説明

車両用スピーカーシステム

【課題】 事故時に一定以上の衝撃が所定の方向から加わると、キャビネットが所定の状態で破損して、車室内の乗員の保護、あるいは、車両の重要構造の破壊防止を図る車両用スピーカーシステムを提供する。
【解決手段】 車両用スピーカーシステムは、フレームを有するスピーカーと、フレームを介してスピーカーが取り付けられるキャビネットと、を備え、キャビネットが車両に取り付けられる車両用スピーカーシステムであって、キャビネットが、フレームを収容する収容孔を規定するスピーカー取付部を有する前面バフルと、前面バフルに連結して音響キャビティを規定する後面バフルと、を含み、前面バフルが、収容孔を挟んで配置される第1前面応力集中部ならびに第2前面応力集中部を有し、後面バフルが、前面バフルの第1前面応力集中部および第2前面応力集中部に連結する後面応力集中部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレームを有するスピーカーと、フレームを介してスピーカーが取り付けられるキャビネットと、を備え、このキャビネットが車両に取り付けられる車両用スピーカーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に用いる構造物には、車両の事故衝突時に加わる衝撃によってその構造物が破損する状態を予測しておき、乗員並びに車両構造物の安全を図るクラッシャブル構造が採用されている場合がある。例えば、車両のグローブボックスに乗員の膝が衝突したとき、グローブボックス及びその保持部材の変形により乗員の運動エネルギーを吸収して、乗員の膝に作用する負荷を緩衝させるため、前壁部、車室内に面するリッド、上記前壁部と上記リッドとを連結する側壁部及び同側壁部の外側面に設けられた制御部材を有するグローブボックスと、上記グローブボックス前壁部の前方に近接して配置された保持部材とをそなえ、上記リッドに対する前方への衝撃により上記制御部材が逐次変形し及びまたは破壊されて上記リッドが前方へ変位し、さらに、上記グローブボックス前壁部の上記保持部材に対する押圧により、上記保持部材が変形するように構成されているニープロテクタがある(特許文献1)。
【0003】
車両用のスピーカーにおいても、磁石装置がフレームの一方の端部に強固に取付けられているスピーカーのフレームが、磁石装置または磁石装置が配置されるフレームの端部に作用する力がフレームの他方の端部まで伝達されるのが阻止されるか、または非常に減少された範囲でのみ伝達されるように構成されており、磁石装置に作用する力が予め特定された量を越えると破断するように構成されている予め定められた破損点区域を具備し、磁石装置が取付けられるフレームの部分がフレームの他の部分から分離されるものがある(特許文献2)。
【0004】
また、従来には、フロントバッフル面が車室側に臨むように設けられる車載用のスピーカーであって、フロント側に剛性のある前部フレームを設け、該前部フレームの中央背部に磁気回路部を吊持固定し、該磁気回路部を内包するコーン紙をシェル状の後部フレームで囲繞したことを特徴とするスピーカー装置がある(特許文献3)。ここでは、スピーカー後部側、たとえば車体の横側から衝撃的荷重が作用したときに、フレームが緩衝作用を発揮して、磁気回路部の飛び出しを確実に防止することを目的としている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−318801号公報
【特許文献2】特開平5−252590号公報
【特許文献3】特開2007−258815号公報
【0006】
