレーム部に捩り込まれて掛着されて設けられるようになっていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用シートであって、
前記リクライニング装置が前記シートバックの左右両側部と前記シートクッションの左右両側部との間にそれぞれ設定され、当該各リクライニング装置のそれぞれに前記操作軸が設定されて、当該各操作軸がロッドにより互いに一体的に回動するように連結されており、前記各操作軸のうちの一方に前記各リクライニング装置のロック状態を解除するための操作レバーが繋がれており、前記トーションスプリングが前記各リクライニング装置自体に個別に設定された前記各操作軸をロックさせる回転方向に附勢するためのロックスプリングとは別途に前記各操作軸のシート外側の端部と当該各外側に位置する前記各フレーム部との間にそれぞれ掛着されて設けられており、前記操作レバーの操作前の初期位置に遊びを設定したことによる前記操作レバーの初期位置でのガタ付きを押さえるための附勢部材として機能するようになっていることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−95400(P2013−95400A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243313(P2011−243313)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】