説明

車両用ドアハンドル装置

【課題】ケーブル止め部材の耐荷重を、組付性を害することなく、安価に高めること。
【解決手段】車両用ドアハンドル装置では、操作ケーブル21,22におけるアウターチューブの一端部がケーブル止め部材(23,24)を用いてハンドル基材(11)に固定されている。ケーブル止め部材(23,24)は、ハンドル基材(11)に取付けられる取付部23a、24aと、この取付部の基端に一体的に形成されてハンドル基材の取付面とアウターチューブの一側間に配置されるベース部23b、24bと、このベース部に一体的に形成されて前記取付部と前記ベース部が脱着位置からセット位置に回転されることにより中間部位23c1,24c1にて前記アウターチューブの外周に組付けられ先端部位23c2,24c2にてハンドル基材(11)の係合部11gに係合する保持部23c、24cを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアハンドル装置、特に、車両用ドアに組付けられるハンドル基材(例えば、インナーハンドルベース)と、前記ハンドル基材に組付けられて回動操作可能な操作部材(例えば、インナーハンドルレバー、ロックノブ)と、前記操作部材の動きをドアロック装置に伝達する操作ケーブルを備えている車両用ドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用ドアハンドル装置は、例えば、下記特許文献1に記載されていて、前記操作ケーブルにおけるアウターチューブの一端部がケーブル止め部材を用いて前記ハンドル基材に固定され、前記操作ケーブルにおけるインナーワイヤの一端部が前記操作部材の回動部に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−62751号公報
【発明の概要】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
上記した特許文献1では、ケーブル止め部材にU字状保持部が設けられていて、このU字状保持部の円弧部分にアウターチューブの一端部外周が組付けられて保持されている。ところで、上記した特許文献1のU字状保持部は、その先端(自由端)が自由に移動(拡開変形)可能であって、アウターチューブ等にその長手方向以外の引張力(荷重)が作用した場合には、ケーブル止め部材のU字状保持部が拡開変形して同U字状保持部からアウターチューブが離脱するおそれがある。なお、U字状保持部は、C字状保持部ということも可能である。
【0005】
(課題を解決するための手段)
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたもの(すなわち、ケーブル止め部材の耐荷重を、組付性を害することなく、安価に高めるもの)であり、本発明による車両用ドアハンドル装置においては、車両用ドアに組付けられるハンドル基材と、前記ハンドル基材に組付けられて回動操作可能な操作部材と、前記操作部材の動きをドアロック装置に伝達する操作ケーブルを備えていて、前記操作ケーブルにおけるアウターチューブの一端部がケーブル止め部材を用いて前記ハンドル基材に固定され、前記操作ケーブルにおけるインナーワイヤの一端部が前記操作部材の回動部に連結されている。
【0006】
また、本発明では、前記ケーブル止め部材が、前記ハンドル基材に対して脱着位置とセット位置間にて回転可能かつ脱着位置にて脱着可能に取付けられる取付部と、この取付部の基端に一体的に形成されて前記ハンドル基材の取付面と前記アウターチューブの一側間に配置されるベース部と、このベース部に一体的に形成されて前記取付部と前記ベース部が脱着位置からセット位置に回転されることにより中間部位にて前記アウターチューブの外周に組付けられるとともに先端部位にて前記ハンドル基材に設けた係合部に係合して前記ベース部から離れる方向への移動を規制される保持部を備えている。
【0007】
(発明の効果)
上記した本発明による車両用ドアハンドル装置においては、ケーブル止め部材の取付部が、ハンドル基材に対して、脱着位置とセット位置間にて回転可能かつ脱着位置にて脱着可能に取付けられるように構成されている。このため、ケーブル止め部材の取付部をハンドル基材に取付けた状態で、ケーブル止め部材の取付部とベース部を脱着位置からセット位置に回転させれば、ケーブル止め部材のハンドル基材への組付が完了する。したがって、ケーブル止め部材のハンドル基材への組付は、ケーブル止め部材の取付部をハンドル基材に取付け、ケーブル止め部材の取付部とベース部を脱着位置からセット位置に回転することによって、極めて容易に行うことが可能である。