一方で、スピーカーの音響キャビティを規定するキャビネットを備える車両用スピーカーシステムに関しては、キャビネットは、十分な剛性を有するように熱可塑性樹脂で形成されるものがある。しかしながら、車両用スピーカーシステムを車両に取り付ける設置条件には様々な制約があり、場合によっては、車両用スピーカーシステムを、車室内の乗員の近傍、あるいは、車両の安全上で重要な構造である燃料タンクの近傍に設置せざるを得ない場合、等がある。このような場合に、車両が他の車両あるいは物体に衝突する事故時に、車両用スピーカーシステムが破損したとしても、車両用スピーカーシステムを原因として車室内の乗員に怪我を負わせる、あるいは、車両の燃料タンクを破損する、といった可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、事故時に一定以上の衝撃が所定の方向から加わると、キャビネットが所定の状態で破損して、車室内の乗員の保護、あるいは、車両の重要構造の破壊防止を図る車両用スピーカーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用スピーカーシステムは、フレームを有するスピーカーと、フレームを介してスピーカーが取り付けられるキャビネットと、を備え、キャビネットが車両に取り付けられる車両用スピーカーシステムであって、キャビネットが、フレームを収容する収容孔を規定するスピーカー取付部を有する前面バフルと、前面バフルに連結して音響キャビティを規定する後面バフルと、を含み、前面バフルが、収容孔を挟んで配置される第1前面応力集中部ならびに第2前面応力集中部を有し、後面バフルが、前面バフルの第1前面応力集中部および第2前面応力集中部に連結する後面応力集中部を有する。
【0009】
好ましくは、本発明の車両用スピーカーシステムは、車両の事故衝突時にキャビネットに加わる衝撃の想定衝撃方向を規定されている場合に、収容孔と、第1前面応力集中部と、後面応力集中部と、第2前面応力集中部と、が、略円環状のキャビネット応力集中部を構成し、かつ、キャビネット応力集中部が、想定衝撃方向と略直交するように設けられている。
【0010】
また、好ましくは、本発明の車両用スピーカーシステムは、キャビネットを構成する前面バフルおよび後面バフルが、熱可塑性樹脂で形成されるとともに、第1前面応力集中部および第2前面応力集中部を除く前面バフルの内部と、後面応力集中部を除く後面バフルの内部とに、熱可塑性樹脂からなる補強リブを有する。
【0011】
さらに、好ましくは、本発明の車両用スピーカーシステムは、前面バフルのスピーカー取付部が、想定衝撃方向に対して斜めに交わる平面に設けられている。
【0012】
また、好ましくは、本発明の車両用スピーカーシステムは、前面バフルの第1前面応力集中部および第2前面応力集中部と、後面バフルの後面応力集中部とが、それぞれキャビネットの外側面に露出する屈曲面をそれぞれ有する。
【0013】
また、好ましくは、本発明の車両用スピーカーシステムは、前面バフルの第1前面応力集中部および第2前面応力集中部における高さhxが、前面バフルの他の部分の高さhよりも低い。
【0014】
以下、本発明の作用について説明する。
【0015】
本発明の車両用スピーカーシステムは、フレームを有するスピーカーと、フレームを介してスピーカーが取り付けられるキャビネットと、を備え、キャビネットが、フレームを収容する収容孔を規定するスピーカー取付部を有する前面バフルと、前面バフルに連結して音響キャビティを規定する後面バフルと、を含む。好ましくは、キャビネットを構成する前面バフルおよび後面バフルは、熱可塑性樹脂で形成されるとともに、それらの内部の一部分には、通常の使用の範囲では十分な剛性を有するように、熱可塑性樹脂からなる補強リブを有している。
【0016】
さらに、本発明のスピーカーシステムは、前面バフルが、収容孔を挟んで配置される第1前面応力集中部ならびに第2前面応力集中部を有し、後面バフルが、前面バフルの第1前面応力集中部および第2前面応力集中部に連結する後面応力集中部を有する。車両用スピーカーシステムのキャビネットは、車両に取り付けられる位置、方向を予め想定されているので、車両の事故衝突時にキャビネットに加わる衝撃の想定衝撃方向が規定されている。したがって、本発明のスピーカーシステムでは、収容孔と、第1前面応力集中部と、後面応力集中部と、第2前面応力集中部と、が、略円環状のキャビネット応力集中部を構成し、かつ、キャビネット応力集中部が、想定衝撃方向と略直交するように設けられている。
【0017】
具体的には、キャビネット応力集中部を構成する前面バフルの収容孔と、第1前面応力集中部と、第2前面応力集中部と、後面バフルの後面応力集中部とは、キャビネットの内部側で補強リブを有しない部分であって、他の補強リブを有する部分に比べて応力が集中しやすく、その結果、破断しやすい。本発明のスピーカーシステムでは、事故時に一定以上の衝撃が所定の方向から加わると、キャビネットがこれらの応力集中部で破損して、磁気回路を含む重量を有するスピーカーが、所定の方向に離脱する。したがって、車両の事故が発生する際にも、車室内の乗員の保護、あるいは、車両の重要構造の破壊防止を図ることができる。
【0018】
好ましくは、前面バフルのスピーカー取付部を、想定衝撃方向に対して斜めに交わる平面に設けるようにすることで、スピーカーが離脱する所定の方向を方向付ける。場合によっては、取り付けられている前面バフルとともにスピーカーが離脱してもよいので、前面バフルの第1前面応力集中部および第2前面応力集中部と、後面バフルの後面応力集中部とに、それぞれキャビネットの外側面に露出する屈曲面をそれぞれ有するように、あるいは、前面バフルの第1前面応力集中部および第2前面応力集中部における高さhxが、前面バフルの他の部分の高さhよりも低くなるように、してもよい。
【0019】
なお、前面バフルの第1前面応力集中部および第2前面応力集中部と、後面バフルの後面応力集中部とに、それぞれキャビネットの外側面に露出する屈曲面をそれぞれ有するようにし、かつ、前面バフルの第1前面応力集中部および第2前面応力集中部における高さhxを、前面バフルの他の部分の高さhよりも低くなるようにするのが好ましい。想定していない方向からの衝撃であったとしても、一定以上の強さの衝撃であれば、キャビネットを構成する前面バフルが破損して、スピーカーが離脱する方向を確実に方向付けすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の車両用スピーカーシステムは、事故時に一定以上の衝撃が所定の方向から加わると、キャビネットが所定の状態で破損して、車室内の乗員の保護、あるいは、車両の重要構造の破壊防止を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の車両用スピーカーシステムは、事故時に一定以上の衝撃が所定の方向から加わると、キャビネットが所定の状態で破損して、車室内の乗員の保護、あるいは、車両の重要構造の破壊防止を図るという目的を、キャビネットが、フレームを収容する収容孔を規定するスピーカー取付部を有する前面バフルと、前面バフルに連結して音響キャビティを規定する後面バフルと、を含み、前面バフルが、収容孔を挟んで配置される第1前面応力集中部ならびに第2前面応力集中部を有し、後面バフルが、前面バフルの第1前面応力集中部および第2前面応力集中部に連結する後面応力集中部を有するようにすることにより、実現した。
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態による車両用スピーカーシステムについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の好ましい実施形態による車両用スピーカーシステム1を説明する図である。図1(a)は、この車両用スピーカーシステム1の斜視図であり、図1(b)は、この車両用スピーカーシステム1を車両の取付部7に取り付けた場合の側面図である。また、図2は、この車両用スピーカーシステム1の構成を説明する図である。図2(a)は、車両用スピーカーシステム1の展開図であり、図2(b)は、その内部構造を説明する側面断面図である。さらに、図3は、キャビネット2を構成する前面バフル3ならびに後面バフル5の内部構造を説明する図である。図3(a)は、前面バフル3を裏側から見た図であり、図3(b)は、後面バフル5を裏側から見た図である。なお、説明に不要な他の内部構造等は、説明並びに図示を省略する。
【0024】
車両用スピーカーシステム1は、スピーカー10と、前面バフル3ならびに後面バフル5から構成されるキャビネット2と、を含んでいる。フレーム11を有するスピーカー10は、キャビネット2のスピーカー取付部21に、ネジ4を用いて取り付けられている。本実施例のスピーカー10は、口径20cmのウーファーであって、フレーム11と、フレーム11に連結する磁気回路12と、フレーム11に振動可能にその外周端側を支持される振動板13と、振動板13に連結して磁気回路12の磁気空隙中に配置されるボイスコイル14とを含む動電型スピーカーである。スピーカー10は、音響キャビティを規定するキャビネット2に取り付けられて、密閉型のスピーカーシステムを構成する。