【0008】
また、本発明による車両用ドアハンドル装置においては、ケーブル止め部材の保持部が、ケーブル止め部材のベース部に一体的に形成されていて、ケーブル止め部材の取付部とベース部が脱着位置からセット位置に回転されることにより、中間部位にてアウターチューブの外周に組付けられるとともに先端部位にてハンドル基材に設けた係合部に係合してベース部から離れる方向への移動(拡開変形)を規制される。このため、ケーブル止め部材の保持部では、その先端部位に作用する荷重をハンドル基材に設けた係合部にて受けることができて、耐荷重を安価な一般材にて高めることが可能である。したがって、アウターチューブ等にその長手方向以外の引張力(荷重)が作用した場合にも、ケーブル止め部材の保持部からアウターチューブが離脱しない構成を、組付性を害することなく、しかも安価に実施することが可能である。
【0009】
上記した本発明の実施に際して、前記ケーブル止め部材が、前記ハンドル基材に設けられている取付孔に対して脱着位置とセット位置間にて回転可能かつ脱着位置にて脱着可能に嵌合される取付部と、この取付部の基端に一体的に形成されて前記ハンドル基材の取付面と前記アウターチューブの一側間に配置されるベース部と、このベース部に一体的に形成されて前記取付部と前記ベース部が脱着位置からセット位置に回転されることにより円弧状の中間部位にて前記アウターチューブの外周に組付けられるとともに直線状の先端部位にて前記ハンドル基材に設けた係合部に係合して前記ベース部から離れる方向への移動を規制されるU字状保持部を備えていることも可能である。
【0010】
また、上記した本発明の実施に際して、前記ケーブル止め部材の前記取付部と前記ベース部が脱着位置からセット位置に回転されることにより、前記ベース部の一部分が前記ハンドル基材に設けた第2の係合部に係合して、前記ベース部の前記ハンドル基材からの浮き上がりが規制されるように設定されていることも可能である。この場合には、アウターチューブ等からケーブル止め部材に作用する荷重(ケーブル止め部材のベース部をハンドル基材から浮き上がらせる荷重)をハンドル基材に設けた第2の係合部にても受けることができて、ケーブル止め部材の耐荷重を高めることが可能である。
【0011】
また、上記した本発明の実施に際して、前記ケーブル止め部材の前記取付部は、前記ハンドル基材に設けられている取付孔に対して脱着位置とセット位置間にて回転可能かつ脱着位置にて脱着可能に嵌合され、前記ケーブル止め部材の前記取付部には、同取付部が前記ハンドル基材の前記取付孔に嵌合されるときに節度感を生じさせる突起が設けられていることも可能である。この場合には、ケーブル止め部材の取付部に設けた突起によって、同取付部がハンドル基材の取付孔に嵌合されるときに節度感を生じさせることができて、組付作業者はケーブル止め部材の取付部がハンドル基材の取付孔に適切に嵌合されたことを組付時のフィーリング(節度感)にて感知することが可能である。
【0012】
また、上記した本発明の実施に際して、前記ハンドル基材には、前記ケーブル止め部材の前記取付部と前記ベース部がセット位置を超えて回転されるとき、前記突起と係合して同回転を規制するストッパが設けられていることも可能である。この場合には、ケーブル止め部材の取付部とベース部がセット位置を超えて回転される誤組付を防止することが可能である。
【0013】
また、上記した本発明の実施に際して、前記ハンドル基材には、前記ケーブル止め部材の前記取付部と前記ベース部が脱着位置からセット位置に回転されるときに節度感を生じさせる第2の突起が設けられていることも可能である。この場合には、ハンドル基材に設けた第2の突起によって、ケーブル止め部材の取付部とベース部が脱着位置からセット位置に回転されるときに節度感を生じさせることができて、組付作業者はケーブル止め部材の取付部とベース部がセット位置に適切に回転されたことを組付時のフィーリング(節度感)にて感知することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による車両用ドアハンドル装置の一実施形態を示した図であり、車両の内側から見た側面図である。