【0025】
また、キャビネット2は、熱可塑性樹脂で形成されて約10リットルの内容積を有しており、その底面を構成する後面バフル5が、車両の取付部7に固定されている。図1(b)に示す矢印Xの方向は、例えば、車両が前方に進行する場合の進行方向であって、車両の事故衝突時にキャビネット2に加わる衝撃の想定衝撃方向である。車両の取付部7は、ガソリンタンク8に隣接する凹部に設けられているので、車両用スピーカーシステム1は、車両の事故衝突時にガソリンタンク8に影響を及ぼさないことが望まれる。
【0026】
具体的には、キャビネット2を構成する前面バフル3は、ABS樹脂をインジェクション成形する部材であり、平均で約3.5mmの肉厚を有している。前面バフル3は、車両用スピーカーシステム1が、車両の取付部7に固定された場合に、事故時の想定衝撃方向Xに対して角度α(=約20度)で斜めに交わるバフル面20を有し、このバフル面20にスピーカー取付部21を設けている。スピーカー取付部21は、バフル面20の略中央にスピーカー10のフレーム11が係合するザグリ部22と、その内側にフレーム11ならびに磁気回路12を収容する収容孔23と、ザグリ部22に4カ所設けられてネジ4が螺合するネジ孔24と、から構成される。なお、バフル面20のスピーカー取付部21は、事故時の想定衝撃方向Xに対する角度αが、0度よりも大きく90度よりも小さい範囲であればよいが、約10度〜約45度の範囲であるのが好ましい。
【0027】
図示するように、前面バフル3の外周縁部30は、後面バフル5の外周縁部50と連結し、キャビネット2の全高を徐々に高くなるようにしているので、事故時の想定衝撃方向Xに対して角度αで斜めに交わるバフル面20を形成することができる。また、前面バフル3の外周縁部30は、後面バフル5の外周縁部50と連結するにあたり、バフル面20を基準にする外周縁部30の高さhは、約15mm〜約70mmの範囲で変化し、斜面であるバフル面20の中央付近において、高さhx(=約15mm)で最も低くなるようにされている。
【0028】
そして、前面バフル3は、斜面であるバフル面20の中央付近に、収容孔23を挟んで配置される第1前面応力集中部31ならびに第2前面応力集中部32を有している。第1前面応力集中部31と、第2前面応力集中部32とは、それぞれ前面バフル3の内部に熱可塑性樹脂からなる補強リブ34を有していない部分であって、その他の部分には、通常の使用の範囲では十分な剛性を有するように、補強リブ34が設けられている。したがって、前面バフル3を裏側から見ると、その中央付近に補強リブ34を有していない帯状部分が形成される。
【0029】
なお、前面バフル3と後面バフル5とを連結する連結ボス35も、第1前面応力集中部31および第2前面応力集中部32を避けて、図示する4カ所に設けられている。なお、後面バフル5の連結ボス55に連結する連結ボス35は、バフル面20に露出する連結孔36を形成する。連結孔36からネジ6を挿入すると、対応する連結ボス35と連結ボス55を連結することができる。
【0030】
一方、後面バフル5も、ABS樹脂をインジェクション成形する部材であり、平均で約3.5mmの肉厚を有している。後面バフル5は、凹状の内部空間を形成して、前面バフル3の外周縁部30に連結する外周縁部50を有し、その中央付近に前面バフル3の第1前面応力集中部31および第2前面応力集中部32に連結する後面応力集中部51を有する。つまり、後面応力集中部51は、第1前面応力集中部31および第2前面応力集中部32と同様に、補強リブ54を有していない帯状部分であって、後面バフル5の内側で後面応力集中部51以外の部分には、通常の使用の範囲では十分な剛性を有するように、補強リブ54、ならびに、連結ボス55が形成されている。
【0031】