【図2】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】図1および図2に示したインナーハンドルベース(ハンドル基材)と、これに組付けたインナーハンドルレバー、ロックノブ(操作部材)、上下一対のクリップ(ケーブル止め部材)を車両の内側から見た側面図である。
【図4】図3のB−B線に沿った断面図である。
【図5】図3に示したインナーハンドルベース(ハンドル基材)、インナーハンドルレバー、ロックノブ、上下一対のクリップを車両の外側から見た側面図である。
【図6】図5の構成を左側(車両の後方)から見た背面図である。
【図7】図5のC−C線に沿った拡大断面図(端面図)である。
【図8】図5のD−D線に沿った拡大断面図(端面図)である。
【図9】図3、図5〜図8に示した上側クリップ単体の斜視図である。
【図10】図9に示した上側クリップ単体の正面図である。
【図11】図9に示した上側クリップ単体の左側面図である。
【図12】図9に示した上側クリップ単体の右側面図である。
【図13】図9に示した上側クリップ単体の背面図である。
【図14】図9に示した上側クリップ単体の平面図である。
【図15】図9に示した上側クリップ単体の底面図である。
【図16】図3、図5〜図8に示した上側クリップの組付状態を示した部分拡大図であって、(a)は脱着位置での部分拡大図、(b)はセット位置での部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明による車両用ドアハンドル装置の一実施形態を示している。この実施形態において、ハンドル基材である樹脂製のインナーハンドルベース11と仮想線で示したドアロック装置30は、車両用ドアにおいて所定量離して組付けられている。なお、インナーハンドルベース11の車両内側は、インナーハンドルレバー12とロックノブ13が回転可能に組付けられている部位を除いて、樹脂製のドアトリム14によって被覆されている。図1では、ドアトリム14の一部が矩形形状で図示されているとともに、インナーハンドルレバー12とロックノブ13の動きをドアロック装置30に伝達するための操作ケーブル21、22の一部がそれぞれ図示されている。
【0016】
インナーハンドルベース11は、図1および図2に示したように、ドアトリム14がその取付凹部14aにて樹脂製のグロメット15と金属製のネジ16によって金属製のドアインナーパネル17に固定されることで、ドアトリム14と共に支持板としてのドアインナーパネル17に固定されている。なお、グロメット15は、ドアインナーパネル17の組付孔17aに車両内側から挿入されていて、ネジ16によって軸部15aを拡径されることにより、ドアインナーパネル17に対して抜け止め固定されている。
【0017】
また、インナーハンドルベース11は、上記した取付凹部14a、グロメット15、ネジ16等を組付けるための組付孔11a(図2、図3参照)を有するとともに、ドアトリム14がドアインナーパネル17に固定される前に、インナーハンドルレバー12とロックノブ13を組付けたインナーハンドルベース11をドアインナーパネル17に対して位置決めと抜け止めをする(仮組する)ための爪有突起11bおよび爪無突起11cと上下一対の係合突起11d、11eを有している。
【0018】
爪有突起11bと爪無突起11cは、図3および図4に示したように、並列的に設けられていて、爪有突起11bの爪部11b1が爪無突起11cに対して離反側(図示左側で車両前方側)に設けられている。また、爪有突起11bと爪無突起11cは、ドアインナーパネル17に設けた第1取付孔17bに挿入されることにより、ドアインナーパネル17の第1取付孔17bに対して、爪有突起11bの爪部11b1が抜け止めされていて、インナーハンドルベース11のドアインナーパネル17に対する位置決めと抜け止めがなされている。なお、爪有突起11bの先端部図示左側には、傾斜面が形成されている。また、爪無突起11cの先端部図示右側には、傾斜面が形成されている。
【0019】