前面バフル3の補強リブ34と、後面バフル5の補強リブ54は、事故時の想定衝撃方向Xにおいて強度を発揮するように、想定衝撃方向Xに嶺が走るようなリブとして形成される。補強リブ34の形状は、前面バフル3のバフル面20と、想定衝撃方向Xにバフル面20から立ち上がって外周縁部30を形成する面と、を図示するよう想定衝撃方向Xに連結するものであるのが好ましい。同様に、補強リブ54の形状は、後面バフル3の底面と、想定衝撃方向Xに底面から立ち上がって外周縁部50を形成する面と、を図示するような略L字状に連結するものであるのが好ましい。
【0032】
したがって、前面バフル3を後面バフル5に連結すると、収容孔23と、第1前面応力集中部31と、後面応力集中部51と、第2前面応力集中部32と、が、略円環状のキャビネット応力集中部2xを構成する。車両用スピーカーシステム1は、取り付けられる車両の取付部7において、事故時の想定衝撃方向Xを予め想定されているので、キャビネット2のキャビネット応力集中部2xは、想定衝撃方向Xと略直交するように設けられている。
【0033】
図4は、車両の事故時において、車両用スピーカーシステム1に一定以上の衝撃が想定衝撃方向Xから加わった場合の動作を説明する図である。図4(a)は、衝撃が加わる前の車両用スピーカーシステム1の断面図であり、図4(b)は、衝撃が加わった後の断面図である。
【0034】
キャビネット2のキャビネット応力集中部2xには、他の補強リブを有する部分に比べて応力が集中しやすいので、事故時に一定以上の衝撃が所定の方向から加わると、車両用スピーカーシステム1は、キャビネット応力集中部2xで破損して、スピーカー10が図4(b)に記載の矢印Yの方向に離脱する。前面バフルのスピーカー取付部21を、想定衝撃方向Xに対して角度αで斜めに交わるバフル面20に設けるようにすることで、スピーカー10が離脱するY方向を方向付けることができる。スピーカー10が離脱するY方向は、バフル面20に対して略垂直な方向である。したがって、車両の事故が発生する際にも、車両の重要構造であるガソリンタンク8が、車両用スピーカーシステム1によって破壊されることが防止できる。
【0035】
本実施例の場合には、前面バフル3の第1前面応力集中部31および第2前面応力集中部32と、後面バフル5の後面応力集中部51とに、それぞれキャビネットの外側面に露出する屈曲面をそれぞれ有するように、樹脂でキャビネット2を構成している。また、前面バフル3の第1前面応力集中部31および第2前面応力集中部32における高さhxが、前面バフル3の他の部分の高さhよりも低くなるようにしている。このようにすることで、想定衝撃方向Xから所定の衝撃が加わった場合に、確実に前面バフル3がキャビネット応力集中部2xで破損して、Y方向にスピーカー10が離脱するようにして、車両、および、乗員の安全を図ることができる。
【0036】
なお、本実施例の車両用スピーカーシステム1では、想定衝撃方向Xに対して静荷重をかける試験方法により、事故時に一定以上の衝撃が所定の方向から加わる場合をシミュレーションする。本実施例の場合には、16.6kNの静荷重を負荷した場合に、キャビネット2のキャビネット応力集中部2xを構成する前面バフル3の第1前面応力集中部31および第2前面応力集中部32と、後面バフル5の後面応力集中部51とが、破損した。また、本実施例の車両用スピーカーシステム1では、実際の事故時を模擬する車両取付試験においても、キャビネット2のキャビネット応力集中部2xでの破損が確認できた。
【0037】
車両の事故時には、想定衝撃方向X以外にも、想定していない方向の衝撃が含まれる場合もあり得る。車両用スピーカーシステム1では、場合によっては、取り付けられている前面バフル3とともにスピーカー10が離脱してもよい。後面バフル5の後面応力集中部51が破断すると、前面バフル3の連結ボス35と、後面バフル5の連結ボス55とを連結するネジにも応力がかかり、前面バフル3は、所定のY方向にスピーカー10とともに後面バフル5から離脱することができる。
【0038】