上方の係合突起11dは、図3および図4に示したように、ドアインナーパネル17に設けた第2取付孔17cに挿入されて図示左方にスライドされることにより、ドアインナーパネル17の第2取付孔17cに対して、抜け止めされていて、インナーハンドルベース11のドアインナーパネル17に対する位置決めと抜け止めがなされている。なお、上方の係合突起11dには、ドアインナーパネル17が嵌合するスリット11d1が形成されている。
【0020】
下方の係合突起11eは、上方の係合突起11dと同様に、ドアインナーパネル17に設けた第3取付孔(図示省略)に挿入されて図示左方にスライドされることにより、ドアインナーパネル17の第3取付孔(図示省略)に対して、抜け止めされていて、インナーハンドルベース11のドアインナーパネル17に対する位置決めと抜け止めがなされている。なお、下方の係合突起11eにも、上方の係合突起11dと同様に、ドアインナーパネル17が嵌合するスリット(図示省略)が形成されている。
【0021】
図1の下方に示した操作ケーブル21は、インナーハンドルレバー12の動きをドアロック装置30のインナーオープンレバー(図示省略の構成部材)に伝達するためのものであり、図5に示したように、アウターチューブ21aとインナーワイヤ21bによって構成されている。アウターチューブ21aは、一端部21a1(円筒状の連結キャップが一体的に組付けられている)がケーブル止め部材であるクリップ23を用いてインナーハンドルベース11に固定され、他端部(図示省略)が従来周知の構成にてドアロック装置30のハウジング(図示省略)に固定されている。
【0022】
インナーワイヤ21bは、一端部21b1(球状のケーブルエンドが設けられている)がインナーハンドルレバー12の回動部12aに連結され、他端部(図示省略)がドアロック装置30のインナーオープンレバー(図示省略の構成部材)に連結されている。なお、インナーハンドルレバー12における回動部12aの回動中心は、インナーハンドルレバー12をインナーハンドルベース11に組付ける支持軸18の回転中心O1である。
【0023】
図1の上方に示した操作ケーブル22は、ロックノブ13の動きをドアロック装置30のロックレバー(図示省略の構成部材)に伝達するためのものであり、図5に示したように、アウターチューブ22aとインナーワイヤ22bによって構成されている。アウターチューブ22aは、一端部22a1(円筒状の連結キャップが一体的に組付けられている)がケーブル止め部材であるクリップ24を用いてインナーハンドルベース11に固定され、他端部(図示省略)が従来周知の構成にてドアロック装置30のハウジング(図示省略)に固定されている。
【0024】
インナーワイヤ22bは、一端部22b1(球状のケーブルエンドが設けられている)がロックノブ13の回動部13aに連結され、他端部(図示省略)がドアロック装置30のロックレバー(図示省略の構成部材)に連結されている。なお、ロックノブ13における回動部13aの回動中心は、ロックノブ13をインナーハンドルベース11に組付ける支持軸19の回転中心O2である。なお、詳細な説明は省略するが、回転中心O2は、回転中心O1よりも車両外側(図6において右側)に位置している。
【0025】
各クリップ23,24は、インナーハンドルベース11への取付位置が車両の前後方向にて僅かに離れて配置されているが、対称形状に形成されている。このため、以下の説明では、上方のクリップ24の構成を詳細に説明し、下方のクリップ23の構成は類似部位に類似符号を付して詳細な説明は省略する。上方のクリップ24は、樹脂の一体成形品であり、図9〜図16に示したように、取付部24aと、ベース部24bと、U字状保持部24cと、C字状保持部24dを備えている。
【0026】
取付部24aは、円筒形状に形成された軸部であり、図16に示したように、インナーハンドルベース11に設けられている取付孔11fに対して、脱着位置(図16の(a)に示した位置)とセット位置(図16の(b)に示した位置)間にて回転可能かつ脱着位置にて脱着可能(抜き差し可能)に嵌合されている。この取付部24aには、同取付部24aがインナーハンドルベース11の取付孔11fに嵌合されるときに節度感を生じさせる一対の突起24a1(個数は適宜増減可能である)が設けられている。各突起24a1は、取付部24aがインナーハンドルベース11の取付孔11fに脱着される際に、径内方に向けて弾性変形するものであり、取付部24aの軸方向中間部に山形で形成されている。
【0027】
ベース部24bは、取付部24aの基端(図10〜図13の上端)に一体的に形成されていて、セット位置では図5、図7、図8に示したようにインナーハンドルベース11の取付面S1とアウターチューブ22aの一側間に配置されるように構成されている。また、ベース部24bの一部分24b1は、セット位置にてインナーハンドルベース11に設けた係合部11gに係合するように形成されていて、インナーハンドルベース11からの浮き上がりが規制されている。なお、ベース部24bの取付面S1と接触する部位には、クリップ24の回転を容易とするために二本の直線状凸部24b2が形成されている。
【0028】
U字状保持部24cは、ベース部24bに一体的に形成されていて、図8に示したように、取付部24aとベース部24bが脱着位置からセット位置に回転されることにより、円弧状の中間部位24c1にてアウターチューブ22aの外周に組付けられるとともに、直線状の先端部位24c2にてインナーハンドルベース11に設けた係合部11hに係合してベース部24bから離れる方向(図8の右方向)への移動を規制されている。
【0029】
C字状保持部24dは、U字状保持部24cと並列的に設けられていて、ベース部24bに一体的に形成されており、図7に示したように、取付部24aとベース部24bが脱着位置からセット位置に回転されることにより、円弧状の中間部位24d1にてアウターチューブ22aの外周に組付けられている。なお、C字状保持部24dの先端部位24d2は、常に自由端であり、起立した形状に形成されている。
【0030】
また、下方のクリップ24においては、図16に示したように、クリップ24の取付部24aとベース部24bが脱着位置からセット位置に図示矢印方向に回転されるときに、一方の突起24a1が、インナーハンドルベース11に設けた突起11iに係合するように構成されている。突起11iは、クリップ24の取付部24aとベース部24bが脱着位置からセット位置に回転される際に、径外方に向けて弾性変形して節度感を生じさせるものであり、インナーハンドルベース11に設けた円形凹部11jの所定部位に山形で形成されている。また、インナーハンドルベース11の円形凹部11jには、クリップ24の取付部24aとベース部24bがセット位置を超えて回転されるとき、他方の突起24a1と係合して同回転を規制するストッパ11kが設けられている。
【0031】
上記のように構成したこの実施形態においては、各クリップ23、24の取付部23a、24aが、インナーハンドルベース11に設けられている取付孔11fに対して、脱着位置とセット位置間にて回転可能かつ脱着位置にて脱着可能に嵌合されるように構成されている。このため、各クリップ23、24の取付部23a、24aをインナーハンドルベース11の取付孔11fに嵌合した状態で、各クリップ23、24の取付部23a、24aとベース部23b、24bを脱着位置からセット位置に回転させれば、各クリップ23、24のインナーハンドルベース11への組付が完了する。したがって、各クリップ23、24のインナーハンドルベース11への組付は、各クリップ23、24の取付部23a、24aをインナーハンドルベース11の取付孔11fに嵌合し、各クリップ23、24の取付部23a、24aとベース部23b、24bを脱着位置からセット位置に回転することによって、極めて容易に行うことが可能である。
【0032】
また、この実施形態においては、各クリップ23、24のU字状保持部23c、24cが、各クリップ23、24のベース部23b、24bに一体的に形成されていて、各クリップ23、24の取付部23a、24aとベース部23b、24bが脱着位置からセット位置に回転されることにより、円弧状の中間部位23c1、24c1にてアウターチューブ21a、22aの外周に組付けられるとともに直線状の先端部位23c2、24c2にてインナーハンドルベース11に設けた係合部11hに係合してベース部23b、24bから離れる方向への移動(拡開変形)を規制される。
【0033】
このため、各クリップ23、24のU字状保持部23c、24cでは、その先端部位23c2、24c2に作用する荷重をインナーハンドルベース11に設けた係合部11hにて受けることができて、耐荷重を安価な一般材にて高めることが可能である。したがって、アウターチューブ21a、22a等にその長手方向以外の引張力(荷重)が作用した場合にも、各クリップ23、24のU字状保持部23c、24cからアウターチューブ21a、22aが離脱しない構成を、組付性を害することなく、しかも安価に実施することが可能である。