また、本実施例の車両用スピーカーシステム1は、後面バフル5に車両の取付部7への(図示しない)取付部を備えている場合であるが、前面バフル3にネジ止めする取付部を有していても良い。また、前面バフル3と後面バフル5との嵌合構造は、嵌合部分の密閉性を保つために、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性体、もしくは、スポンジ状の密封シール材を狭持する構造であってもよい。また、本実施例の車両用スピーカーシステム1は、密閉型のキャビネット2を備える場合であるが、キャビネット2は、バスレフダクトを備えるバスレフ形キャビネットであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の車両用スピーカーシステムは、ガソリンタンクの近傍に取り付けるスピーカーシステムのみならず、車室内に配置して乗員が座るシートの下、ないし、乗員の頭部付近の天井、壁面に設置するスピーカーシステムにも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の好ましい実施形態による車両用スピーカーシステム1を説明する図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態による車両用スピーカーシステム1を説明する図である。(実施例1)
【図3】本発明の好ましい実施形態による前面バフル3および後面バフル5を説明する図である。(実施例1)
【図4】本発明の好ましい実施形態による車両用スピーカーシステム1に一定以上の衝撃が想定衝撃方向Xから加わった場合の動作を説明する図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0041】
1 車両用スピーカーシステム
2 キャビネット
3 前面バフル
4、6 ネジ
5 後面バフル
7 車両の取付部
8 ガソリンタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームを有するスピーカーと、該フレームを介して該スピーカーが取り付けられるキャビネットと、を備え、該キャビネットが車両に取り付けられる車両用スピーカーシステムであって、
該キャビネットが、該フレームを収容する収容孔を規定するスピーカー取付部を有する前面バフルと、該前面バフルに連結して音響キャビティを規定する後面バフルと、を含み、
該前面バフルが、該収容孔を挟んで配置される第1前面応力集中部ならびに第2前面応力集中部を有し、
該後面バフルが、該前面バフルの該第1前面応力集中部および第2前面応力集中部に連結する後面応力集中部を有する、
車両用スピーカーシステム。
【請求項2】
前記車両の事故衝突時に前記キャビネットに加わる衝撃の想定衝撃方向を規定されている場合に、前記収容孔と、前記第1前面応力集中部と、前記後面応力集中部と、前記第2前面応力集中部と、が、略円環状のキャビネット応力集中部を構成し、かつ、該キャビネット応力集中部が、該想定衝撃方向と略直交するように設けられている、
請求項1に記載の車両用スピーカーシステム。
【請求項3】
前記キャビネットを構成する前記前面バフルおよび前記後面バフルが、熱可塑性樹脂で形成されるとともに、前記第1前面応力集中部および第2前面応力集中部を除く該前面バフルの内部と、前記後面応力集中部を除く該後面バフルの内部とに、該熱可塑性樹脂からなる補強リブを有する、
請求項2に記載の車両用スピーカーシステム。
【請求項4】
前記前面バフルの前記スピーカー取付部が、前記想定衝撃方向に対して斜めに交わる平面に設けられている、
請求項1から3のいずれかに記載の車両用スピーカーシステム。
【請求項5】
前記前面バフルの前記第1前面応力集中部および第2前面応力集中部と、前記後面バフルの前記後面応力集中部とが、それぞれ前記キャビネットの外側面に露出する屈曲面をそれぞれ有する、
請求項1から4のいずれかに記載の車両用スピーカーシステム。
【請求項6】
前記前面バフルの前記第1前面応力集中部および第2前面応力集中部における高さhxが、該前面バフルの他の部分の高さhよりも低い、
請求項1から5のいずれかに記載の車両用スピーカーシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−95161(P2010−95161A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268034(P2008−268034)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】