【0034】
また、この実施形態においては、各クリップ23、24の取付部23a、24aとベース部23b、24bが脱着位置からセット位置に回転されることにより、ベース部23b、24bの一部分23b1、24b1がインナーハンドルベース11に設けた第2の係合部11gに係合して、ベース部23b、24bのインナーハンドルベース11からの浮き上がりが規制されるように構成されている。このため、アウターチューブ21a、22a等から各クリップ23、24に作用する荷重(ベース部23b、24bをインナーハンドルベース11から浮き上がらせる荷重)をインナーハンドルベース11に設けた第2の係合部11gにても受けることができて、各クリップ23、24の耐荷重を高めることが可能である。
【0035】
また、この実施形態においては、各クリップ23、24の取付部23a、24aに、同取付部23a、24aがインナーハンドルベース11の取付孔11fに嵌合されるときに節度感を生じさせる突起23a1、24a1が設けられている。このため、各クリップ23、24の取付部23a、24aに設けた突起23a1、24a1によって、同取付部23a、24aがインナーハンドルベース11の取付孔11fに嵌合されるときに節度感を生じさせることができて、組付作業者は各クリップ23、24の取付部23a、24aがインナーハンドルベース11の取付孔11fに適切に嵌合されたことを組付時のフィーリング(節度感)にて感知することが可能である。
【0036】
また、この実施形態においては、インナーハンドルベース11に、各クリップ23、24の取付部23a、24aとベース部23b、24bがセット位置を超えて回転されるとき、他方の突起23a1、24a1と係合して同回転を規制するストッパ11kが設けられている。このため、各クリップ23、24の取付部23a、24aとベース部23b、24bがセット位置を超えて回転される誤組付を防止することが可能である。
【0037】
また、この実施形態においては、インナーハンドルベース11に、各クリップ23、24の取付部23a、24aとベース部23b、24bが脱着位置からセット位置に回転されるときに節度感を生じさせる突起11iが設けられている。このため、インナーハンドルベース11に設けた突起11iによって、各クリップ23、24の取付部23a、24aとベース部23b、24bが脱着位置からセット位置に回転されるときに節度感を生じさせることができて、組付作業者は各クリップ23、24の取付部23a、24aとベース部23b、24bがセット位置に適切に回転されたこと組付時のフィーリング(節度感)にて感知することが可能である。
【0038】
上記した実施形態においては、インナーハンドルベース11に突起11iとストッパ11kを設けて実施したが、これらを無くして実施することも可能である。また、上記した実施形態においては、インナーハンドルベース11に第2の係合部11gを設けて実施したが、これを無くして実施することも可能である。また、上記した実施形態においては、各クリップ23、24の取付部23a、24aに突起23a1、24a1を設けて実施したが、これらを無くして実施することも可能である。また、本発明の実施に際しては、特許請求の範囲の記載内容に応じて適宜変更が可能であり、上記した構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
11…インナーハンドルベース(ハンドル基材)、11f…取付孔、11g、11h…係合部、11i…突起、11k…ストッパ、12…インナーハンドルレバー(操作部材)、12a…回動部、13…ロックノブ(操作部材)、13a…回動部、14…ドアトリム、14a…取付凹部、15…グロメット、16…ネジ、17…ドアインナーパネル(支持板)、21、22…操作ケーブル、21a、22a…アウターチューブ、21b、22b…インナーワイヤ、23、24…クリップ(ケーブル止め部材)、23a、24a…取付部、23a1、24a1…突起、23b、24b…ベース部、23c、24c…U字状保持部、23c1、24c1…中間部位、23c2、24c2…先端部位、23d、24d…C字状保持部、30…ドアロック装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアに組付けられるハンドル基材と、前記ハンドル基材に組付けられて回動操作可能な操作部材と、前記操作部材の動きをドアロック装置に伝達する操作ケーブルを備えていて、前記操作ケーブルにおけるアウターチューブの一端部がケーブル止め部材を用いて前記ハンドル基材に固定され、前記操作ケーブルにおけるインナーワイヤの一端部が前記操作部材の回動部に連結されている車両用ドアハンドル装置であって、
前記ケーブル止め部材が、前記ハンドル基材に対して脱着位置とセット位置間にて回転可能かつ脱着位置にて脱着可能に取付けられる取付部と、この取付部の基端に一体的に形成されて前記ハンドル基材の取付面と前記アウターチューブの一側間に配置されるベース部と、このベース部に一体的に形成されて前記取付部と前記ベース部が脱着位置からセット位置に回転されることにより中間部位にて前記アウターチューブの外周に組付けられるとともに先端部位にて前記ハンドル基材に設けた係合部に係合して前記ベース部から離れる方向への移動を規制される保持部を備えている車両用ドアハンドル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置において、
前記ケーブル止め部材の前記取付部と前記ベース部が脱着位置からセット位置に回転されることにより、前記ベース部の一部分が前記ハンドル基材に設けた第2の係合部に係合して、前記ベース部の前記ハンドル基材からの浮き上がりが規制されるように設定されている車両用ドアハンドル装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用ドアハンドル装置において、
前記ケーブル止め部材の前記取付部は、前記ハンドル基材に設けられている取付孔に対して脱着位置とセット位置間にて回転可能かつ脱着位置にて脱着可能に嵌合され、
前記ケーブル止め部材の前記取付部には、同取付部が前記ハンドル基材の前記取付孔に嵌合されるときに節度感を生じさせる突起が設けられている車両用ドアハンドル装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用ドアハンドル装置において、
前記ハンドル基材には、前記ケーブル止め部材の前記取付部と前記ベース部がセット位置を超えて回転されるとき、前記突起と係合して同回転を規制するストッパが設けられている車両用ドアハンドル装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の車両用ドアハンドル装置において、
前記ハンドル基材には、前記ケーブル止め部材の前記取付部と前記ベース部が脱着位置からセット位置に回転されるときに節度感を生じさせる第2の突起が設けられている車両用ドアハンドル装置。
【請求項6】
車両用ドアに組付けられるハンドル基材と、前記ハンドル基材に組付けられて回動操作可能な操作部材と、前記操作部材の動きをドアロック装置に伝達する操作ケーブルを備えていて、前記操作ケーブルにおけるアウターチューブの一端部がケーブル止め部材を用いて前記ハンドル基材に固定され、前記操作ケーブルにおけるインナーワイヤの一端部が前記操作部材の回動部に連結されている車両用ドアハンドル装置であって、
前記ケーブル止め部材が、前記ハンドル基材に設けられている取付孔に対して脱着位置とセット位置間にて回転可能かつ脱着位置にて脱着可能に嵌合される取付部と、この取付部の基端に一体的に形成されて前記ハンドル基材の取付面と前記アウターチューブの一側間に配置されるベース部と、このベース部に一体的に形成されて前記取付部と前記ベース部が脱着位置からセット位置に回転されることにより円弧状の中間部位にて前記アウターチューブの外周に組付けられるとともに直線状の先端部位にて前記ハンドル基材に設けた係合部に係合して前記ベース部から離れる方向への移動を規制されるU字状保持部を備えている車両用ドアハンドル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−113015(P2013−113015A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260828(P2011−260828)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